説明

画像合成装置、撮像装置、画像合成方法、および、画像合成プログラム

【課題】連写撮影した複数枚画像の合成技術において、低いコストでフリッカの影響を抑制する。
【解決手段】複数の画像を撮影する際の撮影条件に基づいて、最長露光画像の撮影条件がフリッカを発生させる条件であるか否かを判定し(S12)、判定を肯定すると、フリッカが発生しない画像を少なくとも1つ追加して撮影するために、撮影条件を修正する(S13)。続いて、複数の画像を撮影した際の撮影条件に基づいて、最長露光画像とそれ以外の画像との間の輝度レベルを合わせるための補正を行うとともに、補正された最長露光画像とそれ以外の画像の信号値の差に基づいて、最長露光画像とそれ以外の画像との間の輝度レベルを合わせるための補正を行う(S15)。そして、信号差に基づいて補正された最長露光画像とそれ以外の画像の間の位置ズレを補正し(S16)、位置ズレ補正後の画像を合成することによって、合成画像を生成する(S17)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の画像を合成することによって、ダイナミックレンジを拡大した画像を作成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラまたはデジタルビデオカメラで撮影された複数枚の画像を合成することによって、所望の画像を得る技術として、ノイズ低減(加算式)、電子式ブレ補正(加算式)、ダイナミックレンジ拡大(加算式)などがある。ノイズ低減(加算式)は、シャッタ速度、絞り値、ISO感度などの露光条件が同一条件で撮影された複数枚の画像を合成することにより、ショットノイズなどのランダムに発生するノイズを低減させる技術である。電子式ブレ補正(加算式)は、高速シャッタで分割露光を行い、得られた複数枚画像の位置ズレを補償しながら合成することによって、像ブレを抑制した画像を得る技術である。ダイナミックレンジ拡大(加算式)は、異なる露光条件で撮影された複数枚の画像を合成することによって、ダイナミックレンジを拡大した画像を得る技術である。
【0003】
上述した複数枚の画像を合成する技術では、合成対象の複数枚のフレーム間の位置ズレを補償する必要がある。フレーム間の位置ズレ量を求める技術として、ブロックマッチング法が一般的に知られている。ブロックマッチング法は、基準フレームにおいて一定の大きさのブロック(例えば、8画素×8ライン)を定義し、比較対象フレームの該当箇所から所定範囲において一致指標値を計算し、その一致指標値が最も大きくなる(一致指標値によっては、最も小さくなる)位置を求めて、フレーム間の相対的ズレ量を計算する手法である。一致指標値としては、自乗誤差SSD(Sum of Squared intensity Difference)、誤差の絶対値SAD(Sum of Absolute intensity Difference)、正規化相互相関NCC(Normalized Cross-Correlation)などがある。
【0004】
マッチングの基準ブロック領域Iおよび対象とするブロック領域I’において、画素位置p∈Iおよび、q∈I’(p、qは2次元の値を持つ量で、I、I’は2次元の領域、p∈Iは座標pが領域Iに含まれていることを示す)の画素値をそれぞれLp、Lqとすると、SSD、SADは、それぞれ次式(1)、(2)で表される。
【0005】
【数1】

【0006】
【数2】

【0007】
正規化相互相関NCCは、マッチングの基準ブロック領域Iおよび対象とするブロック領域I’の各々に含まれる画素p∈Iおよび、q∈I’の平均値Ave(Lp)、Ave(Lq)を算出し、各ブロックに含まれる画素値との差分を次式(3)、(4)により計算する。
【0008】
【数3】

【0009】
【数4】

【0010】
続いて、正規化相互相関NCCを次式(5)により計算する。
【0011】
【数5】

【0012】
正規化相互相関NCCの大きいブロックを一致度の高い(相関の高い)ブロックと判断し、最も一致度の高いブロックI’とIの間の相対的ズレ量を求める。
【0013】
上述したノイズ低減(加算式)、および、電子式ブレ補正(加算式)では、同一露光条件の画像を用いて位置あわせを行うので、画像の明るさレベルは一致しているものと仮定している。また、ダイナミックレンジ拡大(加算式)では、撮影条件に応じて画像信号を補正することにより、画像の明るさレベルが一致することを仮定している。多くの撮影シーンでは上記仮定が成り立つが、蛍光灯照明下での撮影では、周期的に照明の明るさが変動するフリッカの影響により、上記仮定が成立しない場合がある。
【0014】
