説明

熱発電携帯機器

【課題】生体への装着状態において発電効率の低下を抑制し、所望の発電量を確保する。
【解決手段】熱発電携帯機器10は、生体に装着され、生体の熱により発電可能であって、熱源である生体と熱発電携帯機器10からの放熱の放熱先との間における熱源側位置の温度と放熱側位置の温度との温度差に基づき発電する熱発電部材20と、生体と放熱先との間における伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を変更可能な熱伝導可変部22と、を備える。熱伝導可変部22内部の一部に熱伝達流体222が封止され、熱伝導可変部22の姿勢に応じて、熱伝達流体222が移動する。この移動により、伝熱経路に対する熱伝達流体の有無が変化することによって伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を変更可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、装着した生体の体温により発電し駆動する熱発電携帯機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、熱発電素子を裏蓋と本体内部の放熱リングとの間に設置し、人体の腕から体温が裏蓋を介して伝達される発熱側の温度と放熱側の温度との温度差によって発電電圧を得る熱発電腕時計が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3054933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る熱発電腕時計においては、人体の腕に装着された後に熱発電腕時計の構成全体の温度が飽和するように熱的定常状態に向かう。この温度変化に伴い、熱発電素子の発熱側の温度と放熱側の温度との温度差が小さくなり、熱発電素子の発電電圧が低下する。このため、所望の発電量を確保することができなくなると共に、発電効率が低下してしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、生体への装着状態において発電効率の低下を抑制し、所望の発電量を確保することが可能な熱発電携帯機器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための、本発明の熱発電携帯機器の第1の特徴は、熱源と放熱先との間における熱源側位置の温度と放熱側位置の温度との温度差に基づき発電する熱発電部材と、内部空間と、前記内部空間で移動可能な第一流体とを有する熱伝導可変部と、を備え、前記熱伝導可変部は、前記熱源と前記放熱先との間の伝熱経路における前記第一流体の経由有無により、前記伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を変更することを要旨とする。
かかる特徴によれば、熱源と熱発電携帯機器外部の雰囲気等の放熱先との間の所定の温度差に対し、伝熱経路の一部の熱抵抗を変更することにより、熱発電部材の熱源側と放熱側との温度差を増大させる。これにより、熱発電部材の発電効率の低下を抑制し、所望の発電量を確保することが可能となる。
【0007】
また、本発明の熱発電携帯の第2の特徴は、前記熱伝導可変部は、前記伝熱経路における前記第一流体の有無により、前記伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗が第1熱抵抗になる状態と、前記伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗が前記第1熱抵抗とは異なる第2熱抵抗になる状態とを切り替え可能であることを要旨とする。
かかる特徴によれば、伝熱経路に対して第一流体を移動させることで、伝熱経路上の一部の熱抵抗を切り替えることができる。これにより、熱発電部材の発電効率の低下を抑制し、所望の発電量を確保することが可能となる。
【0008】
また、本発明の熱発電携帯機器の第3の特徴は、前記熱伝導可変部の内部空間に、前記第一流体と第二流体とを備え、前記第二流体は、前記第一流体に比べ熱伝導率が低く、密度が異なり、前記第一流体と溶解しないことを要旨とする。
かかる特徴によれば、伝熱経路において、第一流体を経由する場合と第二流体を経由する場合の二種類を設定できる。第一流体もしくは第二流体を移動させることで、伝熱経路上の一部の熱抵抗を切り替えることができるため、熱発電部材の発電効率の低下を抑制し、所望の発電量を確保することが可能となる。
【0009】
また、本発明の熱発電携帯機器の第4の特徴は、前記熱伝導可変部の姿勢変化により、前記第一流体を移動させ、前記第1熱抵抗と前記第2熱抵抗とを切り替えることを要旨とする。
かかる特徴によれば、外部動力が必要ない熱伝導可変部の姿勢変化で、伝熱経路上の一部の熱抵抗を切り替えることができる。これにより、電力消費することなく、熱発電部材の発電効率の低下を抑制し、所望の発電量を確保することが可能となる。
【0010】
また、本発明の熱発電携帯機器の第5の特徴は、前記熱伝導可変部は直線移動もしくは回転移動可能な流体制御部を備え、前記流体制御部の移動により前記第一流体の移動を制御することを要旨とする。
かかる特徴によれば、第一流体の移動を流体制御部で制御できるため、所望の時点で熱伝達流体を移動することが可能となる。これにより、熱発電部材の発電効率の低下を抑制し、所望の発電量を確保することが可能となる。
【0011】
また、本発明の熱発電携帯機器の第6の特徴は、前記熱伝導可変部は可撓体からなり、前記流体制御部が前記熱伝導可変部を押圧して変形させたまま移動することで前記第一流体を移動させることを要旨とする。
