説明

甘藷蔓処理作業機

【課題】甘藷蔓処理後における、マルチフィルム除去作業及び芋選別作業等の一連の作業能率を著しく向上させることができる甘藷蔓処理作業機の提供。
【解決手段】回転軸と多数のフレール刃とを備え、左右の蔓掬い上げアームで芋蔓を掬い上げて浮かしながらフレール刃で切断して除去する甘藷蔓払い装置を備えた甘藷蔓払い作業機において、藷梗処理装置は、斜め後方に傾斜した左右のガイドと当該ガイドに案内されて循環する蔓掻き集めベルト61と、蔓掻き集めベルトの後方に近接して配置された藷梗引き抜きベルト65とを備え、当該ベルトはその外側面に突起を所定間隔で備えている突起付きベルトであって、畝に残存する芋蔓を掻き集めて上記藷梗引き抜きベルトへ誘導し、上記藷梗引き抜きベルトは、互いに圧接し合った左右一対のベルトによるものであり、当該一対のベルトで芋蔓及び藷梗を挟持し、斜めに引上げてこれを畝から引き抜くものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、甘藷蔓をフレールモアーで小さく切断して除去する甘藷蔓払い作業機に関するものであり、マルチフィルムでカバーされた畝の上に這っている甘藷蔓をフレールモアーのフレール刃で切断して除去するについて、畝の中での甘藷と藷梗との分離を容易、確実に行うことができ、蔓払い作業と同時に、藷梗を甘藷から分離して除去することで、蔓払い作業後のマルチフィルム除去作業を簡便にして、その作業能率を著しく向上させることができ、さらに、甘藷掘り出し作業における甘藷選別作業の作業能率を著しく向上させることができるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、甘藷蔓払い機を使用してフレールモアーで甘藷蔓を小さく切断して除去し、その後、畝をカバーしているマルチフィルムを除去し、マルチフィルムが除去された畝を芋掘機等で掘り起こして甘藷を収穫する。そして、これらの作業は、それぞれ別々に行われる。
従来の甘藷蔓払い機(甘藷蔓処理機)の一例が特開2000−287517号公報に記載されており、その機構の概要は、図5、図6に示すようなものである。
この従来の甘藷蔓払い機は、トラクターに3点ヒッチで装着されるアタッチメントであり、蒲鉾型の畝10を跨いで左右の車輪(上記公報では「尾輪」)34,34で走行する。甘藷蔓払い機は、回転軸(上記公報では「回転刃軸」)20に多数のフレール刃21を設けたフレールモアー本体Aを有し、斜め後方に傾斜している左右の蔓掬い上げアーム24を有するものである。なお、図6における左右の傾斜アーム(上記公報では「覆土分解刃取付アーム」)57,57は、マルチフィルム22の両サイドを押えている覆土gを除去するための覆土除去アームであり、その下端に覆土分解刃59が水平に設けられている。この覆土分解刃59はマルチフィルム22の両側下端の下を掬って浮かして上記覆土gを分解することによって、その後のマルチフィルム22の除去作業を容易にするものである。
【0003】
車輪34の高さが昇降調整ハンドル51の操作によって調整され、これによってフレールモアー本体Aの畝10に対する高さ位置が適宜調整される。
フレールモアー本体Aの回転軸20にはその全幅に亘って一定の間隔でフレール刃21が設けられており、フレール刃21の先がマルチフィルムに触れて当該マルチフィルムを破損する恐れのない限度で回転軸20が畝の頂上に接近するように、その高さが上記の昇降調整ハンドル51によって調節される。
なお、フレールモアー本体Aの回転軸20はトラクターのPTO軸によって駆動される。
