説明

燃料噴射弁

【課題】スリット状噴孔を有する燃料噴射弁において、噴霧の拡散を向上する。
【解決手段】エンジンの燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射弁101において、ノズルボディ211の弁座部23の内側に、燃料が溜まるサック部26が形成される。サック部26には、傾斜した2つのスリット状噴孔71、72が形成される。第1スリット状噴孔71は、入口がサック部26の底壁261に形成される。第2スリット状噴孔72は、入口が第1スリット状噴孔71の入口よりもニードル301側のサック部26の内側壁262に形成される。これにより、スリット状噴孔を1つしか有しない燃料噴射弁に比べ、噴霧の拡散範囲を拡げ、噴霧の拡散を向上することができる。また、サック中心軸Zsとニードル中心軸Znとをオフセットさせることで、2つのスリット状噴孔71、72に流入する燃料量のバランスをニードルリフト量に応じて変化させ、さらに噴霧を拡散させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を噴射供給する燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンの燃焼室等に燃料を噴射供給する燃料噴射弁において噴孔の開口形状をスリット状としたものが知られている(特許文献1、2)。この燃料噴射弁では、スリット状噴孔から噴射された燃料は、スリット状噴孔の近くでは偏平な液膜となる。この液膜は、スリット状噴孔から遠ざかるに従ってその厚みを減少すると共に、周囲の空気との接触面積を増大するため、周囲の空気によって液膜が引きちぎられ、急速に微細な噴霧へと変化する。このため、円形状の噴孔に比べ、噴霧の微粒化が促進される。また、スリット幅Wおよび長さLによって噴霧の到達距離および貫徹力を適切に調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03−78562号公報
【特許文献2】特開2003−314359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1、2に記載された燃料噴射弁は、1つのスリット状噴孔を有するものであり、燃料通路先端のサック部からスリット状噴孔の入口に流入する燃料の流れは、ニードルリフト量によって大きく変化することはない。したがって、スリット状噴孔から噴射される噴霧の角度(噴射方向)はほぼ一定に保たれる。そのため、噴霧を十分に拡散させることができないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、スリット状噴孔を有する燃料噴射弁において、噴霧の拡散を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の燃料噴射弁は、弁ボディおよびニードルを備える。
弁ボディは、軸方向の一端から他端に連通する燃料通路、燃料通路の内壁に形成される弁座部、弁座部の燃料流れ方向の下流側に形成され燃料が溜まるサック部、及び、サック部の底壁または内側壁と外壁とを連通する複数のスリット状噴孔を有する。
ニードルは、弁ボディの内部に軸方向に往復移動可能に収容され、先端部が弁座部に当接したときサック部への燃料の流入を遮断する。
【0007】
複数のスリット状噴孔は、サック部の底壁に入口が形成される第1スリット状噴孔、及び、第1スリット状噴孔の入口よりもニードル側のサック部の内側壁に入口が形成される第2スリット状噴孔を含む。第1スリット状噴孔および第2スリット状噴孔は、入口から出口に向かって、弁ボディの中心軸に対し第2スリット状噴孔の入口が形成される側に傾斜する。
【0008】
このように、請求項1に記載の燃料噴射弁は、第1スリット状噴孔および第2スリット状噴孔を含む複数のスリット状噴孔を有し、第1スリット状噴孔および第2スリット状噴孔は、弁ボディの中心軸(以下、「ボディ中心軸」という。)に対し互いに同じ側に傾斜する。したがって、第1スリット状噴孔および第2スリット状噴孔から噴射される燃料噴霧は、ボディ中心軸に対して一方の側に傾斜する。
【0009】
すなわち、この燃料噴射弁は、燃料の噴射方向に一定の指向性を確保しつつ、スリット状噴孔を1つしか有しない従来技術の燃料噴射弁に比べ、噴霧の拡散範囲を拡げ、噴霧の拡散を向上することができる。
なお、弁ボディは、上記の第1スリット状噴孔および第2スリット状噴孔の他に、3つ目以上のスリット状噴孔、又はスリット状でない円形、楕円形等の噴孔を有してもよい。
【0010】
請求項2に記載の発明によると、サック部の中心軸であるサック中心軸は、ニードルの中心軸であるニードル中心軸に対し、第2スリット状噴孔の入口と反対側にオフセットしている。そして、ニードルの先端部が弁座部に当接した状態から全開状態にいたるまでのニードルリフト量の変化に応じて、燃料通路から第1スリット状噴孔および第2スリット状噴孔に流入する燃料量のバランスが変化する。
【0011】
