説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】彩色の印刷用のノズル解像度に対して無彩色の印刷用のノズル解像度が異なる印刷装置に利用される画像データの印刷処理をより効率的に実行する。
【解決手段】プリンター20は、カラーのノズル解像度に対して黒のノズル解像度がX倍であり、無彩色(Y)及び彩色(C,C)のプレーンを有するJPEGデータ(画像データ)を処理する。このプリンター20では、黒解像度X倍印刷モードの処理指令を取得したときに、Yプレーンに対してC,Cプレーンを1/Xの倍率でリサイズ処理し、このリサイズしたC,CプレーンとYプレーンとをRAM23に記憶して印刷データを生成する。したがって、RAM23の記憶量をより低減可能である。また、印刷データを生成するに際して、C,Cプレーンの画素をX倍に重複利用するものとしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像処理装置としては、サンプリング対象のJPEG画像に対しハフマン復号化、ランレングスハフマン復号化及び逆量子化を行い、得られた8×8のブロックの各々に対して全64画素のうち画素値取得対象の画素を選択し、選択した画素のみについて逆DCT演算を行うことにより、圧縮画像をサンプリングして表示するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、選択した画素のみについて逆DCT演算を行うことから、圧縮画像をサンプリングして表示するための処理負担を軽減してその処理時間長を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−271794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、黒の解像度とカラーの解像度とが異なるノズルを備えた印刷装置がある。このような印刷装置において、解凍した画像データから各色のインク吐出量を示す印刷データへの変換処理に対して、処理負担の低減を図ることは考えられていなかった。このような印刷装置に用いる画像データの印刷処理をより効率的に実行することが求められていた。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、彩色の印刷用のノズル解像度に対して無彩色の印刷用のノズル解像度が異なる印刷装置に利用される画像データの印刷処理をより効率的に実行することができる画像処理装置及び画像処理方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の画像処理装置は、
彩色の印刷用のノズル解像度に対して無彩色の印刷用のノズル解像度がX倍(Xは2以上の整数)である印刷装置に用いられ、無彩色及び彩色のプレーンを有する画像データを処理する画像処理装置であって、
前記無彩色プレーンに対して前記彩色プレーンを1/Xの倍率でリサイズ処理するリサイズ処理手段と、
前記リサイズされた彩色プレーンと無彩色プレーンとを記憶する記憶手段と、
前記記憶された彩色プレーンと無彩色プレーンとを用いて前記印刷装置で用いられる印刷データを生成する生成処理手段と、
を備えたものである。
【0008】
この画像処理装置は、彩色の印刷用のノズル解像度に対して無彩色の印刷用のノズル解像度がX倍である印刷装置に用いられ、無彩色及び彩色のプレーンを有する画像データを処理する。この画像処理装置では、無彩色のプレーンに対して彩色のプレーンを1/Xの倍率でリサイズ処理し、このリサイズした彩色プレーンと無彩色プレーンとを用いて印刷データを生成する。このように、彩色のノズル解像度に対してX倍の無彩色のノズル解像度に合わせて彩色プレーンを1/X倍にリサイズして記憶する。したがって、記憶量をより低減するなどして、彩色の印刷用のノズル解像度に対して無彩色の印刷用のノズル解像度が異なる印刷装置に利用される画像データの印刷処理をより効率的に実行することができる。
【0009】
本発明の画像処理装置において、前記生成処理手段は、前記彩色プレーンの画素を重複利用して前記印刷データを生成するものとしてもよい。こうすれば、彩色プレーンの画素を重複利用することにより、印刷処理をより効率的に実行することができる。
【0010】
