説明

画像形成装置および画像形成方法

【課題】基板に精度よくトナー画像を転写する。
【解決手段】画像形成装置1は、ガラス基板9を平らな保持面にて保持し移動する基板保持部21、および、ガラス基板9に転写されるトナー画像が形成される感光ドラム31を備える。基板保持部21はガラス基板9の進行方向に配列されるとともにそれぞれが進行方向に垂直な方向に伸びる複数の線状電極222を備え、線状電極222は上面が保持面210となる抵抗体223に覆われる。線状電極222を介してガラス基板9の被転写面には転写位置から離れるに従って感光ドラム31との電位差が減少する電位が与えられる。画像形成装置1では、保持面210による保持により、ガラス基板9のずれが防止され、転写位置近傍において感光体312とガラス基板9との間の間隙に放電が生じることが防止され、ガラス基板9上にトナー画像を精度よく転写することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上にトナー画像または静電潜像を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
帯電した感光体を有する感光ドラムに画像形成用の光を照射して静電潜像を形成し、静電潜像にトナーを付与することによりトナー画像として顕在化させ、その後、印刷用紙に転写して印刷用紙上にトナー画像を形成する電子写真方式の印刷装置が従来より利用されている。このような印刷装置においてトナー画像を印刷用紙に転写する際には、所定の転写位置にて印刷用紙を感光ドラムの外周面に当接させつつ印刷用紙の感光ドラムとは反対側に電位を付与して電界を形成することにより、帯電した粒子(あるいは、液体中にて帯電した粒子)であるトナーを感光体上から印刷用紙に移動させる、いわゆる電界転写法が用いられる。この印刷技術は、無版にて電子データを変更するだけで自由にパターンを変更できる簡便さと、高速・高解像力出力が得られることから、一般画像出力機から、プリント基板や液晶パネル用カラーフィルタ、捺染等の工業生産的なパターンニングの世界に踏み込み始めている。
【0003】
特許文献1では、電子写真法を利用してフォトレジストあるいはマスク塗料等の塗布および剥離工程を不要とするプリント基板のパターン形成方法が開示されており、特許文献2では、電子写真法による印刷によってトナー像を形成して導電パターンに対応するフォトレジスト部分をマスクすることにより、導電パターンの位置誤差等の欠陥の発生を抑えるプリント基板のパターン形成方法が開示されている。また、特許文献3では、回路基板の製造方法において、画像信号に応じて荷電粒子を基板上に誘導してパターンに相当する荷電粒子像を形成することにより、基板の厚さに左右されることなく直接静電潜像に現像剤を供給して現像し、転写工程によるパターンの乱れをなくす技術が開示されている。さらに、特許文献4では、液晶パネル用カラーフィルタの製造において、液体トナーである機能性材料により静電印刷をガラス基板上で行うための技術が開示され、特許文献5では、電子写真方式による捺染用トナーおよび捺染方法についての技術が開示されている。
【特許文献1】昭58−57783号公報
【特許文献2】特開平5−283838号公報
【特許文献3】特開平7−254768号公報
【特許文献4】特表2002−527783号公報
【特許文献5】特開平5−27474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プリント基板やカラーフィルタは平板の堅い材料であり、このような堅い平板に転写を行う方法としては、ローラ転写という圧力と電界による転写や、中間転写ベルトを介しての熱と圧力での転写等が提案される。しかし、プリント基板やカラーフィルタは一般画像よりも数段高い寸法精度の印刷が求められ、ローラ転写や中間転写ベルトを介しての転写では、転写圧力による搬送誤差や転写ベルトによる累積誤差によって求められる精度を実現することが困難となる。
【0005】
一方、電位を付与して感光ドラムと被転写物とを近づけていったり、引き剥がしていくと、これらの間の空隙に電界が集中し、電界の大きさによってはある空隙の距離において放電が生じてしまう。プリント基板やカラーフィルタのガラスのような厚く誘電率の低い材料に転写するために必要な電位はかなり高いものとなるため、転写位置前後の感光ドラムと被転写物との間の間隙の広い範囲に大きな電界が形成され、放電を生じて像を破壊してしまう現象が起こる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、トナー画像または静電潜像として画像が外周面に形成される環状部材から基板上に画像を転写する際に、環状部材から基板に画像を精度よく転写することを目的としており、さらには、転写位置近傍において環状部材と基板との間の間隙にて放電が生じることを防止することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、基板上にトナー画像または静電潜像を形成する画像形成装置であって、外周面上に転写前のトナー画像または静電潜像である元画像が形成される円筒ドラム状または平ベルト状の環状部材を前記外周面に沿って循環移動する元画像保持部と、剛性を有する部材上に形成された平らな保持面に基板を保持する基板保持部と、所定の転写位置において前記基板保持部に保持された基板の被転写面を前記外周面に最も接近させつつ、前記基板保持部を移動することにより前記転写位置における前記環状部材の部位と同じ速度にて前記環状部材の前記部位と同じ方向であって前記被転写面に沿う進行方向に前記基板を移動する基板移動機構とを備え、前記基板保持部が、少なくとも前記転写位置において前記保持面に所定の電位を与えて元画像を前記元画像保持部から前記基板に転写する電位付与機構を備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置であって、前記電位付与機構が、前記基板保持部内においてそれぞれが前記進行方向に垂直な方向に伸びるとともに前記進行方向に等ピッチにて配列された複数の線状電極と、前記複数の線状電極を覆ってその表面が前記保持面となる抵抗体と、前記複数の線状電極のうち、前記転写位置に位置する線状電極に第1の電位を付与し、前記転写位置から前記進行方向または前記進行方向とは反対の方向である一の方向に所定の距離だけ離れた線状電極に前記第1の電位よりも前記環状部材の表面電位に近い第2の電位を付与し、前記基板保持部の移動に同期して前記第1の電位が付与される線状電極および前記第2の電位が付与される線状電極を順次シフトすることにより、前記一の方向に向かって前記転写位置から離れるに従って前記環状部材の前記表面電位との差が漸次減少する分布を有する電位を前記基板の前記被転写面に与える電位付与電極シフト機構とを備える。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の画像形成装置であって、前記複数の線状電極において互いに隣接する2つの線状電極間のそれぞれが、互いに隣接する2つの線状電極間における前記抵抗体の抵抗値よりも低い値の抵抗素子で接続される。