画像形成装置及び画像形成方法
【課題】現像剤中に含有させる磁性粒子として、小粒径磁性粒子及び大粒径磁性粒子の2種類の磁性粒子を用いる構成において、ハーフトーンベタ背景画像の文字周囲の領域における白抜けを従来よりも軽減する。
【解決手段】現像スリーブ12Yの回転に伴って、現像剤を感光体4Yに対向する現像領域に搬送し、現像領域で現像剤中のトナーを感光体4Yの静電潜像に転移させてその静電潜像を現像する画像形成装置において、感光体4Yと現像スリーブ12Yとをそれぞれ次のように駆動するようにした。即ち、現像領域において、感光体4Yと現像スリーブ12Yとを互いに逆方向に表面移動させるように、それぞれの回転駆動方向を設定した。
【解決手段】現像スリーブ12Yの回転に伴って、現像剤を感光体4Yに対向する現像領域に搬送し、現像領域で現像剤中のトナーを感光体4Yの静電潜像に転移させてその静電潜像を現像する画像形成装置において、感光体4Yと現像スリーブ12Yとをそれぞれ次のように駆動するようにした。即ち、現像領域において、感光体4Yと現像スリーブ12Yとを互いに逆方向に表面移動させるように、それぞれの回転駆動方向を設定した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粒子及びトナー粒子を含有する現像剤を、現像剤担持体に内包される磁気発生手段の磁力によって現像剤担持体の表面に担持して現像に用いる画像形成装置や画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置において、現像剤の磁性粒子として、平均粒径の比較的小さい小粒径磁性粒子を用いると、平均粒径の比較的大きい大粒径磁性粒子を用いる場合に比べて、現像装置内における磁性粒子の総表面積が大きくなる。すると、磁性粒子の単位体積あたりにおけるトナー担持量をより多くして、潜像に対して十分量のトナーを供給することが可能になるので、ハーフトーンベタ画像を繊細にムラ無く現像することができる。この反面、現像剤の流動性が悪くなったり、トナー粒子を磁性粒子表面に固着させ易くなったりするというデメリットがある。一方、大粒径磁性粒子を用いると、現像剤の流動性を向上させたり、磁性粒子表面に対するトナー固着を抑えたりすることができる。この反面、小粒径磁性粒子に比べてトナー粒子の担持量が少なくなることから、ハーフトーンベタ画像を繊細に現像することができずに、ぼそつきのある画像にしてしまうというデメリットがある。
【0003】
従来より、小粒径磁性粒子のデメリットを大粒径磁性粒子で補い、且つ大粒径磁性粒子のデメリットを小粒径磁性粒子で補う狙いから、磁性粒子として、それら2種類の磁性粒子を含有させた現像剤を用いるようにした画像形成装置が知られている(例えば特許文献1に記載のもの)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の画像形成装置においては、ハーフトーンベタ背景画像における文字画像との境界付近に白抜けを発生させ易くなるという問題があった。本発明者らは、かかる白抜けを発生させる原因として、文字周辺部へのトナーの供給不足が関与している可能性が高いと考えた。そこで、より多くのトナーを供給するために、プリンタ試験機を用いて、現像剤担持体たる現像スリーブの線速をより速めてテストプリントを行ってみた。現像領域における現像スリーブの表面移動方向については、従来から一般的に採用されてきた順方向(潜像担持体たる感光体と同じ方向)とした。この条件でプリントしたテスト画像においては、白抜けが僅かに改善されたが、白抜けのレベルを許容範囲にまで改善することはできなかった。
【0005】
次に、本発明者らは、現像領域における現像剤の挙動を高速度カメラで撮影した後、低速再生してみた。すると、次のようなことがわかってきた。即ち、現像スリーブの表面上では、主に大粒径磁性粒子同士が強く連結し合うことで、いわゆる穂立ちを起こして磁気ブラシを形成する。小粒径磁性粒子は、大粒径磁性粒子に比べて粒子1個あたりの磁化量が小さいことから、大粒径磁性粒子が密集している現像剤担持体の表面付近に入り込むことができない。このため、殆どの小粒径磁性粒子は、大粒径磁性粒子によって主に形成される磁気ブラシ中における個々の穂の先端部に吸着する。感光体と現像スリーブとが所定のギャップを介して対向している現像領域では、現像スリーブ上における磁気ブラシの穂の先端部を覆っている小粒径磁性粒子が、大粒径磁性粒子よりも優先して現像に寄与する。小粒径磁性粒子の中でも、感光体に直接接触している小粒径磁性粒子が、まず初めに現像に寄与する。これにより、感光体に直接接触している小粒径磁性粒子における感光体との対向面に付着しているトナーが失われる。良好な現像がなされるためには、このようにして感光体との対向面のトナーを失った小粒径磁性粒子が良好に転がって、それまで感光体とは反対側に向けていてトナーをまだ失っていない面を、新たに感光体に向ける必要がある。ところが、小粒径磁性粒子と大粒径磁性粒子とを含有する現像剤では、次に説明する理由により、小粒径磁性粒子が転がり難くなっている。即ち、感光体に直接接触している小粒径磁性粒子の下で磁気ブラシの骨格をなしている大粒径磁性粒子同士の連結による穂立ちは、連結の力が強固であるため、形崩れし難い。そして、自らが形崩れし難いことに加えて、感光体と自らとの間に介在させている小粒径磁性粒子の層も形崩れさせ難くしている。形崩れし難い層の中では、小粒径磁性粒子が転がり難いため、長時間に渡って同じ姿勢をとり続けて、スムーズな現像を阻害してしまう。更に、トナー粒子を失った感光体との対向面に、カウンターチャージによるトナーとは逆極性の電荷を保持し続けることで、周囲の磁性粒子のトナーを自らに引き寄せる電界を形成して、周囲の磁性粒子から感光体の潜像へのトナーの転移を妨げる。これらの結果、ハーフトーンベタ背景画像の文字周囲の領域に対するトナーの供給が不足して、白抜けが発生していたことがわかった。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次のような画像形成装置及び画像形成方法を提供することでる。即ち、小粒径磁性粒子及び大粒径磁性粒子の2種類の磁性粒子を用いる構成において、ハーフトーンベタ背景画像の文字周囲の領域における白抜けを従来よりも軽減することができる画像形成装置等である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、次のような実験結果に基づいて、本発明を完成させるに至った。即ち、現像スリーブの表面移動速度を速めて現像領域に対する単位時間あたりのトナー供給量を増やすことで、上述した白抜けをある程度までは改善することが可能であった。しかし、表面移動速度を速めすぎるとトナー飛散や現像剤こぼれを引き起こしてしまうため、速めるのには限界がある。そして、限界近くまで速めても、満足のいく結果が得られなかった。そこで、単位時間あたりのトナー供給量を増やす代わりに、現像領域において、感光体の表面の近くで磁気ブラシの穂の先端部を形成している大粒径磁性粒子を活発に動かすことを検討した。様々な条件で実験を繰り返したところ、現像領域にて、現像スリーブの表面を感光体とは逆方向に移動させることで、感光体の表面の近くに存在する大粒径磁性粒子を活発に動かして、それに伴って、感光体との接触位置にある小粒径磁性粒子を活発に入れ替えることができることを見出した。
【0008】
そこで、請求項1の発明は、平均粒径の比較的小さい小粒径磁性粒子、平均粒径の比較的大きい大粒径磁性粒子、及び、前記小粒径磁性粒子よりも小さい粒径のトナー粒子、を含有する現像剤を収容する現像剤収容部と、前記現像剤収容部内の現像剤を自らの周回移動する表面に担持する現像剤担持体と、前記現像剤担持体の周面のループよりも内側で前記周面に沿って並ぶように配設された複数の磁極の発する磁力により、現像剤を前記現像剤担持体の前記周面に引き寄せる磁気発生手段とを具備する現像手段を備え、前記現像剤担持体の表面移動により、現像剤を画像形成装置の潜像担持体に対向する現像領域に搬送し、該現像領域で現像剤中のトナーを前記潜像担持体の潜像に転移させて前記潜像を現像する画像形成装置において、前記潜像担持体と前記現像剤担持体とを前記現像領域で互いに逆方向に表面移動させることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、前記潜像担持体として、現像剤中の磁性粒子に対する表面摩擦係数が0.6以上であるものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の画像形成装置において、前記大粒径磁性粒子として、前記小粒径磁性粒子よりも飽和磁磁化量が大きいものを前記現像剤収容部に収容したことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかの画像形成装置において、前記潜像担持体とこれの表面を一様に帯電せしめる帯電手段とを1つのユニットとして共通の保持体に保持させて画像形成装置本体に対して一体的に着脱可能にしたプロセスユニットとして構成したことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、平均粒径の比較的小さい小粒径磁性粒子、平均粒径の比較的大きい大粒径磁性粒子、及び、前記小粒径磁性粒子よりも小さい粒径のトナー粒子、を含有する現像剤を収容する現像剤収容部の現像剤を、磁気発生手段を内包する現像剤担持体の周回移動する表面に担持し、前記現像剤担持体の表面移動によって潜像担持体に対向する現像領域に搬送し、該現像領域で現像剤中のトナーを前記潜像担持体の潜像に転移させて前記潜像を現像する画像形成方法において、前記潜像担持体と前記現像剤担持体とを前記現像領域で互いに逆方向に表面移動させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
これらの発明においては、現像剤担持体の表面を現像領域で潜像担持体とは逆方向に移動させることで、現像領域内で、潜像担持体の表面が自らに摺擦している小粒径磁性粒子を介して大粒径磁性粒子に対してその移動方向とは逆方向に向かう力を付与して、大粒径磁性粒子を活発に動かす。そして、感光体の表面の近くでは、表面に小粒径磁性粒子を吸着させている大粒径磁性粒子が活発に動くことで、潜像担持体との接触位置にある小粒径磁性粒子を活発に入れ替える。これにより、潜像担持体上のハーフトーンベタ背景画像の文字周辺領域にトナー粒子が良好に供給されるようになる。よって、ハーフトーンベタ背景画像の文字周辺領域の白抜けを従来よりも軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る複写機を示す概略構成図。
【図2】同複写機におけるY用のプロセスユニットを示す拡大構成図。
【図3】同プロセスユニットの現像領域における磁性粒子の挙動を説明するための拡大模式図。
【図4】同プロセスユニットにおける大粒径磁性粒子の現像領域中における攪乱回数と、感光体の現像剤に対する表面摩擦係数μとの関係を示すグラフ。
【図5】現像領域にて定義した各分割領域を説明するための模式図。
【図6】大粒径磁性粒子の攪乱の第1例を説明するための模式図。
【図7】大粒径磁性粒子の攪乱の第2例を説明するための模式図。
【図8】大粒径磁性粒子の未攪乱の状態を説明するための模式図。
【図9】1種類の磁性粒子しか含有しない現像剤の現像領域における磁性粒子の挙動を説明するための拡大模式図。
【図10】2種類の磁性粒子を含有する現像剤を用いる従来の現像装置の現像領域における磁性粒子の挙動を説明するための拡大模式図。
【図11】1種類の磁性粒子しか含有していない現像剤を感光体及び現像スリーブとともに示す拡大模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、電子写真方式の複写機(以下、単に複写機という)に適用した実施形態について説明する。
まず、実施形態に係る複写機の基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係る複写機を示す概略構成図である。この複写機は、画像形成部1と、白紙供給装置40と、画像読取ユニット50とを備えている。画像読取装置としての画像読取ユニット50は、画像形成部1の上に固定されたスキャナ150と、これに支持されるシート搬送装置としての原稿自動搬送装置(以下、ADFという)51とを有している。
【0012】
白紙供給装置40は、給紙カセット42、給紙カセット42から記録紙を送り出す送出ローラ43、送り出された記録紙を分離して給紙路44に供給する分離ローラ45等を有している。また、画像形成部1の搬送路としての給紙路37に、シート状部材としての記録紙を搬送する複数の搬送ローラ47等も有している。そして、給紙カセット内の記録紙を画像形成部1内の給紙路37内に給紙する。
【0013】
画像形成部1は、光書込装置2や、イエロー,マゼンタ,シアン,ブラック(Y,M,C,K)のトナー像を形成する4つのプロセスユニット3Y,M,C,K、転写ユニット24、レジストローラ対33、定着装置34、給紙路37等を備えている。そして、光書込装置2内に配設された図示しないレーザーダイオードやLED等の光源を駆動して、ドラム状の4つの感光体4Y,M,C,Kに向けてレーザー光Lを照射する。この照射により、感光体4Y,M,C,Kの表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。
【0014】
図2は、Y用のプロセスユニット3Yを示す拡大構成図である。プロセスユニット3Yは、感光体4Yとその周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、画像形成部1本体に対して着脱可能になっている。詳しくは、感光体4Yの周りに、帯電装置23、現像装置6、ドラムクリーニング装置15、除電ランプ等を有している。
【0015】
先に示した図1において、本複写機は、4つのプロセスユニット3Y,M,C,Kを、後述する中間転写ベルト25に対してその無端移動方向に沿って並べるように対向配設した、いわゆるタンデム型の構成になっている。
【0016】
感光体4Y,M,C,Kとしては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。
【0017】
図2において、現像装置6Yは、図示しない磁性粒子と非磁性のトナー粒子とを含有する現像剤を用いて潜像を現像するようになっている。内部に収容している現像剤を攪拌しながら搬送して現像スリーブ12Yに供給する攪拌部7と、現像スリーブ12Yに担持された現像剤中のトナーを感光体4Yに転移させるための現像部11Yとを有している。
【0018】
攪拌部7Yは、現像部11Yよりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された2本の搬送スクリュウ8Y、これらスクリュウ間に設けられた仕切り板、ケーシングの底面に設けられたトナー濃度センサ10Yなどを有している。
【0019】
