説明

現像剤収容器及び画像形成装置

【課題】低コストで環境への負担が少なく、現像剤の凝集を効果的に抑制することができる現像剤収容器を提供する。
【解決手段】現像剤を収容する変形可能な袋状の容器本体22を備える現像剤収容器である。容器本体22を、水分と揮発性有機化合物とを吸着する吸着材で構成した。また、容器本体22は、水分と揮発性有機化合物とを吸着する吸着材で構成された吸着層26と、当該吸着層26よりも外側に配設された防湿層24とを有することが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像剤を収容する現像剤収容器、及びその現像剤収容器を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の電子写真式の画像形成装置では、現像装置によりトナーを用いて画像を形成する。トナーは画像形成と共に消費されるため、通常は、袋状の容器内にトナーを収容したトナー収容器(トナーカートリッジ)を画像形成装置に装着し、トナー収容器内のトナーが無くなったら新しいトナー収容器と交換してトナーを補給するようにしている。
【0003】
一般的に、トナー収容器は、内部にトナーを充填して密封した状態で、保管、輸送されてユーザの元に届けられる。このトナー収容器の保管中や輸送中、あるいはトナー収容器を画像形成装置に装着した後などにおいて、トナー収容器が高温高湿環境下に長時間に亘って曝されると、水分が容器を通過して内部のトナーに吸着し、トナーが凝集する場合がある。また、トナーの凝集は、容器外からの容器内への水分の浸入以外に、充填されているトナーから高温時に放出される水分や揮発性有機化合物によっても生じることが知られている。ここで、トナーから放出される揮発性有機化合物には、トナーの製造工程で使用される酢酸エチル等がある。
【0004】
上記のようにトナーが凝集して固化すると、トナー補給に支障を来す虞がある。例えば、トナー収容器内のトナーが凝集・固化すると、新品のトナー収容器に交換しても、すぐにトナーエンド(トナーが無くなったことを示す旨)の警告が発せられたり、固化したトナーが現像装置に補給された際にトナー粒子と現像剤とが効率良く混ざらずに異常画像が発生したりするといった問題がある。
【0005】
そこで、従来から、トナー凝集の問題に対しては、トナー収容器を乾燥剤入りの防湿袋の中に入れて密封したり、トナー収容器自体を防湿性を有する材料で構成したりする(特許文献1参照)などの対策がされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
乾燥剤入りの防湿袋内にトナー収容器を入れる方法では、外部が高温高湿環境となっても、防湿袋によってトナー収容器内への水分の浸入が抑制され、トナーから放出される水分や揮発性有機化合物は乾燥剤によって吸着されることにより、トナーの凝集を防ぐことができる。しかしながら、防湿袋を開封した後は、防湿袋は不要となるため、廃棄物が増え環境面から好ましくない。また、防湿袋自体が特殊な材料で構成されていることから、高価であり、その梱包にも工数を要するので、製造コストが高くなるといった問題がある。
【0007】
一方、トナー収容器自体を防湿材料で構成する場合は、上記のような廃棄物の増加や高コスト化の問題が生じることなく、トナー収容器内のトナーの凝集を抑制することが可能である。例えば、防湿材料としては、PETシートにアルミナを蒸着したものや、PETシートにアルミニウム箔をドライラミネートしたものなどがある。これらの防湿材料を鎖状低密度ポリエチレン (LLDPE)にラミネート加工したものは、その透湿度が、通常トナー収容器に使用する材料(透湿度が20g/m2・24hのもの)に対して、約1/400となる。このように、防湿材料を用いたものは、透湿度が大幅に低下するため、トナー収容器内への水分の浸入を抑制することができ、トナーの凝集が生じにくくなる。
【0008】
しかし、トナー収容器自体を防湿材料で構成しても、容器のトナー充填口の封止箇所から水分が浸入する可能性があるほか、充填されたトナーから放出される水分や揮発性有機化合物によってトナーの凝集が発生する虞がある。特に、ケミカルトナーを用いる場合は、粉砕トナーに比べて揮発性有機化合物が多くなる傾向にあり、トナーの凝集が生じる可能性も高くなる。
【0009】
本発明は、斯かる事情に鑑み、低コストで環境への負担が少なく、現像剤の凝集を効果的に抑制することができる現像剤収容器、及びその現像剤収容器を備える画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、現像剤を収容する変形可能な袋状の容器本体を備える現像剤収容器であって、前記容器本体を、水分と揮発性有機化合物とを吸着する吸着材で構成したものである。
【0011】
