説明

熱挙動が改良された光学部品

【課題】光学部品、ひいては、この光学部品が用いられる光学システムが熱の影響を受け、熱により劣化するのを防止、または少なくとも低減させる。
【解決手段】光が照射されたときに昇温する光学的に有効な少なくとも一つの光学素子と、少なくとも一つの光学素子をキャリア構造内に保持するための少なくとも一つのホルダ要素とを含み、少なくとも一つの光学素子は熱伝導する態様で少なくとも一つのホルダ要素に接続され、また少なくとも一つのホルダ要素には少なくとも一つの光学素子からの熱を放出するための能動冷却装置が少なくとも部分的に設けられた光学部品を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、光学部品の熱挙動の改良に関する。本発明は、より詳しくは、EUVリソグラフィに用いられるコレクタの熱挙動の改良に関する。
本発明は、特に、EUVリソグラフィに用いられるコレクタに関連して説明されるが、コレクタのみには限定されない。
【背景技術】
【0002】
一般に、本発明は他の光学部品にも有効であることを理解されたい。
極紫外線(EUV)域における照射システムのコレクタのシミュレーション結果によれば、処理中にコレクタの温度は大幅に上昇する。この温度上昇により、コレクタは変形する。
添付の図1を参照し、一般の光学部品を加熱した場合を簡略的に説明する。図1は、光学部品に作用する入射ビーム1を示す。光学部品、例えば、ミラーは、基板本体4および光学素子としての光学層3を含み、ビームは、このミラーによって、参照番号2に示されるように偏向または反射される。レンズ、プリズム、グレーティング、分光器等の他の光学部品も考えられる。
【0003】
作用するエネルギー1の一部は、光学層3または基板4に吸収される。このとき熱5が発生して、基板4内で拡散する。大方の場合、固定素子6からホルダ7にかけて、さらに基板材料4もまた熱伝導性に乏しいため、この熱はほとんど放出されない。基板4は、固定素子6およびホルダ7に邪魔されながら膨張し、光学素子(基体もしくは光学層、またはその両方)を局所的に変形させ、その結果、光学部品を用いた装置の光学性能を低下させる。
【0004】
光学システムの照度に応じて装置の温度が上昇する。熱伝導によって、冷却媒体へ熱が放出されない場合は、温度がかなり高くなり、場合によっては必要とされる処理温度を急速に超えることがある。
下記特許文献1は、真空状態において光学素子を冷却するための冷却装置および冷却方法を開示している。冷却装置は、放射状に熱を伝達することによって光学部品を冷却するために、光学部品から離して配置される放射状の冷却部と、この放射状の冷却部の温度を制御するための制御部とを含む。
【0005】
この冷却装置は、かなりの数の追加部品を必要とし、また光学部品に必要な設置スペースを増大させるので、高価である。
下記特許文献2は、真空状態下で用いられる光学システムを含む、装置、光学素子および光学システムを冷却するための装置およびその方法を開示している。この冷却装置は、光学部品の表面に沿って各光学部品の近辺に配された熱受プレートを備え、この熱受プレートでは、光学部品に向かう光は入射も出射もしない。この熱受プレートは光学部品からの熱を受け取るように構成されている。下記特許文献1と同様、この周知の装置は、光学部品用の部品に加えて、光学部品冷却用の部品を多数必要とする。
【特許文献1】欧州特許出願公開第1387054号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0051984号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、一方では、比較的価格の安い光学部品に対して、冷却のための他の概念を提供することであり、他方では、光学部品、ひいては、この光学部品が用いられる光学システムが熱の影響を受け、熱により劣化するのを防止、または少なくとも低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明による光学部品は、光が照射されると温度が上昇するような光学的に有効な少なくとも一つの光学素子と、少なくとも一つの光学素子をキャリア構造内に保持するために、少なくとも一つの光学素子に用いる少なくとも一つのホルダ要素とを備えており、少なくとも一つの光学素子は、熱伝導する態様で少なくとも一つのホルダ要素に接続され、少なくとも一つのホルダ要素には、少なくとも一つの光学素子からの熱を放出するための能動冷却システムが少なくとも部分的に設けられている。
