説明

現像装置および画像形成装置

【課題】トナーと逆極性の荷電粒子を含むトナーの中から荷電粒子を回収する現像装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】第一の極性に帯電されるトナー6と、トナーの第一の極性とは逆の第二の極性に帯電されるキャリアと、第二の極性に帯電された荷電粒子と、を含む現像剤2を用いて、静電潜像担持体上の静電潜像を可視像化する現像装置34であって、当該現像装置は、第一の搬送部材54と、第一の領域を介して第一の搬送部材に対向し、第二の領域を介して前記静電潜像担持体に対向する第二の搬送部材48と、第一の搬送部材と第二の搬送部材との間に第一の電界を形成して、第一の搬送部材が保持している現像剤中のトナーを第二の搬送部材に移動させる第一の電界形成手段を備えており、第一の電界に10乃至100kHzの高周波を重畳する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置、及び当該画像形成装置に使用される現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に採用されている現像方式として、現像剤の主成分としてトナーのみを用いる一成分現像方式と、現像剤の主成分としてトナー及びキャリアを用いる二成分現像方式と、が知られている。
【0003】
一成分現像方式の現像装置は、トナーを担持して搬送するトナー担持搬送ローラと該トナー担持部材担持搬送ローラのトナー担持面に接触する摩擦荷電部材を備えている。トナー担持部材に担持されているトナーは、摩擦荷電部材の接触位置を通過する際、摩擦荷電部材と摩擦接触して薄層化されると共に所定の極性に帯電される。このように、一成分現像装置は、トナーの帯電を摩擦荷電部材との摩擦接触によって行っていることから、構成が簡単・小型・安価であるという利点がある。しかしながら、摩擦荷電部材の接触位置で強いストレスを受けることからトナーが劣化し易く、そのためにトナーの帯電性が比較的早期に損なわれる。また、トナー担持部材と摩擦荷電部材との接触圧によって両者にトナーが付着してするため、トナーを帯電する能力が低下し、結果的に、現像装置の寿命が比較的短くなる。
【0004】
二成分現像方式の現像装置では、トナーとキャリアとを摩擦接触させることによって両者を所定の極性に荷電させるために、トナーの受けるストレスが一成分現像装置に比べて少ない。キャリアも、その表面積がトナーに比べて大きいことから、トナーが付着して汚れることも少ない。しかしながら、長期間の使用によりキャリアの表面に付着する汚れ(スペント)トナーが増加し、そのためにトナーを帯電させる能力が低下し、かぶりやトナー散の問題が生じる。二成分現像装置の長寿命化を図るために、現像装置に収容するキャリアの量を増やすことが考えられるが、これは現像装置の大型化を招く。
【0005】
二成分現像装置に係わる上述の問題を解消するため、特許文献1には、キャリア又はキャリアとトナーと共に又は単独でキャリアを少しずつ現像剤に補給するとともに、帯電性能の低下した現像剤を少しずつ排出することによって、劣化したキャリアの増加を抑制する現像装置が開示されている。この技術によれば、現像装置を大型化することなく、現像剤の長寿命化が可能である。しかしながら、排出されたキャリアを回収する機構が必要である。また、キャリアの消費量が多く、それによるコストアップと環境面の問題を含む。さらに、未劣化キャリアと劣化キャリアの比率が安定するまでに所定量の印刷を行う必要がある。
【0006】
特許文献2には、マトリックス樹脂中に樹脂微粒子と導電性微粉末とを分散して含有した樹脂被覆層を芯材上に設けたキャリア及びそれを用いた画像形成方法が開示されている。このキャリアは、他の粒子(キャリア粒子、トナー粒子)や部材(ローラ、スクリュー)との接触によってその表面が部分的に削れた場合、新たな樹脂微粒子が表面に露出し、これがトナーと接触して該トナーを必要程度まで帯電させる。しかしながら、樹脂被覆層の厚さは限られており、この樹脂被覆層が消費されるとキャリアが寿命に達する。
【0007】
特許文献3には、キャリアと荷電粒子を表面に担持したトナーとからなる二成分現像剤及びそれを用いた現像方法が提案されている。荷電粒子は、キャリアの表面に主にトナーが付着してできる汚れ(スペント)を取り除き、キャリアの長寿命化を図るための研磨材として添加されている。また、特許文献3には、静電潜像担持体のクリーニング領域において、荷電粒子が静電潜像担持体の表面を研磨する機能を発揮することも記載されている。しかしながら、荷電粒子はトナーの帯電極性と逆の極性に帯電される性質を有することから、静電潜像の非画像部に付着して早期に消費されてしまうという問題がある。特に、画像部の面積が小さな画像(例えば、文字画像)を作成する場合、大量の荷電粒子が静電潜像の非画像部で消費され、キャリアを研磨して再生する能力が十分に発揮されないという問題がある。
【0008】
特許文献4には、磁気ローラと、現像ローラを備えた現像装置を有し、磁気ローラの外周面に保持されたトナーとキャリアとを含む現像剤からトナーだけを選択的に現像ローラの外周面に供給し、この現像ローラの外周面に保持されたトナーを用いて感光体上の静電潜像(静電潜像画像部)を現像する画像形成装置が提案されている。特徴として、特許文献4の発明では、トナーとキャリアのいずれの表面にも保持されることなくトナーとキャリアとの間に介在し、トナーの粉砕微粉がキャリアの表面に付着してスペントが形成されることを防止する荷電粒子が現像剤に含まれている。しかしながら、荷電粒子は、現像装置に初期導入された現像剤中にのみ含まれている。また、荷電粒子はトナーとキャリアのいずれの表面にも保持されていないために、その一部が、トナーとの電気的な結合によってトナーと共に現像ローラに供給された後に感光体上の静電潜像非画像部に付着して徐々に消費されることから、例えば文字画像のように画像面積比(白黒比)の小さな画像を大量に印刷すると、荷電粒子だけが大量に消費されてしまい、長期的に安定したトナーの荷電性が得られないという問題がある。
【0009】
ところで、ハイブリッド現像方式においては、磁気ローラ上の現像剤からトナーだけを分離して現像ローラ上に供給するべく、磁気ローラと現像ローラとの間には供給電位差(トナー供給電位)が印加されている。