かかる特徴によれば、伝熱経路において、第一流体を経由する場合と流体制御部を経由する場合の二種類を設定できる。この第一流体もしくは流体制御部を移動させることで、伝熱経路上の一部の熱抵抗を切り替えることができるため、熱発電部材の発電効率の低下を抑制し、所望の発電量を確保することが可能となる。
【0012】
また、本発明の熱発電携帯機器の第7の特徴は、前記熱伝達流体は磁性流体であり、磁石で構成された前記流体制御部の移動に伴い、前記第一流体を移動することを要旨とする。
かかる特徴によれば、熱伝導可変部と流体制御部とを接して配置する必要がなく、流体制御部の移動にかける動力が小さくてすむ。これにより、電力消費を小さくして、熱発電部材の発電効率の低下を抑制し、所望の発電量を確保することが可能となる。
【0013】
また、本発明の熱発電携帯機器の第8の特徴は、前記熱伝導可変部は複数の中空部と、前記中空部それぞれに設けられた二つの開口部と、前記開口部に各々異なる向きで設けられた一方向弁と、を備え、前記流体制御部は移動可能なバルブと重錘とを有し、前記流体制御部の姿勢変化に伴って前記バルブが移動することで、前記中空部内部の前記第一流体が異なる前記中空部へと移動することを要旨とする。
かかる特徴によれば、流体制御部の移動は重力加速度によるものであり、動力を必要とせず、第一流体を移動させることが可能となる。これにより、電力消費することなく、熱発電部材の発電効率の低下を抑制し、所望の発電量を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
熱源と熱発電携帯機器外部の雰囲気等の放熱先との間の所定の温度差に対し、伝熱経路の一部の熱抵抗を変更することにより、熱発電部材の熱源側と放熱側との温度差を増大させる。これにより、熱発電部材の発電効率の低下を抑制し、所望の発電量を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る熱発電携帯機器の断面図である。
【図2】本発明の第一の実施の形態に係る熱発電携帯機器のムーブメントの構成図である。
【図3】本発明の第一の実施の形態に係る熱発電携帯機器の熱伝導可変部の構成図である。
【図4】本発明の第一の実施の形態に係る熱発電携帯機器の熱抵抗モデルを示す図である。
【図5】本発明の第一の実施の形態に係る熱発電携帯機器が生体に装着された状態における熱抵抗モデルでの温度分布の一例を示す図である。
【図6】本発明の第一の実施の形態に係る熱発電携帯機器の熱発電部材の熱源側位置の温度と放熱側位置の温度との間に生じる温度差ΔTpの変化を示す説明図である。
【図7】本発明の第一の実施の形態に係る熱発電携帯機器の熱伝導可変部の状態に応じて変化する熱抵抗モデルを示す説明図である。
【図8】本発明の第一の実施の形態に係る熱発電携帯機器の熱伝導可変部の熱抵抗と、熱発電部材の熱源側位置の温度と放熱側位置の温度との間に生じる温度差ΔTpを示す説明図である。
【図9】本発明の第二の実施の形態に係る熱発電携帯機器の断面図である。
【図10】本発明の第三の実施の形態に係る熱発電携帯機器の熱伝導可変部の構成図である。
【図11】本発明の第三の実施の形態に係る熱発電携帯機器の熱伝導可変部周囲の構成を示す構成図である。
【図12】本発明の第四の実施の形態に係る熱発電携帯機器の熱伝導可変部周囲の構成を示す構成図である。
【図13】本発明の第五の実施の形態に係る熱発電携帯機器の熱伝導可変部周囲の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
以下、本発明に係る第1の実施形態を、図1から5を参照しながら説明する。本実施形態に係る熱発電携帯機器100について、以下に説明する。
(全体構成)
本実施形態に係る熱発電携帯機器100は、例えば人体の腕に装着される腕時計である。
図1に、本実施形に係る熱発電携帯機器100断面の構成を示す。熱発電携帯機器100は、筐体11と、枠体12と、カバーガラス13と、裏蓋14と、保持部材15と、文字盤16と、指針部17と、ムーブメント18と、基板19と、熱発電部材20と、導熱部材21と、熱伝導可変部22から構成されている。
【0017】
筐体11は、例えば金属などにより筒状に形成され、一方の開口端はカバーガラス13により閉塞され、他方の開口端には筒状の枠体12の一方の開口端が接続されている。
枠体12は、例えば合成樹脂などにより筒状に形成され、他方の開口端は裏蓋14により閉塞されている。
保持部材15は、例えばアルミニウム、銅、真鍮等の金属により形成され、筐体11および枠体12の内部に収容されている。
【0018】
文字盤16は、例えば時刻の秒、分、時に係る数字などの表示が設けられた表面16Aがカバーガラス13を介して外部から視認可能になるようにして、裏面16Bがムーブメント18により保持されている。
指針部17は、例えば、時刻の秒を示す秒針17aと、時刻の分を示す分針17bと、時刻の時を示す時針17cとを備えて構成され、文字盤16の表面16A上から突出して設けられ、ムーブメント18により回転駆動されて文字盤16の表面16A上に設けられた時刻に係る適宜の表示を指し示す。
ムーブメント18は、例えば、文字盤16の裏面16B側に配置されて保持部材15により保持されている。
【0019】
基板19は、例えば保持部材15により保持されている。
熱発電部材20は、例えばペルチェ素子や熱電対などからなり、保持部材15と導熱部材21とによって挟み込まれるようにして保持されている。
導熱部材21は、例えば銅などにより板状に形成され、裏蓋14の内面14A側に配置されている。
