説明

現像装置、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置

【課題】 感光体の表面を傷付けることなく劣化した現像剤の排出を効率良く行うことができる現像装置、プロセスカートリッジ、画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 現像剤を担持して静電潜像にトナーを供給する現像剤担持体(現像ローラ32Y)と、この現像剤担持体に現像剤を搬送する現像剤搬送機構(33Y)とを備え、劣化した現像剤を排出して新しい現像剤を補給することにより自動で現像剤を入れ替える現像剤排出モードを設けた現像装置(30Y)において、現像剤排出モードでは、現像剤担持体(現像ローラ32Y)を駆動させずに現像剤搬送機構(33Y)のみを駆動させて現像剤を排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ、これらの複合機等の電子写真方式の画像形成装置に関し、詳しくは、電子写真方式の画像形成装置において、感光体に傷を付けることなく劣化した現像剤の排出を効率良く行う技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、一様に帯電された感光体(感光体ドラムや感光体ベルトなどの表面に有機感光体層を有するものを指す、以下同じ)上に画像データに基づいてレーザ光が照射され、その表面が選択的に露光されて帯電レベルが変化することにより静電潜像が形成され、作像部において、この静電潜像に現像装置によりトナーが供給されてトナー像に現像される。そして、この感光体上のトナー画像は、転写部においてシート材(コピー用紙や葉書などの紙に限られず、OHPシートなどの樹脂シートを含むシート状のものを指す、以下同じ)に直接転写されるか、或いは中間転写体に一旦転写されてからシート材に間接転写された後、定着部においてトナー像が加熱・加圧されてシート材に定着される。その後、潜像担持体の表面に残留付着したトナーは、クリーニング部においてクリーニングブレードにより掻き取る等の方法により回収されて再度の作像動作に備えられる。以上のように画像形成プロセスが行われており、現像装置内の現像剤は使用され続けていくと帯電機能が落ちていき、出力画質の劣化やトナーの機内飛散の原因となるため定期的に交換する必要がある。
【0003】
そこで、一般的な画像形成装置の現像装置では、劣化した現像剤を排出するために、現像装置を作像時と同様に駆動させることにより現像担持体である現像ローラの軸方向に沿って現像剤を搬送し、現像装置の容器である現像ケースの現像ローラ軸方向の端部付近に設けられた排出口から容器外へ排出する方法が取られている。
【0004】
また、プロセスカートリッジのように現像装置の容器であるカートリッジ本体と潜像担持体である感光体ドラムが一体となっている現像装置においては、現像装置を作像時と同様に駆動させて現像剤をカートリッジ外へ排出する場合、感光体ドラムが停止している状態で、感光体ドラムと対向する現像ローラを回転させると感光体ドラムの表面に現像剤の穂が擦れて有機感光体層が傷付いてしまい、出力画像に不具合が生じるという問題があった。このため、現像剤を排出する際にも現像ローラ等を感光体ドラムと同時に駆動させる必要が生じていた。
【0005】
また、排出時は現像剤が排出経路に集中して排出経路で詰まることが懸念されるため、排出経路は充分に広く取る必要があり、レイアウト上の制約となっていた。そして、現像装置内全ての現像剤が排出されることが望ましいが、搬送スクリューとカートリッジの隔壁や側壁との間などには、現像剤が移動することなく滞留してしまう部分がどうしてもでき、完全には排出できないという問題もあった。そのうえ、現像剤の排出時間に要する時間は現像剤の流動性や残量に影響するため、現像剤の残量に関係なく一定時間搬送スクリューを回転させて現像剤を排出する方式にした場合は、現像装置内に残った劣化現像剤と新規に投入した新規現像剤が混入する結果となり、現像剤劣化の進行具合の予測が困難になるという問題もあった。
【0006】
このため、従来、現像剤の排出方法については、様々な提案がなされてきている。例えば、特許文献1及び2には、現像剤の搬送スクリューの形状を変えて排出経路に傾斜をつけることで排出効率を上げた現像装置が記載されている(特許文献1の段落0018、0022、0023、図4、図5等、特許文献2の段落0039〜0043、図3、図4等参照)。
【0007】
特許文献3には、シャッタを開いて、モータを駆動させて現像スリーブ、及び上・下オーガを回転させ、トナーセンサのセンサ出力をチェックしながら排出することにより装置内に収容する現像剤の量を安定させることができる現像装置が記載されている(特許文献3の段落0044〜0047、図1等参照)。
【0008】
