画像形成システム、画像形成装置およびその制御方法
【課題】 画像形成装置と光学走査装置との間で通信エラーが発生したとしても画像形成を好適に継続できるようにする。
【解決手段】 光学走査装置は、個体ごとの特性に関するユニットデータを記憶する第1の記憶手段を含む。画像形成装置は、第1の記憶手段から読み出されたユニットデータを記憶する第2の記憶手段と、複数の光学走査装置において共通に使用されるデフォルトの設定データを記憶する第3の記憶手段とを含む。そして、第2の記憶手段に記憶されているユニットデータと、第1の記憶手段に記憶されているユニットデータとが整合しなくなると、第3の記憶手段から読み出した設定データを用いて光学走査装置を制御する。
【解決手段】 光学走査装置は、個体ごとの特性に関するユニットデータを記憶する第1の記憶手段を含む。画像形成装置は、第1の記憶手段から読み出されたユニットデータを記憶する第2の記憶手段と、複数の光学走査装置において共通に使用されるデフォルトの設定データを記憶する第3の記憶手段とを含む。そして、第2の記憶手段に記憶されているユニットデータと、第1の記憶手段に記憶されているユニットデータとが整合しなくなると、第3の記憶手段から読み出した設定データを用いて光学走査装置を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学走査装置を搭載する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、画像形成装置では、種々のユニットが製造の最終段階で本体に組み込まれることが多い。正しいユニットを本体に搭載するために、各ユニットが備えるメモリにID情報を記憶しておくことが望ましい。このID情報を読み出すことで、本体にとって、適切なユニットであるか否かを判断できる(特許文献1)。
【特許文献1】特許第3248846号の特許掲載公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の発明によれば、ID情報に基づいて、ユニットの正誤を判定できる。しかしながら、ユニットに記憶されている、ユニットを制御するためのデータを、画像形成装置が、直接読み出すと、読み出しに時間がかかり、制御のボトルネックになる可能性がある。
【0004】
そこで、起動時などに、画像形成装置のメモリへとデータをコピーしておき、このメモリからデータを読み出して画像を形成する方法が考えられる。この方法により、読出し速度の問題は解決されると考えられる。なぜなら、画像形成装置の内部バスの転送速度は、一般に、画像形成装置とユニット間の転送速度より速いからである。
【0005】
しかしながら、データの読出し時に、通信エラーが発生すれば、エラーのあるデータに基づいて画像が形成されてしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、このような課題および他の課題のうち、少なくとも1つを解決することを目的とする。なお、他の課題については明細書の全体を通して理解できよう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば、光学走査装置と画像形成装置とを含む画像形成システムに適用できる。光学走査装置は、光学走査装置の個体ごとの特性に関するユニットデータを記憶する第1の記憶手段を含む。画像形成装置は、第1の記憶手段から読み出されたユニットデータを記憶する第2の記憶手段と、複数の光学走査装置において共通に使用されるデフォルトの設定データを記憶する第3の記憶手段とを含む。さらに、画像形成装置は、第2の記憶手段に記憶されているユニットデータと、第1の記憶手段に記憶されているユニットデータとが整合しているか否かを判定する判定手段を含む。さらに、画像形成装置は、ユニットデータらが整合している場合、第2の記憶手段から読み出したユニットデータを用いて光学走査装置を制御する制御手段を含む。なお、この制御手段は、ユニットデータらが整合していない場合、第3の記憶手段から読み出した設定データを用いて光学走査装置を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像形成装置と光学走査装置との間で、通信不良が発生したとしても、デフォルトの設定データを用いて、簡易的に画像を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の一実施形態を示す。もちろん以下で説明される個別の実施形態は、本発明の上位概念、中位概念および下位概念など種々の概念を理解するために役立つであろう。また、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、実施形態に係る光学走査装置1と画像形成装置2とを含む画像形成してムの例示的なブロック図である。光学走査装置1には、レーザ駆動部3、半導体レーザ4a及び4b、並びに記憶素子(以下、EEPROMと略す。)5が含まれている。画像形成装置のレーザ制御部16から出力されるレーザ駆動部3は、レーザ制御信号17により、複数の半導体レーザ4a及び4bを駆動する。
【0011】
EEPROM5は、光学走査装置1の組立時に入力されるユニットデータを記憶している。ユニットデータは、光学走査装置の個体ごとの特性に関するデータを含んでいる。ユニットデータは、例えば、光学走査装置1の認識データ(機種コードなど)、製造番号(シリアル番号)、半導体レーザ4a及び4bの光量補正値、主走査書き出し位置および印字倍率のうち、少なくとも一つを含んでいる。
【0012】
画像形成装置2には、EEPROM制御部8、バックアップメモリ9、デフォルトメモリ10、およびレーザ制御部16を含む。EEPROM制御部8は、CPU、ROMおよびRAMやASICなどで構成されうる。EEPROM制御部8は、制御信号6をEEPROM5に送信することで、ユニットデータを読み出す。ユニットデータは、データ信号7としてEEPROM5から出力される。読み出されたユニットデータは、バックアップメモリ9に記憶される。
【0013】
EEPROM制御部8は、電源投入時またはリセット時に、制御信号11をバックアップメモリ9に送信することで、ユニットデータを読み出す。ユニットデータは、データ信号12として、EEPROM制御部8に入力される。
【0014】
デフォルトメモリ10は、複数の光学走査装置において共通に使用されるデフォルトの設定データを記憶するメモリである。この設定データは、光学走査装置の個体に依存しない点で、ユニットデータとは若干異なる。設定データは、例えば、例えば、半導体レーザ4a及び4bの光学特性及び電気特性に関するデータや、光学走査装置1の光学効率から算出されるデータなどが含まれる。なお設定データとユニットデータとの算出方法をほぼ同一の方法を採用できる。EEPROM制御部8は、制御信号13をデフォルトメモリ10に送信することで、設定データを読み出すことができる。なお、設定データは、データ信号14を介してEEPROM制御部8に入力される。
【0015】
レーザ制御部16は、EEPROM制御部8から入力される設定信号15に基づいてレーザ制御信号17を生成する。レーザ制御部16は、画像信号18をレーザ駆動部3に送出することで、複数の半導体レーザ4a及び4bを変調発光させる。
【0016】
図2は、実施形態に係る光学走査装置の主要部を示す例示的な構成図である。レーザ駆動部3は、半導体レーザ4a及び4bを用いて、複数のビームを同時に出射することができる。半導体レーザ4a及び4bからの光ビームが所定光量となるように、レーザ駆動部3のレーザ駆動回路は、半導体レーザ4a及び4bに駆動電流を供給する。
【0017】
合成ユニット21は、台形状のプリズムであり、内部に偏光ビームスプリッタ30を備えている。合成ユニット21のビーム出力面には、偏光フィルタ32が貼り付けられている。偏光ビームスプリッタ30は、偏光波の位相によりビームを直進させたり、ビームを反射したりする特性を有している。
【0018】
半導体レーザ4bから出射されたレーザビームL1b(L2b)は合成ユニット21の斜線部31で偏向される。レーザビームL1bは、さらに偏光ビームスプリッタ30で偏向され、偏光フィルタ32を通過し、合成ユニット21の外に出射する。一方、半導体レーザ4aから出射したレーザビームL1a(L2a)は、レーザビームL1bと偏光方向が90°異なっている。そのため、レーザビームL1aは、偏光ビームスプリッタ30及び偏光フィルタ32を直進して、合成ユニット21から出射する。なお、レーザビームL1a及びレーザビームL1bは、その照射位置が、感光ドラム28上における副走査方向で所定の間隔となるように配置される。感光ドラム28は、いわゆる像担持体である。
【0019】
非画像領域のレーザビームL1a、L1bは、それぞれコリメータレンズ22及びシリンドリカルレンズ23を経て、回転多面鏡(ポリゴンミラー)24に到達する。回転多面鏡24は、スキャナモータを含む回転多面鏡駆動回路25によって等角速度で回転している。回転多面鏡24に到達したレーザビームL1a、L1bは、回転多面鏡24によって偏向され、fθレンズ26によって感光ドラム28の回転方向と直角方向に等速走査となるように変換される。また、変換されたレーザビームL1a、L1bは、ビーム検出(以下、BDと略す。)センサ29に受光される。BDセンサ29によって、レーザビームL1a、L1bが検出されたタイミングが、画像形成のタイミングに影響を及ぼす。
【0020】
画像領域のレーザビームL2a、L2bは、fθレンズ26を出射した後、反射ミラー27を経由して感光ドラム28上を照射する。これにより感光ドラム28上に静電潜像が形成される。感光ドラム28に形成された潜像は、トナーによって現像された後、用紙に転写・定着される。