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置であって、前記電位付与機構が、前記保持面に露出し、それぞれが前記進行方向に垂直な方向に伸びるとともに前記進行方向に等ピッチにて配列された複数の線状電極と、前記複数の線状電極の間に介在して前記複数の線状電極と共に前記保持面を形成する絶縁体と、前記複数の線状電極において互いに隣接する2つの線状電極間をそれぞれ接続する複数の抵抗素子と、前記複数の線状電極のうち、前記転写位置に位置する線状電極に第1の電位を付与し、前記転写位置から前記進行方向または前記進行方向とは反対の方向である一の方向に所定の距離だけ離れた線状電極に前記第1の電位よりも前記環状部材の表面電位に近い第2の電位を付与し、前記基板保持部の移動に同期して前記第1の電位が付与される線状電極および前記第2の電位が付与される線状電極を順次シフトすることにより、前記一の方向に向かって前記転写位置から離れるに従って前記環状部材の前記表面電位との差が漸次減少する分布を有する電位を前記基板の前記被転写面に与える電位付与電極シフト機構とを備える。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項2ないし4のいずれかに記載の画像形成装置であって、前記電位付与機構が、前記第1の電位または前記第2の電位が付与される中心電極の周囲を導電性の弾性材料にて覆うことにより形成されるとともに、前記複数の線状電極のうち前記第1の電位または前記第2の電位が付与されるものに当接するローラを備える。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置であって、前記電位付与機構が、前記基板保持部内においてそれぞれが前記進行方向に垂直な方向に伸びるとともに前記進行方向に等ピッチにて配列された複数の線状電極と、前記複数の線状電極を覆ってその表面が前記保持面となる抵抗体と、前記複数の線状電極のうち、前記転写位置に位置する線状電極に第1の電位を付与し、前記転写位置から前記進行方向および前記進行方向とは反対の方向に向かって、それぞれ所定の距離だけ離れた線状電極に前記第1の電位よりも前記環状部材の表面電位に近い第2の電位を付与し、前記基板保持部の移動に同期して前記第1の電位が付与される線状電極および前記第2の電位が付与される線状電極を順次シフトすることにより、前記進行方向および前記進行方向とは反対の方向に向かって前記転写位置から離れるに従って前記環状部材の前記表面電位との差が漸次減少する分布を有する電位を前記基板の前記被転写面に与える電位付与電極シフト機構とを備える。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の画像形成装置であって、前記複数の線状電極において互いに隣接する2つの線状電極間のそれぞれが、互いに隣接する2つの線状電極間における前記抵抗体の抵抗値よりも低い値の抵抗素子で接続される。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置であって、前記電位付与機構が、前記保持面に露出し、それぞれが前記進行方向に垂直な方向に伸びるとともに前記進行方向に等ピッチにて配列された複数の線状電極と、前記複数の線状電極の間に介在して前記複数の線状電極と共に前記保持面を形成する絶縁体と、前記複数の線状電極において互いに隣接する2つの線状電極間をそれぞれ接続する複数の抵抗素子と、前記複数の線状電極のうち、前記転写位置に位置する線状電極に第1の電位を付与し、前記転写位置から前記進行方向および前記進行方向とは反対の方向に向かって、それぞれ所定の距離だけ離れた線状電極に前記第1の電位よりも前記環状部材の表面電位に近い第2の電位を付与し、前記基板保持部の移動に同期して前記第1の電位が付与される線状電極および前記第2の電位が付与される線状電極を順次シフトすることにより、前記進行方向および前記進行方向とは反対の方向に向かって前記転写位置から離れるに従って前記環状部材の前記表面電位との差が漸次減少する分布を有する電位を前記基板の前記被転写面に与える電位付与電極シフト機構とを備える。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項2ないし8のいずれかに記載の画像形成装置であって、前記第2の電位が前記第1の電位とは反対の極性、または、接地電位である。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし9のいずれかに記載の画像形成装置であって、前記元画像が前記外周面上の静電潜像に液体トナーが付与されて形成されたトナー画像である。
【0017】
請求項11に記載の発明は、基板上にトナー画像または静電潜像を形成する画像形成方法であって、外周面上に転写前のトナー画像または静電潜像である元画像が形成される円筒ドラム状または平ベルト状の環状部材を前記外周面に沿って循環移動する循環移動工程と、基板保持部の剛性を有する部材上に形成された平らな保持面に前記基板を保持する基板保持工程と、前記循環移動工程に並行して、所定の転写位置において前記基板の被転写面を前記外周面に最も接近させつつ、前記基板保持部を移動することにより前記転写位置における前記環状部材の部位と同じ速度にて前記環状部材の部位と同じ方向であるとともに前記被転写面に沿う進行方向に前記基板を移動する基板移動工程と、前記基板移動工程に並行して、前記基板保持部が備える電位付与機構が、少なくとも前記転写位置において前記保持面に所定の電位を与えることにより、前記外周面上の前記元画像を前記基板上に転写する転写工程とを備える。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の画像形成方法であって、前記電位付与機構が、前記基板保持部内においてそれぞれが前記進行方向に垂直な方向に伸びるとともに前記進行方向に等ピッチにて配列された複数の線状電極と、前記複数の線状電極を覆ってその表面が前記保持面となる抵抗体とを備え、前記転写工程において、前記複数の線状電極のうち、前記転写位置に位置する線状電極に第1の電位が付与され、前記転写位置から前記進行方向または前記進行方向とは反対の方向である一の方向に所定の距離だけ離れた線状電極に前記第1の電位よりも前記環状部材の表面電位に近い第2の電位が付与され、前記基板保持部の移動に同期して前記第1の電位が付与される線状電極および前記第2の電位が付与される線状電極が順次シフトされることにより、前記一の方向に向かって前記転写位置から離れるに従って前記環状部材の前記表面電位との差が漸次減少する分布を有する電位が前記基板の前記被転写面に与えられる。
【0019】
