現像装置及び画像形成装置
【課題】簡単な構成で低コストに画像濃度偏差の発生を抑制する。
【解決手段】供給搬送スクリュー32と回収搬送スクリュー33とが上下方向に配置されている現像装置において、回収搬送スクリュー33の上方に現像剤移流制御部材50を設ける。現像剤移流制御部材50の下面には整流板50aが形成される。現像ローラ131から回収された現像剤は、回収搬送スクリュー33によって搬送される際に、回収搬送スクリュー33に撒き散らされて整流板50aに当接し、移動方向が搬送方向と逆方向に戻され、回収搬送経路内に戻される。これにより、回収現像剤の現像ローラへの再汲み上げが防止される。
【解決手段】供給搬送スクリュー32と回収搬送スクリュー33とが上下方向に配置されている現像装置において、回収搬送スクリュー33の上方に現像剤移流制御部材50を設ける。現像剤移流制御部材50の下面には整流板50aが形成される。現像ローラ131から回収された現像剤は、回収搬送スクリュー33によって搬送される際に、回収搬送スクリュー33に撒き散らされて整流板50aに当接し、移動方向が搬送方向と逆方向に戻され、回収搬送経路内に戻される。これにより、回収現像剤の現像ローラへの再汲み上げが防止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体上に形成された静電潜像を可視化する現像装置及びこれを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2003−186293号公報
【特許文献2】特許第3127594号公報
【0003】
電子写真方式による画像形成方法では、現像在中に必要なトナーをスクリュー等で混合/分散(攪拌)してトナーが均一な状態の現像剤をスクリュー等で現像ローラに供給し、潜像に応じてトナーが付与される。現像領域通過後の現像剤は、現像ローラ(現像スリーブ)から離脱してスクリュー等で回収される。したがって、理想的には、攪拌,供給,回収用に3本のスクリューを備えるのが好ましい。
【0004】
一方、平行に配置された2本のスクリューを用いる場合には、一度現像領域を通過した現像剤が再度現像ローラに供給されることがあるため、現像ローラ長手方向の画像濃度偏差に課題があった。これに対し、小型化を念頭に上下に配置した2本スクリューを用いた現像装置では、現像ローラに供給される現像剤は常にフレッシュな現像剤となるため、画像濃度偏差を大きく低減することが可能である。
【0005】
しかしながら、スクリューの3つの機能である攪拌,供給,回収を2本のスクリューで実施するため、1本のスクリューで2つの機能を担うことになる。上記の上下配置2本スクリューの場合、上側スクリューの機能は現像剤を現像ローラに供給する機能1つである。下側スクリューの機能は、現像剤を現像ローラから回収する機能と、回収された現像剤(トナーが現像に使用されたためトナー量が低下している現像剤)が本体内の現像剤に供給されたとき、トナーを現像剤に分散させる機能の2つがある。そのため、下側スクリューが設けられた現像剤搬送経路ではトナー濃度が大きく変化するため、それに合わせて搬送経路内での現像剤の嵩が変化することになる。
【0006】
この点について図8,9を参照して詳しく説明する。図8は、2本のスクリューを上下に配置した現像装置の長手方向の断面図で、上下2本のスクリュー127,128による現像剤搬送経路を表している。スクリュー127が配置される上側の現像剤搬送経路125では、図の左から右方向に現像剤が搬送される。また、スクリュー128が配置される下側の現像剤搬送経路126では、図の右から左方向に現像剤が搬送される。図9は、その現像装置をスクリュー軸方向から見た断面図である。これらの図において、下側の現像剤回収経路126では、上流部分(図8の右側)では現像剤量が少ないため現像剤の搬送に何ら問題は見られないが、下流部分(図8の左側)では現像剤の状態により現像剤が滞留して、現像ローラ123への再汲み上げが発生する。一度現像に使用された現像剤が現像ローラに再汲み上げされると、トナー濃度が低下して得られる画像は低濃度になることがある。そのため、長手方向の画像濃度偏差が大きくなるという課題が生じていた。
【0007】
このような課題に対し、特許文献1に記載された発明においては、下側搬送経路内の現像剤量を感圧素子(ピエゾ圧電素子39:特許文献1、図6)を用いて検知し、嵩高さが適切になるようにスクリュー回転数等を制御している。
【0008】
また、特許文献2に記載された発明においては、下側搬送経路における現像剤嵩高さを制御するためのスクリュー(オーガ9:特許文献2、図1)を1本追加している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のものでは、センサや回転制御といった多くの機構が取り入れられており、コストが上昇してしまうという問題がある。また、特許文献2に記載のものも、スクリューを1本追加しており、コストが上昇してしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、従来の現像装置における上述の問題を解決し、簡単な構成で低コストに画像濃度偏差の発生を抑制するこのできる現像装置及び画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題は、本発明により、現像剤を担持して現像領域に搬送する現像剤担持体と、現像剤を前記現像剤担持体の長手方向に搬送しながら前記現像剤担持体に供給する供給搬送スクリューと、現像領域を通過した現像剤を前記現像剤担持体から回収し前記供給搬送スクリューとは逆方向に現像剤を搬送する回収搬送スクリューとを有し、前記供給搬送スクリューと前記回収搬送スクリューとが上下方向に配置されている現像装置において、前記回収搬送スクリューの上方に現像剤の移動方向を制御する現像剤移流制御部材を設け、前記現像剤移流制御部材が、前記回収搬送スクリューによる現像剤搬送方向に対して斜めに配置された整流板を有することにより解決される。
【0012】
また、前記整流板が複数個設けられており、各整流板の間隔が前記回収搬送スクリューのスクリューピッチよりも短いと好ましい。
また、前記現像剤移流制御部材が、前記供給搬送スクリューが配置される現像剤供給搬送経路と前記回収搬送スクリューが配置される現像剤回収搬送経路を仕切る仕切り部材の下面に設けられていると好ましい。
【0013】
また、前記現像剤移流制御部材が、前記供給搬送スクリューが配置される現像剤供給搬送経路と前記回収搬送スクリューが配置される現像剤回収搬送経路を仕切る仕切り部材から前記現像剤担持体方向に突出して設けられていると好ましい。
【0014】
また、前記現像剤担持体が内蔵する磁石体は、当該現像剤担持体の円筒形断面における現像極と同じ半円内に剥離極が設けられ、前記剥離極は、前記回収搬送スクリューに対向する開口部の上流側に位置するように配置されていると好ましい。
【0015】
また、前記の課題は、本発明により、請求項1〜5のいずれか1項に記載の現像装置を備える画像形成装置により解決される。
また、前記現像装置を複数備え、多色画像の形成が可能であると好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の現像装置によれば、回収搬送スクリューにより撒き散らされた現像剤は現像剤移流制御部材によって進行方向(現像剤全体としての移動方向)とは逆方向に戻され、現像領域から戻ってきた(現像剤担持体から剥離された)現像剤は回収搬送経路にとどまり、現像剤担持体への再汲み上げの発生を防止することができる。これにより、画像濃度の左右偏差(現像剤担持体長手方向の偏差)の発生を防止することができる。
【0017】
請求項2の構成により、整流板の間隔が回収搬送スクリューのスクリューピッチよりも短いので、回収搬送スクリューにより撒き散らされた現像剤の移動方向を確実に制御することができる。
【0018】
請求項3の構成により、簡単な構成で現像剤移流制御部材を設けることができ、コストの上昇を抑えることができる。
請求項4の構成により、現像剤移流制御部材を仕切り部材から現像剤担持体方向に突出して設けることによって、回収された現像剤の再汲み上げをより効果的に防止することができる。
【0019】
請求項5の構成により、現像領域から戻る現像剤は回収搬送スクリューに対向する開口部の底部を通るようにして現像ケーシングに沿って移動し、回収搬送経路に戻されるので、回収された現像剤の再汲み上げを効果的に防止することができる。
【0020】
請求項6の画像形成装置によれば、現像剤担持体長手方向における画像濃度の偏差が無い現像装置を備えることにより、より高品質な画像を得ることが可能となる。