【0010】
しかしながら、理想的には、トナーだけが現像ロール上に供給されるべきであるが、現実的には、静電引力や分子間力や付着力等の様々な引力によって、現像ロール上に供給されるトナーにはトナーと逆極性の荷電粒子が含まれている。したがって、トナーとともに逆極性の荷電粒子が現像ローラ上に供給されることによって、トナーと一緒に供給・消費された逆極性の荷電粒子も適宜補充しなければならないことや、印刷枚数を重ねると、逆極性の外添剤が現像ローラ上に薄く付着するフィルミング現象が発生するために、現像剤の搬送量の低下を招いて高品質な画像を維持できないという問題がある。
【特許文献1】特開昭59−100471号公報
【特許文献2】特開平9−269614号公報
【特許文献3】特開2003−215855号公報
【特許文献4】特開2006−308687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の解決すべき技術的課題は、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤のキャリアに長期に亘って安定したトナー帯電性を付与し得るように、トナーと逆極性の荷電粒子を含むトナーの中から荷電粒子を回収する現像装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および作用・効果】
【0012】
前記技術的課題を解決するために、本発明によれば、
第一の極性に帯電されるトナーと、
摩擦接触によって前記トナーの第一の極性とは逆の第二の極性に帯電されるキャリアと、
前記トナーの表面に離脱可能に保持された状態で供給され、前記トナーの表面から分離したあとに前記キャリアの表面に保持される第二の極性に帯電された荷電粒子と、を含む現像剤を用いて、静電潜像担持体上の静電潜像を可視像化する現像装置であって、当該現像装置は、
第一の搬送部材と、
第一の領域を介して前記第一の搬送部材に対向し、第二の領域を介して前記静電潜像担持体に対向する第二の搬送部材と、
前記第一の搬送部材と前記第二の搬送部材との間に第一の電界を形成して、前記第一の搬送部材が保持している現像剤中のトナーを前記第二の搬送部材に移動させる第一の電界形成手段を備えており、
前記第一の電界に10乃至100kHzの高周波を重畳することを特徴とする現像装置が提供される。
【0013】
請求項1に係る現像装置において、所定の高周波を重畳した第一の電界を第一の搬送部材と第二の搬送部材との間に印加すると、第一極性のトナー表面に保持された第二の極性の荷電粒子が、振動してトナー表面から脱離する。振動によって脱離した第二の極性の荷電粒子は、直流電界によって第一の搬送部材の側に移動して回収される。所定周波数よりも低い周波数を重畳すると、第二の極性の荷電粒子がトナー表面から脱離することは起こるものの、第一の搬送部材と第二の搬送部材との間で往復運動して第二の搬送部材にも付着してしまう。所定周波数より高い周波数を重畳すると、第二の極性の荷電粒子が高周波の電界変動に追随することができないために、トナーから遊離しにくくなるために、高周波印加効果が結果的に減少してしまう。したがって、所定の高周波を重畳した第一の電界を印加することによって、第二の極性の荷電粒子をトナー表面から脱離させることができる。
【0014】
上述した現像装置は、電子写真方式の画像形成装置に組み込んで使用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。なお、以下の説明では、特定の方向を意味する用語(例えば、「上」、「下」、「左」、「右」、およびそれらを含む他の用語、「時計回り方向」、「反時計回り方向」)を使用するが、それらの使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明は限定的に解釈されるべきものでない。また、以下に説明する画像形成装置及び現像装置では、同一又は類似の構成部分には同一の符号を用いている。
【0016】
図1乃至3を参照しながら、本発明の一実施形態に係る画像形成装置1及び当該装置に使用される現像装置34について説明する。
【0017】
〔1.画像形成装置〕
図1は、本発明に係る電子写真式画像形成装置1の画像形成に関連する部分を示す。画像形成装置1は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、およびそれらの機能を複合的に備えた複合機のいずれであってもよい。画像形成装置1は、静電潜像坦持体である感光体12を有する。実施形態において、感光体12は円筒体で構成されているが、本発明はそのような形態に限定されるものでなく、代わりに無端ベルト式の感光体も使用可能である。感光体12は、図示しないモータに駆動連結されており、モータの駆動に基づいて矢印14方向に回転するようにしてある。感光体12の周囲には、感光体12の回転方向に沿って、帯電ステーション16、露光ステーション18、現像ステーション20、転写ステーション22、およびクリーニングステーション24が配置されている。
【0018】
帯電ステーション16は、感光体12の外周面である感光体層を所定の電位に帯電する帯電装置26を備えている。実施形態では、帯電装置26は円筒形状のローラとして表されているが、これに代えて他の形態の帯電装置(例えば、回転型又は固定型のブラシ式帯電装置、ワイヤ放電式帯電装置)も使用できる。露光ステーション18は、感光体12の近傍又は感光体12から離れた場所に配置された露光装置28から出射された画像光30が、帯電された感光体12の外周面に向けて進行するための通路32を有する。露光ステーション18を通過した感光体12の外周面には、画像光が投射されて電位の減衰した部分とほぼ帯電電位を維持する部分からなる、静電潜像が形成される。実施形態では、電位の減衰した部分が静電潜像画像部、ほぼ帯電電位を維持する部分が静電潜像非画像部である。現像ステーション20は、粉体現像剤を用いて静電潜像を可視像化する現像装置34を有する。現像装置34の詳細は後に説明する。転写ステーション22は、感光体12の外周面に形成された可視像を紙やフィルムなどのシート38に転写する転写装置36を有する。実施形態では、転写装置36は円筒形状のローラとして表されているが、他の形態の転写装置(例えば、ワイヤ放電式転写装置)も使用できる。クリーニングステーション24は、転写ステーション22でシート38に転写されることなく感光体12の外周面に残留する未転写トナーを感光体12の外周面から回収するクリーニング装置40を有する。実施形態では、クリーニング装置40は板状のブレードとして示されているが、代わりに他の形態のクリーニング装置(例えば、回転型又は固定型のブラシ式クリーニング装置)も使用できる。