蔓払い機がトラクターに牽引されて畝を跨いで走行するとき、その蔓掬い上げアーム24の先端が畝10の上に這っている甘藷蔓Mとマルチフィルム22との間に入り込んで、甘藷蔓Mを掬い上げ、斜めに押し上げて畝10から大きく浮かせ(押し上げ)、浮き上がった甘藷蔓Mをフレール刃21で小さく切断して除去する。甘藷蔓Mはマルチフィルム22の直ぐ近くで回転するフレール刃21によって、その根元部aから切り離され、藷梗(芋がついている茎の部分)だけが残される。このため、マルチフィルム22を除去するとき、甘藷蔓の根部aがマルチフィルム22に引っ掛かることなしにマルチフィルム22から容易に外れ、マルチフィルムは容易に剥ぎ取られることが予想されている。
【0004】
しかし、実際には、多くの甘藷蔓が切断されないままでマルチフィルム上に残り、このために、そのままでマルチフィルムを取り除くことはできず、したがって、残った甘藷蔓を手作業で藷梗から切断して取り除いてから、注意を払いながらマルチフィルム22を取り除いているのが実際である。その理由は次のとおりである。
すなわち、車輪34の走行路面は平坦でなく、凸凹しているので、フレール刃21のマルチフィルム22に対する高さが上下動して一定しない。このため、マルチフィルム22に接近させた位置にその基準高さを調節すると、フレール刃21がマルチフィルム22に接触してこれを破損させることが多々あり、他方、破れたマルチフィルム22は容易に破断されるので、その除去作業は容易でなく多大の手間を要する。以上のことから、フレール刃21が畝の頂上部においてマルチフィルム22と干渉することを避けるために、フレール刃21を十分低く調整することができず、このため、畝の両側部に対するフレール刃21の間隔が大きくなることが避けられない。畝の両側部に這っている甘藷蔓を蔓掬い上げアーム24で掬い上げてフレール刃21の回転領域へ押しやって切断させるようにしているが、甘藷蔓が蔓掬い上げアーム24に引っ掛からずに擦り抜けると、当該蔓がフレール刃21で切断されずに長いままで畝の両側部に残存することになる。また、路面の凹凸で車輪34が押し上げられると、フレール刃21とマルチフィルム間の間隔がそれだけさらに大きくなり、その間を甘藷蔓が擦り抜け易くなり、それだけ多くの甘藷蔓が切断されないでマルチフィルム上に残存することになる。
切断されないでマルチフィルム上に甘藷蔓が残存すると、そのままではマルチフィルムを除去することはできないので、残存している甘藷蔓を人手で除去しなければならず、この作業が多大の労力を要する。
【0005】
従来は、甘藷蔓を払って除去し、マルチフィルムを除去して後、芋掘機で芋を掘り出すのであるが、この芋掘作業機には種々のものがある。その一例が特開平9−107758号公報に記載されている。このものの構造の概要は図7、図8、図9に示すとおりである。
上記の芋掘作業機はエンジン4が搭載されていてクローラ3で自走するものであり、斜め上方に傾斜した掘取りコンベア装置6を有する。エンジン4で駆動される掘取りコンベア装置6の先端に掘取り刃9がある。掘取りコンベア装置6から前方に伸びているブラケット13に従来の藷梗処理装置23が設けられている。
上記藷梗処理装置23は、車輪(上記公報では「ホイール」)15,15を備えていて畝を跨いで走行するものであり、斜め上方に傾斜した引上げチェンを有する。車輪15,15の間隔は調整機構によって畝幅に合わせて調整され、車輪15,15の掘取りコンベア装置6に対する高さは、上下調整機構16によって調整される。上記引上げチェンは左右のチェンガイド31,31と当該無端チェン32,32とによるものであり、無端チェン32,32は油圧モータ33で駆動される。また、藷梗処理装置23は左右の畝押えローラ36を備えており、この畝押えローラ36の高さ位置は上記調整ハンドル36aによって調節される。
