生体器官病変部改善用器具
【課題】自己拡張型ステント等の生体器官病変部改善用器具の使用時における病変部位の損傷を最小限に抑制しうる手段を提供する。
【解決手段】生体器官病変部改善用器具は、ガイドワイヤルーメン61を有する内側チューブ体と、内側チューブ体の先端部を覆うように配置された、筒形状に形成されてなり、生体内挿入時には縮径され、生体内留置時には外方に拡張可能な生体内留置物10と、生体内留置物10を収納した収納チューブ体とを備える。生体器官病変部改善用器具は、生体内留置物10が、体液との接触により接着性を失う体液応答性接着剤12を介して内側チューブ体の先端部に固定されており、収納チューブ体の先端が、内側チューブ体の生体内留置物10の配置部位よりも先端側に液密または気密に固着されており、収納チューブ体に、外力によって他の部位よりも優先的に破断する脆弱部21aが設けられている。
【解決手段】生体器官病変部改善用器具は、ガイドワイヤルーメン61を有する内側チューブ体と、内側チューブ体の先端部を覆うように配置された、筒形状に形成されてなり、生体内挿入時には縮径され、生体内留置時には外方に拡張可能な生体内留置物10と、生体内留置物10を収納した収納チューブ体とを備える。生体器官病変部改善用器具は、生体内留置物10が、体液との接触により接着性を失う体液応答性接着剤12を介して内側チューブ体の先端部に固定されており、収納チューブ体の先端が、内側チューブ体の生体内留置物10の配置部位よりも先端側に液密または気密に固着されており、収納チューブ体に、外力によって他の部位よりも優先的に破断する脆弱部21aが設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、胆管、気管、食道、尿道等の生体管腔内に生じた狭窄部または閉塞部等の病変部の改善に使用される生体器官病変部改善用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、血管または他の生体内管腔に生じた狭窄部または閉塞部などの病変部を治療するために、病変部に留置され、その内腔を確保する筒形状の医療器具である。
【0003】
ステントは、体外から体内に挿入するために、生体内挿入時には直径が小さくなるように縮経され、目的の狭窄部または閉塞部において、直径が大きくなるように拡張し、かつその管腔をそのままで保持する物であって、金属線材や金属管を加工した円筒形状のものが一般的である。ステントは、機能および留置方法によって、自己拡張型ステントとバルーン拡張型ステントとに区別される。バルーン拡張型ステントはステント自体に拡張機能がないため、バルーンの上にマウントしたステントを目的部位に挿入した後、バルーンを拡張させ、バルーンの拡張力によりステントを拡張(塑性変形)させ目的管腔の内面に密着させて固定する。このタイプのステントでは、上記のようなステントの拡張作業が必要になる。一方、自己拡張型ステントはステント自体に拡張機能を持たせたものであり、細く縮めた状態として生体内に挿入し、目的部位で開放することで自ら元の拡張された状態に戻り、管腔内壁に密着、固定されて管腔形状を維持する。
【0004】
現在のステント留置の主たる目的は、狭窄した血管を元の開存状態に戻すことであり、主にはPTCA(percutaneous transluminal coronary angioplasty:経皮的冠動脈形成術)等の手技を施した後に起こる再狭窄の予防、その低減化を図るものが主流である。ただし最近では、狭窄部となる可能性が高い病変部位(例えばプラーク)を改善することを目的とするものもある。
【0005】
自己拡張型ステントの多くは下肢の血管や頚動脈といった末梢領域において使用されており、例えば、特許文献1に示すような形態を備えるものがある。特許文献1に記載の自己拡張型ステント用送給装置は、主として、同軸的に配置される外側シースおよび内側シャフトを有し、外側シースの遠方端より手前側の内側シースの外周面にはストッパが設けられている。そして、外側シースの遠方端とストッパとの間には、外側シースの内周面と摩擦接触するように自己拡張型ステントが収められており、内側シャフトの一部はステントの管腔内に同軸的に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−313893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のような自己拡張型ステントを用いた生体器官病変部改善用器具を用いてステントを病変部位へ留置する際には、病変部位に生体器官病変部改善用器具のステント収納部を配置し、その部位にて外側シースを手前側に引いてステントを放出することにより、ステントを病変部位に留置する。
【0008】
ここで、特許文献1に記載されているような自己拡張型ステントは、直径が小さくなるように縮経された状態で外側シース内に収納されている。このため、かようなステントが元の直径に復元するように拡張しようとする半径方向の力(ラジアルフォース)を押さえているのは、一般的に、外側シースの有する剛性のみである。したがって、特許文献1に記載のような自己拡張型ステントは、一度外側シースから放出されると自らのラジアルフォースによって一瞬のうちに復元する。
【0009】
しかしながら、自己拡張型ステントが血管等の病変部位においてきわめて短時間で(つまり、高速で)元の直径に復元すると、復元時のラジアルフォースによって病変部位が損傷を受けるという問題がある。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、自己拡張型ステント等の自己拡張性を有する生体内留置物を用いた生体器官病変部改善用器具の使用時における病変部位の損傷を最小限に抑制しうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明に係る生体器官病変部改善用器具は、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体と、前記内側チューブ体の先端部を覆うように配置された、筒形状に形成されてなり、生体内挿入時には縮径され、生体内留置時には外方に拡張可能な生体内留置物と、前記生体内留置物を収納した収納チューブ体とを備えるものである。そして、当該生体器官病変部改善用器具は、前記生体内留置物が、体液との接触により接着性を失う体液応答性接着剤を介して前記内側チューブ体の先端部に固定されており、前記収納チューブ体の先端が、前記内側チューブ体の前記生体内留置物の配置部位よりも先端側に液密または気密に固着されており、前記収納チューブ体に、外力によって他の部位よりも優先的に破断する脆弱部が設けられてなる点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の生体器官病変部改善用器具の使用時には、ステント等の生体内留置物を収納した収納チューブ体を病変部位に配置する。その後、上記収納チューブ体に対して外力(引張応力)を作用させて脆弱部を破断させると、病変部位に存在する体液(例えば、血液)が破断部より流入して生体内留置物を内側チューブ体に固定している体液応答性接着剤と接触し、その接着性を失わせる。その結果、上記接着剤の接着性の低下に伴って生体内留置物が自己のラジアルフォースによって徐々に拡張し、病変部位の管腔内壁に密着、固定されることで管腔形状を維持することができる。このように、本発明に係る生体内留置物は自己拡張性を有するものの、従来のように一瞬にして拡張はせず、徐々に拡張するものである。このため、生体器官病変部改善用器具の使用時における病変部位の損傷が最小限に抑制されうる。
【0013】
前記体液応答性接着剤が、(メタ)アクリルアミド系単量体に由来する構成単位および不飽和カルボン酸に由来する構成単位を含み、架橋剤により架橋されてなる共重合体を含むものであれば、上述したような生体内留置物を徐々に拡張させるという作用効果を確実に発揮させることができる。
【0014】
前記脆弱部が、前記収納チューブ体の他の部位よりも厚さの薄い薄肉部であるようにすれば、外力によって他の部位よりも優先的に破断するという脆弱部の機能を確実に持たせることができ、かつ、製造が容易で手間・コストの高騰が抑えられる。
【0015】
前記脆弱部を、前記収納チューブ体の周方向に全周的に設けるようにすれば、外力によって他の部位よりも優先的に破断するという脆弱部の機能を確実に持たせることができる。
【0016】
前記脆弱部を、前記収納チューブ体の前記生体内留置物を収納した部位よりも先端側に設けるようにすれば、当該脆弱部の破断後の内側チューブ体および収納チューブ体の回収をより一層スムーズに行うことができる。
【0017】
前記収納チューブ体を、前記内側チューブ体を被包する外側チューブ体により構成するようにすれば、収納チューブ体(外側チューブ)の脆弱部が破断した後、収納チューブ体を基端側に確実に移動させることができる。
【0018】
前記収納チューブ体の基端を、前記内側チューブ体の前記生体内留置物の配置部位よりも基端側と液密または気密に固着することにより前記生体内留置物の収納空間を形成し、前記収納空間の内部圧力を高めるための加圧手段をさらに有するようにすれば、従来必要とされていた外側チューブ体が不要となり、かつ、収納チューブ体を従来よりも肉薄にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る生体器官病変部改善用器具の部分拡大正面図である。
【図2】図1に示した生体器官病変部改善用器具の縦断面図である。
【図3】図1に示した生体器官病変部改善用器具の先端部の部分拡大断面図である。
【図4】図1に示した生体器官病変部改善用器具の外側チューブ体(シース;収納チューブ体)の部分省略正面図である。
【図5】図1に示した生体器官病変部改善用器具の内側チューブ体(シャフト部;ステントを含む)の部分正面図である。
【図6】図1に示した生体器官病変部改善用器具の先端部付近を説明するための説明図である。
【図7】図1に示した生体器官病変部改善用器具の中間部付近の内部構造を説明するための説明図である。
【図8】図1に示した生体器官病変部改善用器具の基端部の部分拡大断面図である。
【図9】図1に示した生体器官病変部改善用器具の内側チューブ体の基端部の部分拡大断面図である。
【図10】本発明の生体器官病変部改善用器具に使用されるステントの一例の正面図である。
【図11】図10のステントの展開図である。
【図12】図10のステントの基端側結合部の拡大図である。
【図13】図12のA−A線に沿う断面図である。
【図14】本発明の第1実施形態に係る生体器官病変部改善用器具の作用を説明するための説明図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係る生体器官病変部改善用器具の先端部の部分省略拡大断面図である。
【図16】図15のB−B線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0021】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る生体器官病変部改善用器具1は、図1および図2に示すように、ガイドワイヤルーメン61を有する内側チューブ体(シャフト部)3と、筒形状に形成されてなり、生体内挿入時には縮径され、生体内留置時には外方に拡張可能なステント10(生体内留置物)と、前記ステント10を収納した外側チューブ体(シース;収納チューブ体)2とを備える。ここで、前記ステント10は、前記内側チューブ体(シャフト部)3の先端部を覆うように配置されている。また、後述の薄肉部21aが破断した際、外側チューブ体(シース)2を内側チューブ体(シャフト部)3に対して基端側に移動させて、ステント10を外側チューブ体(シース)2から放出することが可能である。
【0022】
そして、生体器官病変部改善用器具1において、前記ステント10は、図3に示すように、体液との接触により接着性を失う体液応答性接着剤12を介して前記内側チューブ体(シャフト部)3の先端部に固定されている。また、前記外側チューブ体(シース)2の先端は、前記内側チューブ体(シャフト部)3の前記ステント10の配置部位よりも先端側に液密または気密に固着されている。そして、前記外側チューブ体(シース)2の前記ステント10を収納した部位よりも先端側(上記固着部よりも基端側)には、当該外側チューブ体(シース)2の周方向に全周的に、当該外側チューブ体(シース)2の他の部位よりも厚さの薄い薄肉部21a(脆弱部)が設けられている。この薄肉部21aは、外力(引張応力)の作用によって他の部位よりも優先的に破断しうる。
【0023】
図示する実施形態の生体器官病変部改善用器具1では、内側チューブ体は、シャフト部3により構成されており、外側チューブ体(収納チューブ体)は、シース2により構成されている。具体的には、この実施形態の生体器官病変部改善用器具1は、ガイドワイヤルーメン61を有するシャフト部3と、筒形状に形成されてなり、生体内挿入時には縮径され、生体内留置時には外方に拡張可能なステント10と、前記ステント10を収納したシース2とを備えている。そして、ステント10は、シャフト部3の先端部を覆うように配置されている。
【0024】
また、図示する実施形態の生体器官病変部改善用器具1の備えるステント10は、生体内留置時には(例えば縮経前の形状に復元するように)外方に拡張可能なものであり、外側チューブ体(シース)2の先端側を向く先端部と基端側を向く基端部とを備えている。なお、内側チューブ体(シャフト部)3の有するガイドワイヤルーメン61は、生体器官病変部改善用器具の先端にて一端が開口し、他端がシース2のステントを収納した部位よりも基端側にて開口している。
【0025】
シース(外側チューブ体;収納チューブ体)2は、図4に示すように、シースチューブ21と、シースチューブ21の基端に固定されたシースハブ22とを備える。
【0026】
