説明

田植機の苗のせ台支持構造

【課題】 乗用型田植機の苗のせ台支持構造において、田植機の苗のせ台支持構造において、苗のせ台下端部のメンテナンス作業が行い易くなる状態を確保しながら、構造の簡素化、人為作業の負担軽減、製造上の負担軽減を図る。
【解決手段】 苗のせ台12を、摺動レール27にその摺動レール27に沿って移動可能に支持する作業姿勢と、苗のせ台12の苗のせ面に沿って移動させて摺動レール27から上方に離れる非作業姿勢とに切換可能な苗のせ台退避操作機構Bを備える。苗のせ台12と摺動レール27とを一体で植付爪10Aの軌跡に対して遠近方向に移動調節させて苗取量を調節する苗取量調節機構Aを設ける。苗取量調節機構Aの一部を苗のせ台退避操作機構Bに組み込んである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機における苗のせ台の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、苗のせ台の上端部を植付駆動ケース(特許文献の16)から立設する苗のせ台フレーム(特許文献の19)の上端で支持するとともに、苗のせ台の下端部を植付ケースに取り付けたブラケットに支持された摺動レールとしてのガイドレール(特許文献では18)で支持して、苗のせ台を左右往復移動する作業姿勢に設定する。作業姿勢では、ガイドレールの端部と苗のせ台の下端部をロック部材でロックすることによって、その姿勢を維持させている。
そして、ロック部材のロック状態を解除し、苗のせ台フレームの上端に設けた揺動軸芯(特許文献P)回りで苗のせ台の下端部を後方上方に向けて揺動させ非作業姿勢に切り換える構成を採っていた。これにより、非作業姿勢では、苗のせ台の下端部に対するメンテナンス作業が容易に行えるものであった。
【0003】
【特許文献1】特開2006−94744号公報(段落番号〔0044〕〔0045〕図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の場合には、苗のせ台を揺動可能に支持するためには、元来ある往復横移動構造に加えて、更に、苗のせ台フレームに対して揺動軸芯(特許文献P)回りで揺動させる構成を、過重した状態で形成する必要があり、構造上の負担が大きなものとなっていた。
また、苗のせ台を非作業姿勢に切り換えるには、作業者自身の操作力によって行う必要があり、適当な操作具を導入することも困難なものであるところから、人為的負担が大きくなることもあった。
【0005】
本発明は田植機の苗のせ台支持構造において、苗のせ台下端部のメンテナンス作業が行い易くなる状態を確保しながら、構造の簡素化、人為作業の負担軽減、製造上の負担軽減を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成)
本発明の第1特徴は、乗用型田植機の苗のせ台支持構造において次のように構成することにある。
苗のせ台を、摺動レールにその摺動レールに沿って移動可能に支持する作業姿勢と、前記苗のせ台の苗のせ面に沿って移動させて前記摺動レールから上方に離れる非作業姿勢とに切換可能な苗のせ台退避操作機構を備えてある。
【0007】
(作用)
本発明の第1特徴によると、苗のせ台を、その苗のせ台の苗のせ面に沿って移動させて非作業姿勢に切り換えるので、苗のせ台を揺動させる必要はなく、そのことによって、揺動軸芯を新たに設けて揺動可能な構造を採る必要はない。
特許文献1のように、苗のせ台の下端部を後方上方に向けて揺動させる構造であると、苗のせ台を非作業姿勢に移動させた際に苗のせ台の下端部が後方に移動するので、苗植付
装置の後方から作業を行う場合に苗のせ台の下端部が作業の妨げになることがある。本発明の第1特徴によると、苗のせ台の苗のせ面に沿って苗のせ台を上方に移動させることにより、苗のせ台を非作業姿勢に移動させるので、苗のせ台の下端部が後方に移動することはなく、苗植付装置の後方から作業を行う場合に苗のせ台の下端部が作業の妨げになることはない。
