画像表示装置、及び画像表示方法
【課題】表示体の周辺温度が急激に変化した場合に高い精度で温度補償が可能な画像表示装置、及び画像表示方法を提供する。
【解決手段】表示体に画像を表示する画像表示装置であって、表示体の温度変化速度を検出する温度変化速度検出部と、前記画像の画像データに応じて、前記表示体に前記画像を表示するための駆動条件を設定する駆動条件設定部と、前記検出された温度変化速度に応じて、前記設定された駆動条件を変更する駆動条件変更部と、前記駆動条件変更部により変更された駆動条件で前記表示体を駆動し、前記表示体に前記画像を表示する表示体駆動部と、を備える。
【解決手段】表示体に画像を表示する画像表示装置であって、表示体の温度変化速度を検出する温度変化速度検出部と、前記画像の画像データに応じて、前記表示体に前記画像を表示するための駆動条件を設定する駆動条件設定部と、前記検出された温度変化速度に応じて、前記設定された駆動条件を変更する駆動条件変更部と、前記駆動条件変更部により変更された駆動条件で前記表示体を駆動し、前記表示体に前記画像を表示する表示体駆動部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示装置、及び画像表示方法に関するもので、特に温度による特性の変化が大きい表示体を備えた画像表示装置に好適な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、種々の情報を画像として表示する画像表示装置において、記憶性の表示体を有する画像表示装置の実用化が進められている。記憶性の表示体は、書き換え時のみに電力を消費するので、通常の表示体に比べて圧倒的に消費電力が少ない。このため、電池容量を小さくして、画像表示装置を有する機器を小型化できるので、例えば電子ブックなどの機器に適した表示体として注目されている。
【0003】
このような記憶性の表示体としては、コレステリック液晶を表示材料として用いた表示体が挙げられる。そして、コレステリック液晶を用いた場合、特許文献1に開示されたコレステリック液晶の駆動方式としてのDDS(Dynamic Drive scheme)駆動方式により、画像の高速な書き換えを実現できる。
【特許文献1】米国特許第5748277号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、記憶性の表示体の表示材料は、このような利点を有する一方、温度によって粘度が変化しやすいという課題もある。このため、表示材料の温度を測定し、これに基づき表示体の各画素に印加する駆動電圧パルス印加時間、もしくは印加電圧値を変化させる等といった温度補償を通常行わなければならない。特に、上記コレステリック液晶をDDS駆動方式を用いて駆動する場合には、1℃以下の温度差を刻み幅とするステップで温度補償を行う必要があり、特に複数の階調表示をさせる場合は非常に厳しい精度で温度補償を行うことが要求される。
【0005】
ところで、表示材料の温度を測定する場合、通常表示材料を挟持する部材(ガラス、プラスチックなど)を介して測定するため、測定部分の温度と表示材料そのものの温度が異なる場合が生ずる。特に、表示体の周辺温度が時間とともに変化するような場合は、表示材料の温度が、測定された温度に到達するまでに相当の時間ズレが生ずるため、測定温度と実際の駆動時における表示材料の温度との間に温度差が生じてしまう。この温度差は、特に、例えば寒い戸外から暖かい室内へ移動した時など表示体の周辺温度が急激に変化した場合に大きく、単に測定温度の値に基づいてのみの温度補償では、十分な温度補償の精度を確保できないという課題がある。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、表示体の周辺温度が急激に変化した場合に高い精度で温度補償が可能な画像表示装置、及び画像表示方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は表示体に画像を表示する画像表示装置であって、前記表示体の温度変化速度を検出する温度変化速度検出部と、前記画像の画像データに応じて、前記表示体に前記画像を表示するための駆動条件を設定する駆動条件設定部と、前記検出された温度変化速度に応じて、前記設定された駆動条件を変更する駆動条件変更部と、前記駆動条件変更部により変更された駆動条件で前記表示体を駆動し、前記表示体に前記画像を表示する表示体駆動部と、を備えたことを要旨とする。
【0007】
このように構成することで、例えば、表示体を測定温度に基づく駆動条件の設定のみでは十分に温度補償を行えない場合にも、測定温度の経時変化、つまり温度変化速度に基づいて、追加の温度補償が可能である。したがって、表示材料自体の温度を測定できない場合でも、より精度の高い温度補償が実現できる。なお、本発明における駆動条件とは、少なくとも表示体の各画素に印加する駆動電圧パルスの印加時間、もしくは印加電圧値を決定するための条件である。また、本発明における駆動条件の変更とは、設定された駆動条件と同じ駆動条件を再設定することも含むものである。
【0008】
ここで、前記駆動条件変更部は、前記表示体駆動部による前記表示体の駆動中に、前記駆動条件を変更することとしてもよい。
例えば、表示体の温度変化速度が早い場合、表示体に1つの画像を表示すべく表示体の駆動を開始してから時間経過が長くなると、表示開始と表示終了時点で表示体の温度に大きな温度差が生じてしまい正しく画像を表示することができなくなる。そこで、表示体の駆動中に駆動条件を変更することで、駆動時における表示体の実際の温度に即した駆動条件で画像を表示することができる。この結果、より精度の高い温度補償が実現できる。
【0009】
また、本発明の画像表示装置は、前記検出された温度変化速度に応じて、前記画像を構成する画素の画像データとしての画素階調値を、前記表示体駆動部が表示する画像を構成する画素の画像データとなる表示階調値に変更設定する階調設定部を更に備え、前記駆動条件変更部は、前記変更設定された表示階調値を画像データとして前記駆動条件設定部が設定する駆動条件に、前記設定された駆動条件を変更することとしてもよい。
【0010】
こうすれば、温度変化速度に応じて、表示体に表示するための画像を構成する画素の階調値(画素階調値)を、実際に表示する画像を構成する画素の階調値(表示階調値)に変更変換し、変換された表示階調値の画像データに応じた駆動条件で表示体が駆動される。従って、実際に表示される画像は変換された表示階調値によって温度変化速度に応じて温度補償されることになり、この結果、温度変化に対して精度の良い温度補償が行えることになる。
【0011】
ここで、前記階調設定部は、前記温度変化速度が閾値を超える場合に、当該閾値以下の場合よりも前記表示される画像の階調表示数が少なくなるように、前記画素階調値を前記表示階調値に変更設定することとしてもよい。
温度変化速度が閾値を超えた場合は、後述するように、画像が本来表示すべき階調表示を行うことが困難な場合が存在する。このような場合、例えば白色か黒色かの2つの階調を表示するなど、階調表示数を少なくする。こうすれば、中間調(例えば灰色)を、黒色か白色かに前もって変更するので、例えば1つの文字が太くなったり細くなったりすることが回避され、温度変化に影響されない安定した画像を表示することができる。
【0012】
あるいは、前記階調設定部は、前記画素階調値と前記表示階調値との対応関係を規定するテーブルに基づいて、前記画素階調値を前記表示階調値に変更設定することとしてもよい。
こうすれば、温度変化速度を示す温度勾配に応じて、テーブルに基づいて画素階調値を表示階調値に容易に変更設定することができる。この結果、表示体の画面が全体的に暗くなり過ぎたり、明るくなり過ぎたりする現象を改善することができ、温度変化に対する温度補償を精度良く行うことができる。
【0013】
さらに、前記階調設定部は、前記温度変化速度が閾値を超える場合には、当該閾値以下の場合とは異なる表示階調値を設定することが好ましい。
温度変化速度が閾値を超える場合は、前述したように測定部の温度と表示材料の温度との温度差が大きくなっていることが想定される。このような場合、表示階調値を変えることによって駆動条件を変更する。こうすれば、表示体の画面が全体的に暗くなり過ぎたり、明るくなり過ぎたりする現象を改善することができ、温度変化に対する温度補償を精度良く行うことができる。
【0014】
ここで、前記画素階調値が、予め定められた前記表示階調値に変換されるように、前記画素階調値を変更した変更画素階調値を生成する画像生成部を備え、前記階調設定部は、前記変更画素階調値を前記画素階調値として前記変更設定を行うこととしてもよい。
こうすれば、温度変化速度に応じてテーブルによって変更変換した表示階調値は、常に予め定められた表示階調値とすることができる。従って、表示体を駆動する駆動条件は常に同じ条件となるので、駆動条件の種類数に限度がある場合は有効に温度補償を行うことができる。
【0015】
また、本発明の画像表示装置は、前記表示体の温度を測定する温度測定部を更に有し、前記駆動条件設定部は、前記画像データに加えて前記測定された表示体の温度に応じて前記駆動条件を設定することとしてもよい。
こうすれば、表示体の温度に応じた駆動条件で駆動するので、表示体の温度変化速度のみならず、表示体の温度に応じた温度補償を並行して行うことで、より精度の高い温度補償が実現できる。
【0016】
また、前記駆動条件設定部は、前記表示体に表示される画像の階調表示数以上の種類数を有する前記駆動条件から、前記画像データに応じた駆動条件を設定することとしてもよい。
こうすれば、温度変化速度に応じた駆動条件を、表示階調値に応じて複数の駆動条件から設定することができるので、温度補償を適切に行うことができ、より精度の高い温度補償が実現できる。
【0017】
ここで、前記表示体の表示材料は、分子配向が異なる複数の最終配向状態を呈する液晶材料であり、前記表示体駆動部は、前記分子配向の配向状態を前記最終配向状態とは異なる過渡配向状態に遷移させた後、前記最終配向状態を選択期間で選択する駆動方式を用いて、前記表示体を駆動することとしてもよい。
さらに、前記表示体は、表示材料としてコレステリック液晶分子を用いたものであることとしてもよい。
【0018】
このような駆動方式の例としては、例えば、前述したコレステリック液晶のDDS駆動方式が挙げられる。この場合、過渡的な配向状態とは、ホメオトロピック配向が相当する。その後、最終配向状態(プレーナ配向またはフォーカルコニック配向)を選択するための選択期間において、ホメオトロピック配向を過渡プレーナ配向に選択的に遷移させる。この過渡プレーナ配向は短時間で遷移させることができるため書き換え時間を大幅に短縮できるという利点がある。一方で、この過渡プレーナ配向は温度によって遷移の可否が左右されることから、高い精度の温度補償が要求される。従って、本発明の適用が非常に有効である。
また、コレステリック液晶は、上記DDS駆動方式によって駆動できる表示材料であり、温度変化による特性の変化が大きいので、本発明の適用が非常に効果的である。
【0019】
本発明を画像表示方法として捉えることもできる。すなわち、表示体に画像を表示する画像表示方法であって、前記表示体の温度変化速度を検出する温度変化速度検出工程と、前記画像の画像データに応じて、前記表示体に前記画像を表示するための駆動条件を設定する駆動条件設定工程と、前記検出された温度変化速度に応じて、前記設定された駆動条件を変更する駆動条件変更工程と、前記駆動条件変更工程により変更された駆動条件で前記表示体を駆動し、前記表示体に前記画像を表示する表示体駆動工程と、を備えたことを要旨とする。
本発明の画像表示方法によれば、上述した本発明の画像表示装置と同様の作用効果を得ることができる。なお、この画像表示方法は、上述した画像表示装置の各機能を実現するような工程を追加してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明を具体化した一実施形態としての画像表示装置について、以下の順序で説明する。
(A)画像表示装置の機能構成について
(B)コレステリック液晶のDDS駆動方式について
(C)本実施形態での温度補償の第1実施例
(D)本実施形態での温度補償の第2実施例
(E)本実施形態での温度補償の第3実施例
【0021】
(A)画像表示装置の機能構成について:
図1は本実施形態となる画像表示装置100の機能構成を示すブロック図である。画像表示装置100は、図示するように、表示体パネル1と、表示体パネル1を所定の駆動条件で駆動する表示体駆動回路2と、表示体パネル1の温度を取得し保存する温度データ取得保存回路3と、表示体パネル1の駆動条件を制御する制御回路4と、表示体パネル1に表示する画像を書き換えるための書き換えボタン5とを備えて構成されている。
【0022】
表示体パネル1は記憶性を有するものであり、本実施形態では表示材料としてコレステリック液晶を用いる。そして、図2に示すように、表示材料としてのコレステリック液晶層1aは、透明電極1b、ガラス基板1c、光吸収層1dなどによって挟持されて構成されている。コレステリック液晶層1aのコレステリック液晶分子は、分子の配向状態によって光の反射率が異なり、例えば、図2(a)のプレーナ配向(以下、単に「P配向」)では入射光を反射するため反射光の色が表示され、同図(b)のフォーカルコニック配向(以下、単に「F配向」)では入射光を略透過し、その透過光が光吸収層1dに吸収されるため黒表示となる。このため、各画素領域におけるコレステリック液晶分子の配向状態を制御することによって、表示体パネル1に表示する画像を書き換えるなどして表示画像を変更することができる。この配向状態は、透明電極1bによりコレステリック液晶層1aに印加する電圧によって制御できるが、P配向及びF配向は配向状態が安定しているため電圧を印加しなくても当該状態が維持される。従って、電圧を印加して書き換えた表示画像は、電力を消費することなくそのまま維持される。もとより、このような構造を有する表示体パネル1が請求項記載の表示体に相当する。
【0023】
なお、図2(c)のホメオトロピック配向(以下、単に「H配向」)は、コレステリック液晶分子のらせん構造が崩れた状態であり、光は透過するが安定状態ではないため、電圧をかけている状態でのみ存在する。このH配向状態については、以降説明するDDS駆動において説明する。
温度データ取得保存回路3は、表示体パネル1の温度をリアルタイムに測定し、保存する。本実施形態では、温度センサ31と、ADコンバータ32と、PLD(Programmable Logic Device)33と、RAM(random−access memory)34と、を備えて構成される。温度センサ31は、表示体パネル1の表示面と反対の裏面側であって表示体パネル1の構成部材、例えば、光吸収層1d(図2)に当接して設けられている。
【0024】
温度センサ31は、例えば、図3に示すように、温度検知素子として、温度が上昇すると抵抗が小さくなるサーミスタ31Aを用いる。図示するように、サーミスタ31Aは、抵抗31Bが直列接続すると共に、一端が電圧源VTに接続されており、サーミスタ31Aと抵抗31Bとの間から分岐する分岐路には、サーミスタ31Aの抵抗と抵抗31Bの比によって分割された電圧値が出力される。この分岐路上にはADコンバータ32が接続しており、ADコンバータ32は、アナログ信号で出力された電圧値をデジタル信号に変換して、PLD33に出力する。PLD33は、ADコンバータ32からデジタル信号に変換された温度データが出力されると、出力された温度データを取得し、RAM34に格納して保存する。
【0025】
この温度データ取得保存回路3は、例えばその他の回路(制御回路4や表示体駆動回路2など)とは別電源系統とすることによって電源が常に供給され、所定のサンプリング周期(例えば、10msec毎)で温度を継続して測定するように構成されている。そして、測定した時系列の温度データを所定回数分蓄積して、温度履歴データとして保存する。なお、温度データ取得保存回路3は、請求項記載の温度変化速度検出部および温度測定部に相当する。
【0026】
制御回路4は、CPU(central processing unit)41、RAM42、ROM(read−only memory)43、及び、表示体駆動制御回路44を備えて構成されている。制御回路4は、請求項記載の駆動条件設定部、駆動条件変更部、階調設定部として機能する。
CPU41は、ユーザによって画像書き換えボタン5が押されると起動され、ROM43から制御プログラムを読み込み、制御プログラムに基づく動作を開始する。CPU41は、まず、温度データ取得保存回路3のRAM34に保存された温度履歴データを読み込み、温度勾配が閾値を超える否かを判定する。温度勾配は、温度の時間変化の度合い(すなわち、温度変化速度)を示し、例えば、判定時点よりも前の2つの時点における測定温度データの差分を温度勾配として用いる。
【0027】