燃料噴射弁の開弁時には、ニードルの先端部が弁座部に当接した状態から全開(フルリフト)状態にいたるまでニードルリフト量が逐次変化する。このとき、ニードルの先端部と弁ボディの弁座部との間の燃料通路の幅により燃料の流れが変わる。そこで、この燃料の流れの変化を利用し、第1スリット状噴孔および第2スリット状噴孔に流入する燃料量のバランスをニードルリフト量に応じて変化させることで、噴霧の方向を動かし、さらに噴霧を拡散させることができる。
【0012】
そのための特徴的構成の一つが、サック中心軸がニードル中心軸に対し、第2スリット状噴孔の入口と反対側にオフセットする構成とすることである。
この構成では、リフト量の比較的小さい小リフト時には、弁座部を流れ落ちる燃料は、直接サック部の底壁に流下する。そのため、サック部の底壁に入口が形成される第1スリット状噴孔に流入しやすく、サック部の内側壁に入口が形成される第2スリット状噴孔には流入しにくい。
一方、リフト量の比較的大きい大リフト時には、サック部の内側壁に沿って第2スリット状噴孔に流入する燃料の割合が相対的に増加する。
このメカニズムについては、実施形態の説明で図面を参照しながら詳しく説明する。
【0013】
請求項2に記載の発明においてサック中心軸とニードル中心軸とをオフセットする構成には、ボディ中心軸との関係に基づいて、大きく2つの構成が考えられる。
1つ目は、請求項3に記載の発明のように「ニードル中心軸はボディ中心軸に一致し、サック中心軸はボディ中心軸に対し第2スリット状噴孔の入口と反対側にオフセットしている」構成である。2つ目は、その逆に、「サック中心軸はボディ中心軸に一致し、ニードル中心軸はボディ中心軸に対し第2スリット状噴孔の入口側にオフセットしている」構成である。
【0014】
ここで、請求項3に記載の発明の構成を採用する場合、弁ボディの底部の加工において偏芯加工する部分がサック部だけであるため加工が比較的容易である。また、ニードル中心軸とボディ中心軸とが一致しており、ニードルの先端部と弁座部とを同軸にすることができる。よって、閉弁動作が安定するため有利である。
【0015】
さらに、請求項4に記載の発明によると、請求項3に記載の発明における弁ボディは、サック中心軸のオフセット側と反対側の弁座部とサック部との境界部に、ニードルの先端部との間の燃料通路の幅を狭めるように張り出す台部が設けられる。
これにより、小リフト時に、特に第2スリット状噴孔の入口側の弁座部を流れ落ちる燃料は、台部をジャンプ台として流れの前方に飛び出すため、サック部の内側壁に沿って流れ落ちることが抑制される。よって、より第1スリット状噴孔に流入しやすく、第2スリット状噴孔に流入しにくくすることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の発明に対し、「第1スリット状噴孔および第2スリット状噴孔に流入する燃料量のバランスをニードルリフト量に応じて変化させる」ための別の特徴的構成を示すものである。
請求項5に記載の発明によると、弁ボディは、第1スリット状噴孔の入口に対し第2スリット状噴孔の入口と反対側のサック部の底壁に、第1スリット状噴孔の入口よりもニードル側に位置する段差部が設けられる。この発明では、サック中心軸とニードル中心軸とは同軸であってよい。
【0017】
この構成では、リフト量の比較的小さい小リフト時には、弁座部を流れ落ちる燃料は、直接サック部の底壁に流下し、第1スリット状噴孔に流入しやすい。一方、リフト量の比較的大きい大リフト時には、サック部の第2スリット状噴孔の入口と反対側の内側壁に沿って流れ落ちる燃料の流れが、段差部によって第1スリット状噴孔の入口を飛び越えるようにすることで、第1スリット状噴孔に流入しにくくしている。そのため、サック部の内側壁に沿って第2スリット状噴孔に流入する燃料の割合が相対的に増加する。
このメカニズムについても、実施形態の説明で図面を参照しながら詳しく説明する。
【0018】
加えて、請求項6に記載の発明によると、上記請求項1〜5に記載の燃料噴射弁に共通して、第1スリット状噴孔のボディ中心軸に対する角度は、第2スリット状噴孔のボディ中心軸に対する角度よりも相対的に大きく形成される。言い換えれば、ボディ中心軸を垂直方向に視たとき、第1スリット状噴孔は相対的に勾配が小さく、第2スリット状噴孔は相対的に勾配が大きく形成される。したがって、第1スリット状噴孔と第2スリット状噴孔とは、入口から出口に向かって互いに近づくように形成される。
また、第1スリット状噴孔の出口と第2スリット状噴孔の出口とは、重複する位置に形成される。
【0019】
請求項6に記載の発明は、さらに「微粒化の促進」を課題とする。そもそもスリット状噴孔は、噴霧が液膜を形成することで空気との接触面積が増大し、周囲の空気によって液膜が引きちぎられるため、一般的な円形状の噴孔に比べ、微粒化の促進に有利である。
それに加え、請求項6に記載の発明によると、スリット状噴孔の入口で形成されたキャビテーション、すなわち、「一旦気化し再び液化した燃料」が重複した出口で衝突して崩壊する。このキャビテーションの崩壊エネルギーによって噴霧がさらに拡散し、微粒化が促進される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態による燃料噴射弁の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による燃料噴射弁をエンジンに搭載した状態の模式図である。