請求項7の構成により、複数の現像装置を備える画像形成装置においても、コストの上昇を極力抑えて低コストに、画像濃度の偏差が無い高品質な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る現像装置の第1実施例を示す断面構成図である。この図に示す現像装置3は、感光体1との対向部に開口部を有し、この開口部から一部が露出するように感光体と対向配置された現像ローラ31を備えている。現像ローラ31は現像剤担持体として非磁性の回転可能な現像スリーブを備えている。現像スリーブの内部には内部固定された磁界発生手段としての磁石体を配設している。また、現像装置の筐体内部は、トナーと磁性キャリアを含む現像剤を収容する現像剤収容部となっており、その現像剤収容部内には上下2本の搬送スクリュー32,33が設けられている。各搬送スクリュー32,33は互いに逆方向、すなわち上側の搬送スクリュー32は図中時計回りに、下側の搬送スクリュー33は図中反時計回りに回転駆動される。上下の搬送スクリュー32と33の間は仕切り部材34により仕切られており、搬送スクリュー32が配置された供給搬送経路38と搬送スクリュー33が配置された回収搬送経路39が形成される。また、現像ローラ31の上方には、現像ローラ31上の現像剤の層厚を規制する規制部材としてドクタブレード35が備えられる。なお、現像剤収容部内には、図示しないトナー補給手段からのトナーを、トナー補給口(図示せず)から供給可能になっている。
【0022】
図2は、現像装置3を縦に切って図1の右方向から見た(搬送スクリュー32,33の長手方向に沿って切断した)断面図である。上記したように、上側搬送スクリュー32と下側搬送スクリュー33の間には現像剤収納部を上下に仕切る仕切り部材34が設けられている。図2から分かるように、仕切り部材34の両端部には連通口36,37が設けられている。また、図中に矢印で示すように、上側の搬送スクリュー32は図中右向きに現像剤を搬送し、下側の搬送スクリュー33は図中左向きに現像剤を搬送する。
【0023】
このように構成された現像装置3において、現像剤収納部内の現像剤は上側搬送スクリュー32により軸方向(図2の右方向)に搬送されつつ、現像ローラ31の汲み上げ極に供給される。現像ローラ31上に供給された現像剤は、現像ローラ31内の磁石の磁力によって現像ローラ31の表面に汲み上げられ、現像ローラ31の回転に伴い同方向へ搬送される。現像剤は現像ローラ31表面に所定の間隙を介して対向するドクタブレード35によってその層厚を規制され、一定量の現像剤が現像ローラ31に担持された状態で開口部に搬送され、感光体1と対向する。同時に、ドクタブレード35で通過を規制し、現像剤にストレスを与えることで現像剤中のトナーの摩擦帯電が促進される。
【0024】
感光体1と対向する現像領域では、磁石の磁力によって現像ローラ31上に磁気ブラシが形成され、本例では感光体1の移動方向と同方向で且つ感光体1よりも高速に移動させて、その先端を感光体に摺擦させながら通過させる。このとき、現像ローラ31には図示しない電源より現像バイアスが印加されており、感光体1に摺擦する磁気ブラシの先端のトナーには現像ポテンシャルが作用して、磁性キャリアの表面から感光体上の潜像部に静電的に転移してトナー像を形成する。現像ローラ31の回転に伴って上記現像領域を通過した後の磁気ブラシは、現像剤収容部内に戻される。
【0025】
現像装置内に戻された現像剤は現像剤収納部内の現像剤と混合され、トナー濃度が均一になるように下側搬送スクリュー33によって攪拌されながら回収搬送経路39の端部まで搬送される。端部まで搬送された現像剤は連通口37を通して持ち上げられ、上側搬送スクリュー32に受け渡される。なお、図示しないトナー補給手段からのトナーが補給されるトナー補給口(図示せず)は、本例では連通口36の上部に位置して設けられており、新たに補給されたトナーも下側搬送スクリュー33によって搬送され、現像剤収納部内の現像剤と混合攪拌される。また、上側搬送スクリュー32によって現像ローラ31に供給されず端部まで搬送された現像剤も連通口36を介して下側搬送スクリュー33に受け渡される。
【0026】
このような循環構成の現像装置3では、現像ローラ31に汲み上げられ現像領域を通過した現像剤はすぐに現像領域に戻ることはなく、回収搬送経路39に戻され、下側搬送スクリュー33で充分に攪拌されてから供給搬送経路38に送られ、上側搬送スクリュー32によって現像ローラ31へと現像剤が供給されるので、現像ローラ31に供給される現像剤は均一に攪拌され、常に安定したトナー濃度に調整されているという特徴があり、またスクリュー32,33が上下の縦に配置されているために現像装置の幅(図1における左右方向の大きさ)を小さくできるという利点がある。
【0027】
ところで、搬送スクリュー33で搬送され、回収搬送経路39の端部(図2の左端)で行き場がなくなった現像剤は、連通口37から上方に移動することになるが、このとき、後から搬送されてくる現像剤に押し上げられる状態となって供給搬送経路38に移動する。そのため、回収搬送経路39の下流端部分では、図2に示されるように、現像剤は端部に停滞している状態となる。
【0028】
従来の現像装置では、図8に示したように、現像ローラ軸方向の中央部付近まで、搬送経路に存在する現像剤が搬送経路上面(仕切り部材下面)に接触させられている。この状態では、現像に使用された現像剤は、回収搬送経路で左方向(下流側)に搬送されずに、再度現像ローラに汲み上げられることもあった。一度現像に使用された現像剤がすぐに再汲み上げられるとその部分の画像濃度は低下する。すなわち、現像ローラ軸方向で画像濃度偏差が生じてしまう。
【0029】
そこで、本発明の現像装置では、図1に示されるように、下側搬送スクリュー33が配置される回収搬送経路39の上面、すなわち、供給搬送経路38と回収搬送経路39を仕切る仕切り部材34の下面に現像剤移流制御部材40を設けている。この現像剤移流制御部材40は、図2に示されるように、仕切り部材34の下流側端部に寄せて(連通口37側に寄せて)配置されている。現像剤移流制御部材40は、回収搬送経路39の上面から搬送経路内に突出するように設けられたものである。また、図2から分かるように、現像剤移流制御部材40は複数の整流板40aから構成されているが、各整流板40aの現像ローラ長手方向の間隔(ピッチ)は、下側搬送スクリュー33(回収搬送スクリュー)のピッチよりも短くなっている。なお、図3(a)に示すように、整流板40aは、搬送スクリューの軸方向に対して斜めに(現像剤搬送方向に対して斜めに)配置されている。
【0030】
高速で回転するスクリュー内に存在する微小粉体は、高流動性を示すため搬送経路内を液体のように移動する。一方、スクリューの上面に存在する現像剤は、スクリューの回転により撒き散らされる。この撒き散らされた現像剤は、現像剤移流制御部材40に衝突することで現像剤移動方向(現像剤全体としての移動方向)とは逆方向に移動させられる。そのメカニズムについて図3を参照して説明する。
【0031】
図3(a)は、現像剤移流制御部材40を下方から見た図であり、図3(b)は、下側搬送スクリュー33(回収搬送スクリュー)を横から見た図であり、両図において現像剤の挙動を太矢印で模式的に表している。スクリュー33の高速回転により撒き散らされた現像剤は回収搬送経路の上部壁面(仕切り部材34の下面)に衝突して再び搬送経路に落下する。このとき、現像剤の落下方向を制御できれば搬送経路内の現像剤量を制御することができる。
【0032】
現像剤移流制御部材(40)を持たない従来装置の場合、多くの現像剤は搬送経路上部壁面(仕切り部材の下面)に接触した後、進行方向に落下する。そのため、従来装置における現像剤の喫水面は図9に示す(太一点鎖線)ようになる。これに対し、本発明の現像装置では現像剤移流制御部材40を設けたことにより、図3に示すように、スクリュー33の高速回転により撒き散らされた現像剤は現像剤移流制御部材40に衝突した後、進行方向(現像剤全体としての搬送方向:図3において右から左方向)とは逆方向に太矢印で示すように移動する(図3(a),(b))。
【0033】
すなわち、図1においてスクリュー33が反時計回りに回転することで現像剤は図面に垂直な方向の下から上に(図1において現像装置の奥側から手前側に)搬送される。この場合、スクリュー上面に存在する現像剤は図1における左手前斜め方向に向かって飛ばされる。この飛ばされた(撒き散らされた)現像剤に対して、搬送方向とは逆向きに流れが変化するように、整流板40aの現像ローラ側を搬送方向上流側となるような角度で整流板40aを配置する(図3(a))。これにより、スクリュー33によって斜め前方(斜め搬送方向下流側)に飛ばされた現像剤は後方に反射されるように流れが変化する。
【0034】
このため、現像剤の平衡状態における喫水面は図2に示す(太一点鎖線)ようになり、回収搬送経路39の上部壁面(仕切り部材34の下面)に接触せず、現像ローラ31にも接触しない。その結果、現像領域から戻ってきた現像剤は回収搬送経路39にとどまり、(回収搬送経路から)現像ローラに再度汲み上げられることは無い。したがって、画像濃度の左右(軸方向)偏差の発生を防止することができる。