このフリッカの問題を解決するために、特許文献1および特許文献2に記載の技術がある。特許文献1には、露光時間がフリッカの周期より短い場合は、露光時間の中心と照明光量の極大値を一致させ、露光時間がフリッカの周期より長い場合は、露光時間をフリッカの周期の自然数倍に再設定することにより、連写画像間の輝度変動を抑制する技術が開示されている。また、特許文献2には、標準露光映像信号に発生するフリッカと、短時間露光映像信号に発生するフリッカを別々に除去してから、両映像信号を合成することにより、フリッカの影響を除外したダイナミックレンジの広い映像を得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−222935号公報
【特許文献2】特開2004−112403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、高分解能で光量を求める必要や、連写間隔を高精度に制御する必要があるため、実装コストが高くなってしまう。また、特許文献2に記載の技術も、フリッカ除去手段が必要となるため、実装コストが高くなってしまう。
【0017】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、連写撮影した複数枚画像の合成技術において、低いコストでフリッカの影響を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のある態様に係る画像合成装置は、複数の画像を合成することによって、合成画像を生成する画像合成装置であって、前記複数の画像を撮影する際の撮影条件に基づいて、前記複数の画像のうちの最長露光画像の撮影条件がフリッカを発生させる条件であるか否かを判定する判定部と、前記最長露光画像の撮影条件がフリッカを発生させる条件であると判定された場合に、フリッカが発生しない画像を少なくとも1つ追加して撮影するために、前記複数の画像を撮影する際の撮影条件を修正する撮影条件修正部と、前記複数の画像を撮影した際の撮影条件に基づいて、最長露光画像と前記最長露光画像以外の画像との間の輝度レベルを合わせるための補正を行う第1補正部と、前記第1補正部によって補正された最長露光画像の信号値と最長露光画像以外の画像の信号値との信号差に基づいて、前記最長露光画像と、前記最長露光画像以外の画像との間の輝度レベルを合わせるための補正を行う第2補正部と、前記第2補正部によって補正された最長露光画像および最長露光画像以外の画像の間の位置ズレを補正する位置ズレ補正部と、前記位置ズレ補正部によって位置ズレを補正された最長露光画像と最長露光画像以外の画像とを合成することによって、合成画像を生成する合成部と、を備える。
【0019】
本発明の別の態様に係る画像合成方法は、複数の画像を合成することによって、合成画像を生成する画像合成方法であって、前記複数の画像を撮影する際の撮影条件に基づいて、前記複数の画像のうちの最長露光画像の撮影条件がフリッカを発生させる条件であるか否かを判定するステップと、前記最長露光画像の撮影条件がフリッカを発生させる条件であると判定した場合に、フリッカが発生しない画像を少なくとも1つ追加して撮影するために、前記複数の画像を撮影する際の撮影条件を修正するステップと、前記複数の画像を撮影した際の撮影条件に基づいて、最長露光画像と前記最長露光画像以外の画像との間の輝度レベルを合わせるための補正を行うステップと、前記撮影条件に基づいて補正された最長露光画像の信号値と最長露光画像以外の画像の信号値との信号差に基づいて、前記最長露光画像と前記最長露光画像以外の画像との間の輝度レベルを合わせるための補正を行うステップと、前記信号差に基づいて補正された最長露光画像および最長露光画像以外の画像の間の位置ズレを補正するステップと、前記位置ズレを補正された最長露光画像と最長露光画像以外の画像とを合成することによって、合成画像を生成するステップと、を備える。
【0020】
本発明のさらに別の態様に係る画像合成プログラムは、複数の画像を合成することによって、合成画像を生成するための画像合成プログラムであって、前記複数の画像を撮影する際の撮影条件に基づいて、前記複数の画像のうちの最長露光画像の撮影条件がフリッカを発生させる条件であるか否かを判定するステップと、前記最長露光画像の撮影条件がフリッカを発生させる条件であると判定した場合に、フリッカが発生しない画像を少なくとも1つ追加して撮影するために、前記複数の画像を撮影する際の撮影条件を修正するステップと、前記複数の画像を撮影した際の撮影条件に基づいて、最長露光画像と前記最長露光画像以外の画像との間の輝度レベルを合わせるための補正を行うステップと、前記撮影条件に基づいて補正された最長露光画像の信号値と最長露光画像以外の画像の信号値との信号差に基づいて、前記最長露光画像と前記最長露光画像以外の画像との間の輝度レベルを合わせるための補正を行うステップと、前記信号