熱伝導可変部22は、文字盤16に対してムーブメント18の裏側に配置され、保持部材15に保持されている。
なお、筐体11と保持部材15との間、保持部材15と熱発電部材20との間、導熱部材21と裏蓋14との間などには、熱伝導性のグリス23が塗布されている。
【0020】
(ムーブメントの構成)
ムーブメント18の構成について、以下に説明する。
図2は、ムーブメント18の構成を示す構成図である。
ムーブメント18は、制御部31と、針駆動部32と、昇圧部33と、蓄電部34とを備えて構成されている。
針駆動部32は、例えばステッピングモータなどを備え、制御部31から出力される駆動パルスに応じて指針部17の秒針17aと分針17bと時針17cとを回転駆動する。
【0021】
昇圧部33は、例えば発振回路およびチャージポンプ回路などを備え、熱発電部材20に接続され、熱発電部材20から出力される発電電圧を昇圧して昇圧電圧を出力する。
蓄電部34は、例えば2次電池やコンデンサなどを備え、昇圧部33に接続され、昇圧部33から出力される電力を蓄電する。
制御部31は、例えば蓄電部34から供給される電力により作動する発振回路および分周回路およびモータ駆動パルス出力回路などを備え、分周回路から出力される計時の基準となる信号に応じて、針駆動部32を駆動するための駆動パルスをモータ駆動パルス出力回路から出力する。
【0022】
(熱伝導可変部の構成)
熱伝導可変部の構成について、以下に説明する。
図3は、熱伝導可変部の構成を示す断面図である。
熱伝導可変部22は、二つの中空部221a、221bと、中空部221a、221b内部に封入された熱伝達流体222と流体223と、熱伝達流体222の流動を制御する流体制御部230から構成されている。
二つの中空部221a、221bは隔壁224で区切られており、中空部221a、221bそれぞれ二つの開口部を有している。二つの開口部はそれぞれに異なる方向の液体用一方向弁226が設けられ、熱伝達流体222の流出口225aと流入口225bを構成している。
【0023】
また、二つの中空部221a、221b内部に封入されている、熱伝達流体222と流体223とは、熱伝導率及び密度が異なる。例えば、熱伝達流体222は、熱伝導率の高いフィラー(アルミナ、窒化アルミニウム、炭化珪素、グラファイト等の粉末)を混合したシリコンオイル、流体223は空気、窒素ガス等の不活性ガスで構成する。
流体制御部230は、中空部221の流出口225a及び流入口225bに接するよう配置され、バルブ部231と重錘232から構成されている。流体制御部230の姿勢により、重錘232に重力加速度が加わることで、一方向に往復移動することができる。
【0024】
ここで、熱伝導可変部22の右側が下に傾いた場合、重錘232の重量により、流体制御部230は右へ移動する。これにより、バルブ231は中空部221aの流入口225bのみを塞ぐ。このため、中空部221a内部の熱伝達流体222は、重力により中空部221aの流出口225a、流体制御部230、中空部221bの流入口225bを経て、中空部221bに移動する(図3(A)参照)。このとき、流体223の動きは液体用一方向弁226で制御されないため、流体223は中空部221bから中空部221aへと移動する。
【0025】
同様に、熱伝導可変部22の左側が下に傾いた場合は、流体制御部230は左に移動し、バルブ231が中空部221bの流入口225bを塞ぐ。このため、熱伝達流体222は中空部221bから中空部221aへ、流体223は中空部221aから中空部221bへと移動する(図3(B)参照)。
【0026】
(熱発電携帯機器内部の熱伝導)
熱発電携帯機器100内部の熱の流れについて説明する。
熱発電携帯機器100を人体に装着すると、体温により裏蓋14が加熱される。この熱は、裏蓋14、導熱部材21、熱発電部材20、熱伝導可変部22、保持部材15、筐体11の順に伝達する。ただし、熱伝導可変部22は、姿勢に応じて内部に封入した熱伝達流体222が移動する。このため、上記伝熱経路の一部が、熱伝導可変部22の姿勢により、熱伝達流体222を経由する場合と流体223を経由する場合とが切り替わることとなる。
熱発電携帯機器100内部の熱伝導を説明するため、熱抵抗モデルを適用する。図4に、熱発電携帯機器100全体の熱抵抗モデルを示す。
【0027】
熱発電携帯機器100の熱抵抗モデルは、裏蓋14に接触する熱源である生体と、熱発電携帯機器100外部の雰囲気などの放熱先との間において、裏蓋14および導熱部材21からなる領域の熱抵抗R5、熱発電部材20の熱抵抗R4、枠体12および枠体12内部の雰囲気からなる領域の熱抵抗R3、筐体11および保持部材15からなる領域の熱抵抗R2、熱発電携帯機器100の表面(例えば、筐体11の表面11Aなど)および該表面付近の領域からなる放熱部の熱抵抗R1、熱伝導可変部22の熱抵抗R22からなる。
熱発電携帯機器100の熱抵抗モデルは、各熱抵抗R1、R2、R3、R5が直列に接続され、かつ熱抵抗R2、R5間において、直列接続された熱抵抗R4及び熱抵抗R22と、熱抵抗R3とが並列に接続されている。
【0028】
熱伝導可変部22の熱抵抗R22は、姿勢に応じて変化する可変熱抵抗である。熱伝達流体222を経由する場合には、熱伝導可変部の熱抵抗R22が小さな値の第1熱抵抗R22aになり、流体223を経由する場合には熱抵抗R22が大きな値の第2熱抵抗R22b(>第1熱抵抗R22a)になる。
なお、ここでは、各熱抵抗R1、R5および熱抵抗R22aが、熱発電部材20の熱抵抗R4と同等あるいは熱抵抗R4よりも小さくなるように構成されている。また、熱抵抗R3は、例えば、各熱抵抗R1、R2、R4、R5、R22a、R22bよりも大きくなるように構成されている。