本発明の画像処理装置において、前記生成処理手段は、前記彩色プレーンの画素値と前記無彩色プレーンの画素値とから彩色ノズルのノズル値を求めると共に、該彩色ノズルに用いた彩色プレーンの画素値を重複利用し該重複利用する彩色プレーンの画素値と前記無彩色プレーンの画素値とから前記X倍の無彩色ノズルのノズル値を求めることにより前記印刷データを生成するものとしてもよい。こうすれば、無彩色及び彩色のプレーンを有する画像データから直接、印刷データを生成するため、印刷処理をより効率的に実行することができる。ここで、前記記憶手段は、前記彩色及び無彩色プレーンの画素値と、前記彩色及び無彩色ノズルのノズル値とを対応付けた対応情報を記憶し、前記生成処理手段は、前記彩色プレーンの画素値と前記無彩色プレーンの画素値とから前記対応情報を用いて前記彩色及び無彩色ノズルのノズル値を求めることにより前記印刷データを生成するものとしてもよい。こうすれば、より効率よく印刷データを生成することができる。
【0011】
本発明の画像処理装置において、前記リサイズ処理手段は、前記彩色の印刷用のノズル解像度に対して前記無彩色の印刷用のノズル解像度をX倍で印刷処理するX倍印刷処理指令を取得したときには、前記無彩色プレーンに対して前記彩色プレーンを1/Xの倍率でリサイズ処理するものとしてもよい。こうすれば、X倍印刷処理指令により印刷を実行するときに、印刷処理をより効率よく実行することができる。
【0012】
本発明の画像処理装置において、前記リサイズ処理手段は、指定された印刷サイズに基づいて前記無彩色プレーンをリサイズ処理すると共に、該無彩色プレーンに対して前記彩色プレーンを1/Xの倍率でリサイズ処理するものとしてもよい。こうすれば、リサイズ処理から円滑に印刷処理へ移行することができ、より効率よく印刷処理を実行することができる。
【0013】
本発明の画像処理方法は、
彩色の印刷用のノズル解像度に対して無彩色の印刷用のノズル解像度がX倍である印刷装置に用いられ、無彩色及び彩色のプレーンを有する画像データを処理する画像処理方法であって、
(a)前記無彩色プレーンに対して前記彩色プレーンを1/Xの倍率でリサイズ処理するステップと、
(b)前記リサイズした彩色プレーンと無彩色プレーンとを記憶するステップと、
(c)前記記憶した彩色プレーンと無彩色プレーンとを用いて印刷データを生成するステップと、
を含むものである。
【0014】
この画像処理方法は、上述した画像処理装置と同様に、彩色のノズル解像度に対してX倍の無彩色のノズル解像度に合わせて彩色プレーンを1/X倍にリサイズして記憶するため、記憶量をより低減するなどして、印刷処理をより効率的に実行することができる。なお、この画像処理方法において、上述した画像処理装置の種々の態様を採用してもよいし、また、上述した画像処理装置の各機能を実現するようなステップを追加してもよい。
【0015】
本発明のプログラムは、上述した画像処理方法の各ステップを1以上のコンピューターに実現させるものである。このプログラムは、コンピューターが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピューターから別のコンピューターへ配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムを1つのコンピューターに実行させるか又は複数のコンピューターに各ステップを分担して実行させれば、上述した画像処理方法の各ステップが実行されるため、この画像処理方法と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】プリンターシステム10の構成の概略を示す構成図。
【図2】LUT35の説明図。
【図3】印刷ヘッド31の構成の概略を示す構成図。
【図4】印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図5】印刷データへの変換処理の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態の一例を図面を用いて説明する。図1は本実施形態であるプリンターシステム10の構成の概略を示す構成図である。本実施形態のプリンターシステム10は、本発明の画像処理装置としてのプリンター20と、プリンター20に接続され入力装置47及びディスプレイ48を備え印刷指示などを行うパソコン(PC)40とを備えている。プリンター20は、プリンター20の全体をコントロールするコントローラー21と、ガラス面に載置された読取原稿を読み取る読取機構25と、着色剤を用い印刷媒体に画像を形成する印刷機構26とを備えている。また、プリンター20は、外部機器との情報のやりとりを行うインターフェイス(I/F)27と、各種情報の表示やユーザーからの入力を受け付ける操作パネル28と、メモリーカードとのデータの入出力を司るメモリーカードリーダー30とを備えている。このプリンター20は、読取機構25と印刷機構26とを備え、プリンター機能、スキャナー機能及びコピー機能を有するマルチファンクションプリンターとして構成されている。また、プリンター20では、詳しくは後述するが、黒解像度をカラー解像度のX倍(Xは2以上の整数、ここではX=2)で印刷する黒解像度X倍印刷モードを実行可能に構成されている。なお、プリンター20では、コントローラー21や読取機構25、印刷機構26、I/F27、操作パネル28及びメモリーカードリーダー30は、バス29によって電気的に接続されている。