【0008】
本発明の概念は、光学部品の少なくとも一つの光学素子からの熱を、熱伝導によって、少なくとも一つの光学素子を光学部品の放出構造に接続する少なくとも一つのホルダ要素へ放出することを提供する。これにより、既に存在する光学部品の素子が、少なくとも一つの光学素子から熱を放出するために用いられ、その結果、この目的のために追加部品をまったく必要としないか、または多数の追加部品を必要としなくなる。
【0009】
好ましい実施の形態においては、少なくとも一つのホルダ要素に冷却媒体を供給することができる。
特に、少なくとも一つのホルダ要素は、ホルダ要素を通って冷却媒体を誘導するための少なくとも一本の流路を含むことが好ましい。
冷却媒体は、少なくとも一つの冷却流路を形成する冷却コイル内の少なくとも一つのホルダ要素を通って誘導されるのが好ましい。
【0010】
これらの実施形態において、少なくとも一つのホルダ要素は、例えば、水、オイル、冷却ガス、または冷却媒体に適したその他の媒体などの冷却媒体によって、積極的に冷却される。
さらに、内部を少なくとも一本の流路が通る、少なくとも一つのホルダ要素の壁は、少なくとも一つの光学素子と重なり合う拡張重複領域を有するのが好ましい。
【0011】
この手段では、少なくとも一つの光学素子から少なくとも一つのホルダ要素への熱伝達が向上するという効果がある。
少なくとも一つの光学素子から少なくとも一つのホルダ要素への熱伝達をさらに向上させるために、少なくとも一つのホルダ要素の壁の厚みは、少なくとも重複領域においては、少なくとも一本の流路が壁によって光学素子からわずかの距離しか離間しない程度に薄いことが好ましい。
【0012】
言い換えれば、冷却媒体が内部を誘導される少なくとも一本の流路は、少なくとも一つの光学素子の近くに配置されるので、少なくとも一つの光学素子から少なくとも一つのホルダ要素への熱伝達を向上させる。
さらに好ましい実施形態において、光学素子は基体を備え、該基体は熱伝導性の高い材料からなる。
【0013】
熱伝導性の高い材料とは、例えば、銅(Cu)であるが、熱伝導性を有する他の材料も用いることができる。
さらに、基体の熱伝導特性を向上させるために、基体は全体的にまたは部分的に拡張された、すなわち肉厚になった部分を備えていてもよい。
少なくとも一つの光学素子が光学的に有効な層を含む場合は、この層は熱伝導性の高い材料からなることが好ましい。
【0014】
さらに好ましい実施形態においては、少なくとも一つの光学素子は、例えば、熱伝導性接着剤、半田もしくは溶接、または熱伝導性を有する機械的接続のような熱伝導性を有する接続要素、すなわち熱伝導性の接続手段を用いて、少なくとも一つのホルダ要素に接続される。
例えば、金属粒子を充填した接着剤が使用可能である。
【0015】
これに関連して、接続要素、すなわち接続手段は、少なくとも一つの光学素子および少なくとも一つのホルダ要素との接触領域に比べて薄いことがさらに好ましい。
この手段によれば、少なくとも一つの光学素子から少なくとも一つのホルダ要素への熱伝達がさらに向上する。接続要素、すなわち接続手段が接着剤である場合、接着剤の厚みはできる限り薄くして、光学素子とホルダ要素との間の隙間を小さくする。同様に、少なくとも一つの光学素子と少なくとも一つのホルダ要素とが互いに半田付けまたは溶接される場合には、半田または溶接の厚みはできる限り薄くしなければならない。例えば、機械的な締め付けのように機械的接続要素を用いる場合には、少なくとも一つの光学素子と少なくとも一つのホルダ要素との間が直接接触するので、熱伝達が向上する。
【0016】
少なくとも一つのホルダ要素は、熱伝導性の高い材料からなるのがさらに好ましい。
この手段もまた、少なくとも一つの光学素子から少なくとも一つのホルダ要素への熱伝達の向上に適している。特に、少なくとも一つの光学素子から、上記の実施形態の一つに記載された、少なくとも一つのホルダ要素を流れる冷却媒体への熱伝達に適している。
さらに好ましい実施形態において、少なくとも一つのホルダ要素は少なくとも一つの光学素子に対して移動可能であり、また、少なくとも一つのホルダ要素はキャリア構造に対して移動可能である。あるいは、少なくとも一つのホルダ要素は少なくとも一つの光学素子に対して移動可能であるか、または、少なくとも一つのホルダ要素はキャリア構造に対して移動可能である。
【0017】