畝押えローラ36で畝を押えて畝中の芋が引上げられることを防止しながら、藷梗処理装置23の無端チェン32で藷梗を把持して上方に引き上げて、芋と藷梗とを畝の中で分離させる。
【0006】
芋掘作業機(上記公報では「いも類収穫機」)1が畝を跨いで走行し、その藷梗処理装置23の左右の無端チェン32,32で藷梗を挟んでこれを引き抜き、その後、掘取りコンベア装置6の掘取り刃9で畝中の芋を掘り出しながら走行し、掘り出した甘藷をコンベアで斜め上方に搬送し、選別装置11に送り込む。
甘藷蔓Mがその根元aまでフレール刃21で切断されて、藷梗が畝の上に突出して残存しており、これを藷梗処理装置23の引上げチェンの無端チェン32、32で把持して引き上げるのであるが、無端チェン32,32で把持する時のそのターゲットが小さく、また、路面の凹凸で無端チェン32,32が上下動するので、無端チェン32,32で藷梗を把持してこれを引き上げることを失敗する場合が多々ある。そのため、甘藷が藷梗の付いたままで掘取りコンベア装置6で掘り出され、選別運送部11に送り込まれることが多い。これは、甘藷蔓をその根元aまでフレール刃21で切断して、藷梗だけを残すことで、藷梗除去前の段階でのマルチフィルムの除去作業を簡単、容易にするという作業手順、作業方法では避けられないことである。
【特許文献1】特開2000−287517号公報
【特許文献2】特開平9−107758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の甘藷収穫作業は、甘藷蔓払い装置で蔓処理作業を行い、マルチフィルムを除去し、その後、芋掘作業機の藷梗処理装置で甘藷と藷梗とを分離させ、藷梗除去と同時に掘取り作業を行うという手順によるものであるため、藷梗だけを残すようにフレール刃をマルチフィルムに接近させて緻密な高さ制御を行いながら、甘藷蔓払い作業(蔓処理作業)で甘藷蔓の根元aまた切除する必要があり、藷梗だけを残した状態(すなわち掴みにくい状態)で藷梗処理作業(藷梗除去作業)を行わざるを得ず、このため藷梗処理作業が不完全になり、選別装置での選別作業の能率が損なわれている。
この発明の課題は、上記従来技術についての以上の認識を基本としつつ、従来の作業手順についての発想を転換したものであり、甘藷蔓処理後の、マルチフィルム除去作業及び芋選別作業等の一連の作業能率を著しく向上させることができるように、甘藷蔓処理作業機を工夫することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題解決のための手段は、回転軸と多数のフレール刃とを備えたフレールモアー本体と、高さ調整が可能な車輪と、斜め後方に傾斜した左右の蔓掬い上げアームを有し、左右の蔓掬い上げアームで甘藷蔓を掬い上げて浮かしながらフレール刃で切断して除去する甘藷蔓払い装置を備えた甘藷蔓払い作業機について、次の(イ)乃至(ホ)によるものである。
(イ)甘藷蔓払い装置のフレールモアー本体の回転軸の中央200mm〜400mmの範囲を除いた範囲に一定間隔で多数のフレール刃を設けており、
(ロ)上記フレールモアー本体の後方に藷梗処理装置を設けてあり、当該藷梗処理装置は、斜め後方に傾斜した左右のガイドと当該ガイドに案内されて循環する蔓掻き集めベルトと、蔓掻き集めベルトの後方に近接して配置された藷梗引き抜きベルトとを備えており、
(ハ)上記蔓掻き集めベルトは左右一対のベルトによるものであり、当該ベルトはその外側面に突起を所定間隔で備えている突起付きベルトであって、畝に残存する甘藷蔓を掻き集めて上記藷梗引き抜きベルトへ誘導するものであり、
(ニ)上記藷梗引き抜きベルトは、互いに圧接し合った左右一対のベルトによるものであり、当該一対のベルトで甘藷蔓及び藷梗を挟持し、斜めに引上げてこれを畝から引き抜くものであり、
