画像処理装置および画像形成装置
【課題】 細線部分の太さムラ、擬似階調領域の濃淡ムラなどの画質劣化を抑制しつつ非整数倍の画像変倍を行う。
【解決手段】 画像処理装置14において、拡大処理部32は、主走査方向および/または副走査方向において整数倍に画像を拡大した拡大画像を生成し、収縮処理部34は、その拡大画像に対して収縮処理を行い、ダウンサンプリング部35は、収縮処理後の拡大画像を、主走査方向および/または副走査方向において整数分の1にダウンサンプリングする。
【解決手段】 画像処理装置14において、拡大処理部32は、主走査方向および/または副走査方向において整数倍に画像を拡大した拡大画像を生成し、収縮処理部34は、その拡大画像に対して収縮処理を行い、ダウンサンプリング部35は、収縮処理後の拡大画像を、主走査方向および/または副走査方向において整数分の1にダウンサンプリングする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
文字、線画などの画像を非整数倍で変倍する画像処理装置が提案されている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献2に記載の技術は、スムージングしつつ3倍の拡大処理を行った後、2分の1のダウンサンプリングを行って、1.5倍の非整数倍拡大を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−312762号公報
【特許文献2】特開平10−84472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようにして非整数倍の拡大を行うと、ダウンサンプリングに起因して、非整数倍の拡大後の画像において細線部分に太さムラが生じたり擬似階調領域に濃淡ムラが生じることがある。擬似階調領域の濃淡ムラは、誤差拡散法による擬似階調領域の場合に顕著である。
【0006】
太さムラを解消するためにダウンサンプリング時に論理和法を使用することが考えられるが、その場合、細線部分が全体的に太くなり、文字が潰れてしまうとともに、比較的濃度が高い擬似階調領域も潰れてしまう。
【0007】
また、特開平7−28992号公報に記載の技術は、原画像に対して細線化を行い、細線化後にダウンサンプリングする方法であるが、原画像と原画像を拡大した後の画像とでは細線部分の太さの分布などといった画像の特徴が異なるため、原画像を拡大した後の画像に対して、特開平7−28992号公報に記載の技術を適用しても、良好な非整数倍の画像を得ることは困難である。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、細線部分の太さムラ、擬似階調領域の濃淡ムラなどの画質劣化を抑制しつつ非整数倍の画像変倍を行う画像処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明では以下のようにした。
【0010】
本発明に係る画像処理装置は、主走査方向および/または副走査方向において整数倍に画像を拡大する拡大処理部と、整数倍に拡大された画像に対して収縮処理を行う収縮処理部と、収縮処理部により収縮処理が実行された画像を整数分の1にダウンサンプリングするダウンサンプリング部とを備える。
【0011】
これにより、細線部分の太さムラ、擬似階調領域の濃淡ムラなどの画質劣化を抑制しつつ非整数倍の画像変倍が行われる。
【0012】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置に加え、次のようにしてもよい。この場合、画像処理装置は、画像におけるドットのない孤立画素に対応する整数倍に拡大された画像におけるドットのない画素集合の形状を、ダウンサンプリングの位相に拘わらずダウンサンプリング後のドット密度が一定となる形状に修正する修正処理部をさらに備える。
【0013】
これにより、原画像におけるドットのない孤立画素(つまり、ドットのある画素に囲まれている、ドットのない1画素)に起因する画質劣化を抑制することができる。
【0014】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、収縮処理部は、ダウンサンプリングの位相に拘わらずダウンサンプリング後のドット密度が一定となるように収縮処理を行う。
【0015】
これにより、ダウンサンプリングの位相に拘わらず画質劣化を抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、収縮処理部は、整数倍に拡大された画像内において注目画素を主走査方向および副走査方向に沿って順番にラインスキャンしていき、注目画素および注目画素の周辺画素のうち、注目画素、注目画素のあるラインにおいて主走査方向で注目画素より後の画素、および副走査方向において注目画素のあるラインより後のラインの画素の値から、注目画素のドットの有無を決定する。
【0017】
これにより、収縮処理済みの画素についての、収縮処理前の画素値(ドットの有無を示す値)を使用しないで収縮処理が行われるため、収縮処理前の画素値を収縮処理後の画素値で逐次上書きすることが可能であり、収縮処理のために要求される記憶領域が少なくて済む。
【0018】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、画像処理装置は、画像内の擬似階調領域を特定する擬似階調領域特定部をさらに備える。そして、拡大処理部は、擬似階調領域に対してスムージングを行わずにニアレストネイバー法で画像を拡大し、その擬似階調領域以外の領域に対してスムージングを行いつつ画像を拡大する。
【0019】
これにより、擬似階調領域についてはスムージングを行わずに拡大処理を行うため、擬似階調領域固有のドットパターンが維持され、擬似階調領域の濃淡ムラが抑制される。
【0020】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、ダウンサンプリング後の画像は、拡大前の画像の非整数倍となっている。
【0021】
また、本発明に係る画像形成装置は、上記の画像処理装置のいずれかを備える。
【0022】
これにより、画像形成装置の取り扱う画像(例えばファクシミリ受信画像など)について、細線部分の太さムラ、擬似階調領域の濃淡ムラなどの画質劣化を抑制しつつ非整数倍の画像変倍が行われる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、細線部分の太さムラ、擬似階調領域の濃淡ムラなどの画質劣化を抑制しつつ非整数倍の画像変倍が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1における画像処理装置の動作について説明するフローチャートである。
【図3】図3は、図2における白孤立点修正部による白孤立点の修正を説明する図である。
【図4】図4は、白孤立点の修正を行わなかった場合について説明する図である。
【図5】図5は、図2における収縮処理部による収縮処理のパターンマッチングの一例を説明する図である。
【図6】図6は、図1に示す画像処理装置によって、細線画を、主走査方向および副走査方向において1.5倍拡大する場合の一例を示す図である。
