説明

田植機における苗載台の支持装置

【課題】田植機における支持フレーム11に横方向に延びるように取付けた下部レール18に,苗載台15の裏面下部に取付けた断面下向きコ字状の下部シュー部材17を嵌める一方,前記支持フレームに設けた上部シュー部材21を,前記苗載台の裏面上部に取付けた断面下向きコ字状のガイドレール19内に嵌めて成る苗載台の支持装置において,前記下部シュー部材に対するメンテナンスの容易化を図る。
【解決手段】前記上部シュー部材21を,前記支持フレーム11に設けた昇降機構にて上下動する構成にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,田植機において,その苗載台を,機体に対して左右へ横移動可能に支持する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,田植機における苗載台の支持装置は,例えば,特許文献1等に記載されているように,苗載台の裏面の下部に断面下向きコ字状に形成した下部シュー部材を取付ける一方,前記苗載台の裏面の上部に断面下向きコ字状で横方向に延びる構成にしたガイドレールを取付け,前記下部シュー部材を,伝動ケース等の支持フレーム側に取付けた下部レールに,当該下部レールの長手方向に自在に摺動するように被嵌する一方,前記ガイドレール内に,前記支持フレーム側に上向きに突出するように取付けた上部シュー部材を,前記ガイドレールの長手方向に自在に摺動するように挿入することにより,前記苗載台を左右へ横移動可能に支持するという構成にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−041429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来における苗載台の支持装置は,前記した構成であることにより,苗載台の裏面下部に取付けた断面下向きコ字状の下部シュー部材の部分には,前記苗載台における重量の大部分が作用していることにより,この下部シュー部材の部分には,当該下部シュー部材とこれが嵌まる下部レールとの摺動部分における摩擦を低減したり,摺動を円滑にしたりすること等のために,潤滑油(グリース)を補給したり,この摺動部分を清掃したりするメンテナンスを定期的に行なうようにしなければならず,この潤滑油の補給等のメンテナンス,及び部品交換に多大の手数と時間とを必要とするのであった。
【0005】
本発明は,下部シュー部材及び下部レールに対する潤滑油の補給等のメンテナンス及び部品交換が至極容易にできるようにすることを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この技術的課題を達成するため請求項1は,
「田植機における支持フレームに横方向に延びるように取付けた下部レールに沿って、苗載台を摺動自在に案内支持する下部シュー部材と,前記苗載台の裏面上部に取付けたガイドレールに摺動自在に嵌るように,前記支持フレームに設けた上部シュー部材とを備えている苗載台の支持装置において,
前記上部シュー部材を,前記支持フレームに設けたシュー昇降機構にて上下動する構成にした。」
ことを特徴としている。
【0007】
請求項2は,
「前記請求項1の記載において,前記上部シュー部材を,前記ガイドレールの長手方向に沿って適宜間隔で配設した複数個にして,この各上部シュー部材のうち少なくとも二つの上部シュー部材を,前記シュー昇降機構によって上下動する構成にした。」
ことを特徴としている。
【0008】
また,請求項3は,
「前記請求項1又は2の記載において,前記シュー昇降機構を,前記苗載台の前方において圃場面を均す整地機構に対する昇降操作機構に,当該昇降操作機構によって前記上部シュー部材の上下動を行なうように,着脱可能に連結した。」
ことを特徴としている。
【0009】
更にまた,請求項4は,
「前記請求項1〜3のいずれかの記載において,前記シュー昇降機構に,当該シュー昇降機構を上げ操作位置に保持するロック手段を設けた。」
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の記載において,苗植え装置における支持フレーム側に取付く上部シュー部材を,シュー昇降機構にて上げ作動することにより,苗載台の全体が持ち上がり,この苗載台を案内支持する下部シュー部材が,これが嵌まる下部レールから離れることになるから,その間における摺動部分に対する潤滑油(グリース)の補給及び清掃等のメンテナンスが,至極簡単にできるとともに,部品交換も至極簡単にでき,これらに要する手数及び時間を大幅に低減することができる。
【0011】