(ホ)藷梗引き抜きベルトよりも下方に畝押えがあり、この畝押えは畝を押えて甘藷が上方に引き出されることを阻止するものである。
なお、上記構成(イ)における「中央200mm〜400mmの範囲」は、この数値に臨界的な意義があるわけではなく、実用上適当な目安を示すもので、畝幅の大小、畝高さの高低に応じて、また、実際に使用される蔓掻き集めベルトの蔓引き込み能力などを勘案して、設計上適宜選択できる数値範囲である。
【発明の効果】
【0009】
図1の模式図を参照しながら発明の作用・効果を説明する。
フレールモアーの回転軸の中央部にフレール刃が設けられていないので、畝の頂上付近においてフレール刃がマルチフィルムと干渉することはなく、したがって、フレール刃と干渉してマルチフィルムが破損される恐れはない。それゆえ、従来の甘藷蔓払い装置(甘藷蔓処理装置)の場合に比して、フレールモアーの回転軸20を畝の頂部に十分接近させることができ、これにより、畝の左右両側部にフレール刃21の刃先を接近させることができる(図3参照)。そして、甘藷蔓Mは、畝10の左右両側部において切断して除去され、その中央部が藷梗に付いたままで残される(図2参照)。
【0010】
蔓払い装置50の後方に位置している藷梗処理装置60の蔓掻き集めベルト61で畝の頂上付近に残存している甘藷蔓Mを掻き集め、藷梗引き抜きベルト65へ誘導する。蔓掻き集めベルト61によって掻き集められた甘藷蔓Mは、比較的多いから互いに絡み合いながら藷梗引き抜きベルト65へ確実に誘導され、当該藷梗引き抜きベルト65に把持され、斜め上方に引き上げられて畝10から引き抜かれる。
蔓掻き集めベルト61は、ハの字状に前広に配置された左右一対のゴムベルト61a,61aによるものであり、その外側面に一定間隔で突起62が設けられており、その前方部で内側に向かう方向に回転して、残存している甘藷蔓及び藷梗を畝の中央に向けて掻き集めつつ斜め上方に掻き上げる(図2参照)。
【0011】
藷梗引き抜きベルト65は互いに圧接された左右のゴムベルト65a,65aによるものであり、甘藷蔓M及び藷梗Maはこのベルト65a,65aによって強力に挟持されるから、藷梗Maは確実に引き抜かれる(図2参照)。
また、全く切断されないままの甘藷蔓がマルチフィルム22上に幾分残存していても、これも蔓掻き集めベルト61で掻き集められ、藷梗引き抜きベルト65へ誘導されるので、畝上10に残存している甘藷蔓M及び藷梗Maは全て、藷梗引き抜きベルト65に把持され、完全にマルチフィルム22上から除去される。
藷梗引き抜き作業においては、藷梗引き抜きベルト65よりも下方に畝押え70があり、この畝押え70で押えて甘藷が上方に引き出されないようにしているので、甘藷と藷梗が蔓処理作業において切断されて分離され、甘藷蔓及び藷梗がマルチフィルム上から完全に除去された状態になる。
したがって、残存している甘藷蔓M及び藷梗Maがマルチフィルム除去作業の邪魔になることは一切ないので、人手作業を介在させることなしに、そのままの状態でマルチフィルム除去作業を簡単容易に行うことができ、また、藷梗と甘藷とが完全に分離され、藷梗が完全に除去された状態で掘り出し作業がなされるので、掘り出された甘藷を藷梗から人手で分離する作業は一切不要であり、したがって、甘藷選別作業能率的を著しく向上させることができる。
【0012】
〔実施態様1〕
実施態様1は、上記の蔓掻き集めベルトがゴムベルトであり、その突起の長さが30〜50mmであるものである。
〔作用〕
上記突起の長さをどの程度にするのが適当かは、蔓掻き集めベルトのゴム材の硬さ、蔓掻き集めベルトの走行速度の如何、残されている甘藷蔓の長さの如何等に左右されるので、一律に決められる事柄ではない。