【0021】
図3は、実施形態に係るEEPROM制御部の動作を示す例示的なフローチャートである。この動作は、主に、ユニットデータのバックアップ処理を示している。
【0022】
<機種コードの照合>
ステップS301において、EEPROM制御部8は、EEPROM5から機種コードを読み出す。ステップS302において、EEPROM制御部8は、搭載する光学走査装置1が画像形成装置2に合致したユニットであるか否かを判定する。例えば、EEPROM制御部8は、読み出した機種コードと、バックアップメモリ9に記憶されている機種コードとを比較する。機種コードが整合すれば、ステップS305に進む。
【0023】
機種コードが整合しなければ、ステップS303に進み、EEPROM制御部8は、再度、機種コードをEEPROM5から読み出す。もう一度、機種コードを読み出すのは、通信エラーによって、EEPROM5から読み出した機種コードが誤っている可能性があるからである。ステップS304において、EEPROM制御部8は、再度、機種コードを比較する。機種コードが整合すれば、ステップS305に進む。機種コードが整合しなければ、ステップS390に進む。複数回にわたり機種コードが整合しない場合は、通信エラーが発生したというよりは、むしろ、他の画像形成装置用の光学走査装置が搭載されていることが疑われるからである。いずれにしても、バックアップメモリ9に記憶されているユニットデータの信頼性は相対的に低いといわざるを得ない。
【0024】
ステップS390において、EEPROM制御部8は、デフォルトメモリ10から設定データを読み出す。また、ステップS391において、EEPROM制御部8は、図示省略の表示部(操作パネルの液晶表示装置など)にエラーが発生したことを表すアラームメッセージを表示する。その後、ステップS395に進み、EEPROM制御部8は、読み出したデフォルトの設定データをレーザ制御部16のレジスタに設定する。
【0025】
このように、本実施形態では、機種コードの照合が2回実行され、そのうち1回でも整合した場合は、「シリアル番号照合(S305)」に移行する。
【0026】
<シリアル番号の照合>
本実施形態では、画像形成装置2に搭載されている光学走査装置1が交換されたか否かの判定を行う。例えば、工場出荷時の光学走査装置1に不具合が発生すると、新しい光学走査装置1に交換されることがある。光学走査装置1は、個体(シリアル番号)ごとに、特性が異なることがある。そのため、光学走査装置1が交換されると、バックアップメモリ9のユニットデータを更新することが望ましい。そこで、光学走査装置1のシリアル(製造管理)番号の照合を行う。
【0027】
ステップS305において、EEPROM制御部8は、EEPROM5からシリアル番号を読み出す。ステップS306において、EEPROM制御部8は、読み出したシリアル番号と、バックアップメモリ9に記憶されているシリアル番号とが整合するか否かを判定する。
【0028】
整合すれば、交換は実行されていないので、ステップS307に進み、EEPROM制御部8は、EEPROM5から照合用のデータであるチェックサムを読み出す。ステップS308において、EEPROM制御部8は、バックアップメモリ308に記憶されている参照データ(例:チェックサム)も読み出す。ステップS309において、EEPROM制御部8は、読み出された双方のチェックサムを比較することで、両者が整合するか否かを判定する。整合すれば、双方のユニットデータも整合すると推定されるので、バックアップメモリ9のユニットデータを更新する必要はない。よって、ステップS395に進む。
【0029】
一方、整合しなければ、ステップS310に進み、EEPROM制御部8は、EEPROM5からユニットデータを読み出す。ステップS311において、EEPROM制御部8は、読み出したユニットデータをバックアップメモリ9に書き込む。ステップS312において、EEPROM制御部8は、バックアップメモリ9に書き込んだユニットデータについてチェックサムを算出する。
【0030】
<チェックサム算出方法>
図4は、実施形態に係るユニットデータの一例を示す図である。この図を用いて、チェックサムの算出方法の一例を示す。まず、EEPROM制御部8は、各アドレスに格納されているデータについて、同一列ごとの加算を実行する。なお、EEPROM制御部8は、加算結果について、データ長以上の繰上げは無視するものとする。次に、EEPROM制御部8は、加算結果をビット反転することで、チェックサムとする。
【0031】
図4の例では、各行のデータ長が2バイトであり、チェックサムのデータ長も2バイトとしている。また、機種コードは、00AAである。アドレス7D、7Eに格納されているデータを「8000」とし、他のアドレスに格納されているデータは、「0000」とする。よって、加算結果は、「100AA」となるが、繰上げを無視すると、「00AA」となる。最終的に、加算結果「00AA」をビット反転することで、チェックサム「FF55」が算出される。
【0032】
ステップS313において、EEPROM制御部8は、算出したチェックサムと、EEPROM5から読みだしたチェックサムとが整合するか否かを判定する。整合すれば、ユニットデータは正しく更新されたことになる。よって、ステップS395に進む。
【0033】
一方、整合しなければ、ユニットデータを正しく更新できなかったことになる。よって、ステップS314に進む。ユニットデータが正しく更新されなかった原因としては、例えば、画像形成装置2と光学走査装置1との間の通信不良などが考えられる。
【0034】
ステップS314において、EEPROM制御部8は、EEPROM5から、再度、ユニットデータを読み出す。ステップS315において、EEPROM制御部8は、読み出したユニットデータを、再度、バックアップメモリ9に書き込む。ステップS316において、EEPROM制御部8は、バックアップメモリ9に書き込んだユニットデータについてチェックサムを算出する。ステップS317において、EEPROM制御部8は、算出したチェックサムと、EEPROM5から読み出したチェックサムとを比較し、両者が整合するか否かを判定する。整合すれば、ユニットデータは正しく更新されたことになる。よって、ステップS395に進む。
【0035】
一方、不整合であれば、ユニットデータの更新に2回とも失敗したことになる。この場合、通信不良やさらに深刻な異常が発生している可能性もある。よって、ステップS390に進む。
【0036】
ステップS390において、EEPROM制御部8は、デフォルトメモリ10から、デフォルトの設定データを読み出す。ステップS391において、EEPROM制御部8は、操作パネルなどの表示部にエラーが発生していることを表すアラームメッセージを出力する。その後、ステップS395に進み、EEPROM制御部8は、バックアップメモリ9のユニットデータに代えて、デフォルトメモリ10の設定データをレーザ制御部16のレジスタに出力する。
【0037】
<EEPROMへのユニットデータの書き込み>
図5は、実施形態に係る工具(治具)の一例を示すブロック図である。この工具500は、完成した光学走査装置1の各種特性などのデータを測定するための装置である。CPU501は、制御プログラムに応じて、光学走査装置1などを制御したり、各種の演算を実行したりする制御ユニットである。ROM502は、制御プログラムなどを格納する記憶ユニットである。RAM503は、ワークエリアとして機能する記憶ユニットである。インタフェース504は、レーザ駆動部3やEEPROM5などと接続するための通信回路である。センサ530、531aおよび531bは、主に、光ビームを検出するための素子である。
【0038】
図6は、実施形態に係るEEPROM5へのユニットデータの書き込み方法を示す例示的なフローチャートである。このフローチャートは、光学走査装置1を画像形成装置2へと組み込む前に実行される。なお、デフォルトの設定データについても、同様の手順で、試作機などから取得される。
【0039】
<データ算出>
ステップS601において、CPU501は、光学走査装置1を実際に駆動することで、各種データを測定する。すなわち、CPU501は、レーザ制御部16に代わって、各種の制御信号をレーザ駆動部3に出力する。また、CPU501は、取得した各種データのうち、必要な演算を実行することで、ユニットデータの一部を算出する。算出の具体例については、後述する。なお、CPU501は、光学走査装置1の機種コード及びシリアル番号も含むよう、ユニットデータを作成する。このユニットデータは、一旦、RAM503に格納される。
【0040】
ステップS602において、CPU501は、算出したユニットデータからさらに、チェックサムを算出する。チェックサムの算出方法は、既に説明した通りである。このチェックサムは、一旦、RAM503に格納される。なお、チェックサムは、ユニットデータの一部としてもよいことはいうまでもない。
【0041】
<データ書き込み>
ステップS603において、CPU501は、算出したユニットデータ及びチェックサムを、インタフェース504を介して、EEPROM5に書き込む。
【0042】
<データ照合>
ステップS604において、CPU501は、EEPROM5に格納されたユニットデータを読み出す。ステップS605において、CPU501は、RAM503に格納されているユニットデータと、EEPROM5から読み出されたユニットデータとが全て整合するか否かを照合する。全て整合すれば、ステップS609に進む。
【0043】