そして、CPU41は、読み込んだ温度履歴データと判定結果に応じて、各画素の画像データとして各画素が有する階調値(以降、「画素階調値」)と、各画素を書き換える際に印加する駆動電圧波形の実効電圧値を決定するための階調値(以降、「表示階調値」)との対応関係を示す対応テーブル(後述する)とともに、画像書き換え指令を表示体駆動制御回路44に出力する。同時に、表示すべき画像データをROM43の所定領域から読み込み、RAM42上に展開し、必要な場合には画像処理等を行ってから、表示体駆動制御回路44に転送する。なお、対応テーブルは、表示体パネル1の温度をパラメータとしたテーブルであり、1つの画素階調値に対して1つの表示階調値が対応するように関係付けがされ、ROM43(図1)に格納されている。
【0028】
表示体駆動制御回路44は、CPU41から画像書き換え指令が出力されると、対応テーブルに基づいて、各画素の画素階調値を表示階調値に変換する。具体的には、本実施形態では、表示体パネル1に表示する画像の階調数は4階調であるものとし、各画素の画像データ(画素階調値)は4種類=2bitで表されるものとする。従って、CPU41から表示体駆動制御回路44に出力される画像データは、2bitで表されるデータである。
【0029】
なお、本実施形態では、画素階調値は、表示体パネル1の表示画面の反射率が最も高い状態(白状態)を1、最も低い状態(黒状態)を0として規格化した値(これを、「規格化反射率」とも呼ぶ)で表したとき、4等分の反射率を示す値であるものとする。すなわち、4段階の階調表示に相当する規格化反射率(0,1/3,2/3,1)に相当する値を有するものとする。もとより、この4階調に相当する画素階調値は、実際に表示体に表示された画像について、この画像を構成する画素の反射率や透過率に相当する値であることから、表示体に用いる表示材料によって決まるものである。
【0030】
一方、コレステリック液晶の最終的な分子配向を、前述したP配向かF配向かのどちらかに選択決定する選択期間(以降説明するDDS駆動方式では、この期間を「Selection期間」と呼ぶ)に印加する上記駆動電圧波形の実効電圧値(以下、「Selection電圧」と呼ぶこともある。)は、後述するが本実施形態では4bitのデータで表される16種類(V0からV15)の実効電圧値が用意されている。したがって、変換された表示階調値は、この16種類の実効電圧値の中から、画素階調値に対応する4種類の実効電圧値を特定するデータであるので、本実施形態では、実効電圧値と同じ16種類が存在することになる。
【0031】
表示体駆動回路2は、表示体駆動制御回路44から出力された4種類の実効電圧値を示す4bitのデータを受け取り、所定の駆動電圧波形を生成し、図示しない横電極と縦電極が交差する表示体パネル1の各画素に印加する。具体的には、本実施形態では、表示体駆動回路2は、複数の走査線(横電極)及び複数のデータ線(縦電極)がマトリクス状に形成された単純マトリクス方式の電極(図2、透明電極1b)、当該複数の走査線を駆動する走査ドライバ、及び、複数のデータ線を駆動するデータドライバなどを備えて構成される。
【0032】
データドライバは、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)が可能なPWM回路を備えており、4bitのデータに基づいて、駆動対象となる画素に印加する駆動電圧波形である電圧パルスのパルス幅を変調して変更する。従って、所定の電圧値が出力される時間となるパルス幅がPWM回路によって制御され、その結果、16種類の実効電圧値(V0からV15)が表示体駆動回路2から出力されるように構成されている。従って、上記4つの選択された実効電圧値に対応するパルス幅を有する駆動電圧波形が、駆動対象の画素に印加されるのである。
【0033】
(B)コレステリック液晶のDDS駆動方式について:
さて、本実施形態では、表示体パネル1の駆動方式としてDDS駆動方式を用い、所定の駆動電圧波形(例えば前述の特許文献1(米国特許第5748277号)で提案されている駆動電圧波形)を、Selection期間に表示体パネル1の各画素に位置するコレステリック液晶層1aに印加することによって、画像データの書き換えを行うものとする。
【0034】
ここで、DDS駆動方式について説明する。DDS駆動方式は、図4(a)に示す過程を経て液晶の最終配向状態を決定する方式である。すなわち、まず、Preparation期間において、P配向又はF配向になっている液晶を、図2(c)に示したH配向にする電圧を印加する。次に、Selection期間において、最終的な画像表示状態(書き換え後にF配向にするかP配向にするか)を選択するための電圧を印加する。このとき、表示階調値に応じた実効電圧値を印加することで、H配向に維持するか、又は、過渡プレーナー配向(TP配向)と呼ばれるらせん構造のねじれが若干弛緩した状態へ移行させるかの選択を行う。そして、1つの画素において、印加する実効電圧値に応じて、液晶分子単位レベルでH配向とTP配向との混在割合を制御し、面積階調によって中間階調を含めた階調表示を実現する。そして、Evolution期間において、Selection期間で選択した最終的な画像表示状態を定着させるための電圧を印加する。
【0035】
これにより、Selection期間においてH配向としたものは、H配向をそのまま維持するが、電圧を消去したときに最終的にP配向に遷移する。一方、TP配向となっていた液晶分子は、Evolution期間においてF配向に遷移し、最終的にF配向に定着する。つまり、Selection期間において画素に印加する実効電圧値によって、表示体パネル1に表示する画像を書き換えることができる。ちなみに、1画素の液晶分子が総てP配向になると白表示となり、総てF配向になると黒表示となる。また、P配向とF配向が混在すると、混在割合に応じた灰色を表示する。
【0036】
このように、DDS駆動方式は、Selection期間において画素の表示階調を決定することができるため、前述したように、表示体パネル1に表示する画像を短時間に書き換えることが可能である。なお、Selection期間は、画像の書き換え時における表示体パネル1の温度に応じて、その期間の長さが設定され、画像の書き換え動作中は変更されない。ちなみに表示体パネル1の温度が低ければSelection期間は長く設定される。このSelection期間が、請求項に記載の選択期間に相当する。
【0037】
(C)本実施形態での温度補償の第1実施例:
さて、上述した本実施形態の画像表示装置100において、表示体パネル1の温度が変化した場合、駆動時における表示体パネル1の推定温度と実際のコレステリック液晶の温度との間に誤差が生ずる。特に、画像表示装置100が、冷たい屋外から暖かい屋内に移動された場合は、その誤差が著しくなる。従って、推定温度に応じて設定された実効電圧値によって表示体パネル1を書き換え駆動すると、Selection期間において画素に印加すべき実効電圧値とは異なる実効電圧値が印加され、画像を正しく表示することが出来ないことになる。
そこで、まず、本実施形態の画像表示装置が行う温度補償の第1実施例は、表示体パネル1の温度変化速度に応じて、印加する実効電圧値を変更処理するものである。この処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0038】
画像書き換えボタン5が押されたことによってCPU41が起動され、この処理が開始されると、まずCPU41は、温度データ取得保存回路3がそれまでに取得した温度データを取得し、表示体パネル1の温度を推定する処理を行う(ステップS101)。本実施形態では、CPU41は、表示体パネル1の推定温度として、温度データの履歴温度から求めた1つの温度を採用する。つまり、温度センサ31は表示体パネル1裏面に貼り付けているので、環境温度の変化に対する応答は、パネル内部の液晶材料よりも早く現れる。したがって、温度センサの計測温度と液晶材料の温度の時間変化は、図6のようになっていると考えられる。そこで、例えば図6に示すように、温度データの履歴温度について、表示体パネル1の駆動時から「一定の時間」遡った過去の温度センサ計測温度TXを推定温度として採用する。この「一定の時間」は、実験的/経験的に求めてもよいし、ガラス基板1c等の熱伝導率、熱容量から算出してもよい。
【0039】
そして、次のステップS102にて、推定温度をパラメータ温度とする対応テーブルを選択する処理を行う。このステップS102では、取得した温度データから、上述したように表示体パネル1の駆動時における推定温度を求め、前述したようにDDS駆動方式を行うためのSelection期間を推定温度に応じて設定する。
次に、ステップS103にて、温度変化速度を算出する処理を行う。CPU41は、温度変化速度として、前述したように履歴温度のうちの2つの時点における測定温度の差分を、2つの時点間の経過時間で除した温度勾配として算出する。
【0040】
そして、次のステップS104にて、温度勾配の絶対値が設定閾値を超えるか否かを判定し、閾値以下であるときは(NO)、ステップS108に進む。温度勾配の絶対値が閾値以下の場合は、液晶材料の実際の温度は温度センサー31が測定した履歴温度にほぼ追随していると考えてよいので、後述する対応テーブルの選択は行わずステップS108に進むのである。
【0041】
一方、温度勾配が閾値を超える場合は(YES)、次のステップS105にて、温度変化は上昇か否かを判定処理する。ステップS105では、温度勾配がプラスであれば、温度変化は上昇であるので(YES)、ステップS106に進み、ステップS101にて求められた推定温度を低くした温度をパラメータ温度とする対応テーブルを選択する処理を行う。一方、温度勾配がマイナスであれば、温度変化は下降であるので(NO)、ステップS107に進み、ステップS101にて求められた推定温度を高くした温度をパラメータ温度とする対応テーブルを選択する処理を行う。
【0042】
ここで、本実施例における対応テーブルTAの一例を図7に示した。対応テーブルTAは、ステップS102で推定温度に基づき設定された1つのSelection期間に対して、表示体パネル1の温度PTをパラメータとして、画素階調値と表示階調値との対応関係を規定したものである。図7は、一例として推定温度が26℃のとき、実際の表示体パネル1の温度PTが25℃,26℃,27℃である場合について示したものである。縦軸は画素階調値として規格化反射率Rを示し、横軸は、その規格化反射率を得るために画素に印加する実効電圧値を決める値となる16種類の表示階調値Hn(n=0〜15)を示している。
【0043】
なお、表示階調値Hnは、nの値が大きくなるにつれて漸次実効電圧値が増加するような値を有している。従って、対応テーブルTAは温度PTをパラメータとする電圧と表示体の明るさとの特性を示した所謂VR特性カーブを示すものでもある。
ステップS106およびステップS107では、以下の動作に基づき対応テーブルTAにおける温度PTの選択を行い、推定温度と実際の液晶の温度のズレに起因する階調表示のズレを補正する。
【0044】
例えば、温度勾配が正であった場合は、急激に環境温度が上昇しているため、液晶材料の実際の温度は温度センサー31が測定した履歴温度(つまり推定温度)よりも低い温度で追随する。よって、ステップS102で求められた推定温度が26℃であったとすると、これより低い温度(例えば「25℃」)をパラメータ温度PTとする対応テーブルを選択する(ステップS106)。ちなみに、推定温度よりも実際の液晶の温度が低いと、Selection期間が実際の液晶の温度に対して設定されるべき値より短く設定されてしまい、Selection期間でTP配向に遷移することができなくなるため、表示が全体的に白っぽくなる(P配向になる)。
【0045】
逆に、温度勾配が負の場合は、急激に環境温度が下降しているため、液晶材料の実際の温度は温度センサー31が測定した履歴温度(つまり推定温度)よりも高い温度で追随する。よって、ステップS102で求められた推定温度が26℃であったとすると、温度TPをこれより高い温度(例えば「27℃」)をパラメータ温度とする対応テーブルを選択する(ステップS107)。ちなみに、推定温度よりも実際の液晶の温度が高いと、Selection期間が実際の液晶の温度に対して設定されるべき値より長く設定されてしまい、Selection期間でTP配向に遷移してしまうため、表示が全体的に黒っぽくなる(F配向になる)。
推定温度に対して、どのくらい高くするか、あるいは低くするかについては、表示体パネル1の構造や表示材料に依存することから、予め所定の温度変化速度を与えて実測し、実測結果に基づいて予め設定しておくことが好ましい。
【0046】
そして、ステップS108にて選択された対応テーブルを用いて、画素階調値を表示階調値に変換設定処理する。本実施例では図7に示したように1つの画素階調値(規格化反射率)に対して1つの表示階調値に変更設定される。例えば、温度TP=27℃が選択された対応テーブルであれば、表示階調値は(H0,H8,H11,H15)の4種類が選択される。こうして、表示体駆動制御回路44は、(H0,H8,H11,H15)の各表示階調値の種類を示す4bitのデータを、Selection期間において、対象となる画素に印加するSelection電圧のデータとして表示体駆動回路2に出力する。なお、温度TP=25℃が選択された対応テーブルであれば、表示階調値は(H0,H4,H7,H15)の4種類が設定される。
【0047】
次いで、ステップ109にて、設定された表示階調値に対応する駆動条件を設定する処理を行う。ステップS109では、表示階調値に応じてSelection電圧が決定され、決定されたSelection電圧で特定される実効電圧値を有する駆動電圧波形が生成される。その後、生成された駆動電圧波形が対象の画素に印加され、表示体パネル1の画像を書き換え(ステップS110)、第1実施例の処理を終了する。
【0048】
この結果、表示体パネル1の温度変化速度が大きい場合、推定温度に応じて選択された対応テーブルでは、表示材料である液晶材料の実際の温度が推定温度と異なることによって、画像が白くなったり暗くなったりすることになるが、本実施例の如く温度変化速度(温度勾配の絶対値)が閾値を超える場合に選択する対応テーブルを変更すれば、これを防止して正確で自然な階調を再現することが可能となる。
【0049】
なお、DDS駆動方式は、上記図4(a)に示す方式に限られず、図4(b)のようにして配向状態を選択する場合も含むものである。この場合には、Selection期間までは図4(a)と同じであるが、Evolution期間において印加する電圧が図4(a)の場合よりも低い。これにより、Evolution期間における配向状態の遷移が図4(a)の場合とは異なったものとなり、Selection期間においてH配向を維持したものがF配向に遷移し、TP配向に遷移したものがP配向に遷移して、そのまま最終的な配向状態となる。
【0050】
従って、この場合には、上記説明とは逆になり、温度勾配が正であった場合は、Selection期間でTP配向に遷移することができなくなるため、表示が全体的に黒っぽくなる(F配向になる)。よって推定温度を高くした温度をパラメータ温度とする対応テーブルを選択することによって、表示画像を全体的に明るくすることでこれを相殺し、正確で自然な階調を再現できる。一方、温度勾配が負の場合は、Selection期間でTP配向に遷移してしまうため、表示が全体的に白っぽくなる(P配向になる)。よってガンマ値を増加させることによって、表示画像を全体的に暗くすることでこれを相殺し、正確で自然な階調を再現できる。
【0051】
(D)本実施形態での温度補償の第2実施例:
上記第1実施例では、温度をパラメータとした対応テーブルによって、画素階調値を表示階調値に変更設定し、表示体パネルの温度が変化した場合に生ずる推定温度と実際の液晶の温度との温度差を温度補正する処理方法であった。次に、本実施形態にける第2実施例は、後述するガンマ値を用いて、画素階調値を表示階調値に変換設定することによって温度の補正処理を行うものである。この処理について、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0052】
画像書き換えボタン5が押されたことによってCPU41が起動され、この処理が開始される。なお、図8に示した第2実施例の処理フローチャートにおいて、図5に示した第1実施例の処理フローチャートと同じ処理が行われるステップは同じ符号を付した。つまり、ステップS102a,S106a,S107a,S108a以外の処理ステップ(例えばステップS101、ステップS103など)は、図5にて説明した処理と同じ処理が行われるため、ここではそれらの詳しい説明を省略し、これらの異なる処理ステップを中心に、その処理内容を説明する。
【0053】