この手段は、少なくとも一つの光学素子と少なくとも一つのホルダ要素とが異なる熱膨張係数を有する場合に、特に有効である。熱膨張係数が異なると、通常は、光学素子のホルダ要素に対する熱膨張が異なり、少なくとも一つの光学素子の変形が引き起こされる。少なくとも一つのホルダ要素が、特に、キャリア構造に対して移動可能に支えられていることによって、少なくとも一つの光学素子と少なくとも一つのホルダ要素との熱膨張の違いは、少なくとも一つの光学素子を変形し得るような圧力、または張力に関して影響を与えなくなる。
【0018】
少なくとも一つのホルダ要素のキャリア構造に対する可動性を得るために、少なくとも一つのホルダ要素は、少なくとも一つの板バネ、および/または少なくとも一つの中実のジョイント、および/または少なくとも一つのすべり軸受け、もしくは少なくとも一つの転がり軸受けによって、キャリア構造に接続されるのが好ましい。
さらに好ましい実施形態においては、光学部品を所定の処理温度まで上昇させるために加熱システムが設けられている。
【0019】
この方法によれば、光学部品を急速に処理温度まで加熱できるという効果が得られる。通常、光学部品の少なくとも一つの光学素子に、一定期間、光を照射した後に、この処理温度にまで上昇する。
加熱システムは、非接触型の加熱システムであるのが好ましい。
加熱システムは、光学部品を囲む熱遮蔽物を含むのが好ましい。
【0020】
さらに、少なくとも一つのホルダ要素に冷却媒体が供給される場合には、所定の処理温度まで光学部品を加熱すべく、該冷却媒体を加熱できることが好ましい。
特定の実施形態においては、少なくとも一つの光学素子はミラーであり、少なくとも一つのホルダ要素はミラーとキャリア構造との間に延びる支柱、すなわちスポークである。
この場合、キャリア構造は少なくとも一つのミラーの周りを囲むリングであるのが好ましく、支柱、すなわちスポークは、少なくとも一つのミラーとリングとの間に放射状に延びる。
【0021】
さらに好ましい実施形態においては、光学部品は、例えば、実質的に同軸上に配置された互いに重なり合うコネクタシェル形状の複数の光学素子を備えており、複数の放射状に延びたスポーク、すなわち支柱がホルダ要素を形成し、少なくともシェルのいくつか、または各々のシェルに接続されている。
これに関連して、スポークは共通の外側リングおよび/または共通の内側リングに接続されているのがさらに好ましい。
【0022】
既に述べた通り、本発明はEUVリソグラフィに用いられるコレクタである光学部品に特に有効である。
更なる特徴および利点は下記の記載および添付の図面から明らかになるであろう。
上記の特徴および下記に説明される特徴は、記載された組み合わせのみならず、その他の組み合わせまたは単独でも、本発明の範囲を逸脱することなく、適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
いくつかの好ましい実施形態は、図面に示されており、また、それらの図面を参照しつつ以下に説明される。
図1aは、図1に示された光学部品に対応する光学部品を大略的に示している。図1aで用いられた参照符号のうち、図1と同じものは、図1と同様の特徴を示すものとし、ここでは説明しない。
【0024】
図1aは、本発明による、光学部品の光学素子A1からホルダすなわちホルダ要素B1への熱伝導を大略的に示している。光学部品の光学素子は、熱伝導性の高い材料(例えば、銅、アルミニウム、SiC)で形成され、大きな断面を有する基板A1を含む。ホルダB1は、冷却媒体が内部を流れる一本または数本の冷却流路B2を含む。光学素子A1は、熱伝導性が高い接続要素、すなわち接続手段C1によってホルダ要素B1に接続されている。接続要素、すなわち接続手段C1は、以下に記載するような特徴を一つまたは数個有する。すなわち、光学素子A1およびホルダ要素B1と接触する大きな接触領域、厚みが少ないこと、良好な熱伝導性、ならびに光学素子A1とホルダ要素B1との間の小さな間隙の形成である。接続要素、すなわち接続手段は、例えば、金属粒子または黒鉛を充填された接着剤である。光学素子A1をホルダ要素B1に接続するために、接着剤の代わりに機械的な固定(クランプ)機構を用いてもよい。
【0025】
図1aに示される構成は、光学素子A1からの良好な熱放出を提供するので、光学素子A1の温度はわずかに上昇するだけである。温度の上昇が小さくなるので、熱変形も低減される。
図2は、本発明の他の実施形態を示す。図2は、光学素子としてのコレクタミラーシェルA1と、それに接続されているホルダ要素としての4本の支柱B1とを含む光学部品を示す。