【0008】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、乗用型田植機の苗のせ台支持構造において、苗のせ台下端部のメンテナンス作業が行い易くなる状態を確保しながら、揺動構造の導入を回避して構造の簡素化を図ることができた。
【0009】
(構成)
本発明の第2特徴は、苗のせ台を、摺動レールにその摺動レールに沿って移動可能に支持する作業姿勢と、前記苗のせ台の苗のせ面に沿って移動させて前記摺動レールから上方に離れる非作業姿勢とに切換可能な苗のせ台退避操作機構を備えるとともに、前記苗のせ台と前記摺動レールとを一体で植付爪の軌跡に対して遠近方向に移動調節させて苗取量を調節する苗取量調節機構を設け、前記苗取量調節機構の一部を前記苗のせ台退避操作機構に組み込んであることにある。
【0010】
(作用効果)
本発明第2特徴によると、苗のせ台を、その苗のせ台の苗のせ面に沿って移動させて非作業姿勢に切り換えるので、苗のせ台を揺動させる必要はなく、そのことによって、揺動軸芯を新たに設けて揺動可能な構造を採る必要はない。
特許文献1のように、苗のせ台の下端部を後方上方に向けて揺動させる構造であると、苗のせ台を非作業姿勢に移動させた際に苗のせ台の下端部が後方に移動するので、苗植付
装置の後方から作業を行う場合に苗のせ台の下端部が作業の妨げになることがある。本発明の第2特徴によると、苗のせ台の苗のせ面に沿って苗のせ台を上方に移動させることにより、苗のせ台を非作業姿勢に移動させるので、苗のせ台の下端部が後方に移動することはなく、苗植付装置の後方から作業を行う場合に苗のせ台の下端部が作業の妨げになることはない。

本発明の第2特徴によれば、苗取量調節機構と苗のせ台退避操作機構とは共に、苗のせ台を苗のせ面に沿った状態で移動させるものであるので、苗のせ台を支持する機構や苗のせ面に沿って移動させる機構の兼用化が可能である。その兼用化によって、機器構成の簡素化が図れる。
しかも、苗取量調節機構と同様に、苗のせ台退避操作機構においても、苗のせ台を苗のせ面に沿って移動させるものであるので、苗取量調節機構で採用していた構造を、苗のせ台退避操作機構においても踏襲することができ、それだけ、新たな機構を導入する必要はなく、それだけ、機器構成を簡素なものとできる。
例えば、苗取量調節機構の操作具(レバー等)を操作すれば苗のせ台を非作業姿勢に移動させるように構成することが可能なので、作業者が苗のせ台を直接に手で持って移動させなくてもよいようにすることが可能となる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に示すように、前輪1及び後輪2で支持された機体の前部に、エンジン3及びミッションケース4が備えられ、機体の後部に四連リンク式のリンク機構6が油圧シリンダ14により昇降駆動自在に支持されており、リンク機構6に苗植付装置7が支持されて、乗用型田植機が構成されている。
【0012】
図1及び図2に示すように、苗植付装置7は6条植型式に構成されており、1個のフィードケース15、3個の伝動ケース8、伝動ケース8の右及び左側に回転駆動自在に支持された回転ケース9、回転ケース9の両端に支持された一対の植付アーム10、接地フロート11、6組の苗のせ面12aを備えた苗のせ台12、苗のせ台12に載置された苗を摺動レール27の苗取り出し口27e(図3及び図4参照)に送る縦送り機構13等を備えている。リンク機構6の後部の下部にフィードケース15が前後軸芯周りにローリング自在に支持されて、エンジン3の動力が植付クラッチ(図示せず)及びPTO軸18を介してフィードケース15に伝達されている。フィードケース15に横向きの支持フレーム16が固定されており、支持フレーム16に3個の伝動ケース8が後向きに片持ち状に固定されて、フィードケース15と3個の伝動ケース8に亘って伝動軸17が接続されている。
【0013】
これにより、図1及び図2に示すように、エンジン3の動力がPTO軸18からフィードケース15に伝達されて、苗のせ台12が往復横送り駆動されるのであり、エンジン3の動力が伝動軸17、伝動ケース8、伝動ケース8の内部に配置された伝動チェーン(図示せず)を介して回転ケース9に伝達され、回転ケース9が回転駆動されて、摺動レール27の苗取り出し口27e(図3及び図4参照)から植付アーム10が交互に苗を取り出して田面に植え付ける。