現像部11Yは、ケーシングの開口を通して感光体4Yに対向する現像スリーブ12Y、これの内部に回転不能に設けられた磁気発生手段としてのマグネットローラ13Y、現像スリーブ12Yに先端を接近させるドクタブレード14Yなどを有している。現像剤担持体としての現像スリーブ12Yは、非磁性の回転可能な筒状になっている。磁気発生手段としてのマグネットローラ13Yは、ドクタブレード14Yとの対向位置からスリーブの回転方向に向けて順次並ぶ複数の磁極を有している。これら磁極は、それぞれスリーブ上の現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部7Yから送られてくる現像剤を現像スリーブ12Yの表面に引き寄せて担持させるとともに、スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。
【0020】
現像剤は、ポリエステル樹脂を主成分とする平均粒径6[μm]のトナー粒子と、平均粒径25[μm]の小粒径磁性粒子と、平均粒径75[μm]の大粒径磁性粒子とを含有している。現像剤中のトナー濃度は、約7[wt%]程度であり、現像装置6Y内における現像剤の総重量は225[g]程度である。攪拌部7Y内の現像剤は、600[rpm]の速度で回転する搬送スクリュウ8Yによって撹拌搬送されてトナー粒子の摩擦帯電が促されながら、マグネットローラ13Yの磁力によって現像スリーブ12Y表面に汲み上げられる。そして、現像スリーブ12Yの回転に伴って現像領域に向けて搬送される途中で、トクターブレード14Yによってスリーブ表面上の層厚が規制されながら、摩擦帯電がさらに促される。トナーの帯電量としては、−10〜−50[μC/g]の範囲が好適であり、図示の複写機において実験室で数10枚の画像を印刷した後に帯電量を測定したところ、−35[μC/g]であった。
【0021】
現像スリーブ12Yは、直径20[mm]のアルミ製のパイプが加工されたものであって、その表面にはサウンドブラストやV字溝切削などによる粗面化処理が施されている。表面粗さRz(十点平均粗さ)は10〜30[μm]程度の範囲が良好であり、これより粗くなると保持量が極端に増加しトナーの電荷量が低減する。また10[μm]を下回ると十分な現像剤量が保持できなくなり、結果的に現像能力低下をきたす。スリーブ内部のマグネットローラ13Yは複数の永久磁石からなる磁極を有している。
【0022】
磁気ブラシは、現像スリーブ12Yの回転に伴ってドクタブレード14Yとの対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、感光体4Yに対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ12Yに印加される現像バイアスと、感光体4Yの静電潜像との電位差によってトナーを静電潜像上に転移させて現像に寄与する。更に、現像スリーブ12Yの回転に伴って再び現像部11Y内に戻り、マグネットローラ13Yの磁極間に形成される反発磁界の影響によってスリーブ表面から離脱した後、攪拌部7Y内に戻される。攪拌部7Y内には、トナー濃度センサ10Yによる検知結果に基づいて、現像剤に適量のトナーが補給される。
【0023】
現像領域において、感光体4Y表面と現像スリーブ12Y表面とが最接近する位置における両者間の距離は0.3[mm]に設定されている。現像スリーブ12Yの回転による単位面積あたりの現像剤搬送量は30[mg/cm2]程度である。
【0024】
マグネットローラ13Yは、現像領域に対向するピーク磁力100[mT]の現像磁極P1(N極)を有している。また、現像磁極P1から時計回り方向に少しずつずれた位置に、ピーク磁力85[mT]のP2磁極(S極)、ピーク磁力52[mT]のP3磁極(N極)、ピーク磁力70[mT]のP4磁極(S極)、ピーク磁力78[mT]のP5磁極(S極)を有している。P4磁極とP5磁極とが互いに同極の反発磁極になっており、現像領域を通過してきた現像剤をスリーブ表面から離脱させる役割を担っている。
【0025】
ドラムクリーニング装置15Yとしては、弾性体からなるクリーニングブレード16Yを感光体4Yに押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、本例では、外周面を感光体4Yに接触させる導電性のファーブラシ17Yを、図中矢印方向に回転自在に有する方式のものを採用している。このファーブラシ17Yは、図示しない固形潤滑剤18Yから潤滑剤を掻き取って微粉末にしながら感光体4Y表面に塗布する役割も兼ねている。クリーニングブレード16Yによって掻き取られた回収トナーは、回収スクリュウ19Yの回転によってクリーニング装置15Yの外に排出されて図示しない廃トナーボトル内に落下する。
【0026】
プロセスユニット3Y内に配設された図示しない除電ランプは、光照射によって感光体4Yを除電する。除電された感光体4Yの表面は、帯電装置23Yによって一様に帯電せしめられた後、光書込装置(図1の2)による光書込処理がなされる。なお、帯電装置23Yとしては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体4Yに当接させながら回転させるものを用いている。感光体4Yに対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
【0027】
先に示した図1において、4つのプロセスユニット3Y,M,C,Kの感光体4Y,M,C,Kには、Y,M,C,Kトナー像が形成される。4つのプロセスユニット3Y,M,C,Kの上方には、転写ユニット24が配設されている。ベルト駆動装置としての転写ユニット24は、複数のローラによって張架している中間転写ベルト25を、感光体4Y,M,C,Kに当接させながら図中反時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体4Y,M,C,Kと、無端状のベルト部材である中間転写ベルト25とが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。Y,M,C,K用の1次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された1次転写ローラ26Y,M,C,Kによって中間転写ベルト25を感光体4Y,M,C,Kに向けて押圧している。これら1次転写ローラ26Y,M,C,Kには、それぞれ図示しない電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、Y,M,C,K用の1次転写ニップには、感光体4Y,M,C,K上のトナー像を中間転写ベルト25に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。図中時計回り方向の無端移動に伴ってY,M,C,K用の1次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト25のおもて面には、各1次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト25のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0028】
中間転写ベルト25の図中右側方には、2次転写ローラ28が配設されており、ベルトループ内の2次転写対向ローラ27との間に中間転写ベルト25を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト25のおもて面と、2次転写ローラ28とが当接する2次転写ニップが形成されている。2次転写ローラ28には図示しない電源によって2次転写バイアスが印加されている。一方、ベルトループ内の2次転写対向ローラ27は接地されている。これにより、2次転写ニップに2次転写電界が形成されている。
【0029】
この2次転写ニップの図中下方には、レジストローラ対33が配設されている。また、レジストローラ対33のレジストニップの入口付近には、図示しないレジストローラセンサが配設されている。図示しない白紙供給装置からレジストローラ対33に向けて搬送されてくる記録紙Pは、その先端がレジストローラセンサに検知された所定時間後の搬送が一時停止し、レジストローラ対33のレジストニップに先端を突き当てる。この結果、記録紙Pの姿勢が修正され、画像形成との同期をとる準備が整う。
【0030】
記録紙Pの先願がレジストニップに突き当たると、レジストローラ対33は、記録紙Pを中間転写ベルト25上の4色トナー像に同期させ得るタイミングでローラ回転駆動を再開して、記録紙Pを2次転写ニップに送り出す。2次転写ニップ内では、中間転写ベルト25上の4色トナー像が2次転写電界やニップ圧の影響によって記録紙に一括2次転写され、記録紙の白色と相まってフルカラー画像となる。2次転写ニップを通過した記録紙は、中間転写ベルト25から離間して、紙搬送ベルト29のおもて面に保持されながら、その無端移動に伴って定着装置34へと搬送される。
【0031】
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト25の表面には、2次転写ニップで記録紙に転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト25に当接する図示しないベルトクリーニング装置によって掻き取り除去される。
【0032】
定着装置34に搬送された記録紙は、定着装置34内における加圧や加熱によってフルカラー画像が定着させしめられた後、定着装置34から排紙ローラ対35に送られた後、機外へと排出される。
【0033】
画像形成部1の上に固定されたスキャナ150やこれの上に固定されたADF51は、固定読取部や移動読取部を有している。移動読取部は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第2コンタクトガラスの直下に配設されており、光源や、反射ミラーなどを搭載した移動体としてのキャリッジを図中左右方向に移動させることができる。そして、キャリッジを図中左側から右側に移動させていく過程で、光源から発した光を第2コンタクトガラス上に載置された図示しない原稿で反射させた後、複数の反射ミラーを経由させてCCD等の撮像素子で読み取る。
【0034】
一方、固定読取部は、スキャナ150の内部に配設された第1面固定読取部と、ADF51内に配設された図示しない第2面固定読取部とを有している。光源、反射ミラー、CCD等の画像読取センサなどを有する第1面固定読取部は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第1コンタクトガラスの直下に配設されている。そして、ADF51によって搬送される原稿MSが第1コンタクトガラス上を通過する際に、光源から発した光を原稿面で順次反射させながら、複数の反射ミラーを経由させて画像読取センサで受光する。これにより、光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、原稿MSの第1面を走査する。また、第2面固定読取部は、第1面固定読取部を通過した後の原稿MSの第2面を走査する。
【0035】
スキャナ150の上に配設されたADF51は、図示しない蝶番によって上下方向に揺動可能に支持されている。そして、その揺動によって開閉扉のような動きをとり、開かれた状態でスキャナ150の上面の第1コンタクトガラスや第2コンタクトガラスを露出させる。原稿束の片隅を綴じた本などの片綴じ原稿の場合には、原稿を1枚ずつ分離することができないため、ADFによる搬送を行うことができない。そこで、片綴じ原稿の場合には、ADF51を開いた後、読み取らせたいページが見開かれた片綴じ原稿を下向きにして第2コンタクトガラスに載せた後、ADF51を閉じる。そして、スキャナ150の移動読取部によってそのページの画像を読み取らせる。
【0036】
一方、互いに独立した複数の原稿MSを単に積み重ねた原稿束の場合には、その原稿MSをADF51によって1枚ずつ自動搬送しながら、スキャナ150内の第1面固定読取部やADF内の第2面固定読取部に順次読み取らせていくことができる。この場合、原稿束を原稿載置台上にセットした後、図示しないコピースタートボタンを押す。すると、ADF51が、原稿載置台上に載置された原稿束の原稿MSを上から順にADF51内に送り、それを反転させながら搬送する。この搬送の過程で、原稿MSを反転させた直後にスキャナ150の第1面固定読取部の真上に通す。このとき、原稿MSの第1面の画像がスキャナ150の第1面固定読取部によって読み取られる。
【0037】
原稿のカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
【0038】
各色のプロセスユニット3Y,M,C,Kに用いられるK,Y,C,Mトナーとしては、高画質画像を実現するために、重量平均粒径4〜8[μm]であるものが用いられている。重量平均粒径が3[μm]未満であると、飛散による機内汚れを引き起こしたり、低湿環境下での画像濃度を低下させたり、感光体クリーニング不良を引き起こしたりという不具合を発生させ易くなってしまう。また、重量平均粒径が8[μm]を超えると、100[μm]以下の微小スポットを現像する際にスポット周囲への飛び散りを発生させ易くなる。なお、トナーの重量平均粒径や円形度については、フロー式粒子像分析装置FPIA−1000(東亜医用電子株式会社製)を用いて測定することが可能である。
【0039】
トナーの粒径や粒径分布としては、体積平均粒径が6[μm]で、粒径5[μm]以下の粒子の割合が60〜80個数[%]であることが望ましい。トナーの母材樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などを適宜選択することができる。
【0040】
トナーの母粒子を構成する樹脂としては、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレンメタクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、テルペン樹脂、ポリオール樹脂等が上げられる。また、ビニル樹脂としては、ポリスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体:スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体:ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。
【0041】
ポリエステル樹脂としては、次に例示するA群中の2価のアルコールと、B群中の二塩基酸塩とからなるものであり、さらにC群中の3価以上のアルコールあるいはカルボン酸を第三成分として加えたものであってもよい。
・A群:エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4ブテンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3,3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2,0)−2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等。