シースチューブ21は、図3および図4に示すように、管状体である。上述したように、シースチューブ21の先端は、シャフト部3の、ステント10の配置部位よりも先端側に液密または気密に固着されている。また、シースチューブ21の先端部は、ステント10を内部に収納する収納部位となっている。そして、シースチューブ21の、ステント10の収納部位よりも先端側(上記固着部よりも基端側)には、シースチューブ21の周方向に全周的に、他の部位よりも厚さの薄い薄肉部21aが設けられている。なお、薄肉部21aの形状やサイズ等に特に制限はないが、製造の簡便さという観点からは、図3に示すように、シースチューブ21の外表面が陥没するように薄肉部21aが設けられることが好ましい。一方、シースチューブ21の外表面の平滑性を確保したい場合には、シースチューブ21の内表面が陥没するように薄肉部21aを設けてもよい。また、薄肉部21aがシースチューブ21の周方向に全周的には設けられない形態も可能であり、例えば、周方向にミシン目状に点在するように薄肉部21aが設けられてもよい。なお、薄肉部21aの厚さは、0.5〜250μmが好ましく、特に、2.5〜50μmが好ましい。一方、シースチューブ21は、ステント収納部位より基端側に設けられた側孔23を備えている。側孔23は、ガイドワイヤを外部に導出するためのものである。
【0027】
シースチューブ21の外径としては、0.5〜4.0mmが好ましく、特に、0.8〜2.0mmが好ましい。また、シースチューブ21の内径としては、0.2〜1.8mmが好ましい。シースチューブ21の長さは、300〜2500mmが好ましく、特に、300〜2000mmが好ましい。
【0028】
ここで、ステント10は体液応答性接着剤12を介して内側チューブ体(シャフト部)3の外表面に固定されていることから、ステント10を収納する外側チューブ体(シース)2は、ステント10のラジアルフォースに対して負荷応力を作用させる必要がない。このため、シースを構成するシースチューブ体21は、従来の外側チューブ体(シース)と比較して剛性がより小さい材料から構成されうるという利点もある。なお、かような観点からは、シースチューブ21の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマー、さらには、熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、ナイロン系(例えば、ポリアミドエラストマー)、ウレタン系(例えば、ポリウレタンエラストマー)、ポリエステル系(例えば、ポリエチレンテレフタレートエラストマー)、オレフィン系(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)の中から適宜選択される。また、シースチューブ21の厚さは、1〜500μmが好ましく、特に、5〜100μmが好ましい。
【0029】
また、シース(外側チューブ体)2の先端部(上記薄肉部21aよりも基端側)には、造影性マーカー28を設けることが好ましい。図3に示すように、後述するステント10は、その先端側が、造影性マーカー28の先端にほぼ位置するように、シース(外側チューブ体)2内に収納されている。造影性マーカー28の形状としては、造影性材料により形成された筒状部材であることが好ましい。また、造影性マーカーの形成材料としては、イリジウム、プラチナ、金、レニウム、タングステン、パラジウム、ロジウム、タンタル、銀、ルテニウム、及びハフニウムからなる元素の群から選択された一種(単体)または二種以上のもの(合金)が好適に使用できる。 さらに、シース2の外面には、潤滑性を呈するようにするための処理を施すことが好ましい。このような処理としては、例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド−グリシジルメタクリレート共重合体等の親水性ポリマーをコーティング、または固定する方法などが挙げられる。また、シースチューブ21の内面に、ステント10およびシャフト部3との摺動性を良好なものにするため、上述のものをコーティング、または固定してもよい。
【0030】
また、シースチューブ21の基端部には、図4に示すように、シースハブ22が固定されている。シースハブ22は、図8に示すように、シャフト部3を摺動可能、かつ液密に保持するシール部材25を備えている。また、シースハブ22は、サイドポート24を備えている。
【0031】
シースハブ22の構成材料としては、硬質材料または半硬質材料が使用される。硬質材料または半硬質材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー)、スチレン系樹脂[例えば、ポリスチレン、MS樹脂(メタクリレート−スチレン共重合体)、MBS樹脂(メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体)]、ポリエステルなどの合成樹脂、ステンレス鋼、アルミまたはアルミ合金などの金属が使用されうる。
【0032】
また、シール部材25および後述する弾性リング69の構成材料としては、弾性材料が使用される。弾性材料としては、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ラテックスゴムなどの天然ゴムなどのゴム類、オレフィン系エラストマー(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)、ポリアミドエラストマー、スチレン系エラストマー(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレンブチレン−スチレンコポリマー)、ウレタン系エラストマー、フッ素樹脂系エラストマーなどの合成樹脂エラストマー等が使用されうる。
【0033】
また、シースハブ22の先端部には、シースハブの先端よりも先端側に延びる補強部材26,27が設けられている。
【0034】
シャフト部(内側チューブ体)3は、図1、図2および図5に示すように、シャフト本体33と、シャフト本体33の先端に設けられ、シース2の先端より突出する先端側チューブ31と、シャフト本体33の基端部に固定されたシャフトハブ30とを備えている。
【0035】
そして、この実施形態において、シャフト部3は、図7に示すように、シース2のステント配置部位よりも基端側の側部にて開口するガイドワイヤルーメン61の基端側開口62を備え、シース2は、ステント配置部位よりも基端側に設けられた側孔23を備え、側孔23および基端側開口62より、ガイドワイヤを挿通可能となっている。
【0036】
先端側チューブ31は、図3および図5に示すように、シース2の先端より突出している。また、先端側チューブ31には、薄肉部21aが破断した際にシース2が先端方向へ移動するのを阻止するストッパ32が設けられている。なお、この実施形態では、上述したシャフト部3(先端側チューブ31)へのシース2(シースチューブ21)の固着は、このストッパ32に対してなされている。先端側チューブ31の基端部は、図7に示すように、湾曲し、シース2の側孔23に侵入し、離脱可能に係合している。先端側チューブ31の外径は、0.2mm〜1.8mmであることが好ましい。また、ストッパ32の先端部は、図3および図6に示すように、先端側に向かって縮径していることが好ましい。ストッパ32の最大径部の外径は、0.5〜4.0mmであることが好ましい。上述したように、先端側チューブ31は、先端より基端まで伸びるガイドワイヤルーメン61を有しているが、その基端側開口62の位置は、先端側チューブ31の先端より、10〜400mm基端側に位置することが好ましく、特に、50〜350mm基端側に位置していることが好ましい。また、基端側開口62の位置は、配置されるステント10の基端(言い換えれば、ステント配置部位の基端)より、50〜250mm基端側であることが好ましい。
【0037】
また、先端側チューブ31は、図7に示すように、少なくともステント10の基端よりも基端側となる部分に補強層31aを備えることが好ましい。補強層31aは、網目状の補強層であることが好ましい。網目状の補強層は、ブレード線で形成することが好ましい。例えば、ワイヤブレードであり、好ましくは線径0.01〜0.2mm、より好ましくは線径0.03〜0.1mmのステンレス、弾性金属、超弾性合金、形状記憶合金等の金属線で形成することができる。または、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等の合成繊維で形成してもよい。
【0038】
シャフト本体33は、先端側チューブ31の基端部に固定された先端部と、所定長基端側に延びる本体部と、シャフトハブ30より突出する基端部とを有している。そして、この実施形態では、シャフト本体33は、先端側チューブ31に固定された部分の先端部が、小径部となっており、本体部および基端部は、小径部より、外径が大きいものとなっている。そして、この実施形態では、図5および図7に示すように、シャフト本体33の先端部は、熱収縮チューブ63により、先端側チューブ31の側面に固定されている。
【0039】
シャフト部3の長さは、400〜2500mmが好ましく、特に、400〜2200mmが好ましい。また、シャフト本体33の本体部の外径としては、1.0〜2.5mmが好ましく、特に、1.0〜2.0mmが好ましい。また、先端側チューブ31の長さは、10〜400mmが好ましく、特に、50〜350mmが好ましく、外径は、0.2〜2.0mmが好ましく、特に、0.4〜1.7mmが好ましい。また、ガイドワイヤルーメン61の内径としては、0.1〜1.8mmが好ましく、特に、0.3〜1.0mmが好ましい。
【0040】
シャフト本体33は、中実のものであってもよいし、管状のものであってもよい。また、コイルシャフトであってもよい。シャフト部3(先端側チューブ31およびシャフト本体33)の形成材料としては、硬度があってかつある程度の柔軟性を有する材料であることが好ましい。例えば、ステンレス鋼、超弾性金属、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用されうる。なお、シャフト部3の外面には、生体適合性、特に抗血栓性を有する材料をコーティングしてもよい。抗血栓性材料としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが好適に使用されうる。
【0041】
さらに、シャフト部3のうち、シース2より突出する可能性のある部分の外面は、潤滑性を有していることが好ましい。このために、例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド−グリシジルメタクリレート共重合体等の親水性ポリマーをコーティング、または固定してもよい。また、シャフト部3の外面全体に上記のものをコーティング、または固定してもよい。さらに、ガイドワイヤとの摺動性を向上させるために、シャフト部3の内面にも上記のものをコーティング、または固定してもよい。
【0042】
そして、シャフト本体33は、シース2内を貫通し、シース2の基端開口より基端側に突出している。シャフト本体33の基端部には、図1、図2および図9に示すように、シャフトハブ30が固着されている。この実施形態では、シャフト本体33には、図8に示すように、固定リング66が固定されている。また、シャフトハブ30には、ハブ30より先端側に伸びる基端チューブ34が固定されている。そして、基端チューブ34の先端部が固定リング66に固定されている。また、基端チューブ34の基端(シャフトハブ30の内部)には、弾性リング69が固定されている。さらに、この実施形態では、固定リング66より所定長先端側に第2の固定リング68が設けられている。そして、固定リング66と第2の固定リング68との間には、中間チューブ67が配置されている。中間チューブ67は、シャフト本体33およびシースチューブ21のいずれにも固定されておらず、かつ、固定リング66および第2の固定リング68と当接可能なものとなっている。このような中間チューブを設けることにより、シースの摺動が良好なものとなる。中間チューブ67としては、低摩擦性表面を有するものが好ましい。具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマーなどにより形成されたチューブが好ましい。
【0043】
本実施形態で用いられるステント10は、側面に多数の開口を有し、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能な、いわゆる自己拡張型ステントである。また、ステント10は、シース2の先端側を向く先端部と基端側を向く基端部とを備えている。
【0044】
使用するステントとしては、例えば、図10および図11に示すようなものが例示される。図10は、本実施形態の生体器官病変部改善用器具に使用されるステントの一例の正面図である。図11は、図10のステントの展開図である。
【0045】
このステント10は、筒形状に形成され、生体内挿入時には縮径され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するいわゆる自己拡張型ステントとなっている。具体的には、ステント10は、ステントの一端側から他端側まで軸方向に延びかつステントの周方向に複数配列された波状ストラット13,14と、各隣り合う波状ストラットを接続するとともに所定長軸方向に延びる1つまたは複数の接続ストラット15とを備え、さらに、波状ストラット13,14の端部は、近接する波状ストラットの端部と結合されている。また、ステント10は、各ストラット間に形成された多数の開口を備えている。
【0046】
特に、図10および図11に示すステント10は、ステント10の一端側から他端側まで軸方向に延びかつステントの周方向に複数配列された第1波状ストラット13と、第1波状ストラット13間に位置し、ステントの一端側より他端側まで軸方向に延びかつステントの周方向に複数配列された第2波状ストラット14と、各隣り合う第1波状ストラット13と第2波状ストラット14とを接続するとともに所定長軸方向に延びる1つまたは複数の接続ストラット15とを備える。そして、第2波状ストラット14の頂点は、ステント10の周方向に近接し、かつ同じ方向に湾曲する第1波状ストラット13の頂点に対して、ステントの軸方向に所定長ずれたものとなっている。また、第1波状ストラット13の端部13a、13bは、近接する第2波状ストラットの端部14a、14bと結合されている。
【0047】