【0029】
(熱発電部材の発電動作)
次に、熱発電部材20の発電について、図5から図8を用いて説明する。
熱発電部材20は、加熱側と放熱側との温度差に応じて発電電圧を出力する素子である。
図5に示すように、生体に装着された熱発電携帯機器100は、熱源である生体の温度(熱源温度Tc)から熱発電携帯機器100外部の雰囲気などの放熱先の温度(雰囲気温度Ta)に至る熱の流れが発生している。ここで、熱発電部材20の熱源側位置の温度Tp2と放熱側位置の温度Tp1とすると、熱発電部材20は温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)の大きさに応じた発電電圧を出力することとなる。
【0030】
この熱の流れと発電動作の時間変化について、図5及び図6を用いて説明する。
熱発電携帯機器100外部の雰囲気の温度(雰囲気温度)Taに比べて、より高い温度(熱源温度)Tcを有する熱源である生体に、熱発電携帯機器100を装着する。裏蓋14が生体に接触し、裏蓋14および導熱部材21からなる領域を経由して、熱源から熱発電部材20の熱源側位置に熱流が伝達される。
【0031】
この熱的過渡状態において、熱発電部材20の熱源側位置の温度Tp2が上昇し、例えば図6に示すように、熱発電部材20の熱源側位置の温度Tp2と放熱側位置の温度Tp1との温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)および熱発電部材20の発電電圧が極大値に向かい増大する(図6(a))。
なお、温度差ΔTpの最大値は、例えば、熱源から放熱先までの間の伝熱経路全体の熱抵抗Rと、熱発電部材20の熱抵抗R4と、熱伝導可変部22の熱抵抗R22と、枠体12および枠体12内部の雰囲気からなる領域の熱抵抗R3と、雰囲気温度Taおよび熱源温度Tcとにより、下記数式(1)に示すように記述される。
【0032】
【数1】

【0033】
そして、熱発電部材20および熱伝導可変部22、枠体12および枠体12内部の雰囲気からなる領域を経由して、熱発電部材20の放熱側位置、さらに放熱先に向かい熱流が伝達される。これに伴い、温度差ΔTpが極大値から低下傾向に変化し、熱発電携帯機器100全体の温度が飽和する熱的定常状態、いわば、熱源と放熱先との間の所定の温度差(Tc−Ta)が伝熱経路の全体に亘って配分される。これにより局所的な温度勾配が小さくなる熱的定常状態が形成される(図6(b))。このような熱発電携帯機器100全体の温度が飽和する熱的定常状態が維持されると、温度差ΔTpおよび発電電圧が低下した状態が維持されることとなる。
【0034】
上記に示した熱流の伝達において、熱伝導可変部22の熱抵抗R22が可変する場合を、図7及び図8を用いて説明する。
まず、熱発電携帯機器100が熱源である生体に装着された初期状態において、熱伝導可変部22の熱伝達流体222が伝熱経路に存在し、熱伝導可変部22の熱抵抗R22が小さな値の第1熱抵抗R22aとなることとする。熱源から、裏蓋14および導熱部材21からなる領域を経由して熱発電部材20の熱源側位置が加熱され、熱源側位置の温度Tp2が上昇する。一方、熱発電部材20の放熱側位置は、放熱部と筐体11および保持部材15からなる領域とを介して熱発電携帯機器100外部の雰囲気により冷却され、放熱側位置の温度Tp1の上昇が抑制される(図7(A))。
【0035】
これにより、熱発電部材20の熱源側位置の温度Tp2と放熱側位置の温度Tp1との間に生じる温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)および熱発電部材20の発電電圧は極大値に向かい増大する(図8、時刻t1まで)。
【0036】
次に、熱発電携帯機器100全体の温度が飽和するように熱的定常状態に向かい変化することに伴い、いわば、熱源と放熱先との間の所定の温度差(Tc−Ta)が伝熱経路の全体に亘って配分される。これにより、局所的な温度勾配が小さくなり、熱発電部材20の熱源側位置の温度Tp2と放熱側位置の温度Tp1との間に生じる温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)が低下し、熱発電部材20の発電電圧が低下する(図8、時刻t1からt2)。
【0037】
次に、熱伝導可変部22の姿勢を変化させ、伝熱経路において、熱伝導可変部22の流体223を経由させる。これにより、熱伝導可変部22の熱抵抗R22は大きな値の第2熱抵抗R22bに変化する。裏蓋14および導熱部材21からなる領域と熱発電部材20または枠体12および枠体12内部の雰囲気からなる領域とを経由して熱源から熱発電部材20の放熱側位置に伝達された熱流は、いわば、熱伝導可変部22でせき止められる(図7(B))。
【0038】
これにより、熱発電部材20の放熱側位置の温度Tp1は熱源側位置の温度Tp2に等しくなるように上昇し、温度差ΔTpおよび熱発電部材20の発電電圧がゼロに向かい低下する。一方、筐体11および保持部材15からなる領域は、熱発電携帯機器100外部の雰囲気により冷却され易くなり、筐体11および保持部材15からなる領域の温度Tbが低下する(図8、時刻t2からt3)。
【0039】
つまり、熱伝導可変部22の姿勢が変化することで、熱源と放熱先との間の伝熱経路での温度分布が変更される。これにより、熱発電部材20の放熱側位置の温度Tp1と筐体11および保持部材15からなる領域の温度Tbとの間の温度差が増大する。
つまり、伝熱経路の全体に亘って配分された熱源と放熱先間の温度差(Tc−Ta)が、伝熱経路の一部(つまり、熱伝導可変部22の領域)に局在的に集中するような熱的定常状態が形成される。
