説明

画像形成装置及び画像形成方法

【課題】 半透明のインクがプリントされているディスクメディアのラベル面をコピーする場合、オリジナルのラベル面と異なる画像となる場合がある。
【解決手段】 コピー元のディスクメディアにおけるラベル面の画像を光学的に読み取り、読み取ったコピー元の画像の各画素の色成分データをディスクメディアの鏡面特性を反映して作成された基準画像の色成分データと比較する。この比較結果から、前記コピー元の画像の各画素のうち前記基準画像における色成分との差が予め定められた第1の基準以下となる画素の数と、第1の基準未満の予め定められた第2の基準以下となる画素の数を計数する。それぞれの計数された画素の数に従って、前記第1の基準以下と判断された画素について予め定められた色を表す画素の画像データに置換してプリントするか置換しないでプリントするかを決定し、この決定に従ってプリントする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はCD又はDVDなどのラベルをプリンタブルディスクメディアにコピーする機能を有する画像形成装置及びその画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンタにスキャナを搭載したインクジェット複合機が普及してきている。インクジェット複合機は、PCからのプリント命令に従ってプリントを行うプリント機能のほか、スキャナ機能、コピー機能などを有している。
【0003】
また、CD−Rなどのプリンタブルディスクメディアのラベル面にプリントができるようになっているインクジェット複合機も登場している。さらに、スキャナで読み取ったCDのラベル面をCD−Rなどのプリンタブルディスクメディアのラベル面にコピーできる製品も登場している。
【0004】
CDなどのディスクメディアのラベル面にプリントをしない場合、ピットを有するアルミ面の金属光沢が見える。この金属光沢を積極的にデザインに利用し、ラベル面にプリントしない部分を作ることでその部分を金属光沢により光らせるデザインとすることがよく行われている。以下、このラベル面のプリントがされていない部分を非プリント部分と称する。
【0005】
非プリント部分は人間の目には光って見えるものの、スキャナでスキャンすると黒っぽい画像として読み取られてしまう。これは、スキャナは原稿の乱反射成分を読み取るため、乱反射成分が少ない非プリント部分は低輝度の原稿部分であるかのように読み取られてしまう為である。
【0006】
この問題に対する解決策として、非プリント部分を検出してこの部分を白などに置換することで人間の見た目に近くする技術が開示されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−208078号公報
【特許文献2】特開2004−363731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2では読み取り対象からの反射率が高い部分を鏡面と判断している。このため、現在の主流である読み取り対象からの乱反射成分を読み取る方式のスキャナを使用する装置には適用できない。なぜなら、既に述べたように鏡面部分はプリントされている部分と比較して乱反射成分が少ないため、光電変換センサーへの入射光からは鏡面部分と黒っぽいプリント部分との判別が出来ないからである。
【0008】
また、特許文献1では、ラベル面を読み取って取得したラベル面の画像についてのデータとマッチング用ディスクを読み取って取得したマッチング用データとを比較して一致度合いが所定の基準値以上である画素を鏡面と判断している。特許文献1における一致度合いを輝度(Y)と色差(Cb、Cr)各成分で比較する場合、それぞれ10%程度の差(不一致)であれば一致度合いが基準値以上であると判断して鏡面として処理する必要がある。例えば、ラベル面の画像についてのデータとマッチング用データとから輝度差が輝度レンジ全体の10%程度以内であれば鏡面であると判断する必要がある。これはコピー対象のディスクにおけるラベル面の鏡面の状態が固体ごとに異なることや、光の干渉によりラベル面の鏡面の色がばらつくためである。
【0009】
そこで、特許文献1では次のような問題がある。
【0010】
ラベル面のプリントに使用されているインク自体が半透明のインクである場合、プリント部分であっても乱反射成分が少ないために黒っぽく読み取られてしまう。その結果として、プリント部分の画像データとマッチング用データとの差が少なく(一致度合いが高く)なり、プリント部分が鏡面と判断される場合がある。
【0011】
プリント部分が鏡面と判断される場合の例を図10に示す。
【0012】
