説明

甲留めベルトで係合する靴

【課題】 足の土踏まず部分の側部と履いた靴の内部の土踏まず部分の腰皮との間に、靴を履いたときに隙間が生じなくし、足の動きと靴の動きを一体化した靴を提供する。
【解決手段】 土踏まず部8の横幅9を腰皮3の横幅10よりも狭小にし、甲留めベルト11を土踏まず部8の本底4と中本底5に係合し、中本底5上に腰皮3の下縁部を取り付け、中底6を取り付け、さらに中敷き7を敷き、本底4と中本底5の間からに甲留めベルト11を外部に延ばし、甲留めベルト11を腰皮3と独立して履いた足18の甲を被って係合可能な長さとし、その甲留めベルト11の左右の先端に互いに係合するベルト長さ調整可能な平面ファスナー14、15からなる係合部を配設した甲留めベルト11で係合する靴1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、靴紐のない靴、すなわち靴を履いた時に甲皮を締めるための靴紐の代わりに甲留めベルトで係合する靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の靴は、例えば図6の断面図に示すように、本底4とその上の中底6の間に甲皮2の側部である腰皮3の下端部を接着剤などで係止し、さらに中敷きを敷いた靴1からなり、足18の甲に靴紐などにより締めて脱げないようにしていた。しかし、この従来の靴1を足に履いた時に、足18と靴1の腰皮3との間に、特に足18の土踏まずの部分の側部とこの側部に対面する靴1の甲皮2の側部である腰皮3の内面との間に隙間が生じることで、歩行時あるいは運動時に、足18と靴1が一体化し難いものであった。このために、老齢者や肢体不自由者にとっては、靴を履いて歩行し難くなったり、あるいは運動しづらくなり、かつ、足に疲れを覚え、また踵が靴から脱げたりする問題があった。
【0003】
一方、靴を購入するときは、靴の大きさを足の大きさに合わせる。この場合、一般的には靴の前後の大きさあるいは指部近辺の横幅について合わせ、さらに試し履きをしてみたりする。しかしながら、この試し履きでは靴の細かな形状の差異に基づく履き心地については、直にはわからずに見逃してしまうことが往々にあった。このために購入後の履いているうちに、上記したような足に不具合のあることに気がつくこととなるような問題があった。
【0004】
従来、甲留めベルトにより足の甲に係止する運動靴などの靴において、履いた靴を脱ぐときに、甲留めベルトの締結を解いて脱ぎやすくし、かつ甲留めベルトの弧状の径を拡げるのみで、甲留めベルトが靴の腰皮の他端側から完全に外れてしまうことのないようにし、しかも肢体不自由者が靴を容易に脱ぐことができ、また、この状態で、再び靴を履き甲留めベルトを締めつけて留めることも容易にできるようにした靴のベルト構造の考案が登録されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3010374号公報
【0006】
ところで、この考案の靴は上記のように靴のベルト構造、特に甲皮の側部である腰皮の一方の側部に取り付けた甲留めベルトの主ベルトを、腰皮の他の側部に取り付けた折り返し金具保持ベルトに設けた主ベルト折り返し金具に、予め通しておき、主ベルトの折り返し端部の上面側に設けた筒状指掛け部が、主ベルト折り返し金具から抜き去りにくくした構造からなり、肢体不自由者が容易に甲留めベルトを締めつけて留めることができるものである。しかし、この靴は甲留めベルトの締結に主眼をおいているため、甲留めベルトの留め方に工夫はされていても、靴と足とがぴったりと合っているかどうかまでは考慮されていないものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、足の土踏まず部の側部と履いた靴の内部の土踏まず部の側部の甲皮である腰皮との間に、靴を履いたときに隙間が生じることによる上記の問題を解消するため、靴を履いた足の土踏まずの部分の側部と靴の腰皮との間に生じる隙間の解消を図り、足の動きと靴の動きを一体化することで歩行時や運動時の足の疲労をなくし、かつ、運動能力を高めることのできる靴を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明の手段について説明する。