【0026】
コレクタミラーシェルA1に吸収された熱10は、参照番号11で示されているように冷却支柱B1によって放出される。シェルA1の周囲に配置される支柱B1の4本という数は、単に例示にすぎず、4本より多くても少なくてもよい。支柱B1は、キャリア構造、すなわちホルダの役割を果たし、ハウジング、またはマウンティング、またはキャリア(図示せず)への固定素子を含む外側リング12と一体とされている。
【0027】
支柱B1は、図1aと関連して記載されているように、接続要素、すなわち接続手段C1を介して、シェルA1と接触している。
図2の上部に示されるように、支柱B1は、図1aに関連して既に述べたとおり、冷却媒体を通すための1本または数本の流路B2を含む。
複数のシェルA1は、互いに嵌合することにより組み合わせることができる。図2には、シェルA1単体のホルダ要素B1のみを示す。
【0028】
基本的には、光学素子A1の表面、すなわち領域をより大きな範囲で冷却することもできる。例えば、光学的には影響のない領域、すなわち光学的に光学素子A1の陰になる領域に配される支柱B1は、幅広に設計することができ、必要があれば、シェルA1の全周面上にまで延びるようにすることもできる。さらに、冷却流路もまた方位角方向に延ばすことができる。この概念の利点は、冷却システムの単純な設計にあり、さらに、この概念において、その効果は、組込み過程(接着、溶接、半田付け、締め付け等)によって変形を加えてしまう危険性が減るという事実に基づいている。熱伝導特性が向上された基板(基体)用材料を用いることにより、参照番号A2で示されるシェルA1の基板(基体)を大きくするか厚くすることによって、方位角熱勾配を良好に回避することができる。
【0029】
図3は、同軸上に互いに重なり合い、参照番号C1で示すようにスポークホイールに接着されている複数のコレクタシェルA1を含むEUVコレクタの形状をした光学部品であって、スポークホイールのスポークB1が、上記のように冷却媒体が内部を流れる冷却流路B2を含む光学部品を示す。
図4は、スポークB1のうちの一つの断面図である。
【0030】
光学ミラーの表面24でコレクタシェルA1に吸収された熱量23は、コレクタシェルA1に沿って冷却支柱、すなわちスポークホイールのスポークB1へと放出される(図3と比較)。この光学部品のホルダ要素を形成する各スポークB1は、一体形成された冷却ライン、すなわち冷却流路B2を含む。冷却ライン、すなわち冷却流路内には冷却媒体が供給され(21)、再び放出(22)される。熱伝達は、例えば、銅のような良好な熱伝導特性を有するコレクタシェルA1のシェル材料と、さらにコレクタの光が当たらない領域にあるコレクタシェルA1の厚くされた領域、すなわち拡張領域A2によって、維持される。
【0031】
各シェルA1からスポークB1への熱移動は、下記の好ましい構成要素のいずれか、またはその組み合わせによってさらに向上される。すなわち、
・スポークB1の高さを低くするかまたはスポークB1に突起20を備えることによって確保できる光学シェルA1とスポークB1との間の最大限の大きさの重複領域、
・例えば、熱伝導性の接着剤のような良好な熱伝導特性を有する接続要素、すなわち接続手段C1によってシェルをスポークB1に固定すること、
・接続要素、すなわち接続手段C1の厚みを小さくすることにより、シェルA1とスポークB1との間の間隙を小さくすること、
・シェルA1をスポークB1に接着する代わりに、半田付けまたは溶接を用いること、
・更なる代案として、例えば締め付け、ねじ留め等によりシェルA1をスポークB1に機械的に接続すること、
・シェルA1がスポークB1の冷却流路B2近辺に位置するように、スポークB1とシェルA1との間の重複領域内のスポークB1の壁の厚みをできる限り薄くすること、
・熱伝導特性の高い材料(例えば、銅やアルミニウム)からなるスポークを設けること、および/または、
・スポークB1を、図3および図4に示されるようにシェルA1の縁部、すなわち端部に配置する代わりに、シェルA1の端部と端部との間の中間領域に配置すること、
である。
【0032】
シェルA1の壁厚A2、重複領域、すなわち分離ジョイントC1および冷却流路B2の領域のスポークB1の壁厚、ならびに接続要素C1の厚みを適切な厚みに選択することによって、コレクタシェルA1をより高くより有効な温度にまで上昇させることができる。この事実は、同様の温度上昇が一定の許容差内でコレクタの全てのシェルA1に対して起こるようにするのに利用できる。これにより、温度分布はおおよそ均一となるため、コレクタの加熱およびそれに伴う形状の変化は、その後、適当な方法(例えば、光源またはコレクタを取り替えること)によって補正される。冷却支持支柱を有する図2のコレクタについても同様であり、すなわち、このようにして温度の均一性を達成することができる。