第1波状ストラット13は、ステントの中心軸にほぼ平行に軸方向に延びるものとなっている。そして、第1波状ストラット13は、ステントの周方向に複数本配列されている。第1波状ストラット13の数としては、3本以上であることが好ましく、特に、3〜8本が好適である。さらに、複数本の第1波状ストラット13は、ステントの中心軸に対してほぼ等角度となるように配置されていることが好ましい。
【0048】
第2波状ストラット14もステントの中心軸にほぼ平行に軸方向に延びるものとなっている。そして、第2波状ストラット14は、ステントの周方向に複数本配列されており、各第2波状ストラット14は、各第1波状ストラット間に配列されている。第2波状ストラット14の数としては、3本以上であることが好ましく、特に、3〜8本が好適である。さらに、複数本の第2波状ストラット14は、ステントの中心軸に対してほぼ等角度となるように配置されていることが好ましい。また、第2波状ストラット14の数は、第1波状ストラット13の数と同じとなっていることが好ましい。
【0049】
そして、このステント10は、各隣り合う第1波状ストラット13と第2波状ストラット14とを接続するとともに所定長軸方向に延びる1つまたは複数の接続ストラット15を備えている。特に、この実施形態のステント10では、接続ストラット15は、一方の波状ストラットの変曲点付近に一端を有し、隣接する他方の波状ストラットの頂点付近からこの頂点を若干越えた領域に他端を有し、軸方向に延びかつ他方の波状ストラットの頂点と同じ方向に湾曲している。具体的には、図11に示すように、接続ストラット15は、ステント10の周方向の一方側に向かう頂点を有する湾曲した第1の接続ストラット15aとステント10の周方向の他方側に向かう頂点を有する湾曲した第2の接続ストラット15bとからなる。また、接続ストラット15は、円弧状に湾曲するとともに、ステント10の周方向に近接する第1波状ストラット13または第2波状ストラット14の湾曲部の円弧とほぼ同じ半径を有するものとなっている。
【0050】
そして、この実施形態のステント10は、すべての第1波状ストラット13の一端側端部および他端側端部を近接するいずれかの第2波状ストラット14の端部と結合する結合部16,18を備えている。具体的には、ステント10の第1波状ストラット13の一端側端部13aは、近接する一方の第2波状ストラット14(具体的には、近接しかつ周方向の他方側に位置する第2波状ストラット14)の一端側の端部14aと結合部16により結合されている。また、第1波状ストラット13の他端側端部13bは、近接する一方の第2波状ストラット14(具体的には、近接しかつ周方向の一方側に位置する第2波状ストラット14)の他端側の端部14bと結合部18により結合されている。つまり、一端側の結合部16と他端側の結合部18では、結合する第1波状ストラット13と第2波状ストラット14の組み合わせが異なる(1つずつずれる)ものとなっている。
【0051】
なお、この実施形態のステント10では、結合部16には、造影性マーカー17が取り付けられている。この実施形態では、結合部16は、図12に示すように、開口43を有するものとなっており、ステントの基端(連結部の端部)方向に所定距離離間して平行に延びる2本のフレーム部16a,16bを備えている。また、造影性マーカー17は、図13に示すように、2本のフレーム部16a,16bのほぼ全体を被包するものとなっている。
【0052】
造影性マーカー17としては、所定の厚さ(線径)を有するものであることが好ましい。そして、図12および図13に示すものでは、造影性マーカー17は、基端部(結合部)16を形成する2本のフレーム部を内部に収納し、かつ中央部が窪むとともに、一部が重なり合うことにより、2本のフレーム部に固定されている。
【0053】
そして、図12および図13に示す実施形態のステント10のように、ステント10の基端部は、造影性マーカー17の基端方向への移動を規制する係止部16cを備えていることが好ましい。特に、係止部16cは、図12に示すように、向かい合うように2つ設けることが好ましい。
【0054】
なお、上述したすべての実施形態において、造影性マーカーとしては、上記のシート状部材を用いることが好ましいが、ワイヤー状部材をステント10の基端部(結合部)に巻き付けたものであってもよい。上述した造影性マーカーの形成材料としては、イリジウム、プラチナ、金、レニウム、タングステン、パラジウム、ロジウム、タンタル、銀、ルテニウム、及びハフニウムからなる元素の群から選択された一種(単体)または二種以上のもの(合金)が好適に使用されうる。なお、造影性マーカーの固定は、溶接、はんだ、接着、溶着、拡散のいずれかにて行うことができる。
【0055】
なお、この実施形態のステント10では、結合部18にも、造影性マーカー17と同様の造影性マーカー19が取り付けられている。
【0056】
ステント10の構成材料としては、超弾性金属が好適である。超弾性金属としては、超弾性合金が好適に使用される。ここでいう超弾性合金とは一般に形状記憶合金と称され、少なくとも生体温度(37℃付近)で超弾性を示すものである。特に好ましくは、49〜53原子%NiのTi−Ni合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等の超弾性合金が好適に使用される。特に好ましくは、上記のTi−Ni合金である。また、Ti−Ni合金の一部を0.01〜10.0%Xで置換したTi−Ni−X合金(X=Co,Fe,Mn,Cr,V,Al,Nb,W,Bなど)とすること、またはTi−Ni合金の一部を0.01〜30.0%Xで置換したTi−Ni−X合金(X=Cu,Pb,Zr)とすること、また、冷間加工率または/および最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。また、上記のTi−Ni−X合金を用いて冷間加工率および/または最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。使用される超弾性合金の座屈強度(負荷時の降伏応力)は、5〜200kg/mm2(22℃)、より好ましくは、8〜150kg/mm2、復元応力(除荷時の降伏応力)は、3〜180kg/mm2(22℃)、より好ましくは、5〜130kg/mm2である。ここでいう超弾性とは、使用温度において通常の金属が塑性変形する領域まで変形(曲げ、引張り、圧縮)させても、変形の解放後、加熱を必要とせずにほぼ圧縮前の形状に回復することを意味する。
【0057】
そして、ステント10は、縮径時の直径が、0.5〜1.8mmであることが好ましく、特に、0.6〜1.4mmが好ましい。また、ステント10の非縮径時の長さは、5〜200mmが好適であり、特に、8.0〜100.0mmが好ましい。さらに、ステント10の非縮径時の直径は、1.5〜6.0mmであることが好ましく、特に、2.0〜5.0mmが好ましい。さらに、ステント10の肉厚は、0.05〜0.40mmであることが好ましく、特に、0.05〜0.15mmが好ましい。波状ストラットの幅は、0.01〜1.00mmが好適であり、0.05〜0.2mmが特に好ましい。波状ストラットの表面は滑らかに加工されていることが好ましく、電解研磨による平滑化がより好ましい。また、ステントの半径方向強度は、0.1〜30.0N/cmが好ましく、0.5〜5.0N/cmであることが特に好ましい。
【0058】
本実施形態の生体器官病変部改善用器具1において、ステント10は、図3に示すように、体液との接触により接着性を失う体液応答性接着剤12を介して内側チューブ体(シャフト部)3の先端部(ステント配置部位)に固定されている。体液が血液である場合、この体液応答性接着剤12は、具体的には、血液のpH(pH約7.3〜7.6の弱アルカリ性)に応答して、接着性を失う。すなわち、本実施形態の生体器官病変部改善用器具1では、上記体液応答性接着剤12が血液と接触すると、当該接着剤が接着性を失うことによって、ステント10に対する応力負荷が解除され、ステント10が拡張するのである。なお、本明細書では、体液が血液である場合を例に挙げて具体的な説明を行っているが、本発明の技術的範囲はかような形態のみには限定されない。例えば、体液応答性接着剤がpH応答性である場合、当該接着剤が接着性を失うpHは、pH約7.3〜7.6のみには限定されず、他のpHに応答するものであってもよい。ただし、好ましくは、pH7以上に応答するものである。また、体液応答性接着剤は、血液以外の体液(例えば、リンパ液、組織液、体腔液、膵液・膣分泌液・胆汁等の消化液など)との接触によって接着性を失うものであってもよい。
【0059】
上述したような体液応答性接着剤としては、例えば、(メタ)アクリルアミド系単量体(a1)に由来する構成単位および不飽和カルボン酸(a2)に由来する構成単位を含み、架橋剤(a3)により架橋されてなる共重合体を含むものが挙げられる。ただし、従来公知の知見を適宜参照して、これ以外の形態を採用してももちろんよい。
【0060】
上記共重合体の単量体成分である(メタ)アクリルアミド系単量体(a1)は、特に制限されない。具体的な例としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブチル(メタ)アクリルアミド、N−s−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これら(メタ)アクリルアミド系単量体(a1)は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。なかでも、(メタ)アクリルアミド系単量体(a1)としては、整形外科領域等で使用実績があり、生体内において安全性が高い(メタ)アクリルアミドが好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリルアミド」等の記載は、アクリル酸およびメタクリル酸またはこれらの各誘導体を意味する。
【0061】
上記共重合体の単量体成分である不飽和カルボン酸(a2)は、特に制限されず、具体的な例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸、イタコン酸、クロトン酸、ソルビン酸などが挙げられる。また、前記不飽和カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などの塩も、単量体成分として用いることができる。不飽和カルボン酸の塩を共重合に用いた場合は、重合の後に酸処理を行うことによって、その一部または全部を不飽和カルボン酸(a2)の構成単位の形態とすることができる。これら不飽和カルボン酸(a2)(またはその塩)は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。なかでも、pH7以上の体液との接触によって接着性を失うという体液応答性をより確実に示すようにするという観点からは、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸ナトリウムが好ましく、(メタ)アクリル酸ナトリウムがより好ましく、アクリル酸ナトリウムが最も好ましい。
【0062】
上記共重合体の架橋に用いられる架橋剤(a3)としては、特に制限されず、例えば、重合性不飽和基を2個以上有する架橋剤(イ)、重合性不飽和基と重合性不飽和基以外の反応性官能基とをそれぞれ1つずつ有する架橋剤(ロ)、重合性不飽和基以外の反応性官能基を2個以上有する架橋剤(ハ)などが挙げられる。これら架橋剤は、単独でもまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
架橋剤(イ)のみを用いる場合は、(メタ)アクリルアミド系単量体(a1)と不飽和カルボン酸(a2)(またはその塩)との共重合を行う際に、重合系内に架橋剤(イ)を添加して共重合させればよい。前記架橋剤(ハ)のみを用いる場合は、(メタ)アクリルアミド系単量体(a1)と不飽和カルボン酸(a2)との共重合を行ったあとに架橋剤(ハ)を添加して、例えば加熱による後架橋を行えばよい。前記架橋剤(ロ)のみを用いる場合ならびに前記架橋剤(イ)、(ロ)、および(ハ)の2種以上を用いる場合は、(メタ)アクリルアミド系単量体(a1)と不飽和カルボン酸(a2)との共重合を行う際に重合系内に架橋剤を添加して共重合させ、さらに、例えば加熱による後架橋を行えばよい。
【0064】
重合性不飽和基を2個以上有する架橋剤(イ)の具体例としては、例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N’−エチレンビスメタクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、N,N’−ベンジリデンビスアクリルアミド、N,N’−ビス(アクリルアミドメチレン)尿素、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ又はトリ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタン、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0065】
重合性不飽和基と重合性不飽和基以外の反応性官能基とをそれぞれ1つずつ有する架橋剤(ロ)の具体例としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0066】
重合性不飽和基以外の反応性官能基を2個以上有する架橋剤(ハ)の具体例としては、例えば、多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン等)、アルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミン等)、およびポリアミン(例えば、ポリエチレンイミン等)等が挙げられる。
【0067】
これらのうち、重合性不飽和基を2個以上有する架橋剤(イ)が好ましく、N,N’−メチレンビスアクリルアミドがより好ましい。つまり、本発明において最も好ましい体液応答性接着剤は、pH7以上の体液との接触によって接着性を確実に失うという点で、アクリルアミドに由来する構成単位およびアクリル酸ナトリウムに由来する構成単位を含み、N,N’−メチレンビスアクリルアミドにより架橋されてなる共重合体を含むものである。
【0068】