【0019】
このような構成を備えた画像形成装置1の画像形成時、感光体12はモータ(図示せず)の駆動に基づいて時計周り方向に回転する。このとき、帯電ステーション16を通過する感光体外周部分は、帯電装置26で所定の電位に帯電される。帯電された感光体外周部分は、露光ステーション18で画像光30が露光されて静電潜像が形成される。静電潜像は、感光体12の回転と共に現像ステーション20に搬送され、そこで現像装置34によって現像剤像として可視像化される。可視像化された現像剤像は、感光体12の回転と共に転写ステーション22に搬送され、そこで転写装置36によりシート38に転写される。現像剤像が転写されたシート38は図示しない定着ステーションに搬送され、そこでシート38に現像剤像が固定される。転写ステーション22を通過した感光体外周部分はクリーニングステーション24に搬送され、そこでシート38に転写されることなく感光体12の外周面に残存する現像剤が回収される。
【0020】
〔2.現像装置〕
現像装置34は、第一の成分粒子である非磁性トナーと第二の成分粒子である磁性キャリアを含む2成分現像剤と以下に説明する種々の部材を収容するハウジング42を備えている。図面を簡略化することで発明の理解を容易にするため、ハウジング42の一部は削除してある。ハウジング42は感光体12に向けて開放された開口部44を備えており、この開口部44の近傍に形成された空間46にトナー搬送部材(第二の搬送部材)である現像ローラ48が設けてある。現像ローラ48は、円筒状の部材(第二の回転円筒体)であり、感光体12と平行に且つ感光体12の外周面と所定の現像ギャップ50を介して、回転可能に配置されている。
【0021】
現像ローラ48の背後には、別の空間52が形成されている。空間52には、現像剤搬送部材(第一の搬送部材)である搬送ローラ54が、現像ローラ48と平行に且つ現像ローラ48の外周面と所定の供給回収ギャップ56を介して配置されている。搬送ローラ54は、回転不能に固定された磁石体58と、磁石体58の周囲を回転可能に支持された円筒スリーブ60(第一の回転円筒体)を有する。搬送ローラ54のスリーブ60の上方には、ハウジング42に固定され、搬送ローラ54のスリーブ60の中心軸と平行に延在する規制板62が、所定の規制ギャップ64を介して対向配置されている。
【0022】
磁石体58は、搬送ローラ54の内面に対向し、搬送ローラ54の中心軸方向に延在する、複数の磁極を有する。実施形態では、複数の磁極は、規制板62の近傍にある搬送ローラ54の上部内周面部分に対向する磁極S1、供給回収ギャップ56の近傍にある搬送ローラ54の左側内周面部分に対向する磁極N1、搬送ローラ54の下部内周面部分に対向する磁極S2、搬送ローラ54の右側内周面部分に対向する、2つの隣接する同極性の磁極N2,N3を含む。
【0023】
搬送ローラ54の背後には、現像剤攪拌室66が形成されている。攪拌室66は、搬送ローラ54の近傍に形成された前室68と搬送ローラ54から離れた後室70を有する。前室68には図面の表面から裏面に向かって現像剤を攪拌しながら搬送する前攪拌搬送部材である前スクリュー72が回転可能に配置され、後室70には図面の裏面から表面に向かって現像剤を攪拌しながら搬送する後攪拌部材搬送部材である後スクリュー74が回転可能に配置されている。図示するように、前室68と後室70は、両者の間に設けた隔壁76で分離してもよい。この場合、前室68と後室70の両端近傍にある隔壁部分は除かれて連絡通路が形成されており、前室68の下流側端部に到達した現像剤が連絡通路を介して後室70へ送り込まれ、また後室70の下流側端部に到達した現像剤が連絡通路を介して前室68に送り込まれるようにしてある。
【0024】
このように構成された現像装置34の動作を説明する。画像形成時、図示しないモータの駆動に基づいて、現像ローラ48と搬送ローラ54のスリーブ60はそれぞれ矢印78,80方向に回転する。前スクリュー72は矢印82方向に回転し、後スクリュー74は矢印84方向に回転する。これにより、現像剤攪拌室66に収容されている現像剤2は、前室68と後室70を循環搬送されながら、攪拌される。その結果、現像剤に含まれるトナーとキャリアが摩擦接触し、互いに逆の極性に帯電される。実施形態では、キャリアは正極性、トナーは負極性に帯電されるものとする。キャリアはトナー6に比べて相当大きい。そのため、正極性に帯電したキャリアの周囲に、負極性に帯電したトナー6が、主として両者の電気的な吸引力に基づいて付着している。
【0025】
帯電された現像剤2は、前スクリュー72によって前室68を搬送される過程で搬送ローラ54に供給される。前スクリュー72から搬送ローラ54に供給された現像剤2は、磁極N3の近傍で、磁極N3の磁力によって、搬送ローラ54のスリーブ60の外周面に保持される。搬送ローラ54のスリーブ60に保持された現像剤2は、磁石体58によって形成された磁力線に沿って磁気ブラシを構成しており、搬送ローラ54のスリーブ60の回転に基づいて反時計周り方向に搬送される。規制板62の対向領域(規制領域86)で磁極S1に保持されている現像剤2は、規制板62により、規制ギャップ64を通過する量が所定量に規制される。規制ギャップ64を通過した現像剤2は、磁極N1が対向する、現像ローラ48と搬送ローラ54が対向する領域(供給回収領域)88に搬送される。後に詳細に説明するように、供給回収領域88のうち、主に搬送ローラ54のスリーブ60の回転方向に関して上流側の領域(供給領域)90では、現像ローラ48と搬送ローラ54のスリーブ60との間に形成された電界の存在により、キャリアに付着しているトナー6が現像ローラ48に電気的に供給される。また、供給回収領域88のうち、主に搬送ローラ54のスリーブ60の回転方向に関して下流側の領域(回収領域)92では、後に説明するように、現像に寄与することなく供給回収領域88に送り戻された現像ローラ48上のトナーが、磁極N1の磁力線に沿って形成されている磁気ブラシに掻き取られて搬送ローラ54のスリーブ60に回収される。キャリアは磁石体58の磁力によって搬送ローラ54のスリーブ60の外周面に保持されており、搬送ローラ54のスリーブ60から現像ローラ48に移動することはない。供給回収領域88を通過した現像剤2は、磁石体58の磁力に保持され、搬送ローラ54のスリーブ60の回転と共に磁極S2の対向部を通過して磁極N2とN3の対向領域(放出領域94)に到達すると、磁極N2とN3によって形成される反発磁界によって搬送ローラ54のスリーブ60の外周面から前室68に放出され、前室68を搬送されている現像剤2に混合される。
