説明

燃焼排ガス温度をプロセス制御手段として用いる濾過バッグハウスでの石炭火力発電所からの水銀捕獲

【課題】燃焼排気を含有する流れからの優れた水銀除去システムを提供する。
【解決手段】システム10及び関連方法100を提供する。本システム10は、流れが通ると水銀などの物質を流れから除去する濾過配置12を備える。本システム10は、濾過配置12の下流の流れ中の水銀レベルを感知し、感知した水銀レベルを示すシグナル88を与えるセンサ配置84を備える。本システム10は、感知した水銀レベルを示すシグナル88に応じて濾過配置12に進入する燃焼排気の温度を変更する調節可能な温度制御配置90を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に空気濾過、特に優れたフライアッシュ及び/又は水銀排出制御を実現する空気濾過に関する。
【背景技術】
【0002】
空気フィルターは、公知であり、石炭火力ボイラーなどの燃焼装置に付随する濾過配置内に用いられる。空気フィルターは、燃焼排気からフライアッシュなどの粒状物質を濾過することができる。
【0003】
ある種の燃焼燃料、例えば石炭は水銀(Hg)を含有することが知られている。燃焼装置から出、空気フィルターを通り抜ける水銀の量を制御することが望ましい。また、水銀を捕捉して燃焼排気から水銀を除去する効率を上げるために、活性炭などの吸着剤を燃焼排気ガス中に添加することが知られている。しかし、吸着剤の使用に関しては、いくつかの好ましくない問題、例えば吸着剤の取得コストが派生する。
【0004】
水銀を捕捉する一般的な要求に加えて、水銀の捕捉に影響を与える水銀の濃度の変動及び/又はその他の変動にかかわらず水銀を捕捉したいという要求もある。水銀の捕捉に影響を与えるこのような他の変動の例には、燃焼排気中のフライアッシュ、燃焼排気中のガス化学、燃焼排気ガス流量、濾材の状態(例えば、濾材の劣化)、ダストケーク堆積などの変化がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5505766号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
所望の方法で水銀捕捉を制御することができれば有益である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
下記の発明の概要は、本発明のいくつかの態様を基本的に理解するためのものである。この概要は本発明の包括的全体図ではない。さらに、この概要は、本発明の必須の構成要素を特定するものでも、本発明の範囲を定めるものでもない。この概要は後述する詳細な説明の序文として、本発明のいくつかの概念を単純化した形で示すことを目的としているだけである。
【0008】
1つの態様では、本発明は、燃焼排気を含有する流れからの優れた水銀除去システムを提供する。本システムは、流れが通ると水銀などの物質を流れから除去する濾過配置を備える。本システムは、濾過配置の下流の流れ中の水銀濃度を感知し、感知した水銀濃度を示すシグナルを与えるセンサ配置を備える。本システムは、流れから除去する水銀の量を変更するために、感知した水銀濃度を示すシグナルに応じて濾過配置に進入する燃焼排気の温度を変更する調節可能な温度制御配置を備える。
【0009】
別の態様では、本発明は、燃焼排気を含有する流れからの優れた水銀除去システムを提供する。本システムは、通過する流れから水銀などの物質を除去する濾過手段を備える。本システムは、濾過手段の下流の流れ中の水銀濃度を感知し、感知した水銀濃度を示すシグナルを与えるセンサ手段を備える。本システムは、流れから除去する水銀の量を変更するために、感知した水銀濃度を示すシグナルに応じて濾過手段に進入する燃焼排気の温度を変更する温度制御手段を備える。
【0010】