一方、一部でも整合しなければ、ステップS607に進み、CPU501は、EEPROM5に格納されているユニットデータを、再度、読み出す。ステップS608において、CPU501は、再度、RAM503に格納されているユニットデータと、EEPROM5から読み出されたユニットデータとが全て整合するか否かを照合する。全て整合すれば、ステップS609に進む。もし、2回の照合処理(S605およびS608)とも失敗すれば、EEPROMへの書き込みエラーとなる。よっと、CPU501は、工具500の操作パネル(図示省略)等にエラーメセージを出力する。
【0044】
ステップS609において、CPU501は、インタフェース504を介して、EEPROM5からチェックサムを読み出す。ステップS610において、CPU501は、RAM503に格納されているチェックサムと、EEPROM5から読み出したチェックサムとが整合する否かを照合する。整合すれば、光学走査装置1は画像形成装置2に組み込まれ、出荷されることになる。
【0045】
一方、不整合であれば、ステップS611に進み、CPU501は、インタフェース504を介して、EEPROM5からチェックサムを、再度、読み出す。ステップS612において、CPU501は、RAM503に格納されているチェックサムと、EEPROM5から読み出したチェックサムとが整合する否かを、再度、照合する。整合すれば、光学走査装置1は画像形成装置2に組み込まれ、出荷されることになる。
【0046】
一方、2回の照合処理(S610およびS612)とも失敗すれば、EEPROMへの書き込みエラーとなる。よって、CPU501は、工具500の操作パネル等にエラーを出力する。
【0047】
<ユニットデータおよびデフォルト設定データの設定/算出方法>
図7は、実施形態に係る光学走査装置のEEPROMに格納されるユニットデータのアドレスマップ表である。ここでは、一例として、EEPROM5の記憶容量が2Kbit(128×16bit)であるものとする。EEPROM5に格納される各データは以下の通りである。なお、デフォルトの設定データの算出方法については、試作段階で測定されたサンプルデータから算出されたバラツキデータを元に算出してもよい。例えば、複数の試作機からユニットデータを算出し、これらのユニットデータから平均値を算出し、この平均値をデフォルトの設定データとしてもよい。
【0048】
<機種コード>
例えば、機種コードについては、ユニットデータおよびデフォルトの設定データとも算出方法は同一とする。例えば、機種コードが「S123」であれば、CPU501は、頭文字の「S」を削除し、残りの番号をHEX変換する:
例:S123→123(DEC)→7B(HEX)。
【0049】
<シリアル番号>
シリアル番号については、ユニットデータのみに設定され、デフォルトの設定データには設定されないものとする。デフォルトの設定データは、全ての個体に共通となるユニットデータだからである。
【0050】
例えば、CPU501は、内蔵タイマーから製造年月に関する数値を取得するとともに、その月に製造された各ユニットを識別するためのユニット番号を算出する。また、CPU501は、製造年月を表す数値と、ユニット番号とを個別に、HEX変換して得られた値を所定のアドレスに格納する。
【0051】
例えば、シリアル番号「050600456」については、製造年月「05年06月」と、ユニット番号「456とに分割する。さらに、製造年月「0506(DEC)」を「1FA(HEX)」に変換する。同様に、ユニット番号「456(DEC)」を「2E(HEX)」に変換する。
【0052】
<ビーム位相データ>
図8は、実施形態に係るビーム位相を説明するための図である。半導体レーザ4aの発光点と、半導体レーザ4bの発光点とのビーム間隔Lは、画像の品質を維持する上で重要である。ところで、感光ドラム28上における副走査方向で所定の解像度が得られるように、発光点の間隔を調整すると、各発光点の主走査方向の位置が正しい位置からずれてしまうことが多い。
【0053】
感光ドラム28上の照射位置に相当する位置(照射相当位置)に、工具500の冶具センサ530が配置される。CPU501は、半導体レーザ4aのみを発光させたときに冶具センサ30から出力される信号と、半導体レーザ4bのみを発光させたときの冶具センサ530から出力される信号との時間間隔を測定する。この測定結果が、ビーム位相データとなる。
【0054】
光学走査装置1及び画像形成装置2の仕様を以下の通りと仮定して、より具体的な例示を説明する:
副走査解像度:600<dpi>
主走査速度:2<μm/ns>
主走査倍率:3
ビーム間隔:100μm。
【0055】
上記各数値をから、半導体レーザ4a及び4bのピッチ間隔は、次式から算出される:
(デバイス上のピッチ間隔)=(1002−42.42)1/2
=90.6μm
ビーム位相=(デバイス上のピッチ間隔)×(主走査倍率)÷(主走査速度)
=90.6<μm>×3÷2<μm/ns>
=135.8<ns>
よって、135.8<ns>が求めるべきビーム位相となる。
【0056】
<光量補正データ>
図9は、光量補正を説明するための図である。ここでは、一例として、半導体レーザ4a、4bから出射される光ビームを回転多面鏡24の反射面全体に照射するような光学系を考慮する。この光学系では、回転多面鏡24が回転するため、回転多面鏡24からの出射角が異なる。よって、感光ドラム28上での各像高位置で、光量差が発生する。
【0057】
図9に示す概念図によれば、像高位置と感光ドラム28上での光量との関係が示されている。像高位置の中央部の光量と比較すると、走査開始及び終了近傍では、相対的に光量が低下している。そこで、光量低下を補償するように、レーザ駆動電流を増大させるような制御がレーザ制御部16によって実行される。これによって、感光ドラム28上の各位置で、光量が均一となる。
【0058】
例えば、感光ドラム28の表面における有効画像領域を任意の像高位置で30個のブロックに分割する。そして、各ブロックごとに、好適なレーザ駆動電流を設定する。レーザ制御部16は、ユニットデータに基づいて、各ブロックごとに好適なレーザ駆動電流が半導体レーザへと出力されるよう、レーザ駆動部3を制御する。
【0059】
各ブロックに対応する回転多面鏡24の回転角から、CPU501は、感光ドラム28の表面への入射角を算出する。この入射角から入射光量が算出される。算出された入射光量に基づいて、各ブロックにレーザ駆動電流を設定する。
【0060】
<倍率補正データ>
図10は、倍率補正を説明するための図である。半導体レーザ4a、4bから出射される各光ビームの発振波長には差がある。この差は、例えば、製造精度が原因で発生する。そして、この波長差により、fθレンズ26の屈折率が変わってしまう。すなわち、fθレンズ26の屈折率は、波長依存性を有している。この光ビームごとの屈折率の違いによって、感光ドラム28上の照射位置の精度が劣化してしまう。さらに、図10に示すようにfθレンズ26の主走査倍率は、像高位置で均一ではない。
【0061】
図10によれば、半導体レーザ4aおよび4bから感光ドラム28上に出射される各光ビームの位置関係が示されている。この図から、fθレンズ26の屈折率の波長依存性によって、各ビームの主操作方向の位置がずれてしまうことを理解できよう。
【0062】
CPU501は、半導体レーザ4aのみを発光させ、周期測定センサ531a及び531bから出力される信号周期を測定する。次に、CPU501は、半導体レーザ4bのみを発光させ、周期測定センサ531a及び531bから出力される信号周期を測定する。
【0063】
図11は、像高位置とfθレンズ26の主走査倍率誤差との関係を示す図である。まず、像高位置を40個のブロックに分割する。各像高位置に周期測定センサ531a及び531bを移動させる。そして、CPU501は、周期測定センサ531a及び531b用いて、半導体レーザ4a、4bをそれぞれ発光させたときの周期を測定する。
【0064】
例えば、周期測定センサ531a及び531bの距離を主走査速度で除算することで得られる時間を基準周期とする。そして、CPU501は、半導体レーザ4a、4bが各ブロックを照射しているときに、各周期測定センサ531a、531bから出力される信号の周期を測定する。さらに、CPU501は、基準周期に対するこの測定周期の倍率を算出する。この算出された倍率が、倍率補正データとなる。なお、半導体レーザ4a、4bの発振波長について、中心値での主走査倍率誤差が0であれば、倍率の補正値は1となる。
【0065】
このように、本実施形態では、図11に示す像高位置とfθレンズ26の主走査倍率誤差の特性分布(理論値)とを考慮して、倍率補正データが算出される。
【0066】
<他の実施形態>
上述の実施形態では、光学走査装置1から正しいユニットデータを得られなくなると、複数の光学走査装置について共通に使用されるデフォルトの設定データを使用していた(S390など)。そこで、本実施形態では、デフォルトの設定データを用いる代わりに、画像形成装置2の動作を停止させる例について説明する。
【0067】
図12は、他の実施形態に係るEEPROM制御部8の動作を示す例示的なフローチャートである。なお、図3と共通する処理については、同一の参照符号を付すことで説明を省略する。
【0068】
機種コードの照合について2度失敗したり、チェックサムの照合について3度失敗したりすると、ステップS1201に進む。ステップS1201において、EEPROM制御部8は、操作パネル等に上述のエラーを出力する。その後、EEPROM制御部8は、画像形成装置2の画像形成動作を停止させる。
【0069】