【0014】
図1に示すように、2つの植付条に対応した3個の繰り出し部19が運転座席5の後側に固定されており、透明樹脂製で肥料を貯留するホッパー20が3個の繰り出し部19に亘って固定されている。植付アーム10によって植え付けられた苗(植付条)の横側に溝を形成する作溝器21が、植付条の各々に対応して6個用意されて接地フロート11に固定されており、2個の作溝器21と1個の繰り出し部19とがホース22を介して接続されている。運転座席5の下側にブロア23が備えられ、ブロア23か繰り出し部19に沿って左右にパイプ(図示せず)が延出されており、繰り出し部19においてホース22が接続される部分とは反対側に送風口(図示せず)が形成されて、繰り出し部19の送風口がパイプに挿入されている。
【0015】
これにより、苗のせ台12が往復横送り駆動されるのに伴って、回転ケース9が回転駆動されて、摺動レール27の苗取り出し口27e(図3及び図4参照)から植付アーム10に取り付けた植付爪10Aが交互に苗を取り出して田面に植え付け、これと同時にホッパー20の肥料が繰り出し部19から所定量ずつ繰り出される。ブロア23からの高圧の風がホース22に供給されており、高圧の風により肥料がホース22を通って作溝器21に供給され、作溝器21により田面に形成された溝に肥料が送り込まれる。
【0016】
次に、苗のせ台12の往復横送り駆動構造及び縦送り機構13の駆動構造について説明する。
図2,3,8に示すように、伝動ケース8に亘って左右方向に摺動レール27が支持され、苗のせ台12の下部が摺動レール27に沿って往復横移動自在に支持されている。支持フレーム16の右及び左側部から上方に右及び左の支持フレーム28が延出されて、右及び左の支持フレーム28の上部に亘って支持フレーム29が取り付けられている。支持フレーム29の複数箇所に固定されたロッド30に、ローラー31が上下向き軸芯周りに回転自在に支持され、断面コ字状の支持フレーム32が苗のせ台12の上部の裏面に沿って固定されており、ローラー31が支持フレーム32の内側に挿入されている。これにより、苗のせ台12が摺動レール27及びローラー31に沿って往復横移動自在に支持されている。
【0017】
図2,3,8に示すように、フィードケース15から螺旋軸33が延出され、螺旋軸33の端部が支持ブラケット35を介して支持フレーム16に回転自在に支持されており、螺旋軸33に送り部材34が外嵌されている。苗のせ台12の上下中央付近の裏面に苗のせ台12の全幅に亘って支持フレーム36が固定されており(図3参照)、支持フレーム36に固定された連結部材37と送り部材34とが、接続部材38及びボルト39を介して接続されている。これにより、フィードケース15の動力によって螺旋軸33が回転駆動されて、送り部材34が螺旋軸33に沿って往復横送り駆動されるのであり、苗のせ台12が摺動レール27及びローラー31に沿って往復横送り駆動される。
【0018】
図2、図3及び図9に示すように、縦送り機構13は幅広の送りベルトを回転駆動するように構成されており、苗のせ台12の苗のせ面12aの各々に備えられている。縦送り機構13の下部に亘って1本の駆動軸40が架設され、苗のせ台12の裏面の4箇所に固定された支持部材41によって駆動軸40が回転自在に支持されており、駆動軸40の所定箇所に入力アーム40aがワンウェイクラッチ(図示せず)を介して外嵌されている。図2に示すように、フィードケース15から縦送り軸43が延出され、縦送り軸43の端部が支持ブラケット42を介して支持フレーム16に回転自在に支持されており、縦送り軸43に2個の駆動アーム43aが固定されている。縦送り軸43の2個の駆動アーム43aの間に駆動軸40の入力アーム40aが位置しており、フィードケース15の動力によって縦送り軸43が回転駆動されている。
【0019】
