説明

現像装置および画像形成装置

【課題】履歴現象を防止できる現像装置を提供する
【解決手段】現像装置の現像剤は、トナーとキャリアを含む。トナーとキャリアは相互の摩擦接触によって両者は異なる極性に帯電される。現像装置はまた、第1の搬送部材と、第2の領域を介して静電潜像担持体に対向する第2の搬送部材を有する。電界形成装置は、第1の搬送部材と第2の搬送部材との間に第1の電界を形成し、第1の搬送部材が保持している現像剤中のトナーを第2の搬送部材に移動させるとともに、第2の搬送部材と静電潜像担持体との間に第2の電界を形成して、第2の搬送部材が保持しているトナーを静電潜像担持体の静電潜像に移動させる。第1の電界は、時間平均電界強度がトナーを第1の搬送部材から第2の搬送部材に供給する側に偏りつつもトナーを第2の搬送部材に供給する作用およびトナーを第2の搬送部材から回収する作用の両方の作用を有する振動電界であって、かつ第2の搬送部剤から第1の搬送部剤に前記トナーを回収する作用を果たす時間比率が60〜80%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、電子写真方式の画像形成装置、及びこの画像形成装置に使用される現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に採用されている現像方式として、現像剤の主成分としてトナーのみを用いる一成分現像方式と、現像剤の主成分としてトナーとキャリアを用いる二成分現像方式が知られている。
【0003】
一成分現像方式の現像装置は、トナーを担持して搬送するトナー担持部材と該トナー担持部材のトナー担持面に接触する摩擦荷電部材を備えている。トナー担持部材に担持されているトナーは、摩擦荷電部材の接触位置を通過する際、摩擦荷電部材と摩擦接触して薄層化されると共に所定の極性に帯電される。このように、一成分現像装置は、トナーの帯電を摩擦荷電部材との摩擦接触によって行っているため、構成が簡単・小型・安価であるという利点がある。しかし、摩擦荷電部材の接触位置で強いストレスを受けることからトナーが劣化し易く、そのためにトナーの帯電性が比較的早期に損なわれる。また、トナー担持部材と摩擦荷電部材との接触圧によって両者にトナーが付着してトナーを帯電する能力が低下し、結果的に、現像装置の寿命が比較的短くなる。
【0004】
二成分現像方式の現像装置は、現像剤担持体上に保持された現像剤の磁気ブラシからトナーを像担持体上の静電潜像に供給して現像するものである。現像剤を構成するトナーとキャリアは現像装置内で摩擦接触させることによって両者を所定の極性に荷電するため、トナーの受けるストレスは一成分現像装置に比べて少ない。キャリアも、その表面積はトナーに比べて大きいことから、トナーが付着して汚れることも少ない。しかし、二成分現像方式では、磁気ブラシを直接像担持体に接触させて現像する際に、磁気ブラシによる掃きムラが生じ摺擦ノイズが画像に現れるという不都合があった。
【0005】
上述したような一成分現像方式と二成分現像方式の双方の利点を生かすという観点から、トナーの帯電はストレスの小さい二成分方式で行い、静電潜像の現像はかぶりの問題が比較的小さい一成分現像で行う、いわゆるハイブリッド現像方式の現像装置が特許文献1および2に記載されている。このハイブリッド現像方式では、比較的大粒径のトナーが選択的にトナー担持体から静電潜像に供され易いために、連続印刷を行うと高電位に帯電した比較的小粒径のトナーがトナー担持体上に堆積して選択現像が起こり易く、形成される画像に濃度低下が生じる傾向があった。そのため、トナー担持体上においてトナーが現像に供されなかった部分(現像残部)と現像に供されて消費された部分(現像部)があると、現像残部のトナーのうち現像剤担持体上の磁気ブラシによる機械的な掻き取られ易い低帯電トナーのみが回収され高帯電トナーが残ったままになる一方で、現像部に対しては前記磁気ブラシから平均的な帯電量のトナーがトナー担持体に新たに供給されるために、前回の現像画像の一部が次回の現像時に残像(メモリー画像)として現れる現象、いわゆる履歴現象が発生し易いという不具合がある。具体例で説明すると、図17Aに示すように小さい矩形黒ベタ画像3に続けてこれを包含する大きさの矩形グレーハーフトーン画像5を形成する場合、トナー担持体上でトナーの消費領域と非消費領域が生じることで、図17Bに示すように黒ベタ画像3のトナー消費領域に対応した残像7がハーフトーン画像5に現れてしまう。
【0006】
また、特許文献2に開示される画像形成装置は、磁気ローラと現像ローラを備えた現像装置を有し、磁気ローラの外周面に保持されたトナーとキャリアを含む現像剤からトナーだけを選択的に現像ローラの外周面に供給し、この現像ローラの外周面に保持されたトナーを用いて感光体上の静電潜像(静電潜像画像部)を現像するようになっている。特徴として、特許文献2の発明では、トナーとキャリアのいずれの表面にも保持されることなくトナーとキャリアとの間に介在し、トナーの粉砕微粉がキャリアの表面に付着してスペントが形成されることを防止する荷電粒子が現像剤に含まれている。しかし、荷電粒子は、現像装置に初期導入された現像剤中にのみ含まれている。また、荷電粒子はトナーとキャリアのいずれの表面にも保持されていないために、その一部が、トナーとの電気的な結合によってトナーと共に現像ローラに供給された後感光体上の静電潜像非画像部に付着して徐々に消費されることから、例えば文字画像のように画像面積比率または画像比率(いわゆる白黒比)の小さな画像を大量に印刷すると、荷電粒子だけが大量に消費されてしまい、長期的に安定したトナーの荷電性が得られないという問題がある。
【0007】
上述したハイブリッド現像方式における履歴現象を解消するためには、現像領域を通過した後の位置でトナー担持体または現像ローラからのトナー回収性を高める必要がある。このため、現像剤担持体としての磁気ローラの磁極配置、現像剤搬送量、現像ローラとの間の距離等の条件を調節することにより現像ローラと磁気ローラとの間での現像剤密度を高めることによって、現像ローラからのトナー回収効率を上げることが考えられる。
しかしながら、両ローラ間の現像剤密度を高くすると、現像剤の目詰まりによるトルク上昇や発熱といった不具合が生じるという問題がある。
【0008】
また、ハイブリッド現像方式において現像ローラからのトナー回収性向上のために、特許文献3では、現像ローラと磁気ローラとの間にトナー回収に有利に作用する振動電界を形成することが提案されているが、これでは磁気ローラから現像ローラにトナーを供給するという本来の機能を損なうことになる。このため、特許文献4では、画像形成動作を終了した後の非画像形成時に現像ローラ上のトナーを電気的に回収する電界を作用させることが提案されているが、バイアス制御の複雑化や回収バイアス印加に伴い磁気ローラ上のキャリアが現像ローラに静電的に吸着し易くなるという問題がある。
【0009】
【特許文献1】特開昭56−40862号公報
【特許文献2】特開2006−308687号公報
【特許文献3】特開2003−280357号公報
【特許文献4】特開2005−10290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本願発明は、ハイブリッド現像方式における履歴現象を解消できる現像装置およびそれを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するため、本願発明は、トナーとキャリアを含む現像剤を用いて、静電潜像担持体上の静電潜像を可視像化する現像装置であって、
トナーとキャリアを含み、前記トナーとキャリアは相互の摩擦接触によって前記トナーが第1の極性に帯電されると共に前記キャリアが前記第1の極性とは異なる第2の極性に帯電される現像剤と、
回転駆動される第1の搬送部材と、
第1の領域を介して前記第1の搬送部材に対向し、前記第1の領域において前記第1の搬送部材とは逆方向に移動するように回転駆動され、かつ第2の領域を介して前記静電潜像担持体に対向する第2の搬送部材と、
前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材との間に第1の電界を形成して、前記第1の搬送部材が保持している現像剤中のトナーを前記第2の搬送部材に移動させる第1の電界形成手段と、
前記第2の搬送部材と前記静電潜像担持体との間に第2の電界を形成して、前記第2の搬送部材が保持している前記トナーを前記静電潜像担持体の静電潜像に移動させて前記静電潜像を可視像化する第2の電界形成手段とを備えており、
前記前記第1の電界は、該電界を発生させる振動電圧の平均電位が前記トナーを前記第1の搬送部材から前記第2の搬送部材に供給する側に偏りつつも前記トナーを前記第2の搬送部材に供給する作用および前記トナーを前記第2の搬送部材から回収する作用の両方の作用を有する振動電界であって、かつ前記振動電圧に関して前記第2の搬送部剤から前記第1の搬送部剤に前記トナーを回収する作用を果たす時間比率が60〜80%であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