・B群:マレイン酸、フマール酸、メサコニン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタール酸、イソフタール酸、テレフタール酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、リノレイン酸、またはこれらの酸無水物または低級アルコールのエステル等。
・C群:グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上のアルコール、トリメリト酸、ピロメリト酸等の3価以上のカルボン酸等。ポリオール樹脂としては、エポキシ樹脂と2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物、もしくはそのグリシジルエーテルとエポキシ基と反応する活性水素を分子中に1個有する化合物と、エポキシ樹脂と反応する活性水素を分子中に2個以上有する化合物を反応してなるもの。
【0042】
トナーに含有させる顔料としては、次のようなものが挙げられる。即ち、黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物等である。また、黄色顔料としては、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等が挙げられる。また、橙色顔料としては、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK等が挙げられる。また、赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等が挙げられる。また、紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等が挙げられる。また、青色顔料としては、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等が挙げられる。また、緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ等が挙げられる。
【0043】
それら顔料については、単独で使用してもよいし、2種類以上を混ぜて使用してもい。カラートナーにおいては、良好な顔料の均一分散が必須となるため、顔料を大量の樹脂中に直接投入するのではなく、高濃度に顔料を分散させたマスターバッチを作製し、それを希釈して投入する方式が用いらる。この場合、一般的には、分散性を助けるために溶剤が使用されるが、環境等を配慮して水で分散させてもよい。水を使用する場合、マスターバッチ中の残水分が問題にならないように、温度コントロールが重要になる。
【0044】
トナー粒子には、電荷制御剤を粒子内部に分散(内添)させている。電荷制御剤により、現像システムに応じた最適の電荷量コントロールが可能となり、粒度分布と電荷量とのバランスの安定化を図ることができる。トナーを正電荷性に制御するものとして、ニグロシンおよび四級アンモニウム塩、トリフェニルメタン系染料、イミダゾール金属錯体や塩類を、単独あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。また、トナーを負電荷性に制御するものとしてサリチル酸金属錯体や塩類、有機ホウ素塩類、カリックスアレン系化合物等が用いられる。また、本発明におけるトナーには定着時のオフセット防止のために離型剤を内添することが可能である。離型剤としては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックスなどの天然ワックス、モンタンワックスおよびその誘導体、パラフィンワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、サゾールワックス、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキルリン酸エステル等がある。これら離型剤の融点は65〜90℃であることが好ましい。この範囲より低い場合には、トナーの保存時のブロッキングが発生しやすくなり、この範囲より高い場合には定着ローラ温度が低い領域でオフセットが発生しやすくなる場合がある。
【0045】
離型性を高めたり、分散性を向上さえたりする狙いから、トナー粒子に添加剤を加えても良い。添加剤としては、スチレンアクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレンメタクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、テルペン樹脂、ポリオール樹脂等が挙げられ、それらを2種以上混合しても良い。ポリエステル樹脂としては、結晶性ポリエステルを用いても良い。結晶性を有し、分子量分布がシャープでかつその低分子量分の絶対量を可能な限り多くした脂肪族系ポリエステルである。この樹脂はガラス転移温度(Tg)において結晶転移を起こすと同時に、固体状態から急激に溶融粘度が低下し、紙への定着機能を発現する。この結晶性ポリエステル樹脂の使用により、樹脂のTgや分子量を下げ過ぎることなく低温定着化を達成することができる。そのため、Tg低下に伴なう保存性の低下はない。また、低分子量化に伴なう高すぎる光沢や耐オフセット性の悪化もない。したがってこの結晶性ポリエステル樹脂の導入は、トナーの低温定着性の向上に非常に有効である。
【0046】
流動性を向上させる狙いから、無機微粉体をトナー表面に付着または固着させてもよい。この無機微粉体の平均粒径は10〜200[nm]が適している。10[nm]より小さい粒径の場合には流動性に効果のある凹凸表面を作り出すことが難しく、200[nm]より大きい粒径の場合には粉体形状がラフになり、トナー形状の問題が生じる。
【0047】
前述の無機微粉体としてはSi、Ti、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、In、Ga、Ni、Mn、W、Fe、Co、Zn、Cr、Mo、Cu、Ag、V、Zr等の酸化物や複合酸化物が挙げられる。これらのうち二酸化珪素(シリカ)、二酸化チタン(チタニア)、アルミナの微粒子が好適に用いられる。さらに、疎水化処理剤等により表面改質処理することが有効である。疎水化処理剤の代表例としては以下のものが挙げられる。即ち、ジメチルジクロルシラン、トリメチルクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルジクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、p−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、クロルメチルトリクロルシラン、ヘキサフェニルジシラザン、ヘキサトリルジシラザン等である。
【0048】
無機微粉体はトナーに対して0.1〜2重量%の割合で添加することが好ましい。0.1重量%未満では、トナー凝集を改善する効果が乏しくなり、2重量%を超える場合は、細線間のトナー飛び散り、機内の汚染、感光体の傷や摩耗等の問題が生じやすい傾向があるからである。
【0049】
また、少なくとも、樹脂、顔料からなる粉体の表面に電荷制御剤を付着または固着させ、粉体表面形状を小さな周期と大きな周期を持つようにしても良い。その平均粒径は10〜200[nm]の小さい粒径のものが最適である。10[nm]より小さい粒径の場合には流動性に効果のある凹凸表面を作り出すことが難しく、200[nm]より大きい粒径の場合には粉体形状がラフになり、トナー形状の問題が生じる。
【0050】
また、実質的な悪影響を与えない範囲内で、他の添加剤、例えばテフロン(登録商標)粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末;あるいは酸化セリウム粉末、炭化珪素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末などの研磨剤を、現像性向上剤として少量添加してもよい。
【0051】
混練り工程や粉砕工程を用いないで作製するスプレードライ法などで作製したトナー、カプセルトナーであってもよい。
【0052】
トナーの抵抗調整については、母材樹脂に含有、分散せしめる導電性材料の量調整によって行う。カーボン系の導電性材料としては、アセチルブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、炭素繊維、黒鉛等を例示することができる。また、金属系の導電性材料としては、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、Cu、Ni等の金属粉末を例示することができる。これらを適宜トナーバインダ樹脂に分散させて、電気抵抗を調整する。
【0053】
現像剤中に含有させる磁性粒子は、その径が20〜80[μm]で、金属もしくは樹脂をコアとしてマグネタイト、フェライト等の磁性材料を含有し、表層はトナーと摩擦帯電による電荷付与を効率的に行うためにトナーと逆極性に帯電し易い材料をコートしている。かかる材料として、シリコーン樹脂及び二酸化アンモニウムを含む材料等を例示することができる。スチレン−アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブチラール樹脂、スチロール樹脂などでもよい。ベースになるフェライト系材料は、1250〜1300[℃]で3〜5時間焼成された後、クラッシャー等によって粉砕され、所望の粒径分布を有するように加工する。磁性粒子の質量を低下させる狙いで、ベースを樹脂とし、磁性体粒子を混ぜ込む方式でも作製してもよい。
【0054】
磁性粒子の粒径は20〜80[μm]の範囲が好適である。実施形態に係る複写機では、Y,M,C,Kの各色ともに、磁性粒子として、小粒径磁性粒子と大粒径磁性粒子との2種類を含有する現像剤を使用している。
【0055】
図9は、1種類の磁性粒子のみを含有する現像剤の現像領域における磁性粒子の挙動を説明するための拡大模式図である。1種類の磁性粒子のみしか含有しない現像剤の場合、図示のように、現像スリーブ12上の磁気ブラシにおいて、最も先端側に存在する磁性粒子Cが感光体4と摺擦するのに伴って自転しながら、ブラシ根本側の磁性粒子Cとほぼ同じ速度で移動する。
【0056】
図10は、2種類の磁性粒子を含有する現像剤の現像領域における磁性粒子の挙動を説明するための拡大模式図である。2種類の磁性粒子を含有する現像剤の場合、大粒径磁性粒子Cbの方が小粒径磁性粒子Csに比べて粒子1個あたりの磁化量が大ききことから、小粒径磁性粒子Csよりも強い力でスリーブ表面に引き寄せられる。そして、磁気ブラシの根本側は殆ど大粒径磁性粒子Cbだけとなる。これに対し、磁気ブラシの先端側は、小粒径磁性粒子の密度が大粒径磁性粒子よりも高くなる。根本側の大粒径磁性粒子はスリーブ表面に向けて強く拘束されながら、スリーブ表面の動きに良好に追従して移動する。このとき、磁気ブラシの先端側の小粒径磁性粒子を押しのけるように移動する。磁気ブラシの先端の小粒径磁性粒子は、感光体4表面に摺擦して活発に自転しながら、スリーブ表面移動方向に大粒径磁性粒子よりも遅れて移動する。
【0057】
実施形態に係る複写機においては、Y,M,C,Kの何れの色においても、小粒径磁性粒子と大粒径磁性粒子との重量比を50(wt%):50(wt%)としている。大粒径磁性粒子としては、平均粒径が75[μm]であるものを用いている。大粒径磁性粒子の母材としては、飽和磁化量が90[emu/g]のマグネタイトを使用している。また、小粒径磁性粒子としては、平均粒径が25[μm]であるものを用いている。小粒径磁性粒子の母材としては、飽和磁化量が67[emu/g]のMnMgフェライトを使用している。
【0058】
感光体4Y,M,C,Kとしては、表面層中にフィラーを含有した有機電子写真感光体を用いている。本発明に係る画像形成装置に用いられる有機電子写真感光体としては、導電性基体上に有機感光層を設けてなる電子写真感光体として広く一般に知られたものを使用することができる。中でも、電荷発生層と電荷輸送層とを順次積層した機能分離型の感光体が性能面から好適である。
【0059】
感光体の導電性支持体としては、Al、Ni、Fe、Cu、Au等の金属若しくは合金、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド等のプラスチック、ガラス等の絶縁性基板上にAl、Ag、Au等の金属膜若しくはIn2O3、SnO2等の金属酸化物膜を設けたもの、などを用いることができる。
【0060】
機能分離型の感光体は、導電性支持体上に電荷発生層と電荷輸送層とを積層して形成される。電荷発生層は電荷発生物質のみから形成されていても、あるいは電荷発生物質がバインダー中に均一に分散されて形成されていてもよい。電荷発生層はこれらの成分を適当な溶媒中に分散し、これを導電性支持体上に塗布、乾燥することにより形成される。
【0061】
電荷発生物質としては、例えばシーアイピグメントブルー25(カラーインデックス(CI)21180)、シーアイピグメントレッド52(CI45100)、シーアイベーシックレッド3(CI45210)等の他に、ポルフィリン骨格を有するフタロシアニン系顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−95033号に記載)、スチルベン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−138229号に記載)、ジスチリルベンゼン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−133455号に記載)、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−132547号に記載)、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−21728号に記載)、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−12742号に記載)、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−22834号に記載)、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−17733号に記載)、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−2129号に記載)、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−17734号に記載)、カルバゾール骨格を有するトリスアゾ顔料(特開昭57−195767号、同57−195758号に記載)、等、更にはシーアイピグメントブルー16(CI74100)等のフタロシアニン系顔料、シーアイバットブラウン5(CI173410)等のインジゴ顔料、アルゴスカーレッドB(バイオレット社製)インダンスレンスカーレットR(バイエル社製)等のペリレン系顔料、スクエアリック顔料等の有機顔料を使用することができる。