これにより、図2,3,8に示すように、苗のせ台12が摺動レール27及びローラー31に沿って往復横送り駆動されて、往復横送り駆動のストロークエンドに達すると、駆動軸40の入力アーム40aが縦送り軸43の一方の駆動アーム43aの位置に達して、駆動軸40の入力アーム40aが縦送り軸43の一方の駆動アーム43aにより所定角度だけ回転駆動され、縦送り機構13が所定量だけ回転駆動されて、苗のせ台12に載置された苗が摺動レール27の苗取り出し口27eに送られる。
【0020】
次に、摺動レール27の付近の構造について説明する。
図4〜図6に示すように、伝動ケース8の横側面に固定されたブラケット24に、支持ロッド25が上下スライド自在に支持され、支持ロッド25の上部にコ字状の係合部25aが固定されている。伝動ケース8の横軸芯P1周りに上下揺動及び固定自在な支持アーム26が支持ロッド25の係合部25aに係合しており、支持アーム26により支持ロッド25の位置が決められている。
【0021】
図13及び図14に示すように、アルミの引き抜き材で構成された摺動レール27が備えられており、断面四角形状のパイプ部27a、パイプ部27aから延出されて摺動レール27の全長に亘って形成された受け部27b、パイプ部27aの苗のせ台12側の上部に摺動レール27の全長に亘って形成された段部27c、パイプ部27aの苗のせ台12の反対側の上部に摺動レール27の全長に亘って形成されたリブ27d、受け部27bの6箇所に形成された切欠き状の苗取り出し口27e等を備えて、摺動レール27が構成されている。
【0022】
図4,13,14に示すように、断面T字状の連結部材44が苗のせ台12の下部の裏面に苗のせ台12の全幅に亘って固定されており、連結部材44の4箇所の下面及び上面に、摺動部材45及び係合部材46が以下のように固定されている。摺動部材45は基板部45a、縦壁部45b、2個のボルト孔45c及び1個の係合突起45d等を備えて、合成樹脂により一体的に構成されている。係合部材46は合成樹脂により断面L字状に構成されており、切欠き部46a及び切欠き部46aの周囲の浅い凹部46bを備えて構成されている。
【0023】
図13及び図14に示すように、連結部材44の開口部44aに摺動部材45の係合突起45dが挿入されて、摺動部材45が連結部材44の4箇所の下面に取り付けられ、摺動部材45の一方のボルト孔45cにボルト47が下側から挿入されて、連結部材44の開口部44bにボルト47が下側から挿入されている。支持部材41から下方に延出部41bが延出されて直角に折り曲げられており、支持部材41の延出部41bの開口部41cが連結部材44の開口部44bに位置するように、支持部材41の延出部41bが連結部材44の上面に乗せ付けられ、ボルト47が支持部材41の開口部41cに下側から挿入されている。
【0024】
図13及び図14に示すように、摺動レール27の全長に亘るもので対磨耗性の高い金属製の摺動プレート59が用意されており、摺動プレート59が摺動レール27のパイプ部27aの上面にビス60によって固定されている。摺動部材45の基板部45aが摺動レール27のパイプ部27a(摺動プレート59)に乗せ付けられた状態で、係合部材46の切欠き部46aにボルト47が挿入されて、係合部材46が連結部材44の上面に取り付けられており、ナット48がボルト47に締め付けられて、摺動部材45及び係合部材46、支持部材41の延出部41bが連結部材44に固定されている。この場合、ナット48をボルト47に締め付けると、係合部材46の凹部46bにナット48が入り込むことになるので、ナット48が少し緩んでも、係合部材46の凹部46bがナット48に引っ掛かるので、係合部材46が簡単に脱落するようなことがない。
【0025】