差に基づいて補正された最長露光画像および最長露光画像以外の画像の間の位置ズレを補正するステップと、前記位置ズレを補正された最長露光画像と最長露光画像以外の画像とを合成することによって、合成画像を生成するステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、フリッカが発生しない撮影条件で撮影された画像を少なくとも1つ含む複数の画像間の輝度レベルを合わせてから位置合わせを行い、その後に合成するので、低いコストでフリッカの影響を抑制した合成画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施形態における画像合成装置を適用したデジタルカメラの構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態における画像合成装置を適用したデジタルカメラによって行われる合成画像生成処理の内容を示すフローチャートである。
【図3】蛍光灯下において、異なるシャッタ速度で3回の連写撮影を行うことにより得られた画像を示す図である。
【図4】正規化処理の詳細な内容を示すフローチャートである。
【図5】図5(a)は、異なるシャッタ速度(露光時間)で撮影された4つの画像を示す図である。また、図5(b)は、図5(a)に示す4つの画像を合成することによって得られる合成画像と、合成画像の部分拡大図を、正規化処理の有無に応じてそれぞれ示す図である。
【図6】第2の実施形態における画像合成装置を適用したデジタルカメラによって行われる合成画像生成処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
−第1の実施形態−
図1は、第1の実施形態における画像合成装置10を適用したデジタルカメラ1の構成を示すブロック図である。デジタルカメラ1は、レンズと本体が一体型のカメラでもよいし、レンズ交換式のカメラでもよい。デジタルカメラ1は、光学系100と、撮像素子101と、画像合成装置10とを備える。画像合成装置10は、フレームメモリ102と、正規化処理部103と、動きベクトル演算部104と、合成処理部105と、画像処理部106と、制御部107とを備える。図中、実線の矢印はデータの流れを表しており、点線は制御信号を表している。
【0024】
撮像素子101は、例えば、CCDやCMOSであり、レンズなどの光学系100を介して入力される被写体光を光電変換することによって、電気信号として出力する。撮像素子101から出力される電気信号は、画像データとして、フレームメモリ102に格納される。フレームメモリ102に格納される画像データは、ベイヤ配列に基づいて画素ごとにR(Red)信号、G(Green)信号、B(Blue)信号のうちのいずれか一つの情報を有するRaw形式の画像データである。
【0025】
正規化処理部103は、フレームメモリ102から画像データを読み出して、合成対象の複数の画像データ間の信号レベル(輝度レベル)を一致させるための正規化処理を行う。正規化処理後の画像データは、フレームメモリ102に格納される。
【0026】
動きベクトル演算部104は、正規化処理後の複数の画像データ間の位置ズレを表す動きベクトルを求める。動きベクトル演算部104によって求められた動きベクトルは、フレームメモリ102に格納される。
【0027】
合成処理部105は、動きベクトル演算部104によって求められた動きベクトルに基づいて、正規化処理後の複数の画像データ間の位置ズレを補正し、位置ズレを補正した複数の画像データを合成することによって、合成画像を生成する。
【0028】
画像処理部106は、合成処理部105によって生成された合成画像データの各画素に、R信号、G信号、B信号を割り当てる現像処理(デモザイク処理)を行う。画像処理部106は、また、ノイズ低減処理やエッジ強調処理など、所望の画像を得るために必要な各種画像処理を行う。現像処理を含む各種画像処理が施された画像は、例えば、図示しないディスプレイに表示される。
【0029】
制御部107は、デジタルカメラ1の全体制御を行う。
【0030】
本実施の形態における画像合成装置10では、露光時間の異なる複数枚の画像データを合成することによって、ダイナミックレンジを拡大した合成画像を生成する。このため、デジタルカメラ1は、露光時間の異なる複数枚の画像データを得るために、露光条件を変えて連写撮影を行う。
【0031】
図2は、第1の実施形態における画像合成装置10を適用したデジタルカメラ1によって行われる合成画像生成処理の内容を示すフローチャートである。例えば、デジタルカメラ1が合成画像を生成するための合成画像生成モードに設定されており、ユーザによってレリーズボタンの押圧操作が行われると、ステップS11の処理を開始する。