図10は、ラベル面のほぼ全面に半透明のインクが塗布されているディスクメディアの例である。インクが半透明であるため、読み取り光源から照射された光はインクが塗布されている層を通過してデータを記録しているアルミ面で正反射方向に多く反射し、乱反射成分が少ない。そのため通常の読み取りを行うと図10Aのように黒っぽく読み取られる。黒っぽく読み取られた部分のうちマッチング用データとの一致度合いが基準以上の部分を白に置換すると、図10Bのように部分的に白くなってオリジナルのラベル面とはかなり異なってしまう。このように、前記置換を行ってラベル面のコピーをした場合、置換を行わずにラベル面のコピーをした場合よりもオリジナルのラベル面からかけ離れることとなる。
【0013】
つまり従来の特許文献1に記載の方法では、図10Bに示したように、半透明のインクがプリントされている場合、プリントされている部分に対応するデータが置換され、その結果コピーの精度が低下してしまうという問題がある。
【0014】
そこで、本発明の目的は、半透明のインクがプリントされているディスクメディアのラベル面をコピーする場合でもオリジナルのラベル面からかけ離れることなくコピーすることが可能な画像形成装置及びその画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための本発明は、コピー元のディスクメディアにおけるラベル面の画像を光学的に読み取る画像読み取り手段と、前記画像読み取り手段で読み取った画像データに基づいてコピー先のディスクメディアのラベル面に画像をプリントするプリント手段とを備えた画像形成装置であって、
前記画像読み取り手段で読み取ったコピー元の画像の各画素の色成分データをディスクメディアの鏡面特性を反映して作成された基準画像の色成分データと比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果から、前記コピー元の画像の各画素のうち前記基準画像における色成分との差が予め定められた第1の基準以下となる画素の数を計数する第1の計数手段と、
前記比較手段の比較結果から、前記コピー元の画像の各画素のうち前記基準画像における色成分との差が前記第1の基準未満の予め定められた第2の基準以下となる画素の数を計数する第2の計数手段と、
前記第1の基準以下と判断された画素についての画像データを、予め定められた色を表す画像データに置換する置換手段と、
前記第1の計数手段及び前記第2の計数手段により計数された画素の数に従って、前記置換手段により置換された画像データに基づいてプリントするか前記置換手段により置換されていない画像データに基づいてプリントするかを決定する決定手段と、
を備えることを特徴とする。
【0016】
また、上記課題を解決するための別の本発明は、コピー元のディスクメディアにおけるラベル面の画像を光学的に読み取る画像読み取り手段と、前記画像読み取り手段で読み取った画像データに基づいてコピー先のディスクメディアのラベル面に画像をプリントするプリント手段とを備えた画像形成装置の画像形成方法であって、
前記画像読み取り手段で読み取ったコピー元の画像の各画素の色成分データをディスクメディアの鏡面特性を反映して作成された基準画像の色成分データと比較する比較工程と、
前記比較工程の比較結果から、前記コピー元の画像の各画素のうち前記基準画像における色成分との差が予め定められた第1の基準以下となる画素の数を計数する第1の計数工程と、
前記比較工程の比較結果から、前記コピー元の画像の各画素のうち前記基準画像における色成分との差が前記第1の基準未満の予め定められた第2の基準以下となる画素の数を計数する第2の計数工程と、
前記第1の計数工程及び前記第2の計数工程により計数された画素の数に従って、前記第1の基準以下と判断された画素について予め定められた色を表す画素の画像データに置換してプリントするか置換しないでプリントするかを決定する決定工程と、
前記決定工程の決定に従ってプリントするプリント工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
プレスキャン時に置換対象と判断された部分について解析して、半透明インクが使用されていると判断した場合には、コピー領域全体について置換処理を行わないコピーモードでコピーをする。こうすることで、半透明インクによるプリント部分を白等に置換することによってオリジナル画像とかけ離れたコピー画像を生成することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について図面を用いて詳細に説明する。
【0019】