【0062】
バインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド等が用いられる。
【0063】
バインダー樹脂の量は電荷発生物質100重量部に対して5〜100重量部、好ましくは10〜50重量部が適当である。バインダー樹脂の溶媒としてはテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ジクロロメタン、エチルセルソルブ等の単独溶媒または混合溶媒が好ましい。
【0064】
電荷発生層の平均膜厚は0.01〜2[μm]、好ましくは0.1〜1[μm]である。電荷輸送層は電荷輸送物質、バインダー樹脂及び必要ならば可塑剤、レベリング剤を適当な溶媒に溶解し、これを電荷発生層上に塗布し乾燥することにより形成される。
【0065】
電荷輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメート及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−スチルベン誘導体等の電子供与性物質が挙げられる。
【0066】
バインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0067】
電荷輸送層を形成するための溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、モノクロルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、シクロヘキサノン、ジクロロメタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン及びこれらの混合溶媒が望ましい。
【0068】
電荷輸送層の膜厚は10〜100μm、好ましくは20〜40μmである。なお、接着性、電荷ブロッキング性を向上させるために、必要に応じて導電性支持体と電荷発生層との間に下引き層を設けてもよい。更に、耐摩耗性を向上させるために最表面に保護層を設けても良い。
【0069】
耐摩耗性を向上させるために、感光体の表面層中にフィラーを含有させることが望ましい。表面層とは、感光体の最表面に設けられた層のことであり、一般的には電荷輸送層或いは保護層である。表面層中に含有されるフィラーとしては、有機フィラーと無機フィラーのどちらを用いても良いが、無機フィラーが特に好ましく用いられる。
【0070】
有機フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられ、無機フィラー材料としては、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物、チタン酸カリウム、窒化硼素等が挙げられる。これらのフィラーは単独で用いても、或いは2種以上を混合して用いても良い。また、分散性を向上させるために、これらのフィラーは表面処理剤で表面処理を行っても良い。
【0071】
これらのフィラーはボールミル、サンドミル等公知の手段で表面層塗工液中に分散させ、使用することができる。フィラーの含有量としては、全固形分に対して5〜40重量%が好ましく、更に好ましくは10〜30[%]である。また、フィラーの体積平均粒径は、分散性及び感光体作製時の塗膜表面に形成される凹凸形状の面から、0.05〜1.0[μm]が好ましい。なお、対クリーニング性向上、耐摩耗性向上の目的で感光体表面に滑剤を塗布するが、実施形態に係る複写機では滑材を塗布していない。
【0072】
次に、現像領域における磁性粒子の挙動について説明する。
図11は、1種類の磁性粒子しか含有していない現像剤を感光体及び現像スリーブとともに示す拡大模式図である。1種類の磁性粒子しか含有していない現像剤では、磁気ブラシの穂の最先端に位置する磁性キャリアCが、図中矢印Aで示すように感光体4との摺擦によって活発に自転する。これにより、自らの表面全域のトナー粒子Tを感光体4のハーフトーン部に転移させることができる。最先端に位置する磁性キャリアCだけでは、ハーフトーン部におけるベタ部との境界付近に対するトナー供給量が不足してしまう。しかし、1種類の磁性粒子しか存在していない図示の例では、最先端に位置する磁性キャリアCが活発に自転するのに伴って、図中矢印Bで示すように、最先端に位置する磁性キャリアCと、それよりも下に位置する磁性キャリアCとが活発に入れ替わる。このため、ハーフトーン部におけるベタ部との境界付近において、重度の白抜けが発生することはなかった。
【0073】
ところが、2種類の磁性粒子を含有する現像剤の場合には、先に図10に示したように、磁気ブラシの穂の先端がほぼ小粒径磁性粒子Csだけとなる。その先端の小粒径磁性粒子が活発に自転しても、その下に存在する大粒径磁性粒子Cbは、更にその下の大粒径磁性粒子と強く吸着し合っているため、殆ど自転しない。そして、自転しないまま、先端に存在する小粒径磁性粒子を押しのけるようにして現像領域を通過する。このため、現像に寄与した小粒径磁性粒子Csと、現像に寄与しない小粒径磁性粒子Csとの入れ替わりが起きずに、ハーフトーン部におけるベタ部との境界付近において、重度の白抜けを発生させてしまうことがわかった。
【0074】
次に、実施形態に係る複写機の特徴的な構成について説明する。
実施形態に係る複写機においては、先に図2に示したように、感光体4Yと現像スリーブ12Yとが対向する現像領域で、両者を互いに逆方向に表面移動させるように、それぞれを回転駆動している。このようにすると、現像領域内において、図3に示すように、感光体4Yの表面が自らに摺擦している小粒径磁性粒子Csを介して大粒径磁性粒子に対してその移動方向とは逆方向に向かう力を付与して、穂の先端部に存在する大粒径磁性粒子Cbを活発に転がす。感光体4Yの表面の近くでは、表面に小粒径磁性粒子Csを吸着させている大粒径磁性粒子Cbが活発に転がることで、小粒径磁性粒子Csが活発に入れ替わる。これにより、感光体4Y上のハーフトーンベタ部の文字周辺領域にトナー粒子が良好に供給されるようになる。よって、ハーフトーンベタ部の文字周辺領域の白抜けを従来よりも軽減することができる。なお、Y用のプロセスユニット3Yだけでなく、他色のプロセスユニット3M,C,Kにおいても、同様にして、現像スリーブを感光体とは逆方向に表面移動させている。
【0075】
現像スリーブ上の磁気ブラシの穂先端部に存在している大粒径磁性粒子の現像領域中における攪乱回数と、感光体の磁性粒子に対する表面摩擦係数μとの関係を調べる実験を行った。現像スリーブの線速については、絶対値で感光体の線速の1.5倍に設定した。この条件で、現像領域における現像剤の挙動を高速度カメラで撮影し、それを低速再生して観察して、大粒径磁性粒子の攪乱回数を測定した。
【0076】
大粒径磁性粒子の攪乱回数については、次のようにして測定した。即ち、図5に示すように、現像領域において、感光体4に比較的近い位置で領域を上下2段に分けるとともに、スリーブ表面移動方向に領域を8つに分けた。これにより、上下段にそれぞれ8つの領域、合計で16個の領域を現像領域中で定義した。そして、まず、現像領域の入口に進入した直後の磁気ブラシの穂の先端部、即ち、図中の「領域1」に進入した穂の中の大粒径磁性粒子の個数を数える。次いで、その穂が現像スリーブ12の回転に伴って図中右側から左側へと現像領域を通過する過程で、初めに「領域1」に存在していた大粒径磁性粒子Cbの全量のうち、攪乱を起こした大粒径磁性粒子Cbの数を数える。攪乱とは、図6や図7に示すように、大粒径磁性粒子Cbが上段から下段に移動したり、更にその下の段に移動したりする現像である。これに対し、図8に示すように、「領域1」から「領域8」に至るまで下段に移動しなかった大粒径磁性粒子Cbは、攪乱を起こしていないことになる。また、同じ大粒径磁性粒子について、例えば上段から下段へ、下段から上段へ、下段から更に下の段へ、などといった具合に、段間での移動が複数回あった場合には、その都度、攪乱があったものとして攪乱回数に1を加算する。よって、1つの大粒径磁性粒子が現像領域を通過していく過程で、2回以上の攪乱を起こす場合もある。
【0077】
図4は、現像スリーブ上の磁気ブラシの穂先端部に存在している大粒径磁性粒子の現像領域中における攪乱回数と、感光体の現像剤に対する表面摩擦係数μとの関係を示すグラフである。同図において、順現像は、従来と同様に、現像スリーブ12を現像領域で感光体4と同じ方向に移動させた場合を表している。また、逆現像は、現像スリーブ12を現像領域で感光体4と逆方向に移動させた本発明の特徴的な構成を表している。図示のように、感光体の表面における磁性粒子に対する摩擦係数が0.2以下である場合には、逆現像であっても、順現像と同様に大粒径磁性粒子Cbを攪乱させることが殆どできていない(順現像の攪乱回数=0.13回、逆現像の攪乱回数=0.15回)。順現像の場合には、感光体の表面摩擦係数μを高くしても攪乱回数を増やすことが殆どできていないのに対し、逆現像の場合には、表面摩擦係数μを高くすることで攪乱回数を飛躍的に増加させることがわかる。感光体の表面がそれに摺擦している小粒径磁性粒子Csを高い摩擦係数で勢い良く自転させ、それに伴って大粒径磁性粒子Cbを活発に自転させることが可能になるからである。
【0078】
図示のように、感光体4の磁性粒子に対する表面摩擦係数μを0.6以上にすることで、攪乱回数を1回以上にすることが可能になることがわかる。回覧回数が1回以上であるということは、現像領域の入口で図5の「領域1」に位置していた大粒径磁性粒子Cbの全てを現像領域通過までに攪乱させたことを意味している。このようにすることで、現像領域の入口付近で現像に寄与した後、他の小粒径磁性粒子Csと入れ替わることなく感光体に摺擦したまま現像領域を通過してしまう小粒径磁性粒子Csをほぼ無くして、白抜けの発生を有効に抑えることができる。そこで、実施形態に係る複写機においては、感光体4Y,M,C,Kとして、磁性粒子に対する表面摩擦係数μが0.6以上であるものを用いている。
【0079】
これまで、本発明をタンデム型のカラー複写機に適用した例について説明したが、モノクロ機にも、本発明の適用が可能である。
【0080】
以上、実施形態に係る複写機においては、感光体4Y,M,C,Kとして、現像剤中の磁性粒子に対する表面摩擦係数μが0.6以上であるものを用いているので、現像領域の入口付近で現像に寄与した後、他の小粒径磁性粒子Csと入れ替わることなく感光体に摺擦したまま現像領域を通過してしまう小粒径磁性粒子Csをほぼ無くして、白抜けの発生を有効に抑えることができる。
【0081】
また、実施形態に係る複写機においては、大粒径磁性粒子Cbとして、小粒径磁性粒子Csよりも飽和磁磁化量が大きいものを現像剤収容部たる攪拌部7(Y,M,C,K)に収容している。かかる構成では、粒子1個あたりの磁化量のより大きい大粒径磁性粒子Cbによって磁気ブラシの穂の骨格を形成しつつ、穂の先端部に小粒径磁性粒子Csを吸着させて、現像領域にて、小粒径磁性粒子Csを主に現像に寄与させることができる。
【0082】
また、実施形態に係る複写機においては、感光体4とこれの表面を一様に帯電せしめる帯電手段23とを1つのユニットとして共通の保持体に保持させて複写機本体に対して一体的に着脱可能にしたプロセスユニット3として構成しているので、感光体4等を一体的に容易に交換することができる。
【符号の説明】
【0083】
3Y,M,C,K:プロセスユニット
4Y,M,C,K:感光体(潜像担持体)
6Y:現像装置(現像手段)
7Y:攪拌部(現像剤収容部)
12Y:現像スリーブ(現像剤担持体)
13Y:マグネットローラ(磁気発生手段)
23Y:帯電装置(帯電手段)
Cs:小粒径磁性粒子
Cb:大粒径磁性粒子
T:トナー粒子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特開2007−102122号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粒子及びトナー粒子を含有する現像剤を、現像剤担持体に内包される磁気発生手段の磁力によって現像剤担持体の表面に担持して現像に用いる画像形成装置や画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置において、現像剤の磁性粒子として、平均粒径の比較的小さい小粒径磁性粒子を用いると、平均粒径の比較的大きい大粒径磁性粒子を用いる場合に比べて、現像装置内における磁性粒子の総表面積が大きくなる。すると、磁性粒子の単位体積あたりにおけるトナー担持量をより多くして、潜像に対して十分量のトナーを供給することが可能になるので、ハーフトーンベタ画像を繊細にムラ無く現像することができる。この反面、現像剤の流動性が悪くなったり、トナー粒子を磁性粒子表面に固着させ易くなったりするというデメリットがある。一方、大粒径磁性粒子を用いると、現像剤の流動性を向上させたり、磁性粒子表面に対するトナー固着を抑えたりすることができる。この反面、小粒径磁性粒子に比べてトナー粒子の担持量が少なくなることから、ハーフトーンベタ画像を繊細に現像することができずに、ぼそつきのある画像にしてしまうというデメリットがある。
【0003】
従来より、小粒径磁性粒子のデメリットを大粒径磁性粒子で補い、且つ大粒径磁性粒子のデメリットを小粒径磁性粒子で補う狙いから、磁性粒子として、それら2種類の磁性粒子を含有させた現像剤を用いるようにした画像形成装置が知られている(例えば特許文献1に記載のもの)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の画像形成装置においては、ハーフトーンベタ背景画像における文字画像との境界付近に白抜けを発生させ易くなるという問題があった。本発明者らは、かかる白抜けを発生させる原因として、文字周辺部へのトナーの供給不足が関与している可能性が高いと考えた。そこで、より多くのトナーを供給するために、プリンタ試験機を用いて、現像剤担持体たる現像スリーブの線速をより速めてテストプリントを行ってみた。現像領域における現像スリーブの表面移動方向については、従来から一般的に採用されてきた順方向(潜像担持体たる感光体と同じ方向)とした。この条件でプリントしたテスト画像においては、白抜けが僅かに改善されたが、白抜けのレベルを許容範囲にまで改善することはできなかった。
【0005】