画像書き換えボタン5が押されたことによってCPU41が起動され、この処理が開始されると、まずCPU41は、温度データ取得保存回路3がそれまでに取得した温度データを取得し、表示体パネルの温度を推定する処理を行う(ステップS101)。そして、次のステップS102aにて、推定温度からガンマ値を設定する処理を行う。
ここで、ガンマ値について説明する。ガンマ値は、画素階調値Xと表示階調値Yとが、以下の式(1)の対応関係となるように規定したものである。このガンマ値は、駆動電圧波形の生成に必要なパラメータであり、本実施形態ではSelection期間に画素に印加する実効電圧値を決めるためのパラメータである。具体的には、温度が高いときは液晶分子の粘性が低くなるため、Selection期間に印加する実効電圧値が小さくなるように、また温度が低いときは液晶分子の粘性が高くなるためSelection期間に印加する実効電圧値が大きくなるように、ガンマ値を設定する。
【0054】
Y = Xγ …(1)
【0055】
なお、本実施例においては、画素階調値および表示階調値の各値は、表示体パネル1の表示画面の反射率が最も高い状態(白状態)を1、最も低い状態(黒状態)を0として規格化した値(これを、「規格化反射率」とも呼ぶ)である。もとより、画像データが画素毎に8bitで示される0〜255までのいずれかの階調値であった場合は、階調値「0」を規格化反射率「0」とし、階調値「255」を規格化反射率「1」とし、例えばディザマトリックスを用いた階調変換処理等によって、各画素の階調値を規格化反射率に変換したものを画素階調値とすればよい。これが、前述したCPU41が行う「必要な場合の画像処理」の一例である。従って「画素階調値」とは、実際に表示体に表示された画像について、この画像を構成する画素の反射率や透過率に相当する値を言い、もとより、表示体に用いる表示材料によって決まるものである。そして、本実施例においても、画素階調値は4段階の階調表示に相当する規格化反射率(0,1/3,2/3,1)の値を有するものとする。
【0056】
さて、(1)式において、ガンマ値を1に設定すると、4階調の画素階調値Xの各値は(0,1/3,2/3,1)であるので、表示階調値Yの値は(0,1/3,2/3,1)となる。そして、この表示階調値の値(0,1/3,2/3,1)に対応するSelection電圧が選択される。
表示階調値に対応するSelection電圧は、本実施例では図9に示したように1つの表示階調値(規格化反射率)に対して1つの実効電圧値が対応するように関係付けがされ、所定のテーブルTBとして、ROM43(図1)に格納されている。従って、ガンマ値が1の場合は、テーブルTBから、Selection電圧は(V0,V5,V10,V15)の4種類が選択される。こうして、表示体駆動制御回路44は、CPU41から出力される4階調の画素階調値(0,1/3,2/3,1)に応じて、(V0,V5,V10,V15)の各実効電圧値の種類を示す4bitのデータを、Selection期間において、対象となる画素に印加するSelection電圧のデータとして表示体駆動回路2に出力する。
【0057】
また、ガンマ値を、「1」より大きい「2」と設定した場合は、4階調の画素階調値Xの各値(0,1/3,2/3,1)に対応する表示階調値Yの値は(0,1/9,4/9,1)となる。したがって、4階調の表示階調値(0,1/9,4/9,1)に応じて、図9よりSelection電圧は(V0,V1,V7,V15)の4つの種類が選択される。そして、表示体駆動制御回路44が(V0,V1,V7,V15)の各実効電圧値の種類を示す4bitのデータを表示体駆動回路2に出力する。
【0058】
上記のガンマ値の説明からわかるように、ガンマ値を大きくすると、中間の規格化反射率を示す表示階調値が黒側(0)に寄るので表示画像は暗くなり、ガンマ値を小さくすると中間の規格化反射率を示す表示階調値が白側(1)に寄るので表示画像は明るくなる。
次に、ステップS103にて、温度変化速度を算出する処理を行う。CPU41は、温度変化速度として、前述したように履歴温度のうちの2つの時点における測定温度の差分を、2つの時点間の経過時間で除した温度勾配として算出する。
【0059】
そして、次のステップS104にて、温度勾配の絶対値が設定閾値を超えるか否かを判定し、閾値以下であるときは(NO)、ステップS108aに進む。一方、温度勾配が閾値を超える場合は(YES)、次のステップS105にて、温度変化は上昇か否かを判定処理する。
ステップS105では、温度勾配がプラスであれば、温度変化は上昇であるので(YES)、ステップS106aに進み、ステップS102にて設定されたガンマ値を大きく変更する処理を行う。一方、温度勾配がマイナスであれば、温度変化は下降であるので(NO)、ステップS107aに進み、ステップS102にて設定されたガンマ値を小さく変更する処理を行う。
【0060】
例えば、ステップS102で設定されたガンマ値が「2」であったとすると、温度勾配が正であった場合は、急激に環境温度が上昇しているため、液晶材料の実際の温度は温度センサー31が測定した履歴温度である推定温度よりも低い温度で追随する。従って、推定温度よりも実際の液晶の温度が低くなるため、Selection期間に印加される実効電圧値が理想値よりも小さくなってしまい、Selection期間でTP配向に遷移することができなくなるため、表示が全体的に白っぽくなる(P配向になる)。よってガンマ値を例えば「2.5」に増加させることによって、表示画像を全体的に暗くすることで、これを相殺し正確で自然な階調を再現できる(ステップS106a)。
【0061】
逆に、温度勾配が負の場合は、急激に環境温度が下降しているため、液晶材料の実際の温度は温度センサー31が測定した履歴温度である推定温度よりも高い温度で追随する。従って、推定温度よりも実際の液晶の温度が高くなるため、Selection期間に印加される実効電圧値が理想値よりも大きくなってしまい、Selection期間でTP配向に遷移してしまうため、表示が全体的に黒っぽくなる(F配向になる)。よってガンマ値を例えば「1.5」に減少させることによって、表示画像を全体的に明るくすることで、これを相殺し正確で自然な階調を再現できる(ステップS107a)。
【0062】
なお、温度勾配の絶対値が閾値以下の場合は、液晶材料の実際の温度は温度センサー31が測定した履歴温度にほぼ追随していると考えてよいので、ガンマ値は変更せずステップS108aに進むのである。
そして、ステップS108aにて設定または変更されたガンマ値を用いて表示階調値に変換処理し、次いで、ステップ109にて、表示階調値に対応する駆動条件を設定する処理を行う。ステップS109では、表示階調値に応じてSelection電圧が決定され、決定されたSelection電圧で特定される実効電圧値を有する駆動電圧波形が生成される。その後、生成された駆動電圧波形が対象の画素に印加され、表示体パネル1の画像を書き換え(ステップS110)、第2実施例の処理を終了する。
【0063】
この結果、表示体パネル1の温度変化速度が大きい場合、推定温度に応じて設定された最適なガンマ値では、表示材料である液晶材料の実際の温度が推定温度と異なることによって、画像が白くなったり暗くなったりすることになるが、本実施例の如く温度変化速度(温度勾配の絶対値)が閾値を超える場合にガンマ値を変更すれば、これを防止して正確で自然な階調を再現することが可能となる。
【0064】
なお、第1実施例と同様に、DDS駆動方式は、上記図4(a)に示す方式に限られず、図4(b)のようにして配向状態を選択する場合も含むものである。この場合には、Selection期間までは図4(a)と同じであるが、Evolution期間において印加する電圧が図4(a)の場合よりも低い。これにより、Evolution期間における配向状態の遷移が図4(a)の場合とは異なったものとなり、Selection期間においてH配向を維持したものがF配向に遷移し、TP配向に遷移したものがP配向に遷移して、そのまま最終的な配向状態となる。
【0065】
従って、この場合には、上記説明とは逆になり、温度勾配が正であった場合は、Selection期間でTP配向に遷移することができなくなるため、表示が全体的に黒っぽくなる(F配向になる)。よってガンマ値を減少させることによって、表示画像を全体的に明るくすることでこれを相殺し、正確で自然な階調を再現できる。一方、温度勾配が負の場合は、Selection期間でTP配向に遷移してしまうため、表示が全体的に白っぽくなる(P配向になる)。よってガンマ値を増加させることによって、表示画像を全体的に暗くすることでこれを相殺し、正確で自然な階調を再現できる。
【0066】
(E)本実施形態での温度補償の第3実施例:
上記第1実施例および第2実施例では、中間調を含む4階調の階調表示を、温度変化速度に応じて補正する例であったが、実際に生じている温度変化速度が閾値を超えた場合は、画像が本来有する数の階調表示を行うことが困難な場合が存在する。例えば、推定温度そのものが相当に高温であって、更に温度上昇する場合や、逆に推定温度そのものが相当に低温であって、更に温度下降する場合などでは、中間調を表示するための実効電圧値が、PWM回路によって制御される16種類から設定できないような場合である。あるいは、温度変化が、上昇から急降下したり、下降から急上昇すると、実際の液晶の温度の変化挙動を推測することが困難であり、例えば第2実施例において推定温度に基づくガンマ値の設定変更では、表示階調を正確に補正できない場合である。
【0067】
そこで、次に、本実施形態の画像表示装置が行う温度補償の第3実施例は、表示体パネル1の温度変化速度に応じて、階調表示数を少なく処理するものである。こうすれば、例えば中間調(例えば灰色)を、黒色か白色かに前もって変更するので、1つの文字が太くなったり細くなったりすることが回避され、温度変化に影響されない安定した画像を表示することができるものである。この処理について、図10のフローチャートを用いて説明する。
【0068】
画像書き換えボタン5が押されたことによってCPU41が起動され、この処理が開始される。なお、図10に示した第3実施例の処理フローチャートにおいて、図8に示した第2実施例の処理フローチャートと同じ処理が行われるステップは同じ符号を付した。つまり、ステップS101からステップS104までと、ステップS108からステップ110までは、図8にて説明した処理と同じ処理が行われるため、ここでは説明を省略し、ステップS121について、その処理内容を説明する。
【0069】
第3実施例では、ステップS104にて温度勾配の絶対値が閾値を超える場合(YES)、ステップS121にて画素階調値を2値に変更する処理を行う。第2実施例では、表示体パネル1に表示する画像の階調数は4階調であるものとし、表示体駆動制御回路44が、CPU41からガンマ値を指定した画像書き換え指令が出力されたとき、各画素の画素階調値(0,1/3,2/3,1)を変換した表示階調値も、設定されたガンマ値に応じて4種類の階調値に変換され、変換された表示階調値に対応する4種類のSelection電圧が選択されるものとした。
【0070】
第3実施例では、表示体駆動制御回路44がガンマ値に基づいて画素階調値を表示階調値に変換する際、前もって4階調の画素階調値(0,1/3,2/3,1)を2種類の画素階調値(0,1)に変更する。本実施例では、画素階調値(1/3)を画素階調値(0)に、画素階調値(2/3)を画素階調値(1)に変更するものとする。具体的な処理方法としては、前述したように、画像が画素毎に8bitで示される0〜255までのいずれかの階調値であった場合は、2値化用のディザマトリックスを用いた階調変換処理によって階調値を「0」と「255」とに2値化し、規格化反射率「0」と規格化反射率「1」とからなる画素階調値に変換処理を行えばよい。
【0071】
前述の説明からわかるように、ガンマ値に関わらず、画素階調値(0)は表示階調値(0)に変換され、画素階調値(1)は表示階調値(1)に変換される。この結果、Selection電圧は、図9に示したように、表示階調値に応じて、それぞれ最小と最大の実効電圧値が選択され、画素ごとに安定して液晶の配向状態を選択することができることから、白表示もしくは黒表示を安定して表示することが可能である。従って、画素階調値(1/3)が白表示になったり、画素階調値(2/3)が黒表示になったりして、1つの文字が太くなったり細くなったりすることが回避され、表示体パネル1の温度変化速度に依存することなく、安定した画像を表示することができるものである。
【0072】
このように、第3実施例によれば、表示体パネル1の温度変化速度が大きい場合、例えば、予め灰色を示す中間調の階調値を、文字の線が太ったり細ったりしないように白色か黒色かを示す2値の階調値に変換する。この結果、温度変化速度(温度勾配の絶対値)が閾値を超える場合であっても、文字の線が太ったり細ったりすることなく、自然な画像を表示することが可能となる。
以上、本発明について、一実施形態および実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態および実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。以下変形例を挙げて説明する。
【0073】
(第1変形例)
上記実施形態では、ROM43の所定領域に格納された画像データを変更することなく規格化反射率に置き換えた画素階調値を用いて、設定されたガンマ値に応じた表示階調値に変換し、変換した表示階調値に対応するSelection電圧を選択した。このため、設定されたガンマ値が変化すると、変換される表示階調値も変化するために、表示階調値に対応するSelection電圧も種類数が多くなり、上記実施形態では、4bit16種類のSelection電圧を用意することとしていた。
【0074】
従って、16種類のSelection電圧に対応する実効電圧値を駆動対象の画素に印加するために、PWM回路によって出力電圧パルスのパルス幅を変更した16種類の駆動電圧波形を生成した。ところで、一般的に表示体パネル1に印加する駆動電圧波形の種類が少なければ少ないほど駆動が容易になる。また、詳細は説明しないが、駆動電圧波形の種類が少なければ、クロストークといった表示画像品質を劣化させる要因も抑制することができる。そこで、第1変形例として、Selection電圧、つまり駆動電圧波形の種類数を減らし、予め定められたパルス幅の駆動電圧波形のみが画素に印加されるようにしてもよい。
【0075】
こうすると、例えば、本来の表示階調となるべき駆動電圧波形と異なる駆動電圧波形を印加することになるため、本来表示すべき階調と異なる階調が表示されてしまう。そこで、本変形例では、ROM43の所定領域に格納された画像データとは異なる画像データを生成する。このとき、生成した画像データを規格化反射率に変換した画素階調値に対して、設定されたガンマ値に応じて規定される表示階調値が常に同じになるようにするのである。こうすることによって、選択されるSelection電圧が常に同じになり、画像の書き換え時に、予め定められたパルス幅の駆動電圧波形のみを画素に印加すればよいことになる。
【0076】
それでは、第1変形例に係る画像表示装置ついて説明する。図11は、第1変形例としての画像表示装置200の内部構成を示すブロック図である。同図に示すように、本変形例の画像表示装置200は、上記実施形態に係る画像表示装置100と略同様の構成で同様の動作であるが、設定されたガンマ値に応じた画像データを生成するために、制御回路4として画像生成部(GPU)45を備える点で画像表示装置100と異なる。
【0077】
画像表示装置100では、ROM43内部の所定領域に、あらかじめ外部(パーソナルコンピュータなど)で生成した画像データを格納していたが、画像表示装置200では、ROM43にはコンテンツの文字情報としてテキストデータ(ASCIIコードベース)や、それを表示する際のレイアウト情報が格納されている。GPU45は、これらの情報及とCPU41で決定したガンマ値とを基に、表示すべき画像データを生成(レンダリング)し、RAM42へ格納する。この際、画素階調値に対応して、設定されたガンマ値で規定される表示階調値の値が、予め定められた値となるように、各画素の画像データを、ガンマ値に応じて生成する。
【0078】
例えば、図8のフローチャートに示した第2実施例において、本変形例による処理を行う場合は、ステップS108aにおいて、変換後の表示階調値が予め定められた表示階調値になるように画像データを生成する。一例として、設定されたガンマ値で変換される表示階調値Yが予め(0,1/9,4/9,1)である場合、その設定されたガンマ値が1の場合は画素階調値Xが(0,1/9,4/9,1)に、またその設定されたガンマ値が2の場合は画像階調値Xが(0,1/3,2/3,1)になるように、画像データを生成する。
画像データの生成処理としては、例えば、もともとの画素階調値Xが(1/3)であるべき画素について、設定されたガンマ値が2のときは、画素階調値Xは(1/3)になるように画素の階調値データを生成する。こうすれば、変換後の表示階調値は(1/9)となって、予め定められた表示階調値になる。
