説明

田植機

【課題】 潤滑油補給を長時間にわたって必要としないで使用することができ、かつ、適切な潤滑油供給を容易に行うことができる田植機を提供する。
【解決手段】 苗植付け機構駆動軸16を駆動自在に備えた駆動ケース24に、潤滑油供給の給油口50、油量確認孔52を設けてある。油量確認孔52は、駆動ケース内の油面レベルを確認するように構成するとともに給油口50よりも低い配置高さに配置してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機、詳しくは、苗植付け機構駆動軸又は苗載せ台横送り軸を駆動自在に備えた駆動ケースを有した田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の田植機として、従来、たとえば特許文献1に示されるものがあった。
特許文献1に示されるものは、横送り軸14(苗載せ台横送り軸に相当)を螺旋軸9によって駆動自在に備えた伝動ケース15(駆動ケースに相当)、爪駆動軸7(苗植付け機構駆動軸に相当)をチェーン6によって駆動自在に備えた駆動ケースを設けてある。
【0003】
【特許文献1】特開平6−323438号公報(段落〔0007〕、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の田植機において、駆動ケース内の潤滑用にグリスを採用した場合、田植機の使用が長時間にわたると、油切れになってグリス補給が必要になることがあった。
【0005】
本発明の目的は、油補給を長時間にわたって必要としないで使用することができるとともに適正量の油供給を容易に行うことができる田植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明による田植機にあっては、苗植付け機構駆動軸又は苗載せ台横送り軸を駆動自在に備えた駆動ケースに、潤滑油供給の給油口、及び、駆動ケース内の油面レベルを確認するように前記給油口よりも低い配置高さに配置した油量確認孔を設けてある。
【0007】
すなわち、駆動ケースに給油口から潤滑油を供給し、このとき、油量確認孔から油量を確認しながら供給して駆動ケース内に適正量の潤滑油を貯留させ、駆動軸や伝動機構が潤滑油に浸ったり潤滑油内を移動したりした状態で作動するようにすることができる。
【0008】
従って、本第1発明によると、駆動軸や伝動機構が潤滑油に浸ったり潤滑油内を移動したりするように駆動ケース内に潤滑油を貯留し、潤滑油補給を長時間にわたって行わずに使用することができる。しかも、駆動ケースに潤滑油を供給する際、油量確認孔から油量を確認して適正量を容易に供給することができる。
【0009】
本第2発明にあっては、本第1発明の構成において、前記油量確認孔に螺着自在な栓を設けるとともに、前記栓が前記油量確認孔に装着された状態において前記駆動ケースの内部の伝動チェーンを張り状態に操作するチェーン張り部を、前記栓に備えてある。
【0010】
すなわち、油量確認孔に栓を装着すると、この栓のチェーン張り部が伝動チェーンの張り操作を行って、伝動チェーンを張り状態にすることができる。
【0011】
従って、本第2発明によると、油量確認孔の閉じ操作と伝動チェーンの張り操作とを一挙に行って能率よく組み立て作業を行うことができる。
【0012】
本第3発明にあっては、本第1又は第2発明の構成において、前記油量確認孔を、前記駆動ケースの設定満杯油面の配置高さに配置してある。
【0013】
すなわち、駆動ケースに給油口から潤滑油を供給し、潤滑油が設定満杯油面まで入ると、潤滑油が油量確認孔からあふれ出るものである。
【0014】