【0018】
コントローラー21は、CPU22を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、一時的にデータを記憶したりデータを保存したりするRAM23と、各種処理プログラムを記憶しデータを書き換え可能なフラッシュメモリー24とを備えている。このコントローラー21は、画像読取処理を実行するよう読取機構25を制御すると共に、印刷処理を実行するよう印刷機構26を制御する。フラッシュメモリー24には、印刷データへの変換処理に用いられるルックアップテーブル(LUT)35が記憶されている。図2は、LUT35の説明図である。このLUT35は、画像データにおけるYCC色空間のY,Cb,Crの各値と、印刷データにおけるCMYK色空間のシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(K)の各値とが対応付けられた変換テーブルである。このLUT35は、印刷モードなどに応じて展開・縮小して利用される。
【0019】
また、このコントローラー21は、機能ブロックとして、リサイズ率設定部36、リサイズ処理部37及び生成処理部38を備えている。リサイズ率設定部36は、指定された印刷サイズに基づいてJPEGデータのYプレーン(無彩色プレーン)のリサイズ率を設定すると共に、Cb,Crプレーン(以下単にC,Cプレーンとも称する)のリサイズ率を設定する。このリサイズ率設定部36は、黒解像度X倍印刷モードが指令されたときに、JPEGデータのYプレーンに対してC,Cプレーンのリサイズ率を1/X倍に設定する処理を行う。リサイズ処理部37は、リサイズ率設定部36に設定されたリサイズ率でリサイズ処理を実行する機能を有している。特に、Yプレーンに対してC,Cプレーンのリサイズ率が1/Xであるときには、Yプレーンに対してC,Cプレーンを1/X倍でリサイズする。また、リサイズ処理部37は、リサイズ後の画像データをRAM23の所定領域に記憶させる機能を有している。生成処理部38は、RAM23に記憶されたリサイズ後のYプレーンとC,Cプレーンとを用いて印刷機構26で用いられる印刷データを生成する処理を実行する機能を有している。この生成処理部38は、C,Cプレーンの画素を重複利用して印刷データを生成する。
【0020】
読取機構25は、フラットベッド式であり、原稿台に載置された原稿を画像データ(圧縮データ)として読み取る読取センサーと、原稿を読み取る際に読取センサーを移動させる移動機構とを備えた周知のイメージスキャナーとして構成されている。読取センサーは、原稿に向かって発光したあとの反射光をレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の各色に分解してスキャンデータとするセンサーである。
【0021】
印刷機構26は、印刷媒体Sへインクを吐出することにより印刷を行う印刷ヘッド31と、印刷ヘッド31へインクを供給するカートリッジ34とを備えた周知のインクジェット方式のカラープリンター機構として構成されている。印刷ヘッド31は、圧電素子に電圧をかけることによりこの圧電素子を変形させてインクを加圧する方式によりノズルから各色のインクを吐出する。なお、インクへ圧力をかける機構は、ヒーターの熱による気泡の発生によるものとしてもよい。
【0022】