容器本体を上記吸着材で構成することにより、乾燥剤入りの防湿袋で現像剤収容器を梱包しなくても水分と揮発性有機化合物の両方を吸着することができ、現像剤の凝集を効果的に抑制することができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の現像剤収容器において、前記容器本体は、水分と揮発性有機化合物とを吸着する吸着材で構成された吸着層と、当該吸着層よりも外側に配設された防湿層とを有するものである。
ここで、「防湿」とは、水分の透過を完全に阻止する場合だけでなく、水分の透過をある程度抑制する場合も含むことをいう。
【0013】
この場合、防湿層によって外部からの水分の透過を防止又は抑制することができるので、その分、吸着層の水分吸着の負担を軽減でき、吸着層による吸着効果を長期に亘って持続することが可能となる。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2に記載の現像剤収容器において、前記防湿層に、アルミニウムを用いたものである。
【0015】
アルミニウムを用いた防湿層は、強度が強く、折り曲げられてもクラック(亀裂)が生じにくいので、クラックからの水分浸入の虞を低減でき、防湿性に優れたものとなる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項2に記載の現像剤収容器において、前記防湿層に、アルミナ蒸着フィルム又はシリカ蒸着フィルムを用いたものである。
【0017】
防湿層に、アルミナ蒸着フィルム又はシリカ蒸着フィルムを用いることも可能である。
【0018】
請求項5の発明は、請求項4に記載の現像剤収容器において、アルミナ蒸着フィルム又はシリカ蒸着フィルムから成る前記防湿層以外の、前記容器本体の他の構成層を、透明又は半透明の部材で構成したものである。
【0019】
アルミナ蒸着フィルム又はシリカ蒸着フィルムから成る防湿層は透明なので、他の構成部材を透明又は半透明の部材で構成することにより容器本体内部を視認できるようになる。
【0020】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載の現像剤収容器において、前記容器本体の一部を前記吸着材で構成したものである。
【0021】
容器本体の一部を吸着材で構成することにより、必要に応じた吸着材の量を選択できる。
【0022】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の現像剤収容器を備えた画像形成装置である。
【0023】
画像形成装置が請求項1から6のいずれか1項に記載の現像剤収容器を備えることにより、現像剤の凝集を効果的に抑制することができるので、異常画像の発生や現像剤の供給不良等の不具合を防止できるようになる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、現像剤収容器が高温高湿環境下で長時間に亘って曝されていても、吸着材で構成された容器本体が水分と揮発性有機化合物の両方を吸着するので、現像剤の凝集を効果的に抑制することができる。また、本発明は、容器本体を吸着材で構成しているので、従来のように乾燥剤入りの防湿袋で現像剤収容器を梱包しなくてもよくなる。このため、防湿袋の製造や梱包工程が不要となり、低コストで現像剤の凝集を抑制することができる。さらに、開封後の防湿袋の廃棄も不要となるので、環境に与える影響も軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る現像剤収容器を搭載した画像形成装置の概略構成図である。
【図2】前記画像形成装置の外観図である。
【図3】トナー補給装置の概略構成図である。
【図4】本発明に係る現像剤収容器の容器本体を示す図であり、(a)はその側面断面図、(b)はその底面図である。
【図5】容器本体の他の形状を示す図であり、(a)はその側面断面図、(b)はその底面図である。
【図6】容器本体のさらに別の形状を示す図であり、(a)はその側面断面図、(b)はその底面図である。
【図7】容器本体の拡大断面図である
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0027】
図1は、本発明に係る現像剤収容器(トナー収容器)を搭載したカラー画像形成装置の概略構成図である。
まず、図1を参照して、カラー画像形成装置の全体構成について説明する。
図1に示す画像形成装置の装置本体100には、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の異なる色の画像を形成する4つの画像形成部1Y,1M,1C,1Bkが配設されている。各画像形成部1Y,1M,1C,1Bkは、異なる色のトナーを収容している以外は同様の構成となっている。
【0028】
具体的には、各画像形成部1Y,1M,1C,1Bkは、潜像担持体としてのドラム状の感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電装置3と、感光体2の表面にトナーを供給する現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするためのクリーニング装置5などで構成されている。なお、図1では、イエローの画像形成部1Yが備える感光体2、帯電装置3、現像装置4、クリーニング装置5のみに符号を付しており、その他の画像形成部1M,1C,1Bkにおいては符号を省略している。
