画像記録装置
【課題】偏心カムとコロの係合を利用したヘッドホルダの微小移動機構は、偏心カムの周面上の複数の記録位置にコロとの当接面を移動させる際、互いの回転によりコロの当接面の位置ずれが生じ、同じ面位置で当接せず、製造誤差等によりコロに偏心があれば、半径にばらつきが生じて主走査方向におけるインクの着弾位置がずれ、ドット位置精度が出ない。
【解決手段】画像記録装置に搭載する移動機構は、偏心カムの各記録位置間の周面長がコロの円周長の整数倍となるように構成して、偏心カムに当接するコロの面位置を常に同じ位置にすることで、コロに偏心が生じていても、主走査方向のヘッドホルダが精度よく位置決めされ、画像記録する。
【解決手段】画像記録装置に搭載する移動機構は、偏心カムの各記録位置間の周面長がコロの円周長の整数倍となるように構成して、偏心カムに当接するコロの面位置を常に同じ位置にすることで、コロに偏心が生じていても、主走査方向のヘッドホルダが精度よく位置決めされ、画像記録する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ドットの高密度化による高質画像化を図る画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な画像記録装置として、記録媒体にインク滴を着弾して画像を記録するインクジェットプリンタが知られている。このインクジェットプリンタの中には、画像記録の高速化を図るために、1つ、又は複数の記録ヘッドによってラインヘッドを構成し、記録媒体を移動させて記録を行うラインプリンタがある。
【0003】
このラインプリンタの基本的な構成では、ラインヘッドにおけるノズルピッチがそのまま記録媒体移動方向に直行する方向の記録ドット密度となるという特徴がある。そのため、高画質化を実現するためには、ノズルピッチの微細化を行う必要があり、技術的、コスト的困難を伴うこととなる。
【0004】
この解決策として、例えば、特許文献1には、記録ヘッドの側面に偏心カムを押し当てた構成が提案されている。また、特許文献2にはラインヘッドが搭載されているヘッドホルダに、偏心カムを当接させた構成が提案されている。これらは共に、記録ヘッド又はヘッドホルダを微小移動させる偏心カムを、モータにより所定の回転位置に回転駆動させることにより、記録ヘッド又はラインヘッドを記録媒体の搬送方向と直交する方向、つまり主走査方向(ノズル列方向)に微小移動させながら複数回、画像記録を繰り返すことで、ラインヘッドのノズルピッチ間の画像記録を補完し、主走査方向の記録媒体への記録ドット密度を増やして、高画質化を実現するラインプリンタが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−310049号公報
【特許文献2】特開平11−245396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したような、所謂、マルチパス記録を行うラインプリンタにおいて、ヘッドホルダに与える微小移動は、ラインヘッドのノズルピッチより小さな、例えば5μm程度の移動位置精度が求められる。
【0007】
特許文献1及び特許文献2に記載のラインプリンタにおいて、主走査方向の微小移動でのドット位置精度は、偏心カムの所定の回転位置における半径、及び記録ヘッド又はヘッドホルダの当接部の主走査方向の位置精度に依存することとなる。このような構成では、記録ヘッド又はヘッドホルダにおける当接部が偏心カムの回転に伴い、すべり摩擦を受けて、偏心カム又はカムの当接面が磨耗する。それらの摩耗した分だけ、主走査方向の記録ヘッド又はヘッドホルダにおける位置のずれが生じて、主走査方向の画像記録のドット位置精度が出ず、隣接するドットが離れたり重なったりして、画像の劣化を発生させることが予測される。
【0008】
また、このような摩耗を防止するために、記録ヘッド又はヘッドホルダ側に、回転自在なコロ(又は、ベアリング等)を設けて、偏心カムをコロと当接させ、偏心カムの回動に伴い、コロが連れ回ることにより、ヘッド又はヘッドホルダの当接部のすべり摩擦を防止し、主走査方向の微小移動でのドット位置精度を向上させる構成が考えられる。
この場合、主走査方向の微小移動におけるドット位置精度は、偏心カムの所定の回転位置における半径及びコロの半径の精度に依存することとなる。
【0009】
しかしながら、偏心カムの回転に伴い連れ回るコロの回転位置は、偏心カムの所定の回転位置に対し、常に同じ回転位置で当接するとは限らず、一定の回転位置にはならない。そのため、コロが例えば、加工誤差のばらつき等により偏心していた場合、所定の偏心カムの回転位置におけるコロの回転位置、言い換えればコロの主走査方向の半径にばらつきが生じるため、着弾位置がずれて、ドット位置精度が出ずに画像を劣化させてしまう虞がある。
【0010】
そこで本発明は、簡単な構造で長期に渡りヘッドホルダを精度よく主走査方向に微小移動させる構成であり、且つカムとの当接部の磨耗を低減する画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に従う実施形態の画像記録装置は、プラテンにより保持搬送された前記記録媒体に対し画像記録を行う記録ヘッドと、前記記録ヘッドをプラテンに対向した位置に保持すると共に、前記記録媒体の搬送方向と直交した主走査方向へ往復移動可能なヘッドホルダと、前記ヘッドホルダを主走査方向に往復移動させる移動機構と、を備え、前記移動機構は、円滑に連続する周面又は円滑に連続する段差を含む周面のいずれかが設けられたカム周面を有するカムと、円筒形状を成し、前記カム周面に側面で当接して係合状態で連れ回る回転部と、前記カム及び前記カムと連れ回る前記回転部を駆動させる駆動部と、で構成され、前記カム周面上には、前記回転部との当接時における前記カムの主走査方向の所定基準位置から前記カム周面までの主走査方向の長さであるカム主走査方向長さが各々決められた長さを有すると共に、主走査方向に移動される前記ヘッドホルダに記録動作させる複数の記録位置が規定され、且つ隣り合う前記記録位置の間の前記カム周面の長さが前記回転部の側面の円周長の整数倍の長さを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単な構造で長期に渡りヘッドホルダを精度よく主走査方向に微小移動させて、且つカムとの当接部の磨耗を低減し、コスト低減、メンテナンス性が向上する画像記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る記録ヘッドを搭載するヘッドホルダの主走査方向移動機構を備えるラインプリンタの概念的な構成例を示す図である。
【図2】図2は、ヘッドホルダとドラムの位置関係を示す側面図である。
【図3】図3は、記録ヘッドのインク吐出面の一部を示す図である。
【図4】図4は、ヘッドホルダ主走査方向移動機構を示す全体図である。
【図5】図5(a)は、ヘッドホルダ主走査方向移動機構の詳細上面図、図5(b)は、ヘッドホルダ主走査方向移動機構の詳細側面図である。
【図6】図6(a)乃至図6(d)は、記録ヘッドのノズルが移動し、記録媒体に吐出されたインク滴の状態を示す図である。
【図7】図7(a)は、偏心カムの形状を示す第1の例の概念図、図7(b)は、偏心カムの形状を示す第2の例の概念図である。
【図8】図8は、第1の実施形態の変形例1に係る、ヘッドホルダ主走査方向移動機構を示す全体図である。
【図9】図9は、第1の実施形態の変形例2に係る、ヘッドホルダ主走査方向移動機構の詳細上面図である。
【図10】図10(a)は、第2の実施形態に係る、ヘッドホルダ主走査方向移動機構の詳細上面図である。図10(b)は、第2の実施形態に係る、ヘッドホルダ主走査方向移動機構の詳細側面図である。
【図11】図11(a)乃至11(c)は、第3の実施形態に係るヘッドホルダ主走査方向移動機構の図である。
【図12】図12(a)は、第4の実施形態に係る、ヘッドホルダ主走査方向移動機構の詳細上面図である。図12(b)は、ヘッドホルダ主走査方向移動機構の詳細側面図である。
【図13】図13(a)は、第5の実施形態に係るヘッドホルダ主走査方向移動機構の詳細上面図、図13(b)は、ヘッドホルダ主走査方向移動機構の詳細側面図である。
【図14】図14は、第5の実施形態の立体カムの斜視図である。
【図15】図15は、第5の実施形態の立体カムの外観構成を示す図である。
【図16】図16は、第5の実施形態の立体カムの側面を平面状に展開した概念図である。
【図17】図17は、第6の実施形態に係るヘッドホルダ主走査方向移動機構の詳細上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るヘッドホルダ主走査方向移動機構(以下、各実施形態等において、移動機構と称する)を備えるラインプリンタについて説明する。図1は、第1の実施形態に係る移動機構を備える画像記録装置の概念的な構成例を示す図である。
【0015】
本実施形態の画像記録装置は、記録ヘッドから複数の色インクを吐出して、移動する記録媒体にカラー画像を記録する、例えばラインプリンタを一例として説明する。勿論、記録される画像は、カラー画像に限定されるものではない。
【0016】
このラインプリンタ1は、複数の記録媒体17が装填された記録媒体カートリッジ9と、記録媒体カートリッジ9から記録媒体17を取り出す記録媒体供給部8と、ドラム2と複数の搬送用ローラを有する記録媒体17を搬送する搬送機構19と、ドラム2の記録媒体17の保持面である外周面(記録媒体保持面)上に近接するように配置される複数の記録ヘッド4を有する記録ヘッド部92と、画像が記録された記録媒体17を排出する記録媒体排出部12と、記録ヘッド4へ供給するインクが充填されたインクボトル7と、で構成される。
【0017】
さらに、ラインプリンタ1は、搬送機構19において、記録媒体17をプラテンであるドラム2に導入する案内板10と、記録媒体17を帯電させる帯電ローラ11と、記録媒体17の電荷を除去する除電ローラ14と、ドラム2の外周面に張り付いた記録媒体17を剥がす剥離爪13とを有している。尚、矢印mは、記録媒体17の搬送方向を示している。
【0018】
ドラム2は、プラテンとして例えば、金属製の円筒形状に形成され、その外周面が記録媒体17を密着保持(本実施形態では静電吸着)し、図示しないモータにより回転して、記録媒体17を搬送する。尚、本実施形態では、プラテンとしてドラムを用いているが、これに限らず、複数ローラでたるみなく保持させた無端ベルトにより記録媒体を搬送するベルトタイプのプラテンであってもよい。この場合、ファン等により負圧を発生させて小孔が多数の開口された無端ベルトに記録媒体を吸着保持させればよい。
【0019】
記録ヘッド部92は、複数の記録ヘッド4を備え、複数の記録ヘッド4は、ドラム2の外周面に沿い、インクの吐出方向がドラム2の中心に向かうように放射状に位置付けられ、ヘッドホルダ3に保持されている。ヘッドホルダ3は、図示しない昇降機構に取り付けられて、図2に示すように、複数の記録ヘッド4をドラム2の円筒形の外周面(記録媒体保持面)に沿うように配置されている。
【0020】