図3は、印刷ヘッド31の構成の概略を示す構成図である。印刷ヘッド31は、図3に示すように、CMYの各色のインクを個別に吐出可能なノズル32C,32M,32Yが記録紙Sの搬送方向(副走査方向)に沿って配置されたノズル群33C,33M,33Yと、ブラック(K)のインクを吐出可能なノズル32Kが副走査方向に沿って配置されたノズル群33K1,33K2とが形成されている。ここで、各ノズル群の構成について、シアン(C)のノズル群33Cを例に挙げて説明する。ノズル群33Cは、2つのノズル列C1,C2からなり、各ノズル列C1,C2はそれぞれピッチが所定長さLとなるようにノズル32Cが配置されている。また、ノズル列C1のノズル32Cとノズル列C2のノズル32Cとは副走査方向に沿って千鳥(ジグザグ)になるよう配置され、そのピッチが所定長さLの半分の長さL/2となっている。本実施形態では、所定長さLはドットが150dpiの解像度となるように設定されており、ノズル列C1によって形成されるドットとノズル列C2によって形成されるドットとが副走査方向に交互に一列に並ぶように印刷を行なうことにより、シアン(C)のドットの解像度は300dpiとなる。マゼンタ(M)のノズル群33Mおよびイエロー(Y)のノズル群33Yも同様に構成され、得られる解像度は300dpiとなる。また、ブラック(K)のノズル群33K1,33K2も同様にそれぞれ2つのノズル列K11,K12および2つのノズル列K21,K22からなる。さらに、ノズル群33K1のノズル32Kとノズル群33K2のノズル32Kとの副走査方向のピッチが長さL/2の半分の長さL/4となるよう配置されている。このため、ノズル群33K1によって形成されるドットとノズル群33K2によって形成されるドットとが副走査方向に交互に一列に並ぶように印刷を行なうことにより、ブラック(K)のドットの解像度は600dpiとなる。このように、印刷ヘッド31は、合計10列のノズル列を備え、CMYのドットの解像度が300dpi、Kのドットの解像度が600dpiとなるよう構成されている。即ち、CMYのノズル密度に比してKのノズル密度が2倍(X倍)高密度となっている。この印刷機構26では、ノズル群33K1,K2を用いることにより黒の解像度をカラーに対してX倍(ここではX=2)の解像度で印刷する黒解像度X倍印刷モードや、ノズル群33K1を用いることにより黒とカラーとを同じ解像度で印刷する通常印刷モードとを実行することができる。
【0023】
操作パネル28は、表示部28aと操作部28bとを備えている。表示部28aには、メニューの選択や設定を行う各種操作画面などが表示される。また、操作部28bは、電源をオンオフするための電源キーやカーソルを上下左右に移動させるカーソルキー、入力をキャンセルするキャンセルキー,選択内容を決定する決定キーなどがあり、コントローラー21へユーザーの指示を入力できるようになっている。
【0024】
メモリーカードリーダー30は、スロットに挿入されたメモリーカードとの間でデータの入出力を行う。このメモリーカードリーダー30は、メモリーカードが装着されているとき、メモリーカードに保存されているファイルを読み出してコントローラー21に送信したりコントローラー21からの命令を入力しこの命令に基づいてメモリーカードにデータを書き込んだりする。
【0025】
次に、こうして構成された本実施形態のプリンター20の動作、特に、JPEGデータの画像を印刷処理する際の動作について説明する。ここでは、主として、メモリーカードに記憶されたJPEGデータを読み込み、このJPEGデータを印刷する処理について具体的に説明する。まずユーザーは、メモリーカードリーダー30にメモリーカードを装着し、図示しない印刷選択画面で印刷を行うJPEGデータを選択する。ユーザーは、操作部28bの各種キーを操作して印刷したい画像を選択し、図示しない印刷実行キーを押下する。すると、CPU22は、フラッシュメモリー24に記憶された印刷処理ルーチンを実行する。図4は、コントローラー21のCPU22により実行される印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンでは、CPU22は、LUT35、リサイズ率設定部36、リサイズ処理部37及び生成処理部38を利用してJPEGデータの解凍処理(印刷データの生成処理)を行う。
【0026】
図4の印刷処理ルーチンを開始すると、CPU22は、まず、JPEGデータのタグに格納された情報や、操作パネル28での入力内容から印刷設定の情報を取得する(ステップS100)。印刷設定情報には、JPEGデータのコンポーネントの情報(4:4:4、4:2:2及び4:2:0)や、黒の解像度をカラーの解像度に比してX倍(X=2)で印刷する黒解像度X倍印刷モードが選択されているか、通常印刷モードが選択されているかの情報が含まれている。また、印刷設定情報には、JPEGデータの画像サイズや、印刷用紙のサイズ(印刷サイズ)、シャープネス処理、コントラスト処理、ノイズ除去処理などの補正処理を実行するか否かの情報が含まれている。
【0027】