このような本願発明によれば、前記のような振動電界を第1の搬送部材と第2の搬送部材との間に作用させることで、第1の搬送部剤から第2の搬送部材へのトナー供給性能を損なうことなく、第2の搬送部剤からトナーを効率良く回収することができ、その結果、履歴現象を防止できる。
【0013】
また、本願発明の現像装置において、前記現像剤に前記荷電粒子を更に添加すれば(請求項2に対応)、トナーと逆極性の荷電粒子をトナーから分離させるべくトナー供給方向の電界を強めた場合であっても、トナーの回収効率を落とすことなく、キャリア表面に保持された荷電粒子によって長期に亘って安定したトナー帯電性を付与することがきる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本願発明の好適な実施形態を説明する。なお、以下の説明では、特定の方向を意味する用語(例えば、「上」、「下」、「左」、「右」、およびそれらを含む他の用語、「時計回り方向」、「反時計回り方向」)を使用するが、それらの使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本願発明は限定的に解釈されるべきものでない。また、以下に説明する画像形成装置及び現像装置では、同一又は類似の構成部分には同一の符号を用いている。
【0015】
〔1.画像形成装置〕
図1は、本願発明に係る電子写真式画像形成装置の画像形成に関連する部分を示す。画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、およびそれらの機能を複合的に備えた複合機のいずれであってもよい。画像形成装置1は、静電潜像坦持体である感光体12を有する。実施形態において、感光体12は円筒体で構成されているが、本願発明はそのような形態に限定されるものでなく、代わりに無端ベルト式の感光体も使用可能である。感光体12は、図示しないモータに駆動連結されており、モータの駆動に基づいて矢印14方向に回転するようにしてある。感光体12の周囲には、感光体12の回転方向に沿って、帯電ステーション16、露光ステーション18、現像ステーション20、転写ステーション22、およびクリーニングステーション24が配置されている。
【0016】
帯電ステーション16は、感光体12の外周面である感光体層を所定の電位に帯電する帯電装置26を備えている。実施形態では、帯電装置26は円筒形状のローラとして表されているが、これに代えて他の形態の帯電装置(例えば、回転型又は固定型のブラシ式帯電装置、ワイヤ放電式帯電装置)も使用できる。露光ステーション18は、感光体12の近傍又は感光体12から離れた場所に配置された露光装置28から出射された画像光30が、帯電された感光体12の外周面に向けて進行するための通路32を有する。露光ステーション18を通過した感光体12の外周面には、画像光が投射されて電位の減衰した部分とほぼ帯電電位を維持する部分からなる、静電潜像が形成される。実施形態では、電位の減衰した部分が静電潜像画像部、ほぼ帯電電位を維持する部分が静電潜像非画像部である。現像ステーション20は、粉体現像剤を用いて静電潜像を可視像化する現像装置34を有する。現像装置34の詳細は後に説明する。転写ステーション22は、感光体12の外周面に形成された可視像を紙やフィルムなどのシート38に転写する転写装置36を有する。実施形態では、転写装置36は円筒形状のローラとして表されているが、他の形態の転写装置(例えば、ワイヤ放電式転写装置)も使用できる。クリーニングステーション24は、転写ステーション22でシート38に転写されることなく感光体12の外周面に残留する未転写トナーを感光体12の外周面から回収するクリーニング装置40を有する。実施形態では、クリーニング装置40は板状のブレードとして示されているが、代わりに他の形態のクリーニング装置(例えば、回転型又は固定型のブラシ式クリーニング装置)も使用できる。
【0017】
このような構成を備えた画像形成装置1の画像形成時、感光体12はモータ(図示せず)の駆動に基づいて時計周り方向に回転する。このとき、帯電ステーション16を通過する感光体外周部分は、帯電装置26で所定の電位に帯電される。帯電された感光体外周部分は、露光ステーション18で画像光30が露光されて静電潜像が形成される。静電潜像は、感光体12の回転と共に現像ステーション20に搬送され、そこで現像装置34によって現像剤像として可視像化される。可視像化された現像剤像は、感光体12の回転と共に転写ステーション22に搬送され、そこで転写装置36によりシート38に転写される。現像剤像が転写されたシート38は図示しない定着ステーションに搬送され、そこでシート38に現像剤像が固定される。転写ステーション22を通過した感光体外周部分はクリーニングステーション24に搬送され、そこでシート38に転写されることなく感光体12の外周面に残存する現像剤が回収される。
【0018】
〔2.現像装置〕
現像装置34は、第1の成分粒子である非磁性トナーと第2の成分粒子である磁性キャリアを含む2成分現像剤と以下に説明する種々の部材を収容するハウジング42を備えている。図面を簡略化することで発明の理解を容易にするため、ハウジング42の一部は削除してある。ハウジング42は感光体12に向けて開放された開口部44を備えており、この開口部44の近傍に形成された空間46にトナー搬送部材(第2の搬送部材)である現像ローラ48が設けてある。現像ローラ48は、円筒状の部材(第2の回転円筒体)であり、感光体12と平行に且つ感光体12の外周面と所定の現像ギャップ50を介して、回転可能に配置されている。
【0019】
現像ローラ48の背後には、別の空間52が形成されている。空間52には、現像剤搬送部材(第1の搬送部材)である搬送ローラ54が、現像ローラ48と平行に且つ現像ローラ48の外周面と所定の供給回収ギャップ56を介して配置されている。搬送ローラ54は、回転不能に固定された磁石体58と、磁石体58の周囲を回転可能に支持された円筒スリーブ60を有する。スリーブ60の上方には、ハウジング42に固定され、スリーブ60の中心軸と平行に伸びる規制板62が、所定の規制ギャップ64を介して対向配置されている。
【0020】
磁石体58は、搬送ローラ54の内面に対向し、搬送ローラ54の中心軸方向に伸びる、複数の磁極を有する。実施形態では、複数の磁極は、規制板62の近傍にある搬送ローラ54の上部内周面部分に対向する磁極S1、供給回収ギャップ56の近傍にある搬送ローラ54の左側内周面部分に対向する磁極N1、搬送ローラ54の下部内周面部分に対向する磁極S2、搬送ローラ54の右側内周面部分に対向する、2つの隣接する同極性の磁極N2,N3を含む。
【0021】
搬送ローラ54の背後には、現像剤攪拌室66が形成されている。攪拌室66は、搬送ローラ54の近傍に形成された前室68と搬送ローラ54から離れた後室70を有する。前室68には図面の表面から裏面に向かって現像剤を攪拌しながら搬送する前攪拌搬送部材である前スクリュー72が回転可能に配置され、後室70には図面の裏面から表面に向かって現像剤を攪拌しながら搬送する後攪拌部材搬送部材である後スクリュー74が回転可能に配置されている。図示するように、前室68と後室70は、両者の間に設けた隔壁76で分離してもよい。この場合、前室68と後室70の両端近傍にある隔壁部分は除かれて連絡通路が形成されており、前室68の下流側端部に到達した現像剤が連絡通路を介して後室70へ送り込まれ、また後室70の下流側端部に到達した現像剤が連絡通路を介して前室68に送り込まれるようにしてある。
【0022】
このように構成された現像装置34の動作を説明する。画像形成時、図示しないモータの駆動に基づいて、現像ローラ48とスリーブ60はそれぞれ矢印78,80方向に回転する。前スクリュー72は矢印82方向に回転し、後スクリュー74は矢印84方向に回転する。これにより、現像剤攪拌室66に収容されている現像剤2は、前室68と後室70を循環搬送されながら、攪拌される。その結果、現像剤に含まれるトナーとキャリアが摩擦接触し、互いに逆の極性に帯電される。実施形態では、キャリアは正極性、トナーは負極性に帯電されるものとする。図2に示すように、キャリア4はトナー6に比べて相当大きい。そのため、図3に示すように、正極性に帯電したキャリア4の周囲に、負極性に帯電したトナー6が、主として両者の電気的な吸引力に基づいて付着している。
【0023】