この他の実施形態によれば、通信エラー以上の致命的な故障が発生している場合に特に有効である。このような故障が発生している場合は、もはや正常に画像形成を実行できず、無駄に現像剤や用紙を消耗してしまうからである。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、光学走査装置1のEEPROM5およびバックアップメモリ9に記憶されているユニットデータを正しく利用できなくなると、デフォルトの設定データを用いて画像形成を実行する。ユニットデータは、光学走査装置1の固有の特性に関する情報が含まれている。一方、デフォルトの設定データには、複数の光学走査装置によって共通に使用される情報が含まれている。両者は、ともに光学走査装置を制御するためのパラメータであるが、前者は、各光学走査装置に固有の情報であるため、より精度良く、光学走査装置を制御できる。後者は、例えば、平均値的な情報であるため、各光学走査装置の性能を完全に引き出すことは難しいが、画像の形成を継続できる利点がある。
【0071】
また、データユニットの正しさを判定する際には、データユニットよりもサイズの小さい照合データと参照データが使用されてもよい。照合データは、例えば、EEPROM5から読み出されたチェックサムである。さらに、参照データは、例えば、バッファメモリ9に記憶されているユニットデータから算出されたチェックサムである。よって、データユニットの全てについて整合性を判定する場合に比べて、通信時間と判定時間とを短くすることができる。また、通信時間を短くすることで、照合データのエラーを抑制できると考えられる。
【0072】
また、本実施形態によれば、照合データと参照データとが整合しなかった場合に、EEPROM5からユニットデータを再度読み出して、バックアップメモリ9に記憶する。そして、バックアップメモリ9に記憶されたユニットデータから、再度、参照データが算出される。そして、算出され参照データと、読み出した照合データとが再度比較される。よって、バックアップメモリ9のユニットデータとEEPPROM5のユニットデータとが整合しなくなると、バックアップメモリ9のユニットデータを更新することで、当該ユニットデータを正しいデータに維持できる。
【0073】
なお、バックアップメモリ9のユニットデータの更新は、画像形成装置2の起動時、またはリセット後に実行されることが望ましい。これは、光学走査装置1が新しいものに交換されている可能性があるからである。また、画像形成の開始前に実行しておけば、常に、最新のユニットデータを用いて好適に画像を形成できるからでもある。
【0074】
さらに、他の実施形態で説明したように、EEPROM制御部8は、ユニットデータらが整合していない場合、画像形成装置2の動作を停止してもよい。とりわけ、通信エラー以上の深刻な問題が発生している場合、デフォルトの設定データを用いても、好適な品質で画像形成を実行できない可能性もある。よって、このような場合は、画像形成装置2の動作を停止させることで、現像剤や用紙の無駄な消費を抑えることができよう。
【0075】
なお、本実施形態に係る画像形成システムは、プリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機などとして実現できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施形態に係る光学走査装置1と画像形成装置2とを含む画像形成してムの例示的なブロック図である。
【図2】実施形態に係る光学走査装置の主要部を示す例示的な構成図である。
【図3】実施形態に係るEEPROM制御部の動作を示す例示的なフローチャートである。
【図4】実施形態に係るユニットデータの一例を示す図である。
【図5】実施形態に係る工具(治具)の一例を示すブロック図である。
【図6】実施形態に係るEEPROM5へのユニットデータの書き込み方法を示す例示的なフローチャートである。
【図7】実施形態に係る光学走査装置のEEPROMに格納されるユニットデータのアドレスマップ表である。
【図8】実施形態に係るビーム位相を説明するための図である。
【図9】光量補正を説明するための図である。
【図10】倍率補正を説明するための図である。
【図11】像高位置とfθレンズ26の主走査倍率誤差との関係を示す図である。
【図12】他の実施形態に係るEEPROM制御部8の動作を示す例示的なフローチャートである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学走査装置を搭載する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、画像形成装置では、種々のユニットが製造の最終段階で本体に組み込まれることが多い。正しいユニットを本体に搭載するために、各ユニットが備えるメモリにID情報を記憶しておくことが望ましい。このID情報を読み出すことで、本体にとって、適切なユニットであるか否かを判断できる(特許文献1)。
【特許文献1】特許第3248846号の特許掲載公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の発明によれば、ID情報に基づいて、ユニットの正誤を判定できる。しかしながら、ユニットに記憶されている、ユニットを制御するためのデータを、画像形成装置が、直接読み出すと、読み出しに時間がかかり、制御のボトルネックになる可能性がある。
【0004】
そこで、起動時などに、画像形成装置のメモリへとデータをコピーしておき、このメモリからデータを読み出して画像を形成する方法が考えられる。この方法により、読出し速度の問題は解決されると考えられる。なぜなら、画像形成装置の内部バスの転送速度は、一般に、画像形成装置とユニット間の転送速度より速いからである。
【0005】
しかしながら、データの読出し時に、通信エラーが発生すれば、エラーのあるデータに基づいて画像が形成されてしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、このような課題および他の課題のうち、少なくとも1つを解決することを目的とする。なお、他の課題については明細書の全体を通して理解できよう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、例えば、光学走査装置と画像形成装置とを含む画像形成システムに適用できる。光学走査装置は、光学走査装置の個体ごとの特性に関するユニットデータを記憶する第1の記憶手段を含む。画像形成装置は、第1の記憶手段から読み出されたユニットデータを記憶する第2の記憶手段と、複数の光学走査装置において共通に使用されるデフォルトの設定データを記憶する第3の記憶手段とを含む。さらに、画像形成装置は、第2の記憶手段に記憶されているユニットデータと、第1の記憶手段に記憶されているユニットデータとが整合しているか否かを判定する判定手段を含む。さらに、画像形成装置は、ユニットデータらが整合している場合、第2の記憶手段から読み出したユニットデータを用いて光学走査装置を制御する制御手段を含む。なお、この制御手段は、ユニットデータらが整合していない場合、第3の記憶手段から読み出した設定データを用いて光学走査装置を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、画像形成装置と光学走査装置との間で、通信不良が発生したとしても、デフォルトの設定データを用いて、簡易的に画像を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の一実施形態を示す。もちろん以下で説明される個別の実施形態は、本発明の上位概念、中位概念および下位概念など種々の概念を理解するために役立つであろう。また、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、実施形態に係る光学走査装置1と画像形成装置2とを含む画像形成してムの例示的なブロック図である。光学走査装置1には、レーザ駆動部3、半導体レーザ4a及び4b、並びに記憶素子(以下、EEPROMと略す。)5が含まれている。画像形成装置のレーザ制御部16から出力されるレーザ駆動部3は、レーザ制御信号17により、複数の半導体レーザ4a及び4bを駆動する。
【0011】
EEPROM5は、光学走査装置1の組立時に入力されるユニットデータを記憶している。ユニットデータは、光学走査装置の個体ごとの特性に関するデータを含んでいる。ユニットデータは、例えば、光学走査装置1の認識データ(機種コードなど)、製造番号(シリアル番号)、半導体レーザ4a及び4bの光量補正値、主走査書き出し位置および印字倍率のうち、少なくとも一つを含んでいる。
【0012】
画像形成装置2には、EEPROM制御部8、バックアップメモリ9、デフォルトメモリ10、およびレーザ制御部16を含む。EEPROM制御部8は、CPU、ROMおよびRAMやASICなどで構成されうる。EEPROM制御部8は、制御信号6をEEPROM5に送信することで、ユニットデータを読み出す。ユニットデータは、データ信号7としてEEPROM5から出力される。読み出されたユニットデータは、バックアップメモリ9に記憶される。
【0013】
EEPROM制御部8は、電源投入時またはリセット時に、制御信号11をバックアップメモリ9に送信することで、ユニットデータを読み出す。ユニットデータは、データ信号12として、EEPROM制御部8に入力される。
【0014】
デフォルトメモリ10は、複数の光学走査装置において共通に使用されるデフォルトの設定データを記憶するメモリである。この設定データは、光学走査装置の個体に依存しない点で、ユニットデータとは若干異なる。設定データは、例えば、例えば、半導体レーザ4a及び4bの光学特性及び電気特性に関するデータや、光学走査装置1の光学効率から算出されるデータなどが含まれる。なお設定データとユニットデータとの算出方法をほぼ同一の方法を採用できる。EEPROM制御部8は、制御信号13をデフォルトメモリ10に送信することで、設定データを読み出すことができる。なお、設定データは、データ信号14を介してEEPROM制御部8に入力される。
