説明

燃料タンク

【課題】 燃料タンクを提供する。
【解決手段】 本発明は、支持機能を提供する補強装置(5、45)が中に配置された空洞(2)を有する燃料タンクに関する。高度な安定性を有し、製造するのにコスト効率のよい燃料タンクを提供するために、補強装置(5、45)は、圧縮力および引張り力を両方とも吸収できるように具現化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持機能を提供する補強装置が中に配置された空洞を有する燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なタイプの燃料タンクは、米国特許の下記特許文献1、下記特許文献2、下記特許文献3、独国特許出願公開の下記特許文献4、および英国特許出願公開の下記特許文献5から公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,455,190B2号明細書
【特許文献2】米国特許第6,338,420B1号明細書
【特許文献3】米国特許第6,135,306号明細書
【特許文献4】DE 10 2008 009 829A1号明細書
【特許文献5】GB 2 236 288A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高度な安定性を有し、コスト効率よく製造できる、請求項1の前提部分による燃料タンクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、支持機能を提供する補強装置が中に配置された空洞を有する燃料タンクに対して、この補強装置が、圧縮力および引張り力の両方を吸収することができるように具現化されることで達成される。燃料タンク内の空洞は、燃料を収容する働きをする。使用条件に調整されて、また、周囲から影響を受けて、空洞内の圧力は、特に、温度変動により、多かれ少なかれ変化することがある。燃料タンクは、好ましくはプラスチックでできた加圧タンクとして具現化され、例えば、ハイブリッド車の加圧タンクシステム内に配置される。本発明による補強装置は、空洞内が圧力不足の場合も圧力超過の場合も、燃料タンクの安定性を大幅に改善することができる。
【0006】
燃料タンクの好ましい例示的な実施形態は、補強装置が、互いに対向して横たわる、燃料タンクの2つの壁部間に配置された少なくとも1つの引張り/圧縮支柱を含むことを特徴とする。引張り/圧縮支柱は、互いに対向して横たわる、燃料タンクの2つの壁部を貫通するのが好ましい。
【0007】
燃料タンクのさらに好ましい例示的な実施形態は、引張り/圧縮支柱が、スプリング装置を用いて、互いに対向して横たわる、燃料タンクの2つの壁部間にクランプされることを特徴とする。互いに対向して横たわる、燃料タンクの2つの壁部は、スプリング装置を用いて互いに遠ざかる方向に予圧される。これは、燃料タンクの2つの壁部間の所定の間隔が、空洞内が圧力不足の場合でも変化しないことを保証する。
【0008】
燃料タンクのさらに好ましい例示的な実施形態は、スプリング装置が少なくとも1つの圧縮スプリングを含むことを特徴とする。圧縮スプリングは、例えば、圧縮コイルスプリングとして具現化される。複数の圧縮スプリングを並列におよび/または直列に連結することもできる。
【0009】
燃料タンクのさらに好ましい例示的な実施形態は、スプリング装置が、2つの内側プレート間にクランプされることを特徴とする。内側プレートは、スプリング装置を支持し、スプリング力を面で燃料タンクにかけるように機能する。内側プレートは、燃料タンクと同じプラスチック材料で形成することができる。
【0010】
燃料タンクのさらに好ましい例示的な実施形態は、互いに対向して横たわる、燃料タンクの2つの壁部(8、9、48)が、それぞれ内側プレートと外側プレートとの間に配置されることを特徴とする。内側プレートおよび外側プレートは、燃料タンクと同じ材料で形成でき、特に、燃料タンクを保護する働きをする。内側プレートおよび外側プレートはまた、燃料タンクとは異なる材料で形成することもできる。
【0011】
燃料タンクのさらに好ましい例示的な実施形態は、軸方向固定手段が、引張り/圧縮支柱の各端部に設けられることを特徴とする。軸方向固定手段は、空洞内が圧力超過になった場合に、互いに対向して横たわる2つの壁部が、互いから遠ざかることを防止する。引張り力が、軸方向固定手段によって引張り/圧縮支柱にかけられる。
【0012】
燃料タンクのさらに好ましい例示的な実施形態は、互いに対向して横たわる、燃料タンクの2つの壁部が、引張り/圧縮支柱が貫通する領域で、それぞれ蓋によって外側から封止されることを特徴とする。蓋は、プラスチックで形成されるのが好ましく、燃料タンクの壁部に実質的に接合された形で連結されるのが好ましい。
【0013】
燃料タンクのさらに好ましい例示的な実施形態は、引張り/圧縮支柱が金属で形成されることを特徴とする。その結果、燃料タンクの高度な安定を容易に達成できる。
【0014】