また、特許文献4には、排出時の感光体ドラムの表面電位と現像バイアスを通常作像時よりも低く設定することで、現像剤排出時のキャリア付着を抑制している現像装置が記載されている(特許文献4の段落0051、0052、図12等参照)。
【0009】
しかし、特許文献1〜4に記載の現像装置では、感光体ドラムを駆動させずに、現像ローラのみを駆動させると、有機感光体層を傷付けてしまう可能性がある。また、感光体ドラムにトナー及びキャリアが移動してしまうため、感光体ドラムの表面電位や現像バイアス電位は、通常作像時の電位設定としなければならず、消費電力に無駄が生じていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、前記従来の現像装置の問題を解決するべく、感光体の表面を傷付けることなく劣化した現像剤の排出を効率良く行うことができる現像装置、それを備えたプロセスカートリッジ、及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の現像装置の発明は、現像剤を担持して静電潜像にトナーを供給する現像剤担持体と、該現像剤担持体に現像剤を搬送する現像剤搬送機構とを備え、劣化した現像剤を排出して新しい現像剤を補給することにより自動で現像剤を入れ替える現像剤排出モードを設けた現像装置において、前記現像剤排出モードでは、前記現像剤担持体を駆動させずに前記現像剤搬送機構のみを駆動させて現像剤を排出することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の現像装置の発明は、請求項1に記載の現像装置において、画像を出力して装置内の現像剤のトナー濃度を低下させてから現像剤排出モードを実行することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の現像装置の発明は、請求項2に記載の現像装置において、現像剤のトナー濃度を測定する濃度センサを備え、この濃度センサが所定濃度以下を検知するまでベタ画像を出力し続けてから現像剤排出モードを実行することを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の現像装置の発明は、請求項1ないし3いずれかに記載の現像装置において、現像剤担持体に担持される現像剤の層厚を規制する層厚規制部材を備え、現像剤担持体は、磁界が発生しない剤離れ極を含む複数の磁極が埋め込まれた回転可能なマグネットローラと、該マグネットローラに外嵌され回転駆動する現像スリーブとを有し、前記マグネットローラを回転させて剤離れ極が前記層厚規制部材付近となるようにしてから現像剤排出モードを実行することを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の現像装置の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の現像装置において、現像剤搬送機構は、回転することにより現像剤を搬送する現像剤搬送部材を備え、該現像剤搬送部材は、正逆回転可能に構成されており、現像剤排出モードにおいて、現像剤搬送部材を所定時間逆回転させることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の現像装置の発明は、請求項5に記載の現像装置において、現像剤排出モードでは、所定時間毎に回転方向を入れ替えながら現像剤搬送部材を回転させて現像剤を排出することを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の現像装置の発明は、請求項1に記載の現像装置において、現像剤排出モード実行後に現像担持体を所定時間回転させることを特徴とする。
【0018】
請求項8に記載のプロセスカートリッジの発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の現像装置を備えたことを特徴とする。
【0019】
請求項9に記載の画像形成装置の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の現像装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
この発明は、前記のようであって、請求項1の発明によれば、現像剤を担持して静電潜像にトナーを供給する現像剤担持体と、該現像剤担持体に現像剤を搬送する現像剤搬送機構とを備え、劣化した現像剤を排出して新しい現像剤を補給することにより自動で現像剤を入れ替える現像剤排出モードを設けた現像装置において、前記現像剤排出モードでは、前記現像剤担持体を駆動させずに前記現像剤搬送機構のみを駆動させて現像剤を排出するので、感光体の表面を傷付けることなく、劣化した現像剤の排出を効率良く行うことができる。また、現像バイアスを印加したり、現像担持体を駆動させたりしないので、その分省エネルギーである。