【0079】
一方、設定されたガンマ値が1のときは、画素階調値X(1/3)の画素に対応する表示階調値Yは同じく(1/3)に変換されるので、予め定められた表示階調値と異なる表示階調値となってしまう。そこで、表示階調値(1/3)に最も近い実効電圧値を有するSelectin電圧に対応した表示階調値を選択する。前述した図4において、本変形例では、Selection電圧V5に対して、表示階調値(4/9)に相当するSelection電圧V7が、最も近い実効電圧値を有するものとすると、ガンマ値が1であるので、画素階調値(1/3)を、表示階調値と同じ変更画素階調値(4/9)に変更する。つまり、ガンマ値が1のときは、もともとの画素階調値が(1/3)であるべき画素について、画素階調値が(4/9)になるように、画素の階調値データを生成するのである。
【0080】
このような処理を総ての画素の階調値データについて行い、各画素の画素階調値を変更画素階調値に変更生成することで、駆動電圧波形の種類を特定することが可能となる。なお、上述した画像生成部45の処理に際して、予め定められた表示階調値の値を、(0,1/9,4,9,1)の一定値としたが、図9に示すように、選択されるSelection電圧の種類が少なければ駆動電圧波形の種類を少なくできる。従って、1つのSelection電圧が選択される範囲幅を有する値を、予め定められた表示階調値としてもよいことは勿論である。
【0081】
その後、CPU41は、上記のようにしてRAM42に格納された画像データを表示体駆動制御回路44に転送する。そして、表示体駆動制御回路44は、受け取った画像データとガンマ値から、予め定められた表示階調値に変換処理後、表示階調値に対応して選択された特定のSelection電圧を、駆動タイミングにあわせて表示体駆動回路2′に転送する。
【0082】
表示体駆動回路2′は、画像表示装置100における表示体駆動回路2とは異なり、データドライバが2bitのデータ入力に応じて4種類のPWM出力が可能なPWM回路を備えており、Selection電圧に応じたパルス幅を有する駆動電圧波形を生成して表示体パネル1を駆動する。その他の処理動作については、図8に示した処理フローチャートの通りである。
【0083】
このように、上記実施形態では、各画素の階調値データと画素階調値との対応関係は変更することなく、設定されたガンマ値で規定される表示階調値通りのパルス幅を有する駆動電圧波形を画素に印加し、各画素に応じた適切な階調表示を得た。一方、第1変形例では、各画素の階調値データと画素階調値との対応関係を変更することで、設定されたガンマ値で規定される表示階調値を予め定めた値とすることによって、少ない種類数の駆動電圧波形でも、各画素に応じた適切な階調表示を得ることが可能となる。
【0084】
なお、図1に示した上記実施形態の画像表示装置100のように、表示体駆動回路2を、表示体パネル1に表示する画像の階調表示数よりも多い種類の駆動電圧波形を生成可能な構成とした場合には、階調表示数の多い汎用的な画像データに対しても本発明を適用できるという利点がある。また、図11に示した第1変形例の画像表示装置200のように、表示体駆動回路2′が画像データの階調表示数と同じ種類の駆動電圧波形のみを生成する構成となっている場合であっても、例えば、パーソナルコンピュータと表示体とを通信接続することで表示体の書き換えを行う構成の画像表示装置であれば、本発明を適用できるという利点がある。つまり、パーソナルコンピュータのGPUで画像データを生成させることができるからである。
【0085】
(第2変形例)
上記実施例では表示体の画像書き換え処理(図5、図8、図10の各ステップS110)においては、表示体パネル1における画像書き換え処理中に、駆動条件である実効電圧値を変更することは行わなかった。しかしながら、温度変化が相当に激しい場合、画像の書き換え途中において、表示体パネル1の温度が推定温度からそうとうにズレてしまうことが起こり得る。そこで、本変形例では、画像の書き換え処理中に、少なくとも1回実効電圧値を変更することとしてもよい。本変形例の処理を、第1実施例に適用した場合について、図5の処理フローチャートを用いて説明する。
【0086】
本変形例を適用した場合、図5のステップ104において比較する閾値を大きい値に設定することが好ましい。つまり、閾値を超えたと判定された場合(ステップS104:YES)、温度が上昇であれば(ステップS105:YES)、温度変化が急激に高くなろうとしているので、表示体パネル1の温度は、画像の書き換え途中で推定温度よりも高くなっている確率が高い。そこで、ステップS106では、ステップS101にて推定された推定温度を駆動開始時の温度とし、この推定温度を高く変更した2つ目の推定温度を表示体パネル1の駆動途中の温度とし、これら2つの推定温度をそれぞれ低くした温度をパラメータ温度とする対応テーブルの選択処理を行うのである。
【0087】
一方、温度が下降であれば(ステップS105:NO)、温度変化が急激に低くなろうとしているので、表示体パネル1の温度は、画像の書き換え途中で推定温度よりも低くなっている確率が高い。そこで、ステップS107では、ステップS101にて推定された推定温度を駆動開始時の温度とし、この推定温度を低く変更した2つ目の推定温度を表示体パネル1の駆動途中の温度とし、これら2つの推定温度をそれぞれ低くした温度をパラメータ温度とする対応テーブルの選択処理を行うのである。
【0088】
本変形例では、2つ目の推定温度は、前述した図6において、一定の時間を所定時間短くした時間において、温度センサが計測した履歴温度を用いることとする。この短くする所定時間は、設定する閾値の大きさに応じて設定したり、画像書き換え時においてSelection期間として実際に設定されている時間に応じて設定したりすることが好ましい。
【0089】
このように選択された2つの対応テーブルを用いて、ステップS108にて変換設定された表示階調値に対応した2つの駆動条件を設定する(ステップS109)。そして、表示体の画像書き換え処理(ステップS110)において、表示体パネル1の駆動開始時における駆動条件を、駆動途中に2つ目の駆動条件に変更するのである。こうすることによって、駆動開始から経過した時間における表示体パネル1の温度に即した駆動条件に変更することができ、より高い精度の温度補償を行うことが可能となる。
なお、駆動条件を変更するタイミングについては、変更回数が1回であれば画像をほぼ半分書き換えた時点が好ましい。もとより、変更回数は1回に限定されるものでないことは勿論であり、温度変化速度に応じて変更回数を設定すればよい。
【0090】
(その他の変形例)
また、本発明は上記実施形態や実施例、および第1変形例に限定されず、以下のような変形例として実施してもよい。例えば、上記実施形態では、コレステリック液晶を表示材料とし、DDS駆動方式で駆動する画像表示装置として説明したが、これ以外にも温度特性が激しい他の表示材料(例えば、電気泳動方式の記憶性表示材料)を用いた画像表示装置としてもよい。また、駆動方式としてコレステリック液晶をコンベンショナル駆動させる駆動方式とした場合に適用してもよい。
【0091】
また、温度勾配の検出は、温度の時系列データに基づき検出する方法に限定されず、例えば、画像表示装置を構成する部材のうち熱伝導率が異なる部材の温度をそれぞれ測定し、その温度差に基づいて検出してもよい。すなわち、環境温度の変化速度が小さく、表示体パネルの温度が落ち着いている場合には、各部材の温度も環境温度と略同等の温度となっていると推定できるが、環境温度が変化すると、熱伝導率の高い部材の方が先に温度が変化するため、各部材間に温度差が生じる。したがって、この温度差に基づき温度変化速度を検出することもできる。
【0092】
また、上記実施形態ではSelection期間において、駆動電圧波形のパルス幅を変更することで印加時間を変更し、表示すべき階調に応じた実効電圧値を画素に印加したが、パルス幅を変更せず駆動電圧波形の振幅となる印加電圧値を変更することで、実効電圧値を変更することとしてもよい。あるいは、印加時間と印加電圧値との両方を変更することとしてもよい。こうすれば、印加時間と印加電圧値との組み合わせによって、複数種類の実効電圧値を有する駆動電圧波形を生成することができる。
【0093】
また、上記実施形態における第3実施例では、表示体駆動制御回路44がガンマ値に基づいて画素階調値を表示階調値に変換する際、前もって4階調の画素階調値(0,1/3,2/3,1)を2種類の画素階調値(0,1)に変更した。もとより、第3実施例はこれに限るものではなく、上記第1実施例において実施することとしてもよい。例えば、図6に示した対応テーブルTAにおいて、総てのパラメータ温度において、画素階調値(0,1/3)が表示階調値(H0)に、画素階調値(2/3,1)が表示階調値(H15)に対応するように規定しておくとよい。こうすれば、2種類の画素階調値(0,1)に容易に変更することができる。
【0094】
また、上記実施形態における第3実施例では、画素階調値を表示階調値に変換する際、前もって4階調の画素階調値(0,1/3,2/3,1)を「黒色」と「白色」を示す2種類の画素階調値(0,1)に変更したが、もとより、これに限定されるものではない。例えば、画素階調値(0,1/3)を画素階調値(1/9)に、画素階調値(2/3,1)を画素階調値(8/9)に変更することとしてもよい。前述するように、表示体パネル1の反射率や透過率は、用いる表示材料の特性によって異なる。従って、表示材料の特性に合わせて、好ましい階調表示に応じた画素階調値に前もって変更することが好ましい。
【0095】
また、上記実施形態では、画素階調値が4階調の規格化反射率(0,1/3,2/3,1)で表される画像について温度補償することとしたが、特にこれに限るものでないことは勿論である。例えば、画素階調値が8階調と多い階調表示数で表された画像や、逆に3階調と少ない階調表示数で表された画像についても、同様に本発明を適用することが可能である。また、画素階調値も(0,1/3,2/3,1)のように略均等な規格化反射率の間隔に限るものでなくても差し支えない。
また、上記実施形態では、Selection電圧の種類数を16種類(V0〜V15)としたが、これ以外の種類数(例えば256種類:V0〜V255)であってもよい。PWM回路のパルス幅変更可能数や、印加電圧の電圧値の種類数に応じてSelection電圧の種類数を設定すればよい。
【0096】
また、上記実施形態の画像表示装置100、又は第1変形例の画像表示装置200は、上記構成要件を備えて一体的に構成する場合のみならず、上記構成要件が複数の装置に分離して搭載され、それらの複数の装置が通信的に接続されることで、協働して本態様を実現する形態であってもよい。例えば、図1において、表示体パネル1、温度データ取得保存回路3、及び表示体駆動回路2を備えたクライアント装置と、制御回路4の機能の少なくとも一部を備えたホスト装置(パーソナルコンピュータ)と、から構成される画像表示装置としてもよい。この場合には、温度情報や画像データを相互に送受することで上記機能を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】第1実施形態に係る情報表示装置の内部構成を示すブロック図である。
【図2】コレステリック液晶の配向状態を説明する図である。
【図3】温度センサを説明する図である。
【図4】(a)(b)とも、コレステリック液晶の配向状態の遷移を示す図である。
【図5】画像表示装置の第1実施例の動作を説明するフローチャートである。
【図6】コレステリック液晶層の温度の時間変化を説明するグラフである。
【図7】画素階調値と表示階調値との対応関係を規定する対応テーブルの図である。
【図8】画像表示装置の第2実施例の動作を説明するフローチャートである。
【図9】Selection電圧と表示階調値の関係を示すグラフである。
【図10】画像表示装置の第3実施例の動作を説明するフローチャートである。
【図11】第1変形例に係る画像表示装置の内部構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0098】
1…表示体パネル、1a…コレステリック液晶層、1b…透明電極、1c…ガラス基板、1d…光吸収層、2,2′…表示体駆動回路、3…温度データ取得保存回路、31…温度センサ、31A…サーミスタ、31B…抵抗、32…コンバータ、4…制御回路、41…
CPU、42…RAM,43…ROM、44…表示体駆動制御回路、45…GPU、5…
画像書き換えボタン、100,200…画像表示装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示装置、及び画像表示方法に関するもので、特に温度による特性の変化が大きい表示体を備えた画像表示装置に好適な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、種々の情報を画像として表示する画像表示装置において、記憶性の表示体を有する画像表示装置の実用化が進められている。記憶性の表示体は、書き換え時のみに電力を消費するので、通常の表示体に比べて圧倒的に消費電力が少ない。このため、電池容量を小さくして、画像表示装置を有する機器を小型化できるので、例えば電子ブックなどの機器に適した表示体として注目されている。
【0003】
このような記憶性の表示体としては、コレステリック液晶を表示材料として用いた表示体が挙げられる。そして、コレステリック液晶を用いた場合、特許文献1に開示されたコレステリック液晶の駆動方式としてのDDS(Dynamic Drive scheme)駆動方式により、画像の高速な書き換えを実現できる。
【特許文献1】米国特許第5748277号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、記憶性の表示体の表示材料は、このような利点を有する一方、温度によって粘度が変化しやすいという課題もある。このため、表示材料の温度を測定し、これに基づき表示体の各画素に印加する駆動電圧パルス印加時間、もしくは印加電圧値を変化させる等といった温度補償を通常行わなければならない。特に、上記コレステリック液晶をDDS駆動方式を用いて駆動する場合には、1℃以下の温度差を刻み幅とするステップで温度補償を行う必要があり、特に複数の階調表示をさせる場合は非常に厳しい精度で温度補償を行うことが要求される。
【0005】
ところで、表示材料の温度を測定する場合、通常表示材料を挟持する部材(ガラス、プラスチックなど)を介して測定するため、測定部分の温度と表示材料そのものの温度が異なる場合が生ずる。特に、表示体の周辺温度が時間とともに変化するような場合は、表示材料の温度が、測定された温度に到達するまでに相当の時間ズレが生ずるため、測定温度と実際の駆動時における表示材料の温度との間に温度差が生じてしまう。この温度差は、特に、例えば寒い戸外から暖かい室内へ移動した時など表示体の周辺温度が急激に変化した場合に大きく、単に測定温度の値に基づいてのみの温度補償では、十分な温度補償の精度を確保できないという課題がある。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、表示体の周辺温度が急激に変化した場合に高い精度で温度補償が可能な画像表示装置、及び画像表示方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は表示体に画像を表示する画像表示装置であって、前記表示体の温度変化速度を検出する温度変化速度検出部と、前記画像の画像データに応じて、前記表示体に前記画像を表示するための駆動条件を設定する駆動条件設定部と、前記検出された温度変化速度に応じて、前記設定された駆動条件を変更する駆動条件変更部と、前記駆動条件変更部により変更された駆動条件で前記表示体を駆動し、前記表示体に前記画像を表示する表示体駆動部と、を備えたことを要旨とする。
【0007】
このように構成することで、例えば、表示体を測定温度に基づく駆動条件の設定のみでは十分に温度補償を行えない場合にも、測定温度の経時変化、つまり温度変化速度に基づいて、追加の温度補償が可能である。したがって、表示材料自体の温度を測定できない場合でも、より精度の高い温度補償が実現できる。なお、本発明における駆動条件とは、少なくとも表示体の各画素に印加する駆動電圧パルスの印加時間、もしくは印加電圧値を決定するための条件である。また、本発明における駆動条件の変更とは、設定された駆動条件と同じ駆動条件を再設定することも含むものである。
【0008】
ここで、前記駆動条件変更部は、前記表示体駆動部による前記表示体の駆動中に、前記駆動条件を変更することとしてもよい。