次に,請求項2によると,苗載台を,複数の上部シュー部材のうち少なくとも二つの上部シュー部材によって,左右への傾きを少なくした状態のもとで持ち上げることができ,これにより,前記複数の上部シュー部材のうち少なくとも二つの上部シュー部材を除く他の上部シュー部材を,これが嵌まるガイドレールから離すことができるから,この他の上部シュー部材に対するメンテナンス及び部品交換も至極簡単に行なうことができる。
【0012】
また,請求項3によると,前記上部シュー部材の上げ作動による前記苗載台を持ち上げを,整地機構に対する昇降操作機構にて行なうことができるから,操作がより簡単になるとともに,部品の一部を共用化できて,コストを低減できる利点がある。
【0013】
更にまた,請求項4によると,前記上部シュー部材の上げ作動にて前記苗載台を持ち上げたときに,この持ち上げた状態を,ロック手段にて保持することができるから,前記メンテナンス及び部品交換等を安全に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】乗用型田植機の側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1における苗植え装置の拡大図である。
【図4】図3のIV−IV視側面図である。
【図5】図4のV−V視拡大断面図である。
【図6】図4のVI−VI視拡大断面図である。
【図7】苗植え装置における上部シュー部材とシュー昇降機構とを示す図である。
【図8】図7の斜視図である。
【図9】図7のIX−IX視断面図である。
【図10】図8及び図9のX−X視断面図である。
【図11】図8及び図9のXI−XI視断面図である。
【図12】苗載台を持ち上げた状態を示す図である。
【図13】図12の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,本発明の実施の形態を,乗用型田植機に適用した場合の図面(図1〜図13)について説明する。
【0016】
これらの図において,符号1は,乗用型田植機を示し,この乗用型田植機1は,走行車体2と,この走行車体2の後部に着脱可能に連結した苗植え装置3(実施形態では8条植え用)とによって構成されている。
【0017】
前記走行車体2は,左右前輪4と,左右後輪5によって支持されており,その全部に搭載したエンジン6により,前記前輪4及び後輪5を駆動するか,或いは後輪5を駆動することによって,前進又は後退走行するように構成されている。
【0018】
前記走行車体2には,操縦座席7及び操縦ハンドル8が設けられているほか,この走行車体2の後部には,走行車体2の平面視で,その前後方向の中心の部位に昇降機構9が設けられ,この昇降機構9の後端におけるヒッチ部材10に,前記苗植え装置3が着脱可能に連結され,この苗植え装置3は,前記昇降機構9にて昇降される構成である。
【0019】
前記苗植え装置3は,その支持フレーム11の一部を構成する伝動ケース12と,その後端に横方向に適宜間隔で設けた複数個(8個)の植付け機構13と,この各植付け機構13の下側に横に並べて設けた複数個のフロート14と,前記支持フレーム11のうち前記伝動ケース14の上側に設けた苗載台15とによって構成されている。
【0020】
前記伝動ケース12は,前記走行車体2におけるエンジン6の動力を第1PTO軸16を介して入力することにより,その各植付け機構13の駆動,及び前記苗載台15の左右方向への横送り駆動等を行なうように構成している。
【0021】
図5に示すように,前記苗載台15の裏面下部には,断面下向きコ字状にした下部シュー部材17を取付けている。この下部シュー部材17は,前記支持フレーム11の一部を構成する伝動ケース12の上面に横方向に延びるように取付けた下部レール18に,その長手方向に自在に摺動するように被嵌されている。下部シュー部材17と下部レール18との摺動自在な嵌合によって,前記苗載台15が横方向に移動可能に支持されている。
【0022】
なお,前記下部シュー部材17は,図5に示すように,アルミ等の金属製の溝型レール17aと,この溝型レール17a内に装填した合成樹脂製のシュー17bとによって構成されている。また,下部レール18には,前記下部シュー部材17が当該下部レール18から外れることを阻止するためのストッパー19が,ボルト20の締結によって,着脱可能に取付けられている。
【0023】
一方,前記苗載台15の上部における裏面には,断面下向きコ字状のガイドレール21を横方向に延びるように取付ける一方,前記支持フレーム11のうち伝動ケース12から前記苗載台15の裏面に沿って立設した門型フレーム22の上端には,複数個(四つ)の上部シュー部材23a,23b,23c,23dを,横方向に適宜間隔で取付けて,この各上部シュー部材23a,23b,23c,23dを,前記ガイドレール21内に,当該ガイドレール21の長手方向に自在に摺動するように挿入して嵌めることによって,前記苗載台15における上部を,横方向に移動可能に支持している。
【0024】