他の態様では、本発明は、燃焼排気を含有する流れからの優れた水銀除去方法を提供する。本方法では、濾過配置を通過する流れから水銀などの物質を除去するために濾過配置で流れを濾過する。本方法では、濾過配置の下流の流れ中の水銀濃度を感知し、感知した水銀濃度を示すシグナルを与える。本方法では、流れから除去する水銀の量を変更するために、感知した水銀濃度を示すシグナルに応じて濾過配置に進入する燃焼排気の温度を変更する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の上記その他の態様は添付図面を参照して以下の説明を読むことで、当業者に明らかになるであろう。
【図1】本発明の少なくとも1つの態様を組み入れた濾過システムの例の線図である。
【図2】図1のシステム内で用いることができるフィルターカートリッジの1例の側面図である。
【図3】図2の線3−3に沿ったフィルターカートリッジの拡大断面図であり、粒状物質の堆積を示す。
【図4】図3の線4−4に沿ったフィルターカートリッジの拡大断面図である。
【図5】本発明の1つの態様にしたがった方法の1例の概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の1つ以上の態様を組み入れた実施形態の例を図に示し、説明する。これら図示の例は本発明を限定するものではない。例えば、本発明の1つ以上の態様は別の実施形態及び別の種類の装置にも使用することができる。さらに、いくつかの用語は、本明細書で便宜的に用いられているだけであり、本発明の限定と解釈すべきでない。またさらに、図面において、同じ要素には同じ参照番号を用いる。
【0013】
図1に燃焼排気を処理するシステム10、特に燃焼排気を含有する流れからの優れた水銀(Hg)除去を実現するシステム10を模式的に示す。燃焼源からの燃焼排気は粒状物質を含有する。図示例は、燃焼排気から粒子を濾過する濾過配置12を備える。粒子は通常フライアッシュと呼ばれる物質を含有する。
【0014】
図示例では、濾過配置12はバッグハウス(baghouse)14を有する。バッグハウス14は、密閉ハウジング16により画成することができ、汚染空気プレナム18及び浄化空気プレナム20の2つのセクションに分けることができる。汚染空気プレナム18及び浄化空気プレナム20は、互いに流体連通しており、壁、仕切りなどの管板(tubesheet)22により分離できる。汚染空気プレナム18は、汚染空気入口26と流体連通しており、燃焼排気流れが汚染空気入口26を通してバッグハウス14に入る。浄化空気プレナム20は、浄化空気出口28と流体連通しており、濾過後の空気が浄化空気出口28を通してバッグハウス14から出る。
【0015】
汚染空気プレナム18と浄化空気プレナム20は、管板22に形成した1つ又は2つ以上の円形開口部を介して流体連通になるように配置することができる。それぞれの開口部は、フィルターカートリッジ30を受け入れ、保持する寸法にできる。図1では、フィルターカートリッジ30を管板22に挿入することを示すのに、図示したフィルターカートリッジ30のうち2つを管板22から持ち上げてある。管板22は管板からの空気の通過を防ぐ。その代わりに、空気はフィルターカートリッジ30を通って汚染空気プレナム18から浄化空気プレナム20に移動することができる。なお、濾過配置12は変更することができ、特にバッグハウス14は変更することができる。したがって、この例を本発明の限定と解釈すべきでない。特に、フィルターカートリッジを示すが、本発明の1つの態様の別の種類のフィルターを用いてもよい。また、フィルターカートリッジ30を6つだけ示すが、濾過配置12は、任意の数(即ち、1つ又は2つ以上)のフィルターカートリッジ30を有することができる。
【0016】
例示のフィルターカートリッジ30は通常、細長く、実質的に垂直状態で(例えば、長手方向軸に対して)互いに平行に配置できる。フィルターカートリッジ30は、空気を濾過して燃焼排気から粒状物質、おそらくフライアッシュなどを除去することができる。
【0017】