従って、本第3発明によると、潤滑油が設定満杯油面まで入ったことを油量確認孔からの流出によって容易に知り、適正量の油供給を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1,2に示すように、左右一対の駆動自在な走行車輪1、機体前端部に配置したエンジン2を備えた自走機体の後部に、機体横方向に並ぶ4つの苗植付け機構11を備えた苗植え作業部10、左右一対の握り部8aを備えた操縦ハンドル杆8を設け、苗植え作業部10の機体前方側のエンジン2よりも後方側に予備苗載せ台60を設け、前記自走機体の機体フレーム20の下部に、機体横方向に並んだセンタ接地フロート3、サイド接地フロート4を支持させて、歩行型田植機を構成してある。
【0016】
この田植機は、稲苗の植付け作業を行うものであり、左走行車輪1や右走行車輪1を駆動自在に支持する車輪駆動ケース5に連動された昇降シリンダ6を操作すると、この昇降シリンダ6が左右の車輪駆動ケース5を機体フレーム20に対して上下に揺動操作して左右の走行車輪1を機体フレーム20に対して昇降操作することにより、自走機体を各接地フロート3,4が地面上に接地した下降作業状態と、各接地フロート3,4が地面上から上昇して離れた上昇非作業状態とに昇降操作する。自走機体を下降作業状態にして走行させると、各接地フロート3,4が圃場の泥面上を滑走して整地していき、苗植え作業部10は、各苗植付け機構11によって苗載せ台12に載置されているマット状苗から一株分のブロック苗を取り出すとともにこのブロック苗を圃場泥面の接地フロート3,4による整地後に植え付けていく。
【0017】
自走機体などについてさらに詳述すると、図1,2に示すように、エンジン2の後側近くに位置するミッションケース21、このミッションケース21の下部から機体前方向きに延出しているエンジン搭載フレーム22、前記ミッションケース21の後部から機体後方向きに延出している伝動ケース23、この伝動ケース23の延出端部に下部が連結しているセンタ駆動ケース24、このセンタ駆動ケース24の機体上下方向での中間部の両横側から機体両横外側方に向かって延出している伝動ケース25、前記左右の伝動ケース25それぞれの延出端部に上端部が連結しているサイド駆動ケース26によって、前記機体フレーム20を構成し、前記ミッションケース21の両横側部に前記車輪駆動ケース5の基部を機体横向きの軸芯まわりで回動自在に連結してある。
各車輪駆動ケース5は、ミッションケース21に対する所定の取付け角度に前記昇降シリンダ6によって保持されて、走行車輪1を所定の取り付け高さに維持する。
【0018】
操縦ハンドル杆8は、両端側が機体前後向きになり、中間部が機体横向きになるように屈曲成形した屈曲パイプ材で成り、図5の如く前記センタ駆動ケース24に下端部が連結された左右一対のハンドルフレーム7の上端部に中間部で支持されている。
【0019】
図3,4,5,7などに示すように、苗植え作業部10は、前記センタ駆動ケース24の下部ケース24aの両横側部、及び、前記各サイド駆動ケース26の機体内方側の横側部に設けた前記苗植付け機構11、前記左右一対のサイド駆動ケース26から機体後方向きに延出している支持フレーム13などに支持された摺動ガイドレール14と、前記各ハンドルフレーム7に固定された取付けアーム15(図1参照)とに機体横方向に摺動自在に支持させた前記苗載せ台12を備えて構成してある。
【0020】
図5,7などに示すように、各苗植付け機構11は、センタ駆動ケース24の下部ケース24a、又はサイド駆動ケース26が備えている苗植付け機構駆動軸16に一体回動自在に連結された駆動アーム17、センタ駆動ケース24又はサイド駆動ケース26の支持アーム部24c,26bに揺動自在に支持された揺動リンク18を介してセンタ駆動ケース24やサイド駆動ケース26に支持されている。図5に示すように、センタ駆動ケース24の前記苗植付け機構駆動軸16は、植付けクラッチ30を介してセンタ駆動ケース24の入力軸31にギヤ連動されており、前記伝動ケース23から入力軸31及び植付けクラッチ30を介して伝達される駆動力によって回動駆動される。これにより、苗植付け機構11は、苗植付け機構駆動軸16によって駆動アーム17を介して上下に揺動駆動され、苗植付け機構11の植付け爪11a(図3参照)の先端が回動軌跡T(図3参照)を描きながら苗載せ台12の下部と、圃場面との間を往復移動する苗植え運動を行う。