本実施形態における記録ヘッド4は、記録媒体17の幅以上の1ラインの記録領域(ノズル列長)を有するラインヘッドでもよいし、又は、記録媒体17の幅に満たない記録領域を有する短尺記録ヘッドを複数用いて、記録媒体の幅方向に沿って並列や千鳥状に配列したラインヘッドでもよい。以下の説明では、短尺記録ヘッドを用いた記録ヘッド4を例として説明する。
【0021】
記録ヘッド4は、インクを吐出するインク吐出ノズル40を1列又は複数列に配置することができる。図2中のB方向から見たインク吐出面93では、一例として、2列のインク吐出ノズル40を示している。図3では、その詳細な構成を示している。1列目におけるインク吐出ノズル40は、図3に示すように主走査方向にノズルピッチ分離れ規則正しく配列されている。また図3において、2列目のインク吐出ノズル40は、1列目のノズルピッチの間に入り込むように、距離C分ずれて配置されている。これは距離Cをずらすことにより、1列目におけるインク吐出ノズル40によるドット間を埋めるように、2列目のドットが着弾されるため、高解像度が実現される。
【0022】
図4乃至図7を参照して、移動機構15について説明する。
図4は、第1の実施形態における移動機構を示す全体図である。図5(a)は、移動機構の詳細上面図である。図5(b)は移動機構の詳細側面図である。図6(a)乃至図6(d)は、記録ヘッドのノズルが移動し、記録媒体に吐出されたインク滴の状態を示す図である。図7(a)、7(b)は、偏心カムの形状を示す概念図である。
【0023】
ここで、図3及び図6(a)に示す矢印Eは、記録媒体17の搬送方向を示し、図3に示す矢印Dは、ヘッドホルダ3の主走査方向を示し、図6(a)に示す矢印Xは、ヘッドホルダ3の主走査方向における移動距離を示している。
【0024】
ヘッドホルダ3は、記録ヘッド4のインク吐出面93とドラム2の記録媒体保持面との距離(ヘッドギャップ)を保ちつつ、主走査方向に移動できるように、スライドレール等の図示しない主走査方向移動ガイドによって保持されている。
【0025】
移動機構15は、概略的な構成として、フレーム27に固定された回転駆動部となるモータ24と、このモータ24により回転する偏心カム23と、ヘッドホルダ3に回転可能に固定され、偏心カム23に押し当てられたコロ20(回転部)と、偏心カム23とコロ20が常時、押し当てられるように付勢する弾性部材(例えば、コイルバネ)26とで構成される。以下、構成について詳細に説明する。コロ20は、高さが低い円盤形状を含む円筒形状である。
【0026】
記録ヘッド4を搭載するヘッドホルダ3の主走査方向の端面には、円筒形状のコロ20を設置するためのコロベース25が固定されている。コロ20は、コロベース25に立設されたコロ軸21に、コロベアリング30を介在させて回転自在に保持される。尚、本実施形態は、ベアリングとコロを別体に設けた構成になっているが、コロと一体的に構成される、所謂ローラベアリング(又は、ボールベアリング)であってもよく、外周面が円筒形状を成し回転自在であれば、特に限定されるものではない。また、図5(b)では、コロ20を支持するコロ軸21は、片側支持であるが、ヘッドホルダ3に、コロ軸21の両端を支持するコロベース25を設けた両端保持構造であってもよい。
【0027】
ラインプリンタ1のフレーム27には、モータベース28が固着され、モータベース28にはモータ24が取り付けられている。モータ24のモータ軸22には、偏心カム23が固着される。モータ24は、回転位置を制御可能なサーボモータやステッピングモータを用いることが好ましい。ヘッドホルダ3とフレーム27の間には、偏心カム23の外周面とコロ20の円筒部の外周の側面との係合状態を維持させるための付勢バネ26a,26bが設置されている。
【0028】
尚、本実施形態においては、モータベース28及び付勢バネ26a,26bをラインプリンタ1のフレーム27に設けているが、これに限らず、画像記録時に少なくともプラテンとの主走査方向における位置が固定されていればいずれの箇所に設けてもよい。
【0029】
偏心カム23には、主走査方向の基準位置であるモータ軸22の中心に対し、所定の半径を有する複数の記録位置を設けると共に、偏心カム23を回転移動させ、前記記録位置が前記コロ20と当接する各位置において、記録ヘッド4が記録媒体17の搬送方向の同一位置にインクを吐出することにより、記録媒体17の主走査方向に高密度に画像を記録する。
偏心カム23は、図5(a)に示すように、円盤形状を成し、一例として、周面にはほぼ90度毎に記録位置[1],[2],[3],[4]が設けられている。これらの記録位置は、偏心カム23の周面により繋がれている。具体的には、偏心カム23の記録位置[1]から[2]までの間の偏心カムの周面長がL1、偏心カム23の記録位置[2]から[3]までの間の偏心カムの周面長がL2、偏心カム23の記録位置[3]から[4]までの間の偏心カムの周面長がL3、偏心カム23の記録位置[4]から[1]までの間の偏心カムの周面長がL4である。
【0030】
偏心カム23は、この例では、回転中心から各記録位置までの半径長さが、記録位置[1]から記録位置[4]に向かって長くなるように、回転中心及び周面を設定している。各記録位置における偏心カム23の半径の差は、ヘッドホルダ3の主走査方向の移動量であり、記録媒体に形成される主走査方向のドットのピッチ(図6(b)に示す距離X)と同じである。ドットのピッチは、少なくともノズルピッチよりは小さい。本実施形態では、1つのノズルピッチの間に、3つのドットピッチが設けられるように設定されている。
【0031】
図5(a)に示すように、偏心カム23には、外周上に4つの記録位置として、位置[1],[2],[3],[4]が設けられている。偏心カム23は、図5(a)における反時計回りの一方方向に回転し、位置[1],[2],[3],[4]の順に、記録媒体17の搬送方向の同一位置にインクを吐出し画像を記録する。その後、偏心カム23を位置[4]から位置[1]に回転させ、次の画像記録を始める。
【0032】
この構成では、位置[1],[2],[3],[4]の周面長L1,L2,L3,L4の各々がコロ20の一回転の円周長Lに相当している。つまり、コロ20と当接する偏心カム23の各周面長は、コロ20の一回転分の円周長Lの整数倍の長さになるように形成している。例えば、偏心カム23の各周面長とコロ20の円周長が同じであれば、偏心カム23が次の記録位置に回転移動すれば、コロ20も一回転するため、偏心カム23の各記録位置は常にコロ20の同じ面位置と接することとなる。当然、偏心カム23の各周面長がコロ20の整数倍の周面長であれば、偏心カム23の各記録位置はコロ20の常に同じ面位置で当接することとなる。従って、本実施形態では、偏心カム23が一回転すれば、コロ20は、4回転して、偏心カム23の各記録位置は、いずれもコロ20の同じ面位置で接している。
【0033】
尚、本実施形態においては、L1乃至L4の長さを同一としているが、L1乃至L4の各々の長さが異なる長さであっても、コロ20の一回転分の円周長Lの整数倍の長さであればよい。
【0034】
また、ヘッドホルダの主走査方向の移動距離(周面長に相当する)は、隣接するドット間の距離であるため微小であり、つまり、各記録位置における偏心カム23の半径の差(段差)は微小である。以下に説明する、図7(a),(b)においては、分かり易くするために、偏心を極端に示した偏心カムの概念的な図であるが、実際には、小さな段差が付いた円盤形状である。また、図5(a)では、偏心カム23に4つの記録位置[1],[2],[3],[4]を設けたが、これに限らず、例えば、図7(a)、(b)に示すように、偏心カム23に5つの記録位置を設け、主走査方向の画像記録の更なる高密度化を図ってもよい。
【0035】
図7(a)では、偏心カム23に複数、例えば5つの記録位置を設け、位置[1]、[2]、[3]、[4]、[5]として示すと共に、偏心カム23は、位置[1]、[2]、[3]、[4]、[5]の順に反時計回りに回転し、記録媒体17の搬送方向の同一位置にインクを吐出し画像を記録し、その後、逆転して位置[5]から位置[1]へ時計回りに戻り、次の画像記録を始める。そして、偏心カム23の各記録位置をコロ20に係合させるための移動の際の、コロ20と当接する偏心カム23の各周面長L1,L2,L3,L4がコロ20の円周長と同一長になるように、形成している。
【0036】
尚、図7(a)に示す偏心カム23においては、次の画像記録を始める前に、偏心カム23を時計回りに回転し位置[5]から位置[1]へ戻しているが、これに限らず、位置[1]、[2]、[3]、[4]、[5]の順に偏心カム23を反時計回りに回転し画像を記録した後、次の画像記録は位置[5]、[4]、[3]、[2]、[1]の順に偏心カム23を時計回りに回転し画像を記録してもよい。
【0037】
図7(b)では、偏心カム23を上下で対称形状に形成し、さらに、偏心カム23の上下の半分を各々4分割し、各周面長L1,L2,L3,L4が、コロ20の円周長と同一に形成している。偏心カム23に8つの記録位置を設け、位置[1],[2],[3],[4],[5],[4]’,[3]’,[2]’として示している。これらは、記録位置における位置[2]と[2]’、位置[3]と[3]’、位置[4]と[4]’の各々の記録位置における偏心カム23の半径は同じ長さとする。そして偏心カム23は、反時計回りの1方向に回転し、位置[1],[2],[3],[4],[5]の各位置で、記録媒体の搬送方向同一位置で画像記録し、その後、位置[5],[4]’,[3]’,[2]’,[1]の順で、次の画像記録を行い、再び[1]から次の画像記録を始める。
【0038】
次に、本実施形態の作用について説明する。
ラインプリンタ1は、外部機器(パソコン等)から印刷指令が受けると、記録媒体カートリッジ9から記録媒体17を取り出す。その記録媒体17は、記録媒体供給部8を通過し、案内板10を通り、ドラム2へ搬送され、帯電ローラ11によって電荷が加えられたドラム2表面に密着保持される。
【0039】
ドラム2の回転により、記録媒体17の搬送方向先端が記録ヘッド4の記録領域(インク吐出領域)に入ってくると、記録ヘッド4のインク吐出ノズル40は、インク吐出を開始し、記録媒体17の搬送方向末端が記録ヘッド4を通過する時にインクの吐出を停止する。この時、図6(a)に示すように、主走査方向の偏心カム23の記録位置[1]における1回目の画像を記録媒体17に記録する。
【0040】
次に、ドラム2の回転により記録媒体17の搬送方向先端が再度、記録ヘッド4に到達するまでの間に、図示しない制御機構によりモータ24が回転し、コロ20との当接部が図5(a)に示す位置[2]になるように、モータ軸22に固着された偏心カム23が反時計回りに回動する。この時、ヘッドホルダ3に設置したコロ20も付勢バネ26a,26bにより偏心カム23に係合しているため、連れ回り回動する。
【0041】
コロ20との当接部が図5(a)に示す偏心カム23の位置[2]まで回動すると、ヘッドホルダ3に搭載された記録ヘッド4のインク吐出ノズル40aは、図6(b)に示す位置[1]から距離X(ドットのピッチ)の長さだけ主走査方向に移動して位置[2]となる。再度、記録媒体17の搬送方向先端が記録ヘッド4とドラム2の隙間に入ってくると、インクが記録媒体17に噴射され、図6(b)に示すように、最初の画像記録位置に対して、距離Xが離れた位置に画像を記録する。
