説明

現在の潜水深さを重複表示する潜水用電子時計

【課題】 現在の潜水深さを正確に表示する潜水用電子時計(10)を提供すること。
【解決手段】 本発明の潜水用電子時計(10)は、時計用ムーブメント(15)を有し、その上方に、第1指針と第2指針(18,20)を具備した文字版(16)が搭載される。前記各指針(18,20)は、それに接続されたモータ(32,34)により独立に駆動され、前記時計用ムーブメント(15)は、前記指針(18,20)を制御する電子制御回路(30)を有する。電子制御回路が、前記指針(18,20)が、個々のデータアイテムを表示する第1動作モードと、少なくとも第1指針(18,20)が現在の潜水深さ(pi)を示す第2動作モードである潜水モードに従って、動作する。前記潜水モードにおいて、前記指針(18,20)は、これらの指針が同一の現在の潜水深さ(pi)を表すよう制御され、前記両方の指針(18,20)は、潜水深さ(pi)が変化した時に、同一方向に同時に回転する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜水機能を有する電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
より具体的には、本発明の潜水用電子時計は、時計用ムーブメントを収納する。時計用ムーブメントの上方に、第1指針と第2指針を少なくとも具備した文字版が搭載される。前記各指針は、それに関連するモータにより独立に駆動される。時計用ムーブメントは、前記第1指針と第2指針を制御する電子制御回路を有する。電子制御回路は、前記第1指針と第2指針が、個々のデータ・アイテムを表示する第1動作モードと、少なくとも第1指針が現在の潜水深さを示す第2動作モードである潜水モードに従って、動作する。
【0003】
この種の時計は特許文献1に開示されている。この種の時計においては、指針は現在の潜水深さを表示し、この指針を時計用のステップモータ(Lavet motorとも称する)が回転駆動している。しかしモータステップが故障した時、例えば時計が衝撃を受けた後に、電子カウンターと指針の角度位置との間にステップモータのステップのズレが発生することがある。このような現象は、ステップモータと電子制御回路との間の同期が外れる原因となる。かくして指針による現在の潜水深さの誤表示の原因にとなる。
【特許文献1】欧州特許第1396766A号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
潜水深さの表示は、ダイバーにとって命に関わる。この同期が外れることは、ダイバーを危険にさらす。ダイバーは、この誤ったデータに基づいて、潜水し自己の肉体的限界を超えて潜水してしまうことがある。
【0005】
本発明の目的は、このような欠点を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、前述した潜水用電子時計において、潜水モードにおいて、第1指針と第2指針は、これらの指針が同一の現在の潜水深さを表すよう制御される。
【0007】
現在の潜水深さを、2本の指針を重ね合わせる方法で表示する。かくして現在の潜水深さの表示に冗長性があり、不正確な情報を認識できる。ダイバーにとって不正確な潜水情報は、情報が無いよりも危ない。情報がない場合には、ダイバーは潜水を停止しなければならないことを知っており、あるいは他の段(例えば他の同伴ダイバーが具備する潜水関連機器)により情報を得ることができるからである。
【0008】
本発明の時計によれば、ステップモータのステップのズレが1本の指針に発生した時には、ダイバーは2本の指針は現在の潜水深さを表示するために重ねっていないことを潜水モードの開始時に観測できるため、ダイバーが時計の潜水深さの誤動作を確認できる。
【0009】
本発明の他の特徴によれば、
・第1動作モードは、時間モードであり、第1指針と第2指針が、現在の時刻を示す。
・同期化モードと称する第3モードを有し、第3モードにおいて、前記電子制御回路は、前記第1指針と第2指針を所定の角度位置に半径方向に整合させる。
・本発明の時計は、第3の指針を有し、潜水モードにおいて、第3指針は、現在の潜水深さ(pi)とは別のデータ・アイテムを表示する。
・現在の潜水深さ(pi)は、圧力センサー(36)の測定値により決定される。
【実施例】
【0010】
図1は本発明の潜水用電子時計10を示す。潜水用電子時計10は、防水ケース12を有する。防水ケース12は、例えばモールドされたプラスチック製のバックカバーと中間部分とを有するタイプであり、腕バンド(図示せず)を取り付けるホーン14を有する。この防水ケース12は、時計ムーブメント15(図3に示す)と、文字板16と、時針18である第1指針と、分針20である第2指針とを有する。