図1に戻り、帯電された現像剤2は、前スクリュー72によって前室68を搬送される過程で搬送ローラ54に供給される。前スクリュー72から搬送ローラ54に供給された現像剤2は、磁極N3の近傍で、磁極N3の磁力によって、スリーブ60の外周面に保持される。スリーブ60に保持された現像剤2は、磁石体58によって形成された磁力線に沿って磁気ブラシを構成しており、スリーブ60の回転に基づいて反時計周り方向に搬送される。規制板62の対向領域(規制領域86)で磁極S1に保持されている現像剤2は、規制板62により、規制ギャップ64を通過する量が所定量に規制される。規制ギャップ64を通過した現像剤2は、磁極N1が対向する、現像ローラ48と搬送ローラ54が対向する領域(供給回収領域)88に搬送される。後に詳細に説明するように、供給回収領域88のうち、主にスリーブ60の回転方向に関して上流側の領域(供給領域)90では、現像ローラ48とスリーブ60との間に形成された電界の存在により、キャリア4に付着しているトナー6が現像ローラ48に電気的に供給される。また、供給回収領域88のうち、主にスリーブ60の回転方向に関して下流側の領域(回収領域)92では、後に説明するように、現像に寄与することなく供給回収領域88に送り戻された現像ローラ48上のトナーが、磁極N1の磁力線に沿って形成されている磁気ブラシに掻き取られてスリーブ60に回収される。キャリア4は磁石体58の磁力によってスリーブ60の外周面に保持されており、スリーブ60から現像ローラ48に移動することはない。供給回収領域88を通過した現像剤2は、磁石体58の磁力に保持され、スリーブ60の回転と共に磁極S2の対向部を通過して磁極N2とN3の対向領域(放出領域94)に到達すると、磁極N2とN3によって形成される反発磁界によってスリーブ60の外周面から前室68に放出され、前室68を搬送されている現像剤2に混合される。
【0024】
供給領域90で現像ローラ48に保持されたトナー6は、現像ローラ48の回転と共に反時計周り方向に搬送され、感光体12と現像ローラ48が対向する領域(現像領域)96で、感光体12の外周面に形成されている静電潜像画像部に付着する。実施形態の画像形成装置では、感光体12の外周面は帯電装置26で負極性の所定の電位Vが付与され、露光装置28で画像光30が投射された静電潜像画像部が所定の電位Vまで減衰し、露光装置28で画像光30が投射されていない静電潜像非画像部はほぼ帯電電位Vを維持している。したがって、現像領域96では、感光体12と現像ローラ48との間に形成されている電界の作用を受けて、負極性に帯電したトナー6が静電潜像画像部に飛翔して付着し、この静電潜像を現像剤像として可視像化する。なお、現像領域96では、現像ローラ48上のトナー層が感光体12に直に接触する接触現像であってもよい。
【0025】
このようにして現像剤2からトナー6が消費されると、消費された量に見合う量のトナーが現像剤2に補給されることが好ましい。そのために、現像装置34は、ハウジング42に収容されているトナーとキャリアの混合比を測定する手段を備えている。また、後室70の上方にはトナー補給部98が設けてある。トナー補給部98は、トナーを収容するための容器100を有する。容器100の底部には開口部102が形成されており、この開口部102に補給ローラ104が配置されている。補給ローラ104は図示しないモータに駆動連結されており、トナーとキャリアの混合比を測定する手段の出力に基づいてモータが駆動し、トナーが後室70に落下補給するようにしてある。
【0026】
〔3.電界形成手段〕
供給領域90でスリーブ60から現像ローラ48にトナー6を効率的に移動させるために、現像ローラ48とスリーブ60は電界形成装置110と電気的に接続されている。電源の具体例が図5A〜図9に示してある。
【0027】
図5Aに示す第1具体例の電界形成装置110は、現像ローラ48に接続された第1の電源112(請求項の第2の電界形成手段に相当する。)とスリーブ60に接続された第2の電源114(請求項の第1の電界形成手段に相当する。)を有する。第1の電源112は、現像ローラ48とグランド116との間に接続された直流電源118を有し、トナー6の帯電極性と同一極性の第1の直流電圧VDC1(例えば、−200ボルト)を現像ローラ48に印加している。第2の電源114は、スリーブ60とグランド116との間に接続された直流電源120を有し、トナー6の帯電極性と同一極性で且つ第1の直流電圧よりも高圧の第2の直流電圧VDC2(例えば、−400ボルト)をスリーブ60に印加する。この結果、供給領域90では、現像ローラ48とスリーブ60との間に形成された直流電界の作用を受けて、負極性に帯電しているトナー6がスリーブ60から現像ローラ48に電気的に吸引される。このとき、正極性に帯電しているキャリア4は、スリーブ60から現像ローラ48に吸引されることはない。また、現像領域96では、現像ローラ48に保持されている負極性トナーが、図5Bに示すように、現像ローラ48(VDC1:−200ボルト)と静電潜像画像部(V:−80ボルト)との電位差に基づき、静電潜像画像部に付着する。このとき、負極性トナーは、現像ローラ48(VDC1:−200ボルト)と静電潜像非画像部(V:−600ボルト)との電位差により、静電潜像非画像部に付着することはない。
【0028】
図6Aに示す第2具体例の電界形成装置122において、第1の電源124は、実施形態1の電源と同様に、現像ローラ48とグランド126との間に接続された直流電源128を有し、トナー6の帯電極性と同一極性の第1の直流電圧VDC1(例えば、−200ボルト)を現像ローラ48に印加している。第2の電源130は、スリーブ60とグランド126との間に直流電源132と交流電源134を有する。直流電源132は、トナー6の帯電極性と同一極性で且つ第1の直流電圧よりも高圧の第2の直流電圧VDC2(例えば、−400ボルト)をスリーブ60に印加している。図6Bに示すように、交流電源134は、スリーブ60とグランド126との間にピーク・ツー・ピーク電圧VP−Pが例えば300ボルトの交流電圧VACを印加する。その結果、供給領域90では、現像ローラ48とスリーブ60との間に形成された振動電界の作用を受けて、負極性に帯電しているトナー6がスリーブ60から現像ローラ48に電気的に吸引される。このとき、正極性に帯電しているキャリア4は、スリーブ60の内部の固定磁石の磁力によってスリーブ60に保持され、現像ローラ48に供給されることはない。また、現像領域96では、現像ローラ48に保持されている負極性トナーは、現像ローラ48(VDC1:−200ボルト)と静電潜像画像部(V:−80ボルト)との電位差に基づき、静電潜像画像部に付着する。
【0029】
図7Aに示す電界形成装置136において、第1の電源138は、現像ローラ48とグランド140との間に直流電源142と交流電源144を有する。直流電源142は、トナー6の帯電極性と同一極性の第1の直流電圧VDC1(例えば、−200ボルト)を現像ローラ48に印加する。交流電源144は、現像ローラ48とグランド140との間に振幅(ピーク・ツー・ピーク電圧)VP−Pが例えば1,600ボルトの交流電圧VACを印加する。第2の電源146は、現像ローラ48と交流電源144との間の端子148とスリーブ60との間に接続された直流電源150を有する。直流電源150は、所定の直流電圧VDC2を出力することができ、陽極が端子148、陰極がスリーブ60に接続されており、これにより、スリーブ60が現像ローラ48に対して負極性にバイアスされている(図7B参照)。したがって、供給領域90では、現像ローラ48とスリーブ60との間に形成された振動電界の作用を受けて、負極性に帯電しているトナー6がスリーブ60から現像ローラ48に電気的に吸引される。また、現像領域96では、現像ローラ48上の負極性トナーが、現像ローラ48(VDC1:−200ボルト)と静電潜像画像部(V:−80ボルト)との電位差に基づき、静電潜像画像部に付着する。なお、図7Bでは、分かり易くするために、現像ローラ48への印加電圧とスリーブ60への印加電圧を時間軸方向(横方向)に少しずらして描いてある。
【0030】
図8に示す電源152は、図5Aに示す第1具体例の電源において、第1の電源112と第2の電源114にそれぞれ交流電界形成装置154,156を追加したものである。交流電界形成装置154,156の出力電圧はVAC1,VAC2である。電圧VAC1,VAC2の電圧値や周期は同一であってもよいし、違ってもよい。図9に示す電界形成装置158は、図5Aに示す第1具体例の電源において、第1の電源112に交流電源160を追加したものである。交流電源160の出力電圧はVACである。これらの形態の電界形成装置152,158も、電源110,122,136と同様に、現像ローラ48とスリーブ60との間に形成された振動電界の作用を受けて、供給領域90では負極性に帯電しているトナー6をスリーブ60から現像ローラ48に供給し、現像領域96では負極性に帯電しているトナー6を現像ローラ48から静電潜像画像部(V:−80ボルト)との電位差に基づき、静電潜像画像部に供給する。
【0031】
〔4.印加されるバイアス(電圧)〕
次に、本願発明のポイントとなるバイアス印加の条件について説明する。図10に、負極性のトナー6で反転現像を行う場合の、現像ローラ48および搬送ローラ54(すなわちスリーブ60)にそれぞれ印加するバイアスの組み合わせを示す。ここで、「GND」は接地電位すなわち0ボルトを示す。(a)〜(d)は現像ローラ48に印加されるバイアス(以下、「現像バイアス」という。)が所定のデューティ比に設定された矩形波の振動電圧(AC電圧)の場合であり、(e)〜(g)は現像バイアスが直流電圧である場合である。ここで、スリーブ60に印加されるバイアス(以下、「搬送ローラバイアス」という。)と現像バイアスとは、スリーブ60から現像ローラ48へトナー6を供給でき、かつ現像ローラ48から感光体12上の静電潜像画像部にトナー6を供給できる電位関係にあることが必要である。