請求項13に記載の発明は、請求項11に記載の画像形成方法であって、前記電位付与機構が、前記保持面に露出し、それぞれが前記進行方向に垂直な方向に伸びるとともに前記進行方向に等ピッチにて配列された複数の線状電極と、前記複数の線状電極の間に介在して前記複数の線状電極と共に前記保持面を形成する絶縁体と、前記複数の線状電極において互いに隣接する2つの線状電極間をそれぞれ接続する複数の抵抗素子とを備え、前記転写工程において、前記複数の線状電極のうち、前記転写位置に位置する線状電極に第1の電位が付与され、前記転写位置から前記進行方向または前記進行方向とは反対の方向である一の方向に所定の距離だけ離れた線状電極に前記第1の電位よりも前記環状部材の表面電位に近い第2の電位が付与され、前記基板保持部の移動に同期して前記第1の電位が付与される線状電極および前記第2の電位が付与される線状電極を順次シフトすることにより、前記一の方向に向かって前記転写位置から離れるに従って前記環状部材の前記表面電位との差が漸次減少する分布を有する電位が前記基板の前記被転写面に与えられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、剛性を有する部材上に形成された平らな保持面に基板を保持することにより、環状部材から基板に元画像を精度よく転写することができ、さらに、請求項2ないし9並びに請求項12および13の発明では、転写位置近傍において環状部材と基板との間の間隙に放電が生じることを防止する(抑制を含む。)ことができる。
【0021】
また、請求項2,3,6および7の発明では、線状電極を抵抗体で覆うことにより放電を防止する理想的な分布の電位を容易に形成することができ、請求項4および8の発明では、基板保持部の構造を簡素化することができる。
【0022】
請求項5の発明では、線状電極を傷つけることなく容易に所望の電位を与えることができる。また、請求項6ないし8の発明では、転写位置の進行方向側および反対側において放電が生じることを防止することができ、さらに基板に画像を精度よく転写することができる。請求項9の発明では、放電の発生をさらに防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置1の構成を示す図である。本実施の形態における画像形成装置1は電子写真法を用いてガラス基板上にトナーの画像を形成する印刷装置であり、トナー画像は下流の図示省略の定着装置を経由してガラス基板上に定着されることにより液晶表示装置等の平面表示装置用のカラーフィルタが製造される。なお、実際には、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色のトナーにそれぞれ対応する3つの画像形成装置1と定着装置とが一列に設けられる。
【0024】
画像形成装置1は、例えば、厚さ0.3〜0.7ミリメートル(mm)のガラス基板9の下面((−Z)側の主面)を平らな保持面210にて吸引吸着にて保持する基板保持部21、定盤11上に設けられるとともに図1中のY方向へと基板保持部21を水平に移動する基板移動機構26、および、基板保持部21上のガラス基板9に対向するとともに電子写真法にて感光ドラムの外周面上に転写前のR、GまたはBの色のカラーのトナー画像を形成するプロセスユニット3を備える。また、基板保持部21は、保持面210に感光ドラムからガラス基板9にトナー画像を転写するための所定の分布の電位を与える電位付与機構22を備える。
【0025】
プロセスユニット3は、図示省略のモータに減速機を介して接続される直径250mmの感光ドラム31を備え、感光ドラム31は図1中のX方向に平行な回転軸J1を中心に回転可能に支持される。感光ドラム31は、アルミニウム等の金属により形成されるとともに回転軸J1を中心とするドラム本体311を有し、ドラム本体311は電気的に接地される。ドラム本体311の外周面には、例えば、フタロシアニン顔料を有する単層型有機感光体(以下、単に「感光体312」という。)が一様に塗布される(または、蒸着される)。なお、感光ドラム31の直径は250mmには限定されないが、好ましくは200mm以上400mm以下とされる。また、感光体312はフタロシアニン顔料を有する単層型有機感光体以外に、例えば、アモルファスシリコン等の無機感光体により形成されてもよい。
【0026】
プロセスユニット3は、感光ドラム31に対向して設けられる帯電器32をさらに有し、帯電器32はイオンを発生して感光体312を帯電させる。また、感光ドラム31の周囲には帯電器32から時計回りに、画像形成用の光を出射して像担持体である感光体312に静電潜像を形成する潜像形成部33、感光体312上に形成された静電潜像に液体トナー(例えば、イソパラフィン系の絶縁性の溶媒(キャリア液)に分散している湿式トナー)を付与して現像する現像部34、感光体312の表面をクリーニングするクリーナ35、並びに、光を出射して感光体312を除電する除電器36が配置される。なお、現像部34は現像液である液体トナーを供給するトナー供給部(図示省略)に接続される。
【0027】
また、基板保持部21上のガラス基板9は感光体312の部位の移動経路上において現像部34とクリーナ35との間にて感光体312の外周面に最も接近する。後述するように、感光体312の外周面上のトナーは感光体312とガラス基板9とが最も接近する位置にてガラス基板9の上面に転写されるため、以下の説明において、感光体312とガラス基板9とが最も接近する位置を転写位置と呼び、ガラス基板9の上面を被転写面と呼ぶ。転写位置はプロセスユニット3に対して相対的に固定された位置となる。
【0028】
図2は、基板保持部21を示す平面図である。図1および図2に示すように基板保持部21は、板状の絶縁部材221を有し、基板移動機構26による進行方向(Y方向)に垂直な方向(X方向)に伸びるとともに進行方向に等ピッチにて配列された複数の線状電極222が絶縁部材221に埋め込まれている。図1および図2では、説明の都合上、線状電極222を太く示しているが、実際は細い(例えば、1.0mm程度)多数の線状電極222が絶縁部材221に埋め込まれている。また、図1では基板保持部21を縦断面にて示しているが、断面の細部における平行斜線は省略している。
【0029】
複数の線状電極222の表面と絶縁部材221の表面とは面一となっており、これらの表面は抵抗体223で覆われ、抵抗体223の表面はガラス基板9を保持する保持面210となっている。なお、保持面210は抵抗体223およびその下側の構成を含む剛性を有する部材上に形成された面となっており、転写時の圧力に対して撓まないようになっている。複数の線状電極222において互いに隣接する2つの線状電極222の間は、図2に示すように同一の抵抗値を有する抵抗素子224により接続される。図1に示すように、複数の線状電極222の間に介在する絶縁部材221および抵抗体223にはこれらを貫通する多数の微小径の貫通穴221a(図1のみに図示)が形成されており、絶縁部材221の下側には内部に空洞を有するとともに基板移動機構26に取り付けられる保持部本体211が設けられる。保持部本体211は減圧ポンプ212に接続され、減圧ポンプ212により保持部本体211内を介して貫通穴221aから吸引を行うことでガラス基板9が保持面210に吸着されてずれないように強固に保持される。
