説明

産業車両のクラッチ制御装置

【課題】クラッチカットオフが行われた際の産業車両の動きを滑らかにする。
【解決手段】クラッチカットオフを行うようにクラッチカットオフ選択スイッチ9が選択されている場合に、圧力センサ33で検出したブレーキ液圧Plbが第1のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps1以上となり、かつ、トルコン速度比eが第1の閾値es1以下となると、クラッチカットオフを行うように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールローダ等の産業車両のクラッチ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダ等の産業車両では、たとえばダンプトラックに土砂等を積み込む作業を行う場合などには、ダンプトラックへ接近する際にブレーキを踏んで車両を減速させるが、作業機装置(バケット)を上方へ上げるためにアクセルペダルを踏み込んでエンジン回転数を高回転で維持するようにしている。そこで、ブレーキの作動状態をたとえばブレーキ液圧で検出し、検出されたブレーキ液圧が所定の値を超えると、前後進用のクラッチを解放して駆動力の伝達を遮断するクラッチカットオフ装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−263384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述したクラッチカットオフ装置では、前後進用のクラッチの解放タイミングをブレーキの作動状態だけで判断している。そのため、産業車両の作業状態や路面の傾斜の程度によっては、前後進用のクラッチの解放タイミングが適切ではなくなり、クラッチの解放動作の前後で産業車両の動きが滑らかでなくなってしまう恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明による産業車両のクラッチ制御装置は、産業車両が接近対象物へ接近したか否かを判断する接近判断手段と、接近判断手段で産業車両が接近対象物へ接近したと判断すると、前進クラッチを解放するように前進クラッチの係合/解放を制御するクラッチ制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、産業車両の動きが滑らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】産業車両の一例であるホイールローダの側面図である。
【図2】ホイールローダ100の概略構成を示す図である。
【図3】トランスミッション3の概略構成を示す図である。
【図4】トルコン速度比eと速度段の関係を示す図である。
【図5】Vシェープローディングについて示す図である。
【図6】土砂等のダンプトラックへの積み込みの際のホイールローダ100の状態を説明する図である。
【図7】本実施の形態のホイールローダ100におけるクラッチ制御処理の動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1〜7を参照して、本発明に係る産業車両のクラッチ制御装置の一実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係るクラッチ制御装置が適用される産業車両の一例であるホイールローダの側面図である。ホイールローダ100は、アーム111、作業機装置であるバケット112、タイヤ113等を有する前部車体110と、運転室121、エンジン室122、タイヤ123等を有する後部車体120とで構成される。アーム111はアームシリンダ114の駆動により上下方向に回動(俯仰動)し、バケット112はバケットシリンダ115の駆動により上下方向に回動(ダンプまたはクラウド)する。前部車体110と後部車体120はセンタピン101により互いに回動自在に連結され、ステアリングシリンダ(不図示)の伸縮により後部車体120に対し前部車体110が左右に屈折する。
【0009】
図2は、ホイールローダ100の概略構成を示す図である。エンジン1の出力軸にはトルクコンバータ2(以下、トルコンと呼ぶ)の入力軸(図3の21)が連結され、トルコン2の出力軸(図3の22)はトランスミッション3に連結されている。トルコン2は周知のインペラ,タービン,ステータからなる流体クラッチであり、エンジン1の回転はトルコン2を介してトランスミッション3に伝達される。トランスミッション3は、後述するようにその速度段を1速〜4速に変速する液圧クラッチを有し、トルコン2の出力軸の回転はトランスミッション3で変速される。変速後の回転が、プロペラシャフト4,アクスル5を介してタイヤ113,123に伝達されて、ホイールローダが走行する。
【0010】
アクスル5には、ホイールローダ100を減速、停止させるためのブレーキ部5aが設けられている。ブレーキ部5aは、ブレーキバルブ32を介してブレーキフルード(作動油)が供給されると、作動油の圧力に応じた制動力を発生させる。ブレーキバルブ32は、作動油の油圧源30から供給される圧油をスプリング32aの圧縮力に応じた圧力に減圧する減圧弁である。運転室121内に設けられたブレーキペダル31がオペレータによって踏み込まれると、ブレーキペダル31の踏み込み力に応じてスプリング32aが圧縮される。したがって、ブレーキバルブ32は、作動油の油圧源30から供給される圧油をブレーキペダル31の踏み込み力に応じた圧力となるように減圧する。ブレーキバルブ32は、スプリング32aの圧縮力(すなわちブレーキペダル31の踏み込み力)が高くなるほど、高い圧力の作動油をブレーキ部5aに供給するように、作動油の圧力を減圧する。34は作動油タンクである。