例えば、表示体の温度変化速度が早い場合、表示体に1つの画像を表示すべく表示体の駆動を開始してから時間経過が長くなると、表示開始と表示終了時点で表示体の温度に大きな温度差が生じてしまい正しく画像を表示することができなくなる。そこで、表示体の駆動中に駆動条件を変更することで、駆動時における表示体の実際の温度に即した駆動条件で画像を表示することができる。この結果、より精度の高い温度補償が実現できる。
【0009】
また、本発明の画像表示装置は、前記検出された温度変化速度に応じて、前記画像を構成する画素の画像データとしての画素階調値を、前記表示体駆動部が表示する画像を構成する画素の画像データとなる表示階調値に変更設定する階調設定部を更に備え、前記駆動条件変更部は、前記変更設定された表示階調値を画像データとして前記駆動条件設定部が設定する駆動条件に、前記設定された駆動条件を変更することとしてもよい。
【0010】
こうすれば、温度変化速度に応じて、表示体に表示するための画像を構成する画素の階調値(画素階調値)を、実際に表示する画像を構成する画素の階調値(表示階調値)に変更変換し、変換された表示階調値の画像データに応じた駆動条件で表示体が駆動される。従って、実際に表示される画像は変換された表示階調値によって温度変化速度に応じて温度補償されることになり、この結果、温度変化に対して精度の良い温度補償が行えることになる。
【0011】
ここで、前記階調設定部は、前記温度変化速度が閾値を超える場合に、当該閾値以下の場合よりも前記表示される画像の階調表示数が少なくなるように、前記画素階調値を前記表示階調値に変更設定することとしてもよい。
温度変化速度が閾値を超えた場合は、後述するように、画像が本来表示すべき階調表示を行うことが困難な場合が存在する。このような場合、例えば白色か黒色かの2つの階調を表示するなど、階調表示数を少なくする。こうすれば、中間調(例えば灰色)を、黒色か白色かに前もって変更するので、例えば1つの文字が太くなったり細くなったりすることが回避され、温度変化に影響されない安定した画像を表示することができる。
【0012】
あるいは、前記階調設定部は、前記画素階調値と前記表示階調値との対応関係を規定するテーブルに基づいて、前記画素階調値を前記表示階調値に変更設定することとしてもよい。
こうすれば、温度変化速度を示す温度勾配に応じて、テーブルに基づいて画素階調値を表示階調値に容易に変更設定することができる。この結果、表示体の画面が全体的に暗くなり過ぎたり、明るくなり過ぎたりする現象を改善することができ、温度変化に対する温度補償を精度良く行うことができる。
【0013】
さらに、前記階調設定部は、前記温度変化速度が閾値を超える場合には、当該閾値以下の場合とは異なる表示階調値を設定することが好ましい。
温度変化速度が閾値を超える場合は、前述したように測定部の温度と表示材料の温度との温度差が大きくなっていることが想定される。このような場合、表示階調値を変えることによって駆動条件を変更する。こうすれば、表示体の画面が全体的に暗くなり過ぎたり、明るくなり過ぎたりする現象を改善することができ、温度変化に対する温度補償を精度良く行うことができる。
【0014】
ここで、前記画素階調値が、予め定められた前記表示階調値に変換されるように、前記画素階調値を変更した変更画素階調値を生成する画像生成部を備え、前記階調設定部は、前記変更画素階調値を前記画素階調値として前記変更設定を行うこととしてもよい。
こうすれば、温度変化速度に応じてテーブルによって変更変換した表示階調値は、常に予め定められた表示階調値とすることができる。従って、表示体を駆動する駆動条件は常に同じ条件となるので、駆動条件の種類数に限度がある場合は有効に温度補償を行うことができる。
【0015】
また、本発明の画像表示装置は、前記表示体の温度を測定する温度測定部を更に有し、前記駆動条件設定部は、前記画像データに加えて前記測定された表示体の温度に応じて前記駆動条件を設定することとしてもよい。
こうすれば、表示体の温度に応じた駆動条件で駆動するので、表示体の温度変化速度のみならず、表示体の温度に応じた温度補償を並行して行うことで、より精度の高い温度補償が実現できる。
【0016】
また、前記駆動条件設定部は、前記表示体に表示される画像の階調表示数以上の種類数を有する前記駆動条件から、前記画像データに応じた駆動条件を設定することとしてもよい。
こうすれば、温度変化速度に応じた駆動条件を、表示階調値に応じて複数の駆動条件から設定することができるので、温度補償を適切に行うことができ、より精度の高い温度補償が実現できる。
【0017】
ここで、前記表示体の表示材料は、分子配向が異なる複数の最終配向状態を呈する液晶材料であり、前記表示体駆動部は、前記分子配向の配向状態を前記最終配向状態とは異なる過渡配向状態に遷移させた後、前記最終配向状態を選択期間で選択する駆動方式を用いて、前記表示体を駆動することとしてもよい。
さらに、前記表示体は、表示材料としてコレステリック液晶分子を用いたものであることとしてもよい。
【0018】
このような駆動方式の例としては、例えば、前述したコレステリック液晶のDDS駆動方式が挙げられる。この場合、過渡的な配向状態とは、ホメオトロピック配向が相当する。その後、最終配向状態(プレーナ配向またはフォーカルコニック配向)を選択するための選択期間において、ホメオトロピック配向を過渡プレーナ配向に選択的に遷移させる。この過渡プレーナ配向は短時間で遷移させることができるため書き換え時間を大幅に短縮できるという利点がある。一方で、この過渡プレーナ配向は温度によって遷移の可否が左右されることから、高い精度の温度補償が要求される。従って、本発明の適用が非常に有効である。
また、コレステリック液晶は、上記DDS駆動方式によって駆動できる表示材料であり、温度変化による特性の変化が大きいので、本発明の適用が非常に効果的である。
【0019】
本発明を画像表示方法として捉えることもできる。すなわち、表示体に画像を表示する画像表示方法であって、前記表示体の温度変化速度を検出する温度変化速度検出工程と、前記画像の画像データに応じて、前記表示体に前記画像を表示するための駆動条件を設定する駆動条件設定工程と、前記検出された温度変化速度に応じて、前記設定された駆動条件を変更する駆動条件変更工程と、前記駆動条件変更工程により変更された駆動条件で前記表示体を駆動し、前記表示体に前記画像を表示する表示体駆動工程と、を備えたことを要旨とする。
本発明の画像表示方法によれば、上述した本発明の画像表示装置と同様の作用効果を得ることができる。なお、この画像表示方法は、上述した画像表示装置の各機能を実現するような工程を追加してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明を具体化した一実施形態としての画像表示装置について、以下の順序で説明する。
(A)画像表示装置の機能構成について
(B)コレステリック液晶のDDS駆動方式について
(C)本実施形態での温度補償の第1実施例
(D)本実施形態での温度補償の第2実施例
(E)本実施形態での温度補償の第3実施例
【0021】
(A)画像表示装置の機能構成について:
図1は本実施形態となる画像表示装置100の機能構成を示すブロック図である。画像表示装置100は、図示するように、表示体パネル1と、表示体パネル1を所定の駆動条件で駆動する表示体駆動回路2と、表示体パネル1の温度を取得し保存する温度データ取得保存回路3と、表示体パネル1の駆動条件を制御する制御回路4と、表示体パネル1に表示する画像を書き換えるための書き換えボタン5とを備えて構成されている。
【0022】
表示体パネル1は記憶性を有するものであり、本実施形態では表示材料としてコレステリック液晶を用いる。そして、図2に示すように、表示材料としてのコレステリック液晶層1aは、透明電極1b、ガラス基板1c、光吸収層1dなどによって挟持されて構成されている。コレステリック液晶層1aのコレステリック液晶分子は、分子の配向状態によって光の反射率が異なり、例えば、図2(a)のプレーナ配向(以下、単に「P配向」)では入射光を反射するため反射光の色が表示され、同図(b)のフォーカルコニック配向(以下、単に「F配向」)では入射光を略透過し、その透過光が光吸収層1dに吸収されるため黒表示となる。このため、各画素領域におけるコレステリック液晶分子の配向状態を制御することによって、表示体パネル1に表示する画像を書き換えるなどして表示画像を変更することができる。この配向状態は、透明電極1bによりコレステリック液晶層1aに印加する電圧によって制御できるが、P配向及びF配向は配向状態が安定しているため電圧を印加しなくても当該状態が維持される。従って、電圧を印加して書き換えた表示画像は、電力を消費することなくそのまま維持される。もとより、このような構造を有する表示体パネル1が請求項記載の表示体に相当する。
【0023】
なお、図2(c)のホメオトロピック配向(以下、単に「H配向」)は、コレステリック液晶分子のらせん構造が崩れた状態であり、光は透過するが安定状態ではないため、電圧をかけている状態でのみ存在する。このH配向状態については、以降説明するDDS駆動において説明する。
温度データ取得保存回路3は、表示体パネル1の温度をリアルタイムに測定し、保存する。本実施形態では、温度センサ31と、ADコンバータ32と、PLD(Programmable Logic Device)33と、RAM(random−access memory)34と、を備えて構成される。温度センサ31は、表示体パネル1の表示面と反対の裏面側であって表示体パネル1の構成部材、例えば、光吸収層1d(図2)に当接して設けられている。
【0024】
温度センサ31は、例えば、図3に示すように、温度検知素子として、温度が上昇すると抵抗が小さくなるサーミスタ31Aを用いる。図示するように、サーミスタ31Aは、抵抗31Bが直列接続すると共に、一端が電圧源VTに接続されており、サーミスタ31Aと抵抗31Bとの間から分岐する分岐路には、サーミスタ31Aの抵抗と抵抗31Bの比によって分割された電圧値が出力される。この分岐路上にはADコンバータ32が接続しており、ADコンバータ32は、アナログ信号で出力された電圧値をデジタル信号に変換して、PLD33に出力する。PLD33は、ADコンバータ32からデジタル信号に変換された温度データが出力されると、出力された温度データを取得し、RAM34に格納して保存する。
【0025】
この温度データ取得保存回路3は、例えばその他の回路(制御回路4や表示体駆動回路2など)とは別電源系統とすることによって電源が常に供給され、所定のサンプリング周期(例えば、10msec毎)で温度を継続して測定するように構成されている。そして、測定した時系列の温度データを所定回数分蓄積して、温度履歴データとして保存する。なお、温度データ取得保存回路3は、請求項記載の温度変化速度検出部および温度測定部に相当する。
【0026】
制御回路4は、CPU(central processing unit)41、RAM42、ROM(read−only memory)43、及び、表示体駆動制御回路44を備えて構成されている。制御回路4は、請求項記載の駆動条件設定部、駆動条件変更部、階調設定部として機能する。
CPU41は、ユーザによって画像書き換えボタン5が押されると起動され、ROM43から制御プログラムを読み込み、制御プログラムに基づく動作を開始する。CPU41は、まず、温度データ取得保存回路3のRAM34に保存された温度履歴データを読み込み、温度勾配が閾値を超える否かを判定する。温度勾配は、温度の時間変化の度合い(すなわち、温度変化速度)を示し、例えば、判定時点よりも前の2つの時点における測定温度データの差分を温度勾配として用いる。
【0027】
そして、CPU41は、読み込んだ温度履歴データと判定結果に応じて、各画素の画像データとして各画素が有する階調値(以降、「画素階調値」)と、各画素を書き換える際に印加する駆動電圧波形の実効電圧値を決定するための階調値(以降、「表示階調値」)との対応関係を示す対応テーブル(後述する)とともに、画像書き換え指令を表示体駆動制御回路44に出力する。同時に、表示すべき画像データをROM43の所定領域から読み込み、RAM42上に展開し、必要な場合には画像処理等を行ってから、表示体駆動制御回路44に転送する。なお、対応テーブルは、表示体パネル1の温度をパラメータとしたテーブルであり、1つの画素階調値に対して1つの表示階調値が対応するように関係付けがされ、ROM43(図1)に格納されている。
【0028】
表示体駆動制御回路44は、CPU41から画像書き換え指令が出力されると、対応テーブルに基づいて、各画素の画素階調値を表示階調値に変換する。具体的には、本実施形態では、表示体パネル1に表示する画像の階調数は4階調であるものとし、各画素の画像データ(画素階調値)は4種類=2bitで表されるものとする。従って、CPU41から表示体駆動制御回路44に出力される画像データは、2bitで表されるデータである。
【0029】
なお、本実施形態では、画素階調値は、表示体パネル1の表示画面の反射率が最も高い状態(白状態)を1、最も低い状態(黒状態)を0として規格化した値(これを、「規格化反射率」とも呼ぶ)で表したとき、4等分の反射率を示す値であるものとする。すなわち、4段階の階調表示に相当する規格化反射率(0,1/3,2/3,1)に相当する値を有するものとする。もとより、この4階調に相当する画素階調値は、実際に表示体に表示された画像について、この画像を構成する画素の反射率や透過率に相当する値であることから、表示体に用いる表示材料によって決まるものである。
【0030】
一方、コレステリック液晶の最終的な分子配向を、前述したP配向かF配向かのどちらかに選択決定する選択期間(以降説明するDDS駆動方式では、この期間を「Selection期間」と呼ぶ)に印加する上記駆動電圧波形の実効電圧値(以下、「Selection電圧」と呼ぶこともある。)は、後述するが本実施形態では4bitのデータで表される16種類(V0からV15)の実効電圧値が用意されている。したがって、変換された表示階調値は、この16種類の実効電圧値の中から、画素階調値に対応する4種類の実効電圧値を特定するデータであるので、本実施形態では、実効電圧値と同じ16種類が存在することになる。
【0031】
表示体駆動回路2は、表示体駆動制御回路44から出力された4種類の実効電圧値を示す4bitのデータを受け取り、所定の駆動電圧波形を生成し、図示しない横電極と縦電極が交差する表示体パネル1の各画素に印加する。具体的には、本実施形態では、表示体駆動回路2は、複数の走査線(横電極)及び複数のデータ線(縦電極)がマトリクス状に形成された単純マトリクス方式の電極(図2、透明電極1b)、当該複数の走査線を駆動する走査ドライバ、及び、複数のデータ線を駆動するデータドライバなどを備えて構成される。
【0032】
データドライバは、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)が可能なPWM回路を備えており、4bitのデータに基づいて、駆動対象となる画素に印加する駆動電圧波形である電圧パルスのパルス幅を変調して変更する。従って、所定の電圧値が出力される時間となるパルス幅がPWM回路によって制御され、その結果、16種類の実効電圧値(V0からV15)が表示体駆動回路2から出力されるように構成されている。従って、上記4つの選択された実効電圧値に対応するパルス幅を有する駆動電圧波形が、駆動対象の画素に印加されるのである。
【0033】
(B)コレステリック液晶のDDS駆動方式について:
さて、本実施形態では、表示体パネル1の駆動方式としてDDS駆動方式を用い、所定の駆動電圧波形(例えば前述の特許文献1(米国特許第5748277号)で提案されている駆動電圧波形)を、Selection期間に表示体パネル1の各画素に位置するコレステリック液晶層1aに印加することによって、画像データの書き換えを行うものとする。
【0034】
ここで、DDS駆動方式について説明する。DDS駆動方式は、図4(a)に示す過程を経て液晶の最終配向状態を決定する方式である。すなわち、まず、Preparation期間において、P配向又はF配向になっている液晶を、図2(c)に示したH配向にする電圧を印加する。次に、Selection期間において、最終的な画像表示状態(書き換え後にF配向にするかP配向にするか)を選択するための電圧を印加する。このとき、表示階調値に応じた実効電圧値を印加することで、H配向に維持するか、又は、過渡プレーナー配向(TP配向)と呼ばれるらせん構造のねじれが若干弛緩した状態へ移行させるかの選択を行う。そして、1つの画素において、印加する実効電圧値に応じて、液晶分子単位レベルでH配向とTP配向との混在割合を制御し、面積階調によって中間階調を含めた階調表示を実現する。そして、Evolution期間において、Selection期間で選択した最終的な画像表示状態を定着させるための電圧を印加する。
【0035】
