説明

画像形成装置及び制御プログラム

【課題】 キャリブレーションの実行時期を最適化する画像形成装置を提供する。
【解決手段】 印刷ジョブの印刷処理を行う印刷手段と、印刷手段のキャリブレーションを行うキャリブレーション実施手段と、直前のキャリブレーション実施後の印刷枚数の値が、予め決められた実行判定枚数しきい値に達した時点で紙間パッチの濃度値を測定する測定手段と、測定濃度値が予め決められた濃度判定しきい値より小さい場合に、キャリブレーション実施手段に対して、キャリブレーションの実施を指示する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリブレーション(校正)の実行時期を最適化する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーの印刷装置においては、現像及び環境変動による濃度変化を抑制し、階調再現性を確保する為に、定期的、もしくは決まったトリガ条件にてキャリブレーション(校正)処理を実行するのが一般的である。このキャリブレーションは、実際に用紙に印刷することなく、ドラムもしくは中間転写体に特定のパターン印刷を行い、その濃度値をセンサで読み取り、この読み取り値と予め決められている所定値との差異からそれに見合ったプロセス制御の補正動作を行うものである。
【0003】
従来からキャリブレーションの実行時期を、即時、ジョブ終了後、残りページに応じて実行、自動(ジョブのページ数に応じて実行する等)の中から任意に選択できる画像処理装置が知られている(特許文献1参照)。また、プリント動作前にキャリブレーションを行うもの(特許文献2参照)、キャリブレーションの実行タイミング情報(実行間隔枚数)に従ってジョブを分割して、各分割ジョブ直前にキャリブレーションを行うものも知られている(特許文献3参照)。また、カラー印刷の場合は印刷処理前にキャリブレーションを実行して、モノクロ印刷の場合は印刷処理後、または所定回数のモノクロ印刷処理が続いた後にキャリブレーションを実行する印刷装置(特許文献4参照)、キャリブレーション実行中はジョブを待機させておき(PDLを画像データに展開するまではキャリブレーションに関係なく行う)、キャリブレーション終了後に印刷を実行する画像処理装置等が知られている(特許文献5参照)。
【特許文献1】特開平11−114128号公報
【特許文献2】特開2000−227684号公報
【特許文献3】特開平11−157177号公報
【特許文献4】特開2000−324279号公報
【特許文献5】特開2004−074561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、キャリブレーションを必要とする画像形成装置は、機種によってはプロセス上の制限から所定枚数毎や所定時間毎にキャリブレーションを確実に実行しなければならない機種が存在する。このような機種の場合、キャリブレーションを実行する時期は、印刷枚数毎や時間毎などその機種毎に綿密に実験を重ね、定常変化や環境変化を加味しながら決定されているのが現状である。このため、使用中に濃度が低下しても予め決められた実行時期になるまでキャリブレーションが実行されなかったり、反対に所定の印刷品質を保つことができる色再現性を有しているにもかかわらず予め決められた実行時期に到達するとキャリブレーションが実行されてしまうといった問題がある。使用者に取ってみればキャリブレーション自体の実行には時間もトナーも消費されるため必要な時にのみに実行するのが最適であるが、現状のキャリブレーション実行時期は、その要求にかなうものにはなっていないのが現状である。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、キャリブレーションの実行時期を最適化することができる画像形成装置及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、印刷ジョブの印刷処理を行う印刷手段と、前記印刷手段のキャリブレーションを行うキャリブレーション実施手段と、直前のキャリブレーション実施後の印刷枚数の値が、予め決められた実行判定枚数しきい値に達した時点で紙間パッチの濃度値を測定する測定手段と、前記測定濃度値が予め決められた濃度判定しきい値より小さい場合に、前記キャリブレーション実施手段に対して、キャリブレーションの実施を指示する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明は、前記制御手段は、前記測定濃度値と濃度判定しきい値との比較結果に基づいて、実行判定枚数しきい値の値を調整することを特徴とする。
【0008】
本発明は、印刷ジョブの印刷処理を行う印刷手段と、前記印刷手段のキャリブレーションを行うキャリブレーション実施手段とを備えた画像形成装置上において動作する制御プログラムであって、直前のキャリブレーション実施後の印刷枚数の値が、予め決められた実行判定枚数しきい値に達した時点で紙間パッチの濃度値を測定する測定処理と、前記測定濃度値が予め決められた濃度判定しきい値より小さい場合に、前記キャリブレーション実施手段に対して、キャリブレーションの実施を指示する制御処理とをコンピュータに行わせることを特徴とする。