【0032】
ステップS11〜ステップS13の処理は、制御部107によって行われる。ステップS11では、連写撮影の撮影条件を設定する。ここでは、撮影シーンの明るさに応じて、露光アンダー側から露光オーバー側まで撮影できるように、露光時間の異なるそれぞれの撮影について、シャッタ速度、絞り、ISO感度などの撮影条件(露光条件)を決定する。
【0033】
ステップS12では、ステップS11で決定した撮影条件が、露光時間が最も長い最長露光画像にフリッカが発生する条件であるか否かを判定する。電源周波数は、50/60Hzであり、蛍光灯はその2倍の周波数(100/120Hz)で点滅している。従って、蛍光灯の点滅周期のおよそ2倍以上の露光時間を確保しないと、画像の輝度や色合いに変動が生じる可能性がある。
【0034】
図3は、蛍光灯下において、異なるシャッタ速度で3回の連写撮影を行うことにより得られた画像を示す図である。図3の一番上の段の画像は、1回目の撮影により得られた画像、真ん中の段の画像は、2回目の撮影により得られた画像、一番下の段の画像は、3回目の撮影により得られた画像である。シャッタ速度は、1/40(秒)、1/80(秒)、1/160(秒)、1/320(秒)としている。
【0035】
シャッタ速度が1/80(秒)、1/160(秒)、1/320(秒)の場合、露光時間が蛍光灯の点滅周期の2倍未満となるため、連写撮影によって得られる画像間の輝度や色合いが変動する。図3では、撮影により得られたカラー画像を白黒画像に変換したものを図示しているため、輝度や色合いの変化が分かりにくいが、実際のカラー画像では違いが顕著である。一方、シャッタ速度が1/40(秒)の場合には、露光時間が蛍光灯の点滅周期の2倍以上であり、連写撮影によって得られる画像の輝度や色合いは変動しない。
【0036】
ステップS12では、露光時間(シャッタ速度)が所定の露光時間しきい値未満の場合に、画像にフリッカが発生する(フリッカの影響がある)と判断し、露光時間(シャッタ速度)が所定の露光時間しきい値以上の場合に、画像にフリッカは発生しない(フリッカの影響はない)と判断する。所定の露光時間しきい値は、蛍光灯の点滅周期の2倍(1/50(秒)または1/60(秒))を基準として設定してもよいし、ユーザが任意の値を設定するようにしてもよい。
【0037】
ステップS12において、ステップS11で決定した撮影条件が、最長露光画像にフリッカが発生する条件であると判定するとステップS13に進み、フリッカが発生する条件ではないと判定するとステップS14に進む。
【0038】
ステップS13では、フリッカが発生しない撮影条件の画像を少なくとも1枚追加して撮影するために、撮影条件を修正する。すなわち、露光時間(シャッタ速度)が所定の露光時間しきい値以上となる撮影条件が少なくとも1つ含まれるように、撮影条件を修正する。
【0039】
ステップS14では、決定した撮影条件で連写撮影を行う。決定した撮影条件とは、ステップS13の処理を行った場合には、修正後の撮影条件であり、ステップS13の処理を行っていない場合には、ステップS11で設定した撮影条件である。
【0040】
ステップS15では、正規化処理部103によって、ステップS14の連写撮影で得られた複数の画像に対して、画像の輝度レベルを一致させるための正規化処理を行う。正規化処理の詳細な内容を、図4に示すフローチャートを用いて説明する。ここでは、露光時間が最も長い最長露光画像を、露光基準画像と呼ぶ。この露光基準画像は、フリッカが発生しない撮影条件での撮影により得られた画像である。
【0041】
図4に示すフローチャートのステップS401では、連写撮影で得られた各画像について、R信号値、G信号値、B信号値それぞれの平均値を求める。
【0042】
ステップS402では、露光基準画像以外の各画像のR信号値、G信号値、B信号値それぞれの平均値を、露光基準画像に対する露光時間の比率に基づいて補正する。具体的には、露光基準画像の露光時間を、露光基準画像以外の画像の露光時間で除算することによって、露光時間比を求め、露光基準画像以外の画像のR信号値、G信号値、B信号値の平均値のそれぞれに、求めた露光時間比を乗算することによって、補正後のR信号値、G信号値、B信号値の平均値を求める。この処理を、露光基準画像以外の各画像に対して行う。
【0043】
画像にフリッカが発生していなければ、露光基準画像以外の各画像を、露光基準画像に対する露光時間比で補正すれば、全ての画像の輝度レベルがほぼ一致するはずであるが、フリッカが存在する場合には、輝度レベルの相違が大きくなる。従って、次のステップS403では、フリッカが発生した場合でも、全ての画像の輝度レベルを一致させるための補正係数を算出する。
【0044】