【0035】
ところで、理想的には、現像ローラからの現像剤回収量+供給搬送経路にある現像剤残量が回収経路にある現像剤量よりも小さくなっている状態が望ましい。上述したように、現像剤は搬送経路内でスクリュが高速に回転することで液体のような流動状態となる。そのため、搬送経路上に存在する現像剤表面は液体の自由表面のようになり、不連続液体の様子を示す。つまり、見た目の状態では液体が「飛び散っている」状態であり、板のような部材がそこに存在すれば、容易に移流方向を変えることが可能である。つまり、回収搬送経路内では現像剤はある方向に運ばれているが、自由表面となる回収経路内の現像剤表面は、板のような部材「現像剤移流制御部材40」があるとスクリューにより移送される方向とは逆の方向に流れることがわかった。つまり現像剤移流制御部材40が回収経路内に存在すると、回収経路内で下部にある現像剤と上部にある一部の現像剤は移流方向が逆になるのである。その結果、この現像剤移流制御部材40を設置することで、回収経路下流での現像剤の嵩が高くなって現像ローラに現像剤が連れ回りすることによる画像濃度偏差の発生が抑制される結果となった。
【0036】
現像剤移流制御部材40としては、図2,3に示す制御板以外のものも可能であり、下側搬送スクリュー33の端部にフィンを設けることで、回収搬送経路39内の自由空間で気流により現像剤の流れを一部逆向き(現像剤全体としての移動方向と逆向き)にすることが可能となる。
【0037】
図4は、現像ローラ31が内蔵する磁石体の磁極配置を示す図である。この図に示すように、磁石体は、供給搬送経路38側に設けられた汲み上げ極としての“N極”(上側のN極)と、該N極から現像ローラ回転方向に沿って、搬送極となる“S極”及び“N極”(ドクタブレード35の下に位置するS極及びその下流側のN極)と、現像極である“S極”と、仕切り部材34と現像ケーシングとの間に形成され回収搬送経路39に向かって開口する開口部41に対向して設けられた剥離極である“N極”(現像極のS極の下流側のN極)、を有している。なお、本実施例では、汲み上げ極の“N極”と剥離極の“N極”の間の磁力(N−N間磁力と称する)は20mTに設定されている。
【0038】
ここで、現像剤を現像ローラ(現像スリーブ)から剥離させるための磁極である「剥離極」の位置について図10,11を参照して説明する。従来、図10に示すように、現像極と反対側の半円内に剥離極を設けて、回収搬送経路に対向する「開口部」に剥離極(図10で、右斜め下のN極)が位置するように構成していた。しかし、この場合、回収搬送スクリューの下流側において現像剤が滞留し、また、剥離極が上記開口部に位置して設けられているため、剥離後の現像剤は開口部全体に広く分布することとなり、現像剤の滞留とともに「再汲み上げ」発生の原因となっていた。図11のように、上記開口部にスクリューを追加することにより現像剤の再汲み上げを抑制できるものの、大幅なコスト上昇は避けられない。
【0039】
一方、本発明の現像装置3においては、剥離極(本例ではN極)を回収搬送経路39に対向する開口部41に位置して設けた(現像極と反対側の半円内に剥離極を設けた)構成であっても、回収搬送経路39の上面に現像剤移流制御部材40を設けたことにより、下側搬送スクリュー33の高速回転により撒き散らされた現像剤は現像剤移流制御部材40に衝突することによって進行方向(現像剤全体としての移動方向)とは逆方向に戻され、現像領域から戻ってきた(現像ローラ131から剥離された)現像剤は回収搬送経路39にとどまり、現像ローラへの再汲み上げの発生が防止された。これにより、画像濃度の左右(軸方向)偏差の発生を防止することができる。
【0040】
次に、第2実施例の現像装置を図5を参照して説明する。
図5は、第2実施例の現像装置13を示す断面図である。上記説明した第1実施例の現像装置3と同一ないし同等の部分には同じ符号を付している。また、重複する説明は省略し、異なる点を中心に説明する。
【0041】
図5に示す第2実施例の現像装置13は、第1実施例の現像装置3が現像剤移流制御部材(40)を仕切り部材34の下面に設けていたのに対し、仕切り部材34から現像ローラ方向に突出させて現像剤移流制御部材50を設けている。また、現像ローラ131が内蔵する磁石体は、図示のような磁極を有している。
【0042】
図5において、太矢印1〜3は現像剤の流れ(現像装置内の現像剤の循環)を示している。また、上下の搬送スクリュー32,33の円内は現像剤の状態を示しており、上側の供給搬送経路38ではスクリュー底部付近に現像剤があり、下側の回収搬送経路39ではスクリュー内に分散している様子が示されている。
【0043】
上記したように、本第2実施例の現像装置13は、供給搬送経路38と回収搬送経路39を仕切る仕切り部材34(の下面)から前方(現像ローラ方向)に現像剤移流制御部材50を突出させて設けている。また、現像剤移流制御部材50の下面(回収搬送スクリュー33に対向する側の面)には複数個の整流板50aが形成されている。現像剤移流制御部材50の作用は、第1実施例の現像装置3で説明した現像剤移流制御部材40の作用と同様である。また、整流板50aは、第1実施例の整流板40aと同じく、整流板の現像ローラ側を搬送方向上流側となるような角度で配置している。
【0044】
本第2実施例の現像ローラ131が内蔵する磁石体の磁極は、第1実施例の現像ローラ31と同様、汲み上げ極の“N極”から現像ローラ回転方向に順に、搬送極である“S極”及び“N極”と、現像極である“S極”と、剥離極である“N極”とを有しているが、本第2実施例では、剥離極の“N極”の位置が、現像極である“S極”と同じ半円(現像ローラの半円)内に位置して設けられており、仕切り部材34と現像ケーシングとの間に形成され回収搬送経路39に対向する開口部に「剥離極」が位置しておらず、上記開口部の上流側に位置して「剥離極」が設けられている点に特徴がある。また、本第2実施例では、汲み上げ極と剥離極の間の磁力(N−N間磁力)は5mTに設定されている。
【0045】
このような構成により、現像領域を通過した後の現像剤は、剥離極である“N極”の磁力によって現像ローラ231から剥離され、上記開口部の底部を通るようにして現像ケーシングに沿って移動し、回収搬送経路39に戻される。それに加えて、上述したように現像剤移流制御部材50を設けたことにより、下側搬送スクリュー33の高速回転により撒き散らされた現像剤は現像剤移流制御部材50に衝突することによって進行方向(現像剤全体としての移動方向)とは逆方向に戻され、現像ローラへの現像剤再汲み上げが防止される。これにより、画像濃度の左右(軸方向)偏差の発生を防止することができる。
【0046】
次に、第3実施例の現像装置を図6を参照して説明する。
図6は、第3実施例の現像装置23を示す断面図である。上記説明した第1実施例の現像装置3及び第2実施例の現像装置13と同一ないし同等の部分には同じ符号を付している。また、重複する説明は省略し、異なる点を中心に説明する。
【0047】
本第3実施例の現像装置23は、第2実施例の現像装置13と同様に、仕切り部材34から現像ローラ方向に突出させて現像剤移流制御部材50を設けている。また、現像ローラ231が内蔵する磁石体は、図示のような磁極を有している。磁極配置は第2実施例の現像装置13と同様、剥離極の“N極”の位置が、現像極である“S極”と同じ半円(現像ローラの半円)内に位置して設けられており、上記開口部の上流側に位置して「剥離極」が設けられている点は同じであるが、本第3実施例では、汲み上げ極と剥離極の間の磁力(N−N間磁力)が20mTに設定されている。
【0048】
このような構成により、現像領域を通過した後の現像剤は、剥離極である“N極”の磁力によって現像ローラ231から剥離され、上記開口部の底部を通るようにして現像ケーシングに沿って移動し、回収搬送経路39に戻される。それに加えて、上述したように現像剤移流制御部材50を設けたことにより、下側搬送スクリュー33の高速回転により撒き散らされた現像剤は現像剤移流制御部材50に衝突することによって進行方向(現像剤全体としての移動方向)とは逆方向に戻され、現像ローラへの現像剤再汲み上げが防止される。これにより、画像濃度の左右(軸方向)偏差の発生を防止することができる。
【0049】
ここで、従来装置を比較例1,2として図10,11により説明する。図10,11の比較例1,2は、現像剤移流制御部材を有さないものである。
図10の比較例1においては、下側搬送スクリュー128の下流(現像剤搬送方向の下流)部分で現像剤が滞留して、現像領域を通過した(現像に供された)現像剤が再度現像ローラに再汲み上げされることがあった。そのため、現像剤中のトナー濃度に現像ローラ長手方向で偏差が発生し、その結果画像濃度にも偏差が発生することがあった。例えば比較例1における画像濃度偏差は0.40であった。