【0042】
以降、同様に、コロ20との当接部が図5(a)に示す偏心カム23の位置[3][4]の各記録位置において、図6(c)及び図6(d)に示す画像記録を行い、記録媒体17の1枚の画像記録を終了する。画像記録が終了すると、除電ローラ14により記録媒体17の電荷が除去される。
電荷が除去された記録媒体17は、剥離爪13によってドラム2から取り除かれる。記録媒体17はラインプリンタ1から機外へ排出される。1枚の記録媒体17の画像記録が終了すると、偏心カム23は元の位置[1]まで回動し、次の記録媒体17の画像記録に備える。
【0043】
尚、本実施形態では、記録媒体の1面にのみ画像を記録するラインプリンタを示したが、これに限らず、既知の記録媒体反転手段を搭載して、記録媒体17の表面への画像記録を終了した後、記録媒体17を反転し、表面と同様に裏面への画像記録を行い、その後、記録媒体17を排出し、次の記録媒体の画像記録に移行してもよい。
【0044】
また、本実施形態では、偏心カム23の記録位置を4つ設け、各々の記録位置において主走査方向の画像記録を行うが、1枚の画像記録時に4回記録する場合には、記録媒体17を記録ヘッドの下を4回通過させる必要があり、1枚の画像記録としては時間を要する。
【0045】
そこで、このような4回記録による高画質モードに対して、2回記録による通常画質モードと、1回記録による低画質モードを選択能に設けてもよい。即ち、写真等の高画質が求められる場合には、高画質モードを選択して4回の画像記録を行う。一方、グラフ等のように通常画質でよければ、通常画質モードを選択して、記録媒体17を2回記録ヘッドの下を通過させ、4つのうちの位置[1]、[3]において画像記録することにより、通常画質ではあるが、記録時間を短縮することができる。
【0046】
また、図7(a)では、コロ20の当接位置が位置[5]に達した後は、モータ24を逆回転させて偏心カム23を元の位置まで戻す。図7(b)においては、モータ24を逆回転させず、偏心カム23の上側半分の位置[1],[2],[3],[4],[5]による移動往路で1枚目の記録媒体に画像記録を行う。次に、偏心カム23の下側半分の位置[5],[4]’,[3]’,[2]’,[1]による移動復路で2枚目の画像記録を行い、コロ20との当接位置を偏心カム23の最初の位置[1]に戻す。
【0047】
以上説明した本実施形態によれば、次の効果を奏する。
(1)記録ヘッドを主走査方向に移動するために、偏心カムのコロとの当接位置が1つの記録位置から次の記録位置へ移動する際、偏心カムの規定された周面上の長さに対して、コロが整数回の回転となり、必ず同じ面位置で偏心カムと当接するため、製造時にコロが偏心していたとしても主走査方向のヘッドホルダの精度のよい位置決めができる。
(2)回転する偏心カムに当接するコロが連れ回るように共に回動することにより、偏心カムとの当接部の磨耗が低減でき、長期に渡り精度よくヘッドホルダを移動できる。
(3)簡単な構造でヘッドホルダを移動させることができ、コスト低減、メンテナンス性の向上ができる。
【0048】
[第1の変形例]
次に図8を参照して、第1の実施形態の第1の変形例について説明する。
図8は、第1の変形例における移動機構29を示す全体図である。
本変形例は、第1の実施形態における複数のヘッドホルダ3を一体化して、偏心カム23とコロ20を一対のみで構成している。この構成以外は、第1の実施形態と同等である。
【0049】
第1の変形例によれば、次の効果を奏する。
(1)記録ヘッドを一括的に微小移動できるため、第1の実施形態の効果に加えて、複数のヘッドホルダの微小移動の移動量の違いを防ぐことができる。
(2)微小移動の機構を共通化でき、コストの低減ができる。但し、第1の変形例における偏心カム23とコロ20は、第1の実施形態の偏心カム23とコロ20よりも掛かる負荷が大きくなるため、強度を持たせる必要がある。
【0050】
[第2の変形例]
次に図9を参照して、第1の実施形態の第2の変形例について説明する。
図9は、第2の変形例における移動機構34を示す上面図である。第2の変形例は、第1の実施形態におけるコロ20の径を小さくすることにより、コロ51のように円周長を少なくする。さらに、偏心カム50をモータ軸22の中心で左右、上下対照とした楕円形状に形成して、中心を境に外周を4分割した周面長のうちの1つの周面長をコロ51の円周長の整数倍分、分割したものである。本変形例では、コロ51は、周面長L1,L2,L3,L4に対して、それぞれ1回転して、計4回転する。
【0051】
偏心カム50は、図9に示す水平線と垂直線の交点(中心)を境に4分割しているため、偏心カム50は、水平線で分けた上側の周面長50aと下周面長50bでヘッドホルダ3は、一往復の同じ移動動作を行う。従って、偏心カム50を1回転させると、ヘッドホルダ3は2往復することになる。
【0052】
以上のような第2の変形例によれば、次の効果を奏する。
(1)コロの円周長を少なくすることでヘッドホルダ主走査方向移動機構全体を小さくすることができ、装置の小型化ができる。
(2)偏心カム1回転でヘッドホルダが2往復するため、偏心カム半回転でヘッドホルダを元の位置に戻すことができ、時間短縮が図れる。このため、ドラムも早く回動させることができ、画像記録の高速化ができる。
【0053】
[第3の変形例]
次に、第1の実施形態の第3の変形例について説明する。
本変形例は、前述した第1の実施形態の構成において、ヘッドホルダ3のコロ20とモータ24の偏心カム23の配置位置を入れ替える。つまり、ヘッドホルダ3側に偏心カム23を設置し、モータ24のモータ軸22にコロ20を固着する。又は、ヘッドホルダ3側に偏心カム23とモータ24を設け、コロ20とコロ保持部材をフレーム側に設けてもよい。このような構成においては、第1の実施形態と同等な作用効果となる。
【0054】
以上のような第3の変形例は、次の効果を奏する。
(1)前述した第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。
(2)コロ20とモータ24の偏心カム23の配置位置の自由度が増して、設計が容易になる。
【0055】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係る移動機構を備えるラインプリンタについて説明する。図10(a)は、第2の実施形態に係る画像記録装置のヘッドホルダに設けられた移動機構の概念的な構成例を示す上面図である。図10(b)は、図10(a)の矢印Jから見た構成を示す図である。
【0056】
本実施形態の移動機構35は、前述した第1の実施形態における片持ち支持されたコロに換わって、両端が回転可能に支持された直線状の軸により構成される。
ヘッドホルダ3の側端面に軸ベアリング37を支持する2つの軸ベース36を設置し、軸ベアリング37には軸38が挿入されている。軸38は、コロの役割をはたし、偏心カム23に付勢バネ26によって係合されている。軸38の円周長と偏心カム23の周面長の関係は、第1の実施形態と同じく、偏心カム23の各記録位置間の周面長は、軸38の1回転の円周長の整数倍である。
【0057】
図10(b)に示すように、偏心カム23は楕円形状を成し、前述した第1の実施形態の第2の変形例における偏心カム50と同様な形状である。従って、偏心カムの1回転でヘッドホルダが2往復する。
【0058】
以上のように構成された第2の実施形態の移動機構は、次の効果を奏する。
(1)コロが、両端が支持された軸であるため、片持ち支持のタイプに比べて、強度が増すこととなり、小型化に好適する。
(2)偏心カムの1回転でヘッドホルダが2往復するため、偏心カム半回転でヘッドホルダを元の位置に戻すことができ、時間短縮が図れる。このため、ドラムも早く回動させることができ、画像記録の高速化が実現できる。
【0059】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態に係る移動機構を備えるラインプリンタについて説明する。
図11(a)は、第3の実施形態に係る画像記録装置のヘッドホルダに設けられた移動機構の概念的な構成例を示す上面図である。図11(b)、(c)は複数のコロ径に対応する偏心カムの周面上の記録位置を示す上面図である。
【0060】
本実施形態の移動機構39は、前述した第1の実施形態と基本構成は同じであり、コロが円周長の異なる2層構造となっており、微小移動位置決め部材としての偏心カム23が昇降移動と接離移動により、そのコロの各層に選択的に係合する。
【0061】
移動機構39のコロは、異なる円周長の段差を有する階層構造となっている。又は、異なる円周長の部分コロが積み重ねられて、一体的な階層構造となっている。本実施形態では、図11(a)に示すように、円周長が長い上層のコロ20aと、コロ20aよりも円周長の短い下層のコロ20bとがコロ軸21にコロベアリング30を介在させて回転自在に保持される。これらのコロ20a,20bの円周上の面位置に選択的に偏心カム23を当接させるように、モータ24や偏心カム23を主走査方向と直交する方向に昇降移動させる駆動部となるソレノイド31bと、偏心カム23とコロ20a又は、偏心カム23とコロ20bのいずれかを係合させるためにモータ24や偏心カム23を主走査方向へ接離移動させる駆動部となるソレノイド31cと、を備えている。
【0062】
さらに、偏心カム23が昇降移動及び接離移動する時に、付勢バネ26等によりヘッドホルダ3が主走査方向に偏心カム23と連れ動かないように停止位置で保持させる駆動部となるソレノイド31aを図示しないフレーム等に設置している。また、偏心カム23の昇降移動及び接離移動する時に利用するガイドレール33a、33bを設けている。
【0063】
本実施形態の移動機構39においても、偏心カム23の全周面長は、コロ20a及びコロ20bの整数倍である。図11(b)に示すように、偏心カム23の原点[1]から4分割(黒丸)した位置[5]までの各周面長L1乃至L4は、コロ20aの円周長Laと同一である。このため、偏心カム23が原点[1]から位置[5]まで回転した場合には、係合するコロ20aは4回転することとなる。同様に、図11(c)に示すように、偏心カム23の原点[1]から9分割(黒丸)した位置[10]までの各周面長L1乃至L9は、コロ20bの円周長Lbと同一である。このコロ20bと係合している場合は、偏心カム23が原点[1]から[10]までの回転により、コロ20bは9回転する。
【0064】
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態では、コロの選択により2段階のヘッドホルダ3の移動量を選択することができる。通常画質の記録の場合のように、インク吐出ノズル40のドット間を低密度で埋め、記録時間を短縮するためには、図11(b)に示すように、偏心カム23の周面上の記録位置の数を少なくし、各記録位置間の等間隔である周面上の距離を大きくすると共に、その周面上の距離の整数倍の円周長Laを有した、上層のコロ20aを選択する。ドラム1回転毎に、図11(b)に示す偏心カム23の原点[1]から位置[5]まで偏心カム23がステップ回転する。