【0015】
レーザ制御部16は、EEPROM制御部8から入力される設定信号15に基づいてレーザ制御信号17を生成する。レーザ制御部16は、画像信号18をレーザ駆動部3に送出することで、複数の半導体レーザ4a及び4bを変調発光させる。
【0016】
図2は、実施形態に係る光学走査装置の主要部を示す例示的な構成図である。レーザ駆動部3は、半導体レーザ4a及び4bを用いて、複数のビームを同時に出射することができる。半導体レーザ4a及び4bからの光ビームが所定光量となるように、レーザ駆動部3のレーザ駆動回路は、半導体レーザ4a及び4bに駆動電流を供給する。
【0017】
合成ユニット21は、台形状のプリズムであり、内部に偏光ビームスプリッタ30を備えている。合成ユニット21のビーム出力面には、偏光フィルタ32が貼り付けられている。偏光ビームスプリッタ30は、偏光波の位相によりビームを直進させたり、ビームを反射したりする特性を有している。
【0018】
半導体レーザ4bから出射されたレーザビームL1b(L2b)は合成ユニット21の斜線部31で偏向される。レーザビームL1bは、さらに偏光ビームスプリッタ30で偏向され、偏光フィルタ32を通過し、合成ユニット21の外に出射する。一方、半導体レーザ4aから出射したレーザビームL1a(L2a)は、レーザビームL1bと偏光方向が90°異なっている。そのため、レーザビームL1aは、偏光ビームスプリッタ30及び偏光フィルタ32を直進して、合成ユニット21から出射する。なお、レーザビームL1a及びレーザビームL1bは、その照射位置が、感光ドラム28上における副走査方向で所定の間隔となるように配置される。感光ドラム28は、いわゆる像担持体である。
【0019】
非画像領域のレーザビームL1a、L1bは、それぞれコリメータレンズ22及びシリンドリカルレンズ23を経て、回転多面鏡(ポリゴンミラー)24に到達する。回転多面鏡24は、スキャナモータを含む回転多面鏡駆動回路25によって等角速度で回転している。回転多面鏡24に到達したレーザビームL1a、L1bは、回転多面鏡24によって偏向され、fθレンズ26によって感光ドラム28の回転方向と直角方向に等速走査となるように変換される。また、変換されたレーザビームL1a、L1bは、ビーム検出(以下、BDと略す。)センサ29に受光される。BDセンサ29によって、レーザビームL1a、L1bが検出されたタイミングが、画像形成のタイミングに影響を及ぼす。
【0020】
画像領域のレーザビームL2a、L2bは、fθレンズ26を出射した後、反射ミラー27を経由して感光ドラム28上を照射する。これにより感光ドラム28上に静電潜像が形成される。感光ドラム28に形成された潜像は、トナーによって現像された後、用紙に転写・定着される。
【0021】
図3は、実施形態に係るEEPROM制御部の動作を示す例示的なフローチャートである。この動作は、主に、ユニットデータのバックアップ処理を示している。
【0022】
<機種コードの照合>
ステップS301において、EEPROM制御部8は、EEPROM5から機種コードを読み出す。ステップS302において、EEPROM制御部8は、搭載する光学走査装置1が画像形成装置2に合致したユニットであるか否かを判定する。例えば、EEPROM制御部8は、読み出した機種コードと、バックアップメモリ9に記憶されている機種コードとを比較する。機種コードが整合すれば、ステップS305に進む。
【0023】
機種コードが整合しなければ、ステップS303に進み、EEPROM制御部8は、再度、機種コードをEEPROM5から読み出す。もう一度、機種コードを読み出すのは、通信エラーによって、EEPROM5から読み出した機種コードが誤っている可能性があるからである。ステップS304において、EEPROM制御部8は、再度、機種コードを比較する。機種コードが整合すれば、ステップS305に進む。機種コードが整合しなければ、ステップS390に進む。複数回にわたり機種コードが整合しない場合は、通信エラーが発生したというよりは、むしろ、他の画像形成装置用の光学走査装置が搭載されていることが疑われるからである。いずれにしても、バックアップメモリ9に記憶されているユニットデータの信頼性は相対的に低いといわざるを得ない。
【0024】
ステップS390において、EEPROM制御部8は、デフォルトメモリ10から設定データを読み出す。また、ステップS391において、EEPROM制御部8は、図示省略の表示部(操作パネルの液晶表示装置など)にエラーが発生したことを表すアラームメッセージを表示する。その後、ステップS395に進み、EEPROM制御部8は、読み出したデフォルトの設定データをレーザ制御部16のレジスタに設定する。
【0025】
このように、本実施形態では、機種コードの照合が2回実行され、そのうち1回でも整合した場合は、「シリアル番号照合(S305)」に移行する。
【0026】
<シリアル番号の照合>
本実施形態では、画像形成装置2に搭載されている光学走査装置1が交換されたか否かの判定を行う。例えば、工場出荷時の光学走査装置1に不具合が発生すると、新しい光学走査装置1に交換されることがある。光学走査装置1は、個体(シリアル番号)ごとに、特性が異なることがある。そのため、光学走査装置1が交換されると、バックアップメモリ9のユニットデータを更新することが望ましい。そこで、光学走査装置1のシリアル(製造管理)番号の照合を行う。
【0027】
ステップS305において、EEPROM制御部8は、EEPROM5からシリアル番号を読み出す。ステップS306において、EEPROM制御部8は、読み出したシリアル番号と、バックアップメモリ9に記憶されているシリアル番号とが整合するか否かを判定する。
【0028】
整合すれば、交換は実行されていないので、ステップS307に進み、EEPROM制御部8は、EEPROM5から照合用のデータであるチェックサムを読み出す。ステップS308において、EEPROM制御部8は、バックアップメモリ308に記憶されている参照データ(例:チェックサム)も読み出す。ステップS309において、EEPROM制御部8は、読み出された双方のチェックサムを比較することで、両者が整合するか否かを判定する。整合すれば、双方のユニットデータも整合すると推定されるので、バックアップメモリ9のユニットデータを更新する必要はない。よって、ステップS395に進む。
【0029】
一方、整合しなければ、ステップS310に進み、EEPROM制御部8は、EEPROM5からユニットデータを読み出す。ステップS311において、EEPROM制御部8は、読み出したユニットデータをバックアップメモリ9に書き込む。ステップS312において、EEPROM制御部8は、バックアップメモリ9に書き込んだユニットデータについてチェックサムを算出する。
【0030】
<チェックサム算出方法>
図4は、実施形態に係るユニットデータの一例を示す図である。この図を用いて、チェックサムの算出方法の一例を示す。まず、EEPROM制御部8は、各アドレスに格納されているデータについて、同一列ごとの加算を実行する。なお、EEPROM制御部8は、加算結果について、データ長以上の繰上げは無視するものとする。次に、EEPROM制御部8は、加算結果をビット反転することで、チェックサムとする。
【0031】
図4の例では、各行のデータ長が2バイトであり、チェックサムのデータ長も2バイトとしている。また、機種コードは、00AAである。アドレス7D、7Eに格納されているデータを「8000」とし、他のアドレスに格納されているデータは、「0000」とする。よって、加算結果は、「100AA」となるが、繰上げを無視すると、「00AA」となる。最終的に、加算結果「00AA」をビット反転することで、チェックサム「FF55」が算出される。
【0032】
ステップS313において、EEPROM制御部8は、算出したチェックサムと、EEPROM5から読みだしたチェックサムとが整合するか否かを判定する。整合すれば、ユニットデータは正しく更新されたことになる。よって、ステップS395に進む。
【0033】
一方、整合しなければ、ユニットデータを正しく更新できなかったことになる。よって、ステップS314に進む。ユニットデータが正しく更新されなかった原因としては、例えば、画像形成装置2と光学走査装置1との間の通信不良などが考えられる。
【0034】
ステップS314において、EEPROM制御部8は、EEPROM5から、再度、ユニットデータを読み出す。ステップS315において、EEPROM制御部8は、読み出したユニットデータを、再度、バックアップメモリ9に書き込む。ステップS316において、EEPROM制御部8は、バックアップメモリ9に書き込んだユニットデータについてチェックサムを算出する。ステップS317において、EEPROM制御部8は、算出したチェックサムと、EEPROM5から読み出したチェックサムとを比較し、両者が整合するか否かを判定する。整合すれば、ユニットデータは正しく更新されたことになる。よって、ステップS395に進む。
【0035】
一方、不整合であれば、ユニットデータの更新に2回とも失敗したことになる。この場合、通信不良やさらに深刻な異常が発生している可能性もある。よって、ステップS390に進む。
【0036】