次に、CPU22は、JPEGデータを解凍してYプレーン,Cbプレーン(単にCプレーンとも称する),Crプレーン(単にCプレーンとも称する)を含む、画像データを生成する(ステップS110)。この解凍処理では、JPEGデータ(圧縮データ)に対し、エントロピー復号(ハフマン復号)処理、グループ復号処理及びランレングス復号処理を行い、得られたDCT係数に対し、逆量子化処理、逆離散コサイン変換処理及びMCU処理などを行い、Y,C,Cプレーンの画像データを生成する処理を行う。このとき、JPEGデータのコンポーネントが4:2:0であるときには、C,Cプレーンに対して単純水増し処理を行い、Y,C,Cプレーンの解像度を合わせる処理も行うものとしてもよい。次に、CPU22は、YCCからYCCへ変換するエンハンス処理を行う(ステップS120)。エンハンス処理は、補正実行処理部38が行うものとし、例えば、経験的に得られたYCC−YCC対応関係(例えばルックアップテーブル)を用いて、解凍した画像の色をプリンター20に適する色に補正する処理としてもよい。
【0028】
次に、CPU22は、黒解像度X倍印刷モードが選択されているか否かを判定し(ステップS130)、黒解像度X倍印刷モードが選択されていないとき、即ち、通常印刷モードが選択されているときには、リサイズ率設定部36により、C,Cプレーンの解像度がYプレーンの解像度と同じになるよう画像データのサイズから印刷サイズへのサイズ変換を行う拡大率を設定する(ステップS140)。続いて、リサイズ処理部37により、Y,C,Cプレーンを各々個別にリサイズし(ステップS150)、リサイズした各プレーンのデータを、RAM23の所定領域へ記憶させる(ステップS160)。リサイズ処理は、例えば、周知の単純水増(間引)処理、線形補間処理、バイキュービック処理などのいずれかを行うものとしてもよいが、ここでは、処理速度と画質との関係で線形補間処理を行うものとする。
【0029】
続いて、CPU22は、記憶された各プレーンの値を用いて、生成処理部38により、インク色変換処理を行う(ステップS170)。ここでは、Yプレーンの値とC,Cプレーンの値とから、LUT35を用いて直接的に、C,M,Y,Kの各色の値へ変換し、C,M,Y,Kの各色のプレーンを含む印刷データを生成する処理を行う。図2に示すLUT35では、Y,C,Cの値が入力されると、それに対応するC,M,Y,Kの各色の値が導出される。なお、このとき、図2の拡大図に示すように、画像データのYCC値(網掛けの球)が格子点データ(白い球)からずれているときには、画像データのYCC値が格納される最小の格子における各頂点である格子点とこの画像データのCMYKの点との距離に基づいて、例えば周知の線形補間などを行い、CMYK値を算出するものとした。ここでは、Y,C,Cプレーンの解像度は等しいから、Y,C,Cプレーンの各画素値を1つ用いて1つのCMYK値を得る。
【0030】
そして、生成した印刷データに対して、例えば、ハーフトーン処理などを行い、印刷機構26へ出力し、印刷処理を実行し(ステップS180)、このルーチンを終了する。ここでの印刷処理では、通常印刷モードでの印刷、即ちノズル群33C,33M,33Y,33K1を用いて印刷処理を実行する。こうすれば、黒解像度(無彩色ノズル解像度)とカラー解像度(彩色ノズル解像度)とが同じ印刷画像を得ることができる。
【0031】
一方、ステップS130で黒解像度X倍印刷モードが選択されているときには、CPU22は、リサイズ率設定部36により、C,Cプレーンの解像度がYプレーンの解像度の1/X(ここではX=2)となるよう画像データのサイズから印刷サイズへのサイズ変換を行う拡大率を設定する(ステップS190)。続いて、リサイズ処理部37により、Y,C,Cプレーンを各々個別にリサイズし(ステップS200)、リサイズした各プレーンのデータを、RAM23の所定領域へ記憶させる(ステップS210)。1/X倍でのリサイズは、画像データを主走査方向及び副走査方向に対して1/X倍にするものとした。このように、彩色(C,M,Y)のノズル解像度に対して無彩色(K)のノズル解像度をX倍で印刷処理するときに、印刷用の画像データの無彩色(Y)プレーンに対して彩色(C,C)プレーンを1/Xの倍率でリサイズ処理してRAM23に記憶するのである。このため、RAM23での記憶容量をより低減することができる。また、画質の劣化をより抑制しつつ、リサイズにかかる時間をより低減することができる。
【0032】