【0011】
なお、不図示の作業用油圧ポンプはエンジン1により駆動され、この油圧ポンプからの吐出油は不図示の方向制御弁を介して作業用アクチュエータ(例えばアームシリンダ114)に導かれる。方向制御弁は不図示の操作レバーの操作により駆動され、操作レバーの操作量に応じてアクチュエータを駆動できる。
【0012】
トルコン2は入力トルクに対し出力トルクを増大させる機能、つまりトルク比を1以上とする機能を有する。トルク比は、トルコン2の入力軸21の回転数Niと出力軸22の回転数Ntの比であるトルコン速度比e(=Nt/Ni)の増加に伴い小さくなる。たとえばエンジン回転数が一定状態で走行中に走行負荷が大きくなると、トルコン2の出力軸22の回転数、つまり車速が減少し、トルコン速度比eが小さくなる。このとき、トルク比は増加するため、より大きな走行駆動力(牽引力)で車両走行可能となる。
【0013】
ここで、トランスミッション3の構成について説明する。図3は、トランスミッション3の概略構成を示す図である。トランスミッション3は、複数のクラッチシャフトSH1〜SH3、アウトプットシャフトSH4、複数のギヤG1〜G13、前進用の油圧クラッチ(前進クラッチ)18、後進用の油圧クラッチ(後進クラッチ)19、1〜4速用の油圧クラッチC1〜C4を備える。各油圧クラッチ18,19,C1〜C4は、トランスミッション制御装置20を介して供給される圧油(クラッチ圧)により係合または解放する。すなわち油圧クラッチ18,19,C1〜C4に供給されるクラッチ圧が増加するとクラッチ18,19,C1〜C4は係合し、クラッチ圧が減少すると解放する。
【0014】
トルコン2の出力軸22は、クラッチシャフトSH1に連結され、アウトプットシャフトSH4の両端部は、図2のプロペラシャフト4を介して車両前後のアクスル5に連結されている。図3では、前進クラッチ18と1速用クラッチC1とが係合状態で、他のクラッチ19,C2〜C4が解放状態にある。この場合には、ギヤG1とクラッチシャフトSH1が一体になって回転するとともに、ギヤG6とクラッチシャフトSH2が一体になって回転する。
【0015】
このときエンジン1の出力トルクは、図3に太線で示すようにトルコン2の入力軸21、出力軸22、クラッチシャフトSH1、前進クラッチ18、ギヤG1,G3,G5,G6、1速用クラッチC1、クラッチシャフトSH2、ギヤG8,G12を介してアウトプットシャフトSH4に伝達される。これにより1速走行が可能となる。
【0016】
1速から2速に変速する場合には、トランスミッション制御装置20を介して供給されるクラッチ圧により1速用クラッチC1を解放し、2速用クラッチC2を係合する。これによりエンジン1の出力トルクは、トルコン2の入力軸21、出力軸22、クラッチシャフトSH1、前進クラッチ18、ギヤG1,G3,G7、2速用クラッチC2、クラッチシャフトSH2、ギヤG8,G12を介してアウトプットシャフトSH4に伝達され、2速走行が可能となる。1速から2速以外の変速、すなわち2速から3速、3速から4速、4速から3速、3速から2速、2速から1速への変速も同様にクラッチC1〜C4を制御することで行われる。
【0017】
自動変速制御には、トルコン速度比eが所定値に達すると変速するトルコン速度比基準制御と、車速が所定値に達すると変速する車速基準制御の2つの方式がある。本実施の形態では、トルコン速度比基準制御によりトランスミッション3の速度段を制御する。
【0018】
図4は、トルコン速度比eと速度段の関係を示す図である。走行負荷が低くなり、トルコン速度比eが増加してトルコン速度比eが所定値eu以上になると、速度段は1段シフトアップする。これによりトルコン速度比eがe1(ed<e1<eu)となる。反対に走行負荷が高くなり、トルコン速度比eが低下してトルコン速度比eが所定値ed以下になると、速度段は1段シフトダウンする。これによりトルコン速度比eがe2(ed<e2<eu)となる。所定値eu,edは、予めコントローラ10に設定されている。
【0019】
図2に示すコントローラ10は、CPU,ROM,RAM,その他の周辺回路などを有する演算処理装置を含んで構成される。コントローラ10には、アクセルペダル12の操作量を検出するペダル操作量検出器12aと、トルコン2の入力軸21の回転数Niを検出する回転数検出器14と、トルコン2の出力軸22の回転数Ntを検出する回転数検出器15と、トランスミッション3の出力軸の回転速度、つまり車速vを検出する車速検出器16とが接続されている。コントローラ10には、車両の前後進を指令する前後進切換スイッチ7と、1速〜4速の間で最大速度段を指令するシフトスイッチ8と、クラッチカットオフ(後述)を行うか否かを選択するクラッチカットオフ選択スイッチ9とが接続されている。また、コントローラ10には、トランスミッション3における変速を自動で行うか手動で行うかを切り替える変速手段切替装置35と、後述するように前後進用のクラッチ18,19をカットオフする際の条件を切り替えるクラッチカットオフ作動段階切り替えスイッチ36とが接続されている。
【0020】
コントローラ10には、ブレーキペダル31の操作量を検出するペダル操作量検出器31aと、ブレーキ部5aに供給される作動油の圧力を検出する圧力センサ33とが接続されている。コントローラ10は、ペダル操作量検出器12aで検出したアクセルペダル12の操作量に応じてエンジン1の回転速度(回転数)を制御する。