【0040】
次に、熱伝導可変部22の姿勢を変化させ、再度、熱伝導可変部22の熱伝達流体222を経由する伝熱経路にする。熱伝導可変部22の熱抵抗R22が小さな値の第1熱抵抗R22aに変化する。熱発電部材20の放熱側位置は、放熱部と筐体11および保持部材15、熱伝導可変部22とを介して熱発電携帯機器100外部の雰囲気により冷却され、放熱側位置の温度Tp1が低下する(図7(C))。
【0041】
これにより、熱発電部材20の放熱側位置は、放熱部と筐体11および保持部材15からなる領域とを介して熱発電携帯機器100外部の雰囲気により冷却され、熱発電部材20の放熱側位置の温度Tp1が低下する。熱発電部材20の熱源側位置の温度Tp2と放熱側位置の温度Tp1との間に生じる温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)および熱発電部材20の発電電圧は極大値に向かい増大する(図8、時刻t3からt4)。
【0042】
そして、温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)および熱発電部材20の発電電圧が極大値に到達した以後においては、熱発電携帯機器100全体の温度が飽和するように熱的定常状態に向かい変化することに伴い、いわば、熱源と放熱先との間の所定の温度差(Tc−Ta)が伝熱経路の全体に亘って配分されることで局所的な温度勾配が小さくなり、熱発電部材20の熱源側位置の温度Tp2と放熱側位置の温度Tp1との間に生じる温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)および熱発電部材20の発電電圧が低下傾向に変化する(図8、時刻t4以降)。
【0043】
上述したように、本実施の形態による熱発電携帯機器100によれば、熱伝導可変部22の姿勢に応じて、熱伝導可変部22の熱抵抗R22が変更できる。このため、熱源と放熱先との間の所定の温度差(Tc−Ta)に対して、局在的に熱発電部材20の熱源側位置と放熱側位置との間で温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)を増大させることができ、発電電圧を増大させて所望の発電量を確保することができると共に、発電効率の低下を抑制することができる。
【0044】
より具体的には、熱伝導可変部22の熱抵抗R22が第1熱抵抗R22aと第2熱抵抗R22bとに切り替えられる。このため、熱源と放熱先との間の伝熱経路での温度分布が変更でき、これに起因する熱的過渡状態において熱発電部材20の熱源側位置と放熱側位置との間に、熱源と放熱先との間の所定の温度差(Tc−Ta)に基づく所望の大きさの温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)を確保することができる。
【0045】
さらに、姿勢により内部に封入された熱伝達流体222を偏在させる熱伝導可変部22を備えるだけで、伝熱経路上の熱抵抗を変更できる。これにより、簡略な構成で発電効率の低下を抑制できる。また、外部動力を用いずに発電効率の低下を抑制できるため、発電電力を有効に利用できる。
【0046】
(第2の実施形態)
以下、本発明に係る第2の実施形態の熱発電携帯機器200について説明する。第1の実施形態と同一箇所については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
第1の実施形態と異なる点は、複数の熱発電部材20を用いて熱発電携帯機器200を構成したものである。
第2の実施形態に係る熱発電携帯機器200の断面構成を図9に示す。
熱発電携帯機器200は二つの熱発電部材20a、20bを有し、熱伝導可変部22の中空部221a、221bそれぞれに、熱発電部材20a、20bを接するよう配置する。
【0047】
ここで、中空部221aに熱伝達流体222が封入され、中空部221bに流体223が封入されているとする。このため、熱発電携帯機器200の伝熱経路は、中空部221aを経由する伝熱経路と中空部221bを経由する伝熱経路の二種類が存在する。中空部221aを経由する伝熱経路においては、図7(A)に示すように、熱伝導可変部22の熱抵抗R22は、より小さい値である第1熱抵抗R22aをとる。このため、熱発電部材20aの温度差ΔTpを増大させることができ、発電電圧が増大し、所望の発電量を確保できる。一方、流体223封入側の中空部221bを経由する伝熱経路においては、図7(B)が示すように、熱伝導可変部22の熱抵抗R22は、大きい値である第2熱抵抗R22bをとる。このため、熱発電部材20bの温度差ΔTpが低下し、熱発電部材20bは発電しない。
【0048】
その後、熱発電携帯機器200の姿勢を変化させ、熱伝達流体222を他方の中空部221bへと移動させる。中空部221aには流体223が、中空部221bには熱伝達流体222が封入されることとなる。このため、中空部221aの熱抵抗R22は、より大きい第2熱抵抗R22bとなり、これと接する熱発電部材20aの温度差ΔTpが低下し、熱発電部材20aは発電しなくなる。一方で、中空部221bの熱抵抗R22は、より小さい第1熱抵抗R22aとなり、これと接する熱発電部材20bの温度差ΔTpが上昇し、熱発電部材20bの発電電圧が増加する。
【0049】
このように、二つの熱発電部材20a、20bのどちらか(熱伝達流体222が存在する伝熱経路上にある側の熱発電部材20)は発電しているため、常に所望の発電量を確保することが可能となる。