【0065】
また、写真等で画像を高画質化する場合のように、インク吐出ノズル40のドット間を高密度で埋めるためには、図11(c)に示すように、前記通常画質の記録に対し偏心カム23の周面上の記録位置の数を多くし、各記録位置間の等間隔である周面上の距離を小さくすると共に、その周面上の距離の整数倍の円周長Lbを有した、下層のコロ20bを選択する。
【0066】
コロ20aからコロ20bへの切り替えは、まず、ソレノイド31aの軸を矢印F方向に突出させて、ヘッドホルダ3に先端を当接させて宛がい、偏心カム23とコロ20aとを隔離し係合状態を解消した位置でヘッドホルダ3を不動にすることにより、ヘッドホルダ3の位置が保持される。次に、ソレノイド31bの軸が矢印G方向に引き込まれ、ガイドレール33aに案内されながら、偏心カム23が下降する。
【0067】
次に、ソレノイド31cの軸が矢印H方向に突出して、偏心カム23がガイドレール33bに案内されながら移動し、コロ20bと係合すべき位置に移動する。その後、ソレノイド31aの軸が引き込まれてヘッドホルダ3をフリー状態にすることにより、偏心カム23とコロ20bが付勢バネ26a,26bにより係合する。尚、各動作の際の衝撃を緩和する緩衝材を設置してもよい。
コロ20bに係合した偏心カム23は、図11(c)に示すように、記録位置[1]−[10]で9分割された周面上の各距離がコロ20bの円周長Lbと同じであり、ドラム1回転毎のヘッドホルダ3の移動量が少なく、高画質な画像を記録する。尚、偏心カム23を切り替える際は常に偏心カム23が原点となる記録位置[1]で行う。
【0068】
尚、本実施形態では、偏心カム23を矢印H方向に接離移動させるために、ソレノイド31c及びガイドレール33bを用いているが、これらを用いない構成であってもよい。この場合、偏心カム23が、コロ20aと当接した場合と、コロ20bと当接した場合とで、ヘッドホルダ3の主走査方向の位置が異なってしまうが、この位置ずれ量だけ、記録ヘッド4のインクを吐出するインク吐出ノズル40を選択的に補正することにより、記録媒体17へずれなく記録することが可能となる。
【0069】
以上のように構成された第3の実施形態の移動機構は、次の効果を奏する。
(1)前述した第1の実施形態と同様な効果を奏することができる。
(2)本実施形態のコロは、異なる円周長の段差を有する階層構造となっているため、所望する記録画質により選択した層(円周長)のコロに偏心カム23を係合させて、ヘッドホルダ3を往復移動させるため、使用用途によって画質を選択することができる。
【0070】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態に係る移動機構を備えるラインプリンタについて説明する。
図12(a)は、移動機構の詳細上面図である。図12(b)は、移動機構の詳細側面図である。本実施形態の構成において、前述した第1の実施形態と同等の構成部位には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0071】
移動機構49は、概略的な構成として、フレーム27に固定されたモータ24により回転する微小移動位置決め部材としてのカップ型偏心カム41と、ヘッドホルダ3に回転可能に固定され、カップ型偏心カム41の中央凹部の内側の内周面上に押し当てられたコロ42と、カップ型偏心カム41とコロ42が常時、押し当てられるように付勢する弾性部材(例えば、コイルバネ)46a,46bとで構成される。
【0072】
以下、移動機構49の構成について詳細に説明する。
記録ヘッド4を搭載するヘッドホルダ3の主走査方向の端面には、円筒形状のコロ42を設置するためのコロベース45が固定されている。コロ42は、コロベース45に立設されたコロ軸44に、コロベアリング43を介在させて回転自在に保持される。尚、本実施形態のベアリングとコロとして、一体的なローラベアリングを用いてもよい。
【0073】
ラインプリンタ1のフレーム27には、モータベース28が固着され、モータベース28にはモータ24が取り付けられている。モータ24のモータ軸22には、カップ型偏心カム41が固定される。モータ24は、第1の実施形態と同様に、回転位置を制御可能なサーボモータやステッピングモータを用いることが好ましい。付勢バネ26a,26bは、伸びによる付勢力により、カップ型偏心カム41とコロ42の係合状態を維持する。
【0074】
カップ型偏心カム41の内壁面に設けられる内周面は、前述した第1の実施形態における図5に示した回転中心が外れた円盤形状の偏心カム外周の周面と同等の形状である。尚、これ以外でも、図9に示すようなモータ軸22の中心で左右、上下対照とした楕円形状又は、図7(a),(b)に示す段差を有する円形状、又は上下対照の形状であってもよい。これらは、凹状部材の内面削り出しにより作製することができる。
【0075】
本実施形態におけるカップ型偏心カム41の内周面には、複数、例えば4つの記録位置[1],[2],[3],[4]が設定され、これらはコロ42の円周長Lの整数倍の長さをもつ内周面L1,L2,L3,L4により繋がれている。カップ型偏心カム41の内周面にコロ42が当接した状態で、カップ型偏心カム41を回転させ、各記録位置[1],[2],[3],[4]にコロ42が当接した際に、インクを吐出することにより、記録媒体の主走査方向に高密度に画像を記録する。
本実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。また、カップ型偏心カム41とコロ42は、カップ型偏心カム41の内周面(内壁面、縁内面)がコロ42との当接面であるため、係合状態が外れ難い形状である。
【0076】
尚、本実施形態の移動機構49では、ヘッドホルダ3を押し出す方向に付勢する弾性部材を用いたが、引っ張る方向に付勢する弾性部材を用いた場合には、カップ型偏心カム41とコロ42の当接箇所がヘッドホルダ3側からフレーム27側に変わるが、同等の作用効果を得ることかできる。
[第5の実施形態]
次に、第5の実施形態に係る移動機構を備えるラインプリンタについて説明する。
図13(a)は、移動機構の詳細な構成を示す上面図である。図13(b)は、移動機構の詳細な構成を示す側面図である。図14は、立体カムの斜視図、図15は、立体カムを図13(b)の矢印方向Iから見た外観構成を示す図、図16は、立体カムの側面を平面状に展開した概念図である。本実施形態の構成において、前述した第1の実施形態と同等の構成部位には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0077】
本実施形態の移動機構60は、概略的な構成として、フレーム27に形成された溝部(又は切欠部)に嵌め合わされたモータベース61に固定されたモータ24と、このモータ24により回転する立体カム63と、ヘッドホルダ3に回転可能に固定され、立体カム63の縁に押し当てられたコロ20と、立体カム63の縁63aとコロ20が常時、押し当てられるように付勢する弾性部材(例えば、コイルバネ)62a,62bとで構成される。
【0078】
本実施形態による立体カム63は、段差縁が設けられたカップ形状である。これは、立体カム63における主走査方向の基準位置である立体カム63の円筒形底面63bから、円筒形底面63bと対向する縁63aの面上までの主走査方向の距離が、4段階の主走査方向距離である記録位置[1],[2]([2] '),[3]([3]'),[4]を有し、記録位置[1]と[2]([2] ')、[2]([2] ')と[3]([3]')、[3]([3]')と[4]の各々の前記主走査方向距離の差は、前述した主走査方向のドットのピッチ(図6(b)に示す距離X)と同じである。また、これら記録位置は、縁63aの面上に[1],[2],[3],[4],[3]',[2] 'の順に設けられており、これら各記録位置間をつなぎコロ20が移動する縁63aの面上の各々の長さは、同じ長さL1,L2,L3,L3’,L2’,L1’であり、コロ20の円周長Lと同じ長さである。
【0079】
即ち、この立体カム63は、モータ24の一方向回転に伴い、縁63aのコロ20と当接する面を、記録位置[1],[2],[3],[4]、そして[4],[3]',[2]',[1]の順に移動させることにより、ヘッドホルダ3を主走査方向に移動させる構成である。また、各記録位置間をコロ20が移動する立体カム63の縁63aの面上の長さは、コロの円周長と同じであり、各記録位置において当接するコロ20の円周上の面は同じ面位置となる。よって、立体カム63の1回転で、コロが6回転し、ヘッドホルダ3が1往復移動することとなる。
【0080】
尚、本実施形態の立体カム63では、記録位置[4]から[1]に戻る際に、記録位置[3]',[2]'の復路におけるドット記録を行う構成であるが、これら記録位置[3]',[2]'を無くして、ドット記録無しで、スムーズに記録位置[4]から[1]に戻るように縁63aの面を形成してもよい。この場合には、立体カム63の記録位置[4]から[1]につながる縁63aの面上の長さを、コロ20の円周長Lと同じ長さになるように構成する。
さらに、立体カム63の記録位置間の縁63aの面上の長さと、コロ20の円周長Lとは同じ長さに限定されるものではなく、立体カム63の各記録位置([1],[2],[3],[4],[3]',[2]')間の縁63aの面上の各長さがコロ20の円周長の整数倍の長さであればよい。また、立体カム63の記録位置の数についても、特に4つに限定されるものではなく、求められる画質と記録時間により、変更してもよい。
本実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0081】
[第6の実施形態]
次に、第6の実施形態に係る移動機構を備えるラインプリンタについて説明する。
図17は、本実施形態の移動機構における詳細な構成を示す上面図である。本実施形態の構成において、前述した第1の実施形態と同等の構成部位には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0082】
本実施形態は、回転するタイプの円盤形カム又はカップ形状カムに換わって、直性的な往復移動を行う直進カム71を用いている。この直進カム71の直進移動に伴い、カム移動方向と直交する方向(主走査方向)にヘッドホルダ3を移動させる構成である。
【0083】
この直進カム71は、不図示のスライドレール等により、主走査方向と直交する方向に直線移動可能である。直進カム71は、駆動部となるモータ24の軸に設けられた駆動伝達部材72と当接する。駆動伝達部材72と直進カム71との当接部は、各々が大きな摩擦係数を有するように構成され、モータ24による回転動作に対し遅れや滑りがなく直進カム71に駆動伝達される。モータ24は、モータベース73を介してフレーム27に固定され、図示しない駆動回路により駆動制御される。本実施形態において、直進カム71と駆動伝達部材72との当接部は、ギヤによる駆動伝達の構成を用いることも可能であるが、採用していない。これは、ギヤを用いた際に、製造の精度誤差や噛み合わせでガタが発生した場合には、各記録位置への移動精度が懸念されることとなり、コロ20が整数回転しない可能性もある。