突起の長さがAmm以下では、甘藷蔓を突起で引っ掛けて掻き集める作用が低く、Bmm以上では突起が撓み易いので甘藷蔓を突起で強引に引き寄せる作用が低くなる。
また、突起が高いほど蔓掻き集めベルトに対する抵抗が増大し駆動負荷が増大する。
突起の高さの30〜50mmは、以上のことを勘案して、設計上適宜選定できる範囲の目安である。
蔓掻き集めベルトの突起が残存している甘藷蔓を引っ掛けながら掻き集め、畝の中央に引き込むが、突起はゴムベルトから突設されたものであり、弾性を有するので、マルチフィルムに接触してもこれを引っ掛けて破損することはない。したがって、蔓掻き集めベルトはマルチフィルムに接近して、極めて効果的、能率的に甘藷蔓を掻き集めることができる。
【0013】
〔実施態様2〕
実施態様2は、藷梗引き抜きベルトはゴムベルトによるものであり、その斜め後方への傾斜角度が40〜50度であるものである。
〔作用〕
藷梗引き抜きベルトの傾斜角度の如何は、藷梗引き抜きベルトの走行速度の上昇速度成分、水平速度成分をどのようにするかに関わり、また、水平速度成分は甘藷蔓処理作業機の走行速度と関連していることである。したがって、藷梗引き抜きベルトの傾斜角度をどの程度にするのが適当であるかは、一律に決められる事柄ではない。
藷梗引き抜きベルトの上昇速度成分が小さいと藷梗と芋との分離、藷梗引き抜き作業が迅速になされず、反対に上昇速度成分が大きいと、藷梗引き抜きベルトから甘藷蔓及び藷梗が外れて確実に引き上げられなくなる可能性がある。
藷梗引き抜きベルトの水平速度成分を、例えば、走行速度0.5m/秒の1.2倍であるとき、傾斜角度が40度以下では藷梗引き抜きベルトの上昇速度成分が小さくて作業能率が悪く、50度以上では上昇速度が大きすぎて、甘藷蔓除去の仕上がりに問題を生じる可能性がある。
傾斜角度の40〜50度は、以上のことを勘案して、設計上適宜選定できる範囲の目安である。
【0014】
〔実施態様3〕
実施態様3は、藷梗引き抜きベルトの水平速度成分が甘藷蔓処理作装置の自走速度の1.1〜1.3倍であるものである。
〔作用〕
藷梗引き抜きベルトに引き込まれ、これで搬送される甘藷蔓及び藷梗の量は、時間とともに大きく変化する。後方への搬送が間に合わないと藷梗引き抜きベルトの入り口に多量の甘藷蔓が滞留し、そのために藷梗引き抜きベルトで掴み損なう可能性が高くなる。
自走速度のE倍以下では、藷梗引き抜きベルト65による甘藷蔓の除去作業の精度が保証されず、F倍以上では、甘藷蔓及び藷梗を掴んで後方に引く動作が衝撃的で、藷梗引き抜きベルトで把持されたところから甘藷蔓及び藷梗が千切れてしまう可能性がある。
自走速度の1.1〜1.3倍は、以上のことを勘案して、設計上適宜選定できる範囲の目安である。
【0015】
〔実施態様4〕
実施態様4は、蔓掻き集めベルトの斜め上方への傾斜角度が40〜50度であるものである。
〔作用〕
藷梗Maから100mm〜200mmの長さの甘藷蔓が残されており、これが蔓掻き集めベルト61の突起に引っ掛けられて畝の中央に向けて掻き集められながら斜め上方に掻き上げられ、このようにして掻き上げられたものが、藷梗引き抜きベルト65に把持されるのであるが、蔓掻き集めベルトの斜め上方への傾斜角度が40度未満では、上方への掻き上げ速度が遅すぎて十分な掻き上げ効果が得られず、50度より大きいと、上方への掻き上げ速度が速すぎて、甘藷蔓が蔓掻き集めベルトで引き千切られる可能性が大きく、藷梗引き抜きベルトへの引き渡しミスを生じるおそれがある。
【0016】
〔実施態様5〕
実施態様5は、藷梗引き抜きベルトの下方にある畝押えが、丸管材の前方部分を上方に曲げたそり状のものであることである。
〔作用〕