【図7】図7は、図6に示す場合において異なる位相でダウンサンプリングしたときの、ダウンサンプリング後の画像を示す図である。
【図8】図8は、図6に示す場合において収縮処理を行わなかったときの、ダウンサンプリング後の画像を示す図である。
【図9】図9は、図1に示す画像処理装置によって、細線画を、主走査方向および副走査方向において1.5倍拡大する場合の別の例を示す図である。
【図10】図10は、図9に示す場合において異なる位相でダウンサンプリングしたときの、ダウンサンプリング後の画像を示す図である。
【図11】図11は、図9に示す場合において収縮処理を行わなかったときの、ダウンサンプリング後の画像を示す図である。
【図12】図12は、図1に示す画像処理装置によって、擬似階調領域を、主走査方向および副走査方向において1.5倍拡大する場合の一例を示す図である。
【図13】図13は、図12に示す場合において収縮処理を行わなかったときの、ダウンサンプリング後の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の構成を示すブロック図である。図1に示す画像形成装置1は、複合機である。ただし、画像形成装置1は、プリンター、コピー機、ファクシミリ機などでもよい。
【0027】
この画像形成装置1は、印刷装置11と、画像読取装置12と、ファクシミリ装置13と、画像処理装置14とを備える。
【0028】
印刷装置11は、ラスター画像データに基づいて原稿画像を印刷する内部装置である。印刷装置11は、例えば、画像処理装置14により拡大処理された画像データに基づいて原稿画像を印刷する。
【0029】
画像読取装置12は、原稿から原稿画像を光学的に読み取り、原稿画像の画像データを生成する内部装置である。
【0030】
ファクシミリ装置13は、送信すべき原稿画像の画像データからファクシミリ信号を生成し所定の通信路を介して送信するとともに、ファクシミリ信号を所定の通信路を介して受信し画像データに変換する内部装置である。
【0031】
画像処理装置14は、画像読取装置12、ファクシミリ装置13などで生成された画像データに対して拡大処理などの画像処理を行う。特に、画像処理装置14は、主走査方向および/または副走査方向に非整数倍で二値画像を拡大する。例えば、画像処理装置14は、ファクシミリ装置13により受信された400dpi(dot per inch)の画像の解像度を、印刷用の600dpiに変換する。
【0032】
画像処理装置14は、演算処理装置21とメモリー22とを有する。演算処理装置21は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やマイクロコンピューターで実現され、各種処理部を有する。メモリー22は、RAM(Random Access Memory)などの書換可能な記憶装置である。メモリー22には、拡大処理などの画像処理を施す前の画像データ、画像処理の途中のデータ、画像処理を施した後の画像データなどが一時的に記憶される。
【0033】
また、演算処理装置21は、処理部として、制御部31、拡大処理部32、白孤立点修正部33、収縮処理部34、およびダウンサンプリング部35を有する。
【0034】
制御部31は、拡大処理部32、白孤立点修正部33、収縮処理部34、およびダウンサンプリング部35を制御するとともに、二値画像の画像データにおいて、主走査方向および副走査方向に沿って順番に画素を注目画素としてスキャンする。
【0035】
この実施の形態では、制御部31は、原画像内の擬似階調領域を特定する。なお、擬似階調領域とは、誤差拡散法やスクリーン法などにより得られ、ドットの大きさや密度で階調を表現した領域のことである。例えば、制御部31は、注目画素周辺の所定の範囲の画素の値から、注目画素が擬似階調領域に属するか否かを判定する。具体的には、所定の範囲内で隣接する2画素の値が異なる箇所の数などによって、注目画素が擬似階調領域に属するか否かが判定される。
【0036】
拡大処理部32は、主走査方向および/または副走査方向において整数倍に原画像を拡大し、拡大画像を生成する。この実施の形態では、拡大処理部32は、上述の擬似階調領域以外の領域(細線画、文字など)に対してスムージングを行いつつ原画像を拡大し、擬似階調領域についてはスムージングを行わずにニアレストネイバー法で原画像を拡大する。
【0037】
白孤立点修正部33は、原画像におけるドットのない孤立画素(以下、白孤立点という)に対応する拡大画像におけるドットのない画素集合の形状を、ダウンサンプリングの位相に拘わらずダウンサンプリング後のドット密度が一定となる形状に修正する。
【0038】
収縮処理部34は、拡大画像に対して収縮処理を行う。この実施の形態では、収縮処理部34は、白孤立点修正部33により白孤立点が修正された後の拡大画像に対して収縮処理を行う。
【0039】
また、この実施の形態では、収縮処理部34は、拡大画像内において注目画素を主走査方向および副走査方向に沿って順番にラインスキャンしていき、注目画素および注目画素の周辺画素のうち、注目画素、注目画素のあるラインにおいて主走査方向で注目画素より後の画素、および副走査方向において注目画素のあるラインより後のラインの画素の値から、注目画素のドットの有無を決定する。
【0040】
この実施の形態では、収縮処理部34は、ダウンサンプリングの位相に拘わらずダウンサンプリング後のドット密度が一定となるように収縮処理を行う。また、この実施の形態では、収縮処理部34は、原画像において繋がっている2つの細線(縦細線および/または横細線)がダウンサンプリング後の画像においても繋がるように収縮処理を行う。
【0041】
ダウンサンプリング部35は、収縮処理部34により収縮処理が実行された画像を整数分の1にダウンサンプリングする。この実施の形態では、ダウンサンプリング後の画像は、拡大前の原画像の非整数倍となる。
【0042】
次に、上記画像処理装置の動作について説明する。図2は、図1における画像処理装置14の動作について説明するフローチャートである。
【0043】
まず、制御部31は、注目画素を設定する(ステップS1)。最初の場合、第1ラインにおける主走査方向の先頭画素が注目画素に選択される。次に、第1ラインにおける主走査方向の次の画素が注目画素に選択される。そして、第1ラインにおける主走査方向の最後の画素の次は、第2ラインにおける主走査方向の先頭画素が注目画素に選択される。
【0044】
次に、制御部31は、注目画素が擬似階調領域に属するか否かを判定する(ステップS2)。
【0045】
そして、注目画素が擬似階調領域に属さないと判定された場合、拡大処理部32は、その画素についてスムージングしつつ、主走査方向および副走査方向に整数倍(N倍)の拡大処理を行う(ステップS3)。一方、注目画素が擬似階調領域に属すると判定された場合、拡大処理部32は、その画素についてスムージングせずにニアレストネイバー法で主走査方向および副走査方向に整数倍(N倍)の拡大処理を行う(ステップS4)。
【0046】
注目画素についての拡大処理が終了すると、制御部31は、注目画素が最後のラインの最後の画素まで到達したか否かを判定し(ステップS5)、注目画素が最後のラインの最後の画素まで到達していなければ、次の注目画素を設定する(ステップS1)。
【0047】