ステップS403では、ステップS402で補正した各画像のR信号値、G信号値、B信号値の平均値のそれぞれに対して、露光基準画像のR信号値、G信号値、B信号値の平均値に対する補正係数を算出する。具体的には、露光基準画像のR信号値の平均値を、ステップS402で補正した露光基準画像以外の各画像のR信号値で除算することによって、R信号値の補正係数を算出する。同様に、露光基準画像のG信号値、B信号値の平均値を、ステップS402で補正した露光基準画像以外の各画像のG信号値、B信号値の平均値でそれぞれ除算することによって、G信号値、B信号値それぞれの補正係数を算出する。
【0045】
ステップS404では、ステップS402で求めた露光時間比、および、ステップS403で算出した補正係数に基づいて、露光基準画像以外の各画像のR信号値、G信号値、B信号値を補正する。具体的には、露光基準画像以外の画像の各画素のR信号値、G信号値、B信号値に、ステップS402で求めた露光時間比、および、ステップS403で算出した補正係数をそれぞれ乗算することによって、正規化処理後の画像を求める。この処理を露光基準画像以外の各画像に対して行う。
【0046】
上述したステップS401からステップS404までの処理(正規化処理)を行うことにより、複数枚の画像の中に、フリッカが存在する画像がある場合でも、全ての画像の輝度レベルを合わせることができる。
【0047】
図2に示すフローチャートに戻って説明を続ける。ステップS16では、正規化処理後の複数の画像間の位置合わせを行う。このため、動きベクトル演算部104は、正規化処理後の画像間の動きベクトルを求め、合成処理部105は、動きベクトル演算部104によって求められた動きベクトルに基づいて、正規化処理後の画像間の位置ズレを補正する位置合わせ処理を行う。位置合わせ処理では、テンプレートマッチングを利用する。テンプレートマッチングでは、例えば、SSD(Sum of Squared intensity Difference)や、SAD(Sum of Absolute intensity Difference)を一致指標値として算出することができる。ステップS15で、合成する画像の輝度レベルを一致させる正規化処理を行っているので、フリッカの影響を受けることなく、精度の高い位置合わせを行うことができる。
【0048】
なお、画像間の位置合わせは、テンプレートマッチング以外の手法、例えば、SIFTなどの特徴点マッチングを利用してもよい。また、位置合わせで使用する一致指標値も上述したSSDやSADに限定されることはなく、正規化相互相関NCC等、他の指標値を用いることもできる。
【0049】
ステップS17では、合成処理部105によって、位置合わせ処理後の複数の画像を合成することによって、ダイナミックレンジを拡大した合成画像を生成する。各画像の合成比率は、画像の輝度レベルに応じて設定する。具体的には、低輝度領域では、長露光画像の合成比率を高くすることにより、暗部ノイズを抑制する。また、高輝度領域では、短露光画像の合成比率を高くすることにより、白飛び(飽和)を抑制する。
【0050】
ただし、連写撮影中に被写体が動いた場合等では、オクルージョン等の影響により、位置合わせ処理で正しい対応点が求められない場合がある。正しい対応点が求められていない状態で合成処理を行うと、二重像などのアーティファクトが発生することがある。
【0051】
従って、本実施形態では、位置合わせ後の長露光画像および短露光画像の信号値の差が所定値より大きい画素については、その信号値の差に応じて、どちらか一方の画像(例えば、長露光画像)の合成比率を高くする補正処理(画素選択処理)を行う。より具体的には、信号値の差が大きくなるほど、どちらか一方の画像の合成比率を高くする度合いを大きくする。
【0052】
ステップS18では、画像処理部106によって、ステップS17で生成された合成画像について、各画素に、R信号値、G信号値、B信号値を割り当てる現像処理(デモザイク処理)を行う。画像処理部106は、また、ノイズ低減処理やエッジ強調処理など、所望の画像を得るために必要な各種画像処理を行う。
【0053】
図5(a)は、異なるシャッタ速度(露光時間)で撮影された4つの画像51〜54を示す図である。画像51〜54はそれぞれ、シャッタ速度を1/40(秒)、1/80(秒)、1/160(秒)、1/320(秒)とした時の画像を示している。
【0054】
図5(b)は、図5(a)に示す画像51〜54を合成することによって得られる合成画像55、56と、合成画像55、56の部分拡大図57、58をそれぞれ示す図である。合成画像55は、図2のステップS15の正規化処理を行わなかった場合の図であり、合成画像56は、図2のステップS15の正規化処理を行った場合の図である。また、部分拡大図57は合成画像55の一部分を拡大した図であり、部分拡大図58は合成画像56の一部分を拡大した図である。