【0021】
たとえば、ホイールローダ100でダンプトラックに土砂等を積み込む作業を行う場合などには、オペレータは、ダンプトラックへ接近する際にブレーキペダル31を踏み込んでホイールローダ100を減速させるが、バケット112を上方へ上げるためにアクセルペダル12も踏み込んでエンジン1の回転数を高回転で維持するようにしている。コントローラ10は、クラッチカットオフをするようにクラッチカットオフ選択スイッチ9が選択されている場合には、圧力センサ33で検出した作動油の圧力(ブレーキ液圧Plb)が所定の値(ブレーキ液圧カットオフ閾値Ps)以上となるなどして、土砂等を積み込む作業を行う際に接近する対象物(たとえばダンプトラック)へ接近したと判断されると、前後進用のクラッチ18,19を解放(カットオフ)するための制御信号(カットオフ信号)をトランスミッション制御装置20に出力する。トランスミッション制御装置20では、カットオフ信号を受信すると、トランスミッション制御装置20に設けられているクラッチカットオフ弁17(図2)がクラッチ18,19のクラッチ圧を減少させる。これにより、クラッチ18,19が解放され、走行駆動力(以下、単に駆動力と呼ぶ)の伝達が遮断される。
【0022】
上述のように、土砂等を積み込む作業を行う際に接近する対象物(以下、接近対象物と呼ぶ)へ接近したと判断されたときにクラッチ18,19を解放することをクラッチカットオフと呼んでいる。以下の説明では、接近対象物へ接近したか否かを判断するための条件を接近判定条件と呼ぶ。接近対象物へ接近したと判断されたときにクラッチカットオフを行うので、接近判定条件をクラッチカットオフ条件とも呼ぶ。接近判定条件(クラッチカットオフ条件)については後述する。なお、コントローラ10は、クラッチカットオフをしないようにクラッチカットオフ選択スイッチ9が選択されている場合には、接近判定条件が満たされてもカットオフ信号を出力しない。したがって、クラッチカットオフをしないようにクラッチカットオフ選択スイッチ9が選択されている場合には、上述したクラッチカットオフは行われない。
【0023】
図5は、土砂等をダンプトラックへ積み込む方法の1つであるVシェープローディングについて示す図である。Vシェープローディングでは、まず、矢印aで示すように、ホイールローダ100を前進させて土砂等をすくい込み、その後、矢印bで示すように、ホイールローダ100を一旦後退させる。そして、矢印cで示すように、ダンプトラックに向けてホイールローダ100を前進させて、すくい込んだ土砂等をダンプトラックに積み込み、矢印dで示すように、ホイールローダ100を元の位置に後退させる。
【0024】
図5の矢印cで示す土砂等のダンプトラックへの積み込みの際には、掘削時のように大きな駆動力が必要ではないため、オペレータは、シフトスイッチ8によって最大速度段を2段に設定するか、変速手段切替装置35でトランスミッション3における変速を手動で行うように切り替えた上で、速度段を2速に固定するように設定している。
【0025】
図6は、図5の矢印cで示す土砂等のダンプトラックへの積み込みの際のホイールローダ100の状態を説明する図である。説明の便宜上、接近対象物であるダンプトラックへ接近する(アプローチする)際の初期の段階であって、ホイールローダ100を加速させる段階をアプローチ初期と呼ぶ。ダンプトラックへアプローチする際の中期の段階であって、ホイールローダ100を減速し始めてからホイールローダ100が停止するまでの段階をアプローチ中期と呼ぶ。ホイールローダ100が停止してから、バケット112内の土砂等をダンプトラックに放土し終えるまでの段階をアプローチ後期と呼ぶ。
【0026】
図6に示すように、アプローチ初期では、ホイールローダ100を加速させるとともにバケット112を上昇させるため、アクセルペダル12が最大限に踏み込まれる。アプローチ中期では、バケット112を上昇させるため、アクセルペダル12が最大限に踏み込まれるが、ホイールローダ100を減速させるためにブレーキペダル31も徐々に踏み込まれる。アプローチ後期では、ホイールローダ100を停止させておくためにブレーキペダル31が最大限に踏み込まれる。クラッチカットオフをするようにクラッチカットオフ選択スイッチ9が選択されている場合には、アプローチ中期のオペレータによるブレーキペダル31の踏み込みによってなど、後述する接近判定条件が満たされると、上述したように、クラッチカットオフが行われる。
【0027】
したがって、ダンプトラックへの接近時に駆動力の伝達が遮断されるので、駆動力に抗してホイールローダ100を減速および停止させる必要がない。これにより、クラッチカットオフをせずに駆動力に抗してホイールローダ100を減速および停止させたときと比べて、ブレーキ部5aに対する負担を減らすことができ、ブレーキ部5aの温度上昇を抑制し、ブレーキ部5aの各部の消耗を抑制できる。また、エンジン1の回転数が高い状態を維持させつつホイールローダ100を減速、停止させても、入力軸21と出力軸22の回転数比であるトルコン速度比eがほぼ1の状態であり、エンジン1からトルコン2への入力トルクが非常に小さいので、トルコン2における動力損失を低減して、燃料消費量を低減できる。
【0028】