【0050】
また、図11の比較例2では、回収搬送経路内に補助スクリュー129を追加することで、回収搬送経路内の現像剤の嵩の偏りを抑制するように構成しており、画像濃度偏差は0.15と比較的良いレベルとなっているが、補助スクリュー129を1本追加するため、フルカラーに対応すべく4つの現像器を備える場合には、スクリューを4本追加することとなり、大幅なコストアップとなってしまう。
【0051】
これに対し、本発明の現像装置13では、上記各実施例で説明したような構成とすることにより、現像ローラへの現像剤再汲み上げの発生が防止され、画像濃度の左右(現像ローラ軸方向)偏差の発生を防止することができる。次の表1に、本発明の各実施例と比較例における画像濃度偏差(現像ローラ長手方向における画像濃度偏差)の値を示す。
【0052】
【表1】
【0053】
この表に示すように、各実施例の現像装置3,13,23においては、画像濃度偏差が0.10〜0.15であり、比較例1の従来装置の場合(画像濃度偏差:0.40)と比べて画像濃度偏差が明確に小さくなっており、現像ローラ長手方向における画像濃度偏差が効果的に抑制されていることが分かる。なお、比較例2では追加した補助スクリューの効果により画像濃度偏差が改善されているが、この構成では、上記したように大幅なコストアップが免れない。
【0054】
以上、本発明による現像装置を各実施例により説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、現像剤移流制御部材が有する各整流板の長さは一律である必要は無く、たとえば下流にいくにしたがって長くなるように設けることもできる。また、各整流板の高さ(厚さ=搬送経路内に突出する長さ)も一律である必要は無く、例えば下流にいくにしたがって高くなるように設けることもできる。これらの場合、搬送方向の下流にいくほど移流を変化させる効果を高くし、現像剤の滞留防止効果を向上させることができる。さらに、各整流板の角度も一律である必要は無く、たとえば下流にいくにしたがって角度を大きくしたり、その逆でも良い。
【0055】
また、現像剤移流制御部材の位置は現像ローラに近いほうが好ましく、例えば、図1の現像剤移流制御部材40の位置よりも図5の現像剤移流制御部材50の位置のほうが好ましい。そのほうが、回収搬送経路内における現像ローラ付近の現像剤嵩高さの増大を効果的に抑制することができ、現像剤の再汲み上げ防止に効果がある。
【0056】
また、現像ローラが内蔵する磁石体の磁極の配置も一例であり、適宜に設定できるものである。N極とS極は逆であっても良い。また、N−N間磁力(N極とS極を逆にした場合はS−S間磁力)の値も一例である。
【0057】
最後に、本発明による現像装置を備える画像形成装置の一例について図7を参照して説明する。
図7は、本発明に係る現像装置を備える画像形成装置の一例であるモノクロ画像形成装置の要部構成を模式的に示す図である。この形態はモノクロ画像形成装置として構成されているが、1つの感光体の回りに複数の現像装置を配置したカラー画像形成装置や、複数の作像ユニットを並設したタンデム型画像形成装置として構成することも可能である。
【0058】
図7において、潜像担持体としての感光体ドラム1の周囲には、帯電装置2、現像装置3、転写装置4、クリーニング装置5が順に配設されている。帯電装置2と現像装置3の間は、露光装置6からの走査光が照射される書込み位置となっている。また、図示しない給紙トレイより転写紙等の記録材(以下、用紙という)を感光体と転写装置とが対向する転写部に向けて給紙する図示しない給紙搬送装置と、トナー像を転写された用紙が感光体から分離した後、トナーを用紙上に定着させる定着装置7とを備えている。
【0059】
上記感光体1は、例えばアルミ等の素管の表面に感光性を発揮する有機感光層が形成されたもので、図示しない駆動手段によって図中矢印方向に回転駆動される。このように回転駆動される感光体1の表面は、帯電装置2で所定の帯電電位に一様帯電された後、露光装置6より画像情報に基づいて変調されたレーザ光線が感光体軸方向にスキャンされて照射される。これにより、感光体上に静電潜像が形成される。感光体1上に形成された静電潜像は、現像装置3と対向する現像領域において、現像装置3により帯電したトナーを付着させることで現像され、トナー像となる。
【0060】
一方、用紙は図示しない給紙搬送装置で給紙・搬送され、所定のタイミングで感光体1と転写装置4とが対向する転写部に送出・搬送される。そして、転写装置4により、用紙に感光体上のトナー像とは逆極性の電荷を付与することで、感光体上に形成されたトナー像が用紙に転写される。次いで、用紙は、感光体1から分離され、定着装置7に送られ、定着装置7でトナー像が定着された後、機外に排出される。
【0061】
転写装置4でトナー像が転写された後の感光体1の表面は、クリーニング装置5でクリーニングされ、感光体上に残ったトナーが除去される。クリーニング装置5を通過した感光体1の表面は、その後、帯電装置2により一様に帯電され、次の画像形成工程が繰り返される。
【0062】
なお、図7では現像装置として上記第1実施例の現像装置3としてあるが、もちろん、上述した第2及び第3実施例の現像装置13,23を用いることができることは言うまでもない。また、画像形成装置としてはプリンタに限らず、複写機やファクシミリ、あるいは複数の機能を備える複合機であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る現像装置の第1実施例を示す断面構成図である。
【図2】図1の現像装置を縦に切って図1の右方向から見た断面図である。
【図3】現像剤の挙動を説明する模式図であり、(a)図は現像剤移流制御部材を下方から見た図、(b)図は下側搬送スクリューを横から見た図であ
【図4】現像ローラが内蔵する磁石体の磁極配置を示す図である。
【図5】第2実施例の現像装置を示す断面図である。
【図6】第3実施例の現像装置を示す断面図である。
【図7】本発明に係る現像装置を備える画像形成装置の一例であるモノクロ画像形成装置の要部構成を模式的に示す図である。
【図8】従来の現像装置の一例を示す断面図である。
【図9】その現像装置をスクリュー軸方向から見た断面図である。
【図10】従来の現像装置の一例における磁極配置を示す断面図である。
【図11】従来の現像装置の別の例における磁極配置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 感光体
3,13,23 現像装置
31,131,231 現像ローラ(現像剤担持体)
35 ドクタブレード
32 上側搬送スクリュー(供給搬送スクリュー)
33 下側搬送スクリュー(回収搬送スクリュー)
34 仕切り部材
36,37 連通口
38 供給搬送経路
39 回収搬送経路
40,50 現像剤移流制御部材
40a,50a 整流板
41 開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体上に形成された静電潜像を可視化する現像装置及びこれを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2003−186293号公報
【特許文献2】特許第3127594号公報
【0003】
電子写真方式による画像形成方法では、現像在中に必要なトナーをスクリュー等で混合/分散(攪拌)してトナーが均一な状態の現像剤をスクリュー等で現像ローラに供給し、潜像に応じてトナーが付与される。現像領域通過後の現像剤は、現像ローラ(現像スリーブ)から離脱してスクリュー等で回収される。したがって、理想的には、攪拌,供給,回収用に3本のスクリューを備えるのが好ましい。
【0004】
一方、平行に配置された2本のスクリューを用いる場合には、一度現像領域を通過した現像剤が再度現像ローラに供給されることがあるため、現像ローラ長手方向の画像濃度偏差に課題があった。これに対し、小型化を念頭に上下に配置した2本スクリューを用いた現像装置では、現像ローラに供給される現像剤は常にフレッシュな現像剤となるため、画像濃度偏差を大きく低減することが可能である。
【0005】
しかしながら、スクリューの3つの機能である攪拌,供給,回収を2本のスクリューで実施するため、1本のスクリューで2つの機能を担うことになる。上記の上下配置2本スクリューの場合、上側スクリューの機能は現像剤を現像ローラに供給する機能1つである。下側スクリューの機能は、現像剤を現像ローラから回収する機能と、回収された現像剤(トナーが現像に使用されたためトナー量が低下している現像剤)が本体内の現像剤に供給されたとき、トナーを現像剤に分散させる機能の2つがある。そのため、下側スクリューが設けられた現像剤搬送経路ではトナー濃度が大きく変化するため、それに合わせて搬送経路内での現像剤の嵩が変化することになる。