図2及び図3に示すように、フィルターカートリッジ30の代表的な例は、本発明の1つの態様の濾過材40を有する。図示例では、濾材40を内側コア42(図3)の周囲に配置する。内側コア42は、フィルターカートリッジ30内部に形成された細長い中心通路44を画成する。中心通路は中心軸46に沿って細長い。内側コア42は、異なる材料、例えば鉄鋼、チタンなどから製造でき、フィルターカートリッジ30を支持するのに十分な堅さにすることができる。内側コア42は、開口部があり、それから内側コアを通って空気が通過できる。例えば、内側コア42は、複数の穿孔、開口、穴などがあり、空気を内側コアの外部から中心通路44に通過させる。
【0018】
図示例(図2及び図3)では、濾材40は通常、内側コア42を取り囲む管として配置され、複数のプリーツ48を有する。プリーツ48は、中心軸46に平行に細長く、中心軸46に近づいたり、離れたりするジグザグパターンで延在する。プリーツ折れ目の間のセグメントは本質的に平らなセグメントである。濾材40は内表面52及び外表面54を有する。この実施形態では、内表面52の一部がプリーツ48の半径方向内向きの範囲で内側コア42に係合及び/又は隣接する。したがって、内側コア42は、平常の濾過流れ時の半径方向内向きの動きから濾材40を支持することができる。
【0019】
図示例では、フィルターカートリッジ30は、濾材40を所定の位置に保持及び/又は固定するのに用いる1つ又は2つ以上の保持ストラップ58を有する。例えば、保持ストラップ58はクリーニングパルス時の半径方向外向きの動きを制限する。このような保持ストラップは、高い引張強さをもついくつかの材料、例えば押出ポリマー、ポリエステル織物、金属、耐熱布などを含有することができる。また、このような保持ストラップは、濾材の周囲のいくつかの場所、例えばフィルターカートリッジの底部と頂部の中心位置に固定することができる。同様に、2つ以上の保持ストラップを設けて濾材を固定することができ、図示例では、2つの保持ストラップを用いる。なお、別の構造がフィルターカートリッジ30上に存在してもよい。
【0020】
フィルターカートリッジ30は、フィルターカートリッジの片端部又は両端部に1つ又は2つ以上のエンドキャップ62、64(上部及び下部)を有することができる。エンドキャップ62、64は、フィルターカートリッジの片端部からの空気の通過を可能にするか、防止するように働き、流れが濾材40のみを通ることを確実にして濾過プロセスを助けることができる。当業者に明らかであるように、エンドキャップは、剛性の部材、シール材などとすることができる。また、この例では、下部エンドキャップ64は完全に閉塞でき、一方、上部エンドキャップ62は、外周部をシールでき、中心で開口して空気が中心通路44から外に流れるのを可能にする。
【0021】
なお、濾材40は種々の構成/組成をもつことができる。例えば、濾材40は延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜(メンブレン)の層76を有することができる。なお、ePTFE膜層76は、濾材の別の構造物又は層により支持できる。例えば、濾材は濾材基体層70を有することができる。濾材基体層70は種々の材料及び/又は構成を含むことができる。例えば、濾材基体層70は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ガラス繊維などの材料を含有することができる。また、例えば、濾材基体層70は1つの単一材料層、複数材料層及び/又は他の構造を有することができる。なお、濾材基体層70が本発明で限定される必要はない。濾過配置12より捕捉した粒状物質80の1例は、濾材40の外表面54上にある。なお、粒状物質80’(図1)は通常、濾過配置12の汚染空気プレナム18内に堆積し、捕集して処分(例えば、廃棄、販売)することができる。
【0022】
勿論、図示した濾過配置、フィルター、濾材などは単に1例として示してあることは明らかである。濾過配置、フィルター、濾材などにおいての違いはありうることであり、予想されている。例えば、ラウンドバッグフィルターを用いることができる。別の例として、濾材は追加の異なる材料又は織物を含有してもよい。
【0023】