【0084】
そこで、駆動伝達部材72と直進カム71との当接部は、各々が大きな摩擦係数を有するように構成し、摩擦によりずれのないように駆動を伝達することが好ましい。また、モータ24は、パルス信号で駆動するパルスモータが好ましい。通常のモータを用いる場合には、記録位置[1]に初期位置を特定するための例えば、位置センサを設けることにより、採用することも可能である。
【0085】
この直進カム71は、平板状の板部材から成り、平板状の縁である外周面のうち、モータ24の駆動伝達部材72と当接する面は、直線的な一平面(駆動面と称する)であり、直進カム71における主走査方向の基準位置である。この駆動面の反対側の外周面であり、コロ20と当接する当接面は、図17に示すように、記録位置[1],[2],[3],[4]を有する4段の区間平面と、これらの区間平面の間をスムーズに繋ぐ段差面とで構成される。本実施形態では、4段の区間平面を有する例であったが、この段数は限定されるものではない。
【0086】
この直進カム71をコロ20に押し付けて当接させた状態で、主走査方向と直交する方向に直線移動させることにより、コロ20がスムーズに段差面を移動して直線カム71の主走査方向の長さが変わり、ヘッドホルダ3を所望の距離だけ移動させて、各区間平面の記録位置[1],[2],[3],[4]において、画像記録を行うことができる。
また、コロ20が当接して移動する直進カム71における各記録位置[1],[2],[3],[4]間の各移動距離が、コロ20の円周長Lの整数倍となるように、直進カム71のコロ20との当接面を構成する。
【0087】
また、本実施形態では、直進カム71は、板形状で形成することを例として説明したが、勿論、これに限定されるものではなく、直進カム71のコロ20との当接面を硬質なワイヤ部材で段差を形取った構成部位であってもよい。この構成部位は軽量化が図れるため、機動性がよい。
本実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0088】
以上説明したように、本発明の各実施形態及び各変形例の移動機構によれば、カムの複数の記録位置に対しコロの円周面が常に同一の位置で当接するため、加工上の誤差等によりコロの回転軸が偏心していても、簡単な構造でヘッドホルダを精度よく主走査方向に移動させることができると共に、互いに連れ回るため、コロとカムの当接面の磨耗を減少させることができ、長期に渡り精度を保つことができる。また、移動機構の構成が簡単なため、交換も容易であり、コスト低減及びメンテナンス性も向上する。
【符号の説明】
【0089】
1…ラインプリンタ、2…ドラム、3…ヘッドホルダ、4…記録ヘッド、7…インクボトル、8…記録媒体供給部、9…記録媒体カートリッジ、10…案内板、12…記録媒体排出部、13…剥離爪、14…除電ローラ、15,29,34,35,39,49,60…移動機構、17…記録媒体、19…搬送機構、20,42,51…コロ、21…コロ軸、23…偏心カム、24…モータ、25…コロベース、26a,26b…付勢バネ、27…フレーム、28…モータベース、30…コロベアリング、40…インク吐出ノズル、92…記録ヘッド部、93…インク吐出面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ドットの高密度化による高質画像化を図る画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な画像記録装置として、記録媒体にインク滴を着弾して画像を記録するインクジェットプリンタが知られている。このインクジェットプリンタの中には、画像記録の高速化を図るために、1つ、又は複数の記録ヘッドによってラインヘッドを構成し、記録媒体を移動させて記録を行うラインプリンタがある。
【0003】
このラインプリンタの基本的な構成では、ラインヘッドにおけるノズルピッチがそのまま記録媒体移動方向に直行する方向の記録ドット密度となるという特徴がある。そのため、高画質化を実現するためには、ノズルピッチの微細化を行う必要があり、技術的、コスト的困難を伴うこととなる。
【0004】
この解決策として、例えば、特許文献1には、記録ヘッドの側面に偏心カムを押し当てた構成が提案されている。また、特許文献2にはラインヘッドが搭載されているヘッドホルダに、偏心カムを当接させた構成が提案されている。これらは共に、記録ヘッド又はヘッドホルダを微小移動させる偏心カムを、モータにより所定の回転位置に回転駆動させることにより、記録ヘッド又はラインヘッドを記録媒体の搬送方向と直交する方向、つまり主走査方向(ノズル列方向)に微小移動させながら複数回、画像記録を繰り返すことで、ラインヘッドのノズルピッチ間の画像記録を補完し、主走査方向の記録媒体への記録ドット密度を増やして、高画質化を実現するラインプリンタが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−310049号公報
【特許文献2】特開平11−245396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したような、所謂、マルチパス記録を行うラインプリンタにおいて、ヘッドホルダに与える微小移動は、ラインヘッドのノズルピッチより小さな、例えば5μm程度の移動位置精度が求められる。
【0007】
特許文献1及び特許文献2に記載のラインプリンタにおいて、主走査方向の微小移動でのドット位置精度は、偏心カムの所定の回転位置における半径、及び記録ヘッド又はヘッドホルダの当接部の主走査方向の位置精度に依存することとなる。このような構成では、記録ヘッド又はヘッドホルダにおける当接部が偏心カムの回転に伴い、すべり摩擦を受けて、偏心カム又はカムの当接面が磨耗する。それらの摩耗した分だけ、主走査方向の記録ヘッド又はヘッドホルダにおける位置のずれが生じて、主走査方向の画像記録のドット位置精度が出ず、隣接するドットが離れたり重なったりして、画像の劣化を発生させることが予測される。
【0008】
また、このような摩耗を防止するために、記録ヘッド又はヘッドホルダ側に、回転自在なコロ(又は、ベアリング等)を設けて、偏心カムをコロと当接させ、偏心カムの回動に伴い、コロが連れ回ることにより、ヘッド又はヘッドホルダの当接部のすべり摩擦を防止し、主走査方向の微小移動でのドット位置精度を向上させる構成が考えられる。
この場合、主走査方向の微小移動におけるドット位置精度は、偏心カムの所定の回転位置における半径及びコロの半径の精度に依存することとなる。
【0009】
しかしながら、偏心カムの回転に伴い連れ回るコロの回転位置は、偏心カムの所定の回転位置に対し、常に同じ回転位置で当接するとは限らず、一定の回転位置にはならない。そのため、コロが例えば、加工誤差のばらつき等により偏心していた場合、所定の偏心カムの回転位置におけるコロの回転位置、言い換えればコロの主走査方向の半径にばらつきが生じるため、着弾位置がずれて、ドット位置精度が出ずに画像を劣化させてしまう虞がある。
【0010】
そこで本発明は、簡単な構造で長期に渡りヘッドホルダを精度よく主走査方向に微小移動させる構成であり、且つカムとの当接部の磨耗を低減する画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に従う実施形態の画像記録装置は、プラテンにより保持搬送された前記記録媒体に対し画像記録を行う記録ヘッドと、前記記録ヘッドをプラテンに対向した位置に保持すると共に、前記記録媒体の搬送方向と直交した主走査方向へ往復移動可能なヘッドホルダと、前記ヘッドホルダを主走査方向に往復移動させる移動機構と、を備え、前記移動機構は、円滑に連続する周面又は円滑に連続する段差を含む周面のいずれかが設けられたカム周面を有するカムと、円筒形状を成し、前記カム周面に側面で当接して係合状態で連れ回る回転部と、前記カム及び前記カムと連れ回る前記回転部を駆動させる駆動部と、で構成され、前記カム周面上には、前記回転部との当接時における前記カムの主走査方向の所定基準位置から前記カム周面までの主走査方向の長さであるカム主走査方向長さが各々決められた長さを有すると共に、主走査方向に移動される前記ヘッドホルダに記録動作させる複数の記録位置が規定され、且つ隣り合う前記記録位置の間の前記カム周面の長さが前記回転部の側面の円周長の整数倍の長さを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単な構造で長期に渡りヘッドホルダを精度よく主走査方向に微小移動させて、且つカムとの当接部の磨耗を低減し、コスト低減、メンテナンス性が向上する画像記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る記録ヘッドを搭載するヘッドホルダの主走査方向移動機構を備えるラインプリンタの概念的な構成例を示す図である。
【図2】図2は、ヘッドホルダとドラムの位置関係を示す側面図である。
【図3】図3は、記録ヘッドのインク吐出面の一部を示す図である。
【図4】図4は、ヘッドホルダ主走査方向移動機構を示す全体図である。
【図5】図5(a)は、ヘッドホルダ主走査方向移動機構の詳細上面図、図5(b)は、ヘッドホルダ主走査方向移動機構の詳細側面図である。
【図6】図6(a)乃至図6(d)は、記録ヘッドのノズルが移動し、記録媒体に吐出されたインク滴の状態を示す図である。
【図7】図7(a)は、偏心カムの形状を示す第1の例の概念図、図7(b)は、偏心カムの形状を示す第2の例の概念図である。
【図8】図8は、第1の実施形態の変形例1に係る、ヘッドホルダ主走査方向移動機構を示す全体図である。
【図9】図9は、第1の実施形態の変形例2に係る、ヘッドホルダ主走査方向移動機構の詳細上面図である。
【図10】図10(a)は、第2の実施形態に係る、ヘッドホルダ主走査方向移動機構の詳細上面図である。図10(b)は、第2の実施形態に係る、ヘッドホルダ主走査方向移動機構の詳細側面図である。
【図11】図11(a)乃至11(c)は、第3の実施形態に係るヘッドホルダ主走査方向移動機構の図である。
【図12】図12(a)は、第4の実施形態に係る、ヘッドホルダ主走査方向移動機構の詳細上面図である。図12(b)は、ヘッドホルダ主走査方向移動機構の詳細側面図である。
【図13】図13(a)は、第5の実施形態に係るヘッドホルダ主走査方向移動機構の詳細上面図、図13(b)は、ヘッドホルダ主走査方向移動機構の詳細側面図である。
【図14】図14は、第5の実施形態の立体カムの斜視図である。
【図15】図15は、第5の実施形態の立体カムの外観構成を示す図である。
【図16】図16は、第5の実施形態の立体カムの側面を平面状に展開した概念図である。
【図17】図17は、第6の実施形態に係るヘッドホルダ主走査方向移動機構の詳細上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るヘッドホルダ主走査方向移動機構(以下、各実施形態等において、移動機構と称する)を備えるラインプリンタについて説明する。図1は、第1の実施形態に係る移動機構を備える画像記録装置の概念的な構成例を示す図である。