【0032】
これらの現像バイアスおよび搬送ローラバイアスの印加によって、供給回収領域88でトナー6に作用する電界を図11に示す。ここにおいて、(a)〜(g)は図11における(a)〜(g)にそれぞれ対応している。図11中、縦軸の0位置より上方はトナー6を現像ローラ48に供給する方向に作用する電界であり、前記0位置より下方はトナー6を現像ローラ48から回収する方向に作用する電界となる。(a)〜(g)を大別すると、(e)の直流電界、(a),(b),(d)および(g)の現像ローラ48からの回収方向の時間比率が供給方向に対して比較的短い振動電界、(c)および(f)の現像ローラ48からの回収方向の時間比率が比較的長い振動電界の3種類となる。ここで、(e)のような直流電界の場合、トナー6を供給する電界は形成されるものの、回収方向の電界作用時間が存在しない。このため、現像ローラ48上の現像剤トナーの回収は、搬送ローラ54上の磁気ブラシによる機械的掻き取り作用だけに頼ることになり、上述した履歴現象という問題が生じていた。また、前記特許文献3,4においては(a),(b),(d)および(g)で示されるバイアスの印加を実施例として示し、これによって履歴現象の解決を図ることを企図している。
【0033】
これに対し、本願発明者らは、(c)および(f)で示すような回収方向時間比率が比較的長い振動電界を作用させることによって、回収方向の電界強度を強めることなく、現像ローラ48上の現像剤トナーを効率良く回収しうる特異的な条件を見出したのである。ここで、(c)および(f)に示される点線は、時間平均電界強度を示しており、0レベルに対してトナー供給側に偏って設定されることで、現像ローラ48へのトナー供給性能が担保される。この時間平均電界強度は、矩形波または交流波形で示される振動電界において、その上方とその下方との波形線内の各面積が同一になる境界である。また、現像ローラ48からトナーを回収する方向に作用する回収電界の時間比率(以下、回収側デューティ比ともいう。)は、t1/(t1+t2)×100〔%〕となる。
【0034】
次に、供給回収領域88における電界波形と、現像に供されることなく現像ローラ48上の残った現像残トナーの回収性との関係について説明する。
現像ローラ48上に付着保持されている現像残トナーは、回収方向電界の作用によって現像ローラ48から剥離される方向の力を受ける。この力が現像ローラ48に対する付着力を上回ると、現像剤トナーは現像ローラ48から剥離して搬送ローラ54上の磁気ブラシに回収され易くなる。この剥離力を電気的に与えつつ現像ローラ48へのトナー供給作用を損なわないようにするためには、前記特許文献3,4に開示されるように、強い回収電界を供給電界より短い時間で作用させることが考えられるが、供給電界・回収電界が共に強いために、供給回収領域88でのリーク(絶縁破壊)という問題が生じ易い。
【0035】
そこで、本願発明者らは、回収電界の下で一部の現像剤トナーを剥離させた後に、搬送ローラ54に向かって飛翔してきたトナーを供給電界の作用によって移動方向を反対にして現像ローラ48の表面に衝突させることで、飛翔したトナーの運動エネルギーを現像ローラ48上の現像残トナーに与え、これにより現像残トナーを効率的に現像ローラ48から剥離させることが可能であるとの推定を行った。以下、この推定現象を「ポンピング」と呼ぶ。この推定においては、一旦剥離したトナーが現像ローラ48に戻ってこない条件(例えば、回収時間が著しく長い場合)ではポンピングが効率的に行われないと考えられる。逆に、回収時間が短い条件では、剥離したトナーの移動距離が短く、現像ローラ48に再度戻ってきた際に持ちうる運動エネルギーの量も小さくなり、ポンピングが促進されないと考えられる。さらには、現像ローラ48に戻ってきたトナーが現像残トナーと衝突して運動エネルギーを供与した時点で、電界が回収電界に切り替わることで、より効率的なトナー剥離が行えるものと考えられる。すなわち、回収方向電界と供給方向電界の作用する時間比率が、小さすぎても大きすぎてもポンピングは効率的に行われず、最適な範囲があるものと推定できる。
【0036】
上述した推定メカニズムに沿って後述する実験を行ったところ、振動電界の1周期時間に対して、回収電界の作用する時間比率が60%〜80%であるときに特に高い回収効率を得ることができ、上記推定を裏付ける結果が得られた。
【0037】
〔5.現像剤〕
一般に、トナーとキャリアを主成分とする2成分現像剤は、キャリアの表面にトナーが付着してできる汚れ(スペント)が発生し、これがキャリアの寿命を低下させる。そこで、この問題を解消するために、本実施形態では、2成分現像剤に第3の成分として荷電粒子(インプラント粒子)が添加されている。
【0038】
図2〜4を参照して具体的に説明すると、本願発明の画像形成装置及び現像装置は、トナー6とキャリア4の他に、トナー6との摩擦接触によりトナー6を正規の極性(実施形態では負極性)に帯電する、トナー6よりも小径の荷電粒子8を含む。実施の形態において、荷電粒子8は、トナー6の外周面に離脱可能に保持されており、トナー補給部98からトナー6と共に補給される。
【0039】
画像形成時、荷電粒子8はトナー6やキャリア4とともに、ハウジング42の中を搬送された後、スリーブ60に保持されて規制領域86、供給回収領域88、放出領域94を移動する。この搬送過程で、トナー6の表面に保持されて正極性に帯電している荷電粒子8は、供給回収領域88の電界中に置かれると、トナー6に作用する電気的な力とは逆の方向の電気的な力を受けてトナー6の外周面から離脱する。離脱した荷電粒子8は、該分離した荷電粒子8とキャリア4との間に作用するストレスによってキャリア4の外周面に保持される又は打ち込まれる。図4に示すように、キャリア4の外周面の一部又は全体がスペント10で覆われている場合、荷電粒子8はスペント10に打ち込まれる。キャリア4の外周面に保持され又は打ち込まれた荷電粒子8は、トナー6との摩擦接触によりトナー6と逆の極性に帯電する。実施形態では、トナー6は負極性に帯電されるため、荷電粒子8は正極性に帯電される。その結果、荷電粒子8が打ち込まれたキャリア4は、たとえその外周面の少なくとも一部がスペント10に被覆されていても、スペント10の無い状態と同様の荷電性を維持し、トナー6を所定の極性に帯電する。
【0040】
上述のように、荷電粒子8は、トナー6と逆の極性に帯電される。そのため、図12に示すように、供給回収領域88では、現像ローラ48とスリーブ60の間に形成される電界に基づいてトナー6はスリーブ60から現像ローラ48に移動する。また、トナー6から分離した荷電粒子8は、供給領域90でトナー6が奪われることによって比較的キャリアリッチとなっている現像剤のキャリア表面に素早く保持されて、トナー6と共に現像ローラ48に供給されることがない、または現像ローラ6に供給されるとしてもその量は極めて僅かである。
【0041】
ところで、図13に示すように、図1に示す現像装置から現像ローラを除いた形態の現像装置34’に同様の荷電粒子を用いた場合、異なる結果を招く。具体的に、現像装置34’の搬送ローラ54が対向する感光体12の外周面には静電潜像が形成されている。静電潜像は、例えば、ほぼ帯電電位を維持している高電位の静電潜像非画像部と、露光装置28で光30が投射されて電位の減衰している低電位の静電潜像画像部を有し、これら高電位の静電潜像非画像部と低電位の静電潜像画像部が搬送ローラ54の対向部を通過していく。そして、画像形成時、現像領域において、例えば、負極性に帯電されているトナー6は、低電位の静電潜像画像部に付着し、静電潜像非画像部には付着しない。しかし、トナー6を負極性に帯電させる荷電粒子8は、それ自身が正極性に帯電している。したがって、現像領域で自由状態にある荷電粒子8は、図14に示すように、静電潜像非画像部に付着する。このように、現像装置34’によれば、トナー6から分離した荷電粒子8が現像領域で感光体12の静電潜像非画像部に大量消費される。その結果、上述した現像装置34に比べてキャリア4の外周面に打ち込まれる荷電粒子8の数が極めて少なく、スペントが付着したキャリア4は十分なトナー荷電性能を持ち得ない。
【0042】
更にまた、上述の特許文献2で説明した現像装置では、荷電粒子は、トナーとキャリアのいずれの表面にも保持されることなく両者の間に比較的自由な状態で存在する。また、現像装置に初期導入された荷電粒子は、トナーの帯電極性とは逆の極性に帯電している。そのため、トナーと電気的に結合してトナーと共に現像ローラに供給された後、感光体上の静電潜像非画像部に付着して徐々に無くなり、それと共にトナーの荷電性が低下する。しかし、本願発明の現像装置では、上述のように、供給回収領域88でトナー6から分離した荷電粒子8はその後素早くキャリア4に保持されてスリーブ60の外周面に留まることから、トナー6と同じように現像ローラ48を介して感光体12に供給されて消費されることはないので、長期に亘って安定したトナーの荷電性が得られる。もっとも、本実施例においてもいくらかの荷電粒子8はトナー6と共に現像ローラ48に供給されるが、荷電粒子8はトナーと共に補給部98から新たに補給されるため、無くなることはなく、よって、長期に亘って安定したトナーの荷電性が得られる。