なお、濾過配置12は、少なくともある程度燃焼排気流れから水銀を除去する能力を有する。このような水銀除去能力は、フィルター配置を通る燃焼排気流れからの粒状物質80(例えば、フライアッシュ)の除去能力と組み合わさっている。水銀除去のメカニズム/方法論の詳細は様々であり、本発明で特に限定される必要はない。水銀除去のメカニズム/方法論の詳細のいくつかの例を以下に示す。
【0024】
水銀除去のメカニズム/方法論の1例に関連して、燃焼排気中の水銀は普通、元素水銀であることに注目した。このような元素水銀はある従来のタイプのフィルター配置を通過することが可能である。しかし、燃焼排気は通常、塩酸(HCl)も含有する。燃焼排気中の塩酸は濾過配置12のフィルター構成要素(例えば、濾材40/フィルターカートリッジ30)で捕集できると考えられる。さらに、塩酸は元素水銀を酸化して塩化第二水銀にすることができると考えられる。
【0025】
さらに、粒状物質80の存在が、生成した塩化第二水銀を捕獲する物質をもたらすと考えられる。したがって、水銀は、今や塩化第二水銀の形態となっているので、濾過配置12内で粒状物質80で捕捉され、燃焼排気流れから除去される。したがって、濾過配置12により捕捉される水銀の全量は比較的多い。図1の例は、濾過配置12の汚染空気プレナム18内に堆積する捕獲水銀を含む粒状物質80’の典型的な堆積を示す。
【0026】
なお、燃焼排気中に吸着剤を導入することが可能である。吸着剤は、水銀を吸収又は捕獲することができる活性炭とすることが多い。このような吸着剤も濾過配置12によって捕獲されて粒状物質80の一部となる。この場合も、水銀は捕捉され、燃焼ガス流れから除去される。システム10の例では、所望により、このような吸着剤を用いることができる。しかし、水銀の流れを止めるメカニズム(即ち、塩化第二水銀の生成及び生成した塩化第二水銀の粒状物質80による捕獲)があるので、吸着剤の使用を最小限にするかなくすことができる。
【0027】
なお、濾過配置12に関するすべての例は、通過する流れから水銀などの物質を除去する濾過手段の例を示す。
【0028】
濾過配置12の能力は、流れからの水銀除去のメカニズム/方法論にかかわらず、温度依存する効率(即ち、水銀除去の能力)を有することができる。例えば、濾過配置12のフィルター構成要素での塩酸の捕集及び/又は塩酸による元素水銀の塩化第二水銀への酸化及び/又は生成した塩化第二水銀の粒状物質80による捕獲は温度に依存して変化することができると考えられる。換言すれば、濾過配置12を通る燃焼排気流れの温度は水銀除去の効果に影響を与えることができる。
【0029】
本発明の1つの態様では、濾過配置12から出る(即ち、濾過配置12が水銀を除去する作用をなした後の)流れ中の水銀の濃度(例えば、量)を感知する。水銀連続排出モニタリングシステム(HG CEMS=Hg continuous emission monitoring system)84は、水銀を感知するセンサ配置の1例であり、図1の例に模式的に示され、動作可能なように接続86されて濾過配置12から出る濾過後の燃焼排気流れを感知する。センサ配置は感知した水銀濃度を示すシグナル88を出力として与える。
【0030】
本発明の1つの態様では濾過配置12に進入する流れ(即ち、燃焼排気を含有する流れ)の温度を変更する。温度を変更するのは、濾過配置12で起こる水銀除去の効果を変化させるためである。本発明の配置の1つの態様では、温度の変更は、感知した水銀濃度のシグナル88に応じている。
【0031】
HG CEMS84は濾過配置12から出る流れ中の水銀の濃度(例えば、量)を検出し、測定することができる1つ又は2つ以上のシステム/センサを有することができる。なお、HG CEMS84の特定の場所は本発明で特に限定される必要はなく、したがって、センサ配置は、濾過機能から下流であればどこでも位置させることができる。例えば、HG CEMS84は、バッグハウス14の浄化空気プレナム20内、バッグハウス14の外側の独立ユニットとして又は独立ユニットに位置させる(図1の例に示すように)か、流れが進み、最終的に(例えば、煙突又は可能であればさらなる汚染処理装置などの他の装置から)周囲雰囲気に排出される流路にある他の構成要素(図示せず)の下流にも位置させることができる。