【0015】
本実施形態の画像記録装置は、記録ヘッドから複数の色インクを吐出して、移動する記録媒体にカラー画像を記録する、例えばラインプリンタを一例として説明する。勿論、記録される画像は、カラー画像に限定されるものではない。
【0016】
このラインプリンタ1は、複数の記録媒体17が装填された記録媒体カートリッジ9と、記録媒体カートリッジ9から記録媒体17を取り出す記録媒体供給部8と、ドラム2と複数の搬送用ローラを有する記録媒体17を搬送する搬送機構19と、ドラム2の記録媒体17の保持面である外周面(記録媒体保持面)上に近接するように配置される複数の記録ヘッド4を有する記録ヘッド部92と、画像が記録された記録媒体17を排出する記録媒体排出部12と、記録ヘッド4へ供給するインクが充填されたインクボトル7と、で構成される。
【0017】
さらに、ラインプリンタ1は、搬送機構19において、記録媒体17をプラテンであるドラム2に導入する案内板10と、記録媒体17を帯電させる帯電ローラ11と、記録媒体17の電荷を除去する除電ローラ14と、ドラム2の外周面に張り付いた記録媒体17を剥がす剥離爪13とを有している。尚、矢印mは、記録媒体17の搬送方向を示している。
【0018】
ドラム2は、プラテンとして例えば、金属製の円筒形状に形成され、その外周面が記録媒体17を密着保持(本実施形態では静電吸着)し、図示しないモータにより回転して、記録媒体17を搬送する。尚、本実施形態では、プラテンとしてドラムを用いているが、これに限らず、複数ローラでたるみなく保持させた無端ベルトにより記録媒体を搬送するベルトタイプのプラテンであってもよい。この場合、ファン等により負圧を発生させて小孔が多数の開口された無端ベルトに記録媒体を吸着保持させればよい。
【0019】
記録ヘッド部92は、複数の記録ヘッド4を備え、複数の記録ヘッド4は、ドラム2の外周面に沿い、インクの吐出方向がドラム2の中心に向かうように放射状に位置付けられ、ヘッドホルダ3に保持されている。ヘッドホルダ3は、図示しない昇降機構に取り付けられて、図2に示すように、複数の記録ヘッド4をドラム2の円筒形の外周面(記録媒体保持面)に沿うように配置されている。
【0020】
本実施形態における記録ヘッド4は、記録媒体17の幅以上の1ラインの記録領域(ノズル列長)を有するラインヘッドでもよいし、又は、記録媒体17の幅に満たない記録領域を有する短尺記録ヘッドを複数用いて、記録媒体の幅方向に沿って並列や千鳥状に配列したラインヘッドでもよい。以下の説明では、短尺記録ヘッドを用いた記録ヘッド4を例として説明する。
【0021】
記録ヘッド4は、インクを吐出するインク吐出ノズル40を1列又は複数列に配置することができる。図2中のB方向から見たインク吐出面93では、一例として、2列のインク吐出ノズル40を示している。図3では、その詳細な構成を示している。1列目におけるインク吐出ノズル40は、図3に示すように主走査方向にノズルピッチ分離れ規則正しく配列されている。また図3において、2列目のインク吐出ノズル40は、1列目のノズルピッチの間に入り込むように、距離C分ずれて配置されている。これは距離Cをずらすことにより、1列目におけるインク吐出ノズル40によるドット間を埋めるように、2列目のドットが着弾されるため、高解像度が実現される。
【0022】
図4乃至図7を参照して、移動機構15について説明する。
図4は、第1の実施形態における移動機構を示す全体図である。図5(a)は、移動機構の詳細上面図である。図5(b)は移動機構の詳細側面図である。図6(a)乃至図6(d)は、記録ヘッドのノズルが移動し、記録媒体に吐出されたインク滴の状態を示す図である。図7(a)、7(b)は、偏心カムの形状を示す概念図である。
【0023】
ここで、図3及び図6(a)に示す矢印Eは、記録媒体17の搬送方向を示し、図3に示す矢印Dは、ヘッドホルダ3の主走査方向を示し、図6(a)に示す矢印Xは、ヘッドホルダ3の主走査方向における移動距離を示している。
【0024】
ヘッドホルダ3は、記録ヘッド4のインク吐出面93とドラム2の記録媒体保持面との距離(ヘッドギャップ)を保ちつつ、主走査方向に移動できるように、スライドレール等の図示しない主走査方向移動ガイドによって保持されている。
【0025】
移動機構15は、概略的な構成として、フレーム27に固定された回転駆動部となるモータ24と、このモータ24により回転する偏心カム23と、ヘッドホルダ3に回転可能に固定され、偏心カム23に押し当てられたコロ20(回転部)と、偏心カム23とコロ20が常時、押し当てられるように付勢する弾性部材(例えば、コイルバネ)26とで構成される。以下、構成について詳細に説明する。コロ20は、高さが低い円盤形状を含む円筒形状である。
【0026】
記録ヘッド4を搭載するヘッドホルダ3の主走査方向の端面には、円筒形状のコロ20を設置するためのコロベース25が固定されている。コロ20は、コロベース25に立設されたコロ軸21に、コロベアリング30を介在させて回転自在に保持される。尚、本実施形態は、ベアリングとコロを別体に設けた構成になっているが、コロと一体的に構成される、所謂ローラベアリング(又は、ボールベアリング)であってもよく、外周面が円筒形状を成し回転自在であれば、特に限定されるものではない。また、図5(b)では、コロ20を支持するコロ軸21は、片側支持であるが、ヘッドホルダ3に、コロ軸21の両端を支持するコロベース25を設けた両端保持構造であってもよい。
【0027】
ラインプリンタ1のフレーム27には、モータベース28が固着され、モータベース28にはモータ24が取り付けられている。モータ24のモータ軸22には、偏心カム23が固着される。モータ24は、回転位置を制御可能なサーボモータやステッピングモータを用いることが好ましい。ヘッドホルダ3とフレーム27の間には、偏心カム23の外周面とコロ20の円筒部の外周の側面との係合状態を維持させるための付勢バネ26a,26bが設置されている。
【0028】
尚、本実施形態においては、モータベース28及び付勢バネ26a,26bをラインプリンタ1のフレーム27に設けているが、これに限らず、画像記録時に少なくともプラテンとの主走査方向における位置が固定されていればいずれの箇所に設けてもよい。
【0029】
偏心カム23には、主走査方向の基準位置であるモータ軸22の中心に対し、所定の半径を有する複数の記録位置を設けると共に、偏心カム23を回転移動させ、前記記録位置が前記コロ20と当接する各位置において、記録ヘッド4が記録媒体17の搬送方向の同一位置にインクを吐出することにより、記録媒体17の主走査方向に高密度に画像を記録する。
偏心カム23は、図5(a)に示すように、円盤形状を成し、一例として、周面にはほぼ90度毎に記録位置[1],[2],[3],[4]が設けられている。これらの記録位置は、偏心カム23の周面により繋がれている。具体的には、偏心カム23の記録位置[1]から[2]までの間の偏心カムの周面長がL1、偏心カム23の記録位置[2]から[3]までの間の偏心カムの周面長がL2、偏心カム23の記録位置[3]から[4]までの間の偏心カムの周面長がL3、偏心カム23の記録位置[4]から[1]までの間の偏心カムの周面長がL4である。
【0030】
偏心カム23は、この例では、回転中心から各記録位置までの半径長さが、記録位置[1]から記録位置[4]に向かって長くなるように、回転中心及び周面を設定している。各記録位置における偏心カム23の半径の差は、ヘッドホルダ3の主走査方向の移動量であり、記録媒体に形成される主走査方向のドットのピッチ(図6(b)に示す距離X)と同じである。ドットのピッチは、少なくともノズルピッチよりは小さい。本実施形態では、1つのノズルピッチの間に、3つのドットピッチが設けられるように設定されている。
【0031】
図5(a)に示すように、偏心カム23には、外周上に4つの記録位置として、位置[1],[2],[3],[4]が設けられている。偏心カム23は、図5(a)における反時計回りの一方方向に回転し、位置[1],[2],[3],[4]の順に、記録媒体17の搬送方向の同一位置にインクを吐出し画像を記録する。その後、偏心カム23を位置[4]から位置[1]に回転させ、次の画像記録を始める。
【0032】
この構成では、位置[1],[2],[3],[4]の周面長L1,L2,L3,L4の各々がコロ20の一回転の円周長Lに相当している。つまり、コロ20と当接する偏心カム23の各周面長は、コロ20の一回転分の円周長Lの整数倍の長さになるように形成している。例えば、偏心カム23の各周面長とコロ20の円周長が同じであれば、偏心カム23が次の記録位置に回転移動すれば、コロ20も一回転するため、偏心カム23の各記録位置は常にコロ20の同じ面位置と接することとなる。当然、偏心カム23の各周面長がコロ20の整数倍の周面長であれば、偏心カム23の各記録位置はコロ20の常に同じ面位置で当接することとなる。従って、本実施形態では、偏心カム23が一回転すれば、コロ20は、4回転して、偏心カム23の各記録位置は、いずれもコロ20の同じ面位置で接している。
【0033】
尚、本実施形態においては、L1乃至L4の長さを同一としているが、L1乃至L4の各々の長さが異なる長さであっても、コロ20の一回転分の円周長Lの整数倍の長さであればよい。
【0034】
また、ヘッドホルダの主走査方向の移動距離(周面長に相当する)は、隣接するドット間の距離であるため微小であり、つまり、各記録位置における偏心カム23の半径の差(段差)は微小である。以下に説明する、図7(a),(b)においては、分かり易くするために、偏心を極端に示した偏心カムの概念的な図であるが、実際には、小さな段差が付いた円盤形状である。また、図5(a)では、偏心カム23に4つの記録位置[1],[2],[3],[4]を設けたが、これに限らず、例えば、図7(a)、(b)に示すように、偏心カム23に5つの記録位置を設け、主走査方向の画像記録の更なる高密度化を図ってもよい。
【0035】
図7(a)では、偏心カム23に複数、例えば5つの記録位置を設け、位置[1]、[2]、[3]、[4]、[5]として示すと共に、偏心カム23は、位置[1]、[2]、[3]、[4]、[5]の順に反時計回りに回転し、記録媒体17の搬送方向の同一位置にインクを吐出し画像を記録し、その後、逆転して位置[5]から位置[1]へ時計回りに戻り、次の画像記録を始める。そして、偏心カム23の各記録位置をコロ20に係合させるための移動の際の、コロ20と当接する偏心カム23の各周面長L1,L2,L3,L4がコロ20の円周長と同一長になるように、形成している。
【0036】
尚、図7(a)に示す偏心カム23においては、次の画像記録を始める前に、偏心カム23を時計回りに回転し位置[5]から位置[1]へ戻しているが、これに限らず、位置[1]、[2]、[3]、[4]、[5]の順に偏心カム23を反時計回りに回転し画像を記録した後、次の画像記録は位置[5]、[4]、[3]、[2]、[1]の順に偏心カム23を時計回りに回転し画像を記録してもよい。
【0037】