請求項1の発明の手段では、甲皮が本皮革や合成皮革あるいは布製素材から形成の靴において、土踏まず部の靴底の横幅を当該部分の腰皮の横幅よりも狭小に形成する。さらに、靴紐に代わる甲留めベルトの中心部の靴底係止部を当該靴の土踏まず部の本底の上に載置して本底に係合し、載置した甲留めベルトの耐久性及び強度を増すために甲留めベルトの靴底係止部上にさらに中本底を載置して挟持する。さらにこの中本底の周縁部上に腰皮の下縁部を取り付け、さらにその上に中底を取り付け、さらに中底の上に中敷きを敷く。一方、上記した本底とその上に載置した中本底との間から靴外部の腰皮外周上に左右の甲留めベルトを延在させ、さらに腰皮と独立の腰皮の外周部分の甲留めベルトを伸縮性素材から形成し、さらに甲留めベルトの先端側を非伸縮性素材から形成して腰皮に続く甲皮外周を被って延ばし、その長さを履いた足の甲を被って左右の甲留めベルトの先端を係合しうる長さとし、その左右の甲留めベルトの先端に互いに係合するベルト長さ調整可能な平面ファスナーからなる係合部を配設したことを特徴とする甲留めベルトで係合する靴である。
【0009】
請求項2の発明の手段では、上記の請求項1に記載の甲留めベルトで係合する靴において、中本底を省き、甲留めベルトの中心部の靴底係止部を土踏まず部に載置した本底の周縁部上に腰皮の下縁部を直接に取り付け、甲留めベルトの靴底係止部を土踏まず部の本底と上記腰皮の下縁部との間に挿通状態とし、さらに腰皮の下縁部上に中底を取り付け、本底と中底で腰皮下縁部を挟持し、その上に中敷きを敷いたことを特徴とする甲留めベルトで係合する靴である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の甲留めベルトで係合する靴は、靴底の土踏まず部の横幅を当該部分の甲皮の側部である腰皮の部分の最大横幅よりも狭小に形成し、しかも、この部分の靴底の幅が従来の靴に比してより狭小に形成されており、かつ、その狭小な部分の靴底の本底とその上の中本底との間に甲留めベルトを取り付け、これを腰皮と係止することなく腰皮の外周を独立に包囲して履いた足に甲留めベルトとして係止できるので、甲留めベルトを足の甲に留めるとき、腰皮の土踏まずに対応する部分と足の土踏まず部分の側部との間に隙間を生じること無く係合できる。したがって、靴を足とを一体的に固定でき、その結果、靴の前部を幅広に形成することができ、足の指の部分の幅の余裕が生じる。しかも、靴の前部の幅を広くしても、足が土踏まずの周囲で甲留めベルトにより十分に緊締されているので足指部が前後左右に移動することなく、かつ、足指にゆとりが生じているので、この靴を履いても、たこや魚の目ができにくくまた外反母趾などになりにくい。
【0011】
さらに、上記のように、靴と足を一体的に緊締して固定できるので、子供や老人や肢体不自由者にとって歩き易く、脱げにくいので、歩行中の危険が防止でき、運動能力が高まる。さらに甲留めベルトは足甲を被うベルト長さ調整可能な平面ファスナーからなる係合部を有するので、足の甲のその日の状態、例えば、夕方にむくんだり膨れたりする足の甲の状態に合わせて甲留めベルトの長さを調整して係止できる。さらに請求項2の靴は、中本底を省いているが、腰皮と甲留めベルトを本底に取り付ける点において、上記の請求項1の靴の甲留めベルトとしての取り付け強度及びその甲留めベルト機能は実用上それほど低下すること無く中底により維持することができ、中本底を省くことで製造工程を簡略化でき、製造コストを下げることができるなど、本願は従来にない優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
この発明を実施するための最良の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1は本願発明の1例の靴の履いた状態を側部から一部透視して示した側面図である。図2は本発明の靴の請求項1の実施の形態の1実施例の土踏まず部分における断面図である。図3は本発明の靴の請求項2の実施の形態の中本底を省いた靴の1実施例の土踏まず部分における断面図である。図4は本発明の靴における土踏まず部分の横幅を説明する図で(a)は従来の靴の横幅で、(b)は本発明の靴の横幅である。図5は本発明における甲留めベルトの展開状態の全体図である。図6は従来の靴の土踏まず部分における断面図である。