【0029】
図1において、各画像形成部1Y,1M,1C,1Bkの上方には、感光体2の表面を露光する露光装置6が配設されている。露光装置6は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体2の表面へレーザー光を照射するようになっている。
【0030】
また、各画像形成部1Y,1M,1C,1Bkの下方には、転写装置7が配設されている。転写装置7は、転写体としての無端状のベルトから構成される中間転写ベルト8を有する。中間転写ベルト8は、支持部材としての複数のローラ13,14,15に張架されており、これらのローラの1つが回転駆動することによって、中間転写ベルト8は図の矢印に示す方向に周回走行(回転)するように構成されている。
【0031】
4つの感光体2に対向した位置に、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ11が配設されている。各一次転写ローラ11はそれぞれの位置で中間転写ベルト8の内周面を押圧しており、中間転写ベルト8の押圧された部分と各感光体2とが接触する箇所に一次転写ニップが形成されている。各一次転写ローラ11は、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が一次転写ローラ11に印加されるようになっている。
【0032】
また、中間転写ベルト8を張架するローラのうちの1つ(図1では符号15で示すローラ)に対向して、二次転写手段としての二次転写ローラ12が配設されている。この二次転写ローラ12は中間転写ベルト8の外周面を押圧しており、二次転写ローラ12と中間転写ベルト8とが接触する箇所に二次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ12は、一次転写ローラ11と同様に、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ12に印加されるようになっている。
【0033】
画像形成装置本体100の下部には、紙やOHPシート等の記録媒体Pを収容する給紙カセット16と、給紙カセット16から記録媒体Pを送り出す給紙ローラ17が設けられている。この給紙カセット16から上記二次転写ニップへ記録媒体Pを搬送する搬送経路の途中には、記録媒体Pの搬送タイミングを調整するためのレジストローラ対18が配設されている。
【0034】
また、画像形成装置本体100の図の左側の外面には、外部に排出された記録媒体Pをストックするための排紙トレイ19が設けられている。上記二次転写ニップから排紙トレイ19へ記録媒体Pを搬送する搬送経路の途中には、記録媒体Pに画像を定着させる定着装置9が配設されている。
【0035】
また、画像形成装置本体100の上部には、各色のトナーが収容されているトナー収容器20Y,20M,20C,20Bkが着脱可能に装着されている。各トナー収容器20Y,20M,20C,20Bkには、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのいずれか1色のトナーが収容されており、後述のトナー補給装置によって各トナー収容器20Y,20M,20C,20Bkから各現像装置4にトナーが補給されるようになっている。
【0036】
図1を参照して上記画像形成装置の作像動作について説明する。
作像動作が開始されると、各画像形成部1Y,1M,1C,1Bkの感光体2が図1の反時計回りに回転駆動され、帯電装置3によって各感光体2の表面が所定の極性に一様に帯電される。図示しない読取装置によって読み取られた原稿の画像情報に基づいて、露光装置6から各感光体2の帯電面にレーザー光が照射されて、各感光体2の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体2に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように感光体2上に形成された静電潜像に、各現像装置4によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー画像として顕像化(可視像化)される。
【0037】
中間転写ベルト8を張架するローラの1つが回転駆動し、中間転写ベルト8を周回走行させる。また、各一次転写ローラ11に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加されることによって、各一次転写ローラ11と各感光体2との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。そして、各感光体2上の各色のトナー画像が、上記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト8上に順次重ね合わせて転写される。かくして中間転写ベルト8はその表面にフルカラーのトナー画像を担持する。また、中間転写ベルト8に転写しきれなかった各感光体2上のトナーは、クリーニング装置5によって除去される。