【0021】
請求項2の発明によれば、請求項1に記載の現像装置において、画像を出力して装置内の現像剤のトナー濃度を低下させてから現像剤排出モードを実行するので、現像剤のトナー濃度を下げて現像剤の流動性を高めることができ、劣化した現像剤の排出を更に効率良く行うことができる。
【0022】
請求項3の発明によれば、請求項2に記載の現像装置において、現像剤のトナー濃度を測定する濃度センサを備え、この濃度センサが所定濃度以下を検知するまでベタ画像を出力し続けてから現像剤排出モードを実行するので、現像剤の磁性キャリアが中間転写ユニットや潜像担持体などの他の装置に移動して損傷することなく、劣化した現像剤の排出を効率良く行うことができる。
【0023】
請求項4の発明によれば、請求項1ないし3いずれかに記載の現像装置において、現像剤担持体に担持される現像剤の層厚を規制する層厚規制部材を備え、現像剤担持体は、磁界が発生しない剤離れ極を含む複数の磁極が埋め込まれた回転可能なマグネットローラと、該マグネットローラに外嵌され回転駆動する現像スリーブとを有し、前記マグネットローラを回転させて剤離れ極が前記層厚規制部材付近となるようにしてから現像剤排出モードを実行するので、現像剤担持体に担持されたままの現像剤も排出することができ、更に効率良く劣化した現像剤の排出を行うことができる。
【0024】
請求項5の発明によれば、請求項1ないし4のいずれかに記載の現像装置において、現像剤搬送機構は、回転することにより現像剤を搬送する現像剤搬送部材を備え、該現像剤搬送部材は、正逆回転可能に構成されており、現像剤排出モードにおいて、現像剤搬送部材を所定時間逆回転させるので、現像剤の搬出路のデッドスペースとなる部分からも現像剤搬送部材を逆回転させることで現像剤を排出し易くなり、更に効率良く劣化した現像剤の排出を行うことができる。
【0025】
請求項6の発明によれば、請求項5に記載の現像装置において、現像剤排出モードでは、所定時間毎に回転方向を入れ替えながら現像剤搬送部材を回転させて現像剤を排出するので、更に効率良く劣化した現像剤の排出を行うことができる。
【0026】
請求項7の発明によれば、請求項1に記載の現像装置において、現像剤排出モード実行後に現像担持体を所定時間回転させるので、マグネットローラを回転可能な構成としなくても、現像剤担持体に担持されていた現像剤を落下させることができ、新規現像剤の汲み上げが短時間となり、感光体への損傷も最小限に止めることができる。
【0027】
請求項8の発明によれば、請求項1ないし7のいずれかに記載の現像装置を備えているので、前記作用効果をプロセスカートリッジで発揮することができる。
【0028】
請求項9の発明によれば、請求項1ないし7のいずれかに記載の現像装置を備えているので、前記作用効果を画像形成装置で発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例に係る画像形成装置の概略構成を正面視で示す構成説明図である。
【図2】実施例に係る現像装置の概略構成を示す鉛直断面図である。
【図3】同上の現像装置の現像剤の流れを示す水平断面図である。
【図4】同上の現像装置の現像剤の流れを示す鉛直断面斜視図である。
【図5】同上の現像装置の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら、この発明の実施の形態について説明する。
【0031】
[画像形成装置]
先ず、図1を用い本発明の実施の形態に係る画像形成装置の概略構成について説明する。図中の符号1は、本発明の画像形成装置の一実施の形態として例示する4連タンデム型中間転写方式の画像形成装置であり、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーからフルカラーの画像を形成可能なカラーレーザー複写機である。この複写機1は、画像形成装置の主要部であるプリンタ部100と、このプリンタ部100の下方に配置され、プリンタ部100を載置すると共に給紙装置としての機能を有する給紙部200と、プリンタ部100の上方に配置され、原稿を走査して読み込むスキャナ機能を有するスキャナ部300と、スキャナ部300の上方に開閉自在に取り付けられ、原稿をスキャナ部に自動搬送する自動搬送部400などから構成されている。
【0032】
プリンタ部100は、後述の感光体ドラムY,M,C,K上に静電潜像を書き込む露光部2と、露光部2で作像した静電潜像をトナー像に現像する作像部3と、現像したトナー像をシート材に転写する転写部4と、転写したトナー像をシート材に定着する定着部5などから構成されている。
【0033】