これにより、Selection期間においてH配向としたものは、H配向をそのまま維持するが、電圧を消去したときに最終的にP配向に遷移する。一方、TP配向となっていた液晶分子は、Evolution期間においてF配向に遷移し、最終的にF配向に定着する。つまり、Selection期間において画素に印加する実効電圧値によって、表示体パネル1に表示する画像を書き換えることができる。ちなみに、1画素の液晶分子が総てP配向になると白表示となり、総てF配向になると黒表示となる。また、P配向とF配向が混在すると、混在割合に応じた灰色を表示する。
【0036】
このように、DDS駆動方式は、Selection期間において画素の表示階調を決定することができるため、前述したように、表示体パネル1に表示する画像を短時間に書き換えることが可能である。なお、Selection期間は、画像の書き換え時における表示体パネル1の温度に応じて、その期間の長さが設定され、画像の書き換え動作中は変更されない。ちなみに表示体パネル1の温度が低ければSelection期間は長く設定される。このSelection期間が、請求項に記載の選択期間に相当する。
【0037】
(C)本実施形態での温度補償の第1実施例:
さて、上述した本実施形態の画像表示装置100において、表示体パネル1の温度が変化した場合、駆動時における表示体パネル1の推定温度と実際のコレステリック液晶の温度との間に誤差が生ずる。特に、画像表示装置100が、冷たい屋外から暖かい屋内に移動された場合は、その誤差が著しくなる。従って、推定温度に応じて設定された実効電圧値によって表示体パネル1を書き換え駆動すると、Selection期間において画素に印加すべき実効電圧値とは異なる実効電圧値が印加され、画像を正しく表示することが出来ないことになる。
そこで、まず、本実施形態の画像表示装置が行う温度補償の第1実施例は、表示体パネル1の温度変化速度に応じて、印加する実効電圧値を変更処理するものである。この処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0038】
画像書き換えボタン5が押されたことによってCPU41が起動され、この処理が開始されると、まずCPU41は、温度データ取得保存回路3がそれまでに取得した温度データを取得し、表示体パネル1の温度を推定する処理を行う(ステップS101)。本実施形態では、CPU41は、表示体パネル1の推定温度として、温度データの履歴温度から求めた1つの温度を採用する。つまり、温度センサ31は表示体パネル1裏面に貼り付けているので、環境温度の変化に対する応答は、パネル内部の液晶材料よりも早く現れる。したがって、温度センサの計測温度と液晶材料の温度の時間変化は、図6のようになっていると考えられる。そこで、例えば図6に示すように、温度データの履歴温度について、表示体パネル1の駆動時から「一定の時間」遡った過去の温度センサ計測温度TXを推定温度として採用する。この「一定の時間」は、実験的/経験的に求めてもよいし、ガラス基板1c等の熱伝導率、熱容量から算出してもよい。
【0039】
そして、次のステップS102にて、推定温度をパラメータ温度とする対応テーブルを選択する処理を行う。このステップS102では、取得した温度データから、上述したように表示体パネル1の駆動時における推定温度を求め、前述したようにDDS駆動方式を行うためのSelection期間を推定温度に応じて設定する。
次に、ステップS103にて、温度変化速度を算出する処理を行う。CPU41は、温度変化速度として、前述したように履歴温度のうちの2つの時点における測定温度の差分を、2つの時点間の経過時間で除した温度勾配として算出する。
【0040】
そして、次のステップS104にて、温度勾配の絶対値が設定閾値を超えるか否かを判定し、閾値以下であるときは(NO)、ステップS108に進む。温度勾配の絶対値が閾値以下の場合は、液晶材料の実際の温度は温度センサー31が測定した履歴温度にほぼ追随していると考えてよいので、後述する対応テーブルの選択は行わずステップS108に進むのである。
【0041】
一方、温度勾配が閾値を超える場合は(YES)、次のステップS105にて、温度変化は上昇か否かを判定処理する。ステップS105では、温度勾配がプラスであれば、温度変化は上昇であるので(YES)、ステップS106に進み、ステップS101にて求められた推定温度を低くした温度をパラメータ温度とする対応テーブルを選択する処理を行う。一方、温度勾配がマイナスであれば、温度変化は下降であるので(NO)、ステップS107に進み、ステップS101にて求められた推定温度を高くした温度をパラメータ温度とする対応テーブルを選択する処理を行う。
【0042】
ここで、本実施例における対応テーブルTAの一例を図7に示した。対応テーブルTAは、ステップS102で推定温度に基づき設定された1つのSelection期間に対して、表示体パネル1の温度PTをパラメータとして、画素階調値と表示階調値との対応関係を規定したものである。図7は、一例として推定温度が26℃のとき、実際の表示体パネル1の温度PTが25℃,26℃,27℃である場合について示したものである。縦軸は画素階調値として規格化反射率Rを示し、横軸は、その規格化反射率を得るために画素に印加する実効電圧値を決める値となる16種類の表示階調値Hn(n=0〜15)を示している。
【0043】
なお、表示階調値Hnは、nの値が大きくなるにつれて漸次実効電圧値が増加するような値を有している。従って、対応テーブルTAは温度PTをパラメータとする電圧と表示体の明るさとの特性を示した所謂VR特性カーブを示すものでもある。
ステップS106およびステップS107では、以下の動作に基づき対応テーブルTAにおける温度PTの選択を行い、推定温度と実際の液晶の温度のズレに起因する階調表示のズレを補正する。
【0044】
例えば、温度勾配が正であった場合は、急激に環境温度が上昇しているため、液晶材料の実際の温度は温度センサー31が測定した履歴温度(つまり推定温度)よりも低い温度で追随する。よって、ステップS102で求められた推定温度が26℃であったとすると、これより低い温度(例えば「25℃」)をパラメータ温度PTとする対応テーブルを選択する(ステップS106)。ちなみに、推定温度よりも実際の液晶の温度が低いと、Selection期間が実際の液晶の温度に対して設定されるべき値より短く設定されてしまい、Selection期間でTP配向に遷移することができなくなるため、表示が全体的に白っぽくなる(P配向になる)。
【0045】
逆に、温度勾配が負の場合は、急激に環境温度が下降しているため、液晶材料の実際の温度は温度センサー31が測定した履歴温度(つまり推定温度)よりも高い温度で追随する。よって、ステップS102で求められた推定温度が26℃であったとすると、温度TPをこれより高い温度(例えば「27℃」)をパラメータ温度とする対応テーブルを選択する(ステップS107)。ちなみに、推定温度よりも実際の液晶の温度が高いと、Selection期間が実際の液晶の温度に対して設定されるべき値より長く設定されてしまい、Selection期間でTP配向に遷移してしまうため、表示が全体的に黒っぽくなる(F配向になる)。
推定温度に対して、どのくらい高くするか、あるいは低くするかについては、表示体パネル1の構造や表示材料に依存することから、予め所定の温度変化速度を与えて実測し、実測結果に基づいて予め設定しておくことが好ましい。
【0046】
そして、ステップS108にて選択された対応テーブルを用いて、画素階調値を表示階調値に変換設定処理する。本実施例では図7に示したように1つの画素階調値(規格化反射率)に対して1つの表示階調値に変更設定される。例えば、温度TP=27℃が選択された対応テーブルであれば、表示階調値は(H0,H8,H11,H15)の4種類が選択される。こうして、表示体駆動制御回路44は、(H0,H8,H11,H15)の各表示階調値の種類を示す4bitのデータを、Selection期間において、対象となる画素に印加するSelection電圧のデータとして表示体駆動回路2に出力する。なお、温度TP=25℃が選択された対応テーブルであれば、表示階調値は(H0,H4,H7,H15)の4種類が設定される。
【0047】
次いで、ステップ109にて、設定された表示階調値に対応する駆動条件を設定する処理を行う。ステップS109では、表示階調値に応じてSelection電圧が決定され、決定されたSelection電圧で特定される実効電圧値を有する駆動電圧波形が生成される。その後、生成された駆動電圧波形が対象の画素に印加され、表示体パネル1の画像を書き換え(ステップS110)、第1実施例の処理を終了する。
【0048】
この結果、表示体パネル1の温度変化速度が大きい場合、推定温度に応じて選択された対応テーブルでは、表示材料である液晶材料の実際の温度が推定温度と異なることによって、画像が白くなったり暗くなったりすることになるが、本実施例の如く温度変化速度(温度勾配の絶対値)が閾値を超える場合に選択する対応テーブルを変更すれば、これを防止して正確で自然な階調を再現することが可能となる。
【0049】
なお、DDS駆動方式は、上記図4(a)に示す方式に限られず、図4(b)のようにして配向状態を選択する場合も含むものである。この場合には、Selection期間までは図4(a)と同じであるが、Evolution期間において印加する電圧が図4(a)の場合よりも低い。これにより、Evolution期間における配向状態の遷移が図4(a)の場合とは異なったものとなり、Selection期間においてH配向を維持したものがF配向に遷移し、TP配向に遷移したものがP配向に遷移して、そのまま最終的な配向状態となる。
【0050】
従って、この場合には、上記説明とは逆になり、温度勾配が正であった場合は、Selection期間でTP配向に遷移することができなくなるため、表示が全体的に黒っぽくなる(F配向になる)。よって推定温度を高くした温度をパラメータ温度とする対応テーブルを選択することによって、表示画像を全体的に明るくすることでこれを相殺し、正確で自然な階調を再現できる。一方、温度勾配が負の場合は、Selection期間でTP配向に遷移してしまうため、表示が全体的に白っぽくなる(P配向になる)。よってガンマ値を増加させることによって、表示画像を全体的に暗くすることでこれを相殺し、正確で自然な階調を再現できる。
【0051】
(D)本実施形態での温度補償の第2実施例:
上記第1実施例では、温度をパラメータとした対応テーブルによって、画素階調値を表示階調値に変更設定し、表示体パネルの温度が変化した場合に生ずる推定温度と実際の液晶の温度との温度差を温度補正する処理方法であった。次に、本実施形態にける第2実施例は、後述するガンマ値を用いて、画素階調値を表示階調値に変換設定することによって温度の補正処理を行うものである。この処理について、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0052】
画像書き換えボタン5が押されたことによってCPU41が起動され、この処理が開始される。なお、図8に示した第2実施例の処理フローチャートにおいて、図5に示した第1実施例の処理フローチャートと同じ処理が行われるステップは同じ符号を付した。つまり、ステップS102a,S106a,S107a,S108a以外の処理ステップ(例えばステップS101、ステップS103など)は、図5にて説明した処理と同じ処理が行われるため、ここではそれらの詳しい説明を省略し、これらの異なる処理ステップを中心に、その処理内容を説明する。
【0053】
画像書き換えボタン5が押されたことによってCPU41が起動され、この処理が開始されると、まずCPU41は、温度データ取得保存回路3がそれまでに取得した温度データを取得し、表示体パネルの温度を推定する処理を行う(ステップS101)。そして、次のステップS102aにて、推定温度からガンマ値を設定する処理を行う。
ここで、ガンマ値について説明する。ガンマ値は、画素階調値Xと表示階調値Yとが、以下の式(1)の対応関係となるように規定したものである。このガンマ値は、駆動電圧波形の生成に必要なパラメータであり、本実施形態ではSelection期間に画素に印加する実効電圧値を決めるためのパラメータである。具体的には、温度が高いときは液晶分子の粘性が低くなるため、Selection期間に印加する実効電圧値が小さくなるように、また温度が低いときは液晶分子の粘性が高くなるためSelection期間に印加する実効電圧値が大きくなるように、ガンマ値を設定する。
【0054】
Y = Xγ …(1)
【0055】
なお、本実施例においては、画素階調値および表示階調値の各値は、表示体パネル1の表示画面の反射率が最も高い状態(白状態)を1、最も低い状態(黒状態)を0として規格化した値(これを、「規格化反射率」とも呼ぶ)である。もとより、画像データが画素毎に8bitで示される0〜255までのいずれかの階調値であった場合は、階調値「0」を規格化反射率「0」とし、階調値「255」を規格化反射率「1」とし、例えばディザマトリックスを用いた階調変換処理等によって、各画素の階調値を規格化反射率に変換したものを画素階調値とすればよい。これが、前述したCPU41が行う「必要な場合の画像処理」の一例である。従って「画素階調値」とは、実際に表示体に表示された画像について、この画像を構成する画素の反射率や透過率に相当する値を言い、もとより、表示体に用いる表示材料によって決まるものである。そして、本実施例においても、画素階調値は4段階の階調表示に相当する規格化反射率(0,1/3,2/3,1)の値を有するものとする。
【0056】
さて、(1)式において、ガンマ値を1に設定すると、4階調の画素階調値Xの各値は(0,1/3,2/3,1)であるので、表示階調値Yの値は(0,1/3,2/3,1)となる。そして、この表示階調値の値(0,1/3,2/3,1)に対応するSelection電圧が選択される。
表示階調値に対応するSelection電圧は、本実施例では図9に示したように1つの表示階調値(規格化反射率)に対して1つの実効電圧値が対応するように関係付けがされ、所定のテーブルTBとして、ROM43(図1)に格納されている。従って、ガンマ値が1の場合は、テーブルTBから、Selection電圧は(V0,V5,V10,V15)の4種類が選択される。こうして、表示体駆動制御回路44は、CPU41から出力される4階調の画素階調値(0,1/3,2/3,1)に応じて、(V0,V5,V10,V15)の各実効電圧値の種類を示す4bitのデータを、Selection期間において、対象となる画素に印加するSelection電圧のデータとして表示体駆動回路2に出力する。
【0057】
また、ガンマ値を、「1」より大きい「2」と設定した場合は、4階調の画素階調値Xの各値(0,1/3,2/3,1)に対応する表示階調値Yの値は(0,1/9,4/9,1)となる。したがって、4階調の表示階調値(0,1/9,4/9,1)に応じて、図9よりSelection電圧は(V0,V1,V7,V15)の4つの種類が選択される。そして、表示体駆動制御回路44が(V0,V1,V7,V15)の各実効電圧値の種類を示す4bitのデータを表示体駆動回路2に出力する。
【0058】
上記のガンマ値の説明からわかるように、ガンマ値を大きくすると、中間の規格化反射率を示す表示階調値が黒側(0)に寄るので表示画像は暗くなり、ガンマ値を小さくすると中間の規格化反射率を示す表示階調値が白側(1)に寄るので表示画像は明るくなる。
次に、ステップS103にて、温度変化速度を算出する処理を行う。CPU41は、温度変化速度として、前述したように履歴温度のうちの2つの時点における測定温度の差分を、2つの時点間の経過時間で除した温度勾配として算出する。
【0059】
そして、次のステップS104にて、温度勾配の絶対値が設定閾値を超えるか否かを判定し、閾値以下であるときは(NO)、ステップS108aに進む。一方、温度勾配が閾値を超える場合は(YES)、次のステップS105にて、温度変化は上昇か否かを判定処理する。
ステップS105では、温度勾配がプラスであれば、温度変化は上昇であるので(YES)、ステップS106aに進み、ステップS102にて設定されたガンマ値を大きく変更する処理を行う。一方、温度勾配がマイナスであれば、温度変化は下降であるので(NO)、ステップS107aに進み、ステップS102にて設定されたガンマ値を小さく変更する処理を行う。
【0060】
例えば、ステップS102で設定されたガンマ値が「2」であったとすると、温度勾配が正であった場合は、急激に環境温度が上昇しているため、液晶材料の実際の温度は温度センサー31が測定した履歴温度である推定温度よりも低い温度で追随する。従って、推定温度よりも実際の液晶の温度が低くなるため、Selection期間に印加される実効電圧値が理想値よりも小さくなってしまい、Selection期間でTP配向に遷移することができなくなるため、表示が全体的に白っぽくなる(P配向になる)。よってガンマ値を例えば「2.5」に増加させることによって、表示画像を全体的に暗くすることで、これを相殺し正確で自然な階調を再現できる(ステップS106a)。