【0009】
本発明は、前記制御処理は、前記測定濃度値と濃度判定しきい値との比較結果に基づいて、実行判定枚数しきい値の値を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、センサによって濃度を測定し、得られた濃度がしきい値より小さい場合に、キャリブレーションを実行するようにしたため、無駄なキャリブレーションの実行を行わないようにすることができるという効果が得られる。また、濃度値をしきい値と比較して、キャリブレーション実行を判定するしきい値の値を調整するようにしたため、キャリブレーションの実行頻度を必要最小限とすることができ、キャリブレーションの実行時期を最適化することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態による画像形成装置を図面を参照して説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。図1に示す画像形成装置は、複写機能、プリンタ機能、FAX送受信機能、画像読み取り機能を有する複合機である。この図において、符号1は、画像形成装置の処理動作を統括して制御する制御部である。符号2は、タッチパネル、テンキー、ファンクションキー等からなる入力部である。符号3は、液晶ディスプレイ等からなる表示部である。符号4は、カラーCCDを備え、原稿の画像を読み取る画像読取部である。符号5は、画像読取部4において読み取った画像のデータ、またはホストコンピュータから送られる印刷データに基づく画像データを格納する画像メモリである。符号6は、画像メモリ5に格納されている画像データに基づいて、印刷を行う印刷部である。符号7は、印刷部6において印刷された枚数をカウントする枚数カウンタである。符号8は、枚数カウンタ7のカウント値が予め決められたキャリブレーション実施を必要とする枚数のしきい値を超えた時点で、印刷部6のキャリブレーションを実行するキャリブレーション実行部であり、キャリブレーション実行後に枚数カウンタ7の値をゼロリセットする。符号81は、色調整を行うキャリブレーション時にパッチ濃度の測定を行うセンサであり、このセンサ81は、キャリブレーションを行うべきか否かを判定する場合にも用いる。符号9は、画像形成装置をプリンタとして機能させる場合に、ホストコンピュータから印刷データを受信する通信部である。
【0012】
次に、図2を参照して、キャリブレーションの実行時期が最適になるように、キャリブレーション開始タイミングを制御する動作を説明する前に、図2において使用する値を示す記号について説明する。値Pは、直前のキャリブレーション実行後の印刷枚数である。値TPは、キャリブレーションを行うべきか否かを判定するための印刷枚数のしきい値であり、ここでは実行判定しきい値と称する。この実行判定しきい値TPは、初期値として、例えば「80」が設定されている。値Nは、定数であり、実行判定しきい値TPに対して加算または減算することにより実行判定しきい値TPを調整するための値である。値TCは、印刷品質を保証できる濃度値のしきい値であり、ここでは濃度判定しきい値と称する。
【0013】
次に、キャリブレーション開始タイミングを制御する動作を説明する。まず、制御部1は、印刷部6に対して印刷指示を出力する。これを受けて、印刷部6は、画像メモリ5に格納されている1枚分の画像データを読み出して、1枚の印刷処理を実行し(ステップS1)、枚数カウンタ7の値Pに「1」を加える(ステップS2)。制御部1は、枚数カウンタ7の値Pとキャリブレーション実行判定しきい値TPを比較して、P≧TPであるか否かを判定する(ステップS3)。すなわち、キャリブレーションをするべき印刷枚数に達した否かを判定する。この判定の結果、P≧TPが「偽」であれば、印刷実行を継続する。一方、P≧TPが「真」であれば、制御部1は、キャリブレーション実行部8に対して、紙間パッチ濃度の測定実行を指示する。これを受けて、キャリブレーション実行部8は、色調整を行わない状態(現状)で、通常の印刷の紙間中に代表的なパッチ(これを紙間パッチという)を作成し、トナーをベルトに載せてこの濃度をセンサ81で読み取ることにより、紙間パッチ濃度の測定を行う(ステップS4)。キャリブレーション実行部8は、ここで得られた紙間パッチの濃度値を制御部1へ通知する。
【0014】
次に、制御部1は、キャリブレーション実行部8から通知された濃度値が、濃度判定しきい値TC以上であるか否かを判定する(ステップS5)。この判定の結果、通知された濃度値が、濃度判定しきい値TC以上である場合、制御部1は、キャリブレーション実行判定しきい値TPに定数N(例えば、「5」)を加算する(ステップS6)。これにより、キャリブレーションを実行せずにさらに5枚の印刷が行われることになる。
【0015】