【0032】
シグナル88は感知した水銀濃度の情報を伝達する。シグナルは任意の形態にすることができる。例えば、シグナルはアナログ又はデジタル電気シグナルとすることができる。シグナルは任意の形式で情報を伝達することができる。例えば、水銀濃度情報は、シグナルの電気的特性(例えば、電流又は電圧)によって表したり、シグナル内の数値表示(例えば、コード)により伝達できる。なお、シグナル88は模式的に示され、シグナルは配線接続、無線リンク又は他の接続/リンクにより伝達できる。要約すれば、HG CEMS84は、濾過配置12から出る流れ中の水銀の濃度(例えば、量)を測定することができる1つ又は2つ以上のセンサを有することができ、濾過配置の下流の流れ中の水銀濃度を感知し、感知した水銀濃度を示すシグナルを与えるセンサ手段の例を示す。
【0033】
本発明の1つ又は2つ以上の態様を示す例として、図1の例示システムは、濾過配置12に進入する燃焼排気の温度を変更することができる温度制御配置90を備える。温度制御配置90は燃焼排気を冷却する1つ又は2つ以上の素子又は構造を有することができ、温度制御配置90は燃焼排気を加熱する1つ又は2つ以上の素子又は構造を有することができる。かかる素子又は構造は選択的に冷却及び加熱の両方を行うことができる。素子又は構造の特定な詳細が本発明で特に限定される必要はない。
【0034】
冷却方法の1例では、微細な水ミストを燃焼排気に散布導入する。別の例として、比較的に冷たい周囲空気を導入して燃焼排気と混合する方法がある。燃焼排気を冷却するこのような例は、燃焼排気を冷却する手段の例となる。加熱方法の1例では、電熱コイルを用いて燃焼排気を温める。燃焼排気を加熱するこのような例は、燃焼排気を加熱する手段の例となる。なお、温度調節には冷却又は加熱がある。しかし、通常、燃焼排気の冷却が望ましいアプローチである。
【0035】
温度制御配置90は、動作可能なように接続/配置されて感知した水銀濃度を示すシグナル88をHG CEMS84から受け取る。温度制御配置90が引き起こす温度の変更は、感知した水銀濃度を示すシグナル88に応じている。したがって、より多く(又はより少なく)水銀を捕獲(捕捉)するのが望ましい場合、温度を変更する。前述したように、濾過配置12での水銀の捕捉は温度に依存する。システム10は、濾過配置12のバッグハウス14に入る汚染燃焼排ガスの温度を、出て行く流れの水銀濃度に応じて調節する自動フィードバックループに設定できる。
【0036】
なお、温度制御配置90に関するすべての例は、感知した水銀濃度を示すシグナルに応じて濾過配置に進入する燃焼排気の温度を変更する温度制御手段の例を示す。
【0037】
なお、温度制御配置90の特定の場所は本発明で特に限定される必要はなく、したがって、温度制御配置90は、濾過機能の上流であればどこでも位置させることができ、濾過機能と連結させることもできる。例えば、温度制御配置90は、バッグハウス14の外側の独立ユニットである(図1の例に示すように)か、バッグハウス内(例えば、汚染空気プレナム内)又は流れが濾過配置12に向かって進む流路にある他の構成要素(図示せず)の上流にも位置させることができる。
【0038】
前述したように、粒状物質80は濾材40の外表面54上に堆積する。粒状物質80の存在が水銀の捕捉を助ける。なお、粒状物質80は燃焼排気からのフライアッシュを含有することができる。また、粒状物質80は導入された吸着剤(例えば、活性炭)を含有することもある。このような吸着剤は、図1の例に示していない配置によって投入することができる。なお、粒状物質80の堆積は、フィルターカートリッジ30の幾何形状(例えば、プリーツ48)によるものとすることができる。また、あるフィルター材料(例えば、ePTFE)は水銀を捕捉する配置の能力を高めることができるのは明らかである。
【0039】