燃料タンクのさらに好ましい例示的な実施形態は、燃料タンクがプラスチック製加圧タンクとして具現化されることを特徴とする。プラスチック製加圧タンクは、ブロー成形部品であるのが好ましい。
【0015】
本発明のさらなる利点、特徴、および細部が、種々の例示的実施形態が図面を参照して詳細に説明される下記の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による燃料タンクのきわめて簡略化した断面図である。
【図2】図1の細部の詳細断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、燃料を収容する空洞2を有する燃料タンク1をきわめて簡略化した形の断面図で示している。燃料タンク1は、空洞2内に補強装置5を備えたプラスチック製容器4を含む。プラスチック製容器4は、ブロー成形によって製造されるのが好ましい。
【0018】
補強装置5は、互いに対向して横たわる、プラスチック製容器4または燃料タンク1の2つの壁部8、9間に配置され、引張り/圧縮支柱10を含む。引張り/圧縮支柱10は、2つの壁部8、9を貫通し、その結果、引張り/圧縮支柱10の自由端は、プラスチック製容器4の外側に配置されている。
【0019】
引張り/圧縮支柱10の自由端は、燃料タンク1の壁部8、9に形成されたトラフ状凹部に配置されるのが好ましい。壁部8、9は、凹部を形成するために、内側に突出するように湾曲している。
【0020】
本発明による補強装置5は、また、2つの内側プレート18、19間にクランプされたスプリング装置14を含む。内側プレート18、19はスプリングプレートである。内側プレート18は、壁部8の内側に押し付けられている。内側プレート19は、壁部9の内側に押し付けられている。
【0021】
壁部8、9は、それぞれ、割り当てられた内側プレート18と外側プレート21との間、および内側プレート19と外側プレート22との間に配置されている。外側プレート21、22は、基本的に、内側プレート18、19と同じ形態を有する。引張り/圧縮支柱10は、内側プレート18、19、壁部8、9、および外側プレート21、22を貫通している。
【0022】
軸方向固定手段23、24は、空洞2から突出した、引張り/圧縮支柱10の各自由端に設けられている。軸方向固定手段23、24は、燃料タンク1の空洞2が圧力超過になった場合に、壁部8、9が互いから遠ざかるのを防止する。
【0023】
例えば、圧縮コイルスプリングとして具現化されたスプリング装置14は、燃料タンク1の空洞2が圧力不足になった場合に、2つの壁部8、9が互いに近づかないように、2つの壁部8、9間にクランプされている。
【0024】
2つの壁部8、9は、燃料タンク1の空洞2が圧力不足の場合も、圧力超過の場合も、本発明による補強装置5を用いて一定の間隔に保持される。
【0025】
燃料タンク1を封止するために、蓋31、32が壁部8、9の外側に溶接され、これらの蓋31、32は、引張り/圧縮支柱10の自由端と、引張り/圧縮支柱10の、プラスチック製容器4および外側プレート21、22を貫通した部分とを囲む。
【0026】
図2は、燃料タンク41の細部を断面図で示している。燃料タンク41は、図1の燃料タンク1と同様に、プラスチック製の加圧タンク容器44を有するプラスチック製加圧タンクとして具現化されている。補強装置45は、燃料タンク41内に配置されている。
【0027】
図2では、補強装置45の一方の端部だけが、プラスチック製加圧タンク容器44の壁部48に示されている。補強装置45は、引張り/圧縮支柱50およびスプリング装置54を含む。スプリング装置54は、内側プレート58に支持された圧縮コイルスプリング55を含む。
【0028】
代替案として、または追加として、スプリング装置54は、内側プレート58に押し当てて予圧された第2の圧縮コイルスプリング56を含む。圧縮コイルスプリング55は、圧縮コイルスプリング56の内側に配置されている。2つの圧縮コイルスプリング55、56は、引張り/圧縮支柱50を囲んで延在している。
【0029】
内側プレート58は、スプリング装置54用のスプリングプレートである。壁部48は、内側プレート58と外側プレート61との間に配置されている。図2に示す引張り/圧縮支柱50の端部は、内側プレート58、壁部48、および外側プレート61を通って外側に延びている。
【0030】
軸方向固定手段63が、引張り/圧縮支柱50の自由端に設けられている。壁部48は、内側プレート58および外側プレート61とともに、軸方向固定手段63とスプリング装置54との間にクランプされている。
【0031】
引張り/圧縮支柱50の外側に突出した自由端は、外側プレート61および軸方向固定手段63とともに、プラスチック製容器44内の凹部に配置され、この凹部は、封止形成効果を持つ蓋71によって覆われている。蓋71は、実質的に接合された形で、特に溶接されて、プラスチック製容器44に連結されるのが好ましい。
【0032】