なお、この明細書において、「プリント」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も表すものとする。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。
【0020】
また、「インク」とは、上記「プリント」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いはインクの処理に供され得る液体を表すものとする。インクの処理としては、例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固又は不溶化させることが挙げられる。
【0021】
以下、本発明の実施例としてのインクジェット複合機を説明する。図1は、本実施例におけるインクジェット複合機のブロック構成を示す図である。
【0022】
図1において100は装置全体を制御するための中央演算処理部(CPU)であり、101はプログラム及びデータを記憶するROMである。103はCPUワークデータ、表示用データ、画像データなどを記憶する記憶部(DRAM)である。105は装置の状態表示や操作の案内表示を行うLCDなどから構成された表示部であり、106はカーソルキーなどから構成される操作部である。108はカラーCCDなどから構成され画像を光学的に読み取るカラー読み取り部(画像読み取り部)であり、107はプリンタなどの記録部である。111はデジタルカメラなどのメモリーカードを読み取ることの出来るカードスロットである。112はこのインクジェット複合機をスキャナ、プリンタ又はメモリカードリーダとして使用するときにPCと接続するためのUSBインタフェース(USB I/F)である。また、各処理部はシステムバス110で接続される。
【0023】
図2は、本インクジェット複合機の操作部106の外観構成図である。操作部106は、LCD202、MFPの動作モードを指定するためのモードキー507、各種設定モードへ入るためのメニューキー502、設定項目の移動や値の変更に使用する上下左右キー506を備える。また、設定入力キーである決定キー505、コピーやスキャンなどの各種ジョブの開始させるためのスタートキー503、ジョブのキャンセルや設定のリセットに使用するキャンセルキー504を備える。
【0024】
ここでCDなどのディスクメディアにおけるラベルのコピー機能に関する操作を説明する。507のモードキーからコピーキーを押し、続いてメニューキー502を押す。LCD202に表示される各種のコピーモードからCDラベルコピーモードを上下左右キー506で選択し、決定キー505を押下する。この操作でCDラベルのコピーが開始される。
【0025】
次に図6を用いてCDラベルコピーの動作を説明する。
【0026】
CDラベルコピーの動作が開始されると、ステップS105で、CDのデータ面を読み取り可能なように例えばCDのデータ面を下にしてCDを原稿台に置いてスタートキーを押すようにユーザに促すメッセージをLCD202に表示する。その後、ステップS110とステップS115をループして、ユーザがスタートキーかキャンセルキーを押すのを待つ。ユーザがキャンセルキーを押した場合はステップS115から終了へ向かう。ユーザがメッセージに従ってCDのデータ面を下にして原稿台に乗せてスタートキーを押すとステップS110からステップS120へ進む。
【0027】
ステップS120において、コピー時のスキャンにおける解像度より低い75〜150dpi程度の解像度でスキャンを行う。そしてこのスキャンによって得られたデータからCDの置かれている位置を検出する(ステップS125)。この位置の検出は、例えば特開平8−237537号公報(第15ページ、図10)等に記載されている公知の輪郭を抽出するアルゴリズムを使用すればよい。ステップS125でCDの置かれている位置を検出したら例えばA4のスキャン画像からCD部分を全て含む12cm四方の部分を切り出して次へ進む。
【0028】
次に、ステップS130で、前記の切り出されたCDのデータ面における画像の拡張処理を行う。
【0029】
この拡張処理について説明する。前記の切り出されたCDのデータ面の画像は図3のようになっている。なお、図4はラベル面にプリントがされていない場合におけるCDのラベル面の画像を示している。図3の画像は図4の画像と非常に似た画像としてスキャンされる。それは、ピットのあるアルミ面を表と裏から見た画像であるためである。すなわちこのデータ面の画像を参照することでラベル面の非プリント部分を検出することができる。データ面を参照したラベル面の非プリント部分の判定方法は後述する。
【0030】
ただし図3のデータ面のスキャン画像と図4のラベル面画像を比較してもわかるように図3のデータ面画像のほうが濃い部分の面積が少ない。これはピットのあるアルミ面はCDのデータ面よりもラベル面の近くに存在するためである。つまりプラスチック表面からピットのあるアルミ面までの距離がデータ面とラベル面で異なるためにスキャン画像の違いが発生する。