しかし、クラッチカットオフのタイミングが適切でない場合には、クラッチカットオフによって駆動力の伝達が突然遮断されることとなるので、ホイールローダ100の駆動力が急激に減少してホイールローダ100のピッチングを誘発する恐れがある。土砂等を積み込む作業を行う場合などには、バケット112の位置が高いため、ピッチングがより大きくなる傾向にある。そのため、ピッチングを嫌うオペレータが、従来のホイールローダにてダンプトラックに土砂等を積み込む作業を行う場合などには、クラッチカットオフをしないようにクラッチカットオフ選択スイッチ9を選択して、上述したクラッチカットオフが行われないようにしていることがある。
【0029】
この場合には、上述したようなピッチングを誘発する恐れはないが、ブレーキ部5aの各部の消耗や、トルコン2における動力損失の増大を招くこととなる。そこで、本実施の形態のホイールローダ100では、接近判定条件を以下に述べるような条件に設定することで、クラッチカットオフのタイミングが適切となるようにしている。
【0030】
−−−接近判定条件(クラッチカットオフ条件)−−−
本実施の形態では、クラッチカットオフ作動段階切り替えスイッチ36が第1段階に設定されている場合には、コントローラ10は、次の2つの条件(a)および(b)のいずれか一方を満たしたと判断すると、カットオフ信号をトランスミッション制御装置20に出力する。
(a) 圧力センサ33で検出したブレーキ液圧Plbが第1のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps1以上となり、かつ、トルコン速度比eが第1の閾値es1以下となったとき。
(b) 圧力センサ33で検出したブレーキ液圧Plbが第2のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps2以上となったとき。
なお、トルコン速度比eは、回転数検出器14,15で検出したトルコン2の入力軸21の回転数Niおよび出力軸22の回転数Ntから算出される。
【0031】
ここで、第1のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps1は、たとえば、平地における土砂等を積み込む作業などで、速度段が2速に設定されていて接近対象物へ接近した際に、アクセルペダル12が最大限に踏み込まれていても、走行駆動力に抗して車速をたとえば7〜8km/h程度にまで落とすことができる程度の制動力を発生させるブレーキ液圧Plbに相当する値とする。すなわち、第1のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps1は、たとえば、上述したアプローチ中期におけるブレーキの掛け始めの弱い制動力を発生させるブレーキ液圧Plbに相当する。
【0032】
第1の閾値es1は、たとえば、平地における土砂等を積み込む作業などで、速度段が2速に設定されていて接近対象物へ接近した際に、アクセルペダル12が最大限に踏み込まれていてもブレーキが掛けられることで車速がたとえば7〜8km/h程度にまで落ちたときのトルコン速度比eに相当する値とする。すなわち、第1の閾値es1は、たとえば、上述したアプローチ中期においてブレーキが掛けられて車速が7〜8km/h程度にまで落ちたときのトルコン速度比eに相当する。第1の閾値es1として、たとえば、0.6程度に設定される。なお、第1の閾値es1としての最適値は、トルコン2の容量やブレーキの性能、車重等で変わるので、第1の閾値es1は0.6でなくてもよい。
【0033】
第2のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps2は、たとえば、平地における土砂等を積み込む作業などで、速度段が2速に設定されていて接近対象物へ接近した際に、アクセルペダル12が最大限に踏み込まれているとホイールローダ100が完全に停止せずに、走行駆動力に抗して車速をたとえば2〜3km/h程度にまで落として維持できる程度の制動力を発生させるブレーキ液圧Plbに相当する値とする。換言すると、第2のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps2は、第1のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps1よりも高く、急ブレーキとなりうる制動力を発生させるブレーキ液圧Plbに相当する値であり、一般的な脚力を有するオペレータが力一杯ブレーキペダル31を踏み込んだときに発生するブレーキ液圧Plbの半分程度の値とする。第2のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps2は、アプローチ中期の最終段階(ホイールローダ100の停止直前)における制動力に対応するブレーキ液圧Plbである。
【0034】
クラッチカットオフ作動段階切り替えスイッチ36が第1段階に設定されている際の接近判定条件を上述のように設定することで、上述したアプローチ中期にアクセルペダル12が最大限に踏み込まれている状態で、ブレーキが掛けられて車速がたとえば7〜8km/h程度に低下すると、上述した(a)の条件が満たされて、クラッチカットオフが行われる。また、強めのブレーキが掛けられて、ブレーキ液圧Plbが第2のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps2以上となると、車速が7〜8km/h程度にまで低下していなくても、上述した(b)の条件が満たされて、クラッチカットオフが行われる。
【0035】