次に、本発明者らは、現像領域における現像剤の挙動を高速度カメラで撮影した後、低速再生してみた。すると、次のようなことがわかってきた。即ち、現像スリーブの表面上では、主に大粒径磁性粒子同士が強く連結し合うことで、いわゆる穂立ちを起こして磁気ブラシを形成する。小粒径磁性粒子は、大粒径磁性粒子に比べて粒子1個あたりの磁化量が小さいことから、大粒径磁性粒子が密集している現像剤担持体の表面付近に入り込むことができない。このため、殆どの小粒径磁性粒子は、大粒径磁性粒子によって主に形成される磁気ブラシ中における個々の穂の先端部に吸着する。感光体と現像スリーブとが所定のギャップを介して対向している現像領域では、現像スリーブ上における磁気ブラシの穂の先端部を覆っている小粒径磁性粒子が、大粒径磁性粒子よりも優先して現像に寄与する。小粒径磁性粒子の中でも、感光体に直接接触している小粒径磁性粒子が、まず初めに現像に寄与する。これにより、感光体に直接接触している小粒径磁性粒子における感光体との対向面に付着しているトナーが失われる。良好な現像がなされるためには、このようにして感光体との対向面のトナーを失った小粒径磁性粒子が良好に転がって、それまで感光体とは反対側に向けていてトナーをまだ失っていない面を、新たに感光体に向ける必要がある。ところが、小粒径磁性粒子と大粒径磁性粒子とを含有する現像剤では、次に説明する理由により、小粒径磁性粒子が転がり難くなっている。即ち、感光体に直接接触している小粒径磁性粒子の下で磁気ブラシの骨格をなしている大粒径磁性粒子同士の連結による穂立ちは、連結の力が強固であるため、形崩れし難い。そして、自らが形崩れし難いことに加えて、感光体と自らとの間に介在させている小粒径磁性粒子の層も形崩れさせ難くしている。形崩れし難い層の中では、小粒径磁性粒子が転がり難いため、長時間に渡って同じ姿勢をとり続けて、スムーズな現像を阻害してしまう。更に、トナー粒子を失った感光体との対向面に、カウンターチャージによるトナーとは逆極性の電荷を保持し続けることで、周囲の磁性粒子のトナーを自らに引き寄せる電界を形成して、周囲の磁性粒子から感光体の潜像へのトナーの転移を妨げる。これらの結果、ハーフトーンベタ背景画像の文字周囲の領域に対するトナーの供給が不足して、白抜けが発生していたことがわかった。
【0006】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、次のような画像形成装置及び画像形成方法を提供することでる。即ち、小粒径磁性粒子及び大粒径磁性粒子の2種類の磁性粒子を用いる構成において、ハーフトーンベタ背景画像の文字周囲の領域における白抜けを従来よりも軽減することができる画像形成装置等である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、次のような実験結果に基づいて、本発明を完成させるに至った。即ち、現像スリーブの表面移動速度を速めて現像領域に対する単位時間あたりのトナー供給量を増やすことで、上述した白抜けをある程度までは改善することが可能であった。しかし、表面移動速度を速めすぎるとトナー飛散や現像剤こぼれを引き起こしてしまうため、速めるのには限界がある。そして、限界近くまで速めても、満足のいく結果が得られなかった。そこで、単位時間あたりのトナー供給量を増やす代わりに、現像領域において、感光体の表面の近くで磁気ブラシの穂の先端部を形成している大粒径磁性粒子を活発に動かすことを検討した。様々な条件で実験を繰り返したところ、現像領域にて、現像スリーブの表面を感光体とは逆方向に移動させることで、感光体の表面の近くに存在する大粒径磁性粒子を活発に動かして、それに伴って、感光体との接触位置にある小粒径磁性粒子を活発に入れ替えることができることを見出した。
【0008】
そこで、請求項1の発明は、平均粒径の比較的小さい小粒径磁性粒子、平均粒径の比較的大きい大粒径磁性粒子、及び、前記小粒径磁性粒子よりも小さい粒径のトナー粒子、を含有する現像剤を収容する現像剤収容部と、前記現像剤収容部内の現像剤を自らの周回移動する表面に担持する現像剤担持体と、前記現像剤担持体の周面のループよりも内側で前記周面に沿って並ぶように配設された複数の磁極の発する磁力により、現像剤を前記現像剤担持体の前記周面に引き寄せる磁気発生手段とを具備する現像手段を備え、前記現像剤担持体の表面移動により、現像剤を画像形成装置の潜像担持体に対向する現像領域に搬送し、該現像領域で現像剤中のトナーを前記潜像担持体の潜像に転移させて前記潜像を現像する画像形成装置において、前記潜像担持体と前記現像剤担持体とを前記現像領域で互いに逆方向に表面移動させることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、前記潜像担持体として、現像剤中の磁性粒子に対する表面摩擦係数が0.6以上であるものを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2の画像形成装置において、前記大粒径磁性粒子として、前記小粒径磁性粒子よりも飽和磁磁化量が大きいものを前記現像剤収容部に収容したことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れかの画像形成装置において、前記潜像担持体とこれの表面を一様に帯電せしめる帯電手段とを1つのユニットとして共通の保持体に保持させて画像形成装置本体に対して一体的に着脱可能にしたプロセスユニットとして構成したことを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、平均粒径の比較的小さい小粒径磁性粒子、平均粒径の比較的大きい大粒径磁性粒子、及び、前記小粒径磁性粒子よりも小さい粒径のトナー粒子、を含有する現像剤を収容する現像剤収容部の現像剤を、磁気発生手段を内包する現像剤担持体の周回移動する表面に担持し、前記現像剤担持体の表面移動によって潜像担持体に対向する現像領域に搬送し、該現像領域で現像剤中のトナーを前記潜像担持体の潜像に転移させて前記潜像を現像する画像形成方法において、前記潜像担持体と前記現像剤担持体とを前記現像領域で互いに逆方向に表面移動させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
これらの発明においては、現像剤担持体の表面を現像領域で潜像担持体とは逆方向に移動させることで、現像領域内で、潜像担持体の表面が自らに摺擦している小粒径磁性粒子を介して大粒径磁性粒子に対してその移動方向とは逆方向に向かう力を付与して、大粒径磁性粒子を活発に動かす。そして、感光体の表面の近くでは、表面に小粒径磁性粒子を吸着させている大粒径磁性粒子が活発に動くことで、潜像担持体との接触位置にある小粒径磁性粒子を活発に入れ替える。これにより、潜像担持体上のハーフトーンベタ背景画像の文字周辺領域にトナー粒子が良好に供給されるようになる。よって、ハーフトーンベタ背景画像の文字周辺領域の白抜けを従来よりも軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る複写機を示す概略構成図。
【図2】同複写機におけるY用のプロセスユニットを示す拡大構成図。
【図3】同プロセスユニットの現像領域における磁性粒子の挙動を説明するための拡大模式図。
【図4】同プロセスユニットにおける大粒径磁性粒子の現像領域中における攪乱回数と、感光体の現像剤に対する表面摩擦係数μとの関係を示すグラフ。
【図5】現像領域にて定義した各分割領域を説明するための模式図。
【図6】大粒径磁性粒子の攪乱の第1例を説明するための模式図。
【図7】大粒径磁性粒子の攪乱の第2例を説明するための模式図。
【図8】大粒径磁性粒子の未攪乱の状態を説明するための模式図。
【図9】1種類の磁性粒子しか含有しない現像剤の現像領域における磁性粒子の挙動を説明するための拡大模式図。
【図10】2種類の磁性粒子を含有する現像剤を用いる従来の現像装置の現像領域における磁性粒子の挙動を説明するための拡大模式図。
【図11】1種類の磁性粒子しか含有していない現像剤を感光体及び現像スリーブとともに示す拡大模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を、電子写真方式の複写機(以下、単に複写機という)に適用した実施形態について説明する。
まず、実施形態に係る複写機の基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係る複写機を示す概略構成図である。この複写機は、画像形成部1と、白紙供給装置40と、画像読取ユニット50とを備えている。画像読取装置としての画像読取ユニット50は、画像形成部1の上に固定されたスキャナ150と、これに支持されるシート搬送装置としての原稿自動搬送装置(以下、ADFという)51とを有している。
【0012】
白紙供給装置40は、給紙カセット42、給紙カセット42から記録紙を送り出す送出ローラ43、送り出された記録紙を分離して給紙路44に供給する分離ローラ45等を有している。また、画像形成部1の搬送路としての給紙路37に、シート状部材としての記録紙を搬送する複数の搬送ローラ47等も有している。そして、給紙カセット内の記録紙を画像形成部1内の給紙路37内に給紙する。
【0013】
画像形成部1は、光書込装置2や、イエロー,マゼンタ,シアン,ブラック(Y,M,C,K)のトナー像を形成する4つのプロセスユニット3Y,M,C,K、転写ユニット24、レジストローラ対33、定着装置34、給紙路37等を備えている。そして、光書込装置2内に配設された図示しないレーザーダイオードやLED等の光源を駆動して、ドラム状の4つの感光体4Y,M,C,Kに向けてレーザー光Lを照射する。この照射により、感光体4Y,M,C,Kの表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。
【0014】
図2は、Y用のプロセスユニット3Yを示す拡大構成図である。プロセスユニット3Yは、感光体4Yとその周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、画像形成部1本体に対して着脱可能になっている。詳しくは、感光体4Yの周りに、帯電装置23、現像装置6、ドラムクリーニング装置15、除電ランプ等を有している。
【0015】
先に示した図1において、本複写機は、4つのプロセスユニット3Y,M,C,Kを、後述する中間転写ベルト25に対してその無端移動方向に沿って並べるように対向配設した、いわゆるタンデム型の構成になっている。
【0016】
感光体4Y,M,C,Kとしては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。
【0017】
図2において、現像装置6Yは、図示しない磁性粒子と非磁性のトナー粒子とを含有する現像剤を用いて潜像を現像するようになっている。内部に収容している現像剤を攪拌しながら搬送して現像スリーブ12Yに供給する攪拌部7と、現像スリーブ12Yに担持された現像剤中のトナーを感光体4Yに転移させるための現像部11Yとを有している。
【0018】
攪拌部7Yは、現像部11Yよりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された2本の搬送スクリュウ8Y、これらスクリュウ間に設けられた仕切り板、ケーシングの底面に設けられたトナー濃度センサ10Yなどを有している。
【0019】
現像部11Yは、ケーシングの開口を通して感光体4Yに対向する現像スリーブ12Y、これの内部に回転不能に設けられた磁気発生手段としてのマグネットローラ13Y、現像スリーブ12Yに先端を接近させるドクタブレード14Yなどを有している。現像剤担持体としての現像スリーブ12Yは、非磁性の回転可能な筒状になっている。磁気発生手段としてのマグネットローラ13Yは、ドクタブレード14Yとの対向位置からスリーブの回転方向に向けて順次並ぶ複数の磁極を有している。これら磁極は、それぞれスリーブ上の現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部7Yから送られてくる現像剤を現像スリーブ12Yの表面に引き寄せて担持させるとともに、スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。
【0020】
現像剤は、ポリエステル樹脂を主成分とする平均粒径6[μm]のトナー粒子と、平均粒径25[μm]の小粒径磁性粒子と、平均粒径75[μm]の大粒径磁性粒子とを含有している。現像剤中のトナー濃度は、約7[wt%]程度であり、現像装置6Y内における現像剤の総重量は225[g]程度である。攪拌部7Y内の現像剤は、600[rpm]の速度で回転する搬送スクリュウ8Yによって撹拌搬送されてトナー粒子の摩擦帯電が促されながら、マグネットローラ13Yの磁力によって現像スリーブ12Y表面に汲み上げられる。そして、現像スリーブ12Yの回転に伴って現像領域に向けて搬送される途中で、トクターブレード14Yによってスリーブ表面上の層厚が規制されながら、摩擦帯電がさらに促される。トナーの帯電量としては、−10〜−50[μC/g]の範囲が好適であり、図示の複写機において実験室で数10枚の画像を印刷した後に帯電量を測定したところ、−35[μC/g]であった。
【0021】
現像スリーブ12Yは、直径20[mm]のアルミ製のパイプが加工されたものであって、その表面にはサウンドブラストやV字溝切削などによる粗面化処理が施されている。表面粗さRz(十点平均粗さ)は10〜30[μm]程度の範囲が良好であり、これより粗くなると保持量が極端に増加しトナーの電荷量が低減する。また10[μm]を下回ると十分な現像剤量が保持できなくなり、結果的に現像能力低下をきたす。スリーブ内部のマグネットローラ13Yは複数の永久磁石からなる磁極を有している。
【0022】
磁気ブラシは、現像スリーブ12Yの回転に伴ってドクタブレード14Yとの対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、感光体4Yに対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ12Yに印加される現像バイアスと、感光体4Yの静電潜像との電位差によってトナーを静電潜像上に転移させて現像に寄与する。更に、現像スリーブ12Yの回転に伴って再び現像部11Y内に戻り、マグネットローラ13Yの磁極間に形成される反発磁界の影響によってスリーブ表面から離脱した後、攪拌部7Y内に戻される。攪拌部7Y内には、トナー濃度センサ10Yによる検知結果に基づいて、現像剤に適量のトナーが補給される。
【0023】
現像領域において、感光体4Y表面と現像スリーブ12Y表面とが最接近する位置における両者間の距離は0.3[mm]に設定されている。現像スリーブ12Yの回転による単位面積あたりの現像剤搬送量は30[mg/cm2]程度である。
【0024】
マグネットローラ13Yは、現像領域に対向するピーク磁力100[mT]の現像磁極P1(N極)を有している。また、現像磁極P1から時計回り方向に少しずつずれた位置に、ピーク磁力85[mT]のP2磁極(S極)、ピーク磁力52[mT]のP3磁極(N極)、ピーク磁力70[mT]のP4磁極(S極)、ピーク磁力78[mT]のP5磁極(S極)を有している。P4磁極とP5磁極とが互いに同極の反発磁極になっており、現像領域を通過してきた現像剤をスリーブ表面から離脱させる役割を担っている。
【0025】