上記共重合体の製造方法については特に制限はなく、高分子の製造分野における従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0069】
また、体液応答性接着剤が上述の共重合体を含む場合、当該接着剤は、従来公知の他の添加剤をさらに含んでもよい。かような添加剤としては、例えば、安定剤、酸化防止剤、消泡剤、粘着付与剤、可塑剤などが挙げられる。
【0070】
本実施形態においては、図3に示すように、ステント10は、ステント10の内表面に間欠的に配置された体液応答性接着剤12を介して、内側チューブ体(シャフト部)3の先端部(ステント配置部位)に固定されている。ただし、体液応答性接着剤によってステント10を固定する形態はかような形態のみには限定されず、生体内挿入時にはステント10を縮径された状態に保持でき、生体内留置時(具体的には、血液等の体液との接触時)に体液応答性接着剤12が接着性を失った暁にはステント10が外方に拡張できるような形態であればよい。例えば、体液応答性接着剤12が配置される部位は図示した部位以外の部位であってもよいし、配置される形状も、図示するような間欠的なものではなく、内側チューブ体(シャフト部)3の軸方向に沿って直線状に配置されてもよいし、内側チューブ体(シャフト部)3の周方向に(全周的にまたは非全周的に)配置されてもよいし、場合によっては内側チューブ体(シャフト部)3の外表面に沿って螺旋状に配置されてもよい。
【0071】
次に、本実施形態の生体器官病変部改善用器具1の作用について説明する。
【0072】
まず、先端側チューブ31内にガイドワイヤを挿通した生体器官病変部改善用器具1を治療対象部位に挿入し、留置部位にステント10を到達させる。この状態では、ステント10の全体が、シース2に収納された状態となっている。次いで、シース2をシャフト部3に対して基端側に引っ張ると、シース2(シースチューブ21)の先端部に設けられた薄肉部21aに外力(引張応力)が作用する。これにより、薄肉部21がシースチューブ21の他の部位よりも優先的に破断し、シースチューブ21の先端部がシャフト部(内側チューブ体)3の先端側チューブ31から離脱する。離脱したシースチューブ21をシャフト部3に対して基端側にさらに引っ張ることで、ステント10をシースチューブ21から露出させることができる。なお、薄肉部21aを破断させる目的でこれに外力(引張応力)を作用させる手法としては、上述したようにシース2を基端側に引っ張ること以外の形態も採用されうる。例えば、シースハブ22の備えるサイドポート24(図8参照)から、ステント10が収納された、シャフト部(内側チューブ体)3とシース(外側チューブ体)2との間の空間へ、外部ポンプ(図示せず)等を供給手段として、例えば、pH5〜6の生理食塩水、造影剤、リンゲル液等の液体、またはヘリウムガス、CO2ガス、O2ガス等の気体からなる作動流体を供給してもよい。かような形態によっても、当該空間の内圧を上昇させ、薄肉部21aへ外力(引張応力)を作用させることができる。この際、体液応答性接着剤がpH応答性接着剤である場合には、上記作動流体に対して接着剤が応答しないようなものとすることがより好ましい。
【0073】
一方、上述した破断部位からは、体液がシースチューブ21と先端側チューブ31との間に流入し、ステント10を先端側チューブ31に固定する体液応答性接着剤12と接触する。体液応答性接着剤12は、体液との接触によって徐々に接着性を失うことから、ステント10は、シースチューブ21から露出した後であっても、一瞬では拡張せず、徐々に拡張する(ステント10が完全に拡張した状態について、図14参照)。このため、ステントが病変部位においてきわめて短時間で(つまり、高速で)元の直径に復元する際のラジアルフォースによって病変部位が損傷を受けるという問題の発生が最小限に抑制されうる。しかも、体液応答性接着剤が接着性を完全に失った後には、ステント10は、従来のステントと同様に自己のラジアルフォースによって病変部位の管腔内壁に密着、固定されることで管腔形状を維持することができる。
【0074】
さらに、第1実施形態によれば、ステントの収納チューブ体(シースチューブ21)が従来よりも剛性の小さい材料から構成されうるという利点もある。
【0075】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る生体器官病変部改善用器具は、ステントを収納する収納チューブ体の構成が、第1実施形態に係る生体器官病変部改善用器具とは異なる。なお、それ以外の構成は、第1実施形態に係る生体器官病変部改善用器具と基本的には同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0076】
第2実施形態においては、図15および図16に示すように、第1実施形態において内側チューブ体(シャフト部)3を被包するように配置されていた外側チューブ体(シース)とその付属物が配置されていない。そしてその一方で、薄膜からなる薄膜チューブ体29が、内側チューブ体(シャフト部)3の先端部に設けられている。薄膜チューブ体29の先端は、第1実施形態における外側チューブ体(シース)と同様に、内側チューブ体(シャフト部)3のステント10の配置部位よりも先端側に液密または気密に固着されている。一方、薄膜チューブ体29の基端は、内側チューブ体(シャフト部)3のステント10の配置部位よりも基端側に液密または気密に固着されている。その結果、内側チューブ体(シャフト部)3の外表面と薄膜チューブ体29の内表面とによって、ステント10を収納するための空間(収納空間)Sが規定されている。
【0077】
そして、ステント10は体液応答性接着剤12を介して内側チューブ体(シャフト部)3の外表面に固定されていることから、ステント10を収納する薄膜チューブ体29は、ステント10のラジアルフォースに対して負荷応力を作用させる必要がない。このため、薄膜チューブ体29は、従来の外側チューブ体(シース)と比較して剛性がより小さい材料から構成されうるという利点もある。なお、かような観点からは、薄膜チューブ体29の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマー、さらには、熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、ナイロン系(例えば、ポリアミドエラストマー)、ウレタン系(例えば、ポリウレタンエラストマー)、ポリエステル系(例えば、ポリエチレンテレフタレートエラストマー)、オレフィン系(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)の中から適宜選択される。また、薄膜チューブ体29の厚さは、好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは5〜40μmである。
【0078】
また、第1実施形態と同様に、薄膜チューブ体29のステント10の配置部位よりも先端側(上記固着部よりも基端側)には、当該薄膜チューブ体29の周方向に全周的に、当該薄膜チューブ体29の他の部位よりも厚さの薄い薄肉部29a(脆弱部)が設けられている。この薄肉部29aは、外力(引張応力)の作用によって他の部位よりも優先的に破断しうる。なお、薄膜チューブ体29に形成された薄肉部29aの厚さは、好ましくは0.5〜50μmであり、より好ましくは2.5〜20μmである。
【0079】
内側チューブ体(シャフト部)3の外表面には、その軸方向に沿って、流通路35が配置されている。この流通路35は、基端側から先端側へと連通したルーメン35aを有している。このルーメン35aは、上記ステント10の収納空間の内部圧力(内圧)を高めるための作動流体を流通させるためのものであり、その先端が薄膜チューブ体29の基端部と連通していることで、加圧手段の一部を構成している。なお、作動流体としては、第1実施形態の説明において上述したものが同様に用いられうる。
【0080】
第2実施形態の生体器官病変部改善用器具1の使用時には、まず、先端側チューブ31内にガイドワイヤを挿通した生体器官病変部改善用器具1を治療対象部位に挿入し、留置部位にステント10を到達させる。この状態では、ステント10の全体が、薄膜チューブ体29に収納された状態となっている。次いで、加圧手段を作動させて、上記収納空間の内部圧力(内圧)を上昇させる。具体的には、図示しないインデフレータ、シリンジ、ポンプ等を用いて作動流体を所定量供給し、流通路35のルーメン35aを通じてステント10の収納空間に作動流体を送り込めばよい。
【0081】
収納空間の内部圧力が上昇すると、薄膜チューブ29が周方向に拡張してステント10から離間するとともに、薄膜チューブ体29の先端部に設けられた薄肉部29aに外力(引張応力)が作用する。これにより、薄肉部29aが薄膜チューブ体29の他の部位よりも優先的に破断し、薄膜チューブ体29の先端部がシャフト部(内側チューブ体)3の先端側チューブ31から離脱する。
【0082】
上述した破断部位からは、体液が薄膜チューブ29と先端側チューブ31との間に流入し、ステント10を先端側チューブ31に固定している体液応答性接着剤12と接触する。体液応答性接着剤12は、体液との接触によって徐々に接着性を失うことから、ステント10は、一瞬では拡張せず、徐々に拡張する。そして、ステント10が十分に拡張する前に(具体的には、ステント10が薄膜チューブ体29の回収を妨げるほど拡張する前に)内側チューブ体(シャフト部)3を基端側に引っ張ることで、生体器官病変部改善用器具1を構成するステント10以外の部材を一斉に回収しつつ、ステント10を薄膜チューブ29から露出させることができる。この際、図15から理解されるように、薄膜チューブ体29の薄肉部29aよりも基端側の部位は、ステント10の外表面側を通って回収される。一方、薄膜チューブ体29の薄肉部29aよりも先端側の部位および内側チューブ体(シャフト部)3の先端側チューブ31は、ステント10の内表面側(つまり、ステント10内部の管腔)を通って回収される。このため、薄肉部29a(脆弱部)が、薄膜チューブ体29の、ステント10の配置部位よりも先端側に設けられていれば、上述した薄膜チューブ体29の薄肉部29aよりも先端側の部位および内側チューブ体(シャフト部)3の先端側チューブ31の回収をより一層スムーズに行うことができる。
【0083】
第2実施形態の生体器官病変部改善用器具によっても、第1実施形態と同様に、ステントが病変部位においてきわめて短時間で(つまり、高速で)元の直径に復元する際のラジアルフォースによって病変部位が損傷を受けるという問題の発生が最小限に抑制されうる。しかも、体液応答性接着剤が接着性を完全に失った後には、ステント10は、従来のステントと同様に自己のラジアルフォースによって病変部位の管腔内壁に密着、固定されることで管腔形状を維持することができる。
【0084】
さらに、第2実施形態によっても、従来の自己拡張型ステントシステムが備えるような外側チューブ体(シース)が不要であるという利点がある。また、ステントの収納チューブ体(薄膜チューブ体29)が従来よりも剛性の小さい材料から構成されうるという利点もある。
【0085】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、生体内留置物としては、自己拡張型である限り、ステントに限らず、ステントグラフト、人工血管、人工弁、フィルタなど、その他の器具もまた、上述した実施形態と同様にして採用されうる。また、脆弱部は、収納チューブ体のステントの配置部位よりも先端側に限らず、これよりも基端側に設けられてももちろんよい。さらに、脆弱部の形態も薄肉部に限られず、例えば、収納チューブ体の脆弱部以外の部位を構成する材料とは異なる材料を用いて脆弱部を構成することとしてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 生体器官病変部改善用器具
2 シース(外側チューブ体;収納チューブ体)、
3 シャフト部(内側チューブ体)、
10 ステント(生体内留置物)、
12 体液応答性接着剤、
21a 薄肉部(脆弱部)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、胆管、気管、食道、尿道等の生体管腔内に生じた狭窄部または閉塞部等の病変部の改善に使用される生体器官病変部改善用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
ステントは、血管または他の生体内管腔に生じた狭窄部または閉塞部などの病変部を治療するために、病変部に留置され、その内腔を確保する筒形状の医療器具である。
【0003】
ステントは、体外から体内に挿入するために、生体内挿入時には直径が小さくなるように縮経され、目的の狭窄部または閉塞部において、直径が大きくなるように拡張し、かつその管腔をそのままで保持する物であって、金属線材や金属管を加工した円筒形状のものが一般的である。ステントは、機能および留置方法によって、自己拡張型ステントとバルーン拡張型ステントとに区別される。バルーン拡張型ステントはステント自体に拡張機能がないため、バルーンの上にマウントしたステントを目的部位に挿入した後、バルーンを拡張させ、バルーンの拡張力によりステントを拡張(塑性変形)させ目的管腔の内面に密着させて固定する。このタイプのステントでは、上記のようなステントの拡張作業が必要になる。一方、自己拡張型ステントはステント自体に拡張機能を持たせたものであり、細く縮めた状態として生体内に挿入し、目的部位で開放することで自ら元の拡張された状態に戻り、管腔内壁に密着、固定されて管腔形状を維持する。
【0004】
現在のステント留置の主たる目的は、狭窄した血管を元の開存状態に戻すことであり、主にはPTCA(percutaneous transluminal coronary angioplasty:経皮的冠動脈形成術)等の手技を施した後に起こる再狭窄の予防、その低減化を図るものが主流である。ただし最近では、狭窄部となる可能性が高い病変部位(例えばプラーク)を改善することを目的とするものもある。
【0005】