なお、上述した実施の形態においては、熱伝導可変部22の中空部221は二つであるが、これに限定されない。例えば、熱伝導可変部22内部を複数の隔壁223で分割し、3以上の中空部を形成し、各々の中空部に熱発電部材20を接するように構成することも可能である。
【0050】
また、流体223は気体に限らない。流体223が熱伝達流体222と混合もしくは溶解せず、熱抵抗及び密度の異なる液体でも構成可能である。例えば、熱伝達流体222を熱伝導フィラー混合のオイル、流体223を水とすれば、上記機能を実現できる。
また、隔壁224の構造がなくとも構成可能である。例えば、表面張力が大きい水銀等を熱伝達流体222とすれば、流体223と確実に分離するため、隔壁224の構造は不要となる。
【0051】
(第3の実施形態)
以下、本発明に係る第3の実施形態について説明する。第1及び第2の実施形態と同一箇所については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
第1及び第2の実施形態と異なる点は、熱伝導可変部22が中空円管形状の中空部221ひとつを備え、中空部221内部に熱伝達流体222及び流体223を封入して構成した点である。
【0052】
熱伝導可変部22の構成を図10に示す。
熱伝達可変部22は、中空部221、熱伝達流体222及び流体223から構成されている。
中空部221は、中空円管形状の金属や樹脂等で形成され、その内部には上部開放された隔壁224が複数設けられている。
【0053】
中空部221内部には、熱伝達流体222及び流体223を封入している。熱伝達流体222と流体223は、異なる熱伝導率及び密度を有し、互いに溶解せず、各々の表面張力等により分離している。例えば、ここでは熱伝達流体222の方が流体223に比べ、熱伝導率及び密度が高いこととする。熱伝達流体222は熱伝導フィラーを混合したオイル、流体223は空気で構成する。
【0054】
中空部221内部領域において、熱伝達流体222及び流体223は移動は自由である。例えば、熱伝導可変部22を傾けると、熱伝達流体222は熱伝導可変部22内部を移動し、熱伝導可変部22の最も低い領域に熱伝達流体222が停留する。また、熱伝導可変部22内部の残りの領域には流体223が存在することとなる。
【0055】
熱伝導可変部22に熱発電部材20を配置した構成を図11に示す。
熱伝導可変部22の円周に沿って4つの熱発電部材20a、20b、20c、20dを、熱伝導可変部22に接して設置する。
ここで、熱発電携帯機器を生体に装着すると、生体の体温により裏蓋14が加熱され、裏蓋14、導熱部材21、熱発電部材20、熱伝導可変部22、保持部材15、筐体11の順に熱が伝達される。この伝熱経路は二種類あり、熱伝達流体222を経由する場合と、流体223を経由する場合がある。
【0056】
図11に示すような姿勢の場合、熱伝達流体222を経由する伝熱経路上の熱発電部材20a、20dは、熱伝導可変部22の熱抵抗R22は第一熱抵抗R22aであるため、熱源側位置と放熱側位置との温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)を確保することができる。このため、熱発電部材20a、20dは温度差に起因した所定の発電量を確保することができる。同時に、流体223を経由する伝熱経路上の熱発電部材20b、20cは、熱伝導可変部22の熱抵抗R22は第二熱抵抗R22bであるため、熱源側位置と放熱側位置との温度差ΔTpがほぼゼロである。このため、熱発電部材20b、20cは発電しない状態である。
【0057】
この後、熱伝導可変部22の姿勢が変化し、熱伝達流体222が内部で移動すると、伝熱経路上に熱伝達流体222が存在する熱発電部材が発電し、流体223が経路上に存在する熱発電部材が発電しなくなる。
【0058】
このため、熱伝導可変部22の姿勢変化により、発電する熱発電部材を切り替えることができる。これにより、複数ある熱発電部材のいずれかが所定の発電量を供給することができる。また、上記構造によれば、重力の作用により熱伝達流体222の移動性が高められており、熱伝導可変部22の姿勢変化に伴う伝熱経路に対する熱伝達流体222の存在有無を容易に生じさせることができる。このため、伝熱経路の一部(つまり、熱伝導可変部22)の熱抵抗R22を容易に変更することができる。
【0059】
なお、上述した実施の形態においては、4つの熱発電部材で構成したが、数の変更は可能である。また、熱伝達流体222と流体223の容積は同等と図示したが、熱発電部材の数や熱飽和する時間に応じて、熱伝達流体222と流体223の容積の比率を変更して構成することも可能である。
【0060】
(第4の実施形態)
以下、本発明に係る第4の実施形態について説明する。上記実施形態と同一箇所については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
上記実施形態と異なる点は、熱伝導可変部22が樹脂等の可撓体で形成した中空円管構造の中空部221を有する点である。
熱伝導可変部22及び熱発電部材20a、20b、20c、20dの構成を図12に示す。
【0061】
熱伝導可変部22は、中空部221と流体制御部230からなる。
中空部221は、樹脂等の可撓体で形成した中空円管構造であり、内部に熱伝達流体222を封入している。なお、熱伝達流体222は熱伝導フィラーを混合したオイルで構成する。
【0062】
流体制御部230は、平板に2つの凸部233及び回転軸234を有し、樹脂等で形成した構造である。回転軸234は針駆動部32と接続され、指針部17と同期した回転トルクが供給され、一定速度で回転する。