【0061】
逆に、温度勾配が負の場合は、急激に環境温度が下降しているため、液晶材料の実際の温度は温度センサー31が測定した履歴温度である推定温度よりも高い温度で追随する。従って、推定温度よりも実際の液晶の温度が高くなるため、Selection期間に印加される実効電圧値が理想値よりも大きくなってしまい、Selection期間でTP配向に遷移してしまうため、表示が全体的に黒っぽくなる(F配向になる)。よってガンマ値を例えば「1.5」に減少させることによって、表示画像を全体的に明るくすることで、これを相殺し正確で自然な階調を再現できる(ステップS107a)。
【0062】
なお、温度勾配の絶対値が閾値以下の場合は、液晶材料の実際の温度は温度センサー31が測定した履歴温度にほぼ追随していると考えてよいので、ガンマ値は変更せずステップS108aに進むのである。
そして、ステップS108aにて設定または変更されたガンマ値を用いて表示階調値に変換処理し、次いで、ステップ109にて、表示階調値に対応する駆動条件を設定する処理を行う。ステップS109では、表示階調値に応じてSelection電圧が決定され、決定されたSelection電圧で特定される実効電圧値を有する駆動電圧波形が生成される。その後、生成された駆動電圧波形が対象の画素に印加され、表示体パネル1の画像を書き換え(ステップS110)、第2実施例の処理を終了する。
【0063】
この結果、表示体パネル1の温度変化速度が大きい場合、推定温度に応じて設定された最適なガンマ値では、表示材料である液晶材料の実際の温度が推定温度と異なることによって、画像が白くなったり暗くなったりすることになるが、本実施例の如く温度変化速度(温度勾配の絶対値)が閾値を超える場合にガンマ値を変更すれば、これを防止して正確で自然な階調を再現することが可能となる。
【0064】
なお、第1実施例と同様に、DDS駆動方式は、上記図4(a)に示す方式に限られず、図4(b)のようにして配向状態を選択する場合も含むものである。この場合には、Selection期間までは図4(a)と同じであるが、Evolution期間において印加する電圧が図4(a)の場合よりも低い。これにより、Evolution期間における配向状態の遷移が図4(a)の場合とは異なったものとなり、Selection期間においてH配向を維持したものがF配向に遷移し、TP配向に遷移したものがP配向に遷移して、そのまま最終的な配向状態となる。
【0065】
従って、この場合には、上記説明とは逆になり、温度勾配が正であった場合は、Selection期間でTP配向に遷移することができなくなるため、表示が全体的に黒っぽくなる(F配向になる)。よってガンマ値を減少させることによって、表示画像を全体的に明るくすることでこれを相殺し、正確で自然な階調を再現できる。一方、温度勾配が負の場合は、Selection期間でTP配向に遷移してしまうため、表示が全体的に白っぽくなる(P配向になる)。よってガンマ値を増加させることによって、表示画像を全体的に暗くすることでこれを相殺し、正確で自然な階調を再現できる。
【0066】
(E)本実施形態での温度補償の第3実施例:
上記第1実施例および第2実施例では、中間調を含む4階調の階調表示を、温度変化速度に応じて補正する例であったが、実際に生じている温度変化速度が閾値を超えた場合は、画像が本来有する数の階調表示を行うことが困難な場合が存在する。例えば、推定温度そのものが相当に高温であって、更に温度上昇する場合や、逆に推定温度そのものが相当に低温であって、更に温度下降する場合などでは、中間調を表示するための実効電圧値が、PWM回路によって制御される16種類から設定できないような場合である。あるいは、温度変化が、上昇から急降下したり、下降から急上昇すると、実際の液晶の温度の変化挙動を推測することが困難であり、例えば第2実施例において推定温度に基づくガンマ値の設定変更では、表示階調を正確に補正できない場合である。
【0067】
そこで、次に、本実施形態の画像表示装置が行う温度補償の第3実施例は、表示体パネル1の温度変化速度に応じて、階調表示数を少なく処理するものである。こうすれば、例えば中間調(例えば灰色)を、黒色か白色かに前もって変更するので、1つの文字が太くなったり細くなったりすることが回避され、温度変化に影響されない安定した画像を表示することができるものである。この処理について、図10のフローチャートを用いて説明する。
【0068】
画像書き換えボタン5が押されたことによってCPU41が起動され、この処理が開始される。なお、図10に示した第3実施例の処理フローチャートにおいて、図8に示した第2実施例の処理フローチャートと同じ処理が行われるステップは同じ符号を付した。つまり、ステップS101からステップS104までと、ステップS108からステップ110までは、図8にて説明した処理と同じ処理が行われるため、ここでは説明を省略し、ステップS121について、その処理内容を説明する。
【0069】
第3実施例では、ステップS104にて温度勾配の絶対値が閾値を超える場合(YES)、ステップS121にて画素階調値を2値に変更する処理を行う。第2実施例では、表示体パネル1に表示する画像の階調数は4階調であるものとし、表示体駆動制御回路44が、CPU41からガンマ値を指定した画像書き換え指令が出力されたとき、各画素の画素階調値(0,1/3,2/3,1)を変換した表示階調値も、設定されたガンマ値に応じて4種類の階調値に変換され、変換された表示階調値に対応する4種類のSelection電圧が選択されるものとした。
【0070】
第3実施例では、表示体駆動制御回路44がガンマ値に基づいて画素階調値を表示階調値に変換する際、前もって4階調の画素階調値(0,1/3,2/3,1)を2種類の画素階調値(0,1)に変更する。本実施例では、画素階調値(1/3)を画素階調値(0)に、画素階調値(2/3)を画素階調値(1)に変更するものとする。具体的な処理方法としては、前述したように、画像が画素毎に8bitで示される0〜255までのいずれかの階調値であった場合は、2値化用のディザマトリックスを用いた階調変換処理によって階調値を「0」と「255」とに2値化し、規格化反射率「0」と規格化反射率「1」とからなる画素階調値に変換処理を行えばよい。
【0071】
前述の説明からわかるように、ガンマ値に関わらず、画素階調値(0)は表示階調値(0)に変換され、画素階調値(1)は表示階調値(1)に変換される。この結果、Selection電圧は、図9に示したように、表示階調値に応じて、それぞれ最小と最大の実効電圧値が選択され、画素ごとに安定して液晶の配向状態を選択することができることから、白表示もしくは黒表示を安定して表示することが可能である。従って、画素階調値(1/3)が白表示になったり、画素階調値(2/3)が黒表示になったりして、1つの文字が太くなったり細くなったりすることが回避され、表示体パネル1の温度変化速度に依存することなく、安定した画像を表示することができるものである。
【0072】
このように、第3実施例によれば、表示体パネル1の温度変化速度が大きい場合、例えば、予め灰色を示す中間調の階調値を、文字の線が太ったり細ったりしないように白色か黒色かを示す2値の階調値に変換する。この結果、温度変化速度(温度勾配の絶対値)が閾値を超える場合であっても、文字の線が太ったり細ったりすることなく、自然な画像を表示することが可能となる。
以上、本発明について、一実施形態および実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態および実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において様々な形態で実施し得ることは勿論である。以下変形例を挙げて説明する。
【0073】
(第1変形例)
上記実施形態では、ROM43の所定領域に格納された画像データを変更することなく規格化反射率に置き換えた画素階調値を用いて、設定されたガンマ値に応じた表示階調値に変換し、変換した表示階調値に対応するSelection電圧を選択した。このため、設定されたガンマ値が変化すると、変換される表示階調値も変化するために、表示階調値に対応するSelection電圧も種類数が多くなり、上記実施形態では、4bit16種類のSelection電圧を用意することとしていた。
【0074】
従って、16種類のSelection電圧に対応する実効電圧値を駆動対象の画素に印加するために、PWM回路によって出力電圧パルスのパルス幅を変更した16種類の駆動電圧波形を生成した。ところで、一般的に表示体パネル1に印加する駆動電圧波形の種類が少なければ少ないほど駆動が容易になる。また、詳細は説明しないが、駆動電圧波形の種類が少なければ、クロストークといった表示画像品質を劣化させる要因も抑制することができる。そこで、第1変形例として、Selection電圧、つまり駆動電圧波形の種類数を減らし、予め定められたパルス幅の駆動電圧波形のみが画素に印加されるようにしてもよい。
【0075】
こうすると、例えば、本来の表示階調となるべき駆動電圧波形と異なる駆動電圧波形を印加することになるため、本来表示すべき階調と異なる階調が表示されてしまう。そこで、本変形例では、ROM43の所定領域に格納された画像データとは異なる画像データを生成する。このとき、生成した画像データを規格化反射率に変換した画素階調値に対して、設定されたガンマ値に応じて規定される表示階調値が常に同じになるようにするのである。こうすることによって、選択されるSelection電圧が常に同じになり、画像の書き換え時に、予め定められたパルス幅の駆動電圧波形のみを画素に印加すればよいことになる。
【0076】
それでは、第1変形例に係る画像表示装置ついて説明する。図11は、第1変形例としての画像表示装置200の内部構成を示すブロック図である。同図に示すように、本変形例の画像表示装置200は、上記実施形態に係る画像表示装置100と略同様の構成で同様の動作であるが、設定されたガンマ値に応じた画像データを生成するために、制御回路4として画像生成部(GPU)45を備える点で画像表示装置100と異なる。
【0077】
画像表示装置100では、ROM43内部の所定領域に、あらかじめ外部(パーソナルコンピュータなど)で生成した画像データを格納していたが、画像表示装置200では、ROM43にはコンテンツの文字情報としてテキストデータ(ASCIIコードベース)や、それを表示する際のレイアウト情報が格納されている。GPU45は、これらの情報及とCPU41で決定したガンマ値とを基に、表示すべき画像データを生成(レンダリング)し、RAM42へ格納する。この際、画素階調値に対応して、設定されたガンマ値で規定される表示階調値の値が、予め定められた値となるように、各画素の画像データを、ガンマ値に応じて生成する。
【0078】
例えば、図8のフローチャートに示した第2実施例において、本変形例による処理を行う場合は、ステップS108aにおいて、変換後の表示階調値が予め定められた表示階調値になるように画像データを生成する。一例として、設定されたガンマ値で変換される表示階調値Yが予め(0,1/9,4/9,1)である場合、その設定されたガンマ値が1の場合は画素階調値Xが(0,1/9,4/9,1)に、またその設定されたガンマ値が2の場合は画像階調値Xが(0,1/3,2/3,1)になるように、画像データを生成する。
画像データの生成処理としては、例えば、もともとの画素階調値Xが(1/3)であるべき画素について、設定されたガンマ値が2のときは、画素階調値Xは(1/3)になるように画素の階調値データを生成する。こうすれば、変換後の表示階調値は(1/9)となって、予め定められた表示階調値になる。
【0079】
一方、設定されたガンマ値が1のときは、画素階調値X(1/3)の画素に対応する表示階調値Yは同じく(1/3)に変換されるので、予め定められた表示階調値と異なる表示階調値となってしまう。そこで、表示階調値(1/3)に最も近い実効電圧値を有するSelectin電圧に対応した表示階調値を選択する。前述した図4において、本変形例では、Selection電圧V5に対して、表示階調値(4/9)に相当するSelection電圧V7が、最も近い実効電圧値を有するものとすると、ガンマ値が1であるので、画素階調値(1/3)を、表示階調値と同じ変更画素階調値(4/9)に変更する。つまり、ガンマ値が1のときは、もともとの画素階調値が(1/3)であるべき画素について、画素階調値が(4/9)になるように、画素の階調値データを生成するのである。
【0080】
このような処理を総ての画素の階調値データについて行い、各画素の画素階調値を変更画素階調値に変更生成することで、駆動電圧波形の種類を特定することが可能となる。なお、上述した画像生成部45の処理に際して、予め定められた表示階調値の値を、(0,1/9,4,9,1)の一定値としたが、図9に示すように、選択されるSelection電圧の種類が少なければ駆動電圧波形の種類を少なくできる。従って、1つのSelection電圧が選択される範囲幅を有する値を、予め定められた表示階調値としてもよいことは勿論である。
【0081】
その後、CPU41は、上記のようにしてRAM42に格納された画像データを表示体駆動制御回路44に転送する。そして、表示体駆動制御回路44は、受け取った画像データとガンマ値から、予め定められた表示階調値に変換処理後、表示階調値に対応して選択された特定のSelection電圧を、駆動タイミングにあわせて表示体駆動回路2′に転送する。
【0082】
表示体駆動回路2′は、画像表示装置100における表示体駆動回路2とは異なり、データドライバが2bitのデータ入力に応じて4種類のPWM出力が可能なPWM回路を備えており、Selection電圧に応じたパルス幅を有する駆動電圧波形を生成して表示体パネル1を駆動する。その他の処理動作については、図8に示した処理フローチャートの通りである。
【0083】
このように、上記実施形態では、各画素の階調値データと画素階調値との対応関係は変更することなく、設定されたガンマ値で規定される表示階調値通りのパルス幅を有する駆動電圧波形を画素に印加し、各画素に応じた適切な階調表示を得た。一方、第1変形例では、各画素の階調値データと画素階調値との対応関係を変更することで、設定されたガンマ値で規定される表示階調値を予め定めた値とすることによって、少ない種類数の駆動電圧波形でも、各画素に応じた適切な階調表示を得ることが可能となる。
【0084】
なお、図1に示した上記実施形態の画像表示装置100のように、表示体駆動回路2を、表示体パネル1に表示する画像の階調表示数よりも多い種類の駆動電圧波形を生成可能な構成とした場合には、階調表示数の多い汎用的な画像データに対しても本発明を適用できるという利点がある。また、図11に示した第1変形例の画像表示装置200のように、表示体駆動回路2′が画像データの階調表示数と同じ種類の駆動電圧波形のみを生成する構成となっている場合であっても、例えば、パーソナルコンピュータと表示体とを通信接続することで表示体の書き換えを行う構成の画像表示装置であれば、本発明を適用できるという利点がある。つまり、パーソナルコンピュータのGPUで画像データを生成させることができるからである。
【0085】
(第2変形例)
上記実施例では表示体の画像書き換え処理(図5、図8、図10の各ステップS110)においては、表示体パネル1における画像書き換え処理中に、駆動条件である実効電圧値を変更することは行わなかった。しかしながら、温度変化が相当に激しい場合、画像の書き換え途中において、表示体パネル1の温度が推定温度からそうとうにズレてしまうことが起こり得る。そこで、本変形例では、画像の書き換え処理中に、少なくとも1回実効電圧値を変更することとしてもよい。本変形例の処理を、第1実施例に適用した場合について、図5の処理フローチャートを用いて説明する。
【0086】
本変形例を適用した場合、図5のステップ104において比較する閾値を大きい値に設定することが好ましい。つまり、閾値を超えたと判定された場合(ステップS104:YES)、温度が上昇であれば(ステップS105:YES)、温度変化が急激に高くなろうとしているので、表示体パネル1の温度は、画像の書き換え途中で推定温度よりも高くなっている確率が高い。そこで、ステップS106では、ステップS101にて推定された推定温度を駆動開始時の温度とし、この推定温度を高く変更した2つ目の推定温度を表示体パネル1の駆動途中の温度とし、これら2つの推定温度をそれぞれ低くした温度をパラメータ温度とする対応テーブルの選択処理を行うのである。
【0087】
一方、温度が下降であれば(ステップS105:NO)、温度変化が急激に低くなろうとしているので、表示体パネル1の温度は、画像の書き換え途中で推定温度よりも低くなっている確率が高い。そこで、ステップS107では、ステップS101にて推定された推定温度を駆動開始時の温度とし、この推定温度を低く変更した2つ目の推定温度を表示体パネル1の駆動途中の温度とし、これら2つの推定温度をそれぞれ低くした温度をパラメータ温度とする対応テーブルの選択処理を行うのである。