露光部2は、半導体レーザ(LD)や発光ダイオード(LED)などの図示しないレーザ光源や回転駆動可能なポリゴンミラー、fθレンズなどを有し、レーザ光源で発するレーザ光をポリゴンミラー、fθレンズなどで偏向・集光・走査して感光体ドラムY,M,C,Kに照射し、一様に所定の極性に帯電させた感光体ドラムY,M,C,Kの外周表面を露光して帯電レベルを減衰させて、静電潜像を形成する露光装置20から構成されている。
【0034】
作像部3には、ドラム形状の感光体である4つの感光体ドラムY,M,C,Kを中心とする前記4色のトナーに対応する4つのプロセスカートリッジ3Y,3M,3C,3Kが備えられており、各プロセスカートリッジ3Y,3M,3C,3Kでは、収容するイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナーを使用して、それぞれ単色のトナー像が形成される。各プロセスカートリッジ3Y,3M,3C,3Kは、感光体ドラムY,M,C,Kを一様に帯電させて初期化する帯電装置、感光体ドラムY,M,C,K外周表面上の静電潜像にトナーを供給して現像する現像装置、1次転写後も感光体ドラム上に付着残留する付着トナーをクリーニングする感光体ドラムクリーニング装置、感光体ドラムY,M,C,K表面を除電する除電装置などから構成され、これらの装置が作像ユニットとして一体となって、画像形成装置本体から脱着可能となっている。なお、現像装置については、後で詳述する。
【0035】
転写部4は、各プロセスカートリッジ3Y,3M,3C,3Kで形成した感光体ドラムY,M,C,K上の各色のトナー像を後述の中間転写ベルト40に重畳転写する中間転写ユニット41と、この中間転写ユニット41下方に設けられ、中間転写ベルト40上に形成した重畳トナー像をシート材に転写する2次転写装置42などから構成されている。この中間転写ユニット41は、中間転写体として半導電性の樹脂を基体として離型層などが設けられた多層構造の無端ベルトからなる中間転写ベルト40と、この中間転写ベルト40を支持・張架する3つの支持ローラ43,44,45と、前記4つの感光体ドラムY,M,C,Kとそれぞれ中間転写ベルト40を挟んで対向する4つの1次転写ローラ46などから構成されている。
【0036】
この支持ローラ43は、駆動手段として図示しない駆動モータの駆動力が伝達可能に構成され、中間転写ベルト40を図の矢印方向に回転駆動する駆動ローラ43となっており、その他の支持ローラ44,45が、従動ローラとなっている。勿論、支持ローラのいずれか1つが駆動ローラとなっていれば良く、図示する形態に限られないのは云うまでもない。
【0037】
各1次転写ローラ46は、空隙放電を考慮し、各感光体ドラムY,M,C,Kと中間転写ベルト40を挟んで当接する正対位置から中間転写ベルト40の移動方向下流側へ少しずらした位置に配設され、図示しないバイアス電源に接続されている接触方式の転写バイアス(転写電圧)印加手段である。これらの1次転写ローラ46は、図示しない接離機構により中間転写ベルト40の内周面と接離可能に構成されており、この接離機構に押圧されて各感光体ドラムY,M,C,Kへ圧接されることによりそれぞれ1次転写ニップを形成し、これらの各1次転写ニップにおいて各感光体ドラム上のトナー像と逆極性の1次転写バイアスが印加されて転写電界が形成され、クーロン力によりトナー像を引き寄せて各感光体ドラムから中間転写ベルト40の外周表面にトナー像を転写する仕組みとなっている。
【0038】
2次転写装置42は、支持ローラ44をバックアップローラとして支持ローラ44の外周において中間転写ベルト40に圧接されて2次転写ニップが形成され、図示しないバイアス電源に接続されており、トナー像と逆極性の2次転写バイアスを2次転写ニップに印加する接触印加方式の転写バイアス印加手段となっている。なお、本実施例では、転写バイアス印加手段として、転写チリの発生が少ない接触印加方式のものを採用したが、転写チャージャを用いた非接触方式のものでも構わない。
【0039】
また、駆動ローラ43と中間転写ベルト40を挟んで対向する位置にクリーニングユニット47が設けられており、このクリーニングユニット47は、中間転写ベルト40の外周表面に付着した転写残トナーをクリーニングブレードで掻き取って回収し、ファーブラシ等で離型剤を塗布するクリーニング装置であり、回収した転写残トナーは、クリーニングユニット47内から図示しない搬送手段により図示しない廃トナータンクまで搬送され、廃棄される。
【0040】
定着部5は、無端状ベルトからなる定着ベルト50と、この定着ベルト50と図示しない付勢手段により付勢されて圧接する加圧ローラ51などから構成され、この定着ベルト50は、定着ベルト50を回転駆動する駆動ローラである定着ローラと、内部にハロゲンヒータからなる加熱手段を有して定着ベルト50を加熱する加熱ローラと、に張架され、定着ベルト50と加圧ローラ51とが定着ローラ外周で圧接されて密着し、定着ニップが形成される。そして、この定着ニップにおいて、搬送されてきたシート材に熱と圧力が加えられ、転写部5で転写されたトナー像がシート材に定着される。