【0006】
この点について図8,9を参照して詳しく説明する。図8は、2本のスクリューを上下に配置した現像装置の長手方向の断面図で、上下2本のスクリュー127,128による現像剤搬送経路を表している。スクリュー127が配置される上側の現像剤搬送経路125では、図の左から右方向に現像剤が搬送される。また、スクリュー128が配置される下側の現像剤搬送経路126では、図の右から左方向に現像剤が搬送される。図9は、その現像装置をスクリュー軸方向から見た断面図である。これらの図において、下側の現像剤回収経路126では、上流部分(図8の右側)では現像剤量が少ないため現像剤の搬送に何ら問題は見られないが、下流部分(図8の左側)では現像剤の状態により現像剤が滞留して、現像ローラ123への再汲み上げが発生する。一度現像に使用された現像剤が現像ローラに再汲み上げされると、トナー濃度が低下して得られる画像は低濃度になることがある。そのため、長手方向の画像濃度偏差が大きくなるという課題が生じていた。
【0007】
このような課題に対し、特許文献1に記載された発明においては、下側搬送経路内の現像剤量を感圧素子(ピエゾ圧電素子39:特許文献1、図6)を用いて検知し、嵩高さが適切になるようにスクリュー回転数等を制御している。
【0008】
また、特許文献2に記載された発明においては、下側搬送経路における現像剤嵩高さを制御するためのスクリュー(オーガ9:特許文献2、図1)を1本追加している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のものでは、センサや回転制御といった多くの機構が取り入れられており、コストが上昇してしまうという問題がある。また、特許文献2に記載のものも、スクリューを1本追加しており、コストが上昇してしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、従来の現像装置における上述の問題を解決し、簡単な構成で低コストに画像濃度偏差の発生を抑制するこのできる現像装置及び画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題は、本発明により、現像剤を担持して現像領域に搬送する現像剤担持体と、現像剤を前記現像剤担持体の長手方向に搬送しながら前記現像剤担持体に供給する供給搬送スクリューと、現像領域を通過した現像剤を前記現像剤担持体から回収し前記供給搬送スクリューとは逆方向に現像剤を搬送する回収搬送スクリューとを有し、前記供給搬送スクリューと前記回収搬送スクリューとが上下方向に配置されている現像装置において、前記回収搬送スクリューの上方に現像剤の移動方向を制御する現像剤移流制御部材を設け、前記現像剤移流制御部材が、前記回収搬送スクリューによる現像剤搬送方向に対して斜めに配置された整流板を有することにより解決される。
【0012】
また、前記整流板が複数個設けられており、各整流板の間隔が前記回収搬送スクリューのスクリューピッチよりも短いと好ましい。
また、前記現像剤移流制御部材が、前記供給搬送スクリューが配置される現像剤供給搬送経路と前記回収搬送スクリューが配置される現像剤回収搬送経路を仕切る仕切り部材の下面に設けられていると好ましい。
【0013】
また、前記現像剤移流制御部材が、前記供給搬送スクリューが配置される現像剤供給搬送経路と前記回収搬送スクリューが配置される現像剤回収搬送経路を仕切る仕切り部材から前記現像剤担持体方向に突出して設けられていると好ましい。
【0014】
また、前記現像剤担持体が内蔵する磁石体は、当該現像剤担持体の円筒形断面における現像極と同じ半円内に剥離極が設けられ、前記剥離極は、前記回収搬送スクリューに対向する開口部の上流側に位置するように配置されていると好ましい。
【0015】
また、前記の課題は、本発明により、請求項1〜5のいずれか1項に記載の現像装置を備える画像形成装置により解決される。
また、前記現像装置を複数備え、多色画像の形成が可能であると好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の現像装置によれば、回収搬送スクリューにより撒き散らされた現像剤は現像剤移流制御部材によって進行方向(現像剤全体としての移動方向)とは逆方向に戻され、現像領域から戻ってきた(現像剤担持体から剥離された)現像剤は回収搬送経路にとどまり、現像剤担持体への再汲み上げの発生を防止することができる。これにより、画像濃度の左右偏差(現像剤担持体長手方向の偏差)の発生を防止することができる。
【0017】
請求項2の構成により、整流板の間隔が回収搬送スクリューのスクリューピッチよりも短いので、回収搬送スクリューにより撒き散らされた現像剤の移動方向を確実に制御することができる。
【0018】
請求項3の構成により、簡単な構成で現像剤移流制御部材を設けることができ、コストの上昇を抑えることができる。
請求項4の構成により、現像剤移流制御部材を仕切り部材から現像剤担持体方向に突出して設けることによって、回収された現像剤の再汲み上げをより効果的に防止することができる。
【0019】
請求項5の構成により、現像領域から戻る現像剤は回収搬送スクリューに対向する開口部の底部を通るようにして現像ケーシングに沿って移動し、回収搬送経路に戻されるので、回収された現像剤の再汲み上げを効果的に防止することができる。
【0020】
請求項6の画像形成装置によれば、現像剤担持体長手方向における画像濃度の偏差が無い現像装置を備えることにより、より高品質な画像を得ることが可能となる。
請求項7の構成により、複数の現像装置を備える画像形成装置においても、コストの上昇を極力抑えて低コストに、画像濃度の偏差が無い高品質な画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る現像装置の第1実施例を示す断面構成図である。この図に示す現像装置3は、感光体1との対向部に開口部を有し、この開口部から一部が露出するように感光体と対向配置された現像ローラ31を備えている。現像ローラ31は現像剤担持体として非磁性の回転可能な現像スリーブを備えている。現像スリーブの内部には内部固定された磁界発生手段としての磁石体を配設している。また、現像装置の筐体内部は、トナーと磁性キャリアを含む現像剤を収容する現像剤収容部となっており、その現像剤収容部内には上下2本の搬送スクリュー32,33が設けられている。各搬送スクリュー32,33は互いに逆方向、すなわち上側の搬送スクリュー32は図中時計回りに、下側の搬送スクリュー33は図中反時計回りに回転駆動される。上下の搬送スクリュー32と33の間は仕切り部材34により仕切られており、搬送スクリュー32が配置された供給搬送経路38と搬送スクリュー33が配置された回収搬送経路39が形成される。また、現像ローラ31の上方には、現像ローラ31上の現像剤の層厚を規制する規制部材としてドクタブレード35が備えられる。なお、現像剤収容部内には、図示しないトナー補給手段からのトナーを、トナー補給口(図示せず)から供給可能になっている。
【0022】
図2は、現像装置3を縦に切って図1の右方向から見た(搬送スクリュー32,33の長手方向に沿って切断した)断面図である。上記したように、上側搬送スクリュー32と下側搬送スクリュー33の間には現像剤収納部を上下に仕切る仕切り部材34が設けられている。図2から分かるように、仕切り部材34の両端部には連通口36,37が設けられている。また、図中に矢印で示すように、上側の搬送スクリュー32は図中右向きに現像剤を搬送し、下側の搬送スクリュー33は図中左向きに現像剤を搬送する。
【0023】
このように構成された現像装置3において、現像剤収納部内の現像剤は上側搬送スクリュー32により軸方向(図2の右方向)に搬送されつつ、現像ローラ31の汲み上げ極に供給される。現像ローラ31上に供給された現像剤は、現像ローラ31内の磁石の磁力によって現像ローラ31の表面に汲み上げられ、現像ローラ31の回転に伴い同方向へ搬送される。現像剤は現像ローラ31表面に所定の間隙を介して対向するドクタブレード35によってその層厚を規制され、一定量の現像剤が現像ローラ31に担持された状態で開口部に搬送され、感光体1と対向する。同時に、ドクタブレード35で通過を規制し、現像剤にストレスを与えることで現像剤中のトナーの摩擦帯電が促進される。
【0024】
感光体1と対向する現像領域では、磁石の磁力によって現像ローラ31上に磁気ブラシが形成され、本例では感光体1の移動方向と同方向で且つ感光体1よりも高速に移動させて、その先端を感光体に摺擦させながら通過させる。このとき、現像ローラ31には図示しない電源より現像バイアスが印加されており、感光体1に摺擦する磁気ブラシの先端のトナーには現像ポテンシャルが作用して、磁性キャリアの表面から感光体上の潜像部に静電的に転移してトナー像を形成する。現像ローラ31の回転に伴って上記現像領域を通過した後の磁気ブラシは、現像剤収容部内に戻される。