この状態で図13及び図14に示すように、摺動部材45の基板部45aが摺動レール27のパイプ部27a(摺動プレート59)に乗せ付けられて、摺動部材45の基板部45aが摺動レール27のリブ27dに接当し(又は摺動レール27のリブ27dから少し離れ)、摺動部材45の縦壁部45bが摺動レール27の段部27cに接当している。係合部材46が摺動レール27のリブ27dの横面部及び下端部に接当している。これにより、摺動部材45及び係合部材46が摺動レール27に沿って摺動することによって、苗のせ台12の下部が摺動部材45を介して摺動レール27に往復移動自在に支持されるのであり、摺動レール27に対して苗のせ台12の下部(摺動部材45及び係合部材46)が図12の紙面上方、紙面右方及び左方に移動する状態が防止される。
【0026】
次に、隣接する摺動部材45の間の空間を埋める空間部材49について説明する。
図9に示すように、摺動部材45の長さは摺動レール27に比べて短いので、隣接する摺動部材45の間において摺動レール27のパイプ部27a(摺動プレート59)と連結部材44との間に空間が生じており、この空間が図10の紙面斜め左下方に向いている。図9,10,14に示すように、スポンジ材で構成された空間部材49が用意されており、隣接する摺動部材45の間の空間を埋めるように(隣接する摺動部材45に亘るように)、連結部材44の下面に空間部材49が連結クリップ50により固定されている。この状態で、空間部材49の両端部が隣接する摺動部材45の端部の近接する状態となっており、空間部材49の下面が摺動レール27のパイプ部27a(摺動プレート59)の上面に略接する状態となっている。
【0027】
図9,10,12に示すように、空間部材49の略中央の位置(苗のせ台12において、隣接する苗のせ面12aの間に位置する仕切り部12b)において、筒状のプラグ部材51が連結部材44の開口部(図示せず)に下側から挿入されており、プラグ部材51の下端部に空間部材49の上面が押し付けられている。苗のせ台12の苗のせ面12a側において、苗のせ台12の仕切り部12bに筒状のプラグ部材52(注入口に相当)が固定されており、プラグ部材51,52に亘ってホース53(供給路に相当)が接続されている。
【0028】
図9〜図12に示すように、通常ではプラグ部材52にゴムキャップ61が取り付けられて、プラグ部材52が塞がれている。このゴムキャップ61は、帯状の固定ベルト部61Aを一体形成してあり、上方に設けた固定用ナット62にビス63を介して固定ベルト61Aの端部に形成した留め付け部61Bを留め付けることによって、ゴムキャップ61をプラグ部材52より取外した場合にも、ゴムキャップ61を何処に仕舞うかという点に苦慮することはなく、その仕舞いに困ることはない。
【0029】
以上のような構成において、ゴムキャップ61を取り外すことにより、苗のせ台12の苗のせ面12a側からプラグ部材52に潤滑油(潤滑剤に相当)を供給することができるのであり、潤滑油はホース53及びプラグ部材51を介して空間部材49に供給されて、潤滑油が空間部材49におけるプラグ部材51の付近の部分に含浸される(染み込んで保持される)。
【0030】
これにより、図9,10に示すように、苗のせ台12が摺動レール27に沿って往復横移動することにより、空間部材49におけるプラグ部材51の付近の部分に含浸された潤滑油が、摺動レール27のパイプ部27a(摺動プレート59)に塗布される状態となる。これと同時に苗のせ台12が摺動レール27に沿って往復横移動することにより、潤滑油が塗布された範囲に摺動部材45が達して(潤滑油が塗布された範囲に、摺動部材45の往復横移動の範囲が重複して)、摺動部材45にも潤滑油が塗布され、摺動部材45(基板部45a)と摺動レール27(パイプ部27a)(摺動プレート59)との間の摺接面に潤滑油が入り込む状態となる。
【0031】
苗取量調節機構Aについて説明する。
苗取り量調節レバー54が苗植付装置7に備えられており、図4〜図7に示すように、苗取り量調節レバー54により、支持アーム26の姿勢を横軸芯P1周りに変更して固定することができるのであり、支持アーム26の姿勢を横軸芯P1周りに変更することにより、支持ロッド25及び摺動レール27、苗のせ台12の位置を上下方向に変更することができる。このように摺動レール27の位置を上下方向に変更することによって、植付アーム10の通過軌跡に対する摺動レール27の苗取り出し口27eの位置を上下方向に変更して、植付アーム10が取り出す苗の量を変更することができる。