続いて、CPU22は、記憶された各プレーンの値を用いて、生成処理部38により、インク色変換処理を行う(ステップS220)。黒解像度X倍印刷モードでは、上記のように、Yプレーンの解像度に対してC,Cプレーンの解像度が1/X倍になっている。ここでは、C、Cプレーンの画素を重複利用する処理を実行することにより、印刷データを生成する。図5は、印刷データへの変換処理の概念図である。ステップS220では、C,Cプレーンの画素値とYプレーンの画素値とからC,M,Yのカラーノズルのノズル値を求めると共に、このカラーノズルに用いたC,Cプレーンの画素値を重複利用し、重複利用するC,Cプレーンの画素値とYプレーンの画素値とからX倍の黒ノズルのノズル値を求める。具体的には、図5に示すように、Y画素に対してC,C画素は1/X倍(X=2)である。YプレーンのY1画素とC,CプレーンのCC1画素の値から、LUT35を用いて直接的に、C,M,Y,K1の各色のノズル値へ変換する。一方、Y2画素に対応するC,C画素として先に利用したCC1画素の値を用い、Y2画素とCC1画素の値から、LUT35を用いて直接的に、K2のノズル値へ変換する。以下同様に、Y3画素とCC2画素の値から、LUT35を用いてC,M,Y,K1の各色のノズル値へ変換する一方、Y4画素とCC2画素の値から、LUT35を用いてK2のノズル値へ変換する。また、Y5画素とCC3画素の値から、LUT35を用いてC,M,Y,K1の各色のノズル値へ変換する一方、Y6画素とCC3画素の値から、LUT35を用いてK2のノズル値へ変換する。なお、主走査方向でのノズル値の変換については、上記と同様に、上下左右及び斜め上下に形式的に隣接するC,Cプレーンの画素値を重複利用し、無彩色のノズル値を導出するものとすればよい。このような処理を行うことにより、C,CプレーンをYプレーンの1/X倍でRAM23に記憶させることができるし、且つカラーに対してX倍の黒解像度の印刷データを生成することができる。なお、LUT35を用いた、YCCからCMYKへの変換処理は、上述した通常印刷モードと同様の処理を行うものとする。このように、Yプレーンに対してC,Cプレーンの解像度は1/Xであるから、Y値に対して、X倍のC,C値を用いて1つのCMYK値を得るのである。
【0033】
そして、生成した印刷データに対して、例えば、ハーフトーン処理などを行い、印刷機構26へ出力し、印刷処理を実行し(ステップS180)、このルーチンを終了する。ここでの印刷処理では、黒解像度X倍印刷モードでの印刷、即ちノズル群33C,33M,33Y,33K1、更にノズル群33K2を用いて黒の解像度がX倍となるよう印刷処理を実行する。こうすれば、黒解像度(無彩色ノズル解像度)がカラー解像度(彩色ノズル解像度)に対してX倍(X=2)の印刷画像を得ることができる。
【0034】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のリサイズ率設定部36及びリサイズ処理部37がリサイズ処理手段に相当し、生成処理部38が生成処理手段に相当する。また、ノズル32C,32M,32Yが彩色のノズルに相当し、ノズル32K1,32K2が無彩色のノズルに相当し、C,Cプレーンが彩色のプレーンに相当し、Yプレーンが無彩色のプレーンに相当する。なお、本実施形態では、プリンター20の動作を説明することにより本発明の画像処理方法の一例も明らかにしている。
【0035】
以上詳述した本実施形態のプリンター20によれば、カラーのノズル解像度に対して黒のノズル解像度がX倍であり、無彩色(Y)及び彩色(C,C)のプレーンを有するJPEGデータ(画像データ)を処理する。このプリンター20では、Yプレーンに対してC,Cプレーンを1/Xの倍率でリサイズ処理し、このリサイズしたC,CプレーンとYプレーンとをRAM23に記憶して印刷データを生成する。したがって、RAM23の記憶量をより低減するなどして、黒解像度X倍印刷モードに利用される画像データの印刷処理をより効率的に実行することができる。また、C,Cプレーンの画素をX倍に重複利用することにより、印刷処理をより効率的に実行することができる。更に、Y,C,Cプレーンの画素値からノズル32C,32M,32Yのノズル値を求めると共に、ノズル32C,32M,32Yに用いたC,Cプレーンの画素値を重複利用しこの重複利用するC,Cプレーンの画素値とYプレーンの画素値とからX倍の黒ノズルのノズル値を求めることにより印刷データを生成するため、無彩色及び彩色のプレーンを有するJPEG画像データから直接、印刷データを生成することにより、印刷処理をより効率的に実行することができる。更にまた、Y,C,Cプレーンの画素値からLUT35(対応情報)を用いて各色のノズル値を求めるため、より効率よく印刷データを生成することができる。