自己拡張型ステントの多くは下肢の血管や頚動脈といった末梢領域において使用されており、例えば、特許文献1に示すような形態を備えるものがある。特許文献1に記載の自己拡張型ステント用送給装置は、主として、同軸的に配置される外側シースおよび内側シャフトを有し、外側シースの遠方端より手前側の内側シースの外周面にはストッパが設けられている。そして、外側シースの遠方端とストッパとの間には、外側シースの内周面と摩擦接触するように自己拡張型ステントが収められており、内側シャフトの一部はステントの管腔内に同軸的に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−313893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のような自己拡張型ステントを用いた生体器官病変部改善用器具を用いてステントを病変部位へ留置する際には、病変部位に生体器官病変部改善用器具のステント収納部を配置し、その部位にて外側シースを手前側に引いてステントを放出することにより、ステントを病変部位に留置する。
【0008】
ここで、特許文献1に記載されているような自己拡張型ステントは、直径が小さくなるように縮経された状態で外側シース内に収納されている。このため、かようなステントが元の直径に復元するように拡張しようとする半径方向の力(ラジアルフォース)を押さえているのは、一般的に、外側シースの有する剛性のみである。したがって、特許文献1に記載のような自己拡張型ステントは、一度外側シースから放出されると自らのラジアルフォースによって一瞬のうちに復元する。
【0009】
しかしながら、自己拡張型ステントが血管等の病変部位においてきわめて短時間で(つまり、高速で)元の直径に復元すると、復元時のラジアルフォースによって病変部位が損傷を受けるという問題がある。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、自己拡張型ステント等の自己拡張性を有する生体内留置物を用いた生体器官病変部改善用器具の使用時における病変部位の損傷を最小限に抑制しうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成する本発明に係る生体器官病変部改善用器具は、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体と、前記内側チューブ体の先端部を覆うように配置された、筒形状に形成されてなり、生体内挿入時には縮径され、生体内留置時には外方に拡張可能な生体内留置物と、前記生体内留置物を収納した収納チューブ体とを備えるものである。そして、当該生体器官病変部改善用器具は、前記生体内留置物が、体液との接触により接着性を失う体液応答性接着剤を介して前記内側チューブ体の先端部に固定されており、前記収納チューブ体の先端が、前記内側チューブ体の前記生体内留置物の配置部位よりも先端側に液密または気密に固着されており、前記収納チューブ体に、外力によって他の部位よりも優先的に破断する脆弱部が設けられてなる点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の生体器官病変部改善用器具の使用時には、ステント等の生体内留置物を収納した収納チューブ体を病変部位に配置する。その後、上記収納チューブ体に対して外力(引張応力)を作用させて脆弱部を破断させると、病変部位に存在する体液(例えば、血液)が破断部より流入して生体内留置物を内側チューブ体に固定している体液応答性接着剤と接触し、その接着性を失わせる。その結果、上記接着剤の接着性の低下に伴って生体内留置物が自己のラジアルフォースによって徐々に拡張し、病変部位の管腔内壁に密着、固定されることで管腔形状を維持することができる。このように、本発明に係る生体内留置物は自己拡張性を有するものの、従来のように一瞬にして拡張はせず、徐々に拡張するものである。このため、生体器官病変部改善用器具の使用時における病変部位の損傷が最小限に抑制されうる。
【0013】
前記体液応答性接着剤が、(メタ)アクリルアミド系単量体に由来する構成単位および不飽和カルボン酸に由来する構成単位を含み、架橋剤により架橋されてなる共重合体を含むものであれば、上述したような生体内留置物を徐々に拡張させるという作用効果を確実に発揮させることができる。
【0014】
前記脆弱部が、前記収納チューブ体の他の部位よりも厚さの薄い薄肉部であるようにすれば、外力によって他の部位よりも優先的に破断するという脆弱部の機能を確実に持たせることができ、かつ、製造が容易で手間・コストの高騰が抑えられる。
【0015】
前記脆弱部を、前記収納チューブ体の周方向に全周的に設けるようにすれば、外力によって他の部位よりも優先的に破断するという脆弱部の機能を確実に持たせることができる。
【0016】
前記脆弱部を、前記収納チューブ体の前記生体内留置物を収納した部位よりも先端側に設けるようにすれば、当該脆弱部の破断後の内側チューブ体および収納チューブ体の回収をより一層スムーズに行うことができる。
【0017】
前記収納チューブ体を、前記内側チューブ体を被包する外側チューブ体により構成するようにすれば、収納チューブ体(外側チューブ)の脆弱部が破断した後、収納チューブ体を基端側に確実に移動させることができる。
【0018】
前記収納チューブ体の基端を、前記内側チューブ体の前記生体内留置物の配置部位よりも基端側と液密または気密に固着することにより前記生体内留置物の収納空間を形成し、前記収納空間の内部圧力を高めるための加圧手段をさらに有するようにすれば、従来必要とされていた外側チューブ体が不要となり、かつ、収納チューブ体を従来よりも肉薄にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る生体器官病変部改善用器具の部分拡大正面図である。
【図2】図1に示した生体器官病変部改善用器具の縦断面図である。
【図3】図1に示した生体器官病変部改善用器具の先端部の部分拡大断面図である。
【図4】図1に示した生体器官病変部改善用器具の外側チューブ体(シース;収納チューブ体)の部分省略正面図である。
【図5】図1に示した生体器官病変部改善用器具の内側チューブ体(シャフト部;ステントを含む)の部分正面図である。
【図6】図1に示した生体器官病変部改善用器具の先端部付近を説明するための説明図である。
【図7】図1に示した生体器官病変部改善用器具の中間部付近の内部構造を説明するための説明図である。
【図8】図1に示した生体器官病変部改善用器具の基端部の部分拡大断面図である。
【図9】図1に示した生体器官病変部改善用器具の内側チューブ体の基端部の部分拡大断面図である。
【図10】本発明の生体器官病変部改善用器具に使用されるステントの一例の正面図である。
【図11】図10のステントの展開図である。
【図12】図10のステントの基端側結合部の拡大図である。
【図13】図12のA−A線に沿う断面図である。
【図14】本発明の第1実施形態に係る生体器官病変部改善用器具の作用を説明するための説明図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係る生体器官病変部改善用器具の先端部の部分省略拡大断面図である。
【図16】図15のB−B線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0021】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る生体器官病変部改善用器具1は、図1および図2に示すように、ガイドワイヤルーメン61を有する内側チューブ体(シャフト部)3と、筒形状に形成されてなり、生体内挿入時には縮径され、生体内留置時には外方に拡張可能なステント10(生体内留置物)と、前記ステント10を収納した外側チューブ体(シース;収納チューブ体)2とを備える。ここで、前記ステント10は、前記内側チューブ体(シャフト部)3の先端部を覆うように配置されている。また、後述の薄肉部21aが破断した際、外側チューブ体(シース)2を内側チューブ体(シャフト部)3に対して基端側に移動させて、ステント10を外側チューブ体(シース)2から放出することが可能である。
【0022】
そして、生体器官病変部改善用器具1において、前記ステント10は、図3に示すように、体液との接触により接着性を失う体液応答性接着剤12を介して前記内側チューブ体(シャフト部)3の先端部に固定されている。また、前記外側チューブ体(シース)2の先端は、前記内側チューブ体(シャフト部)3の前記ステント10の配置部位よりも先端側に液密または気密に固着されている。そして、前記外側チューブ体(シース)2の前記ステント10を収納した部位よりも先端側(上記固着部よりも基端側)には、当該外側チューブ体(シース)2の周方向に全周的に、当該外側チューブ体(シース)2の他の部位よりも厚さの薄い薄肉部21a(脆弱部)が設けられている。この薄肉部21aは、外力(引張応力)の作用によって他の部位よりも優先的に破断しうる。
【0023】
図示する実施形態の生体器官病変部改善用器具1では、内側チューブ体は、シャフト部3により構成されており、外側チューブ体(収納チューブ体)は、シース2により構成されている。具体的には、この実施形態の生体器官病変部改善用器具1は、ガイドワイヤルーメン61を有するシャフト部3と、筒形状に形成されてなり、生体内挿入時には縮径され、生体内留置時には外方に拡張可能なステント10と、前記ステント10を収納したシース2とを備えている。そして、ステント10は、シャフト部3の先端部を覆うように配置されている。
【0024】
また、図示する実施形態の生体器官病変部改善用器具1の備えるステント10は、生体内留置時には(例えば縮経前の形状に復元するように)外方に拡張可能なものであり、外側チューブ体(シース)2の先端側を向く先端部と基端側を向く基端部とを備えている。なお、内側チューブ体(シャフト部)3の有するガイドワイヤルーメン61は、生体器官病変部改善用器具の先端にて一端が開口し、他端がシース2のステントを収納した部位よりも基端側にて開口している。
【0025】
シース(外側チューブ体;収納チューブ体)2は、図4に示すように、シースチューブ21と、シースチューブ21の基端に固定されたシースハブ22とを備える。
【0026】
シースチューブ21は、図3および図4に示すように、管状体である。上述したように、シースチューブ21の先端は、シャフト部3の、ステント10の配置部位よりも先端側に液密または気密に固着されている。また、シースチューブ21の先端部は、ステント10を内部に収納する収納部位となっている。そして、シースチューブ21の、ステント10の収納部位よりも先端側(上記固着部よりも基端側)には、シースチューブ21の周方向に全周的に、他の部位よりも厚さの薄い薄肉部21aが設けられている。なお、薄肉部21aの形状やサイズ等に特に制限はないが、製造の簡便さという観点からは、図3に示すように、シースチューブ21の外表面が陥没するように薄肉部21aが設けられることが好ましい。一方、シースチューブ21の外表面の平滑性を確保したい場合には、シースチューブ21の内表面が陥没するように薄肉部21aを設けてもよい。また、薄肉部21aがシースチューブ21の周方向に全周的には設けられない形態も可能であり、例えば、周方向にミシン目状に点在するように薄肉部21aが設けられてもよい。なお、薄肉部21aの厚さは、0.5〜250μmが好ましく、特に、2.5〜50μmが好ましい。一方、シースチューブ21は、ステント収納部位より基端側に設けられた側孔23を備えている。側孔23は、ガイドワイヤを外部に導出するためのものである。
【0027】
シースチューブ21の外径としては、0.5〜4.0mmが好ましく、特に、0.8〜2.0mmが好ましい。また、シースチューブ21の内径としては、0.2〜1.8mmが好ましい。シースチューブ21の長さは、300〜2500mmが好ましく、特に、300〜2000mmが好ましい。
【0028】
ここで、ステント10は体液応答性接着剤12を介して内側チューブ体(シャフト部)3の外表面に固定されていることから、ステント10を収納する外側チューブ体(シース)2は、ステント10のラジアルフォースに対して負荷応力を作用させる必要がない。このため、シースを構成するシースチューブ体21は、従来の外側チューブ体(シース)と比較して剛性がより小さい材料から構成されうるという利点もある。なお、かような観点からは、シースチューブ21の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマー、さらには、熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、ナイロン系(例えば、ポリアミドエラストマー)、ウレタン系(例えば、ポリウレタンエラストマー)、ポリエステル系(例えば、ポリエチレンテレフタレートエラストマー)、オレフィン系(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)の中から適宜選択される。また、シースチューブ21の厚さは、1〜500μmが好ましく、特に、5〜100μmが好ましい。
【0029】
また、シース(外側チューブ体)2の先端部(上記薄肉部21aよりも基端側)には、造影性マーカー28を設けることが好ましい。図3に示すように、後述するステント10は、その先端側が、造影性マーカー28の先端にほぼ位置するように、シース(外側チューブ体)2内に収納されている。造影性マーカー28の形状としては、造影性材料により形成された筒状部材であることが好ましい。また、造影性マーカーの形成材料としては、イリジウム、プラチナ、金、レニウム、タングステン、パラジウム、ロジウム、タンタル、銀、ルテニウム、及びハフニウムからなる元素の群から選択された一種(単体)または二種以上のもの(合金)が好適に使用できる。 さらに、シース2の外面には、潤滑性を呈するようにするための処理を施すことが好ましい。このような処理としては、例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド−グリシジルメタクリレート共重合体等の親水性ポリマーをコーティング、または固定する方法などが挙げられる。また、シースチューブ21の内面に、ステント10およびシャフト部3との摺動性を良好なものにするため、上述のものをコーティング、または固定してもよい。
【0030】
また、シースチューブ21の基端部には、図4に示すように、シースハブ22が固定されている。シースハブ22は、図8に示すように、シャフト部3を摺動可能、かつ液密に保持するシール部材25を備えている。また、シースハブ22は、サイドポート24を備えている。