【0043】
なお、実施形態では、トナー6とキャリア4との摩擦接触によりトナー6は負極性、キャリア4は正極性に帯電される。また、荷電粒子8は、トナー6との接触により該トナーを負極性に帯電するとともに、荷電粒子8は正極性に帯電する。本願発明に用いるトナー、キャリア、荷電粒子の帯電性は、そのような組み合わせに限るものでない。具体的に、トナー6とキャリア4との摩擦接触によりトナー6は正極性、キャリア4は負極性に帯電され、荷電粒子8は、トナー6との接触により該トナーを正極性に帯電するとともに、荷電粒子8は負極性に帯電する組み合わせも考えられる。
【0044】
〔5.具体的な材料〕
トナー、キャリア、荷電粒子、および現像剤に含まれる他の粒子の具体的な材料を説明する。
【0045】
〔荷電粒子〕
好適に使用される荷電粒子は、トナーの帯電極性に応じて適宜選択される。荷電粒子の個数平均粒径は、例えば、100〜1000nmである。キャリアとの摩擦接触により負極性に帯電するトナーを用いる場合、荷電粒子は、トナーとの接触により正極性に帯電する微粒子が用いられる。そのような微粒子は、例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、アルミナ等の無機微粒子やアクリル樹脂、ベンゾグァナミン樹脂、ナイロン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂で構成できる。微粒子を構成する樹脂にトナーとの接触により正極性に帯電する正荷電制御剤を含有させてもよい。正荷電制御剤には、例えば、ニグロシン染料、四級アンモニウム塩等が使用できる。荷電粒子は含窒素モノマーで構成してもよい。含窒素モノマーを構成する材料には、例えば、アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、アクリル酸2−ジエチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジエチルアミノエチル、ビニールピリジン、N−ビニールカルバゾール、ビニールイミダゾールがある。
【0046】
キャリアとの摩擦接触により正極性に帯電するトナーの場合、荷電粒子は、トナーとの接触により負極性に帯電する微粒子が用いられる。このような微粒子は、例えば、シリカ、酸化チタン等の無機微粒子、また、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等の、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂で構成された微粒子が使用できる。トナーとの接触により負極性に帯電する負荷電制御剤を、荷電粒子を構成する樹脂に含有させてもよい。負荷電制御剤には、例えば、サリチル酸系、ナフトール系のクロム錯体、アルミニウム錯体、鉄錯体、亜鉛錯体等を使用できる。荷電粒子は、含フッ素アクリル系モノマーや含フッ素メタクリル系モノマーの共重合体であってもよい。
【0047】
荷電粒子の帯電性および疎水性を制御するために、無機微粒子の表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理してもよい。特に、無機微粒子に正極帯電性を付与する場合、アミノ基含有カップリング剤で表面処理することが好ましい。微粒子に負極性帯電性を付与する場合、フッ素基含有カップリング剤で表面処理することが好ましい。
【0048】
〔トナー〕
トナーには、画像形成装置で従来から一般に使用されている公知のトナーを使用できる。トナー粒径は、例えば約3〜15μmである。バインダー樹脂中に着色剤を含有させたトナー、荷電制御剤や離型剤を含有するトナー、表面に添加剤を保持するトナーも使用できる。
【0049】
トナーは、例えば、粉砕法、乳化重合法、懸濁重合法等の公知の方法で製造できる。
【0050】
〔バインダー樹脂〕
トナーに使用されるバインダー樹脂は、限定的ではないが、例えば、スチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、ポリエステル樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、またはそれらの樹脂を任意に混ぜ合わせたものである。バインダー樹脂は、軟化温度が約80〜160℃の範囲、ガラス転移点が約50〜75℃の範囲であることが好ましい。
【0051】
〔着色剤〕
着色剤は、公知の材料、例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、活性炭、マグネタイト、ベンジンイエロー、パーマネントイエロー、ナフトールイエロー、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、ウルトラマリンブルー、ローズベンガル、レーキーレッド等を用いることができる。着色剤の添加量は、一般に、バインダー樹脂100重量部に対して、2〜20重量部であることが好ましい。
【0052】
〔荷電制御剤〕
荷電制御剤は、従来から荷電制御剤として知られている材料が使用できる。具体的に、正極性に帯電するトナーには、例えばニグロシン系染料、4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂が荷電制御剤として使用できる。負極性に帯電するトナーには、Cr、Co、Al、Fe等の金属含有アゾ系染料、サリチル酸金属化合物、アルキルサリチル酸金属化合物、カーリックスアレーン化合物が荷電制御剤として使用できる。荷電制御剤は、バインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の割合で用いることが好ましい。
【0053】
〔離型剤〕
離型剤は、従来から離型剤として使用されている公知のものを使用できる。離型剤の材料には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、カルナバワックス、サゾールワックス、又はそれらを適宜組み合わせた混合物が用いられる。離型剤は、バインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の割合で用いることが好ましい。
【0054】
〔その他の添加剤〕
その他、現像剤の流動化を促進する流動化剤を添加してもよい。流動化剤には、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム等の無機微粒子や、アクリル樹脂、スチレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂微粒子が使用できる。特にシランカップリング剤、チタンカップリング剤、およびシリコーンオイル等で疎水化した材料を用いるのが好ましい。流動化剤は、トナー100重量部に対して、0.1〜5重量部の割合で添加させることが好ましい。これら添加剤の個数平均一次粒径は9〜100nmであることが好ましい。
【0055】
〔キャリア〕
キャリアは、従来から一般に使用されている公知のキャリアを使用できる。バインダー型キャリアやコート型キャリアのいずれを用いてもよい。キャリア粒径は、限定的ではないが、約15〜100μmが好ましい。
【0056】
バインダー型キャリアは、磁性体微粒子をバインダー樹脂中に分散させたものであり、表面に正極性または負極性に帯電する微粒子又はコーティング層を有するものが使用できる。バインダー型キャリアの極性等の帯電特性は、バインダー樹脂の材質、帯電性微粒子、表面コーティング層の種類によって制御できる。
【0057】
バインダー型キャリアに用いられるバインダー樹脂としては、ポリスチレン系樹脂に代表されるビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂等の硬化性樹脂が例示される。
【0058】
バインダー型キャリアの磁性体微粒子としては、マグネタイト、ガンマ酸化鉄等のスピネルフェライト、鉄以外の金属(Mn、Ni、Mg、Cu等)を一種または二種以上含有するスピネルフェライト、バリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライト、表面に酸化層を有する鉄や合金の粒子を用いることができる。キャリアの形状は、粒状、球状、針状のいずれであってもよい。特に高磁化を要する場合には、鉄系の強磁性微粒子を用いることが好ましい。化学的な安定性を考慮すると、マグネタイト、ガンマ酸化鉄を含むスピネルフェライトやバリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライトの強磁性微粒子を用いることが好ましい。強磁性微粒子の種類及び含有量を適宜選択することにより、所望の磁化を有する磁性樹脂キャリアを得ることができる。磁性体微粒子は磁性樹脂キャリア中に50〜90重量%の量で添加することが適当である。