藷梗引き抜きベルトの下方にある畝押えが、丸管材をそり状にしたものであるから、畝押えの構造が単純であり、しかも、畝の頂上付近のマルチフィルムに対する滑り抵抗が小さいのでスムーズに滑るから、畝押えでマルチフィルムが破損されることはない。
【0017】
〔実施態様6〕
実施態様6は、藷梗引き抜きベルトよりも下方にある畝押えが、傾斜軸に自転可能に支持されていて、畝の肩に対して斜めに当接して前方向に転動するローラであるものである。
〔作用〕
藷梗引き抜きベルトの下方にある畝押えがローラであり、このローラはマルチフィルム上を畝の肩に斜めに当接して前方向にスムーズに転動するから、畝押えでマルチフィルムが破損されることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次いで、図面を参照しながら実施例を説明する。
図1に全体を示している実施例の甘藷蔓処理作業機は、甘藷蔓払い装置50に藷梗処理装置60を組み付けて一体にしたものであり、甘藷蔓払い装置50は上記特開2000−287517号公報の「甘藷蔓切り機」と基本機構は同じであり、そのトップリンクホルダーRがトラクターの3点リンクのトップリンクに連結される。
藷梗処理装置60は、上記の特開平9−107758号公報の「農作物収穫機」における藷梗処理装置と基本機構は同じであり、甘藷蔓払い装置50の後方において、所定間隔をおいて甘藷蔓払い装置50のフレームFに連結されている。
甘藷蔓払い装置50のフレールモアの回転軸20の中央300mmの範囲(左右各150mmの範囲)にはフレール刃21が設けられておらず、その外側に従来技術と同じようにフレール刃21が設けられている。
従来技術においては、フレール刃21の回転半径が360mmであるので、昇降調整ハンドル51を操作して車輪34の高さを調節して、フレール刃の先端と畝10の頂上の間隔がほぼ50mm(回転軸の畝10の頂上からの高さはほぼ250mm)になるように、回転軸20の高さが設定される。これに対して、この発明の実施例では、車輪34の走行路面の凹凸による回転軸20の上下動を考慮して、回転軸20と畝10の頂上の間隔がほぼ180mmになるように回転軸20の高さが設定される。
【0019】
また、蔓掬い上げアーム24、傾斜アーム57,57を備えている点など、その他の機構は上記従来技術と全く違いはないので、その詳細の説明は省略する。
藷梗処理装置60は、特開平9−107758号公報の「農作物収穫機」における藷梗処理装置の引上げチェン(左右のチェンガイド31,31と当該無端チェン32,32とによるもの)と同様の藷梗引き抜き手段(具体的には藷梗引き抜きベルト)65を備えている。この藷梗引き抜き手段、すなわち藷梗引き抜きベルト65はガイドと左右一対のゴムベルト65a,65aによるものであり、ゴムベルト65a,65aによって甘藷蔓及び藷梗を挟持して斜め上方に引き上げて藷梗を畝10から引く抜くものである。以上の機構は、藷梗引き抜き手段が無端チェンであるか、無端ベルトであるかの違いはあるが、その他は上記従来技術と特に違いはない。
なお、藷梗引き抜きベルト65の傾斜角度は、従来技術と同様に40〜50度の範囲で調整される。
【0020】
上記ゴムベルト65a,65aは、具体的には、幅40mm、厚さ14mmのゴムベルトである。
藷梗引き抜きベルト65の前方に近接して蔓掻き集めベルト61が配置されている。
上記蔓掻き集めベルト61を構成する左右一対のゴムベルト61a,61aはその外側面に100mmの一定間隔で高さ10mmの突起62が突設されており、具体的には、幅13mm、厚さ10mmのゴムベルトである。
左右一対のゴムベルト61a,61aは、平面視においてハの字状に前広に開いており、また傾斜角度45度で斜め上方に傾斜しており、1m/秒の速度で外側から内側に向かって循環する。