【0011】
指針18,20は、同軸に配置され、中心軸A1の周囲で回転駆動される。
【0012】
防水ケース12は、ガラス22でその上部表面が封止される。ガラス22は、その周辺に固定されたベゼル24を有する。ベゼル24は、最初の5分表示と最後の60分表示の間に伸びる目盛り26を有する。この連続する目盛りは、5分間隔である(5,10,15,−−−55,60)。
【0013】
潜水用電子時計10は、制御部材28、例えば従来の回転機能に加えて、プッシュボタンとして用いられる竜頭を有する。
【0014】
図3に示すように、時計ムーブメント15は電子制御回路30を有する。この電子制御回路30は、指針18,20の角度位置を、それぞれ2個のそれに関連するステップモータ32,34で制御する。好ましくは、この2個のステップモータ32,34は、電子時計用のモータであり、時針指針18,20が両方向に回転駆動できる。
【0015】
時計ムーブメント15は、圧力センサー36を有し、各瞬間に潜水用電子時計10の周囲圧力を測定し、この値を潜水中は現在の潜水深さPiに変換する。これらの技術は、従来の様々な文献に記載されており、ここでは詳述しない。
【0016】
かくして潜水用電子時計10の電子制御回路30の適宜のプログラムにより、時針指針18,20は、第1モード(時刻モード)において、現在の時刻を示し(図1)、第2動作モード(潜水モード)において、潜水に関連した情報を表示する。
【0017】
動作モードを変更するために、手動選択手段/又は自動選択手段を具備し、時刻モードから潜水モードへは、潜水の開始時に、移行し、逆のモードへは、潜水用電子時計10を装着した人が再び浮上したときに、移行する。手動による選択手段は、制御部材28により、自動選択手段は、防水ケース12の外側の水の存在を検出する検出装置38に結合されている電子制御回路30により、構成される。
【0018】
これらの選択手段は、最新の技術の一部を構成するが、本明細書では詳述しない。その理由は、これらの選択手段は本発明のコア技術を構成するものではなく、当業者はそれを容易に実現できるからである。
【0019】
本発明によれば、潜水モードにおいて、2本の指針18,20は、圧力センサー36により送信された信号に応じて、現在の潜水深さPiを表す。この2本の指針18,20は、軸A1の同一の側で半径方向に整合している。
【0020】
ダイバーが水中に入ると、潜水モードが機能し、2本の指針18,20が、12時の位置である水深0に、言い換えると、ベゼル24に示される60分の位置に対向して配置される。ダイバーが潜ると、2本の指針18,20は、同時に時計方向に回転し始め、分目盛り26に対向した現在の潜水深さPiを示す。同様にダイバーが浮上すると、2本の指針18,20は、反時計方向に同時に回転し始める。
【0021】
図2において、潜水用電子時計10は潜水モードで示されており、指針18,20で示される現在の潜水深さPiは、値10である。時針18は、点線で示され、実線で示される分針20の下にある。文字板16は、現在の潜水深さPiを表す目盛りを具備し、ベゼル24が目盛りに加えて、あるいはそれを置き換える。現在の潜水深さを表すスケールPiを変更しその表示単位も変更し、例えばメートルあるいはヒートで示すこともできる。
【0022】
潜水モードにおいては、ダイバーは、1本の指針(分針20)を見て現在の潜水深さPiを読むことが容易である。現在の潜水深さPiを読むために使用される目盛り26は、分を表すのに用いられる目盛りと同一であるので、潜水用電子時計10の防水ケース12は、情報へのアクセスを容易にする無意味な表示を余分に具備しない。
【0023】
例えば衝撃を受けた後、2個のステップモータ32,34の一方に、ステップロスがある場合には、2本の指針18,20は、現在の潜水深さPiが、潜水モードで表示されている時には、図2では点線と実線で示されるように、互いに角度がずれる。ダイバーは、現在の潜水深さPiの表示に誤りがあることを見て、それに応じて動作できる。
【0024】
好ましくは、同期化モードと称する更なる動作モードを具備し、各指針18,20の角度位置を電子制御回路30の制御信号と同期させて、潜水モードにある指針18,20の角度のずれの修正を行う。この同期化モードにおいて、電子制御回路30は、2本の指針18,20を半径方向に(例えば正午の位置に対向して)、整合させる。ユーザは正午の位置に対し指針18,20の角度のずれを、制御部材を適宜な方法により活性化することにより、修正する。
【0025】