以後、画像全域に対する拡大処理が完了するまで、ステップS1〜S5の処理が適宜繰り返し行われる。
【0048】
拡大処理が完了すると、制御部31は、拡大処理後の画像において、白孤立点に対応する画素領域を検索する。拡大処理後の画像において、白孤立点に対応する画素領域は、N×N画素のドットのない画素領域となる。制御部31は、白孤立点に対応する画素領域を発見すると、その画素領域の位置を白孤立点修正部33に通知して、白孤立点の修正を行わせる。白孤立点修正部33は、通知された位置から白孤立点に対応する画素領域と特定し、その画素領域の形状を修正する(ステップS6)。つまり、白孤立点修正部33は、ダウンサンプリングの位相に拘わらずダウンサンプリング後のドット密度が一定となるように、白孤立点に対応する画素領域の一部の画素の値を、ドットなしを示す値から、ドットありを示す値へ変更する。ドットの有無を変更する画素は、後段の収縮処理およびダウンサンプリングに応じて決定される。
【0049】
図3は、図2における白孤立点修正部33による白孤立点の修正を説明する図である。図3(A)は、白孤立点に対応する3×3画素のドットのない画素領域を示す図である。図3(B)は、図3(A)に示す画素領域について白孤立点の修正を行った後のドットのない画素領域の形状を示す図である。図3(C)は、図3(B)に示す修正後の画像に対して後述の収縮処理(図5に示すパターンマッチングによる収縮処理)を行った後の画像を示す図である。図3(D)〜図3(G)は、異なる位相で、主走査方向および副走査方向において2分の1で、図3(C)に示す画像をダウンサンプリングした後の画像を示す図である。
【0050】
図3(D)〜図3(G)に示すように、白孤立点の修正により、ダウンサンプリングの位相に拘わらずダウンサンプリングした後の画像のドット密度が一定になっている。
【0051】
また、図3(H)および図3(I)は、原画像の副走査方向の解像度(例えば400dpi)が、主走査方向の解像度(例えば200dpi)の2倍となっている場合における、異なる位相で、主走査方向および副走査方向において図3(C)に示す画像をダウンサンプリングした後の画像を示す図である。この場合、主走査方向についてはダウンサンプリングを行なわず副走査方向についてのみ2分の1のダウンサンプリングを行う。
【0052】
図3(H)および図3(I)に示すように、この場合でも、白孤立点の修正により、ダウンサンプリングの位相に拘わらずダウンサンプリングした後の画像のドット密度が一定になっている。
【0053】
一方、図4は、白孤立点の修正を行わなかった場合について説明する図である。図4(A)は、図3(A)に示す画像に対して後述の収縮処理(図5に示すパターンマッチングによる収縮処理)を行った後の画像を示す図である。図4(B)〜図4(E)は、異なる位相で、主走査方向および副走査方向において2分の1で、図4(A)に示す画像をダウンサンプリングした後の画像を示す図である。図4(B)〜図4(E)に示すように、白孤立点の修正を行わない場合、ダウンサンプリングの位相によってダウンサンプリングした後の画像のドット密度が変化してしまう。
【0054】
また、図4(F)および図4(G)は、原画像の副走査方向の解像度(例えば400dpi)が、主走査方向の解像度(例えば200dpi)の2倍となっている場合における、異なる位相で、主走査方向および副走査方向において図4(A)に示す画像をダウンサンプリングした後の画像を示す図である。図4(F)および図4(G)に示すように、この場合でも、白孤立点の修正を行わないときには、ダウンサンプリングの位相によってダウンサンプリングした後の画像のドット密度が変化してしまう。
【0055】
白孤立点の修正が完了した後、制御部31は、白孤立点修正後の拡大画像に対する収縮処理を収縮処理部34に実行させる。なお、白孤立点が存在しない場合には、制御部31は、ただちに、拡大画像に対する収縮処理を収縮処理部34に実行させる。
【0056】
収縮処理部34は、拡大画像内の画素を主走査方向および副走査方向に沿ってスキャンしていき注目画素を順次設定し、パターンマッチングで注目画素のドットの有無を決定していく(ステップS7)。最初の場合、拡大画像における第1ラインにおける主走査方向の先頭画素が注目画素に選択される。次に、第1ラインにおける主走査方向の次の画素が注目画素に選択される。そして、第1ラインにおける主走査方向の最後の画素の次は、第2ラインにおける主走査方向の先頭画素が注目画素に選択される。
【0057】
図5は、図2における収縮処理部34による収縮処理のパターンマッチングの一例を説明する図である。図5に示すように、注目画素、主走査方向において注目画素の次の画素(第1周辺画素)、副走査方向において注目画素の次の画素(第2周辺画素)、副走査方向において第1周辺画素の次の画素、つまり、主走査方向において第2周辺画素の次の画素(第3周辺画素)からなる4つの画素における画素値(つまり、ドットの有無)のパターン51〜66に応じて、注目画素の画素値(つまり、ドットの有無)が決定される。
【0058】
例えば、パターン56によって、横線の収縮が行われ、パターン59によって、縦線の収縮が行われ、パターン57によって、縦線および横線の収縮が行われる。また、例えば、パターン60〜65によって、後述の図6や図7のように細線を斜めに配列して斜線を表現する場合において、配列されている細線の連続性が収縮およびダウンサンプリング後においても維持される。
【0059】
収縮処理が完了した後、制御部は、収縮処理後の拡大画像に対する整数分の1(1/M)のダウンサンプリングをダウンサンプリング部35に実行させる。ダウンサンプリング部35は、整数分の1(M/1)で拡大画像をダウンサンプリングし、原画像に対して非整数倍の画像を生成する(ステップS8)。
【0060】
このようにして、原画像に対して非整数倍(N/M)の画像が得られる。
【0061】
図6は、図1に示す画像処理装置14によって、細線画を、主走査方向および副走査方向において1.5倍拡大する場合の一例を示す図である。図7は、図6に示す場合において異なる位相でダウンサンプリングしたときの、ダウンサンプリング後の画像を示す図である。
【0062】
図6(A)は、原画像を示す図である。この原画像では、1ドットの横細線が斜めに配列されて斜線が表現されている。
【0063】
図6(B)は、図6(A)の画像を主走査方向および副走査方向においてそれぞれ3倍にした拡大画像を示す図である。
【0064】
図6(C)は、図6(B)の拡大画像に対して、図5に示すパターンマッチングで収縮処理を行った後の画像(拡大画像)である。なお、ここでは、白孤立点はないものとしている。
【0065】
図6(D)は、図6(C)の拡大画像を、主走査方向および副走査方向においてそれぞれ2分の1でダウンサンプリングして得られる画像を示す図である。
【0066】
図7(A)〜図7(C)は、図6(D)とはそれぞれ異なる位相で、図6(C)の拡大画像をダウンサンプリングして得られる画像を示す図である。
【0067】
このように、図5に示すパターンマッチングで収縮処理を行うことで、図6(D)および図7(A)〜図7(C)に示すように、異なる位相でダウンサンプリングを行っても、細線の太さムラが発生しない。
【0068】