【0030】
図3は基板移動機構26を示す図であり、図1中の(−Y)側から(+Y)方向を向いて基板移動機構26を見た様子を示している。図1および図3に示す基板移動機構26は、定盤11上において、X方向に並んで設けられるとともにそれぞれがY方向に伸びる2つのガイドレール261を有する。保持部本体211には、各ガイドレール261に対向する位置にスライダ262が取り付けられ、各スライダ262にエア供給部263から高圧のエアが供給されてスライダ262がガイドレール261に非接触にて係合し、基板保持部21がY方向に移動可能に支持される。また、基板移動機構26はリニアモータ264をさらに有し、リニアモータ264の固定体2641は定盤11上に固定され、移動体2642は基板保持部21に取り付けられる。そして、リニアモータ264が駆動されることにより、基板保持部21およびガラス基板9がY方向に滑らかに移動する。
【0031】
図2に示すように、基板保持部21の(−X)側には抵抗体223が存在せず、線状電極222の端部が露出している。そして、図1および図2に示すように線状電極222が露出している領域上には、転写位置に位置する線状電極222に接して転写電位(例えば、(+300)V)を付与する転写電位ローラ225、および、転写位置から左右に離れた2つの補助電位ローラ226が設けられる。補助電位ローラ226は、転写位置から基板保持部21の進行方向および進行方向とは反対の方向に向かって、それぞれ所定の距離(例えば、4cm)だけ離れた位置の線状電極222に転写電位よりも感光体312の表面電位に近い電位(例えば、(−1000)Vであり、以下、「補助電位」という。)を与える。さらに、転写電位ローラ225は転写電位を付与するための転写電位供給電源227に接続され、補助電位ローラ226は補助電位を付与するための補助電位供給電源228に接続される。転写電位ローラ225および補助電位ローラ226は、図示省略の支持部材により定盤11に対して位置が固定されており、基板保持部21の移動にともなって転写電位ローラ225および補助電位ローラ226が複数の線状電極222に順次接触し、転写電位および補助電位が付与される線状電極222を順次シフトする電位付与電極シフト機構となっている。
【0032】
転写電位ローラ225および補助電位ローラ226は転写電位および補助電位が付与される中心電極の周囲を伝導性の弾性材料(例えば、ゴム)にて覆うことにより形成される。これにより、隣接する線状電極222間にローラが位置しても、ローラが変形し、基板保持部21が移動する間に常にいずれかの線状電極222にローラが接触するようになっている。その結果、転写電位および補助電位は、基板保持部21が移動する間に途切れることなくいずれかの線状電極222に与えられる。例えば、線状電極222の幅が1mmであり、ピッチが2mmである場合、転写電位ローラ225のY方向の接触幅は1.1mm以上とされる。また、転写電位ローラ225が同時に3本以上の線状電極222と接すると転写位置以外にも高い電位が付与されることとなってしまうため、転写電位ローラ225の接触幅は2.9mm以下に制限されることが好ましい。
【0033】
また、転写電位ローラ225および補助電位ローラ226が弾性材料で形成されることにより、線状電極222を傷つけることなく容易に所望の電位を付与することができる。転写電位ローラ225および補助電位ローラ226は、導電性ゴムローラ以外に、隣接する線状電極222に跨るようにつぶれる導線性スポンジローラ等であってもよい。
【0034】
なお、絶縁部材221、線状電極222、抵抗体223、抵抗素子224、転写電位ローラ225、補助電位ローラ226、転写電位供給電源227および補助電位供給電源228等により、感光ドラム31からトナー画像をガラス基板9に転写するための所定の分布を有する電位を保持面210に与える電位付与機構22が構成される。
【0035】
図4は、画像形成装置1がガラス基板9上にトナー画像を形成する処理の流れを示す図である。なお、図4中のステップS13〜S16は感光体312の一部に注目した処理の流れを示しており、感光体312全体に対しては実際には時間的にほぼ並行して行われる。
【0036】
図1の画像形成装置1では、まず、ガラス基板9が抵抗体223の上面である保持面210上に載置された後、貫通穴221aを介して減圧ポンプ212により吸引されることで、ガラス基板9が保持面210に吸着されて保持される(ステップS11)。次に、感光ドラム31が回転軸J1を中心に時計回り(図1中の矢印71が示す回転方向)に一定の回転速度にて回転を開始するとともにガラス基板9も(+Y)方向へと一定の速度にて移動を開始する(ステップS12a,S12b)。プロセスユニット3では感光ドラム31の回転により、回転軸J1を中心とする円筒ドラム状の感光体312が、周囲に配置された各周辺構成(すなわち、帯電器32、潜像形成部33、現像部34、クリーナ35および除電器36)に対して連続的に移動し、これらの周辺構成による感光体312に対する処理が開始される。なお、本実施の形態におけるガラス基板9では、被転写面(すなわち、プロセスユニット3に対向する面)に格子状のブラックマトリクスが他の装置により予め形成されている。
【0037】
帯電器32では、対向する位置へと到達する感光体312の一部(以下、「対象部位」と呼ぶ。)に電荷が順次付与され、対象部位の表面を一様に帯電させる(ステップS13)。帯電後の対象部位は潜像形成部33の光の照射位置へと連続的に移動する。潜像形成部33は、所定の波長の光を出射する複数の発光ダイオード(LED)が配列されたもの(LEDアレイ)を光源として有する。潜像形成部33には、カラーフィルタのパターンを示す画像から生成された各色成分の画像データのうち、このプロセスユニット3のトナーの色に対応する画像データが入力され、この画像データに応じて画像形成用の光が感光体312に向けて出射される。感光体312の対象部位において光が照射された部位は、表面に帯電した電荷が感光体312内に移動して除去される。また、光が照射されない部位は帯電状態がそのまま維持されるため、感光体312の表面には電荷の分布による画像(すなわち、静電潜像)が形成される(ステップS14)。潜像形成部33の光源は、必ずしもLEDである必要はなく、例えば、半導体レーザや、ランプと液晶シャッタとを組み合わせたもの等であってもよい。
【0038】
感光ドラム31において静電潜像が形成された部分(対象部位)は現像部34に対向する位置へと移動し、現像部34の現像ローラ341により液体トナー(溶媒中に分散されるとともに帯電しているトナー)が静電潜像に付与される(ステップS15)。このとき、感光体312の表面と同じ極性に帯電したトナーは感光体312上の対象部位において電荷が除去された部位にのみ付着して静電潜像が現像される。すなわち、感光体312の対象部位にトナー画像が形成される。なお、感光体312上の帯電した部位に逆極性に帯電したトナーが付着するようにされてもよい。