【0033】
シェルA1の変形は、スポークまたはスポークホイールとコレクタシェルA1との熱膨張特性の違いによって、特に、シェルA1とスポークB1とが互いに接続される接続要素、すなわち接続手段C1の領域において起こり得る。スポークB1が可動であるため、特に、放射線状に移動自在であるため、そのような変形を最小限に抑えることができるが、他方では、放射方向以外の方向へは動かないようにするのが好ましい。
【0034】
図5および図6は、そのような可動性の2つの変形例を示している。
図5は、板バネを含む解決策を示している。この目的のためには、内部に冷却装置B2が一体化されたスポークB1が、板バネ29,30を介して、スポークホイールの外側リング26に固定されている。スポークB1は、また、板バネ31を介して、内側リング25に固定されている。
【0035】
あるいは、スポークホイールは一体成形された中実のジョイントと継ぎ目なしに製造されてもよいし、また、板バネの代わりに中実のジョイントを備える小さな単体要素を用いてもよい。
図6は、すべり軸受けを有する解決策を示している。内部を冷却媒体21,22が流れるスポークB1は、2つのすべり軸受け28,32によって、スポークホイール25,26内に取り付けられている。コレクタシェルA1が膨張すると、スポークはコレクタシェルA1とともに径方向33に動く。
【0036】
すべり軸受けは省略することもできる。上記の解決策の別案はボルトおよび穴を含み、スポークB1はピンによってスポークホイールの固定部25,26に接続され、該ピン上を摺動してもよい。
すべり軸受け28,32の代わりにローラ型直線上ガイドを用いてもよい。
本発明のためのEUVコレクタシェルA1の製造方法を以下に記載する。
【0037】
シェルA1は、電気鋳造法によって、熱伝導性の高い材料(例えば、銅)を用いて製造できる。このため、製造工程において、適当なマスキング処理によって、シェルA1を部分的に厚くする(図4のA2)こともできるので、コレクタの光が当たらない領域は、熱伝導性を向上させるために、最適にふさぐことができる。シェルが熱伝導係数の低い材料(例えば、ニッケル)からなるような場合であっても、シェルA1を厚くすれば、シェルA1からの熱放出はかなり向上する。
【0038】
場合によっては、温度勾配および温度勾配により発生する光学素子の変形は、もっとも有効な冷却概念を用いた場合でも、完全に排除することはできない。いずれにしても、運転温度は、定常状態で、システムの起動時の温度よりも高い温度まで上昇する。よって、追加の加熱システムを用いることでさらに向上させる。光学素子の温度は、運転温度まで急激に上昇させねばならない。また、光学部品(例えば、EUVコレクタシェル)の温度はその後、追加加熱の加熱力をゆっくり減少させることにより、一定に保たねばならない。その結果、定常状態において、光学部品は、実際の照射による吸収熱によって十分に熱せられる。
【0039】
運転中のシステムへの一時的な影響(温度変化およびそれに伴う変形および光学性能)は、このようにしてさらに低減される。
このシステムは温度制御を必要とし、光学部品の温度は、取り付けられた温度センサによって常に測定され、それによって、追加加熱の加熱力が制御される。光学部品が、追加加熱によって運転温度まで引き上げられて初めて、システムの運転準備が整う。つまり、システムの電源が入れられるかまたは運転準備が整う前に、一定の加熱時間が必要となる。
【0040】
そのような追加加熱を行うには非接触型の概念が好ましく、加熱素子の適用による光学部品の光学素子の変形を回避することができる(図7と比較)。原理上は、シェルA1の周辺にまたはA1を囲んで配置された熱遮蔽物を用いることができる。熱遮蔽物は、放射107によって光学部108に加熱力を加える。そのような熱遮蔽物は、キャリア101、加熱フォイル(すなわち、加熱マット)102、数枚の押さえプレート103およびキャリア枠104(図4と比較)を含み得る。キャリア枠および熱遮蔽物は、光学部品の光が当たらず利用されない領域に設置されている。光学上利用できる領域、すなわち表面は光学部品の他の場所105に設置される。光学部品の光学部には、温度を測定し調整するために、温度センサ106がいくつか取り付けられている。