【0059】
バインダー型キャリアの表面コート材としては、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂等が用いられる。これらの樹脂をキャリア表面にコートし硬化させてコート層を形成することにより、キャリアの電荷付与能力を向上できる。
【0060】
バインダー型キャリアの表面への帯電性微粒子あるいは導電性微粒子の固着は、例えば、磁性樹脂キャリアと微粒子とを均一混合し、磁性樹脂キャリアの表面にこれら微粒子を付着させた後、機械的・熱的な衝撃力を与えることにより微粒子を磁性樹脂キャリア中に打ち込むことで行われる。この場合、微粒子は、磁性樹脂キャリア中に完全に埋設されるのではなく、その一部が磁性樹脂キャリア表面から突出するように固定される。帯電性微粒子には、有機、無機の絶縁性材料が用いられる。具体的に、有機系の絶縁性材料としては、ポリスチレン、スチレン系共重合物、アクリル樹脂、各種アクリル共重合物、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂およびこれらの架橋物などの有機絶縁性微粒子がある。電荷付与能力および帯電極性は、帯電性微粒子の素材、重合触媒、表面処理等に調整できる。無機系の絶縁性材料としては、シリカ、二酸化チタン等の負極性に帯電する無機微粒子や、チタン酸ストロンチウム、アルミナ等の正極性に帯電する無機微粒子が用いられる。
【0061】
コート型キャリアは、磁性体からなるキャリアコア粒子を樹脂で被覆したキャリアであり、バインダー型キャリア同様に、キャリア表面に正極性または負極性に帯電する帯電性微粒子を固着することができる。コート型キャリアの極性等の帯電特性は、表面コーティング層の種類や帯電性微粒子の選択により調整できる。コーティング樹脂は、バインダー型キャリアのバインダー樹脂と同様の樹脂が使用可能である。
【0062】
トナーとキャリアの混合比は所望のトナー帯電量が得られるよう調整されれば良く、トナー比はトナーとキャリアとの合計量に対して3〜50重量%、好ましくは6〜30重量%が好ましい。
【0063】
〔実験〕
図1の現像装置を有する画像形成装置を用いて、以下に述べるような種々の実験を行って、現像ローラからの現像残トナーの回収性能等を調べた。
【0064】
〔トナーA〕
実験に用いたトナーの製造方法は以下のとおりである。湿式造粒法で作成された体積平均粒径約6.5μmのトナー母材100重量部に、複数の添加剤−第1の疎水性シリカ0.2重量部、第2の疎水性シリカ0.5重量部、疎水性酸化チタン0.5重量部−を添加した。次に、三井鉱山社製のヘンシェルミキサを用い、添加剤が添加されたトナー母材を攪拌して添加剤をトナー母材の表面に付着させ、負極帯電性のトナーを得た。ミキサの回転速度は40m/秒、攪拌時間は3分間であった。第1の疎水性シリカは、個数平均一次粒径16nmのシリカ(#130:日本アエロジル社製)を疎水化剤のヘキサメチルジラザン(HMDS)で表面処理して得たものである。第2の疎水性シリカは、固体平均一次粒径20nmのシリカ(#90:日本アエロジル社製)をHMDSで表面処理して得たものである。疎水性酸化チタンは、個数平均一次粒径30nmのアナターゼ型酸化チタンを、水系湿式環境で、疎水化剤のイソブチルトリメトキシシランにより表面処理して得たものである。
【0065】
〔キャリア〕
実験に用いたキャリアは、コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製bizhub C350キャリア(平均粒径約33μm)である。このキャリアは、磁性体からなるキャリアコア粒子にアクリル系樹脂をコーティングしたコート型キャリアである。
【0066】
〔荷電粒子〕
実験に用いた荷電粒子として、個数平均粒径350nmのチタン酸ストロンチウムを添加した。荷電粒子の添加量は、トナーAに含まれるトナー母材粒子100重量部に対して、2重量部であった。次に、荷電粒子が添加されたトナーAを三井鉱山社製のヘンシェルミキサで攪拌し、トナーの表面に荷電粒子を付着させた。ミキサの回転速度は40m/秒、攪拌時間は3分間であった。
【0067】
〔現像剤〕
実験で用いた現像剤は、上記トナーA、キャリア、荷電粒子、およびその他の添加剤(例えば、離型剤および流動化剤)を混合して、現像剤中のトナー比率を8%に調整した。トナー比率は、現像剤全体の重量に対する、トナーと荷電粒子を含む添加材との合計重量の割合である。
【0068】
〔実験例1〕
現像ローラと搬送ローラとの間の最接近部である供給回収ギャップを0.3mmに設定した。また、現像ローラには直流電圧−300ボルトの現像バイアスを印加した。さらに、現像ローラがトナー層を介して感光体に接触する所謂接触現像の構成で実験を行った。
【0069】
このような条件の下で、搬送ローラに対して図10(f),(g)に示す矩形波の振動バイアスを印加し、供給回収領域に図11(f),(g)に示すような振動電界をさせて、現像ローラからの現像残トナーの回収性能、および、荷電粒子のキャリア荷電補助作用について評価した。前記振動電圧は、周波数2kHz、振幅1000ボルト、振幅中央値−700ボルトで固定として、デューティ比(下記各表および各図においては「duty」と表記される。)を10%から90%まで10%ずつ変化させた。
【0070】
ここで、現像残トナーの回収性能については、図17Bに示す残像またはメモリー画像の発生の有無、および、画像面積比率0%の全白状態での連続印刷時および画像面積比率100%の黒ベタ画像連続印刷時における現像ローラ上のトナーの帯電量差を前記全白連続印刷時のトナー帯電量で除した値(以下、「ベタ帯電量差比率」という。)で評価した。また、荷電粒子によるキャリア荷電補助作用については、各条件にて画像面積比率5%の画像チャートを用いて5万枚(または50k枚)の耐久印刷を行い、この耐久印刷後の現像ローラ上のトナーの帯電量を耐久印刷開始前の初期状態でのトナー帯電量で除した値(以下、「耐久帯電量差比率」という。)で評価した。これらの評価は、「◎(優)」、「○(良)」、「△(不可)」、「×(不可)」の4段階で行った。下記表1に、実験結果と、その評価を示す。また、前記各評価における4段階のランク付けの判定基準も表1と併せて示す。なお、表1(後述する他の表についても同様)中において、前記ベタ帯電量差比率は「帯電量差/白帯電量 ΔQ/Qw」、前記耐久帯電量差比率は「帯電量差/初期帯電量 ΔQ/Qi」と表記されている。
【0071】
【表1】

【0072】
表1に示されるように、この実験結果から、現像ローラから現像残トナーを回収する方向に電界を作用させる時間比率(回収側デューティ比)を60%〜80%の範囲ではメモリー画像が発生せず、それ以外の範囲と比べると際だって回収性能が向上することが分かった。通常に予想されるのは、現像ローラ上の現像残トナーに作用する平均回収電界が強まるほど、すなわち表1における平均供給電界が弱まるほど、回収性能が向上するであろうということである。しかしながら、回収側デューティ比が50%以下の範囲では、平均供給電界が多少変わったところで回収性能に大きな改善は認められず、また逆に、回収側デューティ比を90%まで高めた場合には80%の場合と比べて回収性能が低下してしまうことが分かった。この現象は、上述したポンピング作用で説明したように、「回収方向電界と供給方向電界の作用する時間比率が、小さすぎても大きすぎてもポンピングは効率的に行われず、最適な範囲がある。」という推定と合致している。
【0073】
また、表1に示す各条件下で行った耐久印刷の評価においては、いずれも初期帯電量に対する耐印刷後の帯電量差および耐久帯電量差比率は小さく、良好な範囲に収まる結果となった。
【0074】
〔実験例2〕
実験例2では、−300ボルトの直流電圧に、周波数2kHzで振幅1600ボルトの矩形波振動バイアスを重畳した現像バイアスを現像ローラに印加し、感光体と現像ローラとの間の最近接部の現像ギャップを0.15mmとした所謂非接触現像の構成で実験を行って、上記実験例1と同様の評価を行った。供給回収ギャップは、上記実験例1と同様に0.3mmとした。現像ローラに印加するバイアスは振動バイアスとしたが、現像ローラおよび搬送ローラ間の供給回収領域での電界については上記実験例1と同様になるよう、搬送ローラに印加するバイアスを調整した。すなわち、搬送ローラに対し図10(b),(c)に示す波形の電圧を印加して、図11(b),(c)に示すような振動電界を供給回収領域に作用させている。図10(c)において、搬送ローラバイアスは、現像ローラバイアスに対して同期するとともに振幅がより大きく設定されている。ここで、現像ローラに印加する現像バイアスと搬送ローラに印加するバイアスのデューティ比が異なると、両者間で過大な電位差が生じて供給回収領域でリークが発生してしまうため、供給回収領域に作用させる振動電界のデューティ比に応じて、現像バイアスのデューティ比を変えながら実験を行った。また、現像ローラに対して50%を超えるデューティ比を与えた場合、画像のキメが著しく悪化する現象が認められたため、現像ローラに印加するデューティ比は50%までとし、図10(b)に示す状態になるように搬送ローラにバイアスを印加することで供給回収領域の電界の回収側デューティ比を10〜50%とし、一方、図10(c)に示す状態になるように搬送ローラにバイアスを印加することで回収側デューティ比を50〜90%とした。このような条件下で実験を行い、実験結果と、その評価を下記表2に示す。また、表1と同様に、各評価における4段階のランク付けの判定基準も表2と併せて示す。