【0039】
その後、対象部位はガラス基板9の被転写面に最も接近する転写位置へと到達し、転写位置では対象部位は感光ドラム31の回転速度に応じた速度(すなわち、感光ドラム31の外周面の回転軸J1に垂直な断面における接線方向の速度)にて正確に(+Y)方向へと移動する。また、基板移動機構26によりガラス基板9も転写位置における対象部位と同じ速度にて、対象部位の進む進行方向と同じ(+Y)方向に被転写面に沿って移動しており、転写位置において感光体312の対象部位はガラス基板9の被転写面に当接する(必ずしも当接しなくてもよい。以下同様。)。このとき、ガラス基板9の被転写面とは反対側の主面(下面)に後述する分布を有する電位が転写電位ローラ225および補助電位ローラ226を介して抵抗体223および線状電極222により付与されており、これにより、転写位置においてガラス基板9の被転写面はトナーとは反対の極性の電位となっている。その結果、感光体312の対象部位上のトナーがガラス基板9の被転写面へと移動し、いわゆる電界転写が行われる(ステップS16)。なお、ガラス基板9へのトナーの転写の際における転写電位ローラ225および補助電位ローラ226等を含む電位付与機構22の役割については、画像形成装置1における全体動作の説明後に詳述する。
【0040】
対象部位は、クリーナ35の位置へと続けて移動し、クリーナ35により感光体312の対象部位に残留したトナー(すなわち、ガラス基板9に転写されなかったトナー)等の不要物が除去されて感光体312の表面がクリーニングされ、感光体312が機械的に初期状態に戻される。そして、ランプとフィルタとの組合せ、あるいは、LED等を有する除電器36により光が照射されて感光体312が除電され、電気的に初期状態に戻される。
【0041】
ステップS13〜S16の処理が感光体312上の各部位に対してほぼ並行して行われ、転写位置へと順次到達する感光体312の各部位に対しても連続的に処理が行われるため、最終的には感光体312の外周面上のトナー画像全体が転写位置においてガラス基板9の被転写面上に転写されることとなる。そして、ガラス基板9の全体への印刷が終了すると、感光ドラム31の回転が停止されるとともに、基板移動機構26が停止され、画像形成装置1による印刷処理が終了する(ステップS17a,S17b)。これにより、ガラス基板9の被転写面の全体に一の色のトナー画像が形成される。
【0042】
既述のように、実際には、R、G、Bの色にそれぞれ対応する3台の画像形成装置が準備され、一の色のトナー画像がガラス基板9上に形成されると、ガラス基板9が次の画像形成装置へと搬送されて次の色のトナー画像が形成される。これにより、3台の画像形成装置によりR、G、Bの色のトナー画像がガラス基板9上に形成され、最後に、定着装置にて加熱溶融されてガラス基板9に定着されることにより、カラーフィルタが完成する。
【0043】
次に、画像形成装置1における電位付与機構22の機能の詳細について図5を参照しつつ説明する。図5の上側は、抵抗体223の下面(絶縁部材221および線状電極222の上面)に形成される電位の分布を示し、図5の下側は、電位の分布に対応する複数の線状電極222と転写電位ローラ225および補助電位ローラ226との接触の様子を示す。図5では、転写位置において転写電位ローラ225と接触する線状電極222に符号222aを付しており、線状電極222aから所定距離だけ離れた位置において補助電位ローラ226に接触している線状電極222に符号222bを付している。
【0044】
補助電位ローラ226により付与される補助電位は、図5に示すように転写電位とは反対極性の電位(接地電位であってもよい。)とされ、線状電極222aと線状電極222bとの間に生じる電位差により、線状電極222a,222bの間にて直列に接続された複数個(以下、「n個」とする。)の抵抗素子224に電流が流れる。その結果、転写電位ローラ225と補助電位ローラ226との間における絶縁部材221および線状電極222の上面には、図5の上側に示すように線状電極222のピッチ毎にローラ225,226間の電位差の1/nだけ変化する電位の分布が形成される。
【0045】
これにより、基板保持部21の進行方向およびその反対方向のそれぞれに向かって転写位置から離れるに従って感光体312の表面電位との差が漸次減少する分布を有する電位が保持面210を介してガラス基板9の被転写面に(間接的に)与えられる。さらに、感光体312の外周面とガラス基板9の被転写面との間の間隙は、転写位置から離れるに従って漸次増大するため、転写位置から離れるに従って間隙における電界が急激に小さくなる。その結果、転写位置近傍において感光体312とガラス基板9との間の間隙の電界が破壊電界以上となって放電が生じてしまうことを防止(抑制を含む。)することができ、ガラス基板9にトナー画像を精度よく転写することができる。
【0046】
なお、感光ドラム31上の電位は転写電位と補助電位との間であってもよく、この場合、転写電位ローラ225から補助電位ローラ226に至る範囲の途中まで、転写位置から離れるに従って感光体312の表面電位との差が漸次減少する分布を有する電位がガラス基板9の被転写面に与えられることとなる。実際には、絶縁部材221の上面は抵抗体223で覆われ、さらにその上にガラス基板9が保持されるため、ガラス基板9の被転写面における電位の分布は、図5の上側に示す電位の分布に比べて電位の最大値および最小値が接地電位に近づき、さらに、各線状電極222の位置における電位の段差も滑らかなものとなる。
【0047】
ここで、抵抗素子224の抵抗値は、互いに隣接する2つの線状電極222間における抵抗体223の抵抗値よりも低い値(10Ω以上10Ω以下、好ましくは10Ω以上10Ω以下であり、例えば、10Ω)とされる。これにより、抵抗素子224に電流が流れ易くなって被転写面上に安定して所望の電位の分布を形成することができる。また、線状電極222の表面を抵抗体223で覆うことにより放電を防止する理想的な滑らかな分布の電位を容易に形成することができ、さらに、隣接する2つの線状電極222間に転写電位ローラ225が位置するときでも、転写位置における局所的な電位の分布を容易に均一にすることができる。もちろん、安定した電位の分布を形成することが可能であれば抵抗素子224は省略されてよい。
【0048】
上記電位の分布が形成された状態で基板保持部21が基板移動機構26により進行方向((+Y)方向)に移動すると、転写電位ローラ225および補助電位ローラ226の相対的位置関係が維持されたまま基板保持部21の移動に同期して転写電位および補助電位が与えられる線状電極222が相対的に(−Y)方向に順次シフトされ、転写位置を中心に形成される電位の分布が維持される。その結果、感光ドラム31からガラス基板9へのトナー画像全体の安定した転写が実現される。
【0049】