【0041】
スペースの必要性から、光学部品全体の周りに加熱素子を配置できない場合には、基板108が熱伝導性の高い材料(例えば、銅)からなり、かつ、上述のごとく最適に厚みを増したものであると効果的である。
あるいは、熱遮蔽物もまた、らせん状ヒータ、すなわち誘導コイルを含んでいてもよい。しかし、加熱フォイルまたは加熱マットを含む解決策は、市場で入手可能な加熱素子を含むことで、平坦かつ省スペースを達成する解決策を提供するものである。
【0042】
電源を切った状態で起動時の温度よりも高い下限温度が必要な場合、通常の運転においては一定の期間を経過しないとこの下限温度に到達しないが、追加加熱によりシステムを運転温度まで、より急速に予熱することができる。運転、またはサービス周期またはクリーニング周期には、この温度が必要とされる。
さらに、必要なシステムの温度を達成するために追加の加熱システムを設けることができる。そのような加熱は上述の構成で達成できる。上述の冷却媒体が熱交換器によって加熱され、その結果、システムを加熱するという構成も考えられる。さらに、冷却媒体の温度を高温と低温との間で制御することも考えられる。あるいは、加熱を目的として冷却システムの流路に加熱媒体を誘導することもできる。その一方で、その後の通常の運転では、冷却用の冷却媒体に切り替える。この場合、加熱媒体および冷却媒体は、同一の媒体、例えば、オイルや水のような、加圧状態において沸点が100℃をはるかに越える媒体でなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】光学部品に作用する入射ビームを示す。
【図1a】本発明の原理を説明する一般的な実施形態である。
【図2a】冷却支持支柱を有するEUVコレクタのコレクタシェルである。
【図2】冷却支持支柱を有するEUVコレクタのコレクタシェルである。
【図3】冷却支持スポークを有するEUVコレクタである。
【図4】図3の冷却スポークの長手方向の断面図である。
【図5】図2ないし図4に示された実施形態の変形例である。
【図6】図5に示された実施形態の変形例である。
【図7】本発明のさらに別の実施形態であり、光学部品に加熱システムを追加したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が照射されたときに昇温する少なくとも一つの光学的に有効な光学素子と、前記少なくとも一つの光学素子をキャリア構造内に保持するための少なくとも一つのホルダ要素とを含み、
前記少なくとも一つの光学素子は、熱伝導する態様で、前記少なくとも一つのホルダ要素に接続されており、
前記少なくとも一つのホルダ要素には、前記少なくとも一つの光学素子からの熱を放出するために、能動冷却装置が少なくとも部分的に設けられていることを特徴とする光学部品。
【請求項2】
前記少なくとも一つのホルダ要素には、冷却媒体が供給可能であることを特徴とする請求項1に記載の光学部品。
【請求項3】
前記少なくとも一つのホルダ要素は、当該ホルダ要素内に前記冷却媒体を誘導するための少なくとも一本の流路を含むことを特徴とする請求項2に記載の光学部品。
【請求項4】
前記少なくとも一本の流路を内在する前記少なくとも一つのホルダ要素の壁には、前記少なくとも一つの光学素子と重なる拡張重複領域があることを特徴とする請求項3に記載の光学部品。
【請求項5】
前記少なくとも一つのホルダ要素の前記壁の厚みは、少なくとも前記重複領域において薄くなっており、それによって前記少なくとも一本の流路が前記壁を介して前記光学素子にわずかな距離を置いて接近していることを特徴とする請求項4に記載の光学部品。
【請求項6】
前記少なくとも一つの光学素子は、基体を含み、
前記基体は、熱伝導性が高い材料からなることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の光学部品。
【請求項7】
前記少なくとも一つの光学素子は、光学的に有効な層を含み、
前記層は熱伝導性の高い材料からなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の光学部品。
【請求項8】
前記少なくとも一つの光学素子は、例えば、熱伝導性を有する接着剤、または半田付け、もしくは溶接、もしくは熱伝導性を有する機械的接続等の熱伝導性を有する接続要素、すなわち接続手段によって、前記少なくとも一つのホルダ要素に接続されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の光学部品。