一方、図8(A)〜図8(D)は、図6に示す場合において収縮処理を行わなかったときの、異なる位相でダウンサンプリングした画像を示す図である。図8(A)〜図8(D)に示すように、上述の収縮処理を行わない場合には、ダウンサンプリング時の位相によって細線に太さムラが発生する。
【0069】
図9は、図1に示す画像処理装置14によって、細線画を、主走査方向および副走査方向において1.5倍拡大する場合の別の例を示す図である。図10は、図9に示す場合において異なる位相でダウンサンプリングしたときの、ダウンサンプリング後の画像を示す図である。
【0070】
図9(A)は、原画像を示す図である。この原画像では、1ドットの横細線が斜めに配列されて斜線が表現されている。
【0071】
図9(B)は、図9(A)の画像を主走査方向および副走査方向においてそれぞれ3倍にした拡大画像を示す図である。
【0072】
図9(C)は、図9(B)の拡大画像に対して、図5に示すパターンマッチングで収縮処理を行った後の画像(拡大画像)である。なお、ここでは、白孤立点はないものとしている。
【0073】
図9(D)は、図9(C)の拡大画像を、主走査方向および副走査方向においてそれぞれ2分の1でダウンサンプリングして得られる画像を示す図である。
【0074】
図10(A)〜図10(C)は、図9(D)とはそれぞれ異なる位相で、図9(C)の拡大画像をダウンサンプリングして得られる画像を示す図である。
【0075】
このように、図5に示すパターンマッチングで収縮処理を行うことで、図9(D)および図10(A)〜図10(C)に示すように、異なる位相でダウンサンプリングを行っても、細線の太さムラが発生しない。
【0076】
一方、図11(A)〜図11(D)は、図9に示す場合において収縮処理を行わなかったときの、異なる位相でダウンサンプリングした画像を示す図である。図11(A)〜図11(D)に示すように、上述の収縮処理を行わない場合には、ダウンサンプリング時の位相によって細線に太さムラが発生する。
【0077】
図12は、図1に示す画像処理装置14によって、擬似階調領域を、主走査方向および副走査方向において1.5倍拡大する場合の一例を示す図である。
【0078】
図12(A)は、擬似階調領域の原画像を示す図である。この原画像では、1画素おきにドットが配置されており、所定の濃度が表現されている。
【0079】
図12(B)は、図12(A)の画像を主走査方向および副走査方向においてそれぞれ3倍にした拡大画像を示す図である。なお、図12(A)の原画像は、擬似階調領域の画像であるので、スムージングは行われない。
【0080】
図12(C)は、図12(B)の拡大画像に対して、図5に示すパターンマッチングで収縮処理を行った後の画像(拡大画像)である。なお、ここでは、白孤立点はないものとしている。
【0081】
図12(D)は、図12(C)の拡大画像を、主走査方向および副走査方向においてそれぞれ2分の1でダウンサンプリングして得られる画像を示す図である。図12(E)〜図12(G)は、図12(D)とはそれぞれ異なる位相で、図12(C)の拡大画像をダウンサンプリングして得られる画像を示す図である。
【0082】
このように、図5に示すパターンマッチングで収縮処理を行うことで、図12(D)〜図12(G)に示すように、異なる位相でダウンサンプリングを行っても、細線の太さムラが発生しない。
【0083】
一方、図13(A)〜図13(D)は、図12に示す場合において収縮処理を行わなかったときの、異なる位相でダウンサンプリングした画像を示す図である。図13(A)〜図13(D)に示すように、上述の収縮処理を行わない場合には、ダウンサンプリング時の位相によって擬似階調に濃淡ムラが発生する。
【0084】
以上のように、上記実施の形態によれば、拡大処理部32は、主走査方向および/または副走査方向において整数倍に画像を拡大した拡大画像を生成し、収縮処理部34は、その拡大画像に対して収縮処理を行い、ダウンサンプリング部35は、収縮処理後の拡大画像を、主走査方向および/または副走査方向において整数分の1にダウンサンプリングする。
【0085】
これにより、細線部分の太さムラ、擬似階調領域の濃淡ムラなどの画質劣化を抑制しつつ非整数倍の画像変倍が行われる。
【0086】
なお、上述の実施の形態は、本発明の好適な例であるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【0087】
例えば、上記実施の形態において、拡大処理部32は、主走査方向および副走査方向の一方のみを非整数倍に拡大するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、例えば、複合機などにおける画像解像度の変換に適用可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 画像形成装置
14 画像処理装置
31 制御部(擬似階調領域特定部の一例)
32 拡大処理部
33 白孤立点修正部(修正処理部の一例)
34 収縮処理部
35 ダウンサンプリング部
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
文字、線画などの画像を非整数倍で変倍する画像処理装置が提案されている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献2に記載の技術は、スムージングしつつ3倍の拡大処理を行った後、2分の1のダウンサンプリングを行って、1.5倍の非整数倍拡大を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−312762号公報
【特許文献2】特開平10−84472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のようにして非整数倍の拡大を行うと、ダウンサンプリングに起因して、非整数倍の拡大後の画像において細線部分に太さムラが生じたり擬似階調領域に濃淡ムラが生じることがある。擬似階調領域の濃淡ムラは、誤差拡散法による擬似階調領域の場合に顕著である。
【0006】
太さムラを解消するためにダウンサンプリング時に論理和法を使用することが考えられるが、その場合、細線部分が全体的に太くなり、文字が潰れてしまうとともに、比較的濃度が高い擬似階調領域も潰れてしまう。
【0007】
また、特開平7−28992号公報に記載の技術は、原画像に対して細線化を行い、細線化後にダウンサンプリングする方法であるが、原画像と原画像を拡大した後の画像とでは細線部分の太さの分布などといった画像の特徴が異なるため、原画像を拡大した後の画像に対して、特開平7−28992号公報に記載の技術を適用しても、良好な非整数倍の画像を得ることは困難である。
【0008】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、細線部分の太さムラ、擬似階調領域の濃淡ムラなどの画質劣化を抑制しつつ非整数倍の画像変倍を行う画像処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明では以下のようにした。
【0010】