図7(b)では、偏心カム23を上下で対称形状に形成し、さらに、偏心カム23の上下の半分を各々4分割し、各周面長L1,L2,L3,L4が、コロ20の円周長と同一に形成している。偏心カム23に8つの記録位置を設け、位置[1],[2],[3],[4],[5],[4]’,[3]’,[2]’として示している。これらは、記録位置における位置[2]と[2]’、位置[3]と[3]’、位置[4]と[4]’の各々の記録位置における偏心カム23の半径は同じ長さとする。そして偏心カム23は、反時計回りの1方向に回転し、位置[1],[2],[3],[4],[5]の各位置で、記録媒体の搬送方向同一位置で画像記録し、その後、位置[5],[4]’,[3]’,[2]’,[1]の順で、次の画像記録を行い、再び[1]から次の画像記録を始める。
【0038】
次に、本実施形態の作用について説明する。
ラインプリンタ1は、外部機器(パソコン等)から印刷指令が受けると、記録媒体カートリッジ9から記録媒体17を取り出す。その記録媒体17は、記録媒体供給部8を通過し、案内板10を通り、ドラム2へ搬送され、帯電ローラ11によって電荷が加えられたドラム2表面に密着保持される。
【0039】
ドラム2の回転により、記録媒体17の搬送方向先端が記録ヘッド4の記録領域(インク吐出領域)に入ってくると、記録ヘッド4のインク吐出ノズル40は、インク吐出を開始し、記録媒体17の搬送方向末端が記録ヘッド4を通過する時にインクの吐出を停止する。この時、図6(a)に示すように、主走査方向の偏心カム23の記録位置[1]における1回目の画像を記録媒体17に記録する。
【0040】
次に、ドラム2の回転により記録媒体17の搬送方向先端が再度、記録ヘッド4に到達するまでの間に、図示しない制御機構によりモータ24が回転し、コロ20との当接部が図5(a)に示す位置[2]になるように、モータ軸22に固着された偏心カム23が反時計回りに回動する。この時、ヘッドホルダ3に設置したコロ20も付勢バネ26a,26bにより偏心カム23に係合しているため、連れ回り回動する。
【0041】
コロ20との当接部が図5(a)に示す偏心カム23の位置[2]まで回動すると、ヘッドホルダ3に搭載された記録ヘッド4のインク吐出ノズル40aは、図6(b)に示す位置[1]から距離X(ドットのピッチ)の長さだけ主走査方向に移動して位置[2]となる。再度、記録媒体17の搬送方向先端が記録ヘッド4とドラム2の隙間に入ってくると、インクが記録媒体17に噴射され、図6(b)に示すように、最初の画像記録位置に対して、距離Xが離れた位置に画像を記録する。
【0042】
以降、同様に、コロ20との当接部が図5(a)に示す偏心カム23の位置[3][4]の各記録位置において、図6(c)及び図6(d)に示す画像記録を行い、記録媒体17の1枚の画像記録を終了する。画像記録が終了すると、除電ローラ14により記録媒体17の電荷が除去される。
電荷が除去された記録媒体17は、剥離爪13によってドラム2から取り除かれる。記録媒体17はラインプリンタ1から機外へ排出される。1枚の記録媒体17の画像記録が終了すると、偏心カム23は元の位置[1]まで回動し、次の記録媒体17の画像記録に備える。
【0043】
尚、本実施形態では、記録媒体の1面にのみ画像を記録するラインプリンタを示したが、これに限らず、既知の記録媒体反転手段を搭載して、記録媒体17の表面への画像記録を終了した後、記録媒体17を反転し、表面と同様に裏面への画像記録を行い、その後、記録媒体17を排出し、次の記録媒体の画像記録に移行してもよい。
【0044】
また、本実施形態では、偏心カム23の記録位置を4つ設け、各々の記録位置において主走査方向の画像記録を行うが、1枚の画像記録時に4回記録する場合には、記録媒体17を記録ヘッドの下を4回通過させる必要があり、1枚の画像記録としては時間を要する。
【0045】
そこで、このような4回記録による高画質モードに対して、2回記録による通常画質モードと、1回記録による低画質モードを選択能に設けてもよい。即ち、写真等の高画質が求められる場合には、高画質モードを選択して4回の画像記録を行う。一方、グラフ等のように通常画質でよければ、通常画質モードを選択して、記録媒体17を2回記録ヘッドの下を通過させ、4つのうちの位置[1]、[3]において画像記録することにより、通常画質ではあるが、記録時間を短縮することができる。
【0046】
また、図7(a)では、コロ20の当接位置が位置[5]に達した後は、モータ24を逆回転させて偏心カム23を元の位置まで戻す。図7(b)においては、モータ24を逆回転させず、偏心カム23の上側半分の位置[1],[2],[3],[4],[5]による移動往路で1枚目の記録媒体に画像記録を行う。次に、偏心カム23の下側半分の位置[5],[4]’,[3]’,[2]’,[1]による移動復路で2枚目の画像記録を行い、コロ20との当接位置を偏心カム23の最初の位置[1]に戻す。
【0047】
以上説明した本実施形態によれば、次の効果を奏する。
(1)記録ヘッドを主走査方向に移動するために、偏心カムのコロとの当接位置が1つの記録位置から次の記録位置へ移動する際、偏心カムの規定された周面上の長さに対して、コロが整数回の回転となり、必ず同じ面位置で偏心カムと当接するため、製造時にコロが偏心していたとしても主走査方向のヘッドホルダの精度のよい位置決めができる。
(2)回転する偏心カムに当接するコロが連れ回るように共に回動することにより、偏心カムとの当接部の磨耗が低減でき、長期に渡り精度よくヘッドホルダを移動できる。
(3)簡単な構造でヘッドホルダを移動させることができ、コスト低減、メンテナンス性の向上ができる。
【0048】
[第1の変形例]
次に図8を参照して、第1の実施形態の第1の変形例について説明する。
図8は、第1の変形例における移動機構29を示す全体図である。
本変形例は、第1の実施形態における複数のヘッドホルダ3を一体化して、偏心カム23とコロ20を一対のみで構成している。この構成以外は、第1の実施形態と同等である。
【0049】
第1の変形例によれば、次の効果を奏する。
(1)記録ヘッドを一括的に微小移動できるため、第1の実施形態の効果に加えて、複数のヘッドホルダの微小移動の移動量の違いを防ぐことができる。
(2)微小移動の機構を共通化でき、コストの低減ができる。但し、第1の変形例における偏心カム23とコロ20は、第1の実施形態の偏心カム23とコロ20よりも掛かる負荷が大きくなるため、強度を持たせる必要がある。
【0050】
[第2の変形例]
次に図9を参照して、第1の実施形態の第2の変形例について説明する。
図9は、第2の変形例における移動機構34を示す上面図である。第2の変形例は、第1の実施形態におけるコロ20の径を小さくすることにより、コロ51のように円周長を少なくする。さらに、偏心カム50をモータ軸22の中心で左右、上下対照とした楕円形状に形成して、中心を境に外周を4分割した周面長のうちの1つの周面長をコロ51の円周長の整数倍分、分割したものである。本変形例では、コロ51は、周面長L1,L2,L3,L4に対して、それぞれ1回転して、計4回転する。
【0051】
偏心カム50は、図9に示す水平線と垂直線の交点(中心)を境に4分割しているため、偏心カム50は、水平線で分けた上側の周面長50aと下周面長50bでヘッドホルダ3は、一往復の同じ移動動作を行う。従って、偏心カム50を1回転させると、ヘッドホルダ3は2往復することになる。
【0052】
以上のような第2の変形例によれば、次の効果を奏する。
(1)コロの円周長を少なくすることでヘッドホルダ主走査方向移動機構全体を小さくすることができ、装置の小型化ができる。
(2)偏心カム1回転でヘッドホルダが2往復するため、偏心カム半回転でヘッドホルダを元の位置に戻すことができ、時間短縮が図れる。このため、ドラムも早く回動させることができ、画像記録の高速化ができる。
【0053】
[第3の変形例]
次に、第1の実施形態の第3の変形例について説明する。
本変形例は、前述した第1の実施形態の構成において、ヘッドホルダ3のコロ20とモータ24の偏心カム23の配置位置を入れ替える。つまり、ヘッドホルダ3側に偏心カム23を設置し、モータ24のモータ軸22にコロ20を固着する。又は、ヘッドホルダ3側に偏心カム23とモータ24を設け、コロ20とコロ保持部材をフレーム側に設けてもよい。このような構成においては、第1の実施形態と同等な作用効果となる。
【0054】
以上のような第3の変形例は、次の効果を奏する。
(1)前述した第1の実施形態と同等の効果を得ることができる。
(2)コロ20とモータ24の偏心カム23の配置位置の自由度が増して、設計が容易になる。
【0055】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係る移動機構を備えるラインプリンタについて説明する。図10(a)は、第2の実施形態に係る画像記録装置のヘッドホルダに設けられた移動機構の概念的な構成例を示す上面図である。図10(b)は、図10(a)の矢印Jから見た構成を示す図である。
【0056】
本実施形態の移動機構35は、前述した第1の実施形態における片持ち支持されたコロに換わって、両端が回転可能に支持された直線状の軸により構成される。
ヘッドホルダ3の側端面に軸ベアリング37を支持する2つの軸ベース36を設置し、軸ベアリング37には軸38が挿入されている。軸38は、コロの役割をはたし、偏心カム23に付勢バネ26によって係合されている。軸38の円周長と偏心カム23の周面長の関係は、第1の実施形態と同じく、偏心カム23の各記録位置間の周面長は、軸38の1回転の円周長の整数倍である。
【0057】
図10(b)に示すように、偏心カム23は楕円形状を成し、前述した第1の実施形態の第2の変形例における偏心カム50と同様な形状である。従って、偏心カムの1回転でヘッドホルダが2往復する。
【0058】
以上のように構成された第2の実施形態の移動機構は、次の効果を奏する。
(1)コロが、両端が支持された軸であるため、片持ち支持のタイプに比べて、強度が増すこととなり、小型化に好適する。
(2)偏心カムの1回転でヘッドホルダが2往復するため、偏心カム半回転でヘッドホルダを元の位置に戻すことができ、時間短縮が図れる。このため、ドラムも早く回動させることができ、画像記録の高速化が実現できる。
【0059】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態に係る移動機構を備えるラインプリンタについて説明する。
図11(a)は、第3の実施形態に係る画像記録装置のヘッドホルダに設けられた移動機構の概念的な構成例を示す上面図である。図11(b)、(c)は複数のコロ径に対応する偏心カムの周面上の記録位置を示す上面図である。
【0060】
本実施形態の移動機構39は、前述した第1の実施形態と基本構成は同じであり、コロが円周長の異なる2層構造となっており、微小移動位置決め部材としての偏心カム23が昇降移動と接離移動により、そのコロの各層に選択的に係合する。
【0061】