図7に示すように、各サイド駆動ケース26の前記苗植付け機構駆動軸16は、伝動チェーン32を介してサイド駆動ケース26の入力軸27に連動されており、センタ駆動ケース24の出力軸34から前記伝動ケース25の伝動軸35、前記入力軸33、前記伝動チェーン32を介して伝達される駆動力によって回転駆動される。これにより、苗植付け機構11は、苗植付け機構駆動軸16によって駆動アーム17を介して上下に揺動駆動され、苗植付け機構11の植付け爪11a(図4参照)の先端が回動軌跡T(図4参照)を描きながら苗載せ台12の下部と、圃場面との間を往復移動する苗植え運動を行う。
【0021】
図2,4に示す如く苗載せ台12の両横端部に固定された連結部材36を、図5に示す如くセンタ駆動ケース24の上部ケース24bが機体横方向に往復摺動自在に備えている苗載せ台横送り軸37の両端部に各別に連結してある。図5に示すように、苗載せ台横送り軸37に一体移動及び相対回転自在に連結された駒部材38、この駒部材38の受動突起38aが係入した螺旋溝39aを外周面に備えた回転軸39、この回転軸39にギヤ機構40を介して連動された回転伝動軸41、この回転伝動軸41を前記苗植付け機構駆動軸16に連動させている伝動チェーン42を備えて成る苗横送り機構43をセンタ駆動ケース24に備えてある。
【0022】
これにより、苗植え作業部10は、苗載せ台横送り軸37を苗横送り機構42によって機体横方向に往復駆動して、この苗載せ台横送り軸37によって苗載せ台12を各苗植付け機構10の苗植え運動に連動させて、摺動ガイドレール14に沿わせて自走機体横方向に往復移送し、各苗植付け機構11の植付け爪11aにより、苗載せ台12に自走機体横方向に並べて載置されている複数枚のマット状苗のうちの対応する苗の下端部から一株分のブロック苗をマット状苗の横一端側から他端側に至る状態で順次に取り出し、取り出したブロック苗を摺動ガイドレール14が備えている苗取り出し口から下降搬送して圃場の泥土面に植え付ける。
【0023】
図5,6に示すように、前記センタ駆動ケース24は、前記入力軸31、苗植付け機構駆動軸16、植付けクラッチ30、出力軸34を内部に備えている前記下部ケース24aと、この下部ケース24aの上端面に載置して締め付け連結してあるとともに前記苗載せ台横送り軸37が貫設され、前記駒部材38、回転軸39を内部に備えている前記上部ケース24bとによって構成してある。
【0024】
図6などに示すように、センタ駆動ケース24に、前記上部ケース24bの天板部に設置した給油口50、この給油口50に脱着自在なゴムキャップ51、前記給油口50よりも低い配置高さに位置するように前記下部ケース24aの上端開口が位置する配置高さに設置した油量確認孔52、この油量確認孔52に脱着自在なゴムキャップ53を設けてある。前記油量確認孔52は、センタ駆動ケース24の内部の油面レベルをケース外部から見て確認することができるように構成し、かつ、下部ケース24aの上端部に前記出力軸34及び回転伝動軸41の下部が潤滑油に浸る配置高さに設定した設定満杯油面OLの配置高さに配置してある。
【0025】
すなわち、センタ駆動ケース24は、図9に示す如く給油口50から潤滑油aを供給してケース内部に潤滑油aを設定満杯油面OLまで貯留させ、下部ケース24aに位置する伝動チェーン42や軸34,41などは潤滑油aに直接に触れることにより、出力軸34に一体回転自在に設けた給油羽根54によって下部ケース24aの潤滑油aを上部ケース24bの回転軸39などに跳ね上げ供給することにより、センタ駆動ケース24の内部潤滑を図るようにオイルバス形式に構成してある。また、潤滑油を供給する際、ゴムキャップ53を取り外した油量確認孔52から内部を見て油面レベルを確認したり、潤滑油を油量確認孔52からあふれ出るまで供給したりすることにより、潤滑油が設定満杯油面OLまで溜まる適量供給をしやすくなる。