【0055】
上述したように、合成処理では、位置合わせ後の長露光画像および短露光画像の信号値の差が所定値より大きい画素については、その信号値の差に応じて、どちらか一方の画像の合成比率を高くする補正処理(画素選択処理)を行う。合成画像にフリッカの影響がある場合には、位置合わせ処理で長露光画像と短露光画像の位置合わせを精度良く行っていても、長露光画像と短露光画像の信号値の差が大きくなる。従って、どちらか一方の画像の合成比率を高くする画素選択処理の頻度が高くなり、ダイナミックレンジの拡大効果が抑制されてしまう(合成図55、部分拡大図57参照)。
【0056】
しかしながら、本実施形態によれば、正規化処理によって、長露光画像と短露光画像の輝度レベルを合わせてから、位置合わせ処理を行い、その後に画像合成処理を行うので、画素選択処理の頻度が低くなり、所望のダイナミックレンジ拡大効果を得ることができる(合成画像56、部分拡大図58参照)。
【0057】
なお、画像51〜54、合成画像55,56、および、部分拡大図57,58はそれぞれカラー画像を白黒画像に変換したものであるため、合成画像55と56の違い、および、部分拡大図57と58の違いが分かりにくいが、カラー画像では違いが明瞭である。
【0058】
以上、第1の実施形態における画像合成装置によれば、複数の画像を撮影する際の撮影条件に基づいて、最長露光画像の撮影条件がフリッカを発生させる条件であるか否かを判定し、最長露光画像の撮影条件がフリッカを発生させる条件であると判定すると、フリッカが発生しない画像が少なくとも1つ撮影されるように、撮影条件を修正する。続いて、撮影条件に基づいて、最長露光画像と、最長露光画像以外の画像との間の輝度レベルを合わせるための補正を行い、撮影条件に基づいて補正された最長露光画像の信号値と、最長露光画像以外の画像の信号値との信号差に基づいて、最長露光画像と、最長露光画像以外の画像との間の輝度レベルを合わせるための補正を行う。そして、信号差に基づいて補正された最長露光画像および最長露光画像以外の画像の間の位置ズレを補正し、位置ズレ補正後の最長露光画像と、最長露光画像以外の画像とを合成することによって、合成画像を生成する。フリッカの発生していない最長露光画像と、最長露光画像以外の画像との間の輝度レベルを合わせてから位置ズレを補正し、位置ズレ補正後の画像を合成するので、フリッカの影響を排除した合成画像を得ることができる。また、従来技術のように、高分解能で光量を求める必要や、連写間隔を高精度に制御する必要がなく、また、合成前の画像からフリッカを除去するためのフリッカ除去手段を必要としないので、実装コストが増大することもない。
【0059】
また、最長露光画像の露光時間が所定の露光時間より短い場合に、最長露光画像の撮影条件がフリッカを発生させる条件であると判定するので、フリッカの発生の有無を確実に判断することができる。
【0060】
さらに、最長露光画像の撮影条件がフリッカを発生させる条件であると判定すると、最長露光画像の露光時間が所定の露光時間より長くなるように、最長露光画像の撮影条件を修正するので、フリッカの発生しない画像を少なくとも1枚は得ることができる。これにより、フリッカの発生しない画像を基準とした輝度レベル合わせを行うことができ、その後に行う位置合わせ処理、および、合成処理を安定的に行うことができる。
【0061】
また、撮影条件に基づいて補正された最長露光画像の信号値の平均値と、最長露光画像以外の画像の信号値の平均値との信号差に基づいて、最長露光画像と、最長露光画像以外の画像との間の輝度レベルを合わせるための補正を行うので、フリッカが発生した画像が含まれている場合でも、全ての画像間の輝度レベルを精度良く合わせることができる。
【0062】
−第2の実施形態−
図6は、第2の実施形態における画像合成装置10を適用したデジタルカメラ1によって行われる合成画像生成処理の内容を示すフローチャートである。図2に示すフローチャートの処理と同じ処理を行うステップについては、同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0063】
図6に示すフローチャートが図2に示すフローチャートと異なるのは、ステップS18の処理を行う順番である。すなわち、ステップS14で連写撮影を行うと、ステップS18において、連写撮影で得られた全ての画像の現像処理を行う。続いて、現像処理後の画像に対して、正規化処理を行い(ステップS15)、正規化処理後の画像の位置合わせを行う(ステップS16)。そして、位置合わせ後の画像を合成することによって、ダイナミックレンジを拡大した合成画像を生成する(ステップS17)。
【0064】