なお、燃焼排気への吸着剤(例えば、活性炭)の導入、即ち投入により、確かに、水銀の捕獲を助けるという利益を得る可能性があるが、このような吸着剤の導入は何らかの結果をもたらす。特に、導入された吸着剤は、濾過配置12により捕獲されるフライアッシュと混ざり合うことがある。なお、フライアッシュは燃焼排気の濾過の副生成物として価値がある。例えば、フライアッシュはセメント製造に使用するために販売できる。しかし、フライアッシュ中に吸着剤(例えば、活性炭)が存在すると、結果として、フライアッシュはこのようなセメント製造での使用に望ましくなくなることがある。したがって、活性炭の使用は、フライアッシュの捕集及び販売から生じる収入を低減するという結果になることがある。さらに、活性炭自体の取得コストがある。活性炭の総コストは活性炭の使用量に比例することは容易に理解される。したがって、吸着剤の使用を減らすことが有益である。本発明はこのような利益をもたらすことができる。
【0040】
吸着剤(例えば、活性炭)を投入しない(即ち、ePTFE膜層76の表面領域で塩化第二水銀を捕獲する粒子がフライアッシュだけである)例では、バッグハウス14に入る燃焼排気を280oF(約138℃)に冷却した場合、約98%の水銀捕獲割合を達成した。比較として、バッグハウスに入る燃焼排気の代表的な温度はおよそ345oF(約174℃)である。したがって、このような例では、吸着剤の必要性を大幅に減らすか、なくすことも可能である。
【0041】
また、測定した(モニターした)水銀をフィードバック方式で用いて温度制御配置90による温度制御を行っているので、温度の調節(即ち、変更)をリアルタイムで行うことができる。特に、燃焼排気の温度を連続的に調節したり、燃焼排気に適用する冷却/加熱を燃焼排気の所望の温度を維持するように調節したりできる。燃焼排気中の水銀は時間が経つにつれて変化する可能性がある。このような水銀変化は1つ又は2つ以上の要因によることがある。このような要因の考えられる例には、燃焼排気中のフライアッシュの量/種類、燃焼排気中のガス化学、燃焼排気ガス流量、濾材の状態(例えば、濾材の劣化)、ダストケーク堆積などの変化がある。本発明の1つの態様は、温度調節により応答性の調節をして水銀捕獲(例えば、燃焼排気の流れからの除去)を変更できることである。温度調節は連続及び/又は反復的に行うことができる。
【0042】
図5は、本発明の方法100の1例の概略フロー図である。フロー図は、直線状配列で方法の工程を示すが、実際は工程を連続して、同時に行うことができる。直線状配列表示は、単に理解を容易にする仕方で本方法の工程を示すためのものである。工程102で、燃焼排気を濾過配置に通過させる。工程104で、濾過後の流れをセンサーにかけて存在する水銀を測定する。工程106で、水銀が所望のレベルであるか判定する。感知した水銀が所望のレベルである(工程106での判定に対する応答がYESである)場合、方法100はループになって工程104及び工程106を単に繰り返す。しかし、感知した水銀が所望のレベルでない(工程106での判定に対する応答がNOである)場合、方法100は、濾過配置に向かって進む燃焼排気の温度を調節する工程108に進む。なお、温度調節には、温度下降又は温度上昇がある。また、本方法が他の工程を含むことができ、本工程は下位工程を含んでもよいことは明らかである。
【0043】
要約すれば、本発明は、燃焼排気を含有する流れからの優れた水銀除去システムを提供することができる。本システムは、流れが通ると水銀などの物質を流れから除去する濾過配置を備える。本システムは、濾過配置の下流の流れ中の水銀濃度レベルを感知し、感知した水銀濃度を示すシグナルを与えるセンサ配置を備える。本システムは、感知した水銀濃度を示すシグナルに応じて濾過配置に進入する燃焼排気の温度を変更する調節可能な温度制御配置を備える。
【0044】
本システムではさらに、調節可能な温度制御配置が少なくとも燃焼排気を冷却する冷却器を含む及び/又は調節可能な温度制御配置が少なくとも燃焼排気を加熱するヒーターを含むことができる。本システムではさらに、センサ配置が少なくとも濾過配置の下流の流れ中の水銀濃度が所望の濃度であるかを測定するセンサを含み、また調節可能な温度制御配置が、濾過配置での水銀除去が変化し、濾過配置の下流の流れ中の水銀濃度が所望の濃度に向かって変化するように燃焼排気の温度を変更する働きをすることができる。本システムではさらに、濾過配置が少なくとも1つのePTFEの層を含むことができる。