【0026】
供給領域90で現像ローラ48に保持されたトナー6は、現像ローラ48の回転と共に反時計周り方向に搬送され、感光体12と現像ローラ48が対向する領域(現像領域)96で、感光体12の外周面に形成されている静電潜像画像部に付着する。実施形態の画像形成装置では、感光体12の外周面は帯電装置26で負極性の所定の電位VHが付与され、露光装置28で画像光30が投射された静電潜像画像部が所定の電位VLまで減衰し、露光装置28で画像光30が投射されていない静電潜像非画像部はほぼ帯電電位VHを維持している。したがって、現像領域96では、感光体12と現像ローラ48との間に形成されている電界の作用を受けて、負極性に帯電したトナー6が静電潜像画像部に付着し、この静電潜像を現像剤像として可視像化する。
【0027】
このようにして現像剤2からトナー6が消費されると、消費された量に見合う量のトナー6が現像剤2に補給されることが好ましい。そのために、現像装置34は、ハウジング42に収容されているトナーとキャリアの混合比を測定する手段を備えている。また、後室70の上方にはトナー補給部98が設けてある。トナー補給部98は、トナー6を収容するための容器100を有する。容器100の底部には開口部102が形成されており、この開口部102に補給ローラ104が配置されている。補給ローラ104は図示しないモータに駆動連結されており、トナーとキャリアの混合比を測定する手段の出力に基づいてモータが駆動し、トナー6が後室70に落下補給するようにしてある。
【0028】
〔3.電界形成手段〕
供給領域90で搬送ローラ54のスリーブ60から現像ローラ48にトナー6を効率的に移動させるために、現像ローラ48と搬送ローラ54のスリーブ60とは、電界形成装置110と電気的に接続されている。
【0029】
図2に示す本発明の一実施形態に係る電界形成装置110において、第一の電源112は、搬送ローラ54のスリーブ60とグランドとの間に直流電源と交流電源を有する。直流電源は、トナー6の帯電極性と同一極性の第一の直流電圧VDC1(例えば、−500V)を搬送ローラ54のスリーブ60に印加する。交流電源144は、搬送ローラ54のスリーブ60とグランドとの間に振幅(ピーク・ツー・ピーク電圧)VP−Pが例えば1500V、周波数20kHzの交流電圧VAC1を印加する。第二の電源114は、現像ローラ48とグランドとの間に、直流電源及び交流電源を有する。直流電源は、トナー6の帯電極性と同一極性の第一の直流電圧VDC2(例えば、−200V)を現像ローラ48に印加する。交流電源は、現像ローラ48とグランドとの間に振幅(ピーク・ツー・ピーク電圧)VP−Pが例えば1500V、周波数1.5kHzの交流電圧VAC2を印加する。したがって、供給領域90では、現像ローラ48と搬送ローラ54のスリーブ60との間に形成された脈流電界の作用を受けて、負極性に帯電しているトナー6が搬送ローラ54のスリーブ60から現像ローラ48に電気的に吸引される。また、現像領域96では、現像ローラ48上の負極性トナーが、現像ローラ48(VDC2:−200V)と静電潜像画像部(VL:−80V)との電位差に基づき、静電潜像画像部に付着する。
【0030】
なお、比較例としての電界形成装置は、搬送ローラ54のスリーブ60に接続された第一の電源112と、現像ローラ48に接続された第二の電源114とを有する。第一の電源112は、搬送ローラ54のスリーブ60とグランド116との間に接続された直流電源を有し、トナー6の帯電極性と同一極性で且つ第二の直流電圧よりも低圧の第一の直流電圧VDC1(例えば、−500V)を搬送ローラ54のスリーブ60に印加する。第二の電源114は、現像ローラ48とグランドとの間に直流電源と交流電源を有する。直流電源は、トナー6の帯電極性と同一極性で且つ第一の直流電圧よりも高圧の第二の直流電圧VDC2(例えば、−200V)を現像ローラ48に印加している。交流電源は、現像ローラ48とグランドとの間にピーク・ツー・ピーク電圧VP−Pが例えば1500V、周波数1.5kHzの交流電圧VAC2を印加する。
【0031】
〔4.現像剤〕
一般に、トナーとキャリアを主成分とする2成分現像剤は、キャリアの表面にトナーが付着してできる汚れ(スペント)が発生し、これがキャリアの寿命を低下させる。そこで、この問題を解消するために、本発明では、2成分現像剤に第3の成分として荷電粒子(インプラント粒子)が添加されている。
【0032】
具体的に説明すると、本発明の画像形成装置及び現像装置は、トナー6とキャリアの他に、トナー6との摩擦接触によりトナー6を正規の極性(実施形態では負極性)に帯電する、トナー6よりも小径の荷電粒子を含む。実施の形態において、荷電粒子は、トナー6の外周面に離脱可能に保持されており、トナー補給部98からトナー6と共に補給される。
【0033】
画像形成時、荷電粒子はトナー6やキャリアとともに、ハウジング42の中を搬送された後、搬送ローラ54のスリーブ60に保持されて規制領域86、供給回収領域88、放出領域94を移動する。この搬送過程で、トナー6の表面に保持されて正極性に帯電している荷電粒子は、供給回収領域88の電界中に置かれると、トナー6に作用する電気的な力とは逆の方向の電気的な力を受けてトナー6の外周面から離脱する。離脱した荷電粒子は、該分離した荷電粒子とキャリアとの間に作用するストレスによってキャリアの外周面に保持される又は打ち込まれる。キャリアの外周面の一部又は全体がスペントで覆われている場合、荷電粒子はスペントに打ち込まれる。キャリアの外周面に保持され又は打ち込まれた荷電粒子は、トナー6との摩擦接触によりトナー6と逆の極性に帯電する。実施形態では、トナー6は負極性に帯電されるため、荷電粒子は正極性に帯電される。その結果、荷電粒子が打ち込まれたキャリアは、たとえその外周面の少なくとも一部がスペントに被覆されていても、スペントの無い状態と同様の荷電性を維持し、トナー6を所定の極性に帯電する。