上述した(a)の条件では、アプローチ中期においてブレーキが掛けられて、ある程度まで車速が落ちたところでクラッチカットオフが行われるようになるので、クラッチカットオフのタイミングが適切となり、ホイールローダ100のピッチングを抑制できる。また、上述した(b)の条件では、強めのブレーキが掛けられると車速に関わらずクラッチカットオフが行われるようになるが、制動力が比較的強い状態でクラッチカットオフが行われることとなるため、ホイールローダ100のピッチングを抑制できる。
【0036】
−−−急勾配の傾斜路を上る場合−−−
たとえば、ホッパへの投入作業のように、急勾配(たとえば傾斜角度が20度程度)の傾斜路を上りながら投入作業などを行う場合には、ホイールローダ100の自重がホイールローダ100が下がる方向(後退する方向)への走行負荷として作用するため、平地と同じ条件でクラッチカットオフを行うとクラッチカットオフのタイミングが早過ぎる。クラッチカットオフのタイミングが早過ぎる場合、制動力が十分ではない状態でクラッチカットオフによって走行駆動力が断たれてしまうため、ホイールローダ100がそれまでとは逆に傾斜路を下降し始めてしまう。この場合、オペレータがさらにブレーキペダルを踏み込んでホイールローダ100を停止させようとするので、ホイールローダ100が急停止して、上述したようなピッチングを誘発する恐れがある。
【0037】
そこで、本実施の形態では、クラッチカットオフ作動段階切り替えスイッチ36が第2段階に設定されている場合には、クラッチカットオフ作動段階切り替えスイッチ36が第1段階に設定されている場合と比べて、クラッチカットオフのタイミングが遅れるように(クラッチカットオフが行われ難くなるように)接近判定条件を定めている。具体的には、クラッチカットオフ作動段階切り替えスイッチ36が第2段階に設定されている場合には、コントローラ10は、次の2つの条件(c)および(d)のいずれか一方を満たしたと判断すると、カットオフ信号をトランスミッション制御装置20に出力する。
(c) 圧力センサ33で検出したブレーキ液圧Plbが第3のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps3以上となり、かつ、トルコン速度比eが第2の閾値es2以下となったとき。
(d) 圧力センサ33で検出したブレーキ液圧Plbが第4のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps4以上となったとき。
【0038】
ここで、第3のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps3は、たとえば、傾斜角度が20度程度の傾斜路でクラッチ18,19が解放されてもホイールローダ100が傾斜路を下がらない程度に制動力を発生させるブレーキ液圧Plbに相当する値とする。すなわち、第3のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps3は、たとえば、ホッパへの投入作業などで、傾斜角度が20度程度の傾斜路でクラッチカットオフが行われても、ホイールローダ100が傾斜路を下がらないようにするためにさらにブレーキペダルを踏み増す必要がない程度に制動力を発生させるブレーキ液圧Plbに相当する値とする。第3のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps3は、第1のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps1よりも高く、第2のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps2よりも低い値となる。
【0039】
第2の閾値es2は、たとえば、傾斜角度が20度程度の傾斜路で、速度段が1速に設定されていて接近対象物へ接近した際に、アクセルペダル12が最大限に踏み込まれていてもブレーキが掛けられることで車速がたとえば1〜2km/h程度にまで落ちたときのトルコン速度比eに相当する値とする。第2の閾値es2として、たとえば、0.3程度に設定される。なお、第2の閾値es2としての最適値は、トルコン2の容量やブレーキの性能、車重等で変わるので、第2の閾値es2は0.3でなくてもよい。
【0040】
第4のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps4は、たとえば、オペレータが力一杯ブレーキペダル31を踏み込んだときには必ずクラッチカットオフがされるように、たとえば、一般的な脚力を有するオペレータが力一杯ブレーキペダル31を踏み込んだときに発生するブレーキ液圧Plbのたとえば80〜90%程度の値とする。第4のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps4は、第2のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps2よりも高い値となる。
【0041】
クラッチカットオフ作動段階切り替えスイッチ36が第2段階に設定されている際の接近判定条件を上述のように設定することで、たとえば、傾斜角度が20度程度の傾斜路を上がってホッパに土砂等を投入する際に、アクセルペダル12が最大限に踏み込まれている状態で、ブレーキが掛けられて車速がたとえば1〜2km/h程度に低下すると、上述した(c)の条件が満たされて、クラッチカットオフが行われる。また、ブレーキペダル31が強く踏み込まれて、ブレーキ液圧Plbが第4のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps4以上となると、車速が1〜2km/h程度にまで低下していなくても、上述した(d)の条件が満たされて、クラッチカットオフが行われる。