更なる機能を潜水用電子時計10の具備させることもできる。例えば電子制御回路30に一体形成された記憶手段(図示せず)による潜水履歴機能、減圧停止が必要となる前に残された潜水可能時間のような更なる潜水データ表示である。これらの更なる機能に関連したデータは、アナログ指針の手段(例えば時刻モードにおける秒を表示する第3指針(図示せず)の手段)により、あるいは例えば液晶表示(図示せず)のようなデジタル表示手段により、表示される。更に、種のデジタル表示スクリーンは、指針18,20による現在の潜水深さPiの表示と同時に、現在の潜水深さPiを表示するのに用いられる。これによりユーザは、自分が指針18,20の間の角度のズレを見つけた時に、どちらが現在の潜水深さPiの適切な値であるかを、決定できる。
【0026】
上記した実施例によれば、第1動作モードは時刻モードである。本発明の他の実施例によれば、2本の指針18,20は、第1動作モードの現在の時刻とは別のデータを示す。例えば日付である。この場合、現在の時刻は、他のアナログ手段あるいはデジタル手段により表示される。
【0027】
本発明の他の実施例(図示せず)によれば、0の潜水深さは、文字版16の別の角度位置(例えば8時の位置)に配置することもできる。この構成は、0の現在の潜水深さ位置を、正午の2本の指針18,20の同期位置とは、区別できる利点がある。
【0028】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による時刻モードにある潜水用電子時計の正面図。
【図2】潜水モードにある潜水用電子時計の正面図。
【図3】本発明による潜水用時計の時計ムーブメントのブロック図。
【符号の説明】
【0030】
10 潜水用電子時計
12 防水ケース
14 ホーン
15 時計ムーブメント
16 文字板
18,20 指針
18 時針
20 分針
22 ガラス
24 ベゼル
26 目盛り
28 制御部材
30 電子制御回路
32,34 ステップモータ
36 圧力センサー
38 検出装置
Pi 現在の潜水深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
時計用ムーブメント(15)を収納する潜水用電子時計(10)において、
前記時計用ムーブメント(15)の上方に、第1指針と第2指針(18,20)を少なくとも具備した文字版(16)が搭載され、
前記各指針(18,20)は、モータ(32,34)により独立に駆動され、
前記時計用ムーブメント(15)は、前記第1指針と第2指針(18,20)を制御する電子制御回路(30)を有し、
前記電子制御回路は、前記第1指針と第2指針(18,20)が、個々のデータ・アイテムを表示する第1動作モードと、少なくとも第1指針(18,20)が現在の潜水深さ(pi)を示す第2動作モードである潜水モードに従って、動作し、
前記潜水モードにおいて、前記第1指針と第2指針(18,20)は、これらの指針が同一の現在の潜水深さ(pi)を表すよう制御され、
前記両方の指針(18,20)は、潜水深さ(pi)が変化した時に、同一方向に同時に回転する
ことを特徴とする潜水用電子時計。
【請求項2】
前記第1動作モードは、時間モードであり、
前記第1指針と第2指針(18,20)が、現在の時刻を示す
ことを特徴とする請求項1記載の潜水用電子時計。
【請求項3】
同期化モードと称する第3モードを有し、
前記第3モードにおいて、前記電子制御回路(30)は、前記第1指針と第2指針(18,20)を所定の角度位置に半径方向に整合させる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の潜水用電子時計。
【請求項4】
前記時計は、第3の指針を有し、
前記潜水モードにおいて、前記第3指針は、現在の潜水深さ(pi)とは別のデータ・アイテムを表示する
ことを特徴とする請求項1−3のいずれかに記載の潜水用電子時計。
【請求項5】
現在の潜水深さ(pi)は、圧力センサー(36)の測定値により、決定される
ことを特徴とする請求項1−4のいずれかに記載の潜水用電子時計。
【請求項6】
前記指針(18,20)による現在の潜水深さ(pi)の表示に加えて、現在の潜水深さ(pi)を表示するデジタル表示装置を具備する
ことを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載の潜水用電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−40997(P2007−40997A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207449(P2006−207449)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(505072926)イーティーエー エスエー マニュファクチュア ホルロゲア スイス (61)
【Fターム(参考)】