【0034】
上述のように、荷電粒子は、トナー6と逆の極性に帯電される。そのため、供給回収領域88では、現像ローラ48と搬送ローラ54のスリーブ60の間に形成される電界に基づいてトナー6は搬送ローラ54のスリーブ60から現像ローラ48に移動する。また、トナー6から分離した荷電粒子は、供給領域90でトナー6が奪われることによって比較的キャリアリッチとなっている現像剤のキャリア表面に素早く保持されて、トナー6と共に現像ローラ48に供給されることがない、または現像ローラ6に供給されるとしてもその量は極めて僅かである。
【0035】
ところで、上述の特許文献4で説明した現像装置では、荷電粒子は、トナーとキャリアのいずれの表面にも保持されることなく両者の間に比較的自由な状態で存在する。また、現像装置に初期導入された荷電粒子は、トナーの帯電極性とは逆の極性に帯電している。そのため、トナーと電気的に結合してトナーと共に現像ローラに供給された後、感光体上の静電潜像非画像部に付着して徐々に無くなり、それと共にトナーの荷電性が低下する。しかし、本願発明の現像装置では、上述のように、供給回収領域88でトナー6から分離した荷電粒子はその後素早くキャリアに保持されて搬送ローラ54のスリーブ60の外周面に留まることから、トナー6と同じように現像ローラ48を介して感光体12に供給されて消費されることはないので、長期に亘って安定したトナーの荷電性が得られる。もっとも、本実施例においてもいくらかの荷電粒子はトナー6と共に現像ローラ48に供給されるが、荷電粒子はトナーと共に補給部98から新たに補給されるため、無くなることはなく、よって、長期に亘って安定したトナーの荷電性が得られる。
【0036】
なお、実施形態では、トナー6とキャリアとの摩擦接触によりトナー6は負極性、キャリアは正極性に帯電される。また、荷電粒子は、トナー6との接触により該トナーを負極性に帯電するとともに、荷電粒子は正極性に帯電する。本発明に用いるトナー、キャリア、荷電粒子の帯電性は、そのような組み合わせに限るものでない。具体的に、トナー6とキャリアとの摩擦接触によりトナー6は正極性、キャリアは負極性に帯電され、荷電粒子は、トナー6との接触により該トナー6を正極性に帯電するとともに、荷電粒子は負極性に帯電する組み合わせも考えられる。
【0037】
〔5.具体的な材料〕
トナー、キャリア、荷電粒子、および現像剤に含まれる他の粒子の具体的な材料を説明する。
【0038】
〔荷電粒子〕
好適に使用される荷電粒子は、トナー6の帯電極性に応じて適宜選択される。荷電粒子の個数平均粒径は、例えば、100〜1000nmである。キャリアとの摩擦接触により負極性に帯電するトナー6を用いる場合、荷電粒子は、トナー6との接触により正極性に帯電する微粒子が用いられる。そのような微粒子は、例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、アルミナ等の無機微粒子やアクリル樹脂、ベンゾグァナミン樹脂、ナイロン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂で構成できる。微粒子を構成する樹脂にトナーとの接触により正極性に帯電する正荷電制御剤を含有させてもよい。正荷電制御剤には、例えば、ニグロシン染料、四級アンモニウム塩等が使用できる。荷電粒子は含窒素モノマーで構成してもよい。含窒素モノマーを構成する材料には、例えば、アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、アクリル酸2−ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジエチルアミノエチル、ビニールピリジン、N−ビニールカルバゾール、ビニールイミダゾールがある。
【0039】
キャリアとの摩擦接触により正極性に帯電するトナーの場合、荷電粒子は、トナーとの接触により負極性に帯電する微粒子が用いられる。このような微粒子は、例えば、シリカ、酸化チタン等の無機微粒子、また、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等の、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂で構成された微粒子が使用できる。トナーとの接触により負極性に帯電する負荷電制御剤を、荷電粒子を構成する樹脂に含有させてもよい。負荷電制御剤には、例えば、サリチル酸系、ナフトール系のクロム錯体、アルミニウム錯体、鉄錯体、亜鉛錯体等を使用できる。荷電粒子は、含フッ素アクリル系モノマーや含フッ素メタクリル系モノマーの共重合体であってもよい。
【0040】
荷電粒子の帯電性および疎水性を制御するために、無機微粒子の表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理してもよい。特に、無機微粒子に正極帯電性を付与する場合、アミノ基含有カップリング剤で表面処理することが好ましい。微粒子に負極性帯電性を付与する場合、フッ素基含有カップリング剤で表面処理することが好ましい。
【0041】
〔トナー〕
トナー6には、画像形成装置で従来から一般に使用されている公知のトナーを使用できる。トナー粒径は、例えば約3〜15μmである。バインダー樹脂中に着色剤を含有させたトナー、荷電制御剤や離型剤を含有するトナー、表面に添加剤を保持するトナーも使用できる。
【0042】
トナー6は、例えば、粉砕法、乳化重合法、懸濁重合法等の公知の方法で製造できる。
【0043】
〔バインダー樹脂〕