【0032】
次に、摺動部材45を介して苗のせ台12を摺動レール27に往復横移動自在に支持した作業姿勢、及び苗のせ台12の下部及び摺動部材45を摺動レール27から後方上方に移動させた非作業姿勢に、苗のせ台12を変更する苗のせ台退避操作機構Bの構造について説明する。
【0033】
苗のせ台退避操作機構Bは、苗取量調節機構Aを構成する部材が兼用されている。つまり、図7に示すように、苗取り量調節レバー54を苗取量調節範囲(植付爪の回転軌跡)を越えて、苗のせ台12を持ち上げ操作することによって、苗のせ台12及び摺動レール27を非作業姿勢に切り換えることができる。
【0034】
図4及び図7に示すように、苗取量調節レバー54に対しては、板状の苗取量レバーガイド70が設けてあり、苗取量レバーガイド70には、苗取量調節範囲を設定するための、係合溝70aが複数個設けてある。そして、苗取量レバーガイド70のガイド溝は、非作業姿勢に対応したメンテナンス位置まで延長されて設けてあり、メンテナンス位置に対応して係合溝70bが形成されている。
【0035】
次に、苗のせ台12を非作業姿勢に維持する構成について説明する。図4〜図6に示すように、苗のせ台12を非作業姿勢に維持する支持ロッド58を設ける。支持ロッド58は、単一のロッドの両端部を屈曲形成された、チャンネル状を呈している。支持ロッド58の両屈曲部の下方に位置する下端屈曲部を、縦送り駆動軸40を苗のせ台12の両側端で支持する支持部材41,41に揺動自在に支持している。一方、上方に位置する上端屈曲部を、支持部材41の上方で苗のせ台12の裏面左右端に亘って架設固定されている支持フレーム36に挟み込みブラケット55を設け、その挟み込みブラケット55に着脱自在に取り付けている。したがって、支持ロッド58は、挟み込みブラケット55の挾持力に抗して取外すと、下端屈曲部を中心にして上下に揺動可能である。
支持ロッド58の中間位置には板状のブラケット58aが張出し固定してあり、後記するボルト64によって、支持ロッド58を取付固定する場合に機能するように設けられている。
【0036】
一方、図4〜図6に示すように、支持フレーム16の左右両端から摺動レール27の両側端を保護するために、丸棒状の保護フレーム65が後向きに延出されている。保護フレーム65に対して支持ロッド58を固定するための固定ブラケット57が取り付け固定されている。固定ブラケット57には、支持ロッド58の上端屈曲部を受け止める為の挟み込みブラケット56と取り付け固定用のボルト64が設けてある。
【0037】
以上のような構成によって、苗取調節レバー54によって、苗のせ台12、及び、摺動レール27をメンテナンス位置70bまで持上げて非作業姿勢に切り換えた後、支持ロッド58の上端屈曲部を挟み込みブラケット55より取外し、固定ブラケット57の挟み込みブラケット56に挟み込み保持させるとともに、ボルト64で板状のブラケット58aを止付けて、支持ロッド58を固定する。
支持ロッド58を固定することによって、この支持ロッド58で苗のせ台12は非作業姿勢に保持される。
【0038】
この保持姿勢を確立した後には、図6に示すように、係合部材46を取り外して、苗のせ台12と摺動レール27との連係を解除し、苗取量調節レバー54を苗取量調節範囲まで戻すことによって、摺動レール27を苗のせ台12から離間した下方所定位置に戻すことができる。この操作によって、摺動部材45等に対するメンテナンス作業が可能になる。
【0039】
一方、図4及び図8に示すように、苗のせ台12の横送り駆動構造として、苗のせ台12の裏面に取付られている連結部材37と螺旋軸33に取り付けられている接続部材38とをボルト39を介して連結して構成している。連結部材37に対してボルト39を挿通する孔を形成する際に、上下向きに長い長孔37aに形成する。長孔37aの形成によって、苗取量調節レバー54で苗のせ台12を持上げ操作しても、連結部材37は、持ち上がることのない螺旋軸33との連係を維持しながら、苗のせ台2とともに持ち上がる。
【0040】