【0031】
シースハブ22の構成材料としては、硬質材料または半硬質材料が使用される。硬質材料または半硬質材料としては、例えば、ポリカーボネート、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー)、スチレン系樹脂[例えば、ポリスチレン、MS樹脂(メタクリレート−スチレン共重合体)、MBS樹脂(メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体)]、ポリエステルなどの合成樹脂、ステンレス鋼、アルミまたはアルミ合金などの金属が使用されうる。
【0032】
また、シール部材25および後述する弾性リング69の構成材料としては、弾性材料が使用される。弾性材料としては、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ラテックスゴムなどの天然ゴムなどのゴム類、オレフィン系エラストマー(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)、ポリアミドエラストマー、スチレン系エラストマー(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレンブチレン−スチレンコポリマー)、ウレタン系エラストマー、フッ素樹脂系エラストマーなどの合成樹脂エラストマー等が使用されうる。
【0033】
また、シースハブ22の先端部には、シースハブの先端よりも先端側に延びる補強部材26,27が設けられている。
【0034】
シャフト部(内側チューブ体)3は、図1、図2および図5に示すように、シャフト本体33と、シャフト本体33の先端に設けられ、シース2の先端より突出する先端側チューブ31と、シャフト本体33の基端部に固定されたシャフトハブ30とを備えている。
【0035】
そして、この実施形態において、シャフト部3は、図7に示すように、シース2のステント配置部位よりも基端側の側部にて開口するガイドワイヤルーメン61の基端側開口62を備え、シース2は、ステント配置部位よりも基端側に設けられた側孔23を備え、側孔23および基端側開口62より、ガイドワイヤを挿通可能となっている。
【0036】
先端側チューブ31は、図3および図5に示すように、シース2の先端より突出している。また、先端側チューブ31には、薄肉部21aが破断した際にシース2が先端方向へ移動するのを阻止するストッパ32が設けられている。なお、この実施形態では、上述したシャフト部3(先端側チューブ31)へのシース2(シースチューブ21)の固着は、このストッパ32に対してなされている。先端側チューブ31の基端部は、図7に示すように、湾曲し、シース2の側孔23に侵入し、離脱可能に係合している。先端側チューブ31の外径は、0.2mm〜1.8mmであることが好ましい。また、ストッパ32の先端部は、図3および図6に示すように、先端側に向かって縮径していることが好ましい。ストッパ32の最大径部の外径は、0.5〜4.0mmであることが好ましい。上述したように、先端側チューブ31は、先端より基端まで伸びるガイドワイヤルーメン61を有しているが、その基端側開口62の位置は、先端側チューブ31の先端より、10〜400mm基端側に位置することが好ましく、特に、50〜350mm基端側に位置していることが好ましい。また、基端側開口62の位置は、配置されるステント10の基端(言い換えれば、ステント配置部位の基端)より、50〜250mm基端側であることが好ましい。
【0037】
また、先端側チューブ31は、図7に示すように、少なくともステント10の基端よりも基端側となる部分に補強層31aを備えることが好ましい。補強層31aは、網目状の補強層であることが好ましい。網目状の補強層は、ブレード線で形成することが好ましい。例えば、ワイヤブレードであり、好ましくは線径0.01〜0.2mm、より好ましくは線径0.03〜0.1mmのステンレス、弾性金属、超弾性合金、形状記憶合金等の金属線で形成することができる。または、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等の合成繊維で形成してもよい。
【0038】
シャフト本体33は、先端側チューブ31の基端部に固定された先端部と、所定長基端側に延びる本体部と、シャフトハブ30より突出する基端部とを有している。そして、この実施形態では、シャフト本体33は、先端側チューブ31に固定された部分の先端部が、小径部となっており、本体部および基端部は、小径部より、外径が大きいものとなっている。そして、この実施形態では、図5および図7に示すように、シャフト本体33の先端部は、熱収縮チューブ63により、先端側チューブ31の側面に固定されている。
【0039】
シャフト部3の長さは、400〜2500mmが好ましく、特に、400〜2200mmが好ましい。また、シャフト本体33の本体部の外径としては、1.0〜2.5mmが好ましく、特に、1.0〜2.0mmが好ましい。また、先端側チューブ31の長さは、10〜400mmが好ましく、特に、50〜350mmが好ましく、外径は、0.2〜2.0mmが好ましく、特に、0.4〜1.7mmが好ましい。また、ガイドワイヤルーメン61の内径としては、0.1〜1.8mmが好ましく、特に、0.3〜1.0mmが好ましい。
【0040】
シャフト本体33は、中実のものであってもよいし、管状のものであってもよい。また、コイルシャフトであってもよい。シャフト部3(先端側チューブ31およびシャフト本体33)の形成材料としては、硬度があってかつある程度の柔軟性を有する材料であることが好ましい。例えば、ステンレス鋼、超弾性金属、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用されうる。なお、シャフト部3の外面には、生体適合性、特に抗血栓性を有する材料をコーティングしてもよい。抗血栓性材料としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが好適に使用されうる。
【0041】
さらに、シャフト部3のうち、シース2より突出する可能性のある部分の外面は、潤滑性を有していることが好ましい。このために、例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ジメチルアクリルアミド−グリシジルメタクリレート共重合体等の親水性ポリマーをコーティング、または固定してもよい。また、シャフト部3の外面全体に上記のものをコーティング、または固定してもよい。さらに、ガイドワイヤとの摺動性を向上させるために、シャフト部3の内面にも上記のものをコーティング、または固定してもよい。
【0042】
そして、シャフト本体33は、シース2内を貫通し、シース2の基端開口より基端側に突出している。シャフト本体33の基端部には、図1、図2および図9に示すように、シャフトハブ30が固着されている。この実施形態では、シャフト本体33には、図8に示すように、固定リング66が固定されている。また、シャフトハブ30には、ハブ30より先端側に伸びる基端チューブ34が固定されている。そして、基端チューブ34の先端部が固定リング66に固定されている。また、基端チューブ34の基端(シャフトハブ30の内部)には、弾性リング69が固定されている。さらに、この実施形態では、固定リング66より所定長先端側に第2の固定リング68が設けられている。そして、固定リング66と第2の固定リング68との間には、中間チューブ67が配置されている。中間チューブ67は、シャフト本体33およびシースチューブ21のいずれにも固定されておらず、かつ、固定リング66および第2の固定リング68と当接可能なものとなっている。このような中間チューブを設けることにより、シースの摺動が良好なものとなる。中間チューブ67としては、低摩擦性表面を有するものが好ましい。具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマーなどにより形成されたチューブが好ましい。
【0043】
本実施形態で用いられるステント10は、側面に多数の開口を有し、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能な、いわゆる自己拡張型ステントである。また、ステント10は、シース2の先端側を向く先端部と基端側を向く基端部とを備えている。
【0044】
使用するステントとしては、例えば、図10および図11に示すようなものが例示される。図10は、本実施形態の生体器官病変部改善用器具に使用されるステントの一例の正面図である。図11は、図10のステントの展開図である。
【0045】
このステント10は、筒形状に形成され、生体内挿入時には縮径され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するいわゆる自己拡張型ステントとなっている。具体的には、ステント10は、ステントの一端側から他端側まで軸方向に延びかつステントの周方向に複数配列された波状ストラット13,14と、各隣り合う波状ストラットを接続するとともに所定長軸方向に延びる1つまたは複数の接続ストラット15とを備え、さらに、波状ストラット13,14の端部は、近接する波状ストラットの端部と結合されている。また、ステント10は、各ストラット間に形成された多数の開口を備えている。
【0046】
特に、図10および図11に示すステント10は、ステント10の一端側から他端側まで軸方向に延びかつステントの周方向に複数配列された第1波状ストラット13と、第1波状ストラット13間に位置し、ステントの一端側より他端側まで軸方向に延びかつステントの周方向に複数配列された第2波状ストラット14と、各隣り合う第1波状ストラット13と第2波状ストラット14とを接続するとともに所定長軸方向に延びる1つまたは複数の接続ストラット15とを備える。そして、第2波状ストラット14の頂点は、ステント10の周方向に近接し、かつ同じ方向に湾曲する第1波状ストラット13の頂点に対して、ステントの軸方向に所定長ずれたものとなっている。また、第1波状ストラット13の端部13a、13bは、近接する第2波状ストラットの端部14a、14bと結合されている。
【0047】
第1波状ストラット13は、ステントの中心軸にほぼ平行に軸方向に延びるものとなっている。そして、第1波状ストラット13は、ステントの周方向に複数本配列されている。第1波状ストラット13の数としては、3本以上であることが好ましく、特に、3〜8本が好適である。さらに、複数本の第1波状ストラット13は、ステントの中心軸に対してほぼ等角度となるように配置されていることが好ましい。
【0048】
第2波状ストラット14もステントの中心軸にほぼ平行に軸方向に延びるものとなっている。そして、第2波状ストラット14は、ステントの周方向に複数本配列されており、各第2波状ストラット14は、各第1波状ストラット間に配列されている。第2波状ストラット14の数としては、3本以上であることが好ましく、特に、3〜8本が好適である。さらに、複数本の第2波状ストラット14は、ステントの中心軸に対してほぼ等角度となるように配置されていることが好ましい。また、第2波状ストラット14の数は、第1波状ストラット13の数と同じとなっていることが好ましい。
【0049】
そして、このステント10は、各隣り合う第1波状ストラット13と第2波状ストラット14とを接続するとともに所定長軸方向に延びる1つまたは複数の接続ストラット15を備えている。特に、この実施形態のステント10では、接続ストラット15は、一方の波状ストラットの変曲点付近に一端を有し、隣接する他方の波状ストラットの頂点付近からこの頂点を若干越えた領域に他端を有し、軸方向に延びかつ他方の波状ストラットの頂点と同じ方向に湾曲している。具体的には、図11に示すように、接続ストラット15は、ステント10の周方向の一方側に向かう頂点を有する湾曲した第1の接続ストラット15aとステント10の周方向の他方側に向かう頂点を有する湾曲した第2の接続ストラット15bとからなる。また、接続ストラット15は、円弧状に湾曲するとともに、ステント10の周方向に近接する第1波状ストラット13または第2波状ストラット14の湾曲部の円弧とほぼ同じ半径を有するものとなっている。
【0050】
そして、この実施形態のステント10は、すべての第1波状ストラット13の一端側端部および他端側端部を近接するいずれかの第2波状ストラット14の端部と結合する結合部16,18を備えている。具体的には、ステント10の第1波状ストラット13の一端側端部13aは、近接する一方の第2波状ストラット14(具体的には、近接しかつ周方向の他方側に位置する第2波状ストラット14)の一端側の端部14aと結合部16により結合されている。また、第1波状ストラット13の他端側端部13bは、近接する一方の第2波状ストラット14(具体的には、近接しかつ周方向の一方側に位置する第2波状ストラット14)の他端側の端部14bと結合部18により結合されている。つまり、一端側の結合部16と他端側の結合部18では、結合する第1波状ストラット13と第2波状ストラット14の組み合わせが異なる(1つずつずれる)ものとなっている。
【0051】
なお、この実施形態のステント10では、結合部16には、造影性マーカー17が取り付けられている。この実施形態では、結合部16は、図12に示すように、開口43を有するものとなっており、ステントの基端(連結部の端部)方向に所定距離離間して平行に延びる2本のフレーム部16a,16bを備えている。また、造影性マーカー17は、図13に示すように、2本のフレーム部16a,16bのほぼ全体を被包するものとなっている。
【0052】
造影性マーカー17としては、所定の厚さ(線径)を有するものであることが好ましい。そして、図12および図13に示すものでは、造影性マーカー17は、基端部(結合部)16を形成する2本のフレーム部を内部に収納し、かつ中央部が窪むとともに、一部が重なり合うことにより、2本のフレーム部に固定されている。
【0053】
そして、図12および図13に示す実施形態のステント10のように、ステント10の基端部は、造影性マーカー17の基端方向への移動を規制する係止部16cを備えていることが好ましい。特に、係止部16cは、図12に示すように、向かい合うように2つ設けることが好ましい。