トナーに使用されるバインダー樹脂は、限定的ではないが、例えば、スチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、ポリエステル樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、またはそれらの樹脂を任意に混ぜ合わせたものである。バインダー樹脂は、軟化温度が約80〜160℃の範囲、ガラス転移点が約50〜75℃の範囲であることが好ましい。
【0044】
〔着色剤〕
着色剤は、公知の材料、例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、活性炭、マグネタイト、ベンジンイエロー、パーマネントイエロー、ナフトールイエロー、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、ウルトラマリンブルー、ローズベンガル、レーキーレッド等を用いることができる。着色剤の添加量は、一般に、バインダー樹脂100重量部に対して、2〜20重量部であることが好ましい。
【0045】
〔荷電制御剤〕
荷電制御剤は、従来から荷電制御剤として知られている材料が使用できる。具体的に、正極性に帯電するトナーには、例えばニグロシン系染料、4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂が荷電制御剤として使用できる。負極性に帯電するトナーには、Cr、Co、Al、Fe等の金属含有アゾ系染料、サリチル酸金属化合物、アルキルサリチル酸金属化合物、カーリックスアレーン化合物が荷電制御剤として使用できる。荷電制御剤は、バインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の割合で用いることが好ましい。
【0046】
離型剤は、従来から離型剤として使用されている公知のものを使用できる。離型剤の材料には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、カルナバワックス、サゾールワックス、又はそれらを適宜組み合わせた混合物が用いられる。離型剤は、バインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の割合で用いることが好ましい。
【0047】
〔その他の添加剤〕
その他、現像剤の流動化を促進する流動化剤を添加してもよい。流動化剤には、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム等の無機微粒子や、アクリル樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂微粒子が使用できる。特にシランカップリング剤、チタンカップリング剤、およびシリコンオイル等で疎水化した材料を用いるのが好ましい。流動化剤は、トナー100重量部に対して、0.1〜5重量部の割合で添加させることが好ましい。これら添加剤の個数平均一次粒径は9〜100nmであることが好ましい。
【0048】
〔キャリア〕
キャリアは、従来から一般に使用されている公知のキャリアを使用できる。バインダー型キャリアやコート型キャリアのいずれを用いてもよい。キャリア粒径は、限定的ではないが、約15〜100μmが好ましい。
【0049】
バインダー型キャリアは、磁性体微粒子をバインダー樹脂中に分散させたものであり、表面に正極性または負極性に帯電する微粒子又はコーティング層を有するものが使用できる。バインダー型キャリアの極性等の帯電特性は、バインダー樹脂の材質、帯電性微粒子、表面コーティング層の種類によって制御できる。
【0050】
バインダー型キャリアに用いられるバインダー樹脂としては、ポリスチレン系樹脂に代表されるビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂等の硬化性樹脂が例示される。
【0051】
バインダー型キャリアの磁性体微粒子としては、マグネタイト、ガンマ酸化鉄等のスピネルフェライト、鉄以外の金属(Mn、Ni、Mg、Cu等)を一種または二種以上含有するスピネルフェライト、バリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライト、表面に酸化層を有する鉄や合金の粒子を用いることができる。キャリアの形状は、粒状、球状、針状のいずれであってもよい。特に高磁化を要する場合には、鉄系の強磁性微粒子を用いることが好ましい。化学的な安定性を考慮すると、マグネタイト、ガンマ酸化鉄を含むスピネルフェライトやバリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライトの強磁性微粒子を用いることが好ましい。強磁性微粒子の種類及び含有量を適宜選択することにより、所望の磁化を有する磁性樹脂キャリアを得ることができる。磁性体微粒子は磁性樹脂キャリア中に50〜90重量%の量で添加することが適当である。
【0052】
バインダー型キャリアの表面コート材としては、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂等が用いられる。これらの樹脂をキャリア表面にコートし硬化させてコート層を形成することにより、キャリアの電荷付与能力を向上できる。
【0053】
バインダー型キャリアの表面への帯電性微粒子あるいは導電性微粒子の固着は、例えば、磁性樹脂キャリアと微粒子とを均一混合し、磁性樹脂キャリアの表面にこれら微粒子を付着させた後、機械的・熱的な衝撃力を与えることにより微粒子を磁性樹脂キャリア中に打ち込むことで行われる。この場合、微粒子は、磁性樹脂キャリア中に完全に埋設されるのではなく、その一部が磁性樹脂キャリア表面から突出するように固定される。帯電性微粒子には、有機、無機の絶縁性材料が用いられる。具体的に、有機系の絶縁性材料としては、ポリスチレン、スチレン系共重合物、アクリル樹脂、各種アクリル共重合物、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂およびこれらの架橋物などの有機絶縁性微粒子がある。電荷付与能力および帯電極性は、帯電性微粒子の素材、重合触媒、表面処理等に調整できる。無機系の絶縁性材料としては、シリカ、二酸化チタン等の負極性に帯電する無機微粒子や、チタン酸ストロンチウム、アルミナ等の正極性に帯電する無機微粒子が用いられる。
【0054】