以上に説明したように、本実施の形態における画像形成装置1では、ガラス基板9が剛性を有する部材上に形成された平らな保持面210に保持されるため、ガラス基板9のずれを防止して感光ドラム31からガラス基板9にトナー画像を精度よく転写することができる。また、転写位置から離れるに従って感光ドラム31の表面電位との差が漸次減少する分布を有する電位がガラス基板9の被転写面に与えられるため、転写位置の進行方向側およびその反対側において放電が生じることを防止することができ、転写後のガラス基板9上におけるトナー画像、および、転写前の感光体312上におけるトナー画像の乱れを防止することができる。
【0050】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置1aを示す図である。画像形成装置1aは、図1に示す画像形成装置1から抵抗体223が省略されたものであり、他の構成は図1の画像形成装置1と同様であり、同符号を付している。すなわち、画像形成装置1aでは、基板保持部21の進行方向に垂直な方向に伸びるとともに進行方向に等ピッチにて配列された複数の線状電極222が保持面210から露出し、絶縁部材221が線状電極222の間に介在して複数の線状電極222と共に平らな保持面210が形成される。保持面210は線状電極222、絶縁部材221等を含む剛性を有する部材上に形成された面となっており、転写時の圧力に対して撓まないようになっている。そして、複数の線状電極222の間に介在する絶縁部材221に開けられた多数の微小径の貫通穴221aから減圧ポンプ212による吸引を行うことにより、ガラス基板9がずれないよう保持面210に吸着されて保持される。
【0051】
画像形成装置1aがカラーフィルタを製造する際には、図1の画像形成装置1と同様に、ガラス基板9が絶縁部材221および線状電極222の上面である保持面210に保持され(図4:ステップS11)、感光ドラム31の回転およびガラス基板9の移動を開始した後(ステップS12a,S12b)、帯電後の感光体312に光を照射して静電潜像が形成され(ステップS13,S14)、感光体312上の静電潜像に湿式のカラーのトナーが付与されて現像される(ステップS15)。その後、転写位置においてガラス基板9に感光体312上のトナーが転写される(ステップS16)。感光体312上のトナー画像の全体がガラス基板9上に転写されると、感光ドラム31の回転およびガラス基板9の移動が停止され、ガラス基板9上への画像形成処理が終了する(ステップS17a,S17b)。
【0052】
画像形成装置1aでは、画像形成装置1と同様に、複数の線状電極222において互いに隣接する2つの線状電極222間が抵抗素子224(図5参照)で接続され、転写電位ローラ225および補助電位ローラ226を介して転写電位供給電源227および補助電位供給電源228から電位が付与されることにより、絶縁部材221の上面に図5の上側に示す電位の分布が形成される。これにより、第1の実施の形態と同様に、基板保持部21の進行方向およびその反対方向のそれぞれに向かって転写位置から離れるに従って感光体312の表面電位との差が漸次減少する分布を有する電位が保持面210を介してガラス基板9の被転写面に与えられ、転写位置近傍において感光体312とガラス基板9との間の間隙に放電が生じることを防止し、基板に画像を精度よく転写することができる。
【0053】
画像形成装置1aでは、抵抗体223が省略されるため、装置の構造を簡素化することができる。また、被転写物がガラス基板9の場合は被転写物の厚さが十分あるため、抵抗体223が存在しなくてもガラス基板9の被転写面における電位の分布を滑らかなものとすることができる。
【0054】
図7は他の例に係る画像形成装置1bの構成を示す図である。図7の画像形成装置1bでは、中間転写体251を有する中間転写部25が設けられ、感光ドラム31上のトナー画像は中間転写体251を介して間接的にガラス基板9上に転写される。具体的には、中間転写体251は誘電材料にて形成される平ベルト状の環状部材とされ、2つのローラ252a,252bに外接して設けられる。一方のローラ252aにはモータが接続され、モータが駆動されることにより中間転写体251が感光ドラム31のトナー画像が形成された部位に当接しつつ外周面に沿って循環移動する。また、他方のローラ252bには直流電源253が接続される。
【0055】
図7の画像形成装置1bでは、潜像形成部33や現像部34等により感光体312上に形成されたトナー画像が、ローラ252bを介して付与される電位により循環移動する中間転写体251上に転写される。そして、トナー画像が形成された中間転写体251の部位がガラス基板9へと送られ、中間転写体251上のトナー画像がガラス基板9上に転写される。このとき、転写電位ローラ225および補助電位ローラ226により第1の実施の形態と同様の分布を有する電位がガラス基板9の被転写面に与えられ、転写位置近傍における放電を防止しつつトナー画像を転写することができる。
【0056】
なお、図7の画像形成装置1bでは画像形成時にガラス基板9は図7中の(−Y方向)へと移動する。また、画像形成装置1,1a,1bでは現像部34が省略され、転写電位ローラ225により静電潜像の電荷とは反対の極性の転写電位をガラス基板9に付与しつつ、感光体312上の静電潜像、または、感光体312から転写された中間転写体251上の静電潜像が、ガラス基板9上に転写されてもよい。
【0057】
以上のように、画像形成装置では、感光ドラム31または中間転写部25が、外周面上にガラス基板9への転写前のトナー画像または静電潜像である元画像が形成される円筒ドラム状または平ベルト状の環状部材を外周面に沿って循環移動する元画像保持部としての動作を行うことにより、ガラス基板9への転写対象である元画像が転写位置へと送られてガラス基板9上に転写される。なお、複数のピン電極の集合であるマルチスタイラスを潜像形成部として設けるとともに、元画像保持部に誘電材料にて形成される環状部材を設け、環状部材の外周面と間隙を介して対向するピン電極に電圧を付与してピン電極の先端と環状部材との間にて放電を生じさせることにより、環状部材の外周面に電荷を付与して静電潜像が形成されてもよい。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0059】
上記実施の形態では、画像形成時のガラス基板9の進行方向に平行なY方向に関して転写位置の両側のそれぞれに補助電位ローラ226が設けられるが、転写位置の(+Y)側または(−Y)側のみに補助電位ローラ226が設けられてもよい。ただし、感光体312からガラス基板9上にトナー画像をより精度よく転写するという観点では、転写位置に対して一方側の補助電位ローラ226のみならず反対側にも同様のもう1つの補助電位ローラ226を配置し、上記実施の形態のように、転写位置の(+Y)側および(−Y)側のそれぞれにて感光体312とガラス基板9との間の間隙における放電の発生を防止することが好ましい。
【0060】