連結部材37と同様に、苗のせ台12の裏面に取り付けられている支持フレーム32については、苗のせ台12の移動量だけローラ31に被嵌する上下長さを長くして、苗のせ台12が上方に移動しても、ローラ31に被嵌する状態を維持するように構成する。
【0041】
次に、延長苗のせ台67の構造について設明する。図15〜17に示すように、苗のせ台12の上端には、各条ごとに延長苗のせ台67がスライド出退自在に差込み装着されており、延長苗のせ台67を伸ばした状態では苗のせ台全体が、2枚のマット状苗を縦列に載置収容できる長さになる。延長苗のせ台67は、左右に幅広に形成された本体部67aと、棒状に形成された複数本のリブ部67bとを樹脂材で一体形成して略櫛歯状に構成されている。
【0042】
図15〜17に示すように、本体部67aは、苗のせ台背部に横架連結された支持枠69と苗のせ台下面との間に差込み支持され、リブ部67bが苗のせ台12の上面に重ねられるようになっている。苗のせ台12の上面には、載置したマット状苗の下方への滑動を促す縦リブ68が多数本形成されるとともに、延長苗のせ台67のリブ部67bは下向きに開口された逆U形の断面に形成され、延長苗のせ台67におけるリブ部67bの複数が苗のせ台12の縦リブ68に上方から外嵌されている。これによって、延長苗のせ台67が左右に位置決めされるとともに、コジレなく直線状にスライド出退できるようになっている。
【0043】
図17〜19に示すように、リブ部67bにおける片持ち状に延出された先端aの形状は、逆U形の形状において、両側壁部分67c、67cの下端側程、天井壁先端67dより先端側に突出するように、斜めに切断された形状を呈している。
従来は、リブ部67bにおける軸線方向に直交する面に沿った状態で切断していたが、上記したように、斜めに切断する構成によって、予備苗補給時の不都合を低減できる。
【0044】
つまり、予備苗を苗すくい板(図示せず)に載置して、苗すくい板を延長苗のせ台67上に載せて予備苗を苗のせ面12aに供給しながら苗すくい板を上方に引き上げていく場合に、苗すくい板の裏面の凸部(溝部)がリブ部67bの天井壁先端67dに引っ掛かりを生じていたものを回避できるようになった。
【0045】
[発明の実施の別形態]
(1) ここでは、図示しないが、苗のせ台退避操作機構Bを苗取量調節機構Aとは別個に操作機構を構成したものを示す。
苗のせ台退避操作機構Bにおいても、苗取量調節機構Aと同様に、苗取量調節レバー54に相当する苗のせ台持上げレバーと、その苗のせ台持上げレバーによって操作される駆動揺動アームを設け、駆動揺動アームによって苗のせ台12を持上げて非作業姿勢に切り換える。
駆動揺動アームが作用する対象は、苗のせ台12の背面に取り付けられている連結部材44に定め、この連結部材44に対して駆動揺動アームを下側から当接させて苗のせ台12を支持する。ただし、連結部材44に対しては、図13等で示されているものに対して強度向上を図る為に大型化する等の改造を必要とする。
【0046】
以上のような構成によって、苗のせ台12を非作業姿勢に切り換えるには、苗のせ台12と摺動レール27を連結している係合部材46を外し、その後に、苗のせ台退避操作機構Bの操作レバーを操作して駆動揺動アームで苗のせ台12を持上げ、非作業姿勢に切り換える。係合部材46を取外すことによって、苗取量調節機構Aの苗取量調節レバー54が連動して操作されることはない。
また、機体の固定側に属する駆動揺動アームと、その機体に対して横移動する苗のせ台12に属する連結部材44とは、苗のせ台12の植付作動に伴う往復横移動によって、相対移動することとなるので、駆動揺動アームの連結部材44に対する持上げ先端部に玉状の軸受などを設けて、相対移動が円滑に行えるように構成する必要がある。
【0047】
(2) つぎに、苗のせ面12aの縦リブ68についての別実施構造について説明する。図22及び図23に示すように、苗のせ面12aに設けた縦リブ68における上端部に、高さを低くする段差面68aを形成してある。