【0025】
現像装置内に戻された現像剤は現像剤収納部内の現像剤と混合され、トナー濃度が均一になるように下側搬送スクリュー33によって攪拌されながら回収搬送経路39の端部まで搬送される。端部まで搬送された現像剤は連通口37を通して持ち上げられ、上側搬送スクリュー32に受け渡される。なお、図示しないトナー補給手段からのトナーが補給されるトナー補給口(図示せず)は、本例では連通口36の上部に位置して設けられており、新たに補給されたトナーも下側搬送スクリュー33によって搬送され、現像剤収納部内の現像剤と混合攪拌される。また、上側搬送スクリュー32によって現像ローラ31に供給されず端部まで搬送された現像剤も連通口36を介して下側搬送スクリュー33に受け渡される。
【0026】
このような循環構成の現像装置3では、現像ローラ31に汲み上げられ現像領域を通過した現像剤はすぐに現像領域に戻ることはなく、回収搬送経路39に戻され、下側搬送スクリュー33で充分に攪拌されてから供給搬送経路38に送られ、上側搬送スクリュー32によって現像ローラ31へと現像剤が供給されるので、現像ローラ31に供給される現像剤は均一に攪拌され、常に安定したトナー濃度に調整されているという特徴があり、またスクリュー32,33が上下の縦に配置されているために現像装置の幅(図1における左右方向の大きさ)を小さくできるという利点がある。
【0027】
ところで、搬送スクリュー33で搬送され、回収搬送経路39の端部(図2の左端)で行き場がなくなった現像剤は、連通口37から上方に移動することになるが、このとき、後から搬送されてくる現像剤に押し上げられる状態となって供給搬送経路38に移動する。そのため、回収搬送経路39の下流端部分では、図2に示されるように、現像剤は端部に停滞している状態となる。
【0028】
従来の現像装置では、図8に示したように、現像ローラ軸方向の中央部付近まで、搬送経路に存在する現像剤が搬送経路上面(仕切り部材下面)に接触させられている。この状態では、現像に使用された現像剤は、回収搬送経路で左方向(下流側)に搬送されずに、再度現像ローラに汲み上げられることもあった。一度現像に使用された現像剤がすぐに再汲み上げられるとその部分の画像濃度は低下する。すなわち、現像ローラ軸方向で画像濃度偏差が生じてしまう。
【0029】
そこで、本発明の現像装置では、図1に示されるように、下側搬送スクリュー33が配置される回収搬送経路39の上面、すなわち、供給搬送経路38と回収搬送経路39を仕切る仕切り部材34の下面に現像剤移流制御部材40を設けている。この現像剤移流制御部材40は、図2に示されるように、仕切り部材34の下流側端部に寄せて(連通口37側に寄せて)配置されている。現像剤移流制御部材40は、回収搬送経路39の上面から搬送経路内に突出するように設けられたものである。また、図2から分かるように、現像剤移流制御部材40は複数の整流板40aから構成されているが、各整流板40aの現像ローラ長手方向の間隔(ピッチ)は、下側搬送スクリュー33(回収搬送スクリュー)のピッチよりも短くなっている。なお、図3(a)に示すように、整流板40aは、搬送スクリューの軸方向に対して斜めに(現像剤搬送方向に対して斜めに)配置されている。
【0030】
高速で回転するスクリュー内に存在する微小粉体は、高流動性を示すため搬送経路内を液体のように移動する。一方、スクリューの上面に存在する現像剤は、スクリューの回転により撒き散らされる。この撒き散らされた現像剤は、現像剤移流制御部材40に衝突することで現像剤移動方向(現像剤全体としての移動方向)とは逆方向に移動させられる。そのメカニズムについて図3を参照して説明する。
【0031】
図3(a)は、現像剤移流制御部材40を下方から見た図であり、図3(b)は、下側搬送スクリュー33(回収搬送スクリュー)を横から見た図であり、両図において現像剤の挙動を太矢印で模式的に表している。スクリュー33の高速回転により撒き散らされた現像剤は回収搬送経路の上部壁面(仕切り部材34の下面)に衝突して再び搬送経路に落下する。このとき、現像剤の落下方向を制御できれば搬送経路内の現像剤量を制御することができる。
【0032】
現像剤移流制御部材(40)を持たない従来装置の場合、多くの現像剤は搬送経路上部壁面(仕切り部材の下面)に接触した後、進行方向に落下する。そのため、従来装置における現像剤の喫水面は図9に示す(太一点鎖線)ようになる。これに対し、本発明の現像装置では現像剤移流制御部材40を設けたことにより、図3に示すように、スクリュー33の高速回転により撒き散らされた現像剤は現像剤移流制御部材40に衝突した後、進行方向(現像剤全体としての搬送方向:図3において右から左方向)とは逆方向に太矢印で示すように移動する(図3(a),(b))。
【0033】
すなわち、図1においてスクリュー33が反時計回りに回転することで現像剤は図面に垂直な方向の下から上に(図1において現像装置の奥側から手前側に)搬送される。この場合、スクリュー上面に存在する現像剤は図1における左手前斜め方向に向かって飛ばされる。この飛ばされた(撒き散らされた)現像剤に対して、搬送方向とは逆向きに流れが変化するように、整流板40aの現像ローラ側を搬送方向上流側となるような角度で整流板40aを配置する(図3(a))。これにより、スクリュー33によって斜め前方(斜め搬送方向下流側)に飛ばされた現像剤は後方に反射されるように流れが変化する。
【0034】
このため、現像剤の平衡状態における喫水面は図2に示す(太一点鎖線)ようになり、回収搬送経路39の上部壁面(仕切り部材34の下面)に接触せず、現像ローラ31にも接触しない。その結果、現像領域から戻ってきた現像剤は回収搬送経路39にとどまり、(回収搬送経路から)現像ローラに再度汲み上げられることは無い。したがって、画像濃度の左右(軸方向)偏差の発生を防止することができる。
【0035】
ところで、理想的には、現像ローラからの現像剤回収量+供給搬送経路にある現像剤残量が回収経路にある現像剤量よりも小さくなっている状態が望ましい。上述したように、現像剤は搬送経路内でスクリュが高速に回転することで液体のような流動状態となる。そのため、搬送経路上に存在する現像剤表面は液体の自由表面のようになり、不連続液体の様子を示す。つまり、見た目の状態では液体が「飛び散っている」状態であり、板のような部材がそこに存在すれば、容易に移流方向を変えることが可能である。つまり、回収搬送経路内では現像剤はある方向に運ばれているが、自由表面となる回収経路内の現像剤表面は、板のような部材「現像剤移流制御部材40」があるとスクリューにより移送される方向とは逆の方向に流れることがわかった。つまり現像剤移流制御部材40が回収経路内に存在すると、回収経路内で下部にある現像剤と上部にある一部の現像剤は移流方向が逆になるのである。その結果、この現像剤移流制御部材40を設置することで、回収経路下流での現像剤の嵩が高くなって現像ローラに現像剤が連れ回りすることによる画像濃度偏差の発生が抑制される結果となった。
【0036】
現像剤移流制御部材40としては、図2,3に示す制御板以外のものも可能であり、下側搬送スクリュー33の端部にフィンを設けることで、回収搬送経路39内の自由空間で気流により現像剤の流れを一部逆向き(現像剤全体としての移動方向と逆向き)にすることが可能となる。
【0037】
図4は、現像ローラ31が内蔵する磁石体の磁極配置を示す図である。この図に示すように、磁石体は、供給搬送経路38側に設けられた汲み上げ極としての“N極”(上側のN極)と、該N極から現像ローラ回転方向に沿って、搬送極となる“S極”及び“N極”(ドクタブレード35の下に位置するS極及びその下流側のN極)と、現像極である“S極”と、仕切り部材34と現像ケーシングとの間に形成され回収搬送経路39に向かって開口する開口部41に対向して設けられた剥離極である“N極”(現像極のS極の下流側のN極)、を有している。なお、本実施例では、汲み上げ極の“N極”と剥離極の“N極”の間の磁力(N−N間磁力と称する)は20mTに設定されている。
【0038】
ここで、現像剤を現像ローラ(現像スリーブ)から剥離させるための磁極である「剥離極」の位置について図10,11を参照して説明する。従来、図10に示すように、現像極と反対側の半円内に剥離極を設けて、回収搬送経路に対向する「開口部」に剥離極(図10で、右斜め下のN極)が位置するように構成していた。しかし、この場合、回収搬送スクリューの下流側において現像剤が滞留し、また、剥離極が上記開口部に位置して設けられているため、剥離後の現像剤は開口部全体に広く分布することとなり、現像剤の滞留とともに「再汲み上げ」発生の原因となっていた。図11のように、上記開口部にスクリューを追加することにより現像剤の再汲み上げを抑制できるものの、大幅なコスト上昇は避けられない。
【0039】