【図3】(a):図1の先端部拡大図である。 (b):(a)のb矢視図である。 (c):(a)のc−c断面図である。 (d):(a)のd−d断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による燃料噴射弁の(a)小リフト時、(b)大リフト時の燃料噴射状態を示す模式図である。
【図5】本発明の第1実施形態による燃料噴射弁と比較例の燃料噴射弁との噴霧の拡散(噴霧長の短縮)効果を比較したグラフである。
【図6】本発明の第1実施形態による燃料噴射弁において、キャビテーションの衝突による微粒化効果を説明する模式図である。
【図7】本発明の第2実施形態による燃料噴射弁の(a)小リフト時、(b)大リフト時の燃料噴射状態を示す模式図である。
【図8】本発明の第3実施形態による燃料噴射弁の(a)小リフト時、(b)大リフト時の燃料噴射状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明による燃料噴射弁をエンジンに搭載した実施形態について図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態による燃料噴射弁について、図1〜図6を参照して説明する。
図2は、燃料噴射弁101を搭載した直噴式ガソリンエンジン(以下、単にエンジンという)60の全体構成を示す。
【0022】
図2に示すように、燃料噴射弁101は、シリンダヘッド61に取り付けられ、燃焼室64に直接燃料を噴射する。燃焼室64は、シリンダヘッド61の壁面、シリンダブロック62の内壁面65、及びピストン66の上端面67から形成される。燃料噴射弁101には、図示しない燃料供給ポンプから燃料噴射圧力相当に加圧された燃料が供給される。
【0023】
燃料噴射弁101は、シリンダヘッド61のうち吸気バルブ68側の角部に、燃焼室64の軸に対して斜め向きに取り付けられる。また、シリンダヘッド61のセンター位置には、燃料と混合された可燃空気に着火するための点火装置63が搭載されている。
【0024】
燃料噴射弁101は、ピストン66の上端面67に向いた方向、すなわち軸Z方向に対して傾斜した方向に燃料を噴射する。本実施形態では、燃料噴射弁101の先端部に形成された2つのスリット状噴孔71、72から燃料が噴射される。ここで、燃料噴射弁の貫徹力が大きく噴霧長が長いと、噴霧がシリンダ壁面65やピストン66の上端面67に直接付着して、PM(粒子状物質)やデポジットを生成しやすくなる。そのため、噴霧長を可及的に短くすることが望まれる。そこで、本実施形態の燃料噴射弁10は、噴霧の拡散を向上しつつ噴霧長を短くするように、スリット状噴孔の構成に特徴を有している。
【0025】
次に、燃料噴射弁101の基本構成について主に図1、図3を参照して説明する。以下の説明では、図1の上側を「上」、図1の下側を「下」として表す。
図1に示すように、燃料噴射弁101のハウジング11は筒状に形成されている。ハウジング11は、第一磁性部12、非磁性部13および第二磁性部14を有している。非磁性部13は、第一磁性部12と第二磁性部14との磁気的な短絡を防止する。第一磁性部12、非磁性部13および第二磁性部14は、例えばレーザ溶接等により一体に接続されている。
【0026】
ハウジング11の軸方向の上側の端部には、燃料入口16を有する入口部材15が圧入等により固定されている。燃料入口16には、燃料供給ポンプ(図示しない)から燃料が供給される。燃料入口16に供給された燃料は、燃料フィルタ17によって異物が除去され、ハウジング11の内部に流入する。
【0027】
ハウジング11の下側の端部には、筒状のノズルホルダ20が接続されている。また、ノズルホルダ20の下側の端部には、有底筒状のノズルボディ211が、圧入あるいは溶接等によってノズルホルダ20に固定されている。本実施形態では、ハウジング11、ノズルホルダ20およびノズルボディ211が、特許請求の範囲に記載の「弁ボディ」に相当する。
ここで、ノズルボディ211の中心軸であるボディ中心軸Zbは、燃料噴射弁101全体の中心軸、すなわちハウジング11、駆動部40等の中心軸と同軸に設けられる。以下、ボディ中心軸Zbを、燃料噴射弁101全体の中心軸を代表するものとして扱う。
【0028】
ノズルボディ211は、先端側の穴底にテーパ状の弁座部23が形成される。また、弁座部23の径内側には、燃料が溜まる凹状のサック部26が形成される。サック部26には、ボディ中心軸Zbに対して傾斜した2つのスリット状噴孔71、72が形成される。サック部26およびスリット状噴孔71、72に関する詳細な構成については後述する。
ノズルボディ211の内壁とニードル301の外壁との間の空間は、燃料通路24を形成する。
【0029】
ニードル301は、「弁ボディ」を構成するハウジング11、ノズルホルダ20およびノズルボディ21の内部に、軸方向に往復移動可能に収容されている。
ニードル301は、軸部31、頭部32および先端部331から構成される。先端部331は、図3(a)に示すように、第1テーパ面34、第2テーパ面35および第3テーパ面36の3段階のテーパ面を有している。第1テーパ面34と第2テーパ面35との境界部は、シート部37を構成する。また、第1〜第3テーパ面34、35、36と弁座部23との間には、燃料通路24から接続する燃料通路25が形成される。