【0041】
給紙部200には、内部に所定の大きさの複数枚のシート材を束の状態で収容可能な給紙カセット60が、鉛直方向に複数重なるように配設されている。それぞれの給紙カセット60は、シート材の上部に給紙ローラ61が弾接し、給紙ローラ61を回転させることにより、一番上のシート材が用紙搬送路Rに向けて送り出される仕組みとなっている。この用紙搬送路Rには、複数の搬送ローラ対62が設けられ、その末端付近となる2次転写ニップ直前にレジストローラ対63が設けられている。
【0042】
スキャナ部300は、原稿を載置する透明なコンタクトガラス70と、このコンタクトガラス70を通して原稿を読み取る光学読取装置71などから主に構成され、この光学読取装置71は、移動する露光ランプなどの光源、この光源と共に移動するミラーなどの移動光学系を有し、光源から原稿に光を照射し、反射光をミラー、結像レンズなどを介してCCDなどの画像読取素子に結像させて画像を読み取る画像読取装置となっており、読み取った画像情報を電気信号に変換して図示しない書き込み用の制御手段へ送信する。
【0043】
自動搬送部400は、複写機本体に対してコンタクトガラス70を露出可能に開閉し、載置台80にセットした原稿をコンタクトガラス70上に自動搬送する自動原稿搬送装置としての機能を有し、自動搬送された原稿は、スキャナ部300の光学読取装置71により自動で読み取られるようになっている。
【0044】
(画像形成動作)
次に、複写機1の画像形成動作について図1を用いて説明する。
先ず、各プロセスカートリッジ3Y,3M,3C,3Kにおいて、帯電装置により感光体ドラムYの外周表面が均一に所定の極性に帯電され、露光部2から画像情報に基いてレーザ光が照射され、一様に帯電された感光体ドラムY,M,C,Kの表面電位が照射された部分だけ低下することにより感光体ドラムに静電潜像が形成される。そして、後述の現像装置30Yで静電潜像がトナー像化(現像)され、このトナー像は、感光体ドラムの回転に伴って1次転写ニップに移動して行き、そこで、1次転写ローラ46から1次転写バイアスが印加され、クーロン力により中間転写ベルト40表面へトナー像が移動して転写される。また、1次転写後も感光体ドラムYの外周表面に付着する1次転写残トナーが、クリーニング装置でクリーニングされ、再度の画像形成に備えられる。
【0045】
各プロセスカートリッジ3Y,3M,3C,3Kで形成された単色トナー像は、中間転写ベルト40の回転のタイミングに合わせてイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの順番で1次転写が行われ中間転写ベルト40上に重畳されて行き、フルカラーのトナー像が形成される。
【0046】
一方、給紙部200から搬送されてきたシート材がレジストローラ対63により転写とのタイミングが調整されて2次転写ニップに送られる。そこで、2次転写装置42により2次転写バイアスが印加され、静電引力により中間転写ベルト40上のフルカラーのトナー像がシート材上に転写される。次に、この未定着のトナー像を表面に担持したシート材が定着部5の定着ニップに送られ、熱と圧力が加えられて定着される。また、2次転写後の中間転写ベルト40の表面に転写後も付着する転写残トナーは、クリーニングユニット47により除去され、再度の画像形成動作に備えられる。そして、クリーニングユニット47で除去された転写残トナーは、図示しない廃トナータンクなどに運ばれ廃棄される。
【実施例】
【0047】
[現像装置]
次に、本発明の実施例に係る現像装置について図2〜5を用いて説明する。各プロセスカートリッジ3Y,3M,3C,3Kに設けられた現像装置は、使用するトナーの色が相違するだけで略同じ構成のため、イエロー色のプロセスカートリッジ3Yに設けられた現像装置30Yを例に挙げて説明し、他の構成は、説明を省略する。
【0048】
図2に示すように、現像装置30Yは、現像剤の供給路と回収路とを分けた3軸搬送方式の現像装置であり、主にトナーと磁性キャリアからなる粉体状のプレミックストナーからなる2成分現像剤を収容する装置全体の筐体である現像ケース31Yと、現像剤を担持して感光体ドラム上の静電潜像にトナーを供給する現像剤担持体としての現像ローラ32Yと、現像剤を撹拌しながら帯電させて搬送する現像剤搬送機構33Yと、現像ローラ32Yに所定間隔(本実施例では、0.5〜0.3mm)の間隙を介して対向配置され、現像ローラ32Yに担持される現像剤の層厚を規制する層厚規制部材としてのドクタブレード34Yと、2成分現像剤のトナー濃度を検知する濃度検知手段である図示しない濃度センサなど、から主に構成されている。
【0049】