【0038】
また、作像動作が開始されると、給紙ローラ17が回転して、給紙カセット16から記録媒体Pが搬出される。搬出された記録媒体Pは、レジストローラ対18によってタイミングを計られて、二次転写ローラ12と中間転写ベルト8との間の二次転写ニップに送られる。このとき二次転写ローラ12には、中間転写ベルト8上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト8上のトナー画像が記録媒体P上に一括して転写される。その後、記録媒体Pは定着装置9に送り込まれトナー画像が記録媒体P上に定着される。そして、記録媒体Pは機外の排紙トレイ19に排出されストックされる。
【0039】
以上の説明は、記録媒体にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つの画像形成部1Y,1M,1C,1Bkのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つの画像形成部を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0040】
図2は、上記画像形成装置の外観図である。
図2に示すように、画像形成装置本体100には、4つの開閉扉101が設けられている。上記各トナー収容器20Y,20M,20C,20Bk内のトナーが消費され、トナー残量が無くなった場合は、各開閉扉101を開放することで、トナー収容器20Y,20M,20C,20Bkの交換を行えるようになっている。
【0041】
図3は、トナー補給装置の構成を示す図である。
なお、トナー補給装置は、各トナー収容器20Y,20M,20C,20Bkにそれぞれ1つずつ設けられているが、4つのトナー補給装置の構成はほぼ同一であるので、図3では、イエローのトナー収容器20Yに設けられているトナー補給装置を例にその構成を説明する。
【0042】
図3に示すように、トナー補給装置30は、トナー収容器20Yの口金部材21に接続される接続部31と、現像装置4に接続されるスクリューポンプ32と、このスクリューポンプ32と接続部31とを連通連結するチューブ33等を備える。
【0043】
接続部31は、トナー収容器20Yを設置する設置部102内に設けられている。上記開閉扉101(図2参照)を開放し、トナー収容器20Yを設置部102内に設置すると、口金部材21が接続部31に接続される。このとき、口金部材21のトナー排出口が開放されることで、トナー収容器20Y内のトナーTが、接続部31を介してチューブ33側へ搬送可能な状態となる。
【0044】
スクリューポンプ32は、ロータ34、ステータ35、吸引口36、ユニバーサルジョイント37、モータ38等で構成されている。ロータ34は、金属材料から成る軸が螺旋状にねじれたように形成されている。ロータ34の一端は、ユニバーサルジョイント37と介してモータ38に回転可能に連結されている。ステータ35は、ゴム材料から成り、その穴部が長円形の断面が螺旋状になじれたように形成されている。ステータ35の穴部には、ロータ34が挿入されている。
【0045】
このように構成されたスクリューポンプ32は、以下のように駆動する。
モータ38を駆動させてロータ34を回転させると、ロータ34とステータ35との間の螺旋状の空間に吸引圧力が発生し、チューブ33内が負圧化される。これにより、トナー収容器20Y内のトナーTがチューブ33を介して吸引口36からスクリューポンプ32内に入る。そして、トナーTはスクリューポンプ32の送出口39から排出され、補給口40から現像装置4内に補給される。
【0046】
また、現像装置4内に補給されたトナーは、第1搬送スクリュー41と第2搬送スクリュー42によって撹拌されながら循環搬送される。これにより、摩擦帯電してキャリアに吸着したトナーは、キャリアと共に現像ローラ43上に担持される。現像ローラ43上に担持されたトナーは、現像ブレード44の位置に達すると、現像ブレード44によって薄層化される。そして、薄層化されたトナーが感光体2との対向位置に達すると、感光体2上に形成された静電潜像に付着し、静電潜像がトナー画像として顕像化される。
【0047】
以下、本発明の特徴部分であるトナー収容器の構成について説明する。
図4は、上記本発明に係るトナー収容器の容器本体を示す図であり、同図において、(a)はその側面断面図、(b)はその底面図である。
容器本体22は、変形可能なシート材をヒートシールにより袋状に形成して構成されている。本実施形態では、容器本体22を、底面が四角形に形成された角底容器としているが、容器本体22の形状はこれに限定されるものではなく、図5に示すようなスタンディングパウチ、図6に示すようなガゼット袋、あるいは三方シール袋(図示省略)などの種々の形態を採用することが可能である。