【0045】
さらに要約すれば、本発明は、燃焼排気を含有する流れからの優れた水銀除去システムを提供することができる。本システムは、通過する流れから水銀などの物質を除去する濾過手段を備える。本システムは、濾過手段の下流の流れ中の水銀濃度を感知し、感知した水銀濃度を示すシグナルを与えるセンサ手段を備える。本システムは、感知した水銀濃度を示すシグナルに応じて濾過手段に進入する燃焼排気の温度を変更する温度制御手段を備える。
【0046】
本システムではさらに、温度制御手段が燃焼排気を冷却する手段を含む及び/又は温度制御手段が燃焼排気を加熱する手段を含むことができる。本システムではさらに、センサ手段が、少なくとも濾過手段の下流の流れ中の水銀濃度が所望の濃度であるかを測定するセンサを含み、また調節可能な温度制御手段が、濾過手段での水銀除去が変化し、濾過手段の下流の流れ中の水銀濃度が所望の濃度に向かって変化するように燃焼排気の温度を変更する働きをすることができる。本システムではさらに、濾過手段が少なくとも1つのePTFEの層を含むことができる。
【0047】
さらに要約すれば、本発明は、燃焼排気を含有する流れからの優れた水銀除去方法を提供することができる。本方法では、濾過配置を通過する流れから水銀などの物質を除去するために濾過配置で流れを濾過する。本方法では、濾過配置の下流の流れ中の水銀濃度を感知し、感知した水銀濃度を示すシグナルを与える。本方法では、感知した水銀濃度を示すシグナルに応じて濾過配置に進入する燃焼排気の温度を変更する。
【0048】
本方法はさらに、燃焼排気の温度を変更する工程で燃焼排気を冷却することができる。本方法はさらに、燃焼排気の温度を変更する工程で燃焼排気を加熱することができる。本方法はさらに、水銀濃度を感知する工程で、濾過配置の下流の流れ中の水銀濃度が所望の濃度であるかを感知し、燃焼排気の温度を変更する工程で、濾過配置での水銀除去が変化し、濾過手段の下流の流れ中の水銀濃度が所望の濃度に向かって変化するように燃焼排気の温度を変更することができる。本方法はさらに、物質を除去するために流れを濾過する工程で少なくとも1つのePTFEの層を通して濾過することができる。
【0049】
以上、本発明をその実施形態について説明した。本明細書を読み、理解することで種々の変更及び改変を当業者が想起することができる。本発明の1つ以上の態様を取り込んだ実施形態は、特許請求の範囲に入るかぎり、このような変更及び改変のすべてを含むものとする。
【符号の説明】
【0050】
10 水銀除去システム
12 濾過配置
14 バッグハウス
16 密閉ハウジング
18 汚染空気プレナム
20 浄化空気プレナム
22 管板
26 汚染空気入口
28 浄化空気出口
30 フィルターカートリッジ
40 濾材
42 内側コア
44 中心通路
46 中心軸
48 プリーツ
52 内表面
54 外表面
58 保持ストラップ
62、64 エンドキャップ
70 濾材基体層
76 ePTFE膜層
80 粒状物質
84 水銀連続排出モニタリングシステム
86 接続
88 シグナル
90 温度制御配置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼排気を含有する流れから水銀を除去するシステム(10)であって、
流れが通ると水銀などの物質を流れから除去する濾過配置(12)、
濾過配置(12)の下流の流れ中の水銀レベルを感知し、感知した水銀レベルを示すシグナル(88)を与えるセンサ配置(84)、及び
感知した水銀レベルを示すシグナル(88)に応じて濾過配置(12)に進入する燃焼排気の温度を変更する調節可能な温度制御配置(90)を備える、
改良水銀除去システム(10)。
【請求項2】