現像ローラ32Yは、複数の磁極が埋め込まれた円柱状の永久磁石であるマグネットローラMYと、このマグネットローラMYに外嵌されて図の矢印方向に図示しない駆動手段で駆動されて回転可能な円筒状の金属製スリーブからなる現像スリーブSYと、から構成され、マグネットローラMYは作像時には治具により現像ケース31Yに対して固定されているが、固定治具を外すことにより現像スリーブSY内を回転可能となっている。
【0050】
現像剤搬送機構33Yは、トナーと磁性キャリアを撹拌しながら帯電させて図の矢印方向(図3、図4参照)に現像剤を搬送する現像剤撹拌搬送路R1と、その搬送スクリュー35Yと、図の矢印方向に現像剤を搬送し現像ローラ32Yに現像剤を供給する現像剤供給路R2と、その搬送スクリュー36Yと、現像ローラ32Yに担持されたが現像に使用されなかった現像剤を回収する回収搬送路R3と、その搬送スクリュー37Yなどから構成され、搬送スクリュー35Y,36Y,37Yは、それぞれ正逆回転可能な樹脂や金属などからなるスクリュー状の現像剤搬送部材である。
【0051】
また、図3中の符号38Yは、トナーと磁性キャリアからなるプレミックストナーが補給される補給口であり、符号39Yは、劣化した現像剤を排出する排出口である。補給口38Y及び排出口39Yは、図示しないシャッタ等の開閉部材により開閉自在となっている。
【0052】
図3及び図4に示すように、作像時においては、補給口38Yから補給されたプレミックストナーは、搬送スクリュー35Yで現像剤撹拌搬送路R1を図の矢印方向に搬送され、その末端で搬送スクリュー35Yの圧力により現像剤供給路R2に持ち上げられ、現像ローラ32Yに沿って現像剤供給路R2を進むうちにマグネットローラMYの磁力により現像スリーブSYの外周表面に汲み上げられる。そして、現像ローラ32Yに担持された現像剤は、ドクタブレード34Yの先端で堰き止められて、層厚が規制され、現像ローラ32Yと感光体ドラム(Y)とが近接対向する現像領域で現像バイアスが印加され、トナーが静電潜像に転移する。転移されずに現像ローラ32Yに担持されたままの現像剤は、現像ローラ32Yの回動に伴い、回収搬送路R3に達し、そこで、マグネットローラMYの磁界が発生しない領域(以下、剤離れ極という)に達することにより現像剤が落下して回収される。そして、回収搬送路R3の末端で再び現像剤撹拌搬送路R1に戻り、循環することとなる。
【0053】
(現像剤排出モード)
次に、本発明の特徴部分である現像剤排出モードについて図2〜5を参照しつつ説明する。
2成分現像剤方式の現像装置では、現像剤が何度も循環使用され続けると、トナーやキャリアの帯電能力が落ち、画像の地汚れや粒状性の低下が起こるため定期的に交換する必要がある。本実施例に係る現像装置では、自動的にプレミックスの現像剤を自動交換する現像剤排出モードを設けて現像装置内の現像剤のみを自動交換する。
【0054】
ところで、背景技術でも述べたが、現在主流となっている現像装置(現像器)と感光体ドラム(感光体)が一体となっているプロセスカートリッジ方式の画像形成装置においては、感光体ドラムを停止して現像装置のみを駆動させると現像剤の穂が感光体ドラムの表面の感光体層に当たり続けるため、感光体層が傷付いてしまうことから、現像剤の自動交換時には、排出口を開いた状態で少なくとも感光体ドラムと現像装置を通常作像動作させることにより現像剤を排出することが一般的となっている。また、感光体ドラムの表面電位と現像装置の現像バイアスの設定値もキャリア付着等で機械へのダメージを与えない作像時と同じに設定されている。
【0055】
しかし、現像ローラ及び感光体ドラムの駆動や現像バイアス印加は現像剤排出には本来不必要なものであり、消費電力の面からも好ましくない。そこで、本実施例に係る現像装置では、現像ローラを駆動させずに現像器内部の現像剤搬送機構のみを駆動させる方法を採用した。
【0056】
その他の方法として、現像ニップ(現像領域)を感光体ドラムと現像ローラに担持された現像剤が接触しないようにするために塞ぐ方法が考えられるが、現像ローラと感光体ドラムのギャップは、前記のように0.5〜0.3mm程度であり、近年更に狭くなる傾向にある。そのため、現像ニップを塞ぐ隔壁を設けることは困難であると考えられる。
【0057】
また、現像ローラを駆動させないと、現像ローラに担持された現像剤は現像ローラ上に留まり排出されないため、現像剤排出効率の低下が懸念される。しかし、発明者らの実験によれば、現像ローラ上に留まり排出されない現像剤の量は、全体の1割弱であり、且つ、後述の現像剤排出効率を高める工夫により現像剤排出効率の低下の懸念を払拭することに成功した。
【0058】