【0026】
図8に示すように、前記各サイド駆動ケース26は、ケース割れ面が存在しなくて油漏れが発生しないように、かつ、上端開口26aを備えるように鋳造した単体ケースによって構成してある。このサイド駆動ケース26に、前記上端開口26aを閉じる上蓋55に設置した給油口50、この給油口50に脱着自在なゴムキャップ51、前記給油口50よりも低い配置高さに位置するケース本体部分に設置した油量確認孔52、この油量確認孔52に脱着自在な栓56を設けてある。前記油量確認孔52は、サイド駆動ケース26の内部の油面レベルをケース外部から見て確認することができるように構成し、かつ、苗植付け機構駆動軸16が潤滑油に浸る配置高さに設定した設定満杯油面OLの配置高さに配置してある。
【0027】
すなわち、各サイド駆動ケース26は、図10に示す如く給油口50から潤滑油aを供給してケース内部に潤滑油aを設定満杯油面OLまで貯留させ、苗植付け機構駆動軸16は潤滑油aに浸ることにより、伝動チェーン32は潤滑油aの内部を通過して回動することにより、サイド駆動ケース26の内部潤滑を図るようにオイルバス形式に構成してある。また、潤滑油を供給する際、栓56を取り外した油量確認孔52から内部を見て油面レベルを確認したり、潤滑油を油量確認孔52からあふれ出るまで供給したりすることにより、潤滑油が設定満杯油面OLまで溜まる適量供給をしやすくなる。
【0028】
図8に示すように、前記栓56を、油量確認孔52に螺着されるようにシール用ゴム付き座金57を有したネジ栓に構成してある。この栓56の先端部にチェーン張り部56aを備えさせるとともに、チェーン張り部56aは、栓56が油量確認孔52に装着された状態において、サイド駆動ケース26の内部の支軸58に揺動自在に支持されているチェーンタイトナー59に当接して押圧操作することによって、伝動チェーン32を伝動用の張り状態に張り操作するように構成してある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】歩行型田植機全体の側面図
【図2】歩行型田植機全体の平面図
【図3】センタ駆動ケースに支持される苗植付け機構の配設部の側面図
【図4】サイド駆動ケースに支持される苗植付け機構の配設部の側面図
【図5】センタ駆動ケースの縦断後面図
【図6】センタ駆動ケースの縦断側面図
【図7】サイド駆動ケースの縦断後面図
【図8】サイド駆動ケースの縦断側面図
【図9】センタ駆動ケースの潤滑油供給要領を示す説明図
【図10】サイド駆動ケースの潤滑油供給要領を示す説明図
【符号の説明】
【0030】
16 苗植付け機構駆動軸
24,26 駆動ケース
32 伝動チェーン
37 苗載せ台横送り軸
50 給油口
52 油量確認孔
56 栓
56a チェーン張り部
OL 設定満杯油面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
苗植付け機構駆動軸又は苗載せ台横送り軸を駆動自在に備えた駆動ケースに、潤滑油供給の給油口、及び、駆動ケース内の油面レベルを確認するように前記給油口よりも低い配置高さに配置した油量確認孔を設けてある田植機。
【請求項2】
前記油量確認孔に螺着自在な栓を設けるとともに、前記栓が前記油量確認孔に装着された状態において前記駆動ケースの内部の伝動チェーンを張り状態に操作するチェーン張り部を、前記栓に備えてある請求項1記載の田植機。
【請求項3】
前記油量確認孔を、前記駆動ケースの設定満杯油面の配置高さに配置してある請求項1又は2記載の田植機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−97542(P2007−97542A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295265(P2005−295265)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】