また,前記苗植え装置3には,当該苗植え装置3と前記走行車体2における後輪5との間の部位には,圃場面を均すようにした回転ローラ式の整地機構24が取付けられおり,この回転ローラ式の整地機構24は,前記走行車体2におけるエンジン6の動力を第2PTO軸25を介して入力することにより,回転駆動される構成である。
【0025】
更に,前記整地機構24は,前記支持フレーム11のうち門型フレーム22における高さ方向の略中程部に軸支した横軸26から後ろ向きに突出する複数のアーム27に,リンク杆28を介して吊設されており,前記横軸26を,昇降操作レバー29にて回動することにより,圃場面に対して昇降するように構成されている。
【0026】
つまり,前記横軸26,アーム27,リンク杆28及び昇降操作レバー29等により,整地機構24に対する昇降操作機構30を構成しており,この昇降操作機構30における昇降操作レバー29は,複数個のノッチを有する位置保持部材31によって,前記整地機構24を圃場面に対して所定の高さ位置にしたとき,その操作位置に係脱可能に保持するように構成されている。
【0027】
そして,前記複数個の上部シュー部材23a,23b,23c,23dのうち左右両側に位置する二つの上部シュー部材23a,23dは,前記門型フレーム22に上下動しないように取付けられているが,この上部シュー部材23a,23dの間に位置する少なくとも二つの中央の上部シュー部材23b,23cは,前記門型フレーム22に,その各々におけるシュー昇降機構32によって,前記苗載台15の裏面に沿って上下動するように取付けられている。
【0028】
このシュー昇降機構32は,図6〜図11に示すように構成されている。
【0029】
すなわち,前記シュー昇降機構32は,前記門型フレーム22に溶接等にて固着した平面視コ字状の固定ブラケット33と,前記中央の上部シュー部材23b,23cが取付けられる可動ブラケット34と,前記固定ブラケット33に枢着ピン36にて回動自在に枢着される操作レバー35とを備え,前記可動ブラケット34は,前記固定ブラケット33の内部に,上下一対のボルト37a,37bにて締結されている。
【0030】
この場合,前記一対のボルト37a,37bのうち下部のボルト37bは,前記可動ブラケット34に前記苗載台15と略平行に延びるように穿設した長溝ボルト孔38に嵌まっている一方,前記操作レバー35における枢着ピン36は,前記可動ブラケット34に前記長溝ボルト孔38と平行に延びるように穿設したガイド溝孔39に嵌まっており,前記上部のボルト37aを取り外す一方,前記下部のボルト37bを緩めるか取り外した状態にし,更に,前記下部シュー部材17に対するストッパー19のボルト20を,図5に二点鎖線で示すように,緩めるか,取り外すことにより,前記可動ブラケット34が,前記長溝ボルト孔38と前記ガイド溝孔39とのガイド作用にして,苗載台15に沿って上下動するように構成されている。
【0031】
これに加えて,前記操作レバー35の先端を,前記可動ブラケット34に対して,連結用ボルト40にて,着脱自在に連結することにより,前記操作レバー35の回動操作にて,前記可動ブラケット34を上下動するように構成している。
【0032】
つまり,前記上部のボルト37aを取り外す一方,前記下部のボルト37bを緩めるか取り外し,前記ストッパー19のボルト20を緩めるか取り外した状態にして,前記操作レバー35を回動することにより,前記苗載台15の上部を支持する複数個の上部シュー部材23a,23b,23c,23dのうち中央に位置する少なくとも二つの上部シュー部材23b,23cが上昇動するという構成になっている。
【0033】
前記操作レバー35の下向きへの回動より,前記苗載台15の全体が,前記中央に位置する二つの上部シュー部材23b,23cにて左右に大きく傾くことがないように支持された状態で,図12及び図13に示すように,持ち上げられることになる。
【0034】
この苗載台15の全体における持ち上げにより,その下部における下部シュー部材17が,これが被嵌する下部レール18から離れることになるから,その間における摺動部分に対する潤滑油(グリース)の補給及び清掃できるとともに,部品交換もできる。
【0035】
これと同時に,前記複数個の上部シュー部材23a,23b,23c,23dのうち左右両側に位置する上部シュー部材23a,23dが,これが嵌まるガイドレール21から離れることになるから,前記左右両側に位置する上部シュー部材23a,23dに対するメンテナンス及び部品交換も行なうことができる。
【0036】
また,前記操作レバー35と,前記固定ブラケット33との間には,シュー昇降機構32を上げ操作位置に保持するロック手段が設けられている。
【0037】
すなわち,前記操作レバー35の下向きへの回動にて前記苗載台15を持ち上げした状態では,前記操作レバー35におけるロックピン孔41が,前記固定ブラケット33におけるロックピン孔42に一致し,これのロックピン孔41,42に跨がってロックピン43を挿入することにより,前記苗載台15を持ち上げた状態を保持するように構成している。