以上、第2の実施形態における画像合成装置によれば、第1の実施形態における画像合成装置と同様に、低い実装コストで、フリッカの影響を排除した合成画像を得ることができる。特に、現像処理後の画像に対して正規化処理を行うので、RGB信号値に限らず、YCbCr信号値を用いて正規化処理を行うことが可能となる。
【0065】
−第3の実施形態−
第1および第2の実施形態では、露光時間の異なる複数枚の画像データを合成することによって、ダイナミックレンジを拡大した合成画像を生成した。第3の実施形態における画像合成装置では、露光時間の等しい複数枚の画像データを合成することによって、ノイズを低減した合成画像、または、画像間のブレを抑制した合成画像を生成する。この場合、第3の実施形態における画像合成装置の構成は、第1および第2の実施形態における画像合成装置の構成と同じである。
【0066】
第3の実施形態における画像合成装置を適用したデジタルカメラで行われる処理の流れを簡単に説明しておく。露光時間の等しい複数枚の画像撮影を行う前に、撮影条件が画像にフリッカが発生する条件であるか否かを判定し、フリッカが発生する条件であると判定すると、フリッカが発生しない条件の画像を少なくとも1枚余分に撮影する。そして、フリッカが発生しない撮影条件で撮影された画像を用いて、複数の画像間で正規化処理を行い、正規化処理後の画像を位置合わせした後、合成する。これにより、第1および第2の実施形態における画像合成装置と同様に、低い実装コストで、フリッカの影響を排除した合成画像を得ることができる。
【0067】
なお、上述した第1〜第3の実施形態の説明では、画像合成装置が行う処理としてハードウェアによる処理を前提としていたが、このような構成に限定される必要はない。例えば、コンピュータにて、ソフトウェア処理を行う構成も可能である。この場合、コンピュータは、CPU、RAM等の主記憶装置、上記処理の全て或いは一部を実現させるためのプログラムが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を備えている。ここでは、このプログラムを画像合成プログラムと呼ぶ。そして、CPUが上記記憶媒体に記憶されている画像合成プログラムを読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、上述の画像合成装置と同様の処理を実現させる。
【0068】
ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、この画像合成プログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該画像合成プログラムを実行するようにしても良い。
【0069】
本発明は、上記実施形態にそのまま限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素の幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0070】
上述した一実施の形態では、画像合成装置10をデジタルカメラに適用した例を挙げて説明したが、デジタルビデオカメラや、携帯電話、携帯情報端末などの電子機器に適用することもできる。
【符号の説明】
【0071】
1…デジタルカメラ
10…画像合成装置
102…フレームメモリ
103…正規化処理部(第1補正部、第2補正部)
104…動きベクトル演算部
105…合成処理部(位置ズレ補正部、合成部)
106…画像処理部
107…制御部(判定部、撮影条件修正部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像を合成することによって、合成画像を生成する画像合成装置であって、
前記複数の画像を撮影する際の撮影条件に基づいて、前記複数の画像のうちの最長露光画像の撮影条件がフリッカを発生させる条件であるか否かを判定する判定部と、
前記最長露光画像の撮影条件がフリッカを発生させる条件であると判定された場合に、フリッカが発生しない画像を少なくとも1つ追加して撮影するために、前記複数の画像を撮影する際の撮影条件を修正する撮影条件修正部と、
前記複数の画像を撮影した際の撮影条件に基づいて、最長露光画像と前記最長露光画像以外の画像との間の輝度レベルを合わせるための補正を行う第1補正部と、
前記第1補正部によって補正された最長露光画像の信号値と最長露光画像以外の画像の信号値との信号差に基づいて、前記最長露光画像と、前記最長露光画像以外の画像との間の輝度レベルを合わせるための補正を行う第2補正部と、
前記第2補正部によって補正された最長露光画像および最長露光画像以外の画像の間の位置ズレを補正する位置ズレ補正部と、
前記位置ズレ補正部によって位置ズレを補正された最長露光画像と最長露光画像以外の画像とを合成することによって、合成画像を生成する合成部と、