ニードル301が軸方向に往復移動することで、シート部37がノズルボディ21の弁座部23(図3参照)と当接または離間し、燃料通路25からサック部26への燃料の流通を遮断または許容する。
【0030】
ニードル301を駆動するための駆動部40は、スプール41、コイル42、固定コア43、プレートハウジング44および可動コア50を有している。
スプール41は、ハウジング11の径外側に設けられている。スプール41は、樹脂材で筒状に形成されており、周囲にコイル42が巻かれている。巻回されたコイル42の両端部は、コネクタ45の端子部46に電気的に接続されている。
ハウジング11を挟んでコイル42の径内側には固定コア43が設けられている。固定コア43は、例えば鉄等の磁性材料により筒状に形成され、ハウジング11に例えば圧入等によって固定されている。プレートハウジング44は、磁性材料から形成され、コイル42の径外側を覆っている。
【0031】
可動コア50は、固定コア43と同軸上に対向して設けられ、ハウジング11の径内側に軸方向へ往復移動可能である。可動コア50は、例えば鉄等の磁性材料から筒状に形成されている。可動コア50は、固定コア43とは反対側である下側に筒部51を有しており、筒部51には、ニードル301の頭部32が圧入されている。これにより、ニードル301と可動コア50とは一体に往復移動する。また、筒部51には、可動コア50の内部とニードル301の外方とを連通する複数の連通孔54が形成されている。
【0032】
可動コア50の固定コア43側の端部には、スプリング18が設けられている。スプリング18は、軸方向へ伸長する付勢力を有しており、スプリング18の両端部が可動コア50とアジャスティングパイプ19とに挟み込まれるように設置されている。スプリング18は、可動コア50およびニードル301を弁座部23に当接する方向へ付勢している。
アジャスティングパイプ19は、例えば圧入等により固定コア43に固定されており、圧入長を調整することにより、スプリング18の付勢力(荷重)が調整される。
また、燃料入口16からフィルタ17を経由してハウジング11の内部に流入した燃料は、アジャスティングパイプ19およびスプリング18の内側を通り、さらに連通孔54、及びニードル301の外側を経由して燃料通路24に至る。
【0033】
次に、本発明の特徴的構成であるノズルボディ211の先端部の構成について、図3を参照して詳細に説明する。
図3に示すように、第1スリット状噴孔71は、入口711がサック部26の底壁261に形成されている。第2スリット状噴孔72は、入口721が第1スリット状噴孔71の入口711よりもニードル301側のサック部26の内側壁262に形成されている。
第1スリット状噴孔71および第2スリット状噴孔72は、出口712、722の開口形状が幅W、長さLのスリット状である。長さLは、例えば幅Wの4.5倍以上である。
【0034】
第1スリット状噴孔71および第2スリット状噴孔72は、入口711、721から出口712、722に向かって、ボディ中心軸Zbに対し、第2スリット状噴孔72の入口721が形成される側に傾斜している。
また、本実施形態では、ニードル中心軸Znがボディ中心軸Zbに一致し、サック中心軸Zsがボディ中心軸Zbに対し、第2スリット状噴孔72の入口721と反対側(図3の左側)にオフセットしている。このオフセット量は、例えばニードル301のフルリフト量以上であることが好ましい。
【0035】
また、図3(a)のようにニードル中心軸Znを垂直方向に視たとき、第1スリット状噴孔71は相対的に勾配が小さく、第2スリット状噴孔72は相対的に勾配が大きい。したがって、第1スリット状噴孔71と第2スリット状噴孔72とは、入口711、721から出口712、722に向かって互いに近づく。
特に本実施形態では、第1スリット状噴孔71の出口712と第2スリット状噴孔72の出口722とは、重複した位置に形成されている。ここで、第1スリット状噴孔71と第2スリット状噴孔72との勾配の中心を通る仮想面を仮想中心面Joと表す。
【0036】
ノズルボディ211は、弁座部23がニードル中心軸Znに対称に形成され、サック部26がサック中心軸Zsに対称に形成される。そのため、弁座部23とサック部26との境界部は、図3(a)の左側では連続的であるのに対し、図3(a)の右側では不連続な台部263が形成される。台部263は、ニードル301の先端部331との間の燃料通路25の幅を狭めるように弁座部23から径内方向に張り出している。
【0037】
(作動)
次に、上記の構成による燃料噴射弁101の作動について説明する。
コイル42への通電が停止されているとき、固定コア43と可動コア50との間に磁気吸引力は発生しない。したがって、可動コア50およびニードル301は、スプリング18の付勢力によって下方に押圧される。そして、ニードル301のシート部37が弁座部23に当接し、スリット状噴孔71、72からの燃料噴射が遮断される。
【0038】
閉弁状態からコイル42に通電すると、コイル42に発生した磁界により磁気回路が形成される。これにより、固定コア43と可動コア50との間には磁気吸引力が発生する。