本実施例に係る現像装置の現像剤排出モードでは、感光体ドラムを駆動させずに前述の現像剤搬送機構(33Y)のみを所定時間(2分間)駆動させ、排出口(39Y)から現像剤を排出する。このとき、現像剤の排出容易性は、現像剤の流動性に大きく依存しており、流動性の高い現像剤は排出時に装置内の残存量が少なく排出効率が良いため、排出前に現像動作を行い、現像剤のトナー濃度を下げて現像剤の流動性を高めている。但し、トナー濃度を下げ過ぎると感光体ドラムへキャリアが移動してしまい、感光体ドラムのクリーニング時や中間転写ユニット(41)などの他ユニットへダメージを与えてしまうため、キャリア付着が発生しない適正なトナー濃度までの低下に留める必要がある。よって、本実施例に係る現像装置では、現像剤排出モードを実行する前に濃度センサで検知しながらベタ画像を出力することで、適正濃度である4wt%となるようにしている。
【0059】
また、本現像剤排出モードでは、マグネットローラ(MY)の治具を解除して剤離れ極が現像剤規制部材であるドクタブレード(34Y)付近まで来るように回転させ、ドクタブレード付近に留まった現像剤を現像剤供給路(R2)に落下させて現像剤の排出効率を高めている。
【0060】
なお、マグネットローラ(MY)を回転可能に構成することなく、現像剤排出モード実行後に現像ローラ(32Y)を所定時間(10秒)空転させることで、現像ローラに担持された現像剤がマグネットローラの剤離れ極を通過するようにして回収搬送路(R3)で回収してもよい。そうすることで、現像ローラの回転時間を必要最小限にして感光体層の損傷を抑えつつ、作像時の現像ローラへの現像剤の汲み上がりを短時間にして、現像剤排出効率も高めることができるからである。
【0061】
更に、現像剤搬送機構(33Y)の搬送スクリュー(35Y,36Y,37Y)を一定時間逆回転させることで搬送路内のデッドスペースに溜まった現像剤を排出できるようにしてもよい。本現像剤排出モードでは、現像剤搬送機構(33Y)の搬送スクリュー(35Y,36Y,37Y)の回転方向を所定時間(20秒)毎に変え、定期的に逆回転させることで搬送路内のデッドスペースに溜まった現像剤を排出可能とし、現像剤の排出効率を高めている。
【0062】
以上のように、本実施例に係る現像装置によれば、感光体ドラムを駆動させずに現像剤搬送機構のみを所定時間駆動させて排出口(39Y)から劣化した現像剤を排出するので、感光体ドラムの感光体層を傷付けることなく、現像剤を排出することができる。そのうえ、現像バイアスを印加しないので、省エネルギーである。
【0063】
また、マグネットローラの治具を解除して剤離れ極が現像剤規制部材であるドクタブレード付近まで来るように回転させ、搬送スクリューの回転方向を所定時間毎に変えるので、現像剤の排出効率を高めることができる。
【0064】
(効果確認実験)
次に、本実施例に係る現像装置の効果を確認するために、RICOH社製 imagio Neo C7500を改造し、図3に示す位置に現像剤の排出口を設け、後述のパターン1〜6の計6つの現像剤排出モードのパターンにより、現像バイアスの印加は行わずに搬送スクリューのみを駆動させて現像剤を排出し、その後の現像装置内の現像剤の残存量を測定すると共に、感光体ドラムの表面の損傷を出力画像の地汚れやバラツキを目視することにより3段階で判定し、新しい現像剤を投入した後の画質の回復度合いを把握するために、粒状度を算出してハーフトーン部の粒状性についてランク付けを実施した。
【0065】
(パターン1)
基本パターンであり、現像剤排出モードで現像剤搬送機構の搬送スクリューを2分間だけ駆動させて現像剤を排出するパターンである。
【0066】
(パターン2)
パターン1実行後に、現像ローラを10秒間だけ空転させるパターンである。
【0067】
(パターン3)
濃度センサで4wt%と検知するまでベタ画像を出力し続けて現像装置内の現像剤のトナー濃度を低下させ、その後にパターン1を実行するパターンである。
【0068】
(パターン4)
マグネットローラの治具を解除して剤離れ極がドクタブレード付近まで来るように回転させて、パターン1を実行するパターンである。
【0069】
(パターン5)
搬送スクリューの回転方向を20秒毎に変えながらパターン1を実行するパターンである。
【0070】
(パターン6)
比較例として示す従来例に係る現像剤排出モードのパターンであり、現像剤排出モード時に現像ローラも駆動させて現像剤搬送機構の搬送スクリューを2分間だけ駆動させて現像剤を排出するパターンである。
【0071】
以上の実験結果を次表にまとめた。この表から分かるように、パターン2、パターン5は、比較例であるパターン6と略同等の現像剤排出効率を達成しており、現像バイアスを印加しない分、省エネルギー的に有利であり、且つ、感光体傷判定においてもパターン6が許容できないレベルまで傷付いているのに対して、パターン2でも許容できるレベルとなっており、パターン5では、充分許容できるレベルとなっている。その他のパターン1、3、4についても現像剤の残存量が一番多いパターン1でさえ、残存量は78gであり、全体の現像剤の量からすると1割弱であり、現像剤排出効率においても然程問題とならない。そして、パターン6と比べて感光体ドラム表面の傷や粒状性については明らかに良好であり、現像剤を入れ替えることにより画質が略初期状態に戻ったことが分かる。