【0031】
ここで、図3のデータ面のスキャン画像をラベル面に対する参照画像とするためには、この濃い部分の面積の差異は小さいことが望ましい。このため、データ面のスキャン画像を加工してこの差異を小さくする。具体的には、図3の画像の中心を基準として図3中の矢印Aの方向(回転方向)に変倍する。その結果、図3の画像を元に図4に近い画像を得ることができる。
【0032】
さらに放射状にB方向及びC方向に画素をコピーして図5のような画像を作成する。そして、このようにして作成された画像を参照画像とする。これにより、ステップS120での位置検出精度が多少低下しても後述するラベル面の画像処理において、例えば外周部付近でラベル面は非プリント部分をスキャンしたのに参照すべきデータ面画像が無色透明な外周部となるような不都合を無くすことができる。
【0033】
ステップS135では、ステップS130で作成した図5のような画像を後の処理で参照できるようにDRAM103に格納する。
【0034】
続いてステップS140では、コピー元のCDのラベル面を読み取り可能なように例えばCDのラベル面を下にしてCDを原稿台に置いてスタートキーを押すようにユーザに促すメッセージをLCD202に表示する。
【0035】
その後、ステップS145とステップS150をループして、ユーザがスタートキーかキャンセルキーを押すのを待つ。ユーザがキャンセルキーを押した場合は、ステップS150から終了へ向かう。ユーザがメッセージに従ってラベル面を下にしてCDを原稿台に乗せてスタートキーを押すと、ステップS145からステップS155へ進む。
【0036】
ステップS155では、ラベル面の画像を解析する目的で、ステップS120と同様の低解像度でプレスキャンを行う。そして、ステップS160では、プレスキャンにより読み取られた画像からCDの置かれている位置を検出する。
【0037】
次に、ステップS165でプレスキャンにより読み取られた画像の解析を行う。その処理内容を図7で説明する。
【0038】
まず、ステップS210でラベル面の色のヒストグラムを作成する。本実施例ではスキャンした画像は24bit(約1677万色)である。このため、全色に対してヒストグラムを作成するのはインクジェット複合機のような装置で用いられるメモリのメモリ量では不可能である。そこでRGBの各色を16段階に分割し、すなわちRGBの色空間を16×16×16=4096個の小空間に分割し、各小空間に属する色の出現頻度をカウントする。
【0039】
そして、ステップS220で、出現頻度が所定数を上回った小空間に属する色はプリントされた色として判定する。非プリント部分は暗い茶色とグレーの中間のような色のグラデーションになっており、この非プリント部分において最も出現頻度が高い小空間に属する色でもその出現頻度は十数パーセントにしかならない。したがって、出現頻度がこの十数パーセントを超えた小空間があるときに、この小空間に属する色をプリントされた色とみなすことができる。
【0040】
次に、ステップS230で半透明インクが使用されているかどうかを判断する。
【0041】
この半透明インクが使用されているかどうかを判断するための動作を図9で説明する。
【0042】
ステップS410では、矩形のプレスキャン画像について1画素ずつ処理を行うが、今回の処理画素がラベル領域(コピーエリア)外である場合にはステップS460へ進み、全画素について判断が終了するまで処理を繰り返す。ラベル領域内の画素である場合はステップS420で当該画素の一致度合いを基準と比較し、この比較結果において基準に満たない場合はステップS460から次の画素へ進む。この比較結果において基準を満たす場合はステップS430で、置換対象の画素数であるAのカウントアップ(第1の計数)をする。なお、具体的には、この比較は、コピー元の画像の各画素の色成分データをディスクメディアの鏡面特性を反映して作成された基準画像(コピー元のCDのデータ面)の色成分データと比較することにより行う。次に、ステップS440では画素の一致度合いを予め定められた閾値th2と比較する。また、Aを言い換えると、コピー元の画像の各画素のうち前記基準画像における色成分との差が予め定められた第1の基準以下となる画素の数である。ここでは置換対象となった画素のうち特に一致度が高い画素をカウントすることを目的としている。置換対象画素が鏡面である場合、一致度は比較的高くなるので閾値th2以上となり、ステップS450で、置換対象の画素のうち特に一致度の高い画素であるBのカウントアップ(第2の計数)をする可能性が高い。なお、Bを言い換えると、コピー元の画像の各画素のうち前記基準画像における色成分との差が前記第1の基準未満の予め定められた第2の基準以下となる画素の数である。置換対象にはなったものの一致度が比較的低い場合(閾値th2未満の場合)はBのカウントアップは行われず、ステップS460で次の画素へ進む。全画素の処理が終わると図9の処理は終了して、図7のステップS230へ戻り、さらに図6のステップS165へ戻る。