固定コア43と可動コア50との間に発生する磁気吸引力がスプリング18の付勢力よりも大きくなると、可動コア50およびニードル301は、上方への移動を開始する。その結果、ニードル301のシート部37は、弁座部23から離間する。
【0039】
燃料入口16からフィルタ17を経由して燃料噴射弁101の内部へ流入した燃料は、入口部材15の内側、アジャスティングパイプ19の内側、固定コア43の内側、可動コア50の内側、連通孔54、ニードル301の外側を順次経由して、燃料通路24に至る。燃料通路24の燃料は、ニードル301のシート部37と弁座部23との間の燃料通路25を経由してサック部26へ流入し、スリット状噴孔71、72から噴射される。
【0040】
このとき、以下に述べるように、本実施形態の燃料噴射弁101は、ニードル301のリフト量に応じて燃料が噴射される方向が変化し、リフト期間全体を通じての噴霧の拡散範囲が拡大されるとともに、噴霧長が短縮される。これにより、噴霧がシリンダ壁面65やピストン66の上端面67に直接付着することによるPM(粒子状物質)やデポジットの生成が抑制される。
【0041】
開弁状態からコイル42への通電を停止すると、固定コア43と可動コア50との間の磁気吸引力は消失していく。そして、磁気吸引力がスプリング18の付勢力よりも小さくなると、可動コア50およびニードル301は、スプリング18の付勢力によって下方に移動する。そして、ニードル301のシート部37が再び弁座部23に当接し、燃料通路25とサック部26との間の燃料の流れが遮断されて、燃料噴射は終了する。
【0042】
次に、燃料噴射弁101の開弁時の燃料噴射時における作用効果について、図4〜図6を参照して詳しく説明する。
図4(a)に示す小リフト時には、ニードル301の先端部331とノズルボディ212の弁座部23との間の比較的狭い燃料通路25を通過した比較的流速の速い燃料は、サック部26の中心付近の底壁261に流下し、第1スリット状噴孔71に流入しやすい。特に、サック中心軸Zsのオフセット側(図4の左側)の燃料流れFLaは、サック部26の中心までの距離が近いため、第1スリット状噴孔71に比較的容易に流入しやすい。
【0043】
一方、サック中心軸Zsの反オフセット側(図4の右側)の燃料流れFLbは、サック部26の中心までの距離が遠い。しかし、弁座部23とサック部26の内側壁262との境界部に形成された台部263は、台部263と先端部331との間の燃料通路25の幅を狭くし、燃料流れFLbの流速を速くする。しかも、弁座部23を流れ落ちる燃料は、台部263をジャンプ台として流れの前方に飛び出すことで、内側壁262に沿って流れ落ちることが抑制される。そのため、燃料流れFLbは、第2スリット状噴孔72には流入しにくくなる。
すなわち、小リフト時には、第1スリット状噴孔71への流入が第2スリット状噴孔72への流入に対して優先する。そのため、小リフト時の噴霧SLの平均面JLは、仮想中心面Joよりも上方に寄る。
【0044】
一方、図4(b)に示す大リフト時には、比較的広い燃料通路25を通過した比較的流速の遅い燃料は、サック部26の内側壁262に沿って流れ落ちる。すると、図4の右側では、内側壁262に沿って流れ落ちる燃料流れFHbのうち第2スリット状噴孔72に流入する燃料の割合が相対的に増加する。また、左側の内側壁262を流れ落ちる燃料流れFHaのうち底壁261の第1スリット状噴孔71の入口を通り越した燃料の一部も第2スリット状噴孔72に流入する。
すなわち、大リフト時には、第2スリット状噴孔72へ流入する燃料の割合が相対的に増加する。そのため、大リフト時の噴霧SHの平均面JHは、仮想中心面Joよりも下方に寄る。
【0045】
このように、燃料噴射弁101は、第1スリット状噴孔71および第2スリット状噴孔72に流入する燃料量のバランスをニードルリフト量に応じて変化させることで、噴霧の平均面の方向を動かし、噴霧を拡散させることができる。
ここで、図5を参照して、本実施形態の燃料噴射弁101による「噴霧の拡散効果」について比較例と対比して説明する。比較例の燃料噴射弁は、特許文献1、2に記載の従来技術に相当し、スリット状噴孔を1つしか有しないものである。
【0046】
図5(a)、(b)、(c)は、共通の時間軸における噴霧長、ニードルリフト量、駆動部40の通電オンオフの変化を示したものである。最初、燃料噴射弁10は閉弁している。時刻t0で駆動部40に通電されると、若干のタイムラグを経た時刻t1にて、ニードル301が上昇(リフト)し始める。これにより、燃料通路25からサック部26への通路が開放され、スリット状噴孔71、72からの噴霧が開始される。その後、ニードル301がリフトしている間(開弁中)、燃料の噴射が継続する。このとき、後から噴射された噴霧が先に噴射された噴霧に重畳することにより、次第に噴霧長が増加する。駆動部40への通電は、時刻t2にてオフとなる。
【0047】
ニードル301は、時刻t3で全開状態となる。そして、磁気吸引力が消失すると、ニードル301はスプリング18の付勢力により下降し始め、時刻t4で閉弁する。一方、新たな噴霧の累積が無くなるため、噴霧長は次第に一定値に落ち着く。
ここで、図5(a)に示すように、本実施形態の燃料噴射弁101は、比較例の燃料噴射弁に比べ、噴霧長を約30%短縮することができる。