【0088】
本変形例では、2つ目の推定温度は、前述した図6において、一定の時間を所定時間短くした時間において、温度センサが計測した履歴温度を用いることとする。この短くする所定時間は、設定する閾値の大きさに応じて設定したり、画像書き換え時においてSelection期間として実際に設定されている時間に応じて設定したりすることが好ましい。
【0089】
このように選択された2つの対応テーブルを用いて、ステップS108にて変換設定された表示階調値に対応した2つの駆動条件を設定する(ステップS109)。そして、表示体の画像書き換え処理(ステップS110)において、表示体パネル1の駆動開始時における駆動条件を、駆動途中に2つ目の駆動条件に変更するのである。こうすることによって、駆動開始から経過した時間における表示体パネル1の温度に即した駆動条件に変更することができ、より高い精度の温度補償を行うことが可能となる。
なお、駆動条件を変更するタイミングについては、変更回数が1回であれば画像をほぼ半分書き換えた時点が好ましい。もとより、変更回数は1回に限定されるものでないことは勿論であり、温度変化速度に応じて変更回数を設定すればよい。
【0090】
(その他の変形例)
また、本発明は上記実施形態や実施例、および第1変形例に限定されず、以下のような変形例として実施してもよい。例えば、上記実施形態では、コレステリック液晶を表示材料とし、DDS駆動方式で駆動する画像表示装置として説明したが、これ以外にも温度特性が激しい他の表示材料(例えば、電気泳動方式の記憶性表示材料)を用いた画像表示装置としてもよい。また、駆動方式としてコレステリック液晶をコンベンショナル駆動させる駆動方式とした場合に適用してもよい。
【0091】
また、温度勾配の検出は、温度の時系列データに基づき検出する方法に限定されず、例えば、画像表示装置を構成する部材のうち熱伝導率が異なる部材の温度をそれぞれ測定し、その温度差に基づいて検出してもよい。すなわち、環境温度の変化速度が小さく、表示体パネルの温度が落ち着いている場合には、各部材の温度も環境温度と略同等の温度となっていると推定できるが、環境温度が変化すると、熱伝導率の高い部材の方が先に温度が変化するため、各部材間に温度差が生じる。したがって、この温度差に基づき温度変化速度を検出することもできる。
【0092】
また、上記実施形態ではSelection期間において、駆動電圧波形のパルス幅を変更することで印加時間を変更し、表示すべき階調に応じた実効電圧値を画素に印加したが、パルス幅を変更せず駆動電圧波形の振幅となる印加電圧値を変更することで、実効電圧値を変更することとしてもよい。あるいは、印加時間と印加電圧値との両方を変更することとしてもよい。こうすれば、印加時間と印加電圧値との組み合わせによって、複数種類の実効電圧値を有する駆動電圧波形を生成することができる。
【0093】
また、上記実施形態における第3実施例では、表示体駆動制御回路44がガンマ値に基づいて画素階調値を表示階調値に変換する際、前もって4階調の画素階調値(0,1/3,2/3,1)を2種類の画素階調値(0,1)に変更した。もとより、第3実施例はこれに限るものではなく、上記第1実施例において実施することとしてもよい。例えば、図6に示した対応テーブルTAにおいて、総てのパラメータ温度において、画素階調値(0,1/3)が表示階調値(H0)に、画素階調値(2/3,1)が表示階調値(H15)に対応するように規定しておくとよい。こうすれば、2種類の画素階調値(0,1)に容易に変更することができる。
【0094】
また、上記実施形態における第3実施例では、画素階調値を表示階調値に変換する際、前もって4階調の画素階調値(0,1/3,2/3,1)を「黒色」と「白色」を示す2種類の画素階調値(0,1)に変更したが、もとより、これに限定されるものではない。例えば、画素階調値(0,1/3)を画素階調値(1/9)に、画素階調値(2/3,1)を画素階調値(8/9)に変更することとしてもよい。前述するように、表示体パネル1の反射率や透過率は、用いる表示材料の特性によって異なる。従って、表示材料の特性に合わせて、好ましい階調表示に応じた画素階調値に前もって変更することが好ましい。
【0095】
また、上記実施形態では、画素階調値が4階調の規格化反射率(0,1/3,2/3,1)で表される画像について温度補償することとしたが、特にこれに限るものでないことは勿論である。例えば、画素階調値が8階調と多い階調表示数で表された画像や、逆に3階調と少ない階調表示数で表された画像についても、同様に本発明を適用することが可能である。また、画素階調値も(0,1/3,2/3,1)のように略均等な規格化反射率の間隔に限るものでなくても差し支えない。
また、上記実施形態では、Selection電圧の種類数を16種類(V0〜V15)としたが、これ以外の種類数(例えば256種類:V0〜V255)であってもよい。PWM回路のパルス幅変更可能数や、印加電圧の電圧値の種類数に応じてSelection電圧の種類数を設定すればよい。
【0096】
また、上記実施形態の画像表示装置100、又は第1変形例の画像表示装置200は、上記構成要件を備えて一体的に構成する場合のみならず、上記構成要件が複数の装置に分離して搭載され、それらの複数の装置が通信的に接続されることで、協働して本態様を実現する形態であってもよい。例えば、図1において、表示体パネル1、温度データ取得保存回路3、及び表示体駆動回路2を備えたクライアント装置と、制御回路4の機能の少なくとも一部を備えたホスト装置(パーソナルコンピュータ)と、から構成される画像表示装置としてもよい。この場合には、温度情報や画像データを相互に送受することで上記機能を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】第1実施形態に係る情報表示装置の内部構成を示すブロック図である。
【図2】コレステリック液晶の配向状態を説明する図である。
【図3】温度センサを説明する図である。
【図4】(a)(b)とも、コレステリック液晶の配向状態の遷移を示す図である。
【図5】画像表示装置の第1実施例の動作を説明するフローチャートである。
【図6】コレステリック液晶層の温度の時間変化を説明するグラフである。
【図7】画素階調値と表示階調値との対応関係を規定する対応テーブルの図である。
【図8】画像表示装置の第2実施例の動作を説明するフローチャートである。
【図9】Selection電圧と表示階調値の関係を示すグラフである。
【図10】画像表示装置の第3実施例の動作を説明するフローチャートである。
【図11】第1変形例に係る画像表示装置の内部構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0098】
1…表示体パネル、1a…コレステリック液晶層、1b…透明電極、1c…ガラス基板、1d…光吸収層、2,2′…表示体駆動回路、3…温度データ取得保存回路、31…温度センサ、31A…サーミスタ、31B…抵抗、32…コンバータ、4…制御回路、41…
CPU、42…RAM,43…ROM、44…表示体駆動制御回路、45…GPU、5…
画像書き換えボタン、100,200…画像表示装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示体に画像を表示する画像表示装置であって、
前記表示体の温度変化速度を検出する温度変化速度検出部と、
前記画像の画像データに応じて、前記表示体に前記画像を表示するための駆動条件を設定する駆動条件設定部と、
前記検出された温度変化速度に応じて、前記設定された駆動条件を変更する駆動条件変更部と、
前記駆動条件変更部により変更された駆動条件で前記表示体を駆動し、前記表示体に前記画像を表示する表示体駆動部と、
を備えた画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記駆動条件変更部は、前記表示体駆動部による前記表示体の駆動中に、前記駆動条件を変更することを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像表示装置において、
前記検出された温度変化速度に応じて、前記画像を構成する画素の画像データとしての画素階調値を、前記表示体駆動部が表示する画像を構成する画素の画像データとなる表示階調値に変更設定する階調設定部を更に備え、
前記駆動条件変更部は、前記変更設定された表示階調値を画像データとして前記駆動条件設定部が設定する駆動条件に、前記設定された駆動条件を変更することを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
前記階調設定部は、前記温度変化速度が閾値を超える場合に、当該閾値以下の場合よりも前記表示される画像の階調表示数が少なくなるように、前記画素階調値を前記表示階調値に変更設定することを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
請求項3に記載の画像表示装置において、
前記階調設定部は、前記画素階調値と前記表示階調値との対応関係を規定するテーブルに基づいて、前記画素階調値を前記表示階調値に変更設定することを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
前記階調設定部は、前記温度変化速度が閾値を超える場合には、当該閾値以下の場合とは異なる表示階調値を設定することを特徴とする請求項5に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記画素階調値が、予め定められた前記表示階調値に変換されるように、前記画素階調値を変更した変更画素階調値を生成する画像生成部を備え、
前記階調設定部は、前記変更画素階調値を前記画素階調値として前記変更設定を行うことを特徴とする請求項4ないし6のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の画像表示装置であって、
前記表示体の温度を測定する温度測定部を有し、
前記駆動条件設定部は、前記画像データに加えて前記測定された表示体の温度に応じて前記駆動条件を設定することを特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
前記駆動条件設定部は、前記表示体に表示される画像の階調表示数以上の種類数を有する前記駆動条件から、前記画像データに応じた駆動条件を設定することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記表示体の表示材料は、最終的な画像表示状態において、分子配向が異なる複数の最終配向状態を呈する液晶材料であり、
前記表示体駆動部は、前記分子配向の配向状態を前記最終配向状態とは異なる過渡配向状態に遷移させた後、前記最終配向状態を選択期間で選択する駆動方式を用いて、前記表示体を駆動することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記表示体は、表示材料としてコレステリック液晶分子を用いたものであることを特徴とする請求項10に記載の画像表示装置。
【請求項12】
表示体に画像を表示する画像表示方法であって、
前記表示体の温度変化速度を検出する温度変化速度検出工程と、
前記画像の画像データに応じて、前記表示体に前記画像を表示するための駆動条件を設定する駆動条件設定工程と、
前記検出された温度変化速度に応じて、前記設定された駆動条件を変更する駆動条件変更工程と、
前記駆動条件変更工程により変更された駆動条件で前記表示体を駆動し、前記表示体に前記画像を表示する表示体駆動工程と、
を備えた画像表示方法。
【請求項1】
表示体に画像を表示する画像表示装置であって、
前記表示体の温度変化速度を検出する温度変化速度検出部と、
前記画像の画像データに応じて、前記表示体に前記画像を表示するための駆動条件を設定する駆動条件設定部と、
前記検出された温度変化速度に応じて、前記設定された駆動条件を変更する駆動条件変更部と、
前記駆動条件変更部により変更された駆動条件で前記表示体を駆動し、前記表示体に前記画像を表示する表示体駆動部と、
を備えた画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記駆動条件変更部は、前記表示体駆動部による前記表示体の駆動中に、前記駆動条件を変更することを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の画像表示装置において、
前記検出された温度変化速度に応じて、前記画像を構成する画素の画像データとしての画素階調値を、前記表示体駆動部が表示する画像を構成する画素の画像データとなる表示階調値に変更設定する階調設定部を更に備え、
前記駆動条件変更部は、前記変更設定された表示階調値を画像データとして前記駆動条件設定部が設定する駆動条件に、前記設定された駆動条件を変更することを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
前記階調設定部は、前記温度変化速度が閾値を超える場合に、当該閾値以下の場合よりも前記表示される画像の階調表示数が少なくなるように、前記画素階調値を前記表示階調値に変更設定することを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
請求項3に記載の画像表示装置において、
前記階調設定部は、前記画素階調値と前記表示階調値との対応関係を規定するテーブルに基づいて、前記画素階調値を前記表示階調値に変更設定することを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
前記階調設定部は、前記温度変化速度が閾値を超える場合には、当該閾値以下の場合とは異なる表示階調値を設定することを特徴とする請求項5に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記画素階調値が、予め定められた前記表示階調値に変換されるように、前記画素階調値を変更した変更画素階調値を生成する画像生成部を備え、
前記階調設定部は、前記変更画素階調値を前記画素階調値として前記変更設定を行うことを特徴とする請求項4ないし6のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の画像表示装置であって、
前記表示体の温度を測定する温度測定部を有し、
前記駆動条件設定部は、前記画像データに加えて前記測定された表示体の温度に応じて前記駆動条件を設定することを特徴とする画像表示装置。
【請求項9】
前記駆動条件設定部は、前記表示体に表示される画像の階調表示数以上の種類数を有する前記駆動条件から、前記画像データに応じた駆動条件を設定することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記表示体の表示材料は、最終的な画像表示状態において、分子配向が異なる複数の最終配向状態を呈する液晶材料であり、
前記表示体駆動部は、前記分子配向の配向状態を前記最終配向状態とは異なる過渡配向状態に遷移させた後、前記最終配向状態を選択期間で選択する駆動方式を用いて、前記表示体を駆動することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか一項に記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記表示体は、表示材料としてコレステリック液晶分子を用いたものであることを特徴とする請求項10に記載の画像表示装置。
【請求項12】
表示体に画像を表示する画像表示方法であって、
前記表示体の温度変化速度を検出する温度変化速度検出工程と、
前記画像の画像データに応じて、前記表示体に前記画像を表示するための駆動条件を設定する駆動条件設定工程と、
前記検出された温度変化速度に応じて、前記設定された駆動条件を変更する駆動条件変更工程と、
前記駆動条件変更工程により変更された駆動条件で前記表示体を駆動し、前記表示体に前記画像を表示する表示体駆動工程と、
を備えた画像表示方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−298956(P2007−298956A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69897(P2007−69897)
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月19日(2007.3.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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