【0043】
次に、図6のステップS170で半透明インクが使用されているかどうかの判定を行い、半透明インクが使用されていると判定した場合はステップS175で置換処理(画像処理)無しのコピーを行う。また、半透明インクが使用されていないと判定した場合はステップS180で置換処理ありのコピーを行う。なお、ステップS170の判定は次のように行う。
【0044】
(B/A)<所定の基準値 の場合、置換処理なしのコピーを行う。
【0045】
(B/A)≧所定の基準値 の場合、置換処理ありのコピーを行う。
【0046】
上記のとおり、Aは置換対象の画素数であり、Bは置換対象の画素のうち特に一致度の高い画素の数である。半透明インクが使用されている場合は置換対象の画素数に比較して一致度の高い画素が少ない傾向があるため上記の判定が可能である。このように、前記第1の計数で計数された画素の数Aに対する前記第2の計数で計数された画素の数Bが、予め定められた所定の基準値未満となるか予め定められた所定の基準値以上となるかによって判定を行う。
【0047】
図11は、10種類のCDラベルについて、置換対象のうち一致度が特に高い画素の比率を示したグラフである。disk5とdisk6は半透明のインクがラベルのほぼ全面にプリントされており、白で示した一致度が特に高い画素の比率が小さい事がわかる。
【0048】
次に図6に戻って説明を続ける。
【0049】
ステップS170で半透明インクが使用されていないと判断した場合は、ステップS180で、ステップS160で検出したCDの位置を基に、コピー元のCDのCDラベルについて例えば600dpiの高解像度でスキャンを行う。そして、このスキャンにより得られた画像データをプリントデータに変換して、コピー先のディスクメディアのラベル面にプリントする。この時の1画素分の処理について図8を用いて説明する。
【0050】
まず、ステップS310で、処理を行おうとしている画素がコピーエリアの画素かどうかを判定する。これは処理対象画素の中心からの距離で判断する。処理を行おうとしている画素がコピーエリアの画素でない場合は何もしない。
【0051】
処理を行おうとしている画素がコピーエリアの画素であった場合はステップS320へ進む。ここでは、高解像度でスキャンしたスキャン画像と図6のステップS135で保存したデータ面画像とから、ディスク上の同じ位置にある画素を読み出してこれらの画素の色を比較する。このとき、高解像度でスキャンした画像の各画素に対応する位置のデータ面画像の位置を算出してステップS320の比較処理を行う。データ面画像の位置の算出は、高解像度でスキャンしたスキャン画像の解像度、データ面画像の解像度、スキャン画像及びデータ面画像の座標から算出可能である。
【0052】
上記のとおり、データ面とラベル面の非プリント部分とは、ピットのあるアルミ面を表と裏から見た画像であるので似ている。したがってラベル面の色がデータ面の色に近ければ非プリント部分である可能性が高いのでステップS340へ進む。ここでは、色が近いかどうかの判定は、ラベル面の色とデータ面の色との差が所定値th以下であるか所定値thを超えているかにより判定する。例えば、Lab空間及びYCbCr空間におけるラベル面及びデータ面それぞれの色の色差について所定値thと比較する方法がある。また、輝度と色差のそれぞれを別個に異なる所定値thと比較する方法、RGB空間での二つの色の距離を所定値thと比較する方法、R同士、G同士、B同士の差がすべて所定値th以下であるときに近いと判定する等の方法がある。色が近くないときにはステップS330へ進み、スキャン画像の画素に対してプリント部分としての処理をする。
【0053】
ステップS340では、処理を行おうとしているスキャン画像の画素の色が図7のステップS220でプリントされた色と判定した小空間に属するかどうかを判定する。この小空間に属するのであれば、データ面画像に似ている色であっても実はプリントされた色であるのでステップS330へ進み、スキャン画像の画素に対してプリント部分としての処理をする。この小空間に属さない場合は、処理を行おうとしているスキャン画像の画素は非プリント部分であるのでステップS350へ進み、非プリント部分としての処理を行う。
【0054】