【0048】
この理由は、以下のように説明することができる。すなわち、比較例の燃料噴射弁は、スリット状噴孔を1つしか有しておらず、しかも、ニードルリフト量の変化に応じて噴霧の方向が一定である。これに対し、本実施形態の燃料噴射弁は、噴霧方向の異なる2つのスリット状噴孔71、72を有しており、しかも、ニードルリフト量の変化に応じて噴霧の方向を変化させることができるため、噴霧の拡散範囲を拡大することができる。その結果、比較例に対し、噴霧長を短縮することができる。したがって、PMやデポジットの発生を抑制することができる。
【0049】
続いて、本実施形態の燃料噴射弁101による「噴霧の微粒化効果」について、図6を参照して説明する。図6は、スリット状噴孔71、72内での燃料のキャビテーション、すなわち、「一旦気化した燃料が再び液化する現象」を模式的に示したものである。
そもそもスリット状噴孔は、噴霧が液膜を形成することで空気との接触面積が増大し、周囲の空気によって液膜が引きちぎられるため、一般的な円形状の噴孔に比べ、微粒化の促進に有利である。
【0050】
それに加え、図6に示すように、本実施形態の燃料噴射弁101は、第1スリット状噴孔71の出口712と第2スリット状噴孔72の出口722とが重複する位置に形成されている。そのため、スリット状噴孔の入口711、721で形成されたキャビテーションCvが出口712、722で衝突して崩壊する。このキャビテーションCvの崩壊エネルギーによって噴霧がさらに拡散し、微粒化が促進される。
【0051】
次に、本発明の第2、第3実施形態の燃料噴射弁について、図7、図8の先端部拡大断面図を参照して説明する。これらの燃料噴射弁は、第1実施形態の燃料噴射弁101に対し、同様の第1スリット状噴孔71および第2スリット状噴孔72を有する点で共通し、ノズルボディ先端部またはニードル先端部の形状等の点で異なる。以下の実施形態の説明では、第1実施形態と実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
(第2実施形態)
第2実施形態の燃料噴射弁について、図7(a)(小リフト時)および図7(b)(大リフト時)を参照して説明する。
図7(a)、(b)に示すように、第2実施形態の燃料噴射弁102では、サック中心軸Zsがボディ中心軸Zbに一致し、ニードル中心軸Znがボディ中心軸Zbに対し、第2スリット状噴孔72の入口721側(図7の右側)にオフセットしている。その結果、サック中心軸Zsは、ニードル中心軸Znに対し、第2スリット状噴孔72の入口721と反対側にオフセットしている。
【0053】
ノズルボディ212の内壁は、図7の左側において変則形状に形成されている。すなわち、弁座部23の直上の下部内壁221は、対向する右側の内壁22とボディ中心軸Zb(サック中心軸Zs)に対して対称位置に形成されている。一方、下部内壁221よりも上側の上部内壁223は、対向する右側の内壁22とニードル中心軸Znに対して対称位置に、すなわち下部内壁221よりも内側に形成されている。下部内壁221と上部内壁223とは、スロープ部222を介して連続的に接続されている。
また、ニードル302の先端部332には、上部内壁223と対向する右側の内壁22との間の径に対応して摺動可能なガイド部38が形成されている。
【0054】
図7(a)にて破線で示す閉弁時には、スプリング18の付勢力Fdによってニードル302が下方に付勢されるため、ガイド部38がスロープ部222に沿って下部内壁221に対応する位置まで下がる。そのため、ニードル302の先端部332がボディ中心軸Zbと同軸になるよう案内された状態でシート部37が弁座部23に当接して閉弁する。
【0055】
駆動部40に通電され、電磁吸引力によってニードル302がリフトし始めると、ガイド部38がスロープ部222に沿って上昇し、先端部332の中心軸がボディ中心軸Zbからニードル中心軸Znに移行する(図7(a)に示す力Fuによる)。その後は、先端部332の中心がニードル中心軸Zn上を真っ直ぐリフトする(図7(b))。
【0056】
図7(a)に示す小リフト時には、ニードル302の先端部332とノズルボディ212の弁座部23との間の比較的狭い燃料通路25を通過した比較的流速の速い燃料は、サック部27の中心付近の底壁271に流下し、第1スリット状噴孔71に流入しやすい。このとき、左側の燃料流れFLcよりも燃料通路25が狭い右側の燃料流れFLdにおいては、特に第2スリット状噴孔72への直接的な流入が制限される。
すなわち、小リフト時には、第1スリット状噴孔71への流入が第2スリット状噴孔72への流入に対して優先する。そのため、小リフト時の噴霧SLの平均面JLは、仮想中心面Joよりも上方に寄る。
【0057】
一方、図7(b)に示す大リフト時には、比較的広い燃料通路25を通過した比較的流速の遅い燃料は、サック部27の内側壁272に沿って流れ落ちる。すると、図7の右側では、内側壁272に沿って流れ落ちた燃料流れFHdのうち第2スリット状噴孔72に流入する燃料の割合が相対的に増加する。また、左側の内側壁272を流れ落ちた燃料流れFHcのうち底壁271の第1スリット状噴孔71の入口を通り越した燃料の一部も第2スリット状噴孔72に流入する。