本発明に係る画像処理装置は、主走査方向および/または副走査方向において整数倍に画像を拡大する拡大処理部と、整数倍に拡大された画像に対して収縮処理を行う収縮処理部と、収縮処理部により収縮処理が実行された画像を整数分の1にダウンサンプリングするダウンサンプリング部とを備える。
【0011】
これにより、細線部分の太さムラ、擬似階調領域の濃淡ムラなどの画質劣化を抑制しつつ非整数倍の画像変倍が行われる。
【0012】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置に加え、次のようにしてもよい。この場合、画像処理装置は、画像におけるドットのない孤立画素に対応する整数倍に拡大された画像におけるドットのない画素集合の形状を、ダウンサンプリングの位相に拘わらずダウンサンプリング後のドット密度が一定となる形状に修正する修正処理部をさらに備える。
【0013】
これにより、原画像におけるドットのない孤立画素(つまり、ドットのある画素に囲まれている、ドットのない1画素)に起因する画質劣化を抑制することができる。
【0014】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、収縮処理部は、ダウンサンプリングの位相に拘わらずダウンサンプリング後のドット密度が一定となるように収縮処理を行う。
【0015】
これにより、ダウンサンプリングの位相に拘わらず画質劣化を抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、収縮処理部は、整数倍に拡大された画像内において注目画素を主走査方向および副走査方向に沿って順番にラインスキャンしていき、注目画素および注目画素の周辺画素のうち、注目画素、注目画素のあるラインにおいて主走査方向で注目画素より後の画素、および副走査方向において注目画素のあるラインより後のラインの画素の値から、注目画素のドットの有無を決定する。
【0017】
これにより、収縮処理済みの画素についての、収縮処理前の画素値(ドットの有無を示す値)を使用しないで収縮処理が行われるため、収縮処理前の画素値を収縮処理後の画素値で逐次上書きすることが可能であり、収縮処理のために要求される記憶領域が少なくて済む。
【0018】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、画像処理装置は、画像内の擬似階調領域を特定する擬似階調領域特定部をさらに備える。そして、拡大処理部は、擬似階調領域に対してスムージングを行わずにニアレストネイバー法で画像を拡大し、その擬似階調領域以外の領域に対してスムージングを行いつつ画像を拡大する。
【0019】
これにより、擬似階調領域についてはスムージングを行わずに拡大処理を行うため、擬似階調領域固有のドットパターンが維持され、擬似階調領域の濃淡ムラが抑制される。
【0020】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、ダウンサンプリング後の画像は、拡大前の画像の非整数倍となっている。
【0021】
また、本発明に係る画像形成装置は、上記の画像処理装置のいずれかを備える。
【0022】
これにより、画像形成装置の取り扱う画像(例えばファクシミリ受信画像など)について、細線部分の太さムラ、擬似階調領域の濃淡ムラなどの画質劣化を抑制しつつ非整数倍の画像変倍が行われる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、細線部分の太さムラ、擬似階調領域の濃淡ムラなどの画質劣化を抑制しつつ非整数倍の画像変倍が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1における画像処理装置の動作について説明するフローチャートである。
【図3】図3は、図2における白孤立点修正部による白孤立点の修正を説明する図である。
【図4】図4は、白孤立点の修正を行わなかった場合について説明する図である。
【図5】図5は、図2における収縮処理部による収縮処理のパターンマッチングの一例を説明する図である。
【図6】図6は、図1に示す画像処理装置によって、細線画を、主走査方向および副走査方向において1.5倍拡大する場合の一例を示す図である。
【図7】図7は、図6に示す場合において異なる位相でダウンサンプリングしたときの、ダウンサンプリング後の画像を示す図である。
【図8】図8は、図6に示す場合において収縮処理を行わなかったときの、ダウンサンプリング後の画像を示す図である。
【図9】図9は、図1に示す画像処理装置によって、細線画を、主走査方向および副走査方向において1.5倍拡大する場合の別の例を示す図である。
【図10】図10は、図9に示す場合において異なる位相でダウンサンプリングしたときの、ダウンサンプリング後の画像を示す図である。
【図11】図11は、図9に示す場合において収縮処理を行わなかったときの、ダウンサンプリング後の画像を示す図である。
【図12】図12は、図1に示す画像処理装置によって、擬似階調領域を、主走査方向および副走査方向において1.5倍拡大する場合の一例を示す図である。
【図13】図13は、図12に示す場合において収縮処理を行わなかったときの、ダウンサンプリング後の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置1の構成を示すブロック図である。図1に示す画像形成装置1は、複合機である。ただし、画像形成装置1は、プリンター、コピー機、ファクシミリ機などでもよい。
【0027】
この画像形成装置1は、印刷装置11と、画像読取装置12と、ファクシミリ装置13と、画像処理装置14とを備える。
【0028】
印刷装置11は、ラスター画像データに基づいて原稿画像を印刷する内部装置である。印刷装置11は、例えば、画像処理装置14により拡大処理された画像データに基づいて原稿画像を印刷する。
【0029】
画像読取装置12は、原稿から原稿画像を光学的に読み取り、原稿画像の画像データを生成する内部装置である。
【0030】
ファクシミリ装置13は、送信すべき原稿画像の画像データからファクシミリ信号を生成し所定の通信路を介して送信するとともに、ファクシミリ信号を所定の通信路を介して受信し画像データに変換する内部装置である。
【0031】
画像処理装置14は、画像読取装置12、ファクシミリ装置13などで生成された画像データに対して拡大処理などの画像処理を行う。特に、画像処理装置14は、主走査方向および/または副走査方向に非整数倍で二値画像を拡大する。例えば、画像処理装置14は、ファクシミリ装置13により受信された400dpi(dot per inch)の画像の解像度を、印刷用の600dpiに変換する。
【0032】
画像処理装置14は、演算処理装置21とメモリー22とを有する。演算処理装置21は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やマイクロコンピューターで実現され、各種処理部を有する。メモリー22は、RAM(Random Access Memory)などの書換可能な記憶装置である。メモリー22には、拡大処理などの画像処理を施す前の画像データ、画像処理の途中のデータ、画像処理を施した後の画像データなどが一時的に記憶される。
【0033】