【0048】
図7に、容器本体の拡大断面図を示す。
図7に示すように、容器本体22は、外側から順に、最外層23と、防湿層24と、中間層25と、吸着層26と、最内層27とで構成された5層構造となっている。具体的には、最外層23は厚さ25μmの延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、防湿層24は厚さ12μmのアルミナ蒸着PETフィルム、中間層25は厚さ10μmの低密度ポリエチレン(LDPE)フィルム、吸着層26は厚さ40μmの合成ゼオライド等を練り込んだフィルム、最内層27は厚さ10μmの低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムで構成されている。そして、各構成層をドライラミネートにより貼り合わせている。なお、吸着層26に用いる材料は、吸着したい物質の種類に合わせて選択し、変更してもよい。
【0049】
防湿層24は、容器本体22の外側にある水分が内部へ透過するのを防止又は抑制するためのものである。防湿層24は、水分の透過を完全に阻止する場合に限らず、水分の透過をある程度抑制するものであってもよい。
【0050】
吸着層26は、トナー等から放出される水分や揮発性有機化合物を吸着するものである。トナー収容器内にトナーを充填し密封した状態で、それを高温高湿環境下に設置すると、内部のトナーから水分や揮発性有機化合物が放出されるが、この場合、放出された水分や揮発性有機化合物は吸着層26によって吸着される。また、トナー収容器の外側にある水分は、基本的に防湿層24によって透過が阻止されるが、その一部が透過したとしても、透過した水分は吸着層26によって吸着される。また、トナー収容器の外側から揮発性有機化合物が透過した場合であっても、その透過した揮発性有機化合物も吸着層26によって吸着される。
【0051】
本発明者は、上記本実施形態に係るトナー収容器と、比較例のトナー収容器とを用いて、トナー凝集の抑制効果を調べる試験を行った。以下、この試験について詳しく説明する。
本実施形態に係るトナー収容器の構成は上述の通りであり、これに対し比較例の構成は、本実施形態の構成から上記吸着層26を省略したものである。すなわち、比較例のトナー収容器は、外側から順に、厚さ25μmの延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、厚さ12μmのアルミナ蒸着PETフィルム(防湿層)、厚さ50μmの低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムを積層し、それらをドライラミネートして構成されたものである。
【0052】
そして、本実施形態と比較例のそれぞれのトナー収容器内に、株式会社リコー製のimagioMPNトナーマゼンタC3300のトナーを300g充填して密封し、それを、温度40℃、湿度70%の環境下に31日間保存して、トナー収容器内のトナーの凝集を評価した。
【0053】
トナー凝集の評価は、上記条件下で保存した後の各トナー収容器からトナーを取り出し、そのトナーを金属製のメッシュの上に20g載せ、振動を加えてメッシュ上に残ったトナー凝集物を回収し、その重量を測定することにより行った。メッシュの目開きは75μm、線径は50μmであり、振動はメッシュ枠上部に高さ30mmから固い棒を落とすことにより加えた。また、振動はトナーが崩れなくなるまで行い、残った凝集物を回収してその重量を測定した。
【0054】
その結果、メッシュ上に残ったトナー量は、本実施形態では0.0005g、比較例では0.0080gとなり、本実施形態は比較例に比べてトナー凝集物の量が大幅に減少した。このような結果となったのは、吸着層26を有しない比較例ではトナー等から放出される水分や揮発性有機化合物を吸着することができず、反対に、吸着層26を有する本実施形態では水分及び揮発性有機化合物を吸着できたためと考えられる。
【0055】
以上のように、本実施形態に係るトナー収容器は、高温高湿環境下に長期間に亘って曝されたとしても、吸着層26によって水分と揮発性有機化合物を吸着することができるので、内部のトナーが水分や揮発性有機化合物の影響を受けて凝集するのを抑制することができる。さらに、本実施形態では、防湿層24によって外部からの水分の透過を阻止することができるので、その分、吸着層26の水分吸着の負担を軽減でき、吸着層26による吸着効果を長期に亘って持続することが可能となる。
【0056】
なお、上述の実施形態で挙げた容器本体22の構成材料や厚さ等は、あくまで本発明の一例にすぎず、本発明の構成はこれに限定されるものではない。また、本発明の構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることが可能である。
【0057】