CDのラベル面の非プリント部分は金属光沢で光って見えているが、プリンタブルCD−Rのラベル面にインクジェットプリントすることによって金属光沢を表現することは困難である。そこで本実施例では、非プリント部分にはプリントせずプリンタブルCD−Rの地の色を出すこととした。そのために非プリント部分と判定した当該画素の画像データは白色を表す画像データに置換して表示することでプリンタブルCD−Rの地の色になることを示すこととした。ステップS350で置換処理を行った画素は処理を終了する。
【0055】
このように画素ごとに処理を行った後にプリントデータに変換してプリントする。
【0056】
なお、ここで、ステップS130でデータ面画像を図3におけるB方向とC方向に拡張した理由について再度説明する。例えば図6のステップS125でのデータ面画像の切り出し位置が微妙にずれた場合、ラベル面の外周エッジ付近の部分に対する比較対照のデータ面の部分としてアルミ部分から外れた無色透明の部分を認識してしまう可能性がある。特に、高解像度でデータ面画像を処理する場合にこのような誤認識をしてしまう可能性がある。そして、非プリント部分と判定すべき画素をプリント部分と誤判定する可能性がある。ステップS130でデータ面画像を図3におけるB方向とC方向に拡張した理由は、データ面画像を図5のように外側に広げておくことで、このような誤判定を無くすためである。
【0057】
ステップS170で半透明インクを使用していると判定された場合はステップS175へ進む。ここではステップS180と同様に1画素ごとに処理を行うが、高解像度でのスキャンにより得られた全てのスキャン画像の画素をプリントする画素として採用する事がステップS180と異なる。
【0058】
以上のように、本発明の画像形成装置は、CDのデータ面の画像とラベル面の画像とを比較して色の近い部分を非プリント部分と判定して白に置換するなどの処理を行い、CDのラベル面をコピーすることが可能な画像形成装置である。この画像形成装置は、半透明のインクが使用されているCDのラベルをコピーする場合に、半透明のインクが使用されていると判断された部分について置換処理を行わないように動作させることができる。このため、本発明の画像形成装置は、半透明のインクを使用したCDのラベルをコピーする場合でも、部分的に白に置換されてオリジナルのラベルとかけ離れたコピーをしてしまうことを防止できる。
【0059】
また、図6のステップS120でデータ面のスキャンを行い、ステップS135でDRAM103にスキャンしたデータを格納したが、CDのデータ面の画像は個々の差異が少ない。このため、平均的なデータ面の画像をROM102に格納しておくことでステップS105からステップS135が不要になる。このような構成とすれば、誤判定が増えるが操作性は改善されるという効果がある。このとき、データ面の画像をJPEG等で圧縮してROM102に格納しておき、CPU101のソフトウェア処理でDRAM103に展開してからステップS140を実行するようにすることで、ROM要領の増大による装置のコストアップを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施例としてのインクジェット複合機のブロック図である。
【図2】本発明の実施例としてのインクジェット複合機における操作部の外観を示す図である。
【図3】CDのデータ面のスキャン画像を示す図である。
【図4】CDのラベル面のスキャン画像を示す図である。
【図5】拡張したCDのデータ面のスキャン画像を示す図である。
【図6】本発明の実施例におけるCDラベルコピーの動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施例におけるCDラベルコピーのプレスキャン画像解析を示す図である。
【図8】本発明の実施例におけるCDラベルコピーのプレスキャン画像処理の1画素分についての処理を示す図である。
【図9】本発明の実施例における半透明インク検出の動作を示す図である。
【図10】半透明インクを使ったCDラベルをコピーした画像を示す図である。
【図11】CDのラベル面とデータ面とで色が一致する画素と色が一致しない画素との比を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
100 CPU
101 ROM
102 DRAM
107 記録部
108 読み取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コピー元のディスクメディアにおけるラベル面の画像を光学的に読み取る画像読み取り手段と、前記画像読み取り手段で読み取った画像データに基づいてコピー先のディスクメディアのラベル面に画像をプリントするプリント手段とを備えた画像形成装置であって、