一方、本発明の現像装置3においては、剥離極(本例ではN極)を回収搬送経路39に対向する開口部41に位置して設けた(現像極と反対側の半円内に剥離極を設けた)構成であっても、回収搬送経路39の上面に現像剤移流制御部材40を設けたことにより、下側搬送スクリュー33の高速回転により撒き散らされた現像剤は現像剤移流制御部材40に衝突することによって進行方向(現像剤全体としての移動方向)とは逆方向に戻され、現像領域から戻ってきた(現像ローラ131から剥離された)現像剤は回収搬送経路39にとどまり、現像ローラへの再汲み上げの発生が防止された。これにより、画像濃度の左右(軸方向)偏差の発生を防止することができる。
【0040】
次に、第2実施例の現像装置を図5を参照して説明する。
図5は、第2実施例の現像装置13を示す断面図である。上記説明した第1実施例の現像装置3と同一ないし同等の部分には同じ符号を付している。また、重複する説明は省略し、異なる点を中心に説明する。
【0041】
図5に示す第2実施例の現像装置13は、第1実施例の現像装置3が現像剤移流制御部材(40)を仕切り部材34の下面に設けていたのに対し、仕切り部材34から現像ローラ方向に突出させて現像剤移流制御部材50を設けている。また、現像ローラ131が内蔵する磁石体は、図示のような磁極を有している。
【0042】
図5において、太矢印1〜3は現像剤の流れ(現像装置内の現像剤の循環)を示している。また、上下の搬送スクリュー32,33の円内は現像剤の状態を示しており、上側の供給搬送経路38ではスクリュー底部付近に現像剤があり、下側の回収搬送経路39ではスクリュー内に分散している様子が示されている。
【0043】
上記したように、本第2実施例の現像装置13は、供給搬送経路38と回収搬送経路39を仕切る仕切り部材34(の下面)から前方(現像ローラ方向)に現像剤移流制御部材50を突出させて設けている。また、現像剤移流制御部材50の下面(回収搬送スクリュー33に対向する側の面)には複数個の整流板50aが形成されている。現像剤移流制御部材50の作用は、第1実施例の現像装置3で説明した現像剤移流制御部材40の作用と同様である。また、整流板50aは、第1実施例の整流板40aと同じく、整流板の現像ローラ側を搬送方向上流側となるような角度で配置している。
【0044】
本第2実施例の現像ローラ131が内蔵する磁石体の磁極は、第1実施例の現像ローラ31と同様、汲み上げ極の“N極”から現像ローラ回転方向に順に、搬送極である“S極”及び“N極”と、現像極である“S極”と、剥離極である“N極”とを有しているが、本第2実施例では、剥離極の“N極”の位置が、現像極である“S極”と同じ半円(現像ローラの半円)内に位置して設けられており、仕切り部材34と現像ケーシングとの間に形成され回収搬送経路39に対向する開口部に「剥離極」が位置しておらず、上記開口部の上流側に位置して「剥離極」が設けられている点に特徴がある。また、本第2実施例では、汲み上げ極と剥離極の間の磁力(N−N間磁力)は5mTに設定されている。
【0045】
このような構成により、現像領域を通過した後の現像剤は、剥離極である“N極”の磁力によって現像ローラ231から剥離され、上記開口部の底部を通るようにして現像ケーシングに沿って移動し、回収搬送経路39に戻される。それに加えて、上述したように現像剤移流制御部材50を設けたことにより、下側搬送スクリュー33の高速回転により撒き散らされた現像剤は現像剤移流制御部材50に衝突することによって進行方向(現像剤全体としての移動方向)とは逆方向に戻され、現像ローラへの現像剤再汲み上げが防止される。これにより、画像濃度の左右(軸方向)偏差の発生を防止することができる。
【0046】
次に、第3実施例の現像装置を図6を参照して説明する。
図6は、第3実施例の現像装置23を示す断面図である。上記説明した第1実施例の現像装置3及び第2実施例の現像装置13と同一ないし同等の部分には同じ符号を付している。また、重複する説明は省略し、異なる点を中心に説明する。
【0047】
本第3実施例の現像装置23は、第2実施例の現像装置13と同様に、仕切り部材34から現像ローラ方向に突出させて現像剤移流制御部材50を設けている。また、現像ローラ231が内蔵する磁石体は、図示のような磁極を有している。磁極配置は第2実施例の現像装置13と同様、剥離極の“N極”の位置が、現像極である“S極”と同じ半円(現像ローラの半円)内に位置して設けられており、上記開口部の上流側に位置して「剥離極」が設けられている点は同じであるが、本第3実施例では、汲み上げ極と剥離極の間の磁力(N−N間磁力)が20mTに設定されている。
【0048】
このような構成により、現像領域を通過した後の現像剤は、剥離極である“N極”の磁力によって現像ローラ231から剥離され、上記開口部の底部を通るようにして現像ケーシングに沿って移動し、回収搬送経路39に戻される。それに加えて、上述したように現像剤移流制御部材50を設けたことにより、下側搬送スクリュー33の高速回転により撒き散らされた現像剤は現像剤移流制御部材50に衝突することによって進行方向(現像剤全体としての移動方向)とは逆方向に戻され、現像ローラへの現像剤再汲み上げが防止される。これにより、画像濃度の左右(軸方向)偏差の発生を防止することができる。
【0049】
ここで、従来装置を比較例1,2として図10,11により説明する。図10,11の比較例1,2は、現像剤移流制御部材を有さないものである。
図10の比較例1においては、下側搬送スクリュー128の下流(現像剤搬送方向の下流)部分で現像剤が滞留して、現像領域を通過した(現像に供された)現像剤が再度現像ローラに再汲み上げされることがあった。そのため、現像剤中のトナー濃度に現像ローラ長手方向で偏差が発生し、その結果画像濃度にも偏差が発生することがあった。例えば比較例1における画像濃度偏差は0.40であった。
【0050】
また、図11の比較例2では、回収搬送経路内に補助スクリュー129を追加することで、回収搬送経路内の現像剤の嵩の偏りを抑制するように構成しており、画像濃度偏差は0.15と比較的良いレベルとなっているが、補助スクリュー129を1本追加するため、フルカラーに対応すべく4つの現像器を備える場合には、スクリューを4本追加することとなり、大幅なコストアップとなってしまう。
【0051】
これに対し、本発明の現像装置13では、上記各実施例で説明したような構成とすることにより、現像ローラへの現像剤再汲み上げの発生が防止され、画像濃度の左右(現像ローラ軸方向)偏差の発生を防止することができる。次の表1に、本発明の各実施例と比較例における画像濃度偏差(現像ローラ長手方向における画像濃度偏差)の値を示す。
【0052】
【表1】
【0053】
この表に示すように、各実施例の現像装置3,13,23においては、画像濃度偏差が0.10〜0.15であり、比較例1の従来装置の場合(画像濃度偏差:0.40)と比べて画像濃度偏差が明確に小さくなっており、現像ローラ長手方向における画像濃度偏差が効果的に抑制されていることが分かる。なお、比較例2では追加した補助スクリューの効果により画像濃度偏差が改善されているが、この構成では、上記したように大幅なコストアップが免れない。
【0054】
以上、本発明による現像装置を各実施例により説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、現像剤移流制御部材が有する各整流板の長さは一律である必要は無く、たとえば下流にいくにしたがって長くなるように設けることもできる。また、各整流板の高さ(厚さ=搬送経路内に突出する長さ)も一律である必要は無く、例えば下流にいくにしたがって高くなるように設けることもできる。これらの場合、搬送方向の下流にいくほど移流を変化させる効果を高くし、現像剤の滞留防止効果を向上させることができる。さらに、各整流板の角度も一律である必要は無く、たとえば下流にいくにしたがって角度を大きくしたり、その逆でも良い。
【0055】
また、現像剤移流制御部材の位置は現像ローラに近いほうが好ましく、例えば、図1の現像剤移流制御部材40の位置よりも図5の現像剤移流制御部材50の位置のほうが好ましい。そのほうが、回収搬送経路内における現像ローラ付近の現像剤嵩高さの増大を効果的に抑制することができ、現像剤の再汲み上げ防止に効果がある。
【0056】
また、現像ローラが内蔵する磁石体の磁極の配置も一例であり、適宜に設定できるものである。N極とS極は逆であっても良い。また、N−N間磁力(N極とS極を逆にした場合はS−S間磁力)の値も一例である。
【0057】
最後に、本発明による現像装置を備える画像形成装置の一例について図7を参照して説明する。
図7は、本発明に係る現像装置を備える画像形成装置の一例であるモノクロ画像形成装置の要部構成を模式的に示す図である。この形態はモノクロ画像形成装置として構成されているが、1つの感光体の回りに複数の現像装置を配置したカラー画像形成装置や、複数の作像ユニットを並設したタンデム型画像形成装置として構成することも可能である。