そして、黒解像度X倍印刷モードの処理指令を取得したときに、Yプレーンに対してC,Cプレーンを1/Xの倍率でリサイズ処理するため、黒解像度X倍印刷モードの印刷を実行するときに、印刷処理をより効率よく実行することができる。そしてまた、指定された印刷サイズに基づいてYプレーンをリサイズ処理すると共に、このYプレーンに対してC,Cプレーンを1/Xの倍率でリサイズ処理するため、リサイズ処理から円滑に印刷処理へ移行することができ、より効率よく印刷処理を実行することができる。そして更に、プリンター20などの機器では、コントローラーの性能に限りがあることから、本発明を適用する意義が高い。
【0036】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0037】
例えば、上述した実施形態では、黒解像度X倍印刷モードの印刷指令を取得したときにYプレーンに対してC,Cプレーンを1/X倍にリサイズするものとしたが、特にこれに限定されず、常にYプレーンに対してC,Cプレーンを1/X倍にリサイズするものとしてもよい。このとき、常に黒解像度X倍印刷モードで印刷するものとしてもよい。こうしても、画像データの印刷処理をより効率的に実行することができる。
【0038】
上述した実施形態では、ノズル群33K2のノズル値をノズル群33K1に用いたC,Cプレーンの値を重複利用したが、ノズル群33K2のノズル値を設定することができるものとすれば、特にこれに限定されない。
【0039】
上述した実施形態では、指定された印刷サイズに基づいてYプレーンの拡大率を設定すると共に、Yプレーンに対してC,Cプレーンを1/X倍の拡大率に設定するものとし、設定された拡大率でリサイズ処理するものとしたが、特にこれに限定されない。例えば、Yプレーンに対してC,Cプレーンを1/X倍の拡大率に設定したのちに、指定された印刷サイズに基づいて、Y,C,Cプレーンの拡大率を更に設定するものとしてもよい。また、拡大率の設定を省略し、指定された印刷サイズに基づいてYプレーンをリサイズ処理すると共に、Yプレーンに対してC,Cプレーンを1/X倍にリサイズ処理するものとしてもよい。あるいは、Yプレーンに対してC,Cプレーンを1/X倍にリサイズしたのち、指定された印刷サイズに基づいて、Y,C,Cプレーンを更にリサイズしてもよい。
【0040】
上述した実施形態では、カラーのノズル解像度に対して黒のノズル解像度が2倍(X倍)であり、Yプレーンに対してC,Cプレーンを1/2の間引率で画素を間引きするものとしたが、特にこれに限定されず、Xは2以上であれば特に限定されない。また、X=2n(nは正数)としてもよい。
【0041】
上述した実施形態では、リサイズ処理において、画像データに対して、主走査方向及び副走査方向を1/X倍にするものとしたが、特にこれに限定されず、例えば、画像データを副走査方向のみ1/X倍にしてもよい。即ち、彩色のノズル解像度に対して無彩色のノズル解像度が副走査方向にX倍であるときに、印刷用の画像データの無彩色プレーンに対して彩色プレーンを1/Xの倍率でリサイズ処理するものとしてもよい。こうしても、画像データの印刷処理をより効率的に実行することができる。
【0042】
上述した実施形態では、メモリーカードリーダー30に装着されたメモリーカードに記憶されたJPEGデータを解凍して印刷するものとしたが、無彩色プレーンと彩色プレーンとを含む画像データを印刷処理するものとすれば特にこれに限定されない。例えば、読取機構25で読み取った画像データを印刷する際に1/X倍にリサイズするものとしてもよいし、PC40から送信された画像データを印刷する際に1/X倍にリサイズするものとしてもよい。
【0043】
上述した実施形態では、画像データをJPEGデータとして説明したが、無彩色及び彩色のプレーンを有する画像データであれば特にこれに限定されず、例えば、MPEGデータとしてもよい。また、上述した実施形態では、カラーのノズル及び黒のノズルとして説明したが、彩色の印刷用のノズル及び無彩色の印刷用のノズルとしてもよい。また、Cb,CrプレーンやYプレーンとして説明したが、彩色のプレーンや無彩色のプレーンとしてもよい。
【0044】