【0013】
図1に示すように、本発明の靴1は、足18の甲の上部で靴紐により緊締する靴1と異なり、甲留めベルト11で足18の甲の上で係止する靴1である。この靴1の甲皮2は本皮革や合成皮革あるいは布製素材から形成されている。先ず、図4に示すように、靴1の土踏まず部8の横幅9を当該土踏まず部8の甲皮2の側部である腰皮3の横幅10よりも狭小に形成されている。すなわち、この部分の土踏まず部8の横幅9は、図2の(a)に示すように、靴底の方が甲皮2の側部の腰皮3の部分の横幅10よりも狭小に形成されている。このように従来の靴の土踏まず部の横幅がその部分の腰皮の横幅10の幅と略同幅であるのに対し、図4に示すように、本発明における靴は、土踏まず部8の横幅9が、従来の靴の横幅10に比して、狭小に形成されている。
【0014】
さらに、従来の靴の靴紐に代え、本発明における靴1は甲留めベルト11により足18の甲に係止するものとなっている。この甲留めベルト11は、図5に示すように、その素材の中心部12を靴底係止部とし、この甲留めベルト11の中心部12の靴底係止部を当該靴1の上記の横幅9に形成の土踏まず部8の本底4とその上に形成の中本底5との間に挿通し、図2に示すように、本底4と中本底5とによりサンドイッチ状に係合する。中本底5の周縁部上に甲皮2の下縁部すなわち腰皮3の下縁部を例えば接着剤により貼着して取り付ける。さらにその上に中底6を取り付け、さらに中敷き7を敷く。
【0015】
上記の本底4とその上の中本底5との間から靴1の左右の靴外部に甲留めベルト11を延在させ、図5に示すように、この靴外部に出た甲留めベルト11を甲皮2の側部の腰皮3と独立に、腰皮3の外側で左右に延在する、例えば糸ゴムを織込んだ帯などからなる伸縮性素材13から形成する。図2の(a)に示すように、この伸縮性素材13の部分を腰皮3の部分を被う長さとし、この伸縮性素材13の甲皮2の側部である腰皮3からさらに延びる左右の甲留めベルト11の先端部を、例えば、非伸縮性素材である甲皮2の素材と同じ素材から形成している。この左右の甲留めベルト11の先端部の長さを、履いた足18の甲を被って係合可能な長さとし、その甲留めベルト11の左右の各先端部に互いに係合し合うベルトの長さ調整可能とする平面ファスナー14と平面ファスナー15から係合部に形成している。
【0016】
図2の(b)は足18に、この靴1を履いて、甲留めベルト11の左右の先端の平面ファスナー14と平面ファスナー15を係止して足18の甲を緊締した状態を示す。このように土踏まず部8の周囲の甲皮2の側部である腰皮3を伸縮性素材13を有する甲留めベルト11により留めているので、伸縮性素材13によりより一層に緊締される、かつ、土踏まず部8の横幅9が従来の靴よりも狭小に形成されているので、腰皮3と足18との間には無駄な隙間は生じることがない。
【0017】
次いで、請求項2の手段の本発明の靴1について説明する。この請求項2の発明の手段では、請求項1の手段の甲留めベルト11で係合する靴における中本底5を省いたものである。本底4の周縁部上に甲皮2の下縁部すなわち腰皮3の下縁部を直接に取り付け、その上に中底6を取り付け、さらに中敷き7を敷いた構造としている。すなわち、図3の(a)に示すように、本底4の上の土踏まず部8の部分に甲留めベルト11の中心部12を載置し、この甲留めベルト11の中心部12を載置した本底4の周縁部の上に甲皮2の側部の下縁部である腰皮3の下縁部を取り付け、さらにこの腰皮3の下縁部の上に中底6を直接に載置する。この本底4と中底6との間に腰皮3の下縁部を取り付けて挟持して係止している。さらに中底6の上に中敷き7を敷いて請求項2の靴1の構造とした。この実施の形態の靴1は中本底5を有しないが、中底6を有して甲留めベルト11を挟持しているので、この構造でも甲留めベルト11と腰皮3が十分に強力に本底4と一体化できている。