【0038】
前記した各種の作業が終わると,前記操作レバー35を,ロックピン43を引き抜いたのち下向きに回動することにより,中央に位置する上部シュー部材23b,23cが,下降動するから,これにより前記苗載台15をもとの位置に戻すことができ,以後は,前記一対のボルト37a,37bを締結し,前記ストッパー19のボルト20を締結することにより,所定の作業が完了する。
【0039】
次に,本実施の形態においては,前記シュー昇降機構32における操作レバー35を,前記整地機構24における昇降操作機構30に,連動リンク44及び着脱自在なピン45を介して,着脱可能に連結するという構成にしている。
【0040】
すなわち,前記整地機構24のみを,その昇降操作機構30における昇降操作レバー29にて昇降動するときには,前記シュー昇降機構32における操作レバー35と,前記連動リンク44とを連結するピン45を取り外している。
【0041】
これに対し,前記シュー昇降機構32における操作レバー35と,前記連動リンク44とをピン45にて連結した状態にすることにより,前記シュー昇降機構32における操作レバー35による苗載台15の持ち上げ操作を,前記整地機構24に対する昇降操作機構30における昇降操作レバー29にて行なうことができる。
【0042】
なお,前記した実施の形態は,前記複数個の上部シュー部材23a,23b,23c,23dのうち中央に位置する二つの23b,23cを,前記シュー昇降機構32にて上げ作動する場合であったが,本発明は,これに限らず,前記複数個の上部シュー部材23a,23b,23c,23dのうち左右両側に位置する二つの23a,23dを,シュー昇降機構32にて上げ作動するか,或いは,前記複数個の上部シュー部材23a,23b,23c,23dのうち任意の二つを,シュー昇降機構32にて上げ作動するという構成にすることができる。
【0043】
また,上げ作動可能な上部シュー部材は,苗載台15の左右幅中央(重心とも言える)を支持する構造であれば,1つだけであっても差し支えない。更に,前記シュー昇降機構32も,前記実施の形態の構成に限らず,他の構成にすることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 乗用型田植機
2 走行車体
3 苗植え装置
11 苗植え装置の支持フレーム
13 植付け機構
14 フロート
15 苗載台
17 下部シュー部材
18 下部レール
21 上部のガイドレール
23a〜23d 上部シュー部材
24 整地機構
29 整地機構の昇降操作レバー
30 整地機構の昇降操作機構
32 シュー昇降機構
35 シュー昇降機構の操作レバー
43 ロックピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
田植機における支持フレームに横方向に延びるように取付けた下部レールに沿って、苗載台を摺動自在に案内支持する下部シュー部材と,前記苗載台の裏面上部に取付けたガイドレールに摺動自在に嵌るように,前記支持フレームに設けた上部シュー部材とを備えている苗載台の支持装置において,
前記上部シュー部材を,前記支持フレームに設けたシュー昇降機構にて上下動する構成にしたことを特徴とする田植機における苗載台の支持装置。
【請求項2】
前記請求項1の記載において,前記上部シュー部材を,前記ガイドレールの長手方向に沿って適宜間隔で配設した複数個にして,この各上部シュー部材のうち少なくとも二つの上部シュー部材を,前記シュー昇降機構によって上下動する構成にしたことを特徴とする田植機における苗載台の支持装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2の記載において,前記シュー昇降機構を,前記苗載台の前方において圃場面を均す整地機構に対する昇降操作機構に,当該昇降操作機構によって前記上部シュー部材の上下動を行なうように,着脱可能に連結したことを特徴とする田植機における苗載台の支持装置。
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずれかの記載において,前記シュー昇降機構に,当該シュー昇降機構を上げ操作位置に保持するロック手段を設けたことを特徴とする田植機における苗載台の支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−105596(P2012−105596A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257615(P2010−257615)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】