上述した実施形態では、印刷、スキャン及びコピーを実行可能なマルチファンクションプリンターを本発明の画像処理装置として説明したが、プリンター単体やスキャナー単体、FAXなどとしてもよい。あるいは、画像データから印刷データを生成する装置であれば特に限定されず、例えば、パソコンやノートパソコンなどの情報処理機器、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどの撮影機器、デジタルテレビやHDDレコーダーなどの映像機器、携帯用及び家庭用のゲーム機器、携帯電話などの通信機器などとしてもよい。また、読取機構25は、原稿を固定し読取センサーを移動して画像を読み取るフラットベッド式としたが、読取センサーを固定し原稿を移動して読み取る方式を採用してもよい。また、印刷機構26は、インクジェット方式としたが、電子写真方式や、熱転写方式、ドットインパクト方式としてもよい。また、プリンター20の態様で本発明を説明したが、画像処理方法の態様としてもよいし、この方法のプログラムの態様としてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 プリンターシステム、20 プリンター、21 コントローラー、22 CPU、23 RAM、24 フラッシュメモリー、25 読取機構、26 印刷機構、27 インターフェイス(I/F)、28 操作パネル、28a 表示部、28b 操作部、29 バス、30 メモリーカードリーダー、31 印刷ヘッド、32C,32M,32Y,32K ノズル、33C,33M,33Y,33K1,33K2 ノズル群、34 カートリッジ、35 ルックアップテーブル(LUT)、36 リサイズ率設定部、37 リサイズ処理部、38 生成処理部、40 パソコン(PC)、47 入力装置、48 ディスプレイ、S 印刷媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
彩色の印刷用のノズル解像度に対して無彩色の印刷用のノズル解像度がX倍(Xは2以上の整数)である印刷装置に用いられ、無彩色及び彩色のプレーンを有する画像データを処理する画像処理装置であって、
前記無彩色プレーンに対して前記彩色プレーンを1/Xの倍率でリサイズ処理するリサイズ処理手段と、
前記リサイズされた彩色プレーンと無彩色プレーンとを記憶する記憶手段と、
前記記憶された彩色プレーンと無彩色プレーンとを用いて前記印刷装置で用いられる印刷データを生成する生成処理手段と、
を備えた画像処理装置。
【請求項2】
前記生成処理手段は、前記彩色プレーンの画素を重複利用して前記印刷データを生成する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記生成処理手段は、前記彩色プレーンの画素値と前記無彩色プレーンの画素値とから彩色ノズルのノズル値を求めると共に、該彩色ノズルに用いた彩色プレーンの画素値を重複利用し該重複利用する彩色プレーンの画素値と前記無彩色プレーンの画素値とから前記X倍の無彩色ノズルのノズル値を求めることにより前記印刷データを生成する、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記リサイズ処理手段は、前記彩色の印刷用のノズル解像度に対して前記無彩色の印刷用のノズル解像度をX倍で印刷処理するX倍印刷処理指令を取得したときには、前記無彩色プレーンに対して前記彩色プレーンを1/Xの倍率でリサイズ処理する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記リサイズ処理手段は、指定された印刷サイズに基づいて前記無彩色プレーンをリサイズ処理すると共に、該無彩色プレーンに対して前記彩色プレーンを1/Xの倍率でリサイズ処理する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
彩色の印刷用のノズル解像度に対して無彩色の印刷用のノズル解像度がX倍である印刷装置に用いられ、無彩色及び彩色のプレーンを有する画像データを処理する画像処理方法であって、
(a)前記無彩色プレーンに対して前記彩色プレーンを1/Xの倍率でリサイズ処理するステップと、
(b)前記リサイズした彩色プレーンと無彩色プレーンとを記憶するステップと、
(c)前記記憶した彩色プレーンと無彩色プレーンとを用いて印刷データを生成するステップと、
を含む画像処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−111764(P2013−111764A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257146(P2011−257146)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】