ここで、流体制御部230の凸部233で熱伝導可変部22の中空部221を押圧する。中空部221の押圧された領域の熱伝達流体222が押しのけられることとなる。なお、例えば、流体制御部230の熱抵抗は、熱伝達流体222の熱抵抗より高いとする。
【0063】
熱発電部材20a、20b、20c、20dは、熱伝達可変部22の流体制御部230との対面側に、熱伝導可変部22の円周に沿って設置する。
ここで、熱発電携帯機器を生体に装着すると、生体の体温により裏蓋14が加熱され、裏蓋14、導熱部材21、熱発電部材20、熱伝導可変部22、保持部材15、筐体11の順に熱が伝達される。この伝熱経路は二種類あり、熱伝導可変部22の熱伝達流体222を経由する場合と、流体制御部230の凸部233を経由する場合がある。
【0064】
図12(B)に示すような流体制御部230の位置の場合、熱伝達流体222を経由する伝熱経路上の熱発電部材20a、20cは、熱伝導可変部22の熱抵抗R22は第一熱抵抗R22aであるため、熱源側位置と放熱側位置との温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)を確保することができる。このため、熱発電部材20a、20cは温度差に起因した所定の発電量を確保することができる。同時に、流体制御部230の凸部233を経由する伝熱経路上の熱発電部材20b、20dは、凸部233の熱抵抗は熱伝達流体222の熱抵抗R22aより高いため、熱源側位置と放熱側位置との温度差ΔTpがほぼゼロである。このため、熱発電部材20b、20dは発電しない状態である。
【0065】
この後、流体制御部230が回転し、熱伝達流体222が熱伝導可変部22内部で移動すると、伝熱経路上に熱伝達流体222が存在する熱発電部材が発電し、凸部233が経路上に存在する熱発電部材が発電しなくなる。
【0066】
このため、流体制御部230の回転により、発電する熱発電部材を順次、切り替えることができる。これにより、複数ある熱発電部材のいずれかが所定の発電量を供給することができる。また、上記構造によれば、流体制御部230の回転は時間一定であるため、熱発電部材が熱飽和する前に、次の熱発電部材が発電するよう切り替えるような回転速度設定も可能である。このため、熱発電部材の発電量をより向上させて供給することが可能となる。
【0067】
なお、上述した実施の形態においては、4つの熱発電部材で構成したが、数の変更は可能である。また、熱伝達流体222の熱抵抗が高く、流体制御部230の凸部233の熱抵抗を低く構成することも可能である。例えば熱伝達流体222を窒素ガス、凸部233をアルミ等の金属で構成する。この場合、伝熱経路上に凸部233が存在する熱発電部材が発電し、伝熱経路上に熱伝達流体222が存在する熱発電部材が発電しなくなる。
【0068】
また、流体制御部230の回転軸234を針駆動部32と接続し、回転トルクを供給することとしたが、これに限らない。例えば、回転軸234に偏心した重錘を取り付け、姿勢によって重錘が移動し、回転軸234に回転トルクを供給するように構成することも可能である。
【0069】
(第5の実施形態)
以下、本発明に係る第5の実施形態について説明する。上記実施形態と同一箇所については、同一符号を付して詳細な説明は省略する。
上記実施形態と異なる点は、中空円管構造の中空部221内部の熱伝達流体222を磁性流体で構成した点である。
熱伝導可変部22及び熱発電部材20a、20b、20c、20dの構成を図13に示す。
熱伝導可変部22は中空部221と流体制御部230からなる。
【0070】
中空部221は中空円管構造であり、内部に熱伝達流体222と流体223を封入した構成である。なお、熱伝達流体222は磁性流体、流体223は空気で構成する。このため、熱伝導可変部22の熱抵抗R22は、熱伝達流体222を経由する場合は第一熱抵抗R22a、流体223を経由する場合は第二熱抵抗R22bとなる。
【0071】
流体制御部230は、半円形状の磁石と回転軸234からなる構造である。回転軸234は針駆動部32と接続され、指針部17と同期した回転トルクが供給され、磁石は一定速度で回転する。
流体制御部230の磁石が回転すると、磁石の磁場が移動し、これに追随して、熱伝達流体222である磁性流体が熱伝導可変部22内部を移動する。
【0072】
熱発電部材20a、20b、20c、20dは、熱伝達可変部22の流体制御部230との対面側に、熱伝導可変部22の円周に沿って設置する。
ここで、熱発電携帯機器を生体に装着すると、生体の体温により裏蓋14が加熱され、裏蓋14、導熱部材21、熱発電部材20、熱伝導可変部22、保持部材15、筐体11の順に熱が伝達される。この伝熱経路は二種類あり、熱伝導可変部22の熱伝達流体222を経由する場合と、流体223を経由する場合がある。
【0073】
図13に示すような流体制御部230の位置の場合、熱伝達流体222を経由する伝熱経路上の熱発電部材20a、20dは、熱伝導可変部22の熱抵抗R22は第一熱抵抗R22aであるため、熱源側位置と放熱側位置との温度差ΔTp(=Tp2−Tp1)を確保することができる。このため、熱発電部材20a、20dは温度差に起因した所定の発電量を確保することができる。同時に、流体223を経由する伝熱経路上の熱発電部材20b、20cは、流体223は第二熱抵抗値R22bであるため、熱源側位置と放熱側位置との温度差ΔTpがほぼゼロである。このため、熱発電部材20b、20cは発電しない状態である。
【0074】
この後、流体制御部230が回転し、熱伝達流体222が熱伝導可変部22内部で移動すると、伝熱経路上に熱伝達流体222が存在する熱発電部材が発電し、流体223が経路上に存在する熱発電部材が発電しなくなる。
【0075】