【0042】
上述した(c)の条件では、車速が1〜2km/h程度にまで低下し、かつ、傾斜角度が20度程度の傾斜路でクラッチ18,19が解放されてもホイールローダ100が傾斜路を下がらない程度に制動力を発生していないとクラッチカットオフが行われない。したがって、クラッチカットオフが行われてもホイールローダ100が傾斜路を下降し始めてしまうことがなく、上述したように、オペレータがさらにブレーキペダルを踏み込んでホイールローダ100を停止させる必要がなく、ホイールローダ100が急停止して、上述したようなピッチングを誘発する恐れがない。また、上述した(d)の条件では、強くブレーキが掛けられると車速に関わらずクラッチカットオフが行われるようになるが、制動力が強い状態でクラッチカットオフが行われることとなるため、ホイールローダ100のピッチングを抑制できる。
【0043】
−−−急勾配の傾斜路を下る場合−−−
急勾配(たとえば傾斜角度が20度程度)の傾斜路を下りながら土砂等の投入作業などを行う場合には、ホイールローダ100の自重がホイールローダ100が下がる方向(前進する方向)への走行させようとする力として作用する。そのため、平地よりも制動力を要するためブレーキの踏み込み量が多くなり、平地と同じ条件でクラッチカットオフを行うとクラッチカットオフのタイミングが早過ぎる。そこで、クラッチカットオフのタイミングが平地の場合と略同様にするには、クラッチカットオフを行う条件としてのブレーキ液圧カットオフ閾値Psを第1のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps1よりも大きな値とする必要がある。
【0044】
上述のように、クラッチカットオフ作動段階切り替えスイッチ36が第2段階に設定されている場合には、クラッチカットオフ作動段階切り替えスイッチ36が第1段階に設定されている場合と比べて、クラッチカットオフのタイミングが遅れるように(クラッチカットオフが行われ難くなるように)接近判定条件を定めている。そこで、急勾配の傾斜路を下る場合には、オペレータがクラッチカットオフ作動段階切り替えスイッチ36を第2段階に設定すればよく、これにより、クラッチカットオフのタイミングを平地におけるクラッチカットオフのタイミングに近づけることができる。
【0045】
−−−フローチャート−−−
図7は、本実施の形態のホイールローダ100におけるクラッチ制御処理の動作を示したフローチャートである。ホイールローダ100の不図示のイグニッションスイッチがオンされると、図7に示す処理を行うプログラムが起動され、コントローラ10で繰り返し実行される。ステップS1において、圧力センサ33で検出されたブレーキ液圧Plbの情報、および、回転数検出器14,15で検出されたトルコン2の入力軸21の回転数Niおよび出力軸22の回転数Ntの情報を取得して、ステップS3へ進む。ステップS3において、クラッチカットオフをするようにクラッチカットオフ選択スイッチ9が選択されているか否かを判断する。
【0046】
ステップS3が肯定判断されると、すなわち、クラッチカットオフをするようにクラッチカットオフ選択スイッチ9が選択されていると判断されるとステップS5へ進み、クラッチカットオフ作動段階切り替えスイッチ36が第1段階に設定されているか否かを判断する。ステップS5が肯定判断されると、すなわち、クラッチカットオフ作動段階切り替えスイッチ36が第1段階に設定されていると判断されるとステップS7へ進み、ステップS1で取得したブレーキ液圧Plbが第2のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps2以上であるか否かを判断する。ステップS7が否定判断されるとステップS9へ進み、ステップS1で取得したブレーキ液圧Plbが第1のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps1以上であるか否かを判断する。
【0047】
ステップS9が肯定判断されるとステップS11へ進み、ステップS1で取得したトルコン2の入力軸21の回転数Niおよび出力軸22の回転数Ntからトルコン速度比eを算出し、算出したトルコン速度比eが第1の閾値es1以下であるか否かを判断する。ステップS11が肯定判断されるとステップS13へ進み、上述したカットオフ信号をトランスミッション制御装置20に出力してリターンする。
【0048】
ステップS7が肯定判断されるとステップS13へ進む。
【0049】
ステップS5が否定判断されると、すなわち、クラッチカットオフ作動段階切り替えスイッチ36が第2段階に設定されていると判断されるとステップS17へ進み、ステップS1で取得したブレーキ液圧Plbが第4のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps4以上であるか否かを判断する。ステップS17が否定判断されるとステップS19へ進み、ステップS1で取得したブレーキ液圧Plbが第3のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps3以上であるか否かを判断する。
【0050】