また、演算処理装置21は、処理部として、制御部31、拡大処理部32、白孤立点修正部33、収縮処理部34、およびダウンサンプリング部35を有する。
【0034】
制御部31は、拡大処理部32、白孤立点修正部33、収縮処理部34、およびダウンサンプリング部35を制御するとともに、二値画像の画像データにおいて、主走査方向および副走査方向に沿って順番に画素を注目画素としてスキャンする。
【0035】
この実施の形態では、制御部31は、原画像内の擬似階調領域を特定する。なお、擬似階調領域とは、誤差拡散法やスクリーン法などにより得られ、ドットの大きさや密度で階調を表現した領域のことである。例えば、制御部31は、注目画素周辺の所定の範囲の画素の値から、注目画素が擬似階調領域に属するか否かを判定する。具体的には、所定の範囲内で隣接する2画素の値が異なる箇所の数などによって、注目画素が擬似階調領域に属するか否かが判定される。
【0036】
拡大処理部32は、主走査方向および/または副走査方向において整数倍に原画像を拡大し、拡大画像を生成する。この実施の形態では、拡大処理部32は、上述の擬似階調領域以外の領域(細線画、文字など)に対してスムージングを行いつつ原画像を拡大し、擬似階調領域についてはスムージングを行わずにニアレストネイバー法で原画像を拡大する。
【0037】
白孤立点修正部33は、原画像におけるドットのない孤立画素(以下、白孤立点という)に対応する拡大画像におけるドットのない画素集合の形状を、ダウンサンプリングの位相に拘わらずダウンサンプリング後のドット密度が一定となる形状に修正する。
【0038】
収縮処理部34は、拡大画像に対して収縮処理を行う。この実施の形態では、収縮処理部34は、白孤立点修正部33により白孤立点が修正された後の拡大画像に対して収縮処理を行う。
【0039】
また、この実施の形態では、収縮処理部34は、拡大画像内において注目画素を主走査方向および副走査方向に沿って順番にラインスキャンしていき、注目画素および注目画素の周辺画素のうち、注目画素、注目画素のあるラインにおいて主走査方向で注目画素より後の画素、および副走査方向において注目画素のあるラインより後のラインの画素の値から、注目画素のドットの有無を決定する。
【0040】
この実施の形態では、収縮処理部34は、ダウンサンプリングの位相に拘わらずダウンサンプリング後のドット密度が一定となるように収縮処理を行う。また、この実施の形態では、収縮処理部34は、原画像において繋がっている2つの細線(縦細線および/または横細線)がダウンサンプリング後の画像においても繋がるように収縮処理を行う。
【0041】
ダウンサンプリング部35は、収縮処理部34により収縮処理が実行された画像を整数分の1にダウンサンプリングする。この実施の形態では、ダウンサンプリング後の画像は、拡大前の原画像の非整数倍となる。
【0042】
次に、上記画像処理装置の動作について説明する。図2は、図1における画像処理装置14の動作について説明するフローチャートである。
【0043】
まず、制御部31は、注目画素を設定する(ステップS1)。最初の場合、第1ラインにおける主走査方向の先頭画素が注目画素に選択される。次に、第1ラインにおける主走査方向の次の画素が注目画素に選択される。そして、第1ラインにおける主走査方向の最後の画素の次は、第2ラインにおける主走査方向の先頭画素が注目画素に選択される。
【0044】
次に、制御部31は、注目画素が擬似階調領域に属するか否かを判定する(ステップS2)。
【0045】
そして、注目画素が擬似階調領域に属さないと判定された場合、拡大処理部32は、その画素についてスムージングしつつ、主走査方向および副走査方向に整数倍(N倍)の拡大処理を行う(ステップS3)。一方、注目画素が擬似階調領域に属すると判定された場合、拡大処理部32は、その画素についてスムージングせずにニアレストネイバー法で主走査方向および副走査方向に整数倍(N倍)の拡大処理を行う(ステップS4)。
【0046】
注目画素についての拡大処理が終了すると、制御部31は、注目画素が最後のラインの最後の画素まで到達したか否かを判定し(ステップS5)、注目画素が最後のラインの最後の画素まで到達していなければ、次の注目画素を設定する(ステップS1)。
【0047】
以後、画像全域に対する拡大処理が完了するまで、ステップS1〜S5の処理が適宜繰り返し行われる。
【0048】
拡大処理が完了すると、制御部31は、拡大処理後の画像において、白孤立点に対応する画素領域を検索する。拡大処理後の画像において、白孤立点に対応する画素領域は、N×N画素のドットのない画素領域となる。制御部31は、白孤立点に対応する画素領域を発見すると、その画素領域の位置を白孤立点修正部33に通知して、白孤立点の修正を行わせる。白孤立点修正部33は、通知された位置から白孤立点に対応する画素領域と特定し、その画素領域の形状を修正する(ステップS6)。つまり、白孤立点修正部33は、ダウンサンプリングの位相に拘わらずダウンサンプリング後のドット密度が一定となるように、白孤立点に対応する画素領域の一部の画素の値を、ドットなしを示す値から、ドットありを示す値へ変更する。ドットの有無を変更する画素は、後段の収縮処理およびダウンサンプリングに応じて決定される。
【0049】
図3は、図2における白孤立点修正部33による白孤立点の修正を説明する図である。図3(A)は、白孤立点に対応する3×3画素のドットのない画素領域を示す図である。図3(B)は、図3(A)に示す画素領域について白孤立点の修正を行った後のドットのない画素領域の形状を示す図である。図3(C)は、図3(B)に示す修正後の画像に対して後述の収縮処理(図5に示すパターンマッチングによる収縮処理)を行った後の画像を示す図である。図3(D)〜図3(G)は、異なる位相で、主走査方向および副走査方向において2分の1で、図3(C)に示す画像をダウンサンプリングした後の画像を示す図である。
【0050】
図3(D)〜図3(G)に示すように、白孤立点の修正により、ダウンサンプリングの位相に拘わらずダウンサンプリングした後の画像のドット密度が一定になっている。
【0051】
また、図3(H)および図3(I)は、原画像の副走査方向の解像度(例えば400dpi)が、主走査方向の解像度(例えば200dpi)の2倍となっている場合における、異なる位相で、主走査方向および副走査方向において図3(C)に示す画像をダウンサンプリングした後の画像を示す図である。この場合、主走査方向についてはダウンサンプリングを行なわず副走査方向についてのみ2分の1のダウンサンプリングを行う。
【0052】
図3(H)および図3(I)に示すように、この場合でも、白孤立点の修正により、ダウンサンプリングの位相に拘わらずダウンサンプリングした後の画像のドット密度が一定になっている。
【0053】
一方、図4は、白孤立点の修正を行わなかった場合について説明する図である。図4(A)は、図3(A)に示す画像に対して後述の収縮処理(図5に示すパターンマッチングによる収縮処理)を行った後の画像を示す図である。図4(B)〜図4(E)は、異なる位相で、主走査方向および副走査方向において2分の1で、図4(A)に示す画像をダウンサンプリングした後の画像を示す図である。図4(B)〜図4(E)に示すように、白孤立点の修正を行わない場合、ダウンサンプリングの位相によってダウンサンプリングした後の画像のドット密度が変化してしまう。