コート型キャリアは、磁性体からなるキャリアコア粒子を樹脂で被覆したキャリアであり、バインダー型キャリア同様に、キャリア表面に正極性または負極性に帯電する帯電性微粒子を固着することができる。コート型キャリアの極性等の帯電特性は、表面コーティング層の種類や帯電性微粒子の選択により調整できる。コーティング樹脂は、バインダー型キャリアのバインダー樹脂と同様の樹脂が使用可能である。
【0055】
トナーとキャリアの混合比は所望のトナー帯電量が得られるよう調整されれば良く、トナー比はトナーとキャリアとの合計量に対して3〜50重量%、好ましくは6〜30重量%が好ましい。
【0056】
〔実験A〕
図1の画像形成装置を用いて、所定高周波の交流電圧印加の効果を調べた。
【0057】
〔トナー〕
トナー6の製造方法は以下のとおりである。湿式造粒法で作成された体積平均粒径約6.5μmのトナー母材100重量部に、複数の添加剤−第一の疎水性シリカ0.2重量部、第二の疎水性シリカ0.5重量部、疎水性酸化チタン0.5重量部−を添加した。次に、三井鉱山社製のヘンシェルミキサを用い、添加剤が添加されたトナー母材を攪拌して添加剤をトナー母材の表面に付着させ、負極帯電性のトナーを得た。ミキサの回転速度は40m/秒、攪拌時間は3分間であった。第一の疎水性シリカは、個数平均一次粒径16nmのシリカ(#130:日本アエロジル社製)を疎水化剤のヘキサメチルジラザン(HMDS)で表面処理して得たものである。第二の疎水性シリカは、固体平均一次粒径20nmのシリカ(#90:日本アエロジル社製)をHMDSで表面処理して得たものである。疎水性酸化チタンは、個数平均一次粒径30nmのアナターゼ型酸化チタンを、水系湿式環境で、疎水化剤のイソブチルトリメトキシシランにより表面処理して得たものである。
【0058】
上記トナー6に、荷電粒子として個数平均粒径350nmのチタン酸ストロンチウムを添加した。荷電粒子の添加量は、トナーに含まれるトナー母材粒子100重量部に対して、1.5重量部であった。次に、荷電粒子が添加されたトナーを三井鉱山社製のヘンシェルミキサで攪拌し、トナーの表面に荷電粒子を付着させて、トナー6を得た。ミキサの回転速度は40m/秒、攪拌時間は3分間であった。
【0059】
〔キャリア〕
実験に用いたキャリアは、コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製bizhub C350キャリアである。このキャリアは、Mn・Znフェライト球の磁性体からなるキャリアコア粒子にアクリル系樹脂をコーティングしたコート型キャリアであり、粒径は40μmである。
【0060】
〔実施例1〕
現像装置34は、図1に示した形態の現像装置を使用した。現像剤は、上述のキャリアとトナーを用いた。現像剤中のトナー比率を8%に調整した。トナー比率は、現像剤全体の重量に対する、トナーと荷電粒子を含む添加材との合計重量の割合である。トナーとキャリアの混合比を12%にした。耐刷における画像比率(B/W比)は5%である。電界形成装置は、図2に示す形態を採用し、搬送ローラ54のスリーブ60には直流電圧VDC1:−750Vと交流電圧を印加した。交流電圧VAC1は、表1に示すように、周波数:8乃至120kHz、振幅VP−P:250乃至3000Vの矩形波であった(図2参照)。現像ローラ48には、直流電圧VDC2:−500Vと交流電圧を印加した。交流電圧は、周波数:1.5kHz、振幅VP−P:1500Vの矩形波であった(図2参照)。したがって、負極性に帯電したトナー6を搬送ローラ54のスリーブ60から現像ローラ48にバイアスする供給電位差(トナー供給電圧)は250Vである。
【0061】
現像ローラ48には、表面をアルマイト処理したアルミニウムローラを用いた。現像ローラ48と搬送ローラ54のスリーブ60との間の供給回収ギャップは0.4mmに設定した。現像ローラ48と搬送ローラ54のスリーブ60とは同一方向に回転し、供給回収領域88でスリーブ60上の現像剤搬送方向と現像ローラ48上のトナー6が逆方向に移動するようにした。
【0062】
〔比較例〕
実施例1と同一の現像剤を用いた。現像装置としては、上記現像装置を用いるとともに、図3に示した電圧パターンを印加した。すなわち、搬送ローラ54のスリーブ60には、直流電圧VDC1:−750Vだけを印加した。その他の条件は、上記実施例1と同一である。
【0063】
50K枚又は100K枚の耐刷を行った後の、地肌かぶりを、すなわち非画像部にトナー6が付着していることを評価対象にして、地肌かぶりに関する幾つかのランクの限界見本を作成し、目視によって評価した。表の中で、◎印は地肌かぶりが無くて極めて良好であること、〇印は地肌かぶりがほとんど無くて良好であること、△印は実用限界レベルであること、×印は地肌かぶりのために実用レベルから逸脱していること、をそれぞれ示している。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
表1においてサンプル番号の右側に付した*印は、本願発明の範囲から外れることを示している。表1に示すように、現像ローラ48には、直流電圧と交流電圧を印加するとともに、直流電圧と周波数が10乃至100kHzの高周波交流電圧を搬送ローラ54のスリーブ60に印加すると、50K枚又は100K枚の耐刷を行った後であっても、地肌かぶりがほとんど起こっていない良好な結果が得られた。これに対して、表1の*印を付したサンプル(サンプル番号11、17、24)のように所定範囲外の高周波交流電圧の印加の場合、あるいは表2の比較例1の直流電圧の印加の場合には、地肌かぶりが発生していた。なお、VP−Pは2000V以下であることが望ましい。VP−Pが2500Vになると、荷電粒子が大きな電界によって往復運動を始めるために高周波印加効果が相対的に小さくなってしまう。また、搬送ローラ54のスリーブ60と現像ローラ48との間で、放電が起こりやすくなる。
【0067】
10乃至100kHzの高周波を重畳した第一の電界を搬送ローラ54のスリーブ60と現像ローラ48との間に印加すると、負極性のトナー表面に保持された正極性の荷電粒子が、振動してトナー表面から脱離する。10kHzの周波数より低い周波数を重畳すると、正極性の荷電粒子がトナー表面から脱離することは起こるものの、搬送ローラ54のスリーブ60と現像ローラ48との間で往復運動して現像ローラ48にも付着して消費されてしまう。100kHzの周波数より高い周波数を重畳すると、正極性の荷電粒子が高周波の電界変動に追随することができないために、トナー6から遊離しにくくなるために、高周波印加効果が結果的に減少してしまう。