【0058】
図7において、潜像担持体としての感光体ドラム1の周囲には、帯電装置2、現像装置3、転写装置4、クリーニング装置5が順に配設されている。帯電装置2と現像装置3の間は、露光装置6からの走査光が照射される書込み位置となっている。また、図示しない給紙トレイより転写紙等の記録材(以下、用紙という)を感光体と転写装置とが対向する転写部に向けて給紙する図示しない給紙搬送装置と、トナー像を転写された用紙が感光体から分離した後、トナーを用紙上に定着させる定着装置7とを備えている。
【0059】
上記感光体1は、例えばアルミ等の素管の表面に感光性を発揮する有機感光層が形成されたもので、図示しない駆動手段によって図中矢印方向に回転駆動される。このように回転駆動される感光体1の表面は、帯電装置2で所定の帯電電位に一様帯電された後、露光装置6より画像情報に基づいて変調されたレーザ光線が感光体軸方向にスキャンされて照射される。これにより、感光体上に静電潜像が形成される。感光体1上に形成された静電潜像は、現像装置3と対向する現像領域において、現像装置3により帯電したトナーを付着させることで現像され、トナー像となる。
【0060】
一方、用紙は図示しない給紙搬送装置で給紙・搬送され、所定のタイミングで感光体1と転写装置4とが対向する転写部に送出・搬送される。そして、転写装置4により、用紙に感光体上のトナー像とは逆極性の電荷を付与することで、感光体上に形成されたトナー像が用紙に転写される。次いで、用紙は、感光体1から分離され、定着装置7に送られ、定着装置7でトナー像が定着された後、機外に排出される。
【0061】
転写装置4でトナー像が転写された後の感光体1の表面は、クリーニング装置5でクリーニングされ、感光体上に残ったトナーが除去される。クリーニング装置5を通過した感光体1の表面は、その後、帯電装置2により一様に帯電され、次の画像形成工程が繰り返される。
【0062】
なお、図7では現像装置として上記第1実施例の現像装置3としてあるが、もちろん、上述した第2及び第3実施例の現像装置13,23を用いることができることは言うまでもない。また、画像形成装置としてはプリンタに限らず、複写機やファクシミリ、あるいは複数の機能を備える複合機であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る現像装置の第1実施例を示す断面構成図である。
【図2】図1の現像装置を縦に切って図1の右方向から見た断面図である。
【図3】現像剤の挙動を説明する模式図であり、(a)図は現像剤移流制御部材を下方から見た図、(b)図は下側搬送スクリューを横から見た図であ
【図4】現像ローラが内蔵する磁石体の磁極配置を示す図である。
【図5】第2実施例の現像装置を示す断面図である。
【図6】第3実施例の現像装置を示す断面図である。
【図7】本発明に係る現像装置を備える画像形成装置の一例であるモノクロ画像形成装置の要部構成を模式的に示す図である。
【図8】従来の現像装置の一例を示す断面図である。
【図9】その現像装置をスクリュー軸方向から見た断面図である。
【図10】従来の現像装置の一例における磁極配置を示す断面図である。
【図11】従来の現像装置の別の例における磁極配置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 感光体
3,13,23 現像装置
31,131,231 現像ローラ(現像剤担持体)
35 ドクタブレード
32 上側搬送スクリュー(供給搬送スクリュー)
33 下側搬送スクリュー(回収搬送スクリュー)
34 仕切り部材
36,37 連通口
38 供給搬送経路
39 回収搬送経路
40,50 現像剤移流制御部材
40a,50a 整流板
41 開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を担持して現像領域に搬送する現像剤担持体と、現像剤を前記現像剤担持体の長手方向に搬送しながら前記現像剤担持体に供給する供給搬送スクリューと、現像領域を通過した現像剤を前記現像剤担持体から回収し前記供給搬送スクリューとは逆方向に現像剤を搬送する回収搬送スクリューとを有し、前記供給搬送スクリューと前記回収搬送スクリューとが上下方向に配置されている現像装置において、
前記回収搬送スクリューの上方に現像剤の移動方向を制御する現像剤移流制御部材を設け、
前記現像剤移流制御部材が、前記回収搬送スクリューによる現像剤搬送方向に対して斜めに配置された整流板を有することを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記整流板が複数個設けられており、各整流板の間隔が前記回収搬送スクリューのスクリューピッチよりも短いことを特徴とする、請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記現像剤移流制御部材が、前記供給搬送スクリューが配置される現像剤供給搬送経路と前記回収搬送スクリューが配置される現像剤回収搬送経路を仕切る仕切り部材の下面に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の現像装置。
【請求項4】
前記現像剤移流制御部材が、前記供給搬送スクリューが配置される現像剤供給搬送経路と前記回収搬送スクリューが配置される現像剤回収搬送経路を仕切る仕切り部材から前記現像剤担持体方向に突出して設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の現像装置。
【請求項5】
前記現像剤担持体が内蔵する磁石体は、当該現像剤担持体の円筒形断面における現像極と同じ半円内に剥離極が設けられ、
前記剥離極は、前記回収搬送スクリューに対向する開口部の上流側に位置するように配置されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記現像装置を複数備え、多色画像の形成が可能なことを特徴とする、請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項1】
現像剤を担持して現像領域に搬送する現像剤担持体と、現像剤を前記現像剤担持体の長手方向に搬送しながら前記現像剤担持体に供給する供給搬送スクリューと、現像領域を通過した現像剤を前記現像剤担持体から回収し前記供給搬送スクリューとは逆方向に現像剤を搬送する回収搬送スクリューとを有し、前記供給搬送スクリューと前記回収搬送スクリューとが上下方向に配置されている現像装置において、
前記回収搬送スクリューの上方に現像剤の移動方向を制御する現像剤移流制御部材を設け、
前記現像剤移流制御部材が、前記回収搬送スクリューによる現像剤搬送方向に対して斜めに配置された整流板を有することを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記整流板が複数個設けられており、各整流板の間隔が前記回収搬送スクリューのスクリューピッチよりも短いことを特徴とする、請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記現像剤移流制御部材が、前記供給搬送スクリューが配置される現像剤供給搬送経路と前記回収搬送スクリューが配置される現像剤回収搬送経路を仕切る仕切り部材の下面に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の現像装置。
【請求項4】
前記現像剤移流制御部材が、前記供給搬送スクリューが配置される現像剤供給搬送経路と前記回収搬送スクリューが配置される現像剤回収搬送経路を仕切る仕切り部材から前記現像剤担持体方向に突出して設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の現像装置。
【請求項5】
前記現像剤担持体が内蔵する磁石体は、当該現像剤担持体の円筒形断面における現像極と同じ半円内に剥離極が設けられ、
前記剥離極は、前記回収搬送スクリューに対向する開口部の上流側に位置するように配置されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
前記現像装置を複数備え、多色画像の形成が可能なことを特徴とする、請求項6に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−66377(P2010−66377A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230889(P2008−230889)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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