【0072】
【表1】

【0073】
なお、この発明の実施の形態に係る画像形成装置として、4連タンデム型の中間転写方式の複写機を例に挙げて説明したが、必ずしもこのようなものに限られず、現像剤排出モードを設けて自動で装置内の現像剤を入れ替える現像装置を備えた画像形成装置には、本発明を適用することができる。
【0074】
そして、実施の形態の説明におけるトナー容器収容部、露光部、転写部、定着部、作像部などは、あくまでも一例を示したものであって、他の公知の装置・手段などの構成を採用することができる。その場合でも、前記課題に対して同様の作用効果を奏することは明らかである。また、図面で示した各構成部材の形状や構造等も、あくまでも好ましい一例を示すものであり、特許請求の範囲内で適宜設計変更可能であることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
1 複写機(画像形成装置)
Y,M,C,K 感光体ドラム(感光体、潜像担持体)
3Y,3M,3C,3K プロセスカートリッジ
30Y 現像装置
31Y 現像ケース
32Y 現像ローラ(現像剤担持体)
33Y 現像剤搬送機構
34Y ドクタブレード(層厚規制部材)
35Y,36Y,37Y 搬送スクリュー(現像剤搬送部材)
39Y 排出口
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】
【特許文献1】特開平06−89061号公報
【特許文献2】特開2006−215331号公報
【特許文献3】特開2000−155460号公報
【特許文献4】特開2006−221114号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を担持して静電潜像にトナーを供給する現像剤担持体と、該現像剤担持体に現像剤を搬送する現像剤搬送機構とを備え、劣化した現像剤を排出して新しい現像剤を補給することにより自動で現像剤を入れ替える現像剤排出モードを設けた現像装置において、
前記現像剤排出モードでは、前記現像剤担持体を駆動させずに前記現像剤搬送機構のみを駆動させて現像剤を排出することを特徴とする現像装置。
【請求項2】
画像を出力して装置内の現像剤のトナー濃度を低下させてから前記現像剤排出モードを実行することを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
現像剤のトナー濃度を測定する濃度センサを備え、この濃度センサが所定濃度以下を検知するまでベタ画像を出力し続けてから前記現像剤排出モードを実行することを特徴とする請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記現像剤担持体に担持される現像剤の層厚を規制する層厚規制部材を備え、前記現像剤担持体は、磁界が発生しない剤離れ極を含む複数の磁極が埋め込まれた回転可能なマグネットローラと、該マグネットローラに外嵌され回転駆動する現像スリーブとを有し、
前記マグネットローラを回転させて前記剤離れ極が前記層厚規制部材付近となるようにしてから前記現像剤排出モードを実行することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項5】
前記現像剤搬送機構は、回転することにより現像剤を搬送する現像剤搬送部材を備え、該現像剤搬送部材は、正逆回転可能に構成されており、前記現像剤排出モードにおいて、前記現像剤搬送部材を所定時間逆回転させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の現像装置。
【請求項6】
前記現像剤排出モードでは、所定時間毎に回転方向を入れ替えながら前記現像剤搬送部材を回転させて現像剤を排出することを特徴とする請求項5に記載の現像装置。
【請求項7】
前記現像剤排出モード実行後に現像担持体を所定時間回転させることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の現像装置を備えたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載の現像装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−145465(P2011−145465A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5843(P2010−5843)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】