【請求項9】
前記接続要素、すなわち接続手段は、前記少なくとも一つの光学素子および前記少なくとも一つのホルダ要素との接触領域と比較して薄いことを特徴とする請求項8に記載の光学部品。
【請求項10】
前記少なくとも一つのホルダ要素は、熱伝導性の高い材料からなることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の光学部品。
【請求項11】
前記少なくとも一つのホルダ要素は、前記少なくとも一つの光学素子に対して移動可能であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の光学部品。
【請求項12】
前記少なくとも一つのホルダ要素は、前記キャリア構造に対して移動可能であることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の光学部品。
【請求項13】
前記少なくとも一つのホルダ要素は、少なくとも一つの板バネによって前記キャリア構造と接続されていることを特徴とする請求項12に記載の光学部品。
【請求項14】
前記少なくとも一つのホルダ要素は、少なくとも一つの中実のジョイントによって前記キャリア構造と接続されていることを特徴とする請求項12または13に記載の光学部品。
【請求項15】
前記少なくとも一つのホルダ要素は、少なくとも一つのすべり軸受け、または少なくとも一つの転がり軸受けによって、前記キャリア構造と接続されていることを特徴とする請求項12ないし14のいずれかに記載の光学部品。
【請求項16】
前記光学部品を所定の運転温度まで加熱するために、加熱システムが設けられることを特徴とする請求項1ないし15のいずれかに記載の光学部品。
【請求項17】
前記加熱システムは、非接触型の加熱システムであることを特徴とする請求項16に記載の光学部品。
【請求項18】
前記加熱システムは、前記光学部品を囲む熱遮蔽物を含むことを特徴とする請求項16または17に記載の光学部品。
【請求項19】
前記光学部品を前記所定の運転温度まで加熱するために、前記冷却媒体を加熱することができることを特徴とする請求項2、または3および12ないし18のいずれかに記載の光学部品。
【請求項20】
前記少なくとも一つの光学素子はミラーであり、前記少なくとも一つのホルダ要素は前記ミラーと前記キャリア構造との間に延びる支柱であることを特徴とする請求項1ないし19に記載の光学部品。
【請求項21】
前記キャリア構造は、前記少なくとも一つのミラーを囲むリングであり、前記支柱は前記少なくとも一つのミラーと前記リングとの間に径方向に延びていることを特徴とする請求項20に記載の光学部品。
【請求項22】
互いに重なり合うコレクタシェルの形状をなす複数の光学素子を含み、径方向に延びる複数のスポークが前記ホルダ要素を形成し、前記シェルの少なくともいくつかまたはそれぞれに接続されていることを特徴とする請求項1ないし21のいずれかに記載の光学部品。
【請求項23】
前記スポークは、共通の外側リングおよび/または共通の内側リングに接続されていることを特徴とする請求項22に記載の光学部品。
【請求項24】
EUVリソグラフィに用いられるコレクタであることを特徴とする請求項1ないし23のいずれかに記載の光学部品。

【図1】
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【図1a】
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【図2a】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−536754(P2007−536754A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512021(P2007−512021)
【出願日】平成17年5月4日(2005.5.4)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004861
【国際公開番号】WO2005/109104
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(503187084)カール ツァイス レーザー オプティクス ゲーエムベーハー (14)
【Fターム(参考)】