このため、流体制御部230の回転により、発電する熱発電部材を順次、切り替えることができる。これにより、複数ある熱発電部材のいずれかが所定の発電量を供給することができる。また、上記構造によれば、流体制御部230の回転は時間一定であるため、熱発電部材が熱飽和する前に、次の熱発電部材が発電するよう切り替えるような回転速度設定も可能である。このため、熱発電部材の発電量をより向上させて供給することが可能となる。
【0076】
なお、上述した実施の形態においては、4つの熱発電部材で構成したが、数の変更は可能である。また、熱伝達流体222と流体223の容積は同等と図示したが、熱発電部材の数や熱飽和する時間に応じて、熱伝達流体222と流体223の容積の比率を変更して構成することも可能である。
また、流体制御部230の回転軸234を針駆動部32と接続し、回転トルクを供給することとしたが、これに限らない。例えば、回転軸234に偏心した重錘を取り付け、姿勢によって重錘が移動し、回転軸234に回転トルクを供給するように構成することも可能である。
【0077】
なお、上述した実施の形態においては、熱発電携帯機器を指針部17によるアナログ表示の腕時計としたが、これに限定されず、例えば液晶表示などによるデジタル表示の腕時計であってもよい。
また、上述した実施の形態においては、熱発電携帯機器を人体に装着される腕時計としたが、これに限定されず、人体や動物に装着される携帯型の電子機器として、例えば、ヘッドフォンや、立体視用の眼鏡や、脈拍と心拍数と呼吸数と血圧と体温となどの生体情報を計測して計測結果を無線送信する電子機器などであってもよい。
【0078】
なお、本発明の技術範囲は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、上述した実施形態で挙げた構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。また、上述した各実施形態を適宜組み合わせて採用することも可能である。
【符号の説明】
【0079】
100、200 熱発電携帯機器
11 筐体
14 裏蓋
15 保持部材
17a 秒針
17b 分針
17c 時針
20、20a、20b、20c、20d 熱発電部材
22 熱伝導可変部
221a、221b 中空部
222 熱伝達流体
223 流体
224 隔壁
225a 流出口
225b 流入口
226 一方向弁
230 流体制御部
231 バルブ
232 重錘
233 凸部
234 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源と放熱先との間における熱源側位置の温度と放熱側位置の温度との温度差に基づき発電する熱発電部材と、
内部空間と、
前記内部空間で移動可能な第一流体とを有する熱伝導可変部と、を備え、
前記熱伝導可変部は、前記熱源と前記放熱先との間の伝熱経路における前記第一流体の経由有無により、前記伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗を変更することを特徴とする熱発電携帯機器。
【請求項2】
前記熱伝導可変部は、前記伝熱経路における前記第一流体の有無により、前記伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗が第1熱抵抗になる状態と、前記伝熱経路の少なくとも一部の熱抵抗が前記第1熱抵抗とは異なる第2熱抵抗になる状態とを切り替え可能であることを特徴とする請求項1に記載の熱発電携帯機器。
【請求項3】
前記熱伝導可変部の内部空間に、前記第一流体と第二流体とを備え、
前記第二流体は、前記第一流体に比べ熱伝導率が低く、密度が異なり、前記第一流体と溶解しないことを特徴とする請求項1または2に記載の熱発電携帯機器。
【請求項4】
前記熱伝導可変部の姿勢変化により、前記第一流体を移動させ、前記第1熱抵抗と前記第2熱抵抗とを切り替えることを特徴とする請求項2または3に記載の熱発電携帯機器。
【請求項5】
前記熱伝導可変部は直線移動もしくは回転移動可能な流体制御部を備え、
前記流体制御部の移動により前記第一流体の移動を制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の熱発電携帯機器。
【請求項6】
前記熱伝導可変部は可撓体からなり、前記流体制御部が前記熱伝導可変部を押圧して変形させたまま移動することで前記第一流体を移動させることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の熱発電携帯機器。
【請求項7】
前記第一流体は磁性流体であり、磁石で構成された前記流体制御部の移動に伴い、前記第一流体を移動することを特徴とする請求項2に記載の熱発電携帯機器。
【請求項8】
前記熱伝導可変部は、
複数の中空部と、
前記中空部それぞれに設けられた二つの開口部と、
前記開口部に各々異なる向きで設けられた一方向弁と、を備え、
前記流体制御部は移動可能なバルブと重錘とを有し、
前記流体制御部の姿勢変化に伴って前記バルブが移動することで、前記中空部内部の前記第一流体が異なる前記中空部へと移動することを特徴とする請求項4に記載の熱発電携帯機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−96819(P2013−96819A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239418(P2011−239418)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】