ステップS390において、EEPROM制御部8は、デフォルトメモリ10から、デフォルトの設定データを読み出す。ステップS391において、EEPROM制御部8は、操作パネルなどの表示部にエラーが発生していることを表すアラームメッセージを出力する。その後、ステップS395に進み、EEPROM制御部8は、バックアップメモリ9のユニットデータに代えて、デフォルトメモリ10の設定データをレーザ制御部16のレジスタに出力する。
【0037】
<EEPROMへのユニットデータの書き込み>
図5は、実施形態に係る工具(治具)の一例を示すブロック図である。この工具500は、完成した光学走査装置1の各種特性などのデータを測定するための装置である。CPU501は、制御プログラムに応じて、光学走査装置1などを制御したり、各種の演算を実行したりする制御ユニットである。ROM502は、制御プログラムなどを格納する記憶ユニットである。RAM503は、ワークエリアとして機能する記憶ユニットである。インタフェース504は、レーザ駆動部3やEEPROM5などと接続するための通信回路である。センサ530、531aおよび531bは、主に、光ビームを検出するための素子である。
【0038】
図6は、実施形態に係るEEPROM5へのユニットデータの書き込み方法を示す例示的なフローチャートである。このフローチャートは、光学走査装置1を画像形成装置2へと組み込む前に実行される。なお、デフォルトの設定データについても、同様の手順で、試作機などから取得される。
【0039】
<データ算出>
ステップS601において、CPU501は、光学走査装置1を実際に駆動することで、各種データを測定する。すなわち、CPU501は、レーザ制御部16に代わって、各種の制御信号をレーザ駆動部3に出力する。また、CPU501は、取得した各種データのうち、必要な演算を実行することで、ユニットデータの一部を算出する。算出の具体例については、後述する。なお、CPU501は、光学走査装置1の機種コード及びシリアル番号も含むよう、ユニットデータを作成する。このユニットデータは、一旦、RAM503に格納される。
【0040】
ステップS602において、CPU501は、算出したユニットデータからさらに、チェックサムを算出する。チェックサムの算出方法は、既に説明した通りである。このチェックサムは、一旦、RAM503に格納される。なお、チェックサムは、ユニットデータの一部としてもよいことはいうまでもない。
【0041】
<データ書き込み>
ステップS603において、CPU501は、算出したユニットデータ及びチェックサムを、インタフェース504を介して、EEPROM5に書き込む。
【0042】
<データ照合>
ステップS604において、CPU501は、EEPROM5に格納されたユニットデータを読み出す。ステップS605において、CPU501は、RAM503に格納されているユニットデータと、EEPROM5から読み出されたユニットデータとが全て整合するか否かを照合する。全て整合すれば、ステップS609に進む。
【0043】
一方、一部でも整合しなければ、ステップS607に進み、CPU501は、EEPROM5に格納されているユニットデータを、再度、読み出す。ステップS608において、CPU501は、再度、RAM503に格納されているユニットデータと、EEPROM5から読み出されたユニットデータとが全て整合するか否かを照合する。全て整合すれば、ステップS609に進む。もし、2回の照合処理(S605およびS608)とも失敗すれば、EEPROMへの書き込みエラーとなる。よっと、CPU501は、工具500の操作パネル(図示省略)等にエラーメセージを出力する。
【0044】
ステップS609において、CPU501は、インタフェース504を介して、EEPROM5からチェックサムを読み出す。ステップS610において、CPU501は、RAM503に格納されているチェックサムと、EEPROM5から読み出したチェックサムとが整合する否かを照合する。整合すれば、光学走査装置1は画像形成装置2に組み込まれ、出荷されることになる。
【0045】
一方、不整合であれば、ステップS611に進み、CPU501は、インタフェース504を介して、EEPROM5からチェックサムを、再度、読み出す。ステップS612において、CPU501は、RAM503に格納されているチェックサムと、EEPROM5から読み出したチェックサムとが整合する否かを、再度、照合する。整合すれば、光学走査装置1は画像形成装置2に組み込まれ、出荷されることになる。
【0046】
一方、2回の照合処理(S610およびS612)とも失敗すれば、EEPROMへの書き込みエラーとなる。よって、CPU501は、工具500の操作パネル等にエラーを出力する。
【0047】
<ユニットデータおよびデフォルト設定データの設定/算出方法>
図7は、実施形態に係る光学走査装置のEEPROMに格納されるユニットデータのアドレスマップ表である。ここでは、一例として、EEPROM5の記憶容量が2Kbit(128×16bit)であるものとする。EEPROM5に格納される各データは以下の通りである。なお、デフォルトの設定データの算出方法については、試作段階で測定されたサンプルデータから算出されたバラツキデータを元に算出してもよい。例えば、複数の試作機からユニットデータを算出し、これらのユニットデータから平均値を算出し、この平均値をデフォルトの設定データとしてもよい。
【0048】
<機種コード>
例えば、機種コードについては、ユニットデータおよびデフォルトの設定データとも算出方法は同一とする。例えば、機種コードが「S123」であれば、CPU501は、頭文字の「S」を削除し、残りの番号をHEX変換する:
例:S123→123(DEC)→7B(HEX)。
【0049】
<シリアル番号>
シリアル番号については、ユニットデータのみに設定され、デフォルトの設定データには設定されないものとする。デフォルトの設定データは、全ての個体に共通となるユニットデータだからである。
【0050】
例えば、CPU501は、内蔵タイマーから製造年月に関する数値を取得するとともに、その月に製造された各ユニットを識別するためのユニット番号を算出する。また、CPU501は、製造年月を表す数値と、ユニット番号とを個別に、HEX変換して得られた値を所定のアドレスに格納する。
【0051】
例えば、シリアル番号「050600456」については、製造年月「05年06月」と、ユニット番号「456とに分割する。さらに、製造年月「0506(DEC)」を「1FA(HEX)」に変換する。同様に、ユニット番号「456(DEC)」を「2E(HEX)」に変換する。
【0052】
<ビーム位相データ>
図8は、実施形態に係るビーム位相を説明するための図である。半導体レーザ4aの発光点と、半導体レーザ4bの発光点とのビーム間隔Lは、画像の品質を維持する上で重要である。ところで、感光ドラム28上における副走査方向で所定の解像度が得られるように、発光点の間隔を調整すると、各発光点の主走査方向の位置が正しい位置からずれてしまうことが多い。
【0053】
感光ドラム28上の照射位置に相当する位置(照射相当位置)に、工具500の冶具センサ530が配置される。CPU501は、半導体レーザ4aのみを発光させたときに冶具センサ30から出力される信号と、半導体レーザ4bのみを発光させたときの冶具センサ530から出力される信号との時間間隔を測定する。この測定結果が、ビーム位相データとなる。
【0054】
光学走査装置1及び画像形成装置2の仕様を以下の通りと仮定して、より具体的な例示を説明する:
副走査解像度:600<dpi>
主走査速度:2<μm/ns>
主走査倍率:3
ビーム間隔:100μm。
【0055】
上記各数値をから、半導体レーザ4a及び4bのピッチ間隔は、次式から算出される:
(デバイス上のピッチ間隔)=(1002−42.42)1/2
=90.6μm
ビーム位相=(デバイス上のピッチ間隔)×(主走査倍率)÷(主走査速度)
=90.6<μm>×3÷2<μm/ns>
=135.8<ns>
よって、135.8<ns>が求めるべきビーム位相となる。
【0056】
<光量補正データ>
図9は、光量補正を説明するための図である。ここでは、一例として、半導体レーザ4a、4bから出射される光ビームを回転多面鏡24の反射面全体に照射するような光学系を考慮する。この光学系では、回転多面鏡24が回転するため、回転多面鏡24からの出射角が異なる。よって、感光ドラム28上での各像高位置で、光量差が発生する。
【0057】
図9に示す概念図によれば、像高位置と感光ドラム28上での光量との関係が示されている。像高位置の中央部の光量と比較すると、走査開始及び終了近傍では、相対的に光量が低下している。そこで、光量低下を補償するように、レーザ駆動電流を増大させるような制御がレーザ制御部16によって実行される。これによって、感光ドラム28上の各位置で、光量が均一となる。
【0058】
例えば、感光ドラム28の表面における有効画像領域を任意の像高位置で30個のブロックに分割する。そして、各ブロックごとに、好適なレーザ駆動電流を設定する。レーザ制御部16は、ユニットデータに基づいて、各ブロックごとに好適なレーザ駆動電流が半導体レーザへと出力されるよう、レーザ駆動部3を制御する。
【0059】
各ブロックに対応する回転多面鏡24の回転角から、CPU501は、感光ドラム28の表面への入射角を算出する。この入射角から入射光量が算出される。算出された入射光量に基づいて、各ブロックにレーザ駆動電流を設定する。
【0060】
<倍率補正データ>
図10は、倍率補正を説明するための図である。半導体レーザ4a、4bから出射される各光ビームの発振波長には差がある。この差は、例えば、製造精度が原因で発生する。そして、この波長差により、fθレンズ26の屈折率が変わってしまう。すなわち、fθレンズ26の屈折率は、波長依存性を有している。この光ビームごとの屈折率の違いによって、感光ドラム28上の照射位置の精度が劣化してしまう。さらに、図10に示すようにfθレンズ26の主走査倍率は、像高位置で均一ではない。