例えば、吸着層26は、吸着させる物質の種類に合わせて、ゼオライト以外に、シリカゲル、アルミナ、活性炭等の多孔質材を選択することが可能である。また、これらの吸着層26に用いることのできる材料の中から複数種類を選択してそれらを併用してもよい。
【0058】
また、吸着層26は、発生する水分や揮発性有機化合物の量などに応じて必要な量を設ければよい。従って、必ずしも容器本体22の全体に吸着層26を設ける必要はなく、容器本体22の一部に吸着層26を設ける構成とすることも可能である。例えば、図6に示すガゼット袋のような構成の場合は、4枚のシート材を貼り合わせているので、各シート材の大きさ(面積等)と、必要な吸着材の量とを考慮して、一部のシート材にのみ吸着層26を設けるようにしてもよい。また、上述のように、吸着層26は、容器本体22の内部で生じる水分と、外部から透過する水分及のいずれも吸着することができるので、防湿層24を有しない構成とすることも可能である。
【0059】
また、上述の実施形態のように、防湿層24にアルミナをPETに蒸着したものを用いた場合、防湿層24が透明となるので、容器本体22の他の構成層を透明又は半透明の部材で構成することにより、容器本体22内を視認できるようになる。これにより、容器本体22内に収容されている現像剤の色や残量等を容易に確認することができるようになる。なお、上述の実施形態では、吸着層26以外の構成層は透明であるが、吸着層26は半透明であるので、全体として半透明となる。また、防湿層24にシリカをPETに蒸着したものを用いた場合も、防湿層24が透明となるので、同様に、他の構成層を透明又は半透明の部材で構成することにより、容器本体22内を視認することが可能となる。
【0060】
また、防湿層24にアルミニウム(例えば、アルミニウム箔とPETフィルムとをドライラミネートしたもの)を用いてもよい。アルミニウムを用いた防湿層24は、強度が強く、折り曲げられてもクラック(亀裂)が生じにくいので、クラックからの水分浸入の虞を低減でき、防湿性に優れたものとなる。
【0061】
また、上述の実施形態では、現像剤としてトナーとキャリアから成る二成分現像剤を用いているが、本発明はこれに限らず、トナーから成る一成分現像剤を用いる画像形成装置にも適用可能である。また、本発明の構成を適用する画像形成装置は、図1に示すような複数の感光体を中間転写ベルト上に並設した、いわゆるタンデム式のカラーレーザープリンタに限らず、その他のプリンタ、複写機、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
【0062】
以上のように、本発明によれば、容器本体を構成する吸着材(吸着層)が水分と揮発性有機化合物の両方を吸着することができるので、トナーの凝集を効果的に抑制することができる。また、本発明は、容器本体を吸着材で構成しているので、従来のように乾燥剤入りの防湿袋で現像剤収容器を梱包しなくてもよくなる。このため、防湿袋の製造や梱包工程が不要となり、低コストでトナーの凝集を抑制することができる。さらに、開封後の防湿袋の廃棄も不要となるので、環境に与える影響も軽減できる。
【符号の説明】
【0063】
20 トナー収容器(現像剤収容器)
22 容器本体
24 防湿層
26 吸着層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【特許文献1】特開2009−204873号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を収容する変形可能な袋状の容器本体を備える現像剤収容器であって、
前記容器本体を、水分と揮発性有機化合物とを吸着する吸着材で構成したことを特徴とする現像剤収容器。
【請求項2】
前記容器本体は、水分と揮発性有機化合物とを吸着する吸着材で構成された吸着層と、当該吸着層よりも外側に配設された防湿層とを有する請求項1に記載の現像剤収容器。
【請求項3】
前記防湿層に、アルミニウムを用いた請求項2に記載の現像剤収容器。
【請求項4】
前記防湿層に、アルミナ蒸着フィルム又はシリカ蒸着フィルムを用いた請求項2に記載の現像剤収容器。
【請求項5】
アルミナ蒸着フィルム又はシリカ蒸着フィルムから成る前記防湿層以外の、前記容器本体の他の構成層を、透明又は半透明の部材で構成した請求項4に記載の現像剤収容器。
【請求項6】
前記容器本体の一部を前記吸着材で構成した請求項1から5のいずれか1項に記載の現像剤収容器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の現像剤収容器を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−198486(P2012−198486A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117050(P2011−117050)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】