【0075】
【表2】


【0076】
表2に示されるように、現像ローラに振動電圧を印加した場合であっても、実効的に供給回収領域に作用する電界状態が同じであるため、実験例1と同様の結果が得られたことが分かる。このことから、非接触現像でも現像ローラに直流電圧を印加する構成や、接触現像で現像ローラに直流電圧に振動バイアスを重畳した現像バイアスを印加した構成であっても、供給回収領域における電界状態を本願発明の趣旨に沿ったものとすることで回収性能が高まることは明らかである。
【0077】
〔実験例3〕
実験例2と同様の装置を用い、現像ローラおよび搬送ローラに印加する振動バイアスの周波数を、3kHzおよび4kHzとした場合に、実験例2と同様の作用が得られるかどうかを調べる実験を行った。その実験結果としてベタ帯電量差比率を、実験例2の結果と併せて、図15において表とグラフで示す。図15から明らかなように、周波数に依らず、現像ローラ上のトナーをポンピングさせるのに効率的な回収側デューティ比が60%〜80%であることが分かる。
【0078】
〔実験例4〕
実験例1と同様の装置を用い、搬送ローラに印加する振動バイアスの振幅値を600ボルト、900ボルト、1200ボルトの3レベルとして実験を行った。その実験結果としてベタ帯電量差比率を、図16において表とグラフで示す。図16から明らかなように、搬送ローラに印加する振動バイアスの振幅を900ボルト以上とすることで、回収性能を特に向上できることが分かる。ここで、実験例1では供給回収ギャップを0.3mmに設定しているため、現像ローラ上のトナーのポンピング作用に関わる電界としては、本実験例ではそれぞれ2×10V/m、3×10V/m、4×10V/mに相当する。したがって、ポンピング作用を生じさせて回収性能を向上させるという本願発明の作用を満足させるためには、3×10V/m以上の電界強度振幅値を付与する必要があることが判明した。
【0079】
〔実験例5〕
実験例1の条件を基本として、搬送ローラに印加する振動バイアスの振幅中央値を変化させて実験を行った。ここで、中央値が−700ボルトについては、実験例1と同じものである。また、本実験例では、メモリー画像の発生の有無に加えて、現像ローラ上のトナー搬送量についても評価を行った。その結果を下記表3に示すとともに、ベタ帯電量差比率の評価のランク付け判定基準を併せて示す。
【0080】
【表3】

【0081】
表3に示される実験結果から、次のようなことが言える。中央値を−400ボルトとして現像ローラからの搬送ローラへの回収方向電界を強めた条件については、ポンピング作用が生じ易い大きな回収側デューティ比の範囲で、供給回収領域における時間平均電界強度がマイナス、即ちトナーを供給しにくい状態となり、現像ローラ上に適正量のトナーを供給することができない。その結果、所望の画像濃度を得ることができず、メモリー画像の評価を行うことやベタ帯電量差比率を評価できない状態であった。そのような条件であっても回収側デューティ比を小さくして時間平均電界強度がプラス、即ちトナー供給方向の電界になると、現像ローラへのトナー供給は十分に行えるが、ポンピング作用がないためにメモリー画像が発生してしまった。
【0082】
一方、中央値を−1000ボルトとして現像ローラから搬送ローラへのトナー供給方向電界を強めた条件については、現像ローラに対して十分な量のトナー供給を行えるが、回収方向電界がマイナス、即ち回収方向の電界が存在しない状態となってしまい、ポンピング作用を得ることができない。
【0083】
すなわち、高い回収性能によってメモリー画像の発生を防止しつつ良好な帯電性能を維持するには、時間平均電界強度がトナーを搬送ローラから現像ローラに供給する側に偏りつつもトナーを現像ローラに供給する方向およびトナーを現像ローラから回収する方向の両方の作用を有する振動電界を供給回収領域に形成し、かつ現像ローラからトナーを回収する作用を果たす時間比率を60%〜80%とすることが重要である。
【0084】
〔実験例6〕
実験例2と同様の装置を用い、図10(c),(d)に示すようなバイアスを印加して、回収性能および供給回収領域でのリーク現象を調べる実験を行った。ここで、図10(d)に示す波形のバイアス印加については、回収電界強度を強めることによって回収性能を確保する考え方であるため、デューティ比を固定して搬送ローラに印加する振動バイアスの振幅値を変えることで回収電界強度を変化させた。その結果を下記表4に示すとともに、ベタ帯電量差比率の評価のランク付け判定基準を併せて示す。
【0085】
【表4】

【0086】
表4に示されるように、確かに図10(d)の波形を用いても、回収方向電界を強めることによってメモリー画像の発生を防止できたものの、電界強度が過大となることで供給回収領域においてリークが発生した。これに対し、本願発明の趣旨に沿った図10(c)の波形の場合には、供給回収領域でリークが生じない低電界強度の条件においても、ポンピング作用を活用することで高い回収性能が得られることが確認できた。
【0087】
〔実験例7〕
現像剤の荷電性能を長期にわたって維持するためには、トナーに付着た状態で外添されて荷電粒子を供給回収領域において供給領域にいてトナーから離脱させ、搬送ローラ上の現像剤に取り込んだうえでキャリア表面に付着させることが必要となる。この作用による耐久印刷前後のトナー帯電量差の低減と、前記ポンピング作用との両立が図れるかどうかについて、実験例2の装置を用いて実験した。荷電粒子のトナーからの離脱に関わるパラメータはトナーを搬送ローラから現像ローラに供給するための供給電界であるため、回収方向の電界強度を固定しつつ供給方向の電界強度を変化させるよう、搬送ローラへの印加バイアスを調整した。実験で用いた条件と、メモリー画像発生の有無、および5万枚耐久印刷後の耐久帯電量差比率を下記表5に示す。メモリー画像とベタ帯電量差比率の各評価ランクの判定基準は、上述の各実験例と同様である。
【0088】
【表5】

【0089】
表5に示されるように、耐久印刷後であっても初期帯電状態を維持するためには、2.5×10V/m以上の供給方向電界を供給回収領域において作用させる必要があること、また、この場合であっても回収側デューティ比を60%〜80%とすることで回収性能を向上できることが分かった。すなわち、トナーと逆極性の荷電粒子をトナーから分離させつつトナーを現像ローラに供給するにはトナー供給方向電界を強める必要があり、これを実現しようとすると現像残トナーの回収性が低下するので、このように相反する関係にあるトナー供給性能とトナー回収性能とを両立させるには、ポンピングによる回収作用を活用することがより効果的であることが分かった。
【0090】
一方、荷電粒子のトナーからの離脱作用を得るためには、例えば図10(b)や同(d)に示す波形のバイアスを用いて供給回収領域に振動電界を形成することも考えられる。これらの波形において、上記知見に基づいて2.5×10V/m以上の供給方向電界を作用させて行った実験の結果を下記表6に示す。また、表6には、ベタ帯電量差比率および耐久帯電量差比率の各評価ランクの判定基準も併せて示す。
【0091】
【表6】

【0092】
表6に示されるように、図10(b)の波形では、回収方向電界が著しく弱まるうえに、ポンピングによる回収作用を得ることができないため、メモリー画像が発生してしまった。また、図10(d)の波形では、ポンピング不足によるメモリー画像またはリークという問題が発生してしまった。したがって、本願発明に対して比較的小さな回収側デューティ比ではメモリー画像の問題を解消できないことが確認された。
【0093】
〔実験例8〕
実験例1に用いた画像形成装置の現像装置において、供給回収領域における現像ローラ外周面の移動方向と搬送ローラ外周面の移動方向とを同じ方向にして実験を行った。具体的には、搬送ローラを図1に示す方向とは反対方向(時計回り方向)に回転駆動するとともに、規制板を搬送ローラの上方ではなく下方に配置する構成とした。以後、このように供給回収領域における各ローラ外周面の移動方向が同じとなる回転方向を「ウィズ」と呼び、図1に示すように供給回収領域における各ローラ外周面の移動方向が逆方向となる回転方向を「カウンタ」と呼ぶ。
【0094】