【0054】
また、図4(F)および図4(G)は、原画像の副走査方向の解像度(例えば400dpi)が、主走査方向の解像度(例えば200dpi)の2倍となっている場合における、異なる位相で、主走査方向および副走査方向において図4(A)に示す画像をダウンサンプリングした後の画像を示す図である。図4(F)および図4(G)に示すように、この場合でも、白孤立点の修正を行わないときには、ダウンサンプリングの位相によってダウンサンプリングした後の画像のドット密度が変化してしまう。
【0055】
白孤立点の修正が完了した後、制御部31は、白孤立点修正後の拡大画像に対する収縮処理を収縮処理部34に実行させる。なお、白孤立点が存在しない場合には、制御部31は、ただちに、拡大画像に対する収縮処理を収縮処理部34に実行させる。
【0056】
収縮処理部34は、拡大画像内の画素を主走査方向および副走査方向に沿ってスキャンしていき注目画素を順次設定し、パターンマッチングで注目画素のドットの有無を決定していく(ステップS7)。最初の場合、拡大画像における第1ラインにおける主走査方向の先頭画素が注目画素に選択される。次に、第1ラインにおける主走査方向の次の画素が注目画素に選択される。そして、第1ラインにおける主走査方向の最後の画素の次は、第2ラインにおける主走査方向の先頭画素が注目画素に選択される。
【0057】
図5は、図2における収縮処理部34による収縮処理のパターンマッチングの一例を説明する図である。図5に示すように、注目画素、主走査方向において注目画素の次の画素(第1周辺画素)、副走査方向において注目画素の次の画素(第2周辺画素)、副走査方向において第1周辺画素の次の画素、つまり、主走査方向において第2周辺画素の次の画素(第3周辺画素)からなる4つの画素における画素値(つまり、ドットの有無)のパターン51〜66に応じて、注目画素の画素値(つまり、ドットの有無)が決定される。
【0058】
例えば、パターン56によって、横線の収縮が行われ、パターン59によって、縦線の収縮が行われ、パターン57によって、縦線および横線の収縮が行われる。また、例えば、パターン60〜65によって、後述の図6や図7のように細線を斜めに配列して斜線を表現する場合において、配列されている細線の連続性が収縮およびダウンサンプリング後においても維持される。
【0059】
収縮処理が完了した後、制御部は、収縮処理後の拡大画像に対する整数分の1(1/M)のダウンサンプリングをダウンサンプリング部35に実行させる。ダウンサンプリング部35は、整数分の1(M/1)で拡大画像をダウンサンプリングし、原画像に対して非整数倍の画像を生成する(ステップS8)。
【0060】
このようにして、原画像に対して非整数倍(N/M)の画像が得られる。
【0061】
図6は、図1に示す画像処理装置14によって、細線画を、主走査方向および副走査方向において1.5倍拡大する場合の一例を示す図である。図7は、図6に示す場合において異なる位相でダウンサンプリングしたときの、ダウンサンプリング後の画像を示す図である。
【0062】
図6(A)は、原画像を示す図である。この原画像では、1ドットの横細線が斜めに配列されて斜線が表現されている。
【0063】
図6(B)は、図6(A)の画像を主走査方向および副走査方向においてそれぞれ3倍にした拡大画像を示す図である。
【0064】
図6(C)は、図6(B)の拡大画像に対して、図5に示すパターンマッチングで収縮処理を行った後の画像(拡大画像)である。なお、ここでは、白孤立点はないものとしている。
【0065】
図6(D)は、図6(C)の拡大画像を、主走査方向および副走査方向においてそれぞれ2分の1でダウンサンプリングして得られる画像を示す図である。
【0066】
図7(A)〜図7(C)は、図6(D)とはそれぞれ異なる位相で、図6(C)の拡大画像をダウンサンプリングして得られる画像を示す図である。
【0067】
このように、図5に示すパターンマッチングで収縮処理を行うことで、図6(D)および図7(A)〜図7(C)に示すように、異なる位相でダウンサンプリングを行っても、細線の太さムラが発生しない。
【0068】
一方、図8(A)〜図8(D)は、図6に示す場合において収縮処理を行わなかったときの、異なる位相でダウンサンプリングした画像を示す図である。図8(A)〜図8(D)に示すように、上述の収縮処理を行わない場合には、ダウンサンプリング時の位相によって細線に太さムラが発生する。
【0069】
図9は、図1に示す画像処理装置14によって、細線画を、主走査方向および副走査方向において1.5倍拡大する場合の別の例を示す図である。図10は、図9に示す場合において異なる位相でダウンサンプリングしたときの、ダウンサンプリング後の画像を示す図である。
【0070】
図9(A)は、原画像を示す図である。この原画像では、1ドットの横細線が斜めに配列されて斜線が表現されている。
【0071】
図9(B)は、図9(A)の画像を主走査方向および副走査方向においてそれぞれ3倍にした拡大画像を示す図である。
【0072】
図9(C)は、図9(B)の拡大画像に対して、図5に示すパターンマッチングで収縮処理を行った後の画像(拡大画像)である。なお、ここでは、白孤立点はないものとしている。
【0073】
図9(D)は、図9(C)の拡大画像を、主走査方向および副走査方向においてそれぞれ2分の1でダウンサンプリングして得られる画像を示す図である。
【0074】
図10(A)〜図10(C)は、図9(D)とはそれぞれ異なる位相で、図9(C)の拡大画像をダウンサンプリングして得られる画像を示す図である。
【0075】
このように、図5に示すパターンマッチングで収縮処理を行うことで、図9(D)および図10(A)〜図10(C)に示すように、異なる位相でダウンサンプリングを行っても、細線の太さムラが発生しない。
【0076】
一方、図11(A)〜図11(D)は、図9に示す場合において収縮処理を行わなかったときの、異なる位相でダウンサンプリングした画像を示す図である。図11(A)〜図11(D)に示すように、上述の収縮処理を行わない場合には、ダウンサンプリング時の位相によって細線に太さムラが発生する。
【0077】
図12は、図1に示す画像処理装置14によって、擬似階調領域を、主走査方向および副走査方向において1.5倍拡大する場合の一例を示す図である。
【0078】
図12(A)は、擬似階調領域の原画像を示す図である。この原画像では、1画素おきにドットが配置されており、所定の濃度が表現されている。
【0079】
図12(B)は、図12(A)の画像を主走査方向および副走査方向においてそれぞれ3倍にした拡大画像を示す図である。なお、図12(A)の原画像は、擬似階調領域の画像であるので、スムージングは行われない。
【0080】
図12(C)は、図12(B)の拡大画像に対して、図5に示すパターンマッチングで収縮処理を行った後の画像(拡大画像)である。なお、ここでは、白孤立点はないものとしている。
【0081】
図12(D)は、図12(C)の拡大画像を、主走査方向および副走査方向においてそれぞれ2分の1でダウンサンプリングして得られる画像を示す図である。図12(E)〜図12(G)は、図12(D)とはそれぞれ異なる位相で、図12(C)の拡大画像をダウンサンプリングして得られる画像を示す図である。