【0068】
〔実施例2〕
次に、第一の電界を変化させたときの、高周波印加効果を調べた。表3は、搬送ローラ54のスリーブ60に対して、直流電圧VDC1:−800Vと、所定の交流電圧とを印加した結果を示している。また、表4は、搬送ローラ54のスリーブ60に対して、直流電圧VDC1:−600Vと、所定の交流電圧とを印加した結果を示している。
【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
表3及び4から明らかなように、第一の電界の大きさを変化させたときでも、上記実施例1と同様の顕著な高周波印加効果が得られた。
【0072】
〔実施例3〕
荷電粒子として上記チタン酸ストロンチウムの代わりに、個数平均粒径350nmのチタン酸ベリリウムを添加したトナー(表5)、個数平均粒径350nmのチタン酸カルシウムを添加したトナー(表6)、個数平均粒径350nmのチタン酸マグネシウムを添加したトナー(表7)、をそれぞれ作成した。各荷電粒子の添加量は、トナー6に含まれるトナー母材粒子100重量部に対して、1.5重量部とした。それ以外の実験方法や評価方法等は、上述した実施例1と同じである。
【0073】
【表5】

【0074】
【表6】

【0075】
【表7】

【0076】
表5乃至7の結果から明らかなように、荷電粒子の材料を変化させたときでも、上記実施例1と同様の顕著な高周波印加効果が得られた。
【0077】
〔実施例4〕
荷電粒子として、個数平均粒径350nmのチタン酸ベリリウムを添加したトナー(表5)、個数平均粒径350nmのチタン酸カルシウムを添加したトナー(表6)、個数平均粒径350nmのチタン酸マグネシウムを添加したトナー(表7)、をそれぞれ作成した。各荷電粒子の添加量は、トナー6に含まれるトナー母材粒子100重量部に対して、0.8重量部とした。それ以外の実験方法や評価方法等は、上述した実施例1と同じである。
【0078】
【表8】

【0079】
【表9】

【0080】
【表10】

【0081】
表8乃至10の結果から明らかなように、荷電粒子の添加量を変化させたときでも、上記実施例1と同様の顕著な高周波印加効果が得られた。これは、所定周波数の高周波の重畳印加によって荷電粒子がトナー6から脱離して、直流電界によって搬送ローラ54のスリーブ60に移動して、荷電粒子が確実に回収されていることを示している。したがって、荷電粒子の添加量が少なくても、荷電粒子の添加効果が得られて、現像剤の長寿命化が達成されている。
【0082】
〔実施例5〕
荷電粒子として、個数平均粒径100nmのチタン酸ストロンチウムを添加したトナー、個数平均粒径850nmのチタン酸ストロンチウムを添加したトナー、をそれぞれ作成した。これらのトナーを用いて上記実施例1と同様の実験を行った結果、いずれも場合でも実施例1と同様にACバイアス周波数10乃至100kHzにおいて、地肌かぶりの無い良好な結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の一実施形態に係る現像装置及び画像形成装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る、電界形成装置から搬送ローラ及び現像ローラに供給されている電圧関係を示す図である。
【図3】比較例に係る、電界形成装置から搬送ローラ及び現像ローラに供給されている電圧関係を示す図である。
【符号の説明】
【0084】
1:画像形成装置
2:現像剤
6:トナー
12:感光体
16:帯電ステーション
18:露光ステーション
20:現像ステーション
22:転写ステーション
24:クリーニングステーション
26:帯電装置
28:露光装置
30:画像光
32:通路
34:現像装置
36:転写装置
38:シート
40:クリーニング装置
42:ハウジング
44:開口部
46:第二の空間
48:現像ローラ
50:現像ギャップ
52:第二の空間
54:搬送ローラ
56:供給回収ギャップ
58:磁石体
60:スリーブ
63:規制板
64:規制ギャップ
66:現像剤攪拌室
68:前室
70:後室
72:前スクリュー
74:後スクリュー
76:隔壁
86:規制領域
88:供給回収領域
90:供給領域
92:回収領域
94:放出領域
96:現像領域
98:トナー補給部
100:容器
102:開口部
104:補給ローラ
110:電界形成装置
112:第一の電源
114:第二の電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の極性に帯電されるトナーと、
摩擦接触によって前記トナーの第一の極性とは逆の第二の極性に帯電されるキャリアと、
前記トナーの表面に離脱可能に保持された状態で供給され、前記トナーの表面から分離したあとに前記キャリアの表面に保持される第二の極性に帯電された荷電粒子と、を含む現像剤を用いて、静電潜像担持体上の静電潜像を可視像化する現像装置であって、当該現像装置は、
第一の搬送部材と、
第一の領域を介して前記第一の搬送部材に対向し、第二の領域を介して前記静電潜像担持体に対向する第二の搬送部材と、
前記第一の搬送部材と前記第二の搬送部材との間に第一の電界を形成して、前記第一の搬送部材が保持している現像剤中のトナーを前記第二の搬送部材に移動させる第一の電界形成手段を備えており、
前記第一の電界に10乃至100kHzの高周波を重畳することを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1記載の現像装置を含むことを特徴とする、画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−225330(P2008−225330A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66674(P2007−66674)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】