画像形成装置1の複数の線状電極222は、絶縁部材221から露出する必要はなく、例えば、図8に示すように、複数の線状電極222が抵抗体223の中に埋め込まれてもよく、また、図9に示すように、複数の線状電極222が抵抗体223の下面側に埋め込まれてもよい。いずれの場合においても、線状電極222の長手方向に関して一部が抵抗体223から露出しており、この露出部分と転写電位ローラ225および補助電位ローラ226とが接触することによりガラス基板9の被転写面に電位が付与される。
【0061】
ガラス基板9を保持面210に吸着させるための貫通穴221aは、複数の線状電極222の間に介在する絶縁部材221のみに形成されている必要はなく、貫通穴221aの径が線状電極222の幅に対して十分小さい場合には、線状電極222に貫通穴221aが形成されていてよい。また、ガラス基板9は保持面210上に機械的に保持されてもよい。
【0062】
上記実施の形態では線状電極222に当接するローラの数は3であるが、より安定した電位の分布を得るために4以上のローラが線状電極222上に設けられてもよい。
【0063】
電位付与機構22は、必ずしもローラ(転写電位ローラ225および補助電位ローラ226)を有するものである必要はなく、導電ブラシであってもよく、図10に示すように、転写電位供給電源227および補助電位供給電源228に接続された金属または導電性の接触片225a,226aが基板保持部21の移動にともなって複数の線状電極222に接触することにより転写電位および補助電位が付与されてもよい。また、電位が付与される線状電極222の切り替えは、電気的スイッチングにより行われてもよい。
【0064】
また、感光ドラム31は転写位置にてガラス基板9に当接しなくてもよく、例えば、微小な間隙を開けて転写位置にて感光ドラム31がガラス基板9に近接し、この間隙に転写用の液体が充填されてもよい。なお、放電のおそれがない場合は、基板保持部21では少なくとも転写位置において保持面210に所定の電位を与えられるのみであってもよい。
【0065】
画像形成装置はカラーフィルタの製造以外の用途に用いられてもよく、画像形成装置における処理の対象物は、ガラス基板9以外に半導体基板やプリント配線基板等の他の基板であってもよい。画像形成装置では、転写位置の近傍における放電の発生が防止されるため、厚いまたは比誘電率が小さい材料にて形成されるキャパシタンスが小さい基板であっても、高い転写電位を付与してトナー画像または静電潜像を基板上に精度よく転写して形成することができ、様々な材料にて形成される基板を処理対象とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1の実施の形態に係る画像形成装置を示す図である。
【図2】基板保持部の平面図である。
【図3】基板移動機構を示す図である。
【図4】ガラス基板上にトナー画像を形成する処理の流れを示す図である。
【図5】電位付与機構による電位の付与の様子を示す図である。
【図6】第2の実施の形態に係る画像形成装置を示す図である。
【図7】画像形成装置の他の例を示す図である。
【図8】複数の線状電極の他の例を示す図である。
【図9】複数の線状電極のさらに他の例を示す図である。
【図10】電位付与機構の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1,1a,1b 画像形成装置
9 ガラス基板
21 基板保持部
22 電位付与機構
26 基板移動機構
31 感光ドラム
210 保持面
221 絶縁部材
222 線状電極
223 抵抗体
224 抵抗素子
225 転写電位ローラ
226 補助電位ローラ
251 中間転写体
312 感光体
S11,S12a,S12b,S16 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にトナー画像または静電潜像を形成する画像形成装置であって、
外周面上に転写前のトナー画像または静電潜像である元画像が形成される円筒ドラム状または平ベルト状の環状部材を前記外周面に沿って循環移動する元画像保持部と、
剛性を有する部材上に形成された平らな保持面に基板を保持する基板保持部と、
所定の転写位置において前記基板保持部に保持された基板の被転写面を前記外周面に最も接近させつつ、前記基板保持部を移動することにより前記転写位置における前記環状部材の部位と同じ速度にて前記環状部材の前記部位と同じ方向であって前記被転写面に沿う進行方向に前記基板を移動する基板移動機構と、
を備え、
前記基板保持部が、少なくとも前記転写位置において前記保持面に所定の電位を与えて元画像を前記元画像保持部から前記基板に転写する電位付与機構を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記電位付与機構が、
前記基板保持部内においてそれぞれが前記進行方向に垂直な方向に伸びるとともに前記進行方向に等ピッチにて配列された複数の線状電極と、
前記複数の線状電極を覆ってその表面が前記保持面となる抵抗体と、
前記複数の線状電極のうち、前記転写位置に位置する線状電極に第1の電位を付与し、前記転写位置から前記進行方向または前記進行方向とは反対の方向である一の方向に所定の距離だけ離れた線状電極に前記第1の電位よりも前記環状部材の表面電位に近い第2の電位を付与し、前記基板保持部の移動に同期して前記第1の電位が付与される線状電極および前記第2の電位が付与される線状電極を順次シフトすることにより、前記一の方向に向かって前記転写位置から離れるに従って前記環状部材の前記表面電位との差が漸次減少する分布を有する電位を前記基板の前記被転写面に与える電位付与電極シフト機構と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置であって、
前記複数の線状電極において互いに隣接する2つの線状電極間のそれぞれが、互いに隣接する2つの線状電極間における前記抵抗体の抵抗値よりも低い値の抵抗素子で接続されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記電位付与機構が、
前記保持面に露出し、それぞれが前記進行方向に垂直な方向に伸びるとともに前記進行方向に等ピッチにて配列された複数の線状電極と、
前記複数の線状電極の間に介在して前記複数の線状電極と共に前記保持面を形成する絶縁体と、
前記複数の線状電極において互いに隣接する2つの線状電極間をそれぞれ接続する複数の抵抗素子と、
前記複数の線状電極のうち、前記転写位置に位置する線状電極に第1の電位を付与し、前記転写位置から前記進行方向または前記進行方向とは反対の方向である一の方向に所定の距離だけ離れた線状電極に前記第1の電位よりも前記環状部材の表面電位に近い第2の電位を付与し、前記基板保持部の移動に同期して前記第1の電位が付与される線状電極および前記第2の電位が付与される線状電極を順次シフトすることにより、前記一の方向に向かって前記転写位置から離れるに従って前記環状部材の前記表面電位との差が漸次減少する分布を有する電位を前記基板の前記被転写面に与える電位付与電極シフト機構と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかに記載の画像形成装置であって、