一方、濃度値が濃度判定しきい値TCより小さい場合、制御部1は、キャリブレーションを即時実行するか否かを判定する(ステップS7)。この判定は、予め使用者がキャリブレーションを即時実行するか否かを任意に設定しておいた設定状態に基づいて判定する。この判定の結果、即時実行が設定されていた場合、制御部1は、この時点で印刷ジョブを実行中であれば、実行中の印刷ジョブを中断する(ステップS8)。一方、即時実行しない設定がなされていた場合、制御部1は、現時点で実行中の印刷ジョブが終了するまで待機する(ステップS9)。
【0016】
次に、制御部1は、キャリブレーション実行部8に対して、キャリブレーションの実行を指示する。これを受けて、キャリブレーション実行部8は、印刷部6のキャリブレーションを実行する(ステップS10)。そして、キャリブレーション実行部8は、キャリブレーション終了後に、枚数カウンタ7の値Pをゼロリセットし(ステップS11)、キャリブレーションが終了したことを制御部1へ通知する。これを受けて、制御部1は、キャリブレーション実行判定しきい値TPから定数N(例えば、「5」)を減算する(ステップS12)。
【0017】
このように、センサによって濃度を測定し、得られた濃度が濃度判定しきい値TCより小さい場合に、キャリブレーションを実行するようにしたため、無駄なキャリブレーションの実行を行わないようにすることができる。また、濃度値を濃度判定しきい値TCと比較して、キャリブレーション実行判定しきい値TPの値を調整するようにしたため、キャリブレーションの実行頻度を必要最小限とすることができ、キャリブレーションの実行時期を最適化することができる。
【0018】
なお、前述した説明では実行判定しきい値TPの値を調整する定数Nの値を「5」であるものとして説明したが、この定数Nは、ステップS4において得られた濃度値に応じて、値を変化させるようにしてもよい。例えば、センサ81の測定により得られた濃度値と濃度判定しきい値TCとの差の大きさに応じたNの値を対応付けたテーブルを設けておき、ステップS6、S12において、実行判定しきい値TPを調整する場合に、テーブルを参照して、濃度値と濃度判定しきい値TCとの差の大きさに応じたNを設定するようにする。このようにすれば、実行判定しきい値TPの値を最適な値に設定することが可能となる。
【0019】
また、図1における処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりキャリブレーション実行制御処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0020】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0022】
1・・・制御部、2・・・入力部、3・・・表示部、4・・・画像読取部、5・・・画像メモリ、6・・・印刷部、7・・・枚数カウンタ、8・・・キャリブレーション実行部、81・・・センサ、9・・・通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ジョブの印刷処理を行う印刷手段と、
前記印刷手段のキャリブレーションを行うキャリブレーション実施手段と、
直前のキャリブレーション実施後の印刷枚数の値が、予め決められた実行判定枚数しきい値に達した時点で紙間パッチの濃度値を測定する測定手段と、
前記測定濃度値が予め決められた濃度判定しきい値より小さい場合に、前記キャリブレーション実施手段に対して、キャリブレーションの実施を指示する制御手段と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記測定濃度値と濃度判定しきい値との比較結果に基づいて、実行判定枚数しきい値の値を調整することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
印刷ジョブの印刷処理を行う印刷手段と、前記印刷手段のキャリブレーションを行うキャリブレーション実施手段とを備えた画像形成装置上において動作する制御プログラムであって、
直前のキャリブレーション実施後の印刷枚数の値が、予め決められた実行判定枚数しきい値に達した時点で紙間パッチの濃度値を測定する測定処理と、
前記測定濃度値が予め決められた濃度判定しきい値より小さい場合に、前記キャリブレーション実施手段に対して、キャリブレーションの実施を指示する制御処理と
をコンピュータに行わせることを特徴とする制御プログラム。
【請求項4】
前記制御処理は、
前記測定濃度値と濃度判定しきい値との比較結果に基づいて、実行判定枚数しきい値の値を調整することを特徴とする請求項3に記載の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−243480(P2006−243480A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60553(P2005−60553)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】