すなわち、大リフト時には、第2スリット状噴孔72へ流入する燃料の割合が相対的に増加する。そのため、大リフト時の噴霧SHの平均面JHは、仮想中心面Joよりも下方に寄る。
【0058】
このように、燃料噴射弁102は、第1実施形態の燃料噴射弁101と同様、第1スリット状噴孔71および第2スリット状噴孔72に流入する燃料量のバランスをニードルリフト量に応じて変化させることで、噴霧の平均面の方向を動かし、噴霧を拡散させることができる。また、第1スリット状噴孔71の出口と第2スリット状噴孔72の出口とは重複する位置に形成されているため、キャビテーションにおける燃料の衝突、崩壊により、燃料の微粒化が促進される。
【0059】
(第3実施形態)
第3実施形態の燃料噴射弁について、図8(a)(小リフト時)および図8(b)(大リフト時)を参照して説明する。
図8(a)、(b)に示すように、第3実施形態の燃料噴射弁103では、ノズルボディ213のサック部28のサック中心軸Zsとニードル301のニードル中心軸Znとは一致している。そして、サック部28の底壁281に段差部283が設けられることを特徴とする。
【0060】
段差部283は、サック部28の底壁281において、第1スリット状噴孔71の入口に対し第2スリット状噴孔72の入口と反対側(図8の左側)であって、第1スリット状噴孔71の入口よりもニードル301側(図8の上側)に位置するように設けられる。段差部283の段差の位置は、第1スリット状噴孔71の入口が段差の「かげ」になる程度に、第1スリット状噴孔71の入口の近くであることが好ましい。また、段差部283の段差の高さは、スリット状噴孔の幅W(図3参照)以上であることが好ましい。
【0061】
図8(a)に示す小リフト時には、ニードル301の先端部331とノズルボディ213の弁座部23との間の比較的狭い燃料通路25を通過した比較的流速の速い燃料は、サック部28の中心付近の底壁281に流下し、第1スリット状噴孔71に流入しやすい。このとき、図8の左側の燃料流れFLeと右側の燃料流れFLfとは、ほぼ同様である。
すなわち、小リフト時には、第1スリット状噴孔71への流入が第2スリット状噴孔72への流入に対して優先する。そのため、小リフト時の噴霧SLの平均面JLは、仮想中心面Joよりも上方に寄る。
【0062】
一方、図8(b)に示す大リフト時には、比較的広い燃料通路25を通過した比較的流速の遅い燃料は、サック部28の内側壁282に沿って流れ落ちる。すると、図8の左側では、内側壁282から段差部283に流れた燃料FHeは、第1スリット状噴孔71の入口を飛び越えサック中心軸Zsよりも右側に落ちる。そして、右側の燃料流れFHfと合流し第2スリット状噴孔72に流入する。
すなわち、大リフト時には、第2スリット状噴孔72へ流入する燃料の割合が相対的に増加する。そのため、大リフト時の噴霧SHの平均面JHは、仮想中心面Joよりも下方に寄る。
【0063】
よって、第1、第2実施形態と同様、第1スリット状噴孔71および第2スリット状噴孔72に流入する燃料量のバランスをニードルリフト量に応じて変化させることで、噴霧の平均面の方向を動かし、噴霧を拡散させることができる。また、第1スリット状噴孔71の出口と第2スリット状噴孔72の出口とは重複する位置に形成されているため、キャビテーションにおける燃料の衝突、崩壊により、燃料の微粒化が促進される。
【0064】
(その他の実施形態)
(ア)上記第1〜第3実施形態では、2つのスリット状噴孔71、72は、「入口から出口に向かって互いに近づき出口が重複するように」設けられる。この他、2つのスリット状噴孔は、「第1スリット状噴孔の入口がサック部の底壁に形成され、第2スリット状噴孔の入口が第1スリット状噴孔の入口よりもニードル側のサック部の内側壁に形成される」という要件さえ満たせば、下記のような位置関係で設けられることもできる。
・入口から出口に向かって互いに近づくが、出口は重複しない(噴孔基準面の角度と出口間の距離によっては噴射された噴霧同士が燃料噴射弁の外部で衝突する場合がある)。
・略平行である。
・入口から出口に向かって互いに遠ざかる。
【0065】
これらの場合、噴霧の衝突による微粒化効果はさほど得られないものの、スリット状噴孔を2つ有することにより、スリット状噴孔が1つしかない従来技術に比べ、噴霧を拡散させる効果を得ることができる。
さらに、上記の第1、第2実施形態のようにサック中心軸Zsとニードル中心軸Znとをオフセットさせたり、第3実施形態のようにサック部の底壁に段差部を設けたりすることで、ニードルリフト量によって2つのスリット状噴孔からの噴霧の分配を変化させ、拡散を向上させることができる。なお、この「ニードルリフト量によって2つのスリット状噴孔からの噴霧の分配を変化させる」ための構成は、必ずしも無くてもよい。
【0066】
(イ)第1、第2のスリット状噴孔に加え、3つ目以上のスリット状噴孔を設けてもよい。第3のスリット状噴孔は、例えば、上記の第1〜第3実施形態において、第1スリット状噴孔71と第2スリット状噴孔72との中間位置に設けてもよく、或いは、第2スリット状噴孔72よりもさらにニードル301等側に設けてもよい。第4、又はそれ以上のスリット状噴孔についても同様である。また、言うまでもなく、第1、第2のスリット状噴孔に加え、スリット状でない円形、楕円形等の噴孔が設けられてもよい。