調節可能な温度制御配置(90)が少なくとも燃焼排気を冷却する冷却器を含む、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項3】
調節可能な温度制御配置(90)が少なくとも燃焼排気を加熱するヒーターを含む、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項4】
センサ配置(84)が、少なくとも濾過配置(12)の下流の流れ中の水銀レベルが所望のレベルであるかを測定するセンサを含み、調節可能な温度制御配置(90)が、濾過配置(12)での水銀除去が変化し、濾過配置(12)の下流の流れ中の水銀レベルが所望のレベルに向かって変化するように燃焼排気の温度を変更する働きをする、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項5】
濾過配置(12)が少なくとも1つのePTFEの層を含む、請求項1記載のシステム(10)。
【請求項6】
燃焼排気を含有する流れから水銀を除去するシステム(10)であって、
通過する流れから水銀などの物質を除去する濾過手段(12)、
濾過手段(12)の下流の流れ中の水銀レベルを感知し、感知した水銀レベルを示すシグナル(88)を与えるセンサ手段(84)、及び
感知した水銀レベルを示すシグナル(88)に応じて濾過手段(12)に進入する燃焼排気の温度を変更する温度制御手段(90)を備える、
改良水銀除去システム(10)。
【請求項7】
温度制御手段(90)が燃焼排気を冷却する手段を含む、請求項6記載のシステム(10)。
【請求項8】
温度制御手段(90)が燃焼排気を加熱する手段を含む、請求項6記載のシステム(10)。
【請求項9】
センサ手段(84)が、少なくとも濾過手段の下流の流れ中の水銀レベルが所望のレベルであるかを測定するセンサを含み、調節可能な温度制御手段が、濾過手段(12)での水銀除去が変化し、濾過手段(12)の下流の流れ中の水銀レベルが所望のレベルに向かって変化するように燃焼排気の温度を変更する働きをする、請求項6記載のシステム(10)。
【請求項10】
濾過手段(12)が少なくとも1つのePTFEの層を含む、請求項6記載のシステム(10)。
【請求項11】
燃焼排気を含有する流れから水銀を除去するにあたり、
濾過配置を通過する流れから水銀などの物質を除去するために濾過配置で流れを濾過する工程(102)、
濾過配置の下流の流れ中の水銀レベルを感知し、感知した水銀レベルを示すシグナルを与える工程(104)、
感知した水銀レベルを示すシグナルに応じて濾過配置に進入する燃焼排気の温度を変更する工程(108)を含む、
優れた水銀除去方法(100)。
【請求項12】
燃焼排気の温度を変更する工程(108)で燃焼排気を冷却する、請求項11記載の方法(100)。
【請求項13】
燃焼排気の温度を変更する工程(108)で燃焼排気を加熱する、請求項11記載の方法(100)。
【請求項14】
水銀レベルを感知する工程(104)で、濾過配置の下流の流れ中の水銀レベルが所望のレベルであるかを感知し、燃焼排気の温度を変更する工程(108)で、濾過配置での水銀除去が変化し、濾過手段の下流の流れ中の水銀レベルが所望のレベルに向かって変化するように燃焼排気の温度を変更する、請求項11記載の方法(100)。
【請求項15】
物質を除去するために流れを濾過する工程(102)で少なくとも1つのePTFEの層を通して濾過する、請求項11記載の方法(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−223758(P2012−223758A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−91491(P2012−91491)
【出願日】平成24年4月13日(2012.4.13)
【出願人】(507168926)ビーエイチエイ・グループ・インコーポレーテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】BHA GROUP, INC.
【Fターム(参考)】