【0054】
なお、上述したすべての実施形態において、造影性マーカーとしては、上記のシート状部材を用いることが好ましいが、ワイヤー状部材をステント10の基端部(結合部)に巻き付けたものであってもよい。上述した造影性マーカーの形成材料としては、イリジウム、プラチナ、金、レニウム、タングステン、パラジウム、ロジウム、タンタル、銀、ルテニウム、及びハフニウムからなる元素の群から選択された一種(単体)または二種以上のもの(合金)が好適に使用されうる。なお、造影性マーカーの固定は、溶接、はんだ、接着、溶着、拡散のいずれかにて行うことができる。
【0055】
なお、この実施形態のステント10では、結合部18にも、造影性マーカー17と同様の造影性マーカー19が取り付けられている。
【0056】
ステント10の構成材料としては、超弾性金属が好適である。超弾性金属としては、超弾性合金が好適に使用される。ここでいう超弾性合金とは一般に形状記憶合金と称され、少なくとも生体温度(37℃付近)で超弾性を示すものである。特に好ましくは、49〜53原子%NiのTi−Ni合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等の超弾性合金が好適に使用される。特に好ましくは、上記のTi−Ni合金である。また、Ti−Ni合金の一部を0.01〜10.0%Xで置換したTi−Ni−X合金(X=Co,Fe,Mn,Cr,V,Al,Nb,W,Bなど)とすること、またはTi−Ni合金の一部を0.01〜30.0%Xで置換したTi−Ni−X合金(X=Cu,Pb,Zr)とすること、また、冷間加工率または/および最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。また、上記のTi−Ni−X合金を用いて冷間加工率および/または最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。使用される超弾性合金の座屈強度(負荷時の降伏応力)は、5〜200kg/mm2(22℃)、より好ましくは、8〜150kg/mm2、復元応力(除荷時の降伏応力)は、3〜180kg/mm2(22℃)、より好ましくは、5〜130kg/mm2である。ここでいう超弾性とは、使用温度において通常の金属が塑性変形する領域まで変形(曲げ、引張り、圧縮)させても、変形の解放後、加熱を必要とせずにほぼ圧縮前の形状に回復することを意味する。
【0057】
そして、ステント10は、縮径時の直径が、0.5〜1.8mmであることが好ましく、特に、0.6〜1.4mmが好ましい。また、ステント10の非縮径時の長さは、5〜200mmが好適であり、特に、8.0〜100.0mmが好ましい。さらに、ステント10の非縮径時の直径は、1.5〜6.0mmであることが好ましく、特に、2.0〜5.0mmが好ましい。さらに、ステント10の肉厚は、0.05〜0.40mmであることが好ましく、特に、0.05〜0.15mmが好ましい。波状ストラットの幅は、0.01〜1.00mmが好適であり、0.05〜0.2mmが特に好ましい。波状ストラットの表面は滑らかに加工されていることが好ましく、電解研磨による平滑化がより好ましい。また、ステントの半径方向強度は、0.1〜30.0N/cmが好ましく、0.5〜5.0N/cmであることが特に好ましい。
【0058】
本実施形態の生体器官病変部改善用器具1において、ステント10は、図3に示すように、体液との接触により接着性を失う体液応答性接着剤12を介して内側チューブ体(シャフト部)3の先端部(ステント配置部位)に固定されている。体液が血液である場合、この体液応答性接着剤12は、具体的には、血液のpH(pH約7.3〜7.6の弱アルカリ性)に応答して、接着性を失う。すなわち、本実施形態の生体器官病変部改善用器具1では、上記体液応答性接着剤12が血液と接触すると、当該接着剤が接着性を失うことによって、ステント10に対する応力負荷が解除され、ステント10が拡張するのである。なお、本明細書では、体液が血液である場合を例に挙げて具体的な説明を行っているが、本発明の技術的範囲はかような形態のみには限定されない。例えば、体液応答性接着剤がpH応答性である場合、当該接着剤が接着性を失うpHは、pH約7.3〜7.6のみには限定されず、他のpHに応答するものであってもよい。ただし、好ましくは、pH7以上に応答するものである。また、体液応答性接着剤は、血液以外の体液(例えば、リンパ液、組織液、体腔液、膵液・膣分泌液・胆汁等の消化液など)との接触によって接着性を失うものであってもよい。
【0059】
上述したような体液応答性接着剤としては、例えば、(メタ)アクリルアミド系単量体(a1)に由来する構成単位および不飽和カルボン酸(a2)に由来する構成単位を含み、架橋剤(a3)により架橋されてなる共重合体を含むものが挙げられる。ただし、従来公知の知見を適宜参照して、これ以外の形態を採用してももちろんよい。
【0060】
上記共重合体の単量体成分である(メタ)アクリルアミド系単量体(a1)は、特に制限されない。具体的な例としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブチル(メタ)アクリルアミド、N−s−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。これら(メタ)アクリルアミド系単量体(a1)は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。なかでも、(メタ)アクリルアミド系単量体(a1)としては、整形外科領域等で使用実績があり、生体内において安全性が高い(メタ)アクリルアミドが好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリルアミド」等の記載は、アクリル酸およびメタクリル酸またはこれらの各誘導体を意味する。
【0061】
上記共重合体の単量体成分である不飽和カルボン酸(a2)は、特に制限されず、具体的な例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸、イタコン酸、クロトン酸、ソルビン酸などが挙げられる。また、前記不飽和カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などの塩も、単量体成分として用いることができる。不飽和カルボン酸の塩を共重合に用いた場合は、重合の後に酸処理を行うことによって、その一部または全部を不飽和カルボン酸(a2)の構成単位の形態とすることができる。これら不飽和カルボン酸(a2)(またはその塩)は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。なかでも、pH7以上の体液との接触によって接着性を失うという体液応答性をより確実に示すようにするという観点からは、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸ナトリウムが好ましく、(メタ)アクリル酸ナトリウムがより好ましく、アクリル酸ナトリウムが最も好ましい。
【0062】
上記共重合体の架橋に用いられる架橋剤(a3)としては、特に制限されず、例えば、重合性不飽和基を2個以上有する架橋剤(イ)、重合性不飽和基と重合性不飽和基以外の反応性官能基とをそれぞれ1つずつ有する架橋剤(ロ)、重合性不飽和基以外の反応性官能基を2個以上有する架橋剤(ハ)などが挙げられる。これら架橋剤は、単独でもまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
架橋剤(イ)のみを用いる場合は、(メタ)アクリルアミド系単量体(a1)と不飽和カルボン酸(a2)(またはその塩)との共重合を行う際に、重合系内に架橋剤(イ)を添加して共重合させればよい。前記架橋剤(ハ)のみを用いる場合は、(メタ)アクリルアミド系単量体(a1)と不飽和カルボン酸(a2)との共重合を行ったあとに架橋剤(ハ)を添加して、例えば加熱による後架橋を行えばよい。前記架橋剤(ロ)のみを用いる場合ならびに前記架橋剤(イ)、(ロ)、および(ハ)の2種以上を用いる場合は、(メタ)アクリルアミド系単量体(a1)と不飽和カルボン酸(a2)との共重合を行う際に重合系内に架橋剤を添加して共重合させ、さらに、例えば加熱による後架橋を行えばよい。
【0064】
重合性不飽和基を2個以上有する架橋剤(イ)の具体例としては、例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N’−エチレンビスメタクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、N,N’−ベンジリデンビスアクリルアミド、N,N’−ビス(アクリルアミドメチレン)尿素、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ又はトリ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタン、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0065】
重合性不飽和基と重合性不飽和基以外の反応性官能基とをそれぞれ1つずつ有する架橋剤(ロ)の具体例としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0066】
重合性不飽和基以外の反応性官能基を2個以上有する架橋剤(ハ)の具体例としては、例えば、多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン等)、アルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミン等)、およびポリアミン(例えば、ポリエチレンイミン等)等が挙げられる。
【0067】
これらのうち、重合性不飽和基を2個以上有する架橋剤(イ)が好ましく、N,N’−メチレンビスアクリルアミドがより好ましい。つまり、本発明において最も好ましい体液応答性接着剤は、pH7以上の体液との接触によって接着性を確実に失うという点で、アクリルアミドに由来する構成単位およびアクリル酸ナトリウムに由来する構成単位を含み、N,N’−メチレンビスアクリルアミドにより架橋されてなる共重合体を含むものである。
【0068】
上記共重合体の製造方法については特に制限はなく、高分子の製造分野における従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0069】
また、体液応答性接着剤が上述の共重合体を含む場合、当該接着剤は、従来公知の他の添加剤をさらに含んでもよい。かような添加剤としては、例えば、安定剤、酸化防止剤、消泡剤、粘着付与剤、可塑剤などが挙げられる。
【0070】
本実施形態においては、図3に示すように、ステント10は、ステント10の内表面に間欠的に配置された体液応答性接着剤12を介して、内側チューブ体(シャフト部)3の先端部(ステント配置部位)に固定されている。ただし、体液応答性接着剤によってステント10を固定する形態はかような形態のみには限定されず、生体内挿入時にはステント10を縮径された状態に保持でき、生体内留置時(具体的には、血液等の体液との接触時)に体液応答性接着剤12が接着性を失った暁にはステント10が外方に拡張できるような形態であればよい。例えば、体液応答性接着剤12が配置される部位は図示した部位以外の部位であってもよいし、配置される形状も、図示するような間欠的なものではなく、内側チューブ体(シャフト部)3の軸方向に沿って直線状に配置されてもよいし、内側チューブ体(シャフト部)3の周方向に(全周的にまたは非全周的に)配置されてもよいし、場合によっては内側チューブ体(シャフト部)3の外表面に沿って螺旋状に配置されてもよい。
【0071】
次に、本実施形態の生体器官病変部改善用器具1の作用について説明する。
【0072】
まず、先端側チューブ31内にガイドワイヤを挿通した生体器官病変部改善用器具1を治療対象部位に挿入し、留置部位にステント10を到達させる。この状態では、ステント10の全体が、シース2に収納された状態となっている。次いで、シース2をシャフト部3に対して基端側に引っ張ると、シース2(シースチューブ21)の先端部に設けられた薄肉部21aに外力(引張応力)が作用する。これにより、薄肉部21がシースチューブ21の他の部位よりも優先的に破断し、シースチューブ21の先端部がシャフト部(内側チューブ体)3の先端側チューブ31から離脱する。離脱したシースチューブ21をシャフト部3に対して基端側にさらに引っ張ることで、ステント10をシースチューブ21から露出させることができる。なお、薄肉部21aを破断させる目的でこれに外力(引張応力)を作用させる手法としては、上述したようにシース2を基端側に引っ張ること以外の形態も採用されうる。例えば、シースハブ22の備えるサイドポート24(図8参照)から、ステント10が収納された、シャフト部(内側チューブ体)3とシース(外側チューブ体)2との間の空間へ、外部ポンプ(図示せず)等を供給手段として、例えば、pH5〜6の生理食塩水、造影剤、リンゲル液等の液体、またはヘリウムガス、CO2ガス、O2ガス等の気体からなる作動流体を供給してもよい。かような形態によっても、当該空間の内圧を上昇させ、薄肉部21aへ外力(引張応力)を作用させることができる。この際、体液応答性接着剤がpH応答性接着剤である場合には、上記作動流体に対して接着剤が応答しないようなものとすることがより好ましい。
【0073】
一方、上述した破断部位からは、体液がシースチューブ21と先端側チューブ31との間に流入し、ステント10を先端側チューブ31に固定する体液応答性接着剤12と接触する。体液応答性接着剤12は、体液との接触によって徐々に接着性を失うことから、ステント10は、シースチューブ21から露出した後であっても、一瞬では拡張せず、徐々に拡張する(ステント10が完全に拡張した状態について、図14参照)。このため、ステントが病変部位においてきわめて短時間で(つまり、高速で)元の直径に復元する際のラジアルフォースによって病変部位が損傷を受けるという問題の発生が最小限に抑制されうる。しかも、体液応答性接着剤が接着性を完全に失った後には、ステント10は、従来のステントと同様に自己のラジアルフォースによって病変部位の管腔内壁に密着、固定されることで管腔形状を維持することができる。