【0067】
(ウ)スリット状噴孔が設けられるノズルボディ先端部以外の燃料噴射弁の構成については、上記第1実施形態の構成に限らず、どのような公知技術の燃料噴射弁の構成が適用されてもよい。また、燃料噴射弁は、直噴式のガソリンエンジンに限らず、ポート噴射式のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等に適用されてもよい。
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の形態で実施することができる。
【符号の説明】
【0068】
101〜103 ・・・燃料噴射弁、
11 ・・・ハウジング(弁ボディ)、
20 ・・・ノズルホルダ(弁ボディ)、
211〜213 ・・・ノズルボディ(弁ボディ)、
23 ・・・弁座部、
24 ・・・燃料通路、
25 ・・・燃料通路、
26、27、28・・・サック部、
261〜281 ・・・底壁、
262〜282 ・・・内側壁、
273・・・台部、
283・・・段差部、
301、302 ・・・ニードル、
331、332 ・・・先端部、
37 ・・・シート部
71 ・・・第1スリット状噴孔、
72 ・・・第2スリット状噴孔、
711、721 ・・・入口、
712、722 ・・・出口、
Jo ・・・仮想中心面、
JL ・・・(小リフト時の)平均面、
JH ・・・(大リフト時の)平均面、
SL ・・・(小リフト時の)噴霧、
SH ・・・(小リフト時の)噴霧,
Zb ・・・ボディ中心軸、
Zn ・・・ニードル中心軸、
Zs ・・・サック中心軸.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向の一端から他端に連通する燃料通路、前記燃料通路の内壁に形成される弁座部、前記弁座部の燃料流れ方向の下流側に形成され燃料が溜まるサック部、及び、前記サック部の底壁または内側壁と外壁とを連通する複数のスリット状噴孔を有する弁ボディと、
前記弁ボディの内部に軸方向に往復移動可能に収容され、先端部が前記弁座部に当接したとき前記サック部への燃料の流入を遮断するニードルと、
を備え、
前記複数のスリット状噴孔は、前記サック部の底壁に入口が形成される第1スリット状噴孔、及び、前記第1スリット状噴孔の入口よりも前記ニードル側の前記サック部の内側壁に入口が形成される第2スリット状噴孔を含み、
前記第1スリット状噴孔および前記第2スリット状噴孔は、入口から出口に向かって、前記弁ボディの中心軸に対し、前記第2スリット状噴孔の入口が形成される側に傾斜することを特徴とする燃料噴射弁。
【請求項2】
前記サック部の中心軸であるサック中心軸は、前記ニードルの中心軸であるニードル中心軸に対し、前記第2スリット状噴孔の入口と反対側にオフセットしており、
前記ニードルの先端部が前記弁座部に当接した状態から全開状態にいたるまでのニードルリフト量の変化に応じて、前記燃料通路から前記第1スリット状噴孔および前記第2スリット状噴孔に流入する燃料量のバランスが変化することを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射弁。
【請求項3】
前記ニードル中心軸は前記弁ボディの中心軸に一致し、前記サック中心軸は前記弁ボディの中心軸に対しオフセットしていることを特徴とする請求項2に記載の燃料噴射弁。
【請求項4】
前記弁ボディは、
前記サック中心軸のオフセット側と反対側の前記弁座部と前記サック部との境界部に、前記ニードルの先端部との間の燃料通路の幅を狭めるように張り出す台部が設けられることを特徴とする請求項3に記載の燃料噴射弁。
【請求項5】
前記弁ボディは、
前記第1スリット状噴孔の入口に対し前記第2スリット状噴孔の入口と反対側の前記サック部の底壁に、前記第1スリット状噴孔の入口よりも前記ニードル側に位置する段差部が設けられ、
前記ニードルの先端部が前記弁座部に当接した状態から全開状態にいたるまでのニードルリフト量の変化に応じて、前記燃料通路から前記第1スリット状噴孔および前記第2スリット状噴孔に流入する燃料量のバランスが変化することを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射弁。
【請求項6】
前記第1スリット状噴孔の前記弁ボディの中心軸に対する角度は、前記第2スリット状噴孔の前記弁ボディの中心軸に対する角度よりも相対的に大きく形成され、
前記第1スリット状噴孔の出口と前記第2スリット状噴孔の出口とは、重複する位置に形成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料噴射弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−96242(P2013−96242A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237122(P2011−237122)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】