本実験例では、画像面積比率5%の画像チャートを用いて5万枚の耐久印刷を行い、メモリー画像発生の有無と、ベタ帯電量差比率および耐久帯電量差比率とについて評価を行った。その結果を下記表7に示す。また、表7には、ベタ帯電量差比率および耐久帯電量差比率の各評価ランクの判定基準も併せて示す。
【0095】
【表7】

【0096】
表7に示されるように、ウィズ回転の場合、現像ローラ上の現像残トナーと接触し始める搬送ローラ上の磁気ブラシは、規制板によってその量が規制されているとともに、現像ローラへのトナー供給前であることからトナーを所定量含んだ現像剤からなっている。したがって、キャリア表面が付着したトナーで覆われているウィズ構成の場合、ポンピング作用を生じさせても、現像ローラからのトナー回収が行われにくい。そのため、上述したようなメモリー画像が発生してしまうという結果となった。また、供給回収領域におけるローラ回転方向上流側または下部で本来現像ローラへのトナー供給が行われるべき位置においては、現像ローラ上には現像残トナーが存在しているために搬送ローラ上の磁気ブラシから現像ローラへのトナー移動量が少なくなるため、トナーの移動に伴って生じる荷電粒子の離脱も生じにくくなり、その結果、前記荷電性能補償作用が働かなくなってトナー帯電量の低下が発生したものと考えられる。したがって、メモリー画像防止、および荷電粒子による良好なトナー荷電性能補償作用の発揮という観点から、現像ローラと搬送ローラとは図1に示すような(又は図1とは逆方向の)カウンタで回転することが必要であることが判明した。
【0097】
以上のように本願発明は、好適な実施形態や各実験例に基づいて十分に説明されてきたが、本願発明は前記実施形態に限定されるものではなく各種の改良や変更が可能である。例えば、前記現像装置34で用いた現像剤2はキャリア4、トナー6、および荷電粒子8を含んで構成されるものとして説明したが、本願発明は前記荷電粒子を含まない現像剤を用いた現像装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本願発明に係る画像形成装置の概略構成と本願発明に係る現像装置の断面を示す図。
【図2】現像剤の組成を模式的に説明する図。
【図3】キャリアの表面に、荷電粒子を保持したトナーが付着している状態を模式的に示す図。
【図4】スペントが付着したキャリアの表面に荷電粒子が打ち込まれた状態を模式的に示す図。
【図5A】電界形成装置の一実施形態を示す図。
【図5B】図5Aに示す電界形成装置からスリーブと現像スリーブに供給されている電圧の関係を示す図。
【図6A】電界形成装置の他の実施形態を示す図。
【図6B】図6Aに示す電界形成装置からスリーブと現像スリーブに供給されている電圧の関係を示す図。
【図7A】電界形成装置の他の実施形態を示す図。
【図7B】図7Aに示す電界形成装置からスリーブと現像スリーブに供給されている電圧の関係を示す図。
【図8】電界形成装置の他の実施形態を示す図。
【図9】電界形成装置の他の実施形態を示す図。
【図10】現像ローラバイアスと搬送ローラバイアスとの各種組み合わせを示す波形図で、(a)〜(g)のうち(c)および(f)が本願発明に関わる波形図。
【図11】図10に対応して供給回収領域に作用する各種電界を示す波形図で、(a)〜(g)のうち(c)および(f)が本願発明に関わる波形図。
【図12】供給回収領域におけるトナーと荷電粒子の動きを模式的に示す図。
【図13】図1の現像装置から現像装置を削除した他の形態の現像装置の断面図とそれを含む画像形成装置の概略構成を示す図。
【図14】図13に示す現像装置の現像領域におけるトナーと荷電粒子の動きを模式的に示す図。
【図15】実験例3の実験結果を示す表およびグラフ。
【図16】実験例4の実験結果を示す表およびグラフ。
【図17A】メモリー画像を説明するための図。
【図17B】メモリー画像を説明するための図。
【符号の説明】
【0099】
1:画像形成装置、2:現像剤、4:キャリア、6:トナー、8:荷電粒子、10:スペント、12:感光体、16:帯電ステーション、18:露光ステーション、20:現像ステーション、22:転写ステーション、24:クリーニングステーション、26:帯電装置、28:露光装置、30:画像光、32:通路、34:現像装置、36:転写装置、38:シート、40:クリーニング装置、42:ハウジング、44:開口部、46:第2の空間、48:現像ローラ、50:現像ギャップ、52:第2の空間、54:搬送ローラ、56:供給回収ギャップ、58:磁石体、60:スリーブ、63:規制板、64:規制ギャップ、66:現像剤攪拌室、68:前室、70:後室、72:前スクリュー、74:後スクリュー、76:隔壁、86:規制領域、88:供給回収領域、90:供給領域、92:回収領域、94:放出領域、96:現像領域、98:トナー補給部、100:容器、102:開口部、104:補給ローラ、110:電界形成装置、112:第1の電源、114:第2の電源、116:グランド、118:直流電源、120:直流電源、122:電界形成装置、124:第1の電源、126:グランド、128:直流電源、130:第2の電源、132:直流電源、134:交流電源、136:電界形成装置、138:第1の電源、140:グランド、142:直流電源、144:交流電源、146:第2の電源、148:端子、150:直流電源、152:電界形成装置、154:交流電源、156:交流電源、158:電界形成装置、160:交流電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーとキャリアを含む現像剤を用いて、静電潜像担持体上の静電潜像を可視像化する現像装置であって、
トナーとキャリアを含み、前記トナーとキャリアは相互の摩擦接触によって前記トナーが第1の極性に帯電されると共に前記キャリアが前記第1の極性とは異なる第2の極性に帯電される現像剤と、
回転駆動される第1の搬送部材と、
第1の領域を介して前記第1の搬送部材に対向し、前記第1の領域において前記第1の搬送部材とは逆方向に移動するように回転駆動され、かつ第2の領域を介して前記静電潜像担持体に対向する第2の搬送部材と、
前記第1の搬送部材と前記第2の搬送部材との間に第1の電界を形成して、前記第1の搬送部材が保持している現像剤中のトナーを前記第2の搬送部材に移動させる第1の電界形成手段と、
前記第2の搬送部材と前記静電潜像担持体との間に第2の電界を形成して、前記第2の搬送部材が保持している前記トナーを前記静電潜像担持体の静電潜像に移動させて前記静電潜像を可視像化する第2の電界形成手段とを備えており、
前記第1の電界は、時間平均電界強度が前記トナーを前記第1の搬送部材から前記第2の搬送部材に供給する側に偏りつつも前記トナーを前記第2の搬送部材に供給する作用および前記トナーを前記第2の搬送部材から回収する作用の両方の作用を有する振動電界であって、かつ前記第2の搬送部材から前記第1の搬送部材に前記トナーを回収する作用を果たす時間比率が60〜80%であることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記現像剤は更に荷電粒子を含み、前記荷電粒子は、前記トナーの表面に離脱可能に保持された状態で供給され、前記トナーの表面から分離した後に前記キャリアの表面に保持されると、前記トナーとの摩擦接触によって前記トナーを前記第1の極性に帯電することを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記第1の電界の電界強度が2.5×10V/m以上であることを特徴とする請求項1または2の現像装置。
【請求項4】
直流バイアスを前記第2の搬送部材に印加し、前記第2の搬送部材から前記第1の搬送部材に前記トナーを回収する作用を果たす時間比率が60〜80%になるような振動バイアスを前記第1の搬送部材に印加することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項5】
第2の振動バイアスを前記第2の搬送部材に印加し、前記第2の振動バイアスに対して位相が同期し且つ振幅が大きな第1の振動バイアスを前記第第1の搬送部材に印加することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の現像装置を含む画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17A】
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【図17B】
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【公開番号】特開2008−225359(P2008−225359A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67223(P2007−67223)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】