【0021】
突起62の断面形状は先が尖ったV形状であり、先端部分は肉薄で柔軟であるから、マルチフィルムに対する当たりはソフトであり、マルチフィルムを引っ掛けて破損させるようなことはない。しかし、根元部分は厚くて強いので、甘藷蔓を突起62の根元に引っ掛けて畝の中央かつ上方に強引に掻き揚げることができる程度の強さを有している。
残存している甘藷蔓Mの長さは150〜200mm程度であるから、蔓掻き集めベルト61による掻き揚げに対する抵抗はそれほど強くなく、突起62の根元に引っ掛けられてスムーズに掻き揚げられる。
【0022】
〔作動〕
この実施例の甘藷蔓払い作業機は、1.8km/時間の速度で走行する。このとき、フレールモアー本体Aの回転軸20はオイルモーター(図示略)で駆動される。
そして、甘藷蔓は、蔓掬い上げアーム24で掬い上げられ、フレール刃21に向けて押し上げられて、フレール刃21で細かく切断されて除去され、その結果、その藷梗Maに、当該藷梗Maからの長さが150〜200mm程度の甘藷蔓Mが残される。そして、フレール刃が通過した直後に藷梗処理装置60の蔓掻き集めベルト61が通過する。蔓掻き集めベルト61は速度(ベルトの走行速度)1m/秒で循環して、畝の頂部に残存する甘藷蔓M及び藷梗Maを畝10の中央に向けて掻き集め、かつ、斜め上方に掻き揚げる。
蔓掻き集めベルト61の一対のゴムベルト61a,61aによって、甘藷蔓M及び藷梗Maが畝の中央に向けて掻き集められ、かつ、斜め上方に掻き揚げられたところで、甘藷蔓M及び藷梗Maが後続の梗引き抜きベルト65で掬い取られるようにして挟み込まれ、斜め上方に引き上げられる。
【0023】
藷梗処理装置60の藷梗引き抜きベルト65は、速度0.5m/秒で前方に移動しながら、甘藷蔓M及び藷梗Maを把持したままで循環速度0.8m/秒で斜め後方へ移動するので、把持された甘藷蔓及び藷梗はほぼ上方に引き上げられて畝から引き上げられる。このとき、藷梗処理装置60の藷梗引き抜きベルト65よりも下方にある畝押え70で畝が押えられるので、藷梗が甘藷から分断される。
上記畝押え70は、外径60mmの鋼管の前部を円弧状に上方に曲げたそり状部材71の中央部をジョイント72によって支持部材73の下端に連結してあり(そり状部材71は上下方向に揺動自在)、支持部材73は藷梗引き抜きベルト65のガイドの支持フレーム68に取り付けらており、ねじ調節機構(図示略)によってそり状部材71の支持高さを調整できるようにしている。なお、上記のそり状部材71の前方の曲りの曲率半径は100mmであり、前後方向の接地長さは300mmである。
【0024】
上記畝押え70は太めの丸管材であり、かつ、上下方向に揺動自在に支持部材73に支持されているから、畝10を覆っているマルチフィルム22に対して小さい摺動抵抗で滑らかに滑るので、畝押え70によってマルチフィルム22が破損されることはない。
なお、図1の実施例における藷梗処理装置60の畝押え70は、そり状部材71によるものであるが、従来技術におけるローラ63(図10参照)によるものと同様のものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】はこの発明の実施例の甘藷蔓処理作業機の側面図である。
【図2】(a)は図1の実施例における藷梗処理装置60の要部の側面図、(b)は平面図である。
【図3】は図1の実施例における藷梗処理装置60の要部の正面図である。
【図4】は図1の実施例における蔓払い装置のフレールモアー本体部の正面図である。
【図5】は従来技術の蔓払い装置の側面図である。
【図6】は従来技術の蔓払い装置のフレームモアー本体部の正面図である。
【図7】は従来技術の農作物収穫機の側面図である。