ドラムクリーニング装置15Yとしては、弾性体からなるクリーニングブレード16Yを感光体4Yに押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、本例では、外周面を感光体4Yに接触させる導電性のファーブラシ17Yを、図中矢印方向に回転自在に有する方式のものを採用している。このファーブラシ17Yは、図示しない固形潤滑剤18Yから潤滑剤を掻き取って微粉末にしながら感光体4Y表面に塗布する役割も兼ねている。クリーニングブレード16Yによって掻き取られた回収トナーは、回収スクリュウ19Yの回転によってクリーニング装置15Yの外に排出されて図示しない廃トナーボトル内に落下する。
【0026】
プロセスユニット3Y内に配設された図示しない除電ランプは、光照射によって感光体4Yを除電する。除電された感光体4Yの表面は、帯電装置23Yによって一様に帯電せしめられた後、光書込装置(図1の2)による光書込処理がなされる。なお、帯電装置23Yとしては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体4Yに当接させながら回転させるものを用いている。感光体4Yに対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
【0027】
先に示した図1において、4つのプロセスユニット3Y,M,C,Kの感光体4Y,M,C,Kには、Y,M,C,Kトナー像が形成される。4つのプロセスユニット3Y,M,C,Kの上方には、転写ユニット24が配設されている。ベルト駆動装置としての転写ユニット24は、複数のローラによって張架している中間転写ベルト25を、感光体4Y,M,C,Kに当接させながら図中反時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体4Y,M,C,Kと、無端状のベルト部材である中間転写ベルト25とが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。Y,M,C,K用の1次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された1次転写ローラ26Y,M,C,Kによって中間転写ベルト25を感光体4Y,M,C,Kに向けて押圧している。これら1次転写ローラ26Y,M,C,Kには、それぞれ図示しない電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、Y,M,C,K用の1次転写ニップには、感光体4Y,M,C,K上のトナー像を中間転写ベルト25に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。図中時計回り方向の無端移動に伴ってY,M,C,K用の1次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト25のおもて面には、各1次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト25のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0028】
中間転写ベルト25の図中右側方には、2次転写ローラ28が配設されており、ベルトループ内の2次転写対向ローラ27との間に中間転写ベルト25を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト25のおもて面と、2次転写ローラ28とが当接する2次転写ニップが形成されている。2次転写ローラ28には図示しない電源によって2次転写バイアスが印加されている。一方、ベルトループ内の2次転写対向ローラ27は接地されている。これにより、2次転写ニップに2次転写電界が形成されている。
【0029】
この2次転写ニップの図中下方には、レジストローラ対33が配設されている。また、レジストローラ対33のレジストニップの入口付近には、図示しないレジストローラセンサが配設されている。図示しない白紙供給装置からレジストローラ対33に向けて搬送されてくる記録紙Pは、その先端がレジストローラセンサに検知された所定時間後の搬送が一時停止し、レジストローラ対33のレジストニップに先端を突き当てる。この結果、記録紙Pの姿勢が修正され、画像形成との同期をとる準備が整う。
【0030】
記録紙Pの先願がレジストニップに突き当たると、レジストローラ対33は、記録紙Pを中間転写ベルト25上の4色トナー像に同期させ得るタイミングでローラ回転駆動を再開して、記録紙Pを2次転写ニップに送り出す。2次転写ニップ内では、中間転写ベルト25上の4色トナー像が2次転写電界やニップ圧の影響によって記録紙に一括2次転写され、記録紙の白色と相まってフルカラー画像となる。2次転写ニップを通過した記録紙は、中間転写ベルト25から離間して、紙搬送ベルト29のおもて面に保持されながら、その無端移動に伴って定着装置34へと搬送される。
【0031】
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト25の表面には、2次転写ニップで記録紙に転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト25に当接する図示しないベルトクリーニング装置によって掻き取り除去される。
【0032】
定着装置34に搬送された記録紙は、定着装置34内における加圧や加熱によってフルカラー画像が定着させしめられた後、定着装置34から排紙ローラ対35に送られた後、機外へと排出される。
【0033】
画像形成部1の上に固定されたスキャナ150やこれの上に固定されたADF51は、固定読取部や移動読取部を有している。移動読取部は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第2コンタクトガラスの直下に配設されており、光源や、反射ミラーなどを搭載した移動体としてのキャリッジを図中左右方向に移動させることができる。そして、キャリッジを図中左側から右側に移動させていく過程で、光源から発した光を第2コンタクトガラス上に載置された図示しない原稿で反射させた後、複数の反射ミラーを経由させてCCD等の撮像素子で読み取る。
【0034】
一方、固定読取部は、スキャナ150の内部に配設された第1面固定読取部と、ADF51内に配設された図示しない第2面固定読取部とを有している。光源、反射ミラー、CCD等の画像読取センサなどを有する第1面固定読取部は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された図示しない第1コンタクトガラスの直下に配設されている。そして、ADF51によって搬送される原稿MSが第1コンタクトガラス上を通過する際に、光源から発した光を原稿面で順次反射させながら、複数の反射ミラーを経由させて画像読取センサで受光する。これにより、光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、原稿MSの第1面を走査する。また、第2面固定読取部は、第1面固定読取部を通過した後の原稿MSの第2面を走査する。
【0035】
スキャナ150の上に配設されたADF51は、図示しない蝶番によって上下方向に揺動可能に支持されている。そして、その揺動によって開閉扉のような動きをとり、開かれた状態でスキャナ150の上面の第1コンタクトガラスや第2コンタクトガラスを露出させる。原稿束の片隅を綴じた本などの片綴じ原稿の場合には、原稿を1枚ずつ分離することができないため、ADFによる搬送を行うことができない。そこで、片綴じ原稿の場合には、ADF51を開いた後、読み取らせたいページが見開かれた片綴じ原稿を下向きにして第2コンタクトガラスに載せた後、ADF51を閉じる。そして、スキャナ150の移動読取部によってそのページの画像を読み取らせる。
【0036】
一方、互いに独立した複数の原稿MSを単に積み重ねた原稿束の場合には、その原稿MSをADF51によって1枚ずつ自動搬送しながら、スキャナ150内の第1面固定読取部やADF内の第2面固定読取部に順次読み取らせていくことができる。この場合、原稿束を原稿載置台上にセットした後、図示しないコピースタートボタンを押す。すると、ADF51が、原稿載置台上に載置された原稿束の原稿MSを上から順にADF51内に送り、それを反転させながら搬送する。この搬送の過程で、原稿MSを反転させた直後にスキャナ150の第1面固定読取部の真上に通す。このとき、原稿MSの第1面の画像がスキャナ150の第1面固定読取部によって読み取られる。
【0037】
原稿のカラー画像情報は、カラーセンサにてRGB(レッド、グリーン、ブルー)の色分解光ごとに読み取られた後に、電気的な画像信号に変換される。さらに、RGBの色分解画像信号をもとにして画像処理部で色変換処理、色補正処理、空間周波数補正処理等の処理をおこない、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのカラー画像情報を得る。
【0038】
各色のプロセスユニット3Y,M,C,Kに用いられるK,Y,C,Mトナーとしては、高画質画像を実現するために、重量平均粒径4〜8[μm]であるものが用いられている。重量平均粒径が3[μm]未満であると、飛散による機内汚れを引き起こしたり、低湿環境下での画像濃度を低下させたり、感光体クリーニング不良を引き起こしたりという不具合を発生させ易くなってしまう。また、重量平均粒径が8[μm]を超えると、100[μm]以下の微小スポットを現像する際にスポット周囲への飛び散りを発生させ易くなる。なお、トナーの重量平均粒径や円形度については、フロー式粒子像分析装置FPIA−1000(東亜医用電子株式会社製)を用いて測定することが可能である。
【0039】
トナーの粒径や粒径分布としては、体積平均粒径が6[μm]で、粒径5[μm]以下の粒子の割合が60〜80個数[%]であることが望ましい。トナーの母材樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合などを適宜選択することができる。
【0040】
トナーの母粒子を構成する樹脂としては、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレンアクリル樹脂、スチレンメタクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、シリコーン樹脂、ブチラール樹脂、テルペン樹脂、ポリオール樹脂等が上げられる。また、ビニル樹脂としては、ポリスチレン、ポリ−p−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体:スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体:ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。
【0041】
ポリエステル樹脂としては、次に例示するA群中の2価のアルコールと、B群中の二塩基酸塩とからなるものであり、さらにC群中の3価以上のアルコールあるいはカルボン酸を第三成分として加えたものであってもよい。
・A群:エチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4ブテンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3,3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2,0)−2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等。
・B群:マレイン酸、フマール酸、メサコニン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタール酸、イソフタール酸、テレフタール酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、マロン酸、リノレイン酸、またはこれらの酸無水物または低級アルコールのエステル等。
・C群:グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上のアルコール、トリメリト酸、ピロメリト酸等の3価以上のカルボン酸等。ポリオール樹脂としては、エポキシ樹脂と2価フェノールのアルキレンオキサイド付加物、もしくはそのグリシジルエーテルとエポキシ基と反応する活性水素を分子中に1個有する化合物と、エポキシ樹脂と反応する活性水素を分子中に2個以上有する化合物を反応してなるもの。
【0042】
トナーに含有させる顔料としては、次のようなものが挙げられる。即ち、黒色顔料としては、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物等である。また、黄色顔料としては、カドミウムイエロー、ミネラルファストイエロー、ニッケルンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等が挙げられる。また、橙色顔料としては、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK等が挙げられる。また、赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等が挙げられる。また、紫色顔料としては、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等が挙げられる。また、青色顔料としては、コバルトブルー、アルカリブルー、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等が挙げられる。また、緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ等が挙げられる。
【0043】
それら顔料については、単独で使用してもよいし、2種類以上を混ぜて使用してもい。カラートナーにおいては、良好な顔料の均一分散が必須となるため、顔料を大量の樹脂中に直接投入するのではなく、高濃度に顔料を分散させたマスターバッチを作製し、それを希釈して投入する方式が用いらる。この場合、一般的には、分散性を助けるために溶剤が使用されるが、環境等を配慮して水で分散させてもよい。水を使用する場合、マスターバッチ中の残水分が問題にならないように、温度コントロールが重要になる。
【0044】