【0061】
図10によれば、半導体レーザ4aおよび4bから感光ドラム28上に出射される各光ビームの位置関係が示されている。この図から、fθレンズ26の屈折率の波長依存性によって、各ビームの主操作方向の位置がずれてしまうことを理解できよう。
【0062】
CPU501は、半導体レーザ4aのみを発光させ、周期測定センサ531a及び531bから出力される信号周期を測定する。次に、CPU501は、半導体レーザ4bのみを発光させ、周期測定センサ531a及び531bから出力される信号周期を測定する。
【0063】
図11は、像高位置とfθレンズ26の主走査倍率誤差との関係を示す図である。まず、像高位置を40個のブロックに分割する。各像高位置に周期測定センサ531a及び531bを移動させる。そして、CPU501は、周期測定センサ531a及び531b用いて、半導体レーザ4a、4bをそれぞれ発光させたときの周期を測定する。
【0064】
例えば、周期測定センサ531a及び531bの距離を主走査速度で除算することで得られる時間を基準周期とする。そして、CPU501は、半導体レーザ4a、4bが各ブロックを照射しているときに、各周期測定センサ531a、531bから出力される信号の周期を測定する。さらに、CPU501は、基準周期に対するこの測定周期の倍率を算出する。この算出された倍率が、倍率補正データとなる。なお、半導体レーザ4a、4bの発振波長について、中心値での主走査倍率誤差が0であれば、倍率の補正値は1となる。
【0065】
このように、本実施形態では、図11に示す像高位置とfθレンズ26の主走査倍率誤差の特性分布(理論値)とを考慮して、倍率補正データが算出される。
【0066】
<他の実施形態>
上述の実施形態では、光学走査装置1から正しいユニットデータを得られなくなると、複数の光学走査装置について共通に使用されるデフォルトの設定データを使用していた(S390など)。そこで、本実施形態では、デフォルトの設定データを用いる代わりに、画像形成装置2の動作を停止させる例について説明する。
【0067】
図12は、他の実施形態に係るEEPROM制御部8の動作を示す例示的なフローチャートである。なお、図3と共通する処理については、同一の参照符号を付すことで説明を省略する。
【0068】
機種コードの照合について2度失敗したり、チェックサムの照合について3度失敗したりすると、ステップS1201に進む。ステップS1201において、EEPROM制御部8は、操作パネル等に上述のエラーを出力する。その後、EEPROM制御部8は、画像形成装置2の画像形成動作を停止させる。
【0069】
この他の実施形態によれば、通信エラー以上の致命的な故障が発生している場合に特に有効である。このような故障が発生している場合は、もはや正常に画像形成を実行できず、無駄に現像剤や用紙を消耗してしまうからである。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、光学走査装置1のEEPROM5およびバックアップメモリ9に記憶されているユニットデータを正しく利用できなくなると、デフォルトの設定データを用いて画像形成を実行する。ユニットデータは、光学走査装置1の固有の特性に関する情報が含まれている。一方、デフォルトの設定データには、複数の光学走査装置によって共通に使用される情報が含まれている。両者は、ともに光学走査装置を制御するためのパラメータであるが、前者は、各光学走査装置に固有の情報であるため、より精度良く、光学走査装置を制御できる。後者は、例えば、平均値的な情報であるため、各光学走査装置の性能を完全に引き出すことは難しいが、画像の形成を継続できる利点がある。
【0071】
また、データユニットの正しさを判定する際には、データユニットよりもサイズの小さい照合データと参照データが使用されてもよい。照合データは、例えば、EEPROM5から読み出されたチェックサムである。さらに、参照データは、例えば、バッファメモリ9に記憶されているユニットデータから算出されたチェックサムである。よって、データユニットの全てについて整合性を判定する場合に比べて、通信時間と判定時間とを短くすることができる。また、通信時間を短くすることで、照合データのエラーを抑制できると考えられる。
【0072】
また、本実施形態によれば、照合データと参照データとが整合しなかった場合に、EEPROM5からユニットデータを再度読み出して、バックアップメモリ9に記憶する。そして、バックアップメモリ9に記憶されたユニットデータから、再度、参照データが算出される。そして、算出され参照データと、読み出した照合データとが再度比較される。よって、バックアップメモリ9のユニットデータとEEPPROM5のユニットデータとが整合しなくなると、バックアップメモリ9のユニットデータを更新することで、当該ユニットデータを正しいデータに維持できる。
【0073】
なお、バックアップメモリ9のユニットデータの更新は、画像形成装置2の起動時、またはリセット後に実行されることが望ましい。これは、光学走査装置1が新しいものに交換されている可能性があるからである。また、画像形成の開始前に実行しておけば、常に、最新のユニットデータを用いて好適に画像を形成できるからでもある。
【0074】
さらに、他の実施形態で説明したように、EEPROM制御部8は、ユニットデータらが整合していない場合、画像形成装置2の動作を停止してもよい。とりわけ、通信エラー以上の深刻な問題が発生している場合、デフォルトの設定データを用いても、好適な品質で画像形成を実行できない可能性もある。よって、このような場合は、画像形成装置2の動作を停止させることで、現像剤や用紙の無駄な消費を抑えることができよう。
【0075】
なお、本実施形態に係る画像形成システムは、プリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機などとして実現できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】実施形態に係る光学走査装置1と画像形成装置2とを含む画像形成してムの例示的なブロック図である。
【図2】実施形態に係る光学走査装置の主要部を示す例示的な構成図である。
【図3】実施形態に係るEEPROM制御部の動作を示す例示的なフローチャートである。
【図4】実施形態に係るユニットデータの一例を示す図である。
【図5】実施形態に係る工具(治具)の一例を示すブロック図である。
【図6】実施形態に係るEEPROM5へのユニットデータの書き込み方法を示す例示的なフローチャートである。
【図7】実施形態に係る光学走査装置のEEPROMに格納されるユニットデータのアドレスマップ表である。
【図8】実施形態に係るビーム位相を説明するための図である。
【図9】光量補正を説明するための図である。
【図10】倍率補正を説明するための図である。
【図11】像高位置とfθレンズ26の主走査倍率誤差との関係を示す図である。
【図12】他の実施形態に係るEEPROM制御部8の動作を示す例示的なフローチャートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学走査装置と画像形成装置とを含む画像形成システムであって、
前記光学走査装置は、
前記光学走査装置の個体ごとの特性に関するユニットデータを記憶する第1の記憶手段を含み、
前記画像形成装置は、
前記第1の記憶手段から読み出された前記ユニットデータを記憶する第2の記憶手段と、
複数の光学走査装置において共通に使用されるデフォルトの設定データを記憶する第3の記憶手段と、
前記第2の記憶手段に記憶されているユニットデータと、前記第1の記憶手段に記憶されているユニットデータとが整合しているか否かを判定する判定手段と、
前記ユニットデータらが整合している場合、前記第2の記憶手段から読み出されたユニットデータを用いて前記光学走査装置を制御し、一方で、前記ユニットデータらが整合していない場合、前記第3の記憶手段から読み出された設定データを用いて前記光学走査装置を制御する制御手段と
を含むことを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記第1の記憶手段に記憶されているデータユニットから所定の演算により算出された、該データユニットよりもサイズの小さい照合データを前記第1の記憶手段から読み出す読出手段と、
前記第2の記憶手段に記憶されているデータユニットに前記所定の演算を施すことで参照データを算出する算出手段と、
前記照合データと前記参照データとを比較する比較手段と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記参照データと前記照合データはチェックサムであることを特徴とする請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記比較手段は、
前記照合データと前記参照データとが整合しなかった場合に、前記第1の記憶手段から前記ユニットデータを再度読み出して前記第2の記憶手段に記憶し、記憶されたユニットデータから前記参照データを算出し、算出した前記参照データと、前記照合データとを比較することを特徴とする請求項2または3に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記ユニットデータには、前記光学走査装置の認識データ、製造番号、前記光学走査装置に含まれる光源の光量補正値、主走査書き出し位置および印字倍率のうち少なくとも一つが含まれていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記ユニットデータらが整合していない場合、前記第3の記憶手段から読み出した設定データを用いて前記光学走査装置を制御する代わりに、前記画像形成装置の動作を停止することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記第1の記憶手段に記憶されているデータユニットは、前記画像形成システムの電源投入時またはリセット時に読み出されて、前記第2の記憶手段に書き込まれることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成システム。