このような段差面68aを設けることによって、延長苗のせ台67のリブ部67bを縦リブ68に被せた状態において、延長苗のせ台67のリブ部67bの片持ち状の先端が傾斜面68aに落とし込まれる状態となり、そのリブ部67bの片持ち状の先端が縦リブ68の上面より突出することを抑制できるところから、前記した苗すくい板のリブ部67bとの引っ掛かりを抑えることができる。
【0048】
(3) 延長苗のせ台67のリブ部67bの形状としては、次ぎのようなものでもよい。図20及び図22に示すように、延長苗のせ台67のリブ部67bにおける、片持ち状に延出された先端aを、苗のせ台12の縦リブ68に近接する方向に曲げ形成してもよい。これによって、先端aが縦リブ68より離間する方向に反ってくるのを抑制でき、この面でも苗すくい板の引っ掛かりを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】苗植付装置の平面図
【図3】苗のせ台及び摺動レールの付近の正面図
【図4】苗のせ台を作業姿勢に設定した状態を示す側面図
【図5】苗のせ台を非作業姿勢に設定した状態を示す側面図
【図6】図5の状態から摺動レールを苗のせ台から離間させた状態を示す側面図
【図7】苗取量レバーガイドを示す正面図
【図8】螺旋軸及び送り部材の付近の正面図
【図9】摺動レール、摺動部材及び係合部材、空間部材の付近の縦断正面図
【図10】苗のせ台、摺動レール、空間部材、プラグ部材及びホースの付近の縦断側面図
【図11】プラグ部材を示す平面図
【図12】苗のせ台の所定位置にプラグ部材を装着する前の状態を示す縦断底面図
【図13】摺動レール、摺動部材及び係合部材の付近の縦断側面図
【図14】苗のせ台、摺動部材及び係合部材、空間部材、連結部材の付近の分解斜視図
【図15】延長苗のせ台を取り付けた状態を示す苗のせ台の後面図
【図16】延長苗のせ台を苗のせ台に取り付ける前の状態を示す後面図
【図17】延長苗のせ台を苗のせ台に取り付けた状態を示す縦断側面図
【図18】延長苗のせ台のリブ部を苗のせ台の縦リブに外嵌させた状態を示す底面図
【図19】延長苗のせ台のリブ部の先端部を示す斜視図
【図20】リブ部の先端部を曲げ形成した延長苗のせ台を苗のせ台に取り付けた状態を示す縦断側面図
【図21】延長苗のせ台のリブ部の先端部を曲げ形成した状態を示す斜視図
【図22】苗のせ台の縦リブの上端部に段差部を形成し、その段差部に延長苗のせ台のリブ部を外嵌させるように、その延長苗のせ台を苗のせ台に取付た状態を示す縦断側面図
【図23】苗のせ台の縦リブの上端部に段差部を形成し、その段差部に延長苗のせ台のリブ部を外嵌させた状態を示す斜視図
【符号の説明】
【0050】
10A 植付爪
12 苗のせ台
12a 苗のせ台の苗のせ面
27 摺動レール
A 苗取量調節機構
B 苗のせ台退避操作機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗のせ台を、摺動レールにその摺動レールに沿って移動可能に支持する作業姿勢と、前記苗のせ台の苗のせ面に沿って移動させて前記摺動レールから上方に離れる非作業姿勢とに切換可能な苗のせ台退避操作機構を備えてある田植機の苗のせ台支持構造。
【請求項2】
苗のせ台を、摺動レールにその摺動レールに沿って移動可能に支持する作業姿勢と、前記苗のせ台の苗のせ面に沿って移動させて前記摺動レールから上方に離れる非作業姿勢とに切換可能な苗のせ台退避操作機構を備えるとともに、前記苗のせ台と前記摺動レールとを一体で植付爪の軌跡に対して遠近方向に移動調節させて苗取量を調節する苗取量調節機構を設け、前記苗取量調節機構の一部を前記苗のせ台退避操作機構に組み込んである田植機の苗のせ台支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−113623(P2008−113623A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−301588(P2006−301588)
【出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】