トナー粒子には、電荷制御剤を粒子内部に分散(内添)させている。電荷制御剤により、現像システムに応じた最適の電荷量コントロールが可能となり、粒度分布と電荷量とのバランスの安定化を図ることができる。トナーを正電荷性に制御するものとして、ニグロシンおよび四級アンモニウム塩、トリフェニルメタン系染料、イミダゾール金属錯体や塩類を、単独あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。また、トナーを負電荷性に制御するものとしてサリチル酸金属錯体や塩類、有機ホウ素塩類、カリックスアレン系化合物等が用いられる。また、本発明におけるトナーには定着時のオフセット防止のために離型剤を内添することが可能である。離型剤としては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックスなどの天然ワックス、モンタンワックスおよびその誘導体、パラフィンワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、サゾールワックス、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキルリン酸エステル等がある。これら離型剤の融点は65〜90℃であることが好ましい。この範囲より低い場合には、トナーの保存時のブロッキングが発生しやすくなり、この範囲より高い場合には定着ローラ温度が低い領域でオフセットが発生しやすくなる場合がある。
【0045】
離型性を高めたり、分散性を向上さえたりする狙いから、トナー粒子に添加剤を加えても良い。添加剤としては、スチレンアクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレンメタクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、フェノール樹脂、ブチラール樹脂、テルペン樹脂、ポリオール樹脂等が挙げられ、それらを2種以上混合しても良い。ポリエステル樹脂としては、結晶性ポリエステルを用いても良い。結晶性を有し、分子量分布がシャープでかつその低分子量分の絶対量を可能な限り多くした脂肪族系ポリエステルである。この樹脂はガラス転移温度(Tg)において結晶転移を起こすと同時に、固体状態から急激に溶融粘度が低下し、紙への定着機能を発現する。この結晶性ポリエステル樹脂の使用により、樹脂のTgや分子量を下げ過ぎることなく低温定着化を達成することができる。そのため、Tg低下に伴なう保存性の低下はない。また、低分子量化に伴なう高すぎる光沢や耐オフセット性の悪化もない。したがってこの結晶性ポリエステル樹脂の導入は、トナーの低温定着性の向上に非常に有効である。
【0046】
流動性を向上させる狙いから、無機微粉体をトナー表面に付着または固着させてもよい。この無機微粉体の平均粒径は10〜200[nm]が適している。10[nm]より小さい粒径の場合には流動性に効果のある凹凸表面を作り出すことが難しく、200[nm]より大きい粒径の場合には粉体形状がラフになり、トナー形状の問題が生じる。
【0047】
前述の無機微粉体としてはSi、Ti、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、In、Ga、Ni、Mn、W、Fe、Co、Zn、Cr、Mo、Cu、Ag、V、Zr等の酸化物や複合酸化物が挙げられる。これらのうち二酸化珪素(シリカ)、二酸化チタン(チタニア)、アルミナの微粒子が好適に用いられる。さらに、疎水化処理剤等により表面改質処理することが有効である。疎水化処理剤の代表例としては以下のものが挙げられる。即ち、ジメチルジクロルシラン、トリメチルクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルジクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、p−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、クロルメチルトリクロルシラン、ヘキサフェニルジシラザン、ヘキサトリルジシラザン等である。
【0048】
無機微粉体はトナーに対して0.1〜2重量%の割合で添加することが好ましい。0.1重量%未満では、トナー凝集を改善する効果が乏しくなり、2重量%を超える場合は、細線間のトナー飛び散り、機内の汚染、感光体の傷や摩耗等の問題が生じやすい傾向があるからである。
【0049】
また、少なくとも、樹脂、顔料からなる粉体の表面に電荷制御剤を付着または固着させ、粉体表面形状を小さな周期と大きな周期を持つようにしても良い。その平均粒径は10〜200[nm]の小さい粒径のものが最適である。10[nm]より小さい粒径の場合には流動性に効果のある凹凸表面を作り出すことが難しく、200[nm]より大きい粒径の場合には粉体形状がラフになり、トナー形状の問題が生じる。
【0050】
また、実質的な悪影響を与えない範囲内で、他の添加剤、例えばテフロン(登録商標)粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末;あるいは酸化セリウム粉末、炭化珪素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末などの研磨剤を、現像性向上剤として少量添加してもよい。
【0051】
混練り工程や粉砕工程を用いないで作製するスプレードライ法などで作製したトナー、カプセルトナーであってもよい。
【0052】
トナーの抵抗調整については、母材樹脂に含有、分散せしめる導電性材料の量調整によって行う。カーボン系の導電性材料としては、アセチルブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、炭素繊維、黒鉛等を例示することができる。また、金属系の導電性材料としては、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)、Cu、Ni等の金属粉末を例示することができる。これらを適宜トナーバインダ樹脂に分散させて、電気抵抗を調整する。
【0053】
現像剤中に含有させる磁性粒子は、その径が20〜80[μm]で、金属もしくは樹脂をコアとしてマグネタイト、フェライト等の磁性材料を含有し、表層はトナーと摩擦帯電による電荷付与を効率的に行うためにトナーと逆極性に帯電し易い材料をコートしている。かかる材料として、シリコーン樹脂及び二酸化アンモニウムを含む材料等を例示することができる。スチレン−アクリル系樹脂、エポキシ樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ブチラール樹脂、スチロール樹脂などでもよい。ベースになるフェライト系材料は、1250〜1300[℃]で3〜5時間焼成された後、クラッシャー等によって粉砕され、所望の粒径分布を有するように加工する。磁性粒子の質量を低下させる狙いで、ベースを樹脂とし、磁性体粒子を混ぜ込む方式でも作製してもよい。
【0054】
磁性粒子の粒径は20〜80[μm]の範囲が好適である。実施形態に係る複写機では、Y,M,C,Kの各色ともに、磁性粒子として、小粒径磁性粒子と大粒径磁性粒子との2種類を含有する現像剤を使用している。
【0055】
図9は、1種類の磁性粒子のみを含有する現像剤の現像領域における磁性粒子の挙動を説明するための拡大模式図である。1種類の磁性粒子のみしか含有しない現像剤の場合、図示のように、現像スリーブ12上の磁気ブラシにおいて、最も先端側に存在する磁性粒子Cが感光体4と摺擦するのに伴って自転しながら、ブラシ根本側の磁性粒子Cとほぼ同じ速度で移動する。
【0056】
図10は、2種類の磁性粒子を含有する現像剤の現像領域における磁性粒子の挙動を説明するための拡大模式図である。2種類の磁性粒子を含有する現像剤の場合、大粒径磁性粒子Cbの方が小粒径磁性粒子Csに比べて粒子1個あたりの磁化量が大ききことから、小粒径磁性粒子Csよりも強い力でスリーブ表面に引き寄せられる。そして、磁気ブラシの根本側は殆ど大粒径磁性粒子Cbだけとなる。これに対し、磁気ブラシの先端側は、小粒径磁性粒子の密度が大粒径磁性粒子よりも高くなる。根本側の大粒径磁性粒子はスリーブ表面に向けて強く拘束されながら、スリーブ表面の動きに良好に追従して移動する。このとき、磁気ブラシの先端側の小粒径磁性粒子を押しのけるように移動する。磁気ブラシの先端の小粒径磁性粒子は、感光体4表面に摺擦して活発に自転しながら、スリーブ表面移動方向に大粒径磁性粒子よりも遅れて移動する。
【0057】
実施形態に係る複写機においては、Y,M,C,Kの何れの色においても、小粒径磁性粒子と大粒径磁性粒子との重量比を50(wt%):50(wt%)としている。大粒径磁性粒子としては、平均粒径が75[μm]であるものを用いている。大粒径磁性粒子の母材としては、飽和磁化量が90[emu/g]のマグネタイトを使用している。また、小粒径磁性粒子としては、平均粒径が25[μm]であるものを用いている。小粒径磁性粒子の母材としては、飽和磁化量が67[emu/g]のMnMgフェライトを使用している。
【0058】
感光体4Y,M,C,Kとしては、表面層中にフィラーを含有した有機電子写真感光体を用いている。本発明に係る画像形成装置に用いられる有機電子写真感光体としては、導電性基体上に有機感光層を設けてなる電子写真感光体として広く一般に知られたものを使用することができる。中でも、電荷発生層と電荷輸送層とを順次積層した機能分離型の感光体が性能面から好適である。
【0059】
感光体の導電性支持体としては、Al、Ni、Fe、Cu、Au等の金属若しくは合金、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド等のプラスチック、ガラス等の絶縁性基板上にAl、Ag、Au等の金属膜若しくはIn2O3、SnO2等の金属酸化物膜を設けたもの、などを用いることができる。
【0060】
機能分離型の感光体は、導電性支持体上に電荷発生層と電荷輸送層とを積層して形成される。電荷発生層は電荷発生物質のみから形成されていても、あるいは電荷発生物質がバインダー中に均一に分散されて形成されていてもよい。電荷発生層はこれらの成分を適当な溶媒中に分散し、これを導電性支持体上に塗布、乾燥することにより形成される。
【0061】
電荷発生物質としては、例えばシーアイピグメントブルー25(カラーインデックス(CI)21180)、シーアイピグメントレッド52(CI45100)、シーアイベーシックレッド3(CI45210)等の他に、ポルフィリン骨格を有するフタロシアニン系顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−95033号に記載)、スチルベン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−138229号に記載)、ジスチリルベンゼン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−133455号に記載)、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料(特開昭53−132547号に記載)、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−21728号に記載)、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−12742号に記載)、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−22834号に記載)、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−17733号に記載)、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−2129号に記載)、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料(特開昭54−17734号に記載)、カルバゾール骨格を有するトリスアゾ顔料(特開昭57−195767号、同57−195758号に記載)、等、更にはシーアイピグメントブルー16(CI74100)等のフタロシアニン系顔料、シーアイバットブラウン5(CI173410)等のインジゴ顔料、アルゴスカーレッドB(バイオレット社製)インダンスレンスカーレットR(バイエル社製)等のペリレン系顔料、スクエアリック顔料等の有機顔料を使用することができる。
【0062】
バインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド等が用いられる。
【0063】
バインダー樹脂の量は電荷発生物質100重量部に対して5〜100重量部、好ましくは10〜50重量部が適当である。バインダー樹脂の溶媒としてはテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン、メチルエチルケトン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ジクロロメタン、エチルセルソルブ等の単独溶媒または混合溶媒が好ましい。
【0064】
電荷発生層の平均膜厚は0.01〜2[μm]、好ましくは0.1〜1[μm]である。電荷輸送層は電荷輸送物質、バインダー樹脂及び必要ならば可塑剤、レベリング剤を適当な溶媒に溶解し、これを電荷発生層上に塗布し乾燥することにより形成される。
【0065】
電荷輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾール及びその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメート及びその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物及びその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、オキサゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリル)アントラセン、1,1−ビス(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−スチルベン誘導体等の電子供与性物質が挙げられる。
【0066】
バインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0067】
電荷輸送層を形成するための溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、モノクロルベンゼン、1,2−ジクロロエタン、シクロヘキサノン、ジクロロメタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン及びこれらの混合溶媒が望ましい。
【0068】
電荷輸送層の膜厚は10〜100μm、好ましくは20〜40μmである。なお、接着性、電荷ブロッキング性を向上させるために、必要に応じて導電性支持体と電荷発生層との間に下引き層を設けてもよい。更に、耐摩耗性を向上させるために最表面に保護層を設けても良い。
【0069】
耐摩耗性を向上させるために、感光体の表面層中にフィラーを含有させることが望ましい。表面層とは、感光体の最表面に設けられた層のことであり、一般的には電荷輸送層或いは保護層である。表面層中に含有されるフィラーとしては、有機フィラーと無機フィラーのどちらを用いても良いが、無機フィラーが特に好ましく用いられる。
【0070】