【請求項8】
前記光学走査装置は、
画像データに基づいて変調された光ビームを射出する半導体レーザと、
前記光ビームをコリメート光とするコリメートレンズ、該光ビームを偏向する回転多面鏡、該回転多面鏡によって偏向された光ビームを等角および等速で走査するよう変換するfθレンズ、像担持体の所定の位置に照射するよう調整するための反射ミラーを含む光学ユニットと
を含み、
前記ユニットデータは、前記半導体レーザや前記光学ユニットを構成する部品の偏差及び前記光学走査装置の組立公差から得られたデータであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の画像形成システム。
【請求項9】
個体ごとの特性に関するユニットデータを記憶する第1の記憶手段を含む光学走査装置を搭載する画像形成装置であって、
前記第1の記憶手段から読み出された前記ユニットデータを記憶する第2の記憶手段と、
複数の光学走査装置において共通に使用されるデフォルトの設定データを記憶する第3の記憶手段と、
前記第2の記憶手段に記憶されているユニットデータと、前記第1の記憶手段に記憶されているユニットデータとが整合しているか否かを判定する判定手段と、
前記ユニットデータらが整合している場合、前記第2の記憶手段から読み出したユニットデータを用いて前記光学走査装置を制御し、一方で、前記ユニットデータらが整合していない場合、前記第3の記憶手段から読み出した設定データを用いて前記光学走査装置を制御する制御手段と
を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
光学走査装置を搭載する画像形成装置の制御方法であって、
前記光学走査装置の個体ごとの特性に関するユニットデータを記憶する、前記光学走査装置が備える第1の記憶手段から前記ユニットデータを読み出すステップと、
読み出された前記ユニットデータを、前記画像形成装置が備える第2の記憶手段に書き込むステップと、
前記第2の記憶手段に記憶されているユニットデータと、前記第1の記憶手段に記憶されているユニットデータとが整合しているか否かを判定するステップと、
前記ユニットデータらが整合している場合、前記第2の記憶手段から読み出したユニットデータを用いて前記光学走査装置を制御し、一方で、前記ユニットデータらが整合していない場合、複数の光学走査装置において共通に使用されるデフォルトの設定データを記憶する、前記画像形成装置が備える第3の記憶手段から読み出した設定データを用いて前記光学走査装置を制御するステップと
を含むことを特徴とする制御方法。
【請求項1】
光学走査装置と画像形成装置とを含む画像形成システムであって、
前記光学走査装置は、
前記光学走査装置の個体ごとの特性に関するユニットデータを記憶する第1の記憶手段を含み、
前記画像形成装置は、
前記第1の記憶手段から読み出された前記ユニットデータを記憶する第2の記憶手段と、
複数の光学走査装置において共通に使用されるデフォルトの設定データを記憶する第3の記憶手段と、
前記第2の記憶手段に記憶されているユニットデータと、前記第1の記憶手段に記憶されているユニットデータとが整合しているか否かを判定する判定手段と、
前記ユニットデータらが整合している場合、前記第2の記憶手段から読み出されたユニットデータを用いて前記光学走査装置を制御し、一方で、前記ユニットデータらが整合していない場合、前記第3の記憶手段から読み出された設定データを用いて前記光学走査装置を制御する制御手段と
を含むことを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
前記判定手段は、
前記第1の記憶手段に記憶されているデータユニットから所定の演算により算出された、該データユニットよりもサイズの小さい照合データを前記第1の記憶手段から読み出す読出手段と、
前記第2の記憶手段に記憶されているデータユニットに前記所定の演算を施すことで参照データを算出する算出手段と、
前記照合データと前記参照データとを比較する比較手段と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記参照データと前記照合データはチェックサムであることを特徴とする請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記比較手段は、
前記照合データと前記参照データとが整合しなかった場合に、前記第1の記憶手段から前記ユニットデータを再度読み出して前記第2の記憶手段に記憶し、記憶されたユニットデータから前記参照データを算出し、算出した前記参照データと、前記照合データとを比較することを特徴とする請求項2または3に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記ユニットデータには、前記光学走査装置の認識データ、製造番号、前記光学走査装置に含まれる光源の光量補正値、主走査書き出し位置および印字倍率のうち少なくとも一つが含まれていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記ユニットデータらが整合していない場合、前記第3の記憶手段から読み出した設定データを用いて前記光学走査装置を制御する代わりに、前記画像形成装置の動作を停止することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記第1の記憶手段に記憶されているデータユニットは、前記画像形成システムの電源投入時またはリセット時に読み出されて、前記第2の記憶手段に書き込まれることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の画像形成システム。
【請求項8】
前記光学走査装置は、
画像データに基づいて変調された光ビームを射出する半導体レーザと、
前記光ビームをコリメート光とするコリメートレンズ、該光ビームを偏向する回転多面鏡、該回転多面鏡によって偏向された光ビームを等角および等速で走査するよう変換するfθレンズ、像担持体の所定の位置に照射するよう調整するための反射ミラーを含む光学ユニットと
を含み、
前記ユニットデータは、前記半導体レーザや前記光学ユニットを構成する部品の偏差及び前記光学走査装置の組立公差から得られたデータであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の画像形成システム。
【請求項9】
個体ごとの特性に関するユニットデータを記憶する第1の記憶手段を含む光学走査装置を搭載する画像形成装置であって、
前記第1の記憶手段から読み出された前記ユニットデータを記憶する第2の記憶手段と、
複数の光学走査装置において共通に使用されるデフォルトの設定データを記憶する第3の記憶手段と、
前記第2の記憶手段に記憶されているユニットデータと、前記第1の記憶手段に記憶されているユニットデータとが整合しているか否かを判定する判定手段と、
前記ユニットデータらが整合している場合、前記第2の記憶手段から読み出したユニットデータを用いて前記光学走査装置を制御し、一方で、前記ユニットデータらが整合していない場合、前記第3の記憶手段から読み出した設定データを用いて前記光学走査装置を制御する制御手段と
を含むことを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
光学走査装置を搭載する画像形成装置の制御方法であって、
前記光学走査装置の個体ごとの特性に関するユニットデータを記憶する、前記光学走査装置が備える第1の記憶手段から前記ユニットデータを読み出すステップと、
読み出された前記ユニットデータを、前記画像形成装置が備える第2の記憶手段に書き込むステップと、
前記第2の記憶手段に記憶されているユニットデータと、前記第1の記憶手段に記憶されているユニットデータとが整合しているか否かを判定するステップと、
前記ユニットデータらが整合している場合、前記第2の記憶手段から読み出したユニットデータを用いて前記光学走査装置を制御し、一方で、前記ユニットデータらが整合していない場合、複数の光学走査装置において共通に使用されるデフォルトの設定データを記憶する、前記画像形成装置が備える第3の記憶手段から読み出した設定データを用いて前記光学走査装置を制御するステップと
を含むことを特徴とする制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−78877(P2007−78877A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−264429(P2005−264429)
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月12日(2005.9.12)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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