【図8】は図7の従来技術における藷梗処理装置の平面図である。
【図9】は図7の従来技術における藷梗処理装置の側面図である。
【符号の説明】
【0026】
A:フレールモアー本体
10:畝
20:回転軸
21:フレール刃
22:マルチフィルム
24:蔓掬い上げアーム
50:甘藷蔓払い装置
60:藷梗処理装置
61:蔓掻き集めベルト
61a:ゴムベルト
62:突起
65:藷梗引き抜きベルト
65a:ゴムベルト
70:畝押え

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と多数のフレール刃とを備えたフレールモアー本体と、高さ調整が可能な車輪と、斜め後方に傾斜した左右の蔓掬い上げアームを有し、左右の蔓掬い上げアームで甘藷蔓を掬い上げて浮かしながらフレール刃で切断して除去する甘藷蔓払い装置を備えた甘藷蔓払い作業機であって、
甘藷蔓払い装置のフレールモアー本体の回転軸の中央200mm〜400mmの範囲を除いた範囲に一定間隔で多数のフレール刃を設けており、
上記フレールモアー本体の後方に藷梗処理装置を設けてあり、当該藷梗処理装置は、斜め後方に傾斜した左右のガイドと当該ガイドに案内されて循環する蔓掻き集めベルトと、蔓掻き集めベルトの後方に近接して配置された藷梗引き抜きベルトとを備えており、
上記蔓掻き集めベルトは左右一対のベルトによるものであり、当該ベルトはその外側面に突起を所定間隔で備えている突起付きベルトであって、畝に残存する甘藷蔓を掻き集めて上記藷梗引き抜きベルトへ誘導するものであり、
上記藷梗引き抜きベルトは、互いに圧接し合った左右一対のベルトによるものであり、当該一対のベルトで甘藷蔓及び藷梗を挟持し、斜め後方に引き上げてこれを畝から引き抜くものであり、
藷梗引き抜きベルトよりも下方に畝押えがあり、この畝押えが畝を押えて甘藷が上方に引き出されることを阻止するようになっている、甘藷蔓払い作業機。
【請求項2】
上記の蔓掻き集めベルトがゴムベルトであり、その突起の長さが30〜50mmである請求項1の甘藷蔓払い作業機。
【請求項3】
上記藷梗引き抜きベルトはゴムベルトによるものであり、その斜め後方への傾斜角度が40〜50度である、請求項1の甘藷蔓払い作業機。
【請求項4】
上記藷梗引き抜きベルトの水平速度成分が甘藷蔓処理装置の自走速度の1.1〜1.3倍である、請求項1の甘藷蔓払い作業機。
【請求項5】
上記蔓掻き集めベルトの斜め上方への傾斜角度が40〜50度である、請求項1の甘藷蔓払い作業機。
【請求項6】
上記藷梗引き抜きベルトの下方にある畝押えが、丸管材の前方部分を上方に曲げたそり状のものである請求項1の甘藷蔓払い作業機。
【請求項7】
上記藷梗引き抜きベルトよりも下方にある畝押えが、傾斜軸に自転自在に支持されていて、畝の肩に対して斜めに当接して前方向に転動するローラである、請求項1の甘藷蔓払い作業機。
【請求項8】
甘藷蔓払い作業において甘藷蔓の一部を残して切断して甘藷蔓を除去し、残されている甘藷蔓の一部と藷梗とを藷梗処理装置で掴んで引き抜いて甘藷から分離させ、その後、マルチフィルムを除去し、甘藷掘り起こし機によって掘り起こしを行う、芋収穫作業方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−29034(P2007−29034A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−219232(P2005−219232)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(591155242)鹿児島県 (56)
【出願人】(000239725)文明農機株式会社 (19)
【Fターム(参考)】