プラスチック製容器44、内側プレート58、外側プレート61、および/または蓋71は、例えば、高密度ポリエチレンから製造される。特に、プラスチック製容器44は、多層で具現化されるのが好ましい。所望しない騒音、または所望しない摩耗を回避するために、有利にも、外側プレート61を予圧することができる。
【0033】
圧力不足の場合、スプリング装置54は、内側プレート18、19、58を壁部8、9、48に押し付ける。その結果、所望しない振動音が防止される。壁部8、9、48の間の特定の間隔を維持することにより、壁部8、9、48の相対運動に起因する、プラスチック製容器4、44の所望しない摩耗を防止することが可能になる。蓋31、32、71は、所望しない漏れを防止する。
【0034】
事故の場合、特に、衝突の場合に、プラスチック製容器4、44の変形能力は、本発明による補強装置5、45によって不利な影響を受けないか、または取るに足らない程度だけ不利な影響を受ける。
【符号の説明】
【0035】
1 燃料タンク
2 空洞
4 プラスチック製容器
5 補強装置
8 壁部
9 壁部
10 引張り/圧縮支柱
14 スプリング装置
18 内側プレート
19 内側プレート
21 外側プレート
22 外側プレート
23 軸方向固定手段
24 軸方向固定手段
31 蓋
32 蓋
41 燃料タンク
44 プラスチック製容器
45 補強装置
48 壁部
50 引張り/圧縮支柱
54 スプリング装置
55 圧縮スプリングコイル
56 圧縮スプリングコイル
58 内側プレート
61 外側プレート
63 軸方向固定手段
71 蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持機能を提供する補強装置(5、45)が中に配置された空洞(2)を有する燃料タンクであって、前記補強装置(5、45)が、圧縮力および引張り力の両方を吸収できるように具現化されることを特徴とする燃料タンク(1、41)。
【請求項2】
前記補強装置(5、45)は、互いに対向して横たわる、前記燃料タンク(1、41)の2つの壁部(8、9、48)間に配置された少なくとも1つの引張り/圧縮支柱(10、50)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の燃料タンク(1、41)。
【請求項3】
前記引張り/圧縮支柱(10、50)は、スプリング装置(14、54)を利用して、互いに対向して横たわる、前記燃料タンク(1、41)の前記2つの壁部(8、9、48)間にクランプされることを特徴とする、請求項2に記載の燃料タンク(1、41)。
【請求項4】
前記スプリング装置(14、54)は、少なくとも1つの圧縮スプリング(55、56)を含むことを特徴とする、請求項3に記載の燃料タンク。
【請求項5】
前記スプリング装置(14、54)は、2つの内側プレート(18、19、58)間にクランプされることを特徴とする、請求項3または請求項4に記載の燃料タンク。
【請求項6】
互いに対向して横たわる、前記燃料タンク(1、41)の前記2つの壁部(8、9、48)は、それぞれ内側プレート(18)と外側プレート(21)との間、内側プレート(19)と外側プレート(22)との間、および内側プレート(58)と外側プレート(61)との間に配置されることを特徴とする、請求項5に記載の燃料タンク(1、41)。
【請求項7】
軸方向固定手段(23、24、63)が、前記引張り/圧縮支柱(10、50)の各端部に設けられることを特徴とする、請求項2乃至6のいずれか一項に記載の燃料タンク。
【請求項8】
互いに対向して横たわる、前記燃料タンク(1、41)の前記2つの壁部(8、9、48)は、前記引張り/圧縮支柱(10、50)が貫通する領域で、それぞれ蓋(31、32、71)によって外側から封止されることを特徴とする、請求項2乃至7のいずれか一項に記載の燃料タンク(1、41)。
【請求項9】
前記引張り/圧縮支柱(10、50)は金属で形成されることを特徴とする、請求項2乃至8のいずれか一項に記載の燃料タンク。
【請求項10】
プラスチック製加圧タンクとして具現化されることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の燃料タンク(1、41)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−35914(P2012−35914A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−162972(P2011−162972)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(510238096)ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト (63)
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D−70435 Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】