を備えることを特徴とする画像合成装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記最長露光画像の露光時間が所定の露光時間より短い場合に、前記最長露光画像の撮影条件がフリッカを発生させる条件であると判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像合成装置。
【請求項3】
前記撮影条件修正部は、露光時間が前記所定の露光時間より長い撮影条件の画像を少なくとも1つ追加して撮影するために、前記複数の画像を撮影する際の撮影条件を修正する、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像合成装置。
【請求項4】
前記第2補正部は、第1補正部によって補正された最長露光画像の信号値の平均値と、最長露光画像以外の画像の信号値の平均値との信号差に基づいて、前記最長露光画像と、前記最長露光画像以外の画像との間の輝度レベルを合わせるための補正を行う、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の画像合成装置。
【請求項5】
前記複数の画像を撮影する際の撮影条件は、異なる露光条件で複数の画像を撮影するための撮影条件である、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の画像合成装置。
【請求項6】
前記複数の画像を撮影する際の撮影条件は、同一の露光条件で複数の画像を撮影するための撮影条件である、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の画像合成装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の画像合成装置を備える撮像装置。
【請求項8】
複数の画像を合成することによって、合成画像を生成する画像合成方法であって、
前記複数の画像を撮影する際の撮影条件に基づいて、前記複数の画像のうちの最長露光画像の撮影条件がフリッカを発生させる条件であるか否かを判定するステップと、
前記最長露光画像の撮影条件がフリッカを発生させる条件であると判定した場合に、フリッカが発生しない画像を少なくとも1つ追加して撮影するために、前記複数の画像を撮影する際の撮影条件を修正するステップと、
前記複数の画像を撮影した際の撮影条件に基づいて、最長露光画像と前記最長露光画像以外の画像との間の輝度レベルを合わせるための補正を行うステップと、
前記撮影条件に基づいて補正された最長露光画像の信号値と最長露光画像以外の画像の信号値との信号差に基づいて、前記最長露光画像と前記最長露光画像以外の画像との間の輝度レベルを合わせるための補正を行うステップと、
前記信号差に基づいて補正された最長露光画像および最長露光画像以外の画像の間の位置ズレを補正するステップと、
前記位置ズレを補正された最長露光画像と最長露光画像以外の画像とを合成することによって、合成画像を生成するステップと、
を備えることを特徴とする画像合成方法。
【請求項9】
複数の画像を合成することによって、合成画像を生成するための画像合成プログラムであって、
前記複数の画像を撮影する際の撮影条件に基づいて、前記複数の画像のうちの最長露光画像の撮影条件がフリッカを発生させる条件であるか否かを判定するステップと、
前記最長露光画像の撮影条件がフリッカを発生させる条件であると判定した場合に、フリッカが発生しない画像を少なくとも1つ追加して撮影するために、前記複数の画像を撮影する際の撮影条件を修正するステップと、
前記複数の画像を撮影した際の撮影条件に基づいて、最長露光画像と前記最長露光画像以外の画像との間の輝度レベルを合わせるための補正を行うステップと、
前記撮影条件に基づいて補正された最長露光画像の信号値と最長露光画像以外の画像の信号値との信号差に基づいて、前記最長露光画像と前記最長露光画像以外の画像との間の輝度レベルを合わせるための補正を行うステップと、
前記信号差に基づいて補正された最長露光画像および最長露光画像以外の画像の間の位置ズレを補正するステップと、
前記位置ズレを補正された最長露光画像と最長露光画像以外の画像とを合成することによって、合成画像を生成するステップと、
をコンピュータに実行させるための画像合成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−160852(P2012−160852A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18312(P2011−18312)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】