【0074】
さらに、第1実施形態によれば、ステントの収納チューブ体(シースチューブ21)が従来よりも剛性の小さい材料から構成されうるという利点もある。
【0075】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る生体器官病変部改善用器具は、ステントを収納する収納チューブ体の構成が、第1実施形態に係る生体器官病変部改善用器具とは異なる。なお、それ以外の構成は、第1実施形態に係る生体器官病変部改善用器具と基本的には同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0076】
第2実施形態においては、図15および図16に示すように、第1実施形態において内側チューブ体(シャフト部)3を被包するように配置されていた外側チューブ体(シース)とその付属物が配置されていない。そしてその一方で、薄膜からなる薄膜チューブ体29が、内側チューブ体(シャフト部)3の先端部に設けられている。薄膜チューブ体29の先端は、第1実施形態における外側チューブ体(シース)と同様に、内側チューブ体(シャフト部)3のステント10の配置部位よりも先端側に液密または気密に固着されている。一方、薄膜チューブ体29の基端は、内側チューブ体(シャフト部)3のステント10の配置部位よりも基端側に液密または気密に固着されている。その結果、内側チューブ体(シャフト部)3の外表面と薄膜チューブ体29の内表面とによって、ステント10を収納するための空間(収納空間)Sが規定されている。
【0077】
そして、ステント10は体液応答性接着剤12を介して内側チューブ体(シャフト部)3の外表面に固定されていることから、ステント10を収納する薄膜チューブ体29は、ステント10のラジアルフォースに対して負荷応力を作用させる必要がない。このため、薄膜チューブ体29は、従来の外側チューブ体(シース)と比較して剛性がより小さい材料から構成されうるという利点もある。なお、かような観点からは、薄膜チューブ体29の構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマー、さらには、熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、ナイロン系(例えば、ポリアミドエラストマー)、ウレタン系(例えば、ポリウレタンエラストマー)、ポリエステル系(例えば、ポリエチレンテレフタレートエラストマー)、オレフィン系(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)の中から適宜選択される。また、薄膜チューブ体29の厚さは、好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは5〜40μmである。
【0078】
また、第1実施形態と同様に、薄膜チューブ体29のステント10の配置部位よりも先端側(上記固着部よりも基端側)には、当該薄膜チューブ体29の周方向に全周的に、当該薄膜チューブ体29の他の部位よりも厚さの薄い薄肉部29a(脆弱部)が設けられている。この薄肉部29aは、外力(引張応力)の作用によって他の部位よりも優先的に破断しうる。なお、薄膜チューブ体29に形成された薄肉部29aの厚さは、好ましくは0.5〜50μmであり、より好ましくは2.5〜20μmである。
【0079】
内側チューブ体(シャフト部)3の外表面には、その軸方向に沿って、流通路35が配置されている。この流通路35は、基端側から先端側へと連通したルーメン35aを有している。このルーメン35aは、上記ステント10の収納空間の内部圧力(内圧)を高めるための作動流体を流通させるためのものであり、その先端が薄膜チューブ体29の基端部と連通していることで、加圧手段の一部を構成している。なお、作動流体としては、第1実施形態の説明において上述したものが同様に用いられうる。
【0080】
第2実施形態の生体器官病変部改善用器具1の使用時には、まず、先端側チューブ31内にガイドワイヤを挿通した生体器官病変部改善用器具1を治療対象部位に挿入し、留置部位にステント10を到達させる。この状態では、ステント10の全体が、薄膜チューブ体29に収納された状態となっている。次いで、加圧手段を作動させて、上記収納空間の内部圧力(内圧)を上昇させる。具体的には、図示しないインデフレータ、シリンジ、ポンプ等を用いて作動流体を所定量供給し、流通路35のルーメン35aを通じてステント10の収納空間に作動流体を送り込めばよい。
【0081】
収納空間の内部圧力が上昇すると、薄膜チューブ29が周方向に拡張してステント10から離間するとともに、薄膜チューブ体29の先端部に設けられた薄肉部29aに外力(引張応力)が作用する。これにより、薄肉部29aが薄膜チューブ体29の他の部位よりも優先的に破断し、薄膜チューブ体29の先端部がシャフト部(内側チューブ体)3の先端側チューブ31から離脱する。
【0082】
上述した破断部位からは、体液が薄膜チューブ29と先端側チューブ31との間に流入し、ステント10を先端側チューブ31に固定している体液応答性接着剤12と接触する。体液応答性接着剤12は、体液との接触によって徐々に接着性を失うことから、ステント10は、一瞬では拡張せず、徐々に拡張する。そして、ステント10が十分に拡張する前に(具体的には、ステント10が薄膜チューブ体29の回収を妨げるほど拡張する前に)内側チューブ体(シャフト部)3を基端側に引っ張ることで、生体器官病変部改善用器具1を構成するステント10以外の部材を一斉に回収しつつ、ステント10を薄膜チューブ29から露出させることができる。この際、図15から理解されるように、薄膜チューブ体29の薄肉部29aよりも基端側の部位は、ステント10の外表面側を通って回収される。一方、薄膜チューブ体29の薄肉部29aよりも先端側の部位および内側チューブ体(シャフト部)3の先端側チューブ31は、ステント10の内表面側(つまり、ステント10内部の管腔)を通って回収される。このため、薄肉部29a(脆弱部)が、薄膜チューブ体29の、ステント10の配置部位よりも先端側に設けられていれば、上述した薄膜チューブ体29の薄肉部29aよりも先端側の部位および内側チューブ体(シャフト部)3の先端側チューブ31の回収をより一層スムーズに行うことができる。
【0083】
第2実施形態の生体器官病変部改善用器具によっても、第1実施形態と同様に、ステントが病変部位においてきわめて短時間で(つまり、高速で)元の直径に復元する際のラジアルフォースによって病変部位が損傷を受けるという問題の発生が最小限に抑制されうる。しかも、体液応答性接着剤が接着性を完全に失った後には、ステント10は、従来のステントと同様に自己のラジアルフォースによって病変部位の管腔内壁に密着、固定されることで管腔形状を維持することができる。
【0084】
さらに、第2実施形態によっても、従来の自己拡張型ステントシステムが備えるような外側チューブ体(シース)が不要であるという利点がある。また、ステントの収納チューブ体(薄膜チューブ体29)が従来よりも剛性の小さい材料から構成されうるという利点もある。
【0085】
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、生体内留置物としては、自己拡張型である限り、ステントに限らず、ステントグラフト、人工血管、人工弁、フィルタなど、その他の器具もまた、上述した実施形態と同様にして採用されうる。また、脆弱部は、収納チューブ体のステントの配置部位よりも先端側に限らず、これよりも基端側に設けられてももちろんよい。さらに、脆弱部の形態も薄肉部に限られず、例えば、収納チューブ体の脆弱部以外の部位を構成する材料とは異なる材料を用いて脆弱部を構成することとしてもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 生体器官病変部改善用器具
2 シース(外側チューブ体;収納チューブ体)、
3 シャフト部(内側チューブ体)、
10 ステント(生体内留置物)、
12 体液応答性接着剤、
21a 薄肉部(脆弱部)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体と、
前記内側チューブ体の先端部を覆うように配置された、筒形状に形成されてなり、生体内挿入時には縮径され、生体内留置時には外方に拡張可能な生体内留置物と、
前記生体内留置物を収納した収納チューブ体と、
を備えた生体器官病変部改善用器具であって、
前記生体内留置物は、体液との接触により接着性を失う体液応答性接着剤を介して前記内側チューブ体の先端部に固定されており、
前記収納チューブ体の先端は、前記内側チューブ体の前記生体内留置物の配置部位よりも先端側に液密または気密に固着されており、
前記収納チューブ体に、外力によって他の部位よりも優先的に破断する脆弱部が設けられてなる、
ことを特徴とする生体器官病変部改善用器具。
【請求項2】
前記体液はpH7以上の体液である、請求項1に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項3】
前記体液は血液である、請求項2に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項4】
前記体液応答性接着剤は、(メタ)アクリルアミド系単量体に由来する構成単位および不飽和カルボン酸に由来する構成単位を含み、架橋剤により架橋されてなる共重合体を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項5】
前記脆弱部は、前記収納チューブ体の他の部位よりも厚さの薄い薄肉部である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項6】
前記脆弱部は、前記収納チューブ体の周方向に全周的に設けられている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項7】
前記脆弱部は、前記収納チューブ体の前記生体内留置物を収納した部位よりも先端側に設けられている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項8】
前記収納チューブ体は、前記内側チューブ体を被包する外側チューブ体により構成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項9】
前記収納チューブ体の基端は、前記内側チューブ体の前記生体内留置物の配置部位よりも基端側と液密または気密に固着されることにより前記生体内留置物の収納空間を形成しており、
前記収納空間の内部圧力を高めるための加圧手段をさらに有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項1】
ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体と、
前記内側チューブ体の先端部を覆うように配置された、筒形状に形成されてなり、生体内挿入時には縮径され、生体内留置時には外方に拡張可能な生体内留置物と、
前記生体内留置物を収納した収納チューブ体と、
を備えた生体器官病変部改善用器具であって、
前記生体内留置物は、体液との接触により接着性を失う体液応答性接着剤を介して前記内側チューブ体の先端部に固定されており、
前記収納チューブ体の先端は、前記内側チューブ体の前記生体内留置物の配置部位よりも先端側に液密または気密に固着されており、
前記収納チューブ体に、外力によって他の部位よりも優先的に破断する脆弱部が設けられてなる、
ことを特徴とする生体器官病変部改善用器具。
【請求項2】
前記体液はpH7以上の体液である、請求項1に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項3】
前記体液は血液である、請求項2に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項4】
前記体液応答性接着剤は、(メタ)アクリルアミド系単量体に由来する構成単位および不飽和カルボン酸に由来する構成単位を含み、架橋剤により架橋されてなる共重合体を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項5】
前記脆弱部は、前記収納チューブ体の他の部位よりも厚さの薄い薄肉部である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項6】
前記脆弱部は、前記収納チューブ体の周方向に全周的に設けられている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項7】
前記脆弱部は、前記収納チューブ体の前記生体内留置物を収納した部位よりも先端側に設けられている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項8】
前記収納チューブ体は、前記内側チューブ体を被包する外側チューブ体により構成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項9】
前記収納チューブ体の基端は、前記内側チューブ体の前記生体内留置物の配置部位よりも基端側と液密または気密に固着されることにより前記生体内留置物の収納空間を形成しており、
前記収納空間の内部圧力を高めるための加圧手段をさらに有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の生体器官病変部改善用器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−152344(P2012−152344A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13305(P2011−13305)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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