前記電位付与機構が、前記第1の電位または前記第2の電位が付与される中心電極の周囲を導電性の弾性材料にて覆うことにより形成されるとともに、前記複数の線状電極のうち前記第1の電位または前記第2の電位が付与されるものに当接するローラを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記電位付与機構が、
前記基板保持部内においてそれぞれが前記進行方向に垂直な方向に伸びるとともに前記進行方向に等ピッチにて配列された複数の線状電極と、
前記複数の線状電極を覆ってその表面が前記保持面となる抵抗体と、
前記複数の線状電極のうち、前記転写位置に位置する線状電極に第1の電位を付与し、前記転写位置から前記進行方向および前記進行方向とは反対の方向に向かって、それぞれ所定の距離だけ離れた線状電極に前記第1の電位よりも前記環状部材の表面電位に近い第2の電位を付与し、前記基板保持部の移動に同期して前記第1の電位が付与される線状電極および前記第2の電位が付与される線状電極を順次シフトすることにより、前記進行方向および前記進行方向とは反対の方向に向かって前記転写位置から離れるに従って前記環状部材の前記表面電位との差が漸次減少する分布を有する電位を前記基板の前記被転写面に与える電位付与電極シフト機構と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像形成装置であって、
前記複数の線状電極において互いに隣接する2つの線状電極間のそれぞれが、互いに隣接する2つの線状電極間における前記抵抗体の抵抗値よりも低い値の抵抗素子で接続されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1に記載の画像形成装置であって、
前記電位付与機構が、
前記保持面に露出し、それぞれが前記進行方向に垂直な方向に伸びるとともに前記進行方向に等ピッチにて配列された複数の線状電極と、
前記複数の線状電極の間に介在して前記複数の線状電極と共に前記保持面を形成する絶縁体と、
前記複数の線状電極において互いに隣接する2つの線状電極間をそれぞれ接続する複数の抵抗素子と、
前記複数の線状電極のうち、前記転写位置に位置する線状電極に第1の電位を付与し、前記転写位置から前記進行方向および前記進行方向とは反対の方向に向かって、それぞれ所定の距離だけ離れた線状電極に前記第1の電位よりも前記環状部材の表面電位に近い第2の電位を付与し、前記基板保持部の移動に同期して前記第1の電位が付与される線状電極および前記第2の電位が付与される線状電極を順次シフトすることにより、前記進行方向および前記進行方向とは反対の方向に向かって前記転写位置から離れるに従って前記環状部材の前記表面電位との差が漸次減少する分布を有する電位を前記基板の前記被転写面に与える電位付与電極シフト機構と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項2ないし8のいずれかに記載の画像形成装置であって、
前記第2の電位が前記第1の電位とは反対の極性、または、接地電位であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の画像形成装置であって、
前記元画像が前記外周面上の静電潜像に液体トナーが付与されて形成されたトナー画像であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
基板上にトナー画像または静電潜像を形成する画像形成方法であって、
外周面上に転写前のトナー画像または静電潜像である元画像が形成される円筒ドラム状または平ベルト状の環状部材を前記外周面に沿って循環移動する循環移動工程と、
基板保持部の剛性を有する部材上に形成された平らな保持面に前記基板を保持する基板保持工程と、
前記循環移動工程に並行して、所定の転写位置において前記基板の被転写面を前記外周面に最も接近させつつ、前記基板保持部を移動することにより前記転写位置における前記環状部材の部位と同じ速度にて前記環状部材の部位と同じ方向であるとともに前記被転写面に沿う進行方向に前記基板を移動する基板移動工程と、
前記基板移動工程に並行して、前記基板保持部が備える電位付与機構が、少なくとも前記転写位置において前記保持面に所定の電位を与えることにより、前記外周面上の前記元画像を前記基板上に転写する転写工程と、
を備えることを特徴とする画像形成方法。
【請求項12】
請求項11に記載の画像形成方法であって、
前記電位付与機構が、
前記基板保持部内においてそれぞれが前記進行方向に垂直な方向に伸びるとともに前記進行方向に等ピッチにて配列された複数の線状電極と、
前記複数の線状電極を覆ってその表面が前記保持面となる抵抗体と、
を備え、
前記転写工程において、前記複数の線状電極のうち、前記転写位置に位置する線状電極に第1の電位が付与され、前記転写位置から前記進行方向または前記進行方向とは反対の方向である一の方向に所定の距離だけ離れた線状電極に前記第1の電位よりも前記環状部材の表面電位に近い第2の電位が付与され、前記基板保持部の移動に同期して前記第1の電位が付与される線状電極および前記第2の電位が付与される線状電極が順次シフトされることにより、前記一の方向に向かって前記転写位置から離れるに従って前記環状部材の前記表面電位との差が漸次減少する分布を有する電位が前記基板の前記被転写面に与えられることを特徴とする画像形成方法。
【請求項13】
請求項11に記載の画像形成方法であって、
前記電位付与機構が、
前記保持面に露出し、それぞれが前記進行方向に垂直な方向に伸びるとともに前記進行方向に等ピッチにて配列された複数の線状電極と、
前記複数の線状電極の間に介在して前記複数の線状電極と共に前記保持面を形成する絶縁体と、
前記複数の線状電極において互いに隣接する2つの線状電極間をそれぞれ接続する複数の抵抗素子と、
を備え、
前記転写工程において、前記複数の線状電極のうち、前記転写位置に位置する線状電極に第1の電位が付与され、前記転写位置から前記進行方向または前記進行方向とは反対の方向である一の方向に所定の距離だけ離れた線状電極に前記第1の電位よりも前記環状部材の表面電位に近い第2の電位が付与され、前記基板保持部の移動に同期して前記第1の電位が付与される線状電極および前記第2の電位が付与される線状電極を順次シフトすることにより、前記一の方向に向かって前記転写位置から離れるに従って前記環状部材の前記表面電位との差が漸次減少する分布を有する電位が前記基板の前記被転写面に与えられることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−3879(P2007−3879A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184806(P2005−184806)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】