【0082】
このように、図5に示すパターンマッチングで収縮処理を行うことで、図12(D)〜図12(G)に示すように、異なる位相でダウンサンプリングを行っても、細線の太さムラが発生しない。
【0083】
一方、図13(A)〜図13(D)は、図12に示す場合において収縮処理を行わなかったときの、異なる位相でダウンサンプリングした画像を示す図である。図13(A)〜図13(D)に示すように、上述の収縮処理を行わない場合には、ダウンサンプリング時の位相によって擬似階調に濃淡ムラが発生する。
【0084】
以上のように、上記実施の形態によれば、拡大処理部32は、主走査方向および/または副走査方向において整数倍に画像を拡大した拡大画像を生成し、収縮処理部34は、その拡大画像に対して収縮処理を行い、ダウンサンプリング部35は、収縮処理後の拡大画像を、主走査方向および/または副走査方向において整数分の1にダウンサンプリングする。
【0085】
これにより、細線部分の太さムラ、擬似階調領域の濃淡ムラなどの画質劣化を抑制しつつ非整数倍の画像変倍が行われる。
【0086】
なお、上述の実施の形態は、本発明の好適な例であるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【0087】
例えば、上記実施の形態において、拡大処理部32は、主走査方向および副走査方向の一方のみを非整数倍に拡大するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、例えば、複合機などにおける画像解像度の変換に適用可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 画像形成装置
14 画像処理装置
31 制御部(擬似階調領域特定部の一例)
32 拡大処理部
33 白孤立点修正部(修正処理部の一例)
34 収縮処理部
35 ダウンサンプリング部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向および/または副走査方向において整数倍に画像を拡大する拡大処理部と、
前記整数倍に拡大された画像に対して収縮処理を行う収縮処理部と、
前記収縮処理部により収縮処理が実行された画像を、主走査方向および/または副走査方向において整数分の1にダウンサンプリングするダウンサンプリング部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像におけるドットのない孤立画素に対応する前記整数倍に拡大された画像におけるドットのない画素集合の形状を、前記ダウンサンプリングの位相に拘わらず前記ダウンサンプリング後のドット密度が一定となる形状に修正する修正処理部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記収縮処理部は、前記ダウンサンプリングの位相に拘わらず前記ダウンサンプリング後のドット密度が一定となるように前記収縮処理を行うことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記収縮処理部は、前記整数倍に拡大された画像内において注目画素を主走査方向および副走査方向に沿って順番にラインスキャンしていき、前記注目画素および前記注目画素の周辺画素のうち、前記注目画素、前記注目画素のあるラインにおいて主走査方向で前記注目画素より後の画素、および副走査方向において前記注目画素のあるラインより後のラインの画素の値から、前記注目画素のドットの有無を決定することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画像内の擬似階調領域を特定する擬似階調領域特定部をさらに備え、
前記拡大処理部は、前記擬似階調領域に対してスムージングを行わずにニアレストネイバー法で前記画像を拡大し、前記擬似階調領域以外の領域に対してスムージングを行いつつ前記画像を拡大すること、
を特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記ダウンサンプリング後の画像は、拡大前の前記画像の非整数倍となっていることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載の画像処理装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
主走査方向および/または副走査方向において整数倍に画像を拡大する拡大処理部と、
前記整数倍に拡大された画像に対して収縮処理を行う収縮処理部と、
前記収縮処理部により収縮処理が実行された画像を、主走査方向および/または副走査方向において整数分の1にダウンサンプリングするダウンサンプリング部と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像におけるドットのない孤立画素に対応する前記整数倍に拡大された画像におけるドットのない画素集合の形状を、前記ダウンサンプリングの位相に拘わらず前記ダウンサンプリング後のドット密度が一定となる形状に修正する修正処理部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記収縮処理部は、前記ダウンサンプリングの位相に拘わらず前記ダウンサンプリング後のドット密度が一定となるように前記収縮処理を行うことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記収縮処理部は、前記整数倍に拡大された画像内において注目画素を主走査方向および副走査方向に沿って順番にラインスキャンしていき、前記注目画素および前記注目画素の周辺画素のうち、前記注目画素、前記注目画素のあるラインにおいて主走査方向で前記注目画素より後の画素、および副走査方向において前記注目画素のあるラインより後のラインの画素の値から、前記注目画素のドットの有無を決定することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画像内の擬似階調領域を特定する擬似階調領域特定部をさらに備え、
前記拡大処理部は、前記擬似階調領域に対してスムージングを行わずにニアレストネイバー法で前記画像を拡大し、前記擬似階調領域以外の領域に対してスムージングを行いつつ前記画像を拡大すること、
を特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記ダウンサンプリング後の画像は、拡大前の前記画像の非整数倍となっていることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載の画像処理装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−77870(P2013−77870A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214888(P2011−214888)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】
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