ステップS19が肯定判断されるとステップS21へ進み、ステップS1で取得したトルコン2の入力軸21の回転数Niおよび出力軸22の回転数Ntからトルコン速度比eを算出し、算出したトルコン速度比eが第2の閾値es2以下であるか否かを判断する。ステップS21が肯定判断されるとステップS13へ進む。
【0051】
ステップS17が肯定判断されるとステップS13へ進む。
【0052】
ステップS3が否定判断されるか、ステップS9が否定判断されるか、ステップS11が否定判断されるか、ステップS19が否定判断されるか、ステップS21が否定判断されると、リターンする。
【0053】
本実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1) クラッチカットオフを行うようにクラッチカットオフ選択スイッチ9が選択されている場合に、上述した接近判定条件を満たすと、クラッチカットオフを行うように構成した。これにより、ホイールローダ100の作業状態に応じてクラッチカットオフのタイミングを適切にできるので、ホイールローダ100の動きが滑らかになる。
【0054】
(2) クラッチカットオフ作動段階切り替えスイッチ36が第1段階に設定されている場合には、圧力センサ33で検出したブレーキ液圧Plbが第1のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps1以上となり、かつ、トルコン速度比eが第1の閾値es1以下となったときにクラッチカットオフを行うように構成した。また、クラッチカットオフ作動段階切り替えスイッチ36が第2段階に設定されている場合には、圧力センサ33で検出したブレーキ液圧Plbが第3のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps3以上となり、かつ、トルコン速度比eが第2の閾値es2以下となったときにクラッチカットオフを行うように構成した。これにより、クラッチカットオフを行うタイミングをブレーキの作動状態だけではなく、ホイールローダ100の走行状態等も含めて判断するので、ホイールローダ100の走行状態等が変化してもクラッチカットオフのタイミングを適切にでき、ホイールローダ100の動きが滑らかになる。
【0055】
(3) クラッチカットオフ作動段階切り替えスイッチ36が第1段階に設定されている場合には、トルコン速度比eに関わらず、圧力センサ33で検出したブレーキ液圧Plbが第2のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps2以上となったときにクラッチカットオフを行うように構成した。また、クラッチカットオフ作動段階切り替えスイッチ36が第2段階に設定されている場合には、トルコン速度比eに関わらず、圧力センサ33で検出したブレーキ液圧Plbが第4のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps4以上となったときクラッチカットオフを行うように構成した。これにより、たとえば、ダンプトラックに土砂等を積み込む作業などを行う場合に、ホイールローダ100を完全に停止させるべく強めにブレーキが掛けられると、ホイールローダ100の走行状態(トルコン速度比e)に関わらずクラッチカットオフが行われることとなる。したがって、クラッチカットオフをせずに駆動力に抗してホイールローダ100を減速および停止させたときと比べて、ブレーキ部5aに対する負担を減らすことができ、ブレーキ部5aの温度上昇を抑制し、ブレーキ部5aの各部の消耗を抑制できる。
【0056】
(4) クラッチカットオフ作動段階切り替えスイッチ36によって第1段階または第2段階のいずれか一方をオペレータが選択可能に構成した。これにより、作業を行う道路の傾斜等に応じて、クラッチカットオフを行うタイミングをオペレータが適切に設定できる。また、クラッチカットオフ作動段階切り替えスイッチ36による設定の選択肢を第1段階および第2段階の2つにしたことで、選択肢をより多くした場合と比べて、オペレータがどの選択肢を選択すればよいかを考える負担を軽減できるとともに、選択肢の切り替え回数を低減してオペレータの操作負担を軽減できる。
【0057】
−−−変形例−−−
(1) 上述の説明では、接近判定条件として、トルコン速度比eを考慮するようにしているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、トルコン速度比eに代えて、ホイールローダ100の車速を考慮するようにしてもよい。この場合、たとえば、上記条件(a)は、「圧力センサ33で検出したブレーキ液圧Plbが第1のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps1以上となり、かつ、車速が第1の閾値Vs1以下となったとき」としてもよい。また、たとえば、上記条件(c)は、「圧力センサ33で検出したブレーキ液圧Plbが第3のブレーキ液圧カットオフ閾値Ps3以上となり、かつ、車速が第2の閾値Vs2以下となったとき」としてもよい。ここで、たとえば、第1の閾値Vs1を7〜8km/h程度としてもよい。また、たとえば、第2の閾値Vs2を1〜2km/h程度としてもよい。
【0058】