【0018】
図3の(b)は足18に、この靴1を履いて、甲留めベルト11の左右の先端の平面ファスナー14と平面ファスナー15を互いに係止して足18の甲を緊締した状態を示している。この場合も、上記の実施の形態の靴と同様に、土踏まず部8の周囲の甲皮2の側部である腰皮3を甲留めベルト11により緊締し、かつ、土踏まず部8の横幅9が従来の靴より狭小となっているので、腰皮3と足18との間には無駄な隙間が生じることはなく、靴が足に吸いつくように一体化されている。
【0019】
本発明の靴1は、上記のように靴1を履いたとき、甲留めベルト11の左右の先端の平面ファスナー14と平面ファスナー15を互いに係合して留めるのみで、十分に足の甲を緊締することができるが、万一の平面ファスナー14と面ファスナー15の係合がはずれるような不慮の事故に備えて、図1に示すように、甲留めベルト11の一方と他方の間に紐穴16を設け、この紐穴16に補強紐15を通して結ぶようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本願発明の1例の中底を有する靴の履いた状態を一部透視して示した側面図である。
【図2】本発明の靴の請求項1の実施の形態の1例の土踏まず部分における後方から見た断面図である。
【図3】本発明の靴の請求項2の実施の形態の1例の土踏まず部分における後方から見た断面図である。
【図4】本発明の靴における土踏まず部分の横幅を説明する図で(a)の実線は従来の靴の横幅で、点線及び(b)の実線は本発明の靴の横幅である。
【図5】本発明における甲留めベルトの展開状態の全体図である。
【図6】従来の靴の土踏まず部分における後方から見た断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 靴
2 甲皮
3 腰皮(甲皮側部)
4 本底
5 中本底
6 中底
7 中敷き
8 土踏まず部
9 横幅
10 横幅
11 甲留めベルト
12 中心部
13 伸縮素材
14 平面ファスナー
15 平面ファスナー
16 補強紐
17 紐穴
18 足

【特許請求の範囲】
【請求項1】
甲皮が本皮革や合成皮革あるいは布製素材から形成の靴において、土踏まず部の靴底の横幅を当該部分の腰皮の横幅よりも狭小に形成すると共に、靴紐に代わる甲留めベルトの中心部の靴底係止部を当該靴の土踏まず部の本底の上に載置して本底に係合し、載置した甲留めベルトの耐久性及び強度を増すため甲留めベルトの靴底係止部上に中本底を載置して挟持し、さらに中本底の周縁部上に腰皮の下縁部を取り付け、さらにその上に中底を取り付け、さらに中敷きを敷き、上記の本底とその上の中本底との間から靴外部の腰皮外周上に左右の甲留めベルトを延ばし、これら腰皮と独立の腰皮の外周部分の甲留めベルトを伸縮性素材から形成し、さらに甲留めベルトの先端側を非伸縮性素材から形成して腰皮に続く甲皮外周を被って延ばし、その長さを履いた足の甲を被って左右の甲留めベルトの先端を係合しうる長さとし、その左右の甲留めベルトの先端に互いに係合するベルト長さ調整可能な平面ファスナーからなる係合部を有することを特徴とする甲留めベルトで係合する靴。
【請求項2】
上記の請求項1に記載の甲留めベルトで係合する靴において、中本底を省き、甲留めベルトの中心部の靴底係止部を土踏まず部に載置した本底の周縁部上に腰皮の下縁部を直接に取り付け、甲留めベルトの靴底係止部を土踏まず部の本底と上記腰皮の下縁部との間に挿通状態とし、さらに腰皮の下縁部上に中底を取り付け、本底と中底で腰皮下縁部を挟持し、その上に中敷きを敷いたことを特徴とする甲留めベルトで係合する靴。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−305016(P2006−305016A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−130603(P2005−130603)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(595013276)
【Fターム(参考)】