前記画像読み取り手段で読み取ったコピー元の画像の各画素の色成分データをディスクメディアの鏡面特性を反映して作成された基準画像の色成分データと比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果から、前記コピー元の画像の各画素のうち前記基準画像における色成分との差が予め定められた第1の基準以下となる画素の数を計数する第1の計数手段と、
前記比較手段の比較結果から、前記コピー元の画像の各画素のうち前記基準画像における色成分との差が前記第1の基準未満の予め定められた第2の基準以下となる画素の数を計数する第2の計数手段と、
前記第1の基準以下と判断された画素についての画像データを、予め定められた色を表す画像データに置換する置換手段と、
前記第1の計数手段及び前記第2の計数手段により計数された画素の数に従って、前記置換手段により置換された画像データに基づいてプリントするか前記置換手段により置換されていない画像データに基づいてプリントするかを決定する決定手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記基準画像は、前記画像読み取り手段で読み取ったコピー元のディスクメディアにおけるデータ面の画像であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記基準画像を表現する画像データを予め格納した記憶手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記予め定められた色は、白色であり、
前記プリント手段は、前記置換手段により置換された画像データに対応する画素についてはプリントしないことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記決定手段は、前記第1の計数手段により計数された画素の数に対する前記第2の計数手段により計数された画素の数が予め定められた基準値未満の場合は前記置換手段により置換されていないデータに基づいてプリントすることを決定することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記比較手段は、前記画像読み取り手段で読み取ったコピー元の画像の各画素の色成分と前記基準画像の色成分とを、Lab空間において比較することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記比較手段は、前記画像読み取り手段で読み取ったコピー元の画像の各画素の色成分と前記基準画像の色成分とを、YCbCr空間において比較することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記比較手段は、前記画像読み取り手段で読み取ったコピー元の画像の各画素の色成分と前記基準画像の色成分とを、RGB空間において比較することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
コピー元のディスクメディアにおけるラベル面の画像を光学的に読み取る画像読み取り手段と、前記画像読み取り手段で読み取った画像データに基づいてコピー先のディスクメディアのラベル面に画像をプリントするプリント手段とを備えた画像形成装置の画像形成方法であって、
前記画像読み取り手段で読み取ったコピー元の画像の各画素の色成分データをディスクメディアの鏡面特性を反映して作成された基準画像の色成分データと比較する比較工程と、
前記比較工程の比較結果から、前記コピー元の画像の各画素のうち前記基準画像における色成分との差が予め定められた第1の基準以下となる画素の数を計数する第1の計数工程と、
前記比較工程の比較結果から、前記コピー元の画像の各画素のうち前記基準画像における色成分との差が前記第1の基準未満の予め定められた第2の基準以下となる画素の数を計数する第2の計数工程と、
前記第1の計数工程及び前記第2の計数工程により計数された画素の数に従って、前記第1の基準以下と判断された画素について予め定められた色を表す画素の画像データに置換してプリントするか置換しないでプリントするかを決定する決定工程と、
前記決定工程の決定に従ってプリントするプリント工程と、
を有することを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−10771(P2009−10771A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171220(P2007−171220)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】