(2) 上述の説明では、接近判定条件として、ブレーキ液圧Plbを考慮するようにしているが、本発明はこれに限定されない。ブレーキ液圧Plbに代えて、たとえばペダル操作量検出器31aで検出したブレーキペダル31の操作量(ペダルストロークまたはペダル角度)や、不図示の検出器で検出するブレーキペダル31の踏み込み力を接近判定条件として考慮するようにしてもよい。すなわち、ブレーキの作動状態(制動力の大きさ)を直接的にもしくは間接的に検出できるパラメータであれば、接近判定条件として考慮するパラメータはブレーキ液圧Plbに限られない。
【0059】
(3) 上述の説明では、クラッチカットオフを行う場合には、前後進用のクラッチ18,19をカットオフするためのカットオフ信号をコントローラ10がトランスミッション制御装置20に出力するように構成しているが、本発明はこれに限定されない。たとえば、クラッチカットオフを行う時点で係合している方のクラッチのみをカットオフするようにカットオフ信号をコントローラ10がトランスミッション制御装置20に出力するように構成してもよい。すなわち、ホイールローダ100が前進しているときにクラッチカットオフを行う場合には、前進用のクラッチ18だけをカットオフするようにカットオフ信号をコントローラ10がトランスミッション制御装置20に出力するように構成してもよい。
【0060】
(4) 上述の説明では、トランスミッション3における選択可能な速度段の段数は4段であったが、本発明はこれに限定されず、3段でもよく、5段以上であってもよい。また上述の説明では、作業車両の一例としてホイールローダ100を例に説明したが、本発明はこれに限定されず、たとえば、フォークリフト等、他の作業車両であってもよい。
(5) 上述した各実施の形態および変形例は、それぞれ組み合わせてもよい。
【0061】
なお、本発明は、上述した実施の形態のものに何ら限定されず、産業車両が接近対象物へ接近したか否かを判断する接近判断手段と、接近判断手段で産業車両が接近対象物へ接近したと判断すると、前進クラッチを解放するように前進クラッチの係合/解放を制御するクラッチ制御手段とを備えることを特徴とする各種構造の産業車両のクラッチ制御装置を含むものである。
【符号の説明】
【0062】
1 エンジン 2 トルクコンバータ
3 トランスミッション 5a ブレーキ部
9 クラッチカットオフ選択スイッチ 10 コントローラ
12 アクセルペダル 16 車速検出器
17 クラッチカットオフ弁 18 前進クラッチ
20 トランスミッション制御装置 31 ブレーキペダル
33 圧力センサ
36 ラッチカットオフ作動段階切り替えスイッチ
100 ホイールローダ 111 アーム
112 バケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業車両が接近対象物へ接近したか否かを判断する接近判断手段と、
前記接近判断手段で前記産業車両が接近対象物へ接近したと判断すると、前進クラッチを解放するように前記前進クラッチの係合/解放を制御するクラッチ制御手段とを備えることを特徴とする産業車両のクラッチ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の産業車両のクラッチ制御装置において、
前記接近判断手段は、トランスミッションにエンジンの動力を伝達するトルクコンバータの速度比が所定の速度比以下および前記産業車両の走行速度が所定の速度以下のいずれかの条件と、前記産業車両の制動力が所定の制動力以上である条件が成立した場合に、前記産業車両が接近対象物へ接近したと判断することを特徴とする産業車両のクラッチ制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の産業車両のクラッチ制御装置において、
前記接近判断手段は、前記産業車両の制動力が、前記接近対象物へ接近する際の前記産業車両の走行駆動力に抗して前記産業車両の走行速度が所定の速度以下となるような所定の制動力以上であると判断した場合に、前記産業車両が接近対象物へ接近したと判断することを特徴とする産業車両のクラッチ制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載の産業車両のクラッチ制御装置において、
前記所定の制動力が第1の制動力であるか、前記第1の制動力より大きな第2の制動力であるのかをユーザに選択させるための選択手段をさらに備え、
前記クラッチ制御手段は、前記選択手段で前記所定の制動力が前記第2の制動力であると選択されると、前記選択手段で前記所定の制動力が前記第1の制動力であると選択された場合と比べて、前進クラッチが解放し難くなるように前記前進クラッチの係合/解放を制御することを特徴とする産業車両のクラッチ制御装置。
【請求項5】
請求項3に記載の産業車両のクラッチ制御装置において、
前記所定の制動力が第3の制動力であるか、前記第3の制動力より大きな第4の制動力であるのかをユーザに選択させるための選択手段をさらに備え、
前記クラッチ制御手段は、前記選択手段で前記所定の制動力が前記第4の制動力であると選択されると、前記選択手段で前記所定の制動力が前記第2の制動力であると選択された場合と比べて、前進クラッチが解放し難くなるように前記前進クラッチの係合/解放を制御することを特徴とする産業車両のクラッチ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−1986(P2011−1986A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144092(P2009−144092)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】