有機フィラー材料としては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、a−カーボン粉末等が挙げられ、無機フィラー材料としては、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、アンチモンをドープした酸化錫、錫をドープした酸化インジウム等の金属酸化物、フッ化錫、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム等の金属フッ化物、チタン酸カリウム、窒化硼素等が挙げられる。これらのフィラーは単独で用いても、或いは2種以上を混合して用いても良い。また、分散性を向上させるために、これらのフィラーは表面処理剤で表面処理を行っても良い。
【0071】
これらのフィラーはボールミル、サンドミル等公知の手段で表面層塗工液中に分散させ、使用することができる。フィラーの含有量としては、全固形分に対して5〜40重量%が好ましく、更に好ましくは10〜30[%]である。また、フィラーの体積平均粒径は、分散性及び感光体作製時の塗膜表面に形成される凹凸形状の面から、0.05〜1.0[μm]が好ましい。なお、対クリーニング性向上、耐摩耗性向上の目的で感光体表面に滑剤を塗布するが、実施形態に係る複写機では滑材を塗布していない。
【0072】
次に、現像領域における磁性粒子の挙動について説明する。
図11は、1種類の磁性粒子しか含有していない現像剤を感光体及び現像スリーブとともに示す拡大模式図である。1種類の磁性粒子しか含有していない現像剤では、磁気ブラシの穂の最先端に位置する磁性キャリアCが、図中矢印Aで示すように感光体4との摺擦によって活発に自転する。これにより、自らの表面全域のトナー粒子Tを感光体4のハーフトーン部に転移させることができる。最先端に位置する磁性キャリアCだけでは、ハーフトーン部におけるベタ部との境界付近に対するトナー供給量が不足してしまう。しかし、1種類の磁性粒子しか存在していない図示の例では、最先端に位置する磁性キャリアCが活発に自転するのに伴って、図中矢印Bで示すように、最先端に位置する磁性キャリアCと、それよりも下に位置する磁性キャリアCとが活発に入れ替わる。このため、ハーフトーン部におけるベタ部との境界付近において、重度の白抜けが発生することはなかった。
【0073】
ところが、2種類の磁性粒子を含有する現像剤の場合には、先に図10に示したように、磁気ブラシの穂の先端がほぼ小粒径磁性粒子Csだけとなる。その先端の小粒径磁性粒子が活発に自転しても、その下に存在する大粒径磁性粒子Cbは、更にその下の大粒径磁性粒子と強く吸着し合っているため、殆ど自転しない。そして、自転しないまま、先端に存在する小粒径磁性粒子を押しのけるようにして現像領域を通過する。このため、現像に寄与した小粒径磁性粒子Csと、現像に寄与しない小粒径磁性粒子Csとの入れ替わりが起きずに、ハーフトーン部におけるベタ部との境界付近において、重度の白抜けを発生させてしまうことがわかった。
【0074】
次に、実施形態に係る複写機の特徴的な構成について説明する。
実施形態に係る複写機においては、先に図2に示したように、感光体4Yと現像スリーブ12Yとが対向する現像領域で、両者を互いに逆方向に表面移動させるように、それぞれを回転駆動している。このようにすると、現像領域内において、図3に示すように、感光体4Yの表面が自らに摺擦している小粒径磁性粒子Csを介して大粒径磁性粒子に対してその移動方向とは逆方向に向かう力を付与して、穂の先端部に存在する大粒径磁性粒子Cbを活発に転がす。感光体4Yの表面の近くでは、表面に小粒径磁性粒子Csを吸着させている大粒径磁性粒子Cbが活発に転がることで、小粒径磁性粒子Csが活発に入れ替わる。これにより、感光体4Y上のハーフトーンベタ部の文字周辺領域にトナー粒子が良好に供給されるようになる。よって、ハーフトーンベタ部の文字周辺領域の白抜けを従来よりも軽減することができる。なお、Y用のプロセスユニット3Yだけでなく、他色のプロセスユニット3M,C,Kにおいても、同様にして、現像スリーブを感光体とは逆方向に表面移動させている。
【0075】
現像スリーブ上の磁気ブラシの穂先端部に存在している大粒径磁性粒子の現像領域中における攪乱回数と、感光体の磁性粒子に対する表面摩擦係数μとの関係を調べる実験を行った。現像スリーブの線速については、絶対値で感光体の線速の1.5倍に設定した。この条件で、現像領域における現像剤の挙動を高速度カメラで撮影し、それを低速再生して観察して、大粒径磁性粒子の攪乱回数を測定した。
【0076】
大粒径磁性粒子の攪乱回数については、次のようにして測定した。即ち、図5に示すように、現像領域において、感光体4に比較的近い位置で領域を上下2段に分けるとともに、スリーブ表面移動方向に領域を8つに分けた。これにより、上下段にそれぞれ8つの領域、合計で16個の領域を現像領域中で定義した。そして、まず、現像領域の入口に進入した直後の磁気ブラシの穂の先端部、即ち、図中の「領域1」に進入した穂の中の大粒径磁性粒子の個数を数える。次いで、その穂が現像スリーブ12の回転に伴って図中右側から左側へと現像領域を通過する過程で、初めに「領域1」に存在していた大粒径磁性粒子Cbの全量のうち、攪乱を起こした大粒径磁性粒子Cbの数を数える。攪乱とは、図6や図7に示すように、大粒径磁性粒子Cbが上段から下段に移動したり、更にその下の段に移動したりする現像である。これに対し、図8に示すように、「領域1」から「領域8」に至るまで下段に移動しなかった大粒径磁性粒子Cbは、攪乱を起こしていないことになる。また、同じ大粒径磁性粒子について、例えば上段から下段へ、下段から上段へ、下段から更に下の段へ、などといった具合に、段間での移動が複数回あった場合には、その都度、攪乱があったものとして攪乱回数に1を加算する。よって、1つの大粒径磁性粒子が現像領域を通過していく過程で、2回以上の攪乱を起こす場合もある。
【0077】
図4は、現像スリーブ上の磁気ブラシの穂先端部に存在している大粒径磁性粒子の現像領域中における攪乱回数と、感光体の現像剤に対する表面摩擦係数μとの関係を示すグラフである。同図において、順現像は、従来と同様に、現像スリーブ12を現像領域で感光体4と同じ方向に移動させた場合を表している。また、逆現像は、現像スリーブ12を現像領域で感光体4と逆方向に移動させた本発明の特徴的な構成を表している。図示のように、感光体の表面における磁性粒子に対する摩擦係数が0.2以下である場合には、逆現像であっても、順現像と同様に大粒径磁性粒子Cbを攪乱させることが殆どできていない(順現像の攪乱回数=0.13回、逆現像の攪乱回数=0.15回)。順現像の場合には、感光体の表面摩擦係数μを高くしても攪乱回数を増やすことが殆どできていないのに対し、逆現像の場合には、表面摩擦係数μを高くすることで攪乱回数を飛躍的に増加させることがわかる。感光体の表面がそれに摺擦している小粒径磁性粒子Csを高い摩擦係数で勢い良く自転させ、それに伴って大粒径磁性粒子Cbを活発に自転させることが可能になるからである。
【0078】
図示のように、感光体4の磁性粒子に対する表面摩擦係数μを0.6以上にすることで、攪乱回数を1回以上にすることが可能になることがわかる。回覧回数が1回以上であるということは、現像領域の入口で図5の「領域1」に位置していた大粒径磁性粒子Cbの全てを現像領域通過までに攪乱させたことを意味している。このようにすることで、現像領域の入口付近で現像に寄与した後、他の小粒径磁性粒子Csと入れ替わることなく感光体に摺擦したまま現像領域を通過してしまう小粒径磁性粒子Csをほぼ無くして、白抜けの発生を有効に抑えることができる。そこで、実施形態に係る複写機においては、感光体4Y,M,C,Kとして、磁性粒子に対する表面摩擦係数μが0.6以上であるものを用いている。
【0079】
これまで、本発明をタンデム型のカラー複写機に適用した例について説明したが、モノクロ機にも、本発明の適用が可能である。
【0080】
以上、実施形態に係る複写機においては、感光体4Y,M,C,Kとして、現像剤中の磁性粒子に対する表面摩擦係数μが0.6以上であるものを用いているので、現像領域の入口付近で現像に寄与した後、他の小粒径磁性粒子Csと入れ替わることなく感光体に摺擦したまま現像領域を通過してしまう小粒径磁性粒子Csをほぼ無くして、白抜けの発生を有効に抑えることができる。
【0081】
また、実施形態に係る複写機においては、大粒径磁性粒子Cbとして、小粒径磁性粒子Csよりも飽和磁磁化量が大きいものを現像剤収容部たる攪拌部7(Y,M,C,K)に収容している。かかる構成では、粒子1個あたりの磁化量のより大きい大粒径磁性粒子Cbによって磁気ブラシの穂の骨格を形成しつつ、穂の先端部に小粒径磁性粒子Csを吸着させて、現像領域にて、小粒径磁性粒子Csを主に現像に寄与させることができる。
【0082】
また、実施形態に係る複写機においては、感光体4とこれの表面を一様に帯電せしめる帯電手段23とを1つのユニットとして共通の保持体に保持させて複写機本体に対して一体的に着脱可能にしたプロセスユニット3として構成しているので、感光体4等を一体的に容易に交換することができる。
【符号の説明】
【0083】
3Y,M,C,K:プロセスユニット
4Y,M,C,K:感光体(潜像担持体)
6Y:現像装置(現像手段)
7Y:攪拌部(現像剤収容部)
12Y:現像スリーブ(現像剤担持体)
13Y:マグネットローラ(磁気発生手段)
23Y:帯電装置(帯電手段)
Cs:小粒径磁性粒子
Cb:大粒径磁性粒子
T:トナー粒子
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】特開2007−102122号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径の比較的小さい小粒径磁性粒子、平均粒径の比較的大きい大粒径磁性粒子、及び、前記小粒径磁性粒子よりも小さい粒径のトナー粒子、を含有する現像剤を収容する現像剤収容部と、前記現像剤収容部内の現像剤を自らの周回移動する表面に担持する現像剤担持体と、前記現像剤担持体の周面のループよりも内側で前記周面に沿って並ぶように配設された複数の磁極の発する磁力により、現像剤を前記現像剤担持体の前記周面に引き寄せる磁気発生手段とを具備する現像手段を備え、
前記現像剤担持体の表面移動により、現像剤を画像形成装置の潜像担持体に対向する現像領域に搬送し、該現像領域で現像剤中のトナーを前記潜像担持体の潜像に転移させて前記潜像を現像する画像形成装置において、
前記潜像担持体と前記現像剤担持体とを前記現像領域で互いに逆方向に表面移動させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
前記潜像担持体として、現像剤中の磁性粒子に対する表面摩擦係数が0.6以上であるものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2の画像形成装置において、
前記大粒径磁性粒子として、前記小粒径磁性粒子よりも飽和磁磁化量が大きいものを前記現像剤収容部に収容したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかの画像形成装置において、
前記潜像担持体とこれの表面を一様に帯電せしめる帯電手段とを1つのユニットとして共通の保持体に保持させて画像形成装置本体に対して一体的に着脱可能にしたプロセスユニットとして構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
平均粒径の比較的小さい小粒径磁性粒子、平均粒径の比較的大きい大粒径磁性粒子、及び、前記小粒径磁性粒子よりも小さい粒径のトナー粒子、を含有する現像剤を収容する現像剤収容部の現像剤を、磁気発生手段を内包する現像剤担持体の周回移動する表面に担持し、前記現像剤担持体の表面移動によって潜像担持体に対向する現像領域に搬送し、該現像領域で現像剤中のトナーを前記潜像担持体の潜像に転移させて前記潜像を現像する画像形成方法において、
前記潜像担持体と前記現像剤担持体とを前記現像領域で互いに逆方向に表面移動させることを特徴とする画像形成方法。
【請求項1】
平均粒径の比較的小さい小粒径磁性粒子、平均粒径の比較的大きい大粒径磁性粒子、及び、前記小粒径磁性粒子よりも小さい粒径のトナー粒子、を含有する現像剤を収容する現像剤収容部と、前記現像剤収容部内の現像剤を自らの周回移動する表面に担持する現像剤担持体と、前記現像剤担持体の周面のループよりも内側で前記周面に沿って並ぶように配設された複数の磁極の発する磁力により、現像剤を前記現像剤担持体の前記周面に引き寄せる磁気発生手段とを具備する現像手段を備え、
前記現像剤担持体の表面移動により、現像剤を画像形成装置の潜像担持体に対向する現像領域に搬送し、該現像領域で現像剤中のトナーを前記潜像担持体の潜像に転移させて前記潜像を現像する画像形成装置において、
前記潜像担持体と前記現像剤担持体とを前記現像領域で互いに逆方向に表面移動させることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
前記潜像担持体として、現像剤中の磁性粒子に対する表面摩擦係数が0.6以上であるものを用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2の画像形成装置において、
前記大粒径磁性粒子として、前記小粒径磁性粒子よりも飽和磁磁化量が大きいものを前記現像剤収容部に収容したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかの画像形成装置において、
前記潜像担持体とこれの表面を一様に帯電せしめる帯電手段とを1つのユニットとして共通の保持体に保持させて画像形成装置本体に対して一体的に着脱可能にしたプロセスユニットとして構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
平均粒径の比較的小さい小粒径磁性粒子、平均粒径の比較的大きい大粒径磁性粒子、及び、前記小粒径磁性粒子よりも小さい粒径のトナー粒子、を含有する現像剤を収容する現像剤収容部の現像剤を、磁気発生手段を内包する現像剤担持体の周回移動する表面に担持し、前記現像剤担持体の表面移動によって潜像担持体に対向する現像領域に搬送し、該現像領域で現像剤中のトナーを前記潜像担持体の潜像に転移させて前記潜像を現像する画像形成方法において、
前記潜像担持体と前記現像剤担持体とを前記現像領域で互いに逆方向に表面移動させることを特徴とする画像形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−174998(P2011−174998A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37365(P2010−37365)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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