移動機構39のコロは、異なる円周長の段差を有する階層構造となっている。又は、異なる円周長の部分コロが積み重ねられて、一体的な階層構造となっている。本実施形態では、図11(a)に示すように、円周長が長い上層のコロ20aと、コロ20aよりも円周長の短い下層のコロ20bとがコロ軸21にコロベアリング30を介在させて回転自在に保持される。これらのコロ20a,20bの円周上の面位置に選択的に偏心カム23を当接させるように、モータ24や偏心カム23を主走査方向と直交する方向に昇降移動させる駆動部となるソレノイド31bと、偏心カム23とコロ20a又は、偏心カム23とコロ20bのいずれかを係合させるためにモータ24や偏心カム23を主走査方向へ接離移動させる駆動部となるソレノイド31cと、を備えている。
【0062】
さらに、偏心カム23が昇降移動及び接離移動する時に、付勢バネ26等によりヘッドホルダ3が主走査方向に偏心カム23と連れ動かないように停止位置で保持させる駆動部となるソレノイド31aを図示しないフレーム等に設置している。また、偏心カム23の昇降移動及び接離移動する時に利用するガイドレール33a、33bを設けている。
【0063】
本実施形態の移動機構39においても、偏心カム23の全周面長は、コロ20a及びコロ20bの整数倍である。図11(b)に示すように、偏心カム23の原点[1]から4分割(黒丸)した位置[5]までの各周面長L1乃至L4は、コロ20aの円周長Laと同一である。このため、偏心カム23が原点[1]から位置[5]まで回転した場合には、係合するコロ20aは4回転することとなる。同様に、図11(c)に示すように、偏心カム23の原点[1]から9分割(黒丸)した位置[10]までの各周面長L1乃至L9は、コロ20bの円周長Lbと同一である。このコロ20bと係合している場合は、偏心カム23が原点[1]から[10]までの回転により、コロ20bは9回転する。
【0064】
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態では、コロの選択により2段階のヘッドホルダ3の移動量を選択することができる。通常画質の記録の場合のように、インク吐出ノズル40のドット間を低密度で埋め、記録時間を短縮するためには、図11(b)に示すように、偏心カム23の周面上の記録位置の数を少なくし、各記録位置間の等間隔である周面上の距離を大きくすると共に、その周面上の距離の整数倍の円周長Laを有した、上層のコロ20aを選択する。ドラム1回転毎に、図11(b)に示す偏心カム23の原点[1]から位置[5]まで偏心カム23がステップ回転する。
【0065】
また、写真等で画像を高画質化する場合のように、インク吐出ノズル40のドット間を高密度で埋めるためには、図11(c)に示すように、前記通常画質の記録に対し偏心カム23の周面上の記録位置の数を多くし、各記録位置間の等間隔である周面上の距離を小さくすると共に、その周面上の距離の整数倍の円周長Lbを有した、下層のコロ20bを選択する。
【0066】
コロ20aからコロ20bへの切り替えは、まず、ソレノイド31aの軸を矢印F方向に突出させて、ヘッドホルダ3に先端を当接させて宛がい、偏心カム23とコロ20aとを隔離し係合状態を解消した位置でヘッドホルダ3を不動にすることにより、ヘッドホルダ3の位置が保持される。次に、ソレノイド31bの軸が矢印G方向に引き込まれ、ガイドレール33aに案内されながら、偏心カム23が下降する。
【0067】
次に、ソレノイド31cの軸が矢印H方向に突出して、偏心カム23がガイドレール33bに案内されながら移動し、コロ20bと係合すべき位置に移動する。その後、ソレノイド31aの軸が引き込まれてヘッドホルダ3をフリー状態にすることにより、偏心カム23とコロ20bが付勢バネ26a,26bにより係合する。尚、各動作の際の衝撃を緩和する緩衝材を設置してもよい。
コロ20bに係合した偏心カム23は、図11(c)に示すように、記録位置[1]−[10]で9分割された周面上の各距離がコロ20bの円周長Lbと同じであり、ドラム1回転毎のヘッドホルダ3の移動量が少なく、高画質な画像を記録する。尚、偏心カム23を切り替える際は常に偏心カム23が原点となる記録位置[1]で行う。
【0068】
尚、本実施形態では、偏心カム23を矢印H方向に接離移動させるために、ソレノイド31c及びガイドレール33bを用いているが、これらを用いない構成であってもよい。この場合、偏心カム23が、コロ20aと当接した場合と、コロ20bと当接した場合とで、ヘッドホルダ3の主走査方向の位置が異なってしまうが、この位置ずれ量だけ、記録ヘッド4のインクを吐出するインク吐出ノズル40を選択的に補正することにより、記録媒体17へずれなく記録することが可能となる。
【0069】
以上のように構成された第3の実施形態の移動機構は、次の効果を奏する。
(1)前述した第1の実施形態と同様な効果を奏することができる。
(2)本実施形態のコロは、異なる円周長の段差を有する階層構造となっているため、所望する記録画質により選択した層(円周長)のコロに偏心カム23を係合させて、ヘッドホルダ3を往復移動させるため、使用用途によって画質を選択することができる。
【0070】
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態に係る移動機構を備えるラインプリンタについて説明する。
図12(a)は、移動機構の詳細上面図である。図12(b)は、移動機構の詳細側面図である。本実施形態の構成において、前述した第1の実施形態と同等の構成部位には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0071】
移動機構49は、概略的な構成として、フレーム27に固定されたモータ24により回転する微小移動位置決め部材としてのカップ型偏心カム41と、ヘッドホルダ3に回転可能に固定され、カップ型偏心カム41の中央凹部の内側の内周面上に押し当てられたコロ42と、カップ型偏心カム41とコロ42が常時、押し当てられるように付勢する弾性部材(例えば、コイルバネ)46a,46bとで構成される。
【0072】
以下、移動機構49の構成について詳細に説明する。
記録ヘッド4を搭載するヘッドホルダ3の主走査方向の端面には、円筒形状のコロ42を設置するためのコロベース45が固定されている。コロ42は、コロベース45に立設されたコロ軸44に、コロベアリング43を介在させて回転自在に保持される。尚、本実施形態のベアリングとコロとして、一体的なローラベアリングを用いてもよい。
【0073】
ラインプリンタ1のフレーム27には、モータベース28が固着され、モータベース28にはモータ24が取り付けられている。モータ24のモータ軸22には、カップ型偏心カム41が固定される。モータ24は、第1の実施形態と同様に、回転位置を制御可能なサーボモータやステッピングモータを用いることが好ましい。付勢バネ26a,26bは、伸びによる付勢力により、カップ型偏心カム41とコロ42の係合状態を維持する。
【0074】
カップ型偏心カム41の内壁面に設けられる内周面は、前述した第1の実施形態における図5に示した回転中心が外れた円盤形状の偏心カム外周の周面と同等の形状である。尚、これ以外でも、図9に示すようなモータ軸22の中心で左右、上下対照とした楕円形状又は、図7(a),(b)に示す段差を有する円形状、又は上下対照の形状であってもよい。これらは、凹状部材の内面削り出しにより作製することができる。
【0075】
本実施形態におけるカップ型偏心カム41の内周面には、複数、例えば4つの記録位置[1],[2],[3],[4]が設定され、これらはコロ42の円周長Lの整数倍の長さをもつ内周面L1,L2,L3,L4により繋がれている。カップ型偏心カム41の内周面にコロ42が当接した状態で、カップ型偏心カム41を回転させ、各記録位置[1],[2],[3],[4]にコロ42が当接した際に、インクを吐出することにより、記録媒体の主走査方向に高密度に画像を記録する。
本実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。また、カップ型偏心カム41とコロ42は、カップ型偏心カム41の内周面(内壁面、縁内面)がコロ42との当接面であるため、係合状態が外れ難い形状である。
【0076】
尚、本実施形態の移動機構49では、ヘッドホルダ3を押し出す方向に付勢する弾性部材を用いたが、引っ張る方向に付勢する弾性部材を用いた場合には、カップ型偏心カム41とコロ42の当接箇所がヘッドホルダ3側からフレーム27側に変わるが、同等の作用効果を得ることかできる。
[第5の実施形態]
次に、第5の実施形態に係る移動機構を備えるラインプリンタについて説明する。
図13(a)は、移動機構の詳細な構成を示す上面図である。図13(b)は、移動機構の詳細な構成を示す側面図である。図14は、立体カムの斜視図、図15は、立体カムを図13(b)の矢印方向Iから見た外観構成を示す図、図16は、立体カムの側面を平面状に展開した概念図である。本実施形態の構成において、前述した第1の実施形態と同等の構成部位には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0077】
本実施形態の移動機構60は、概略的な構成として、フレーム27に形成された溝部(又は切欠部)に嵌め合わされたモータベース61に固定されたモータ24と、このモータ24により回転する立体カム63と、ヘッドホルダ3に回転可能に固定され、立体カム63の縁に押し当てられたコロ20と、立体カム63の縁63aとコロ20が常時、押し当てられるように付勢する弾性部材(例えば、コイルバネ)62a,62bとで構成される。
【0078】
本実施形態による立体カム63は、段差縁が設けられたカップ形状である。これは、立体カム63における主走査方向の基準位置である立体カム63の円筒形底面63bから、円筒形底面63bと対向する縁63aの面上までの主走査方向の距離が、4段階の主走査方向距離である記録位置[1],[2]([2] '),[3]([3]'),[4]を有し、記録位置[1]と[2]([2] ')、[2]([2] ')と[3]([3]')、[3]([3]')と[4]の各々の前記主走査方向距離の差は、前述した主走査方向のドットのピッチ(図6(b)に示す距離X)と同じである。また、これら記録位置は、縁63aの面上に[1],[2],[3],[4],[3]',[2] 'の順に設けられており、これら各記録位置間をつなぎコロ20が移動する縁63aの面上の各々の長さは、同じ長さL1,L2,L3,L3’,L2’,L1’であり、コロ20の円周長Lと同じ長さである。
【0079】
即ち、この立体カム63は、モータ24の一方向回転に伴い、縁63aのコロ20と当接する面を、記録位置[1],[2],[3],[4]、そして[4],[3]',[2]',[1]の順に移動させることにより、ヘッドホルダ3を主走査方向に移動させる構成である。また、各記録位置間をコロ20が移動する立体カム63の縁63aの面上の長さは、コロの円周長と同じであり、各記録位置において当接するコロ20の円周上の面は同じ面位置となる。よって、立体カム63の1回転で、コロが6回転し、ヘッドホルダ3が1往復移動することとなる。
【0080】
尚、本実施形態の立体カム63では、記録位置[4]から[1]に戻る際に、記録位置[3]',[2]'の復路におけるドット記録を行う構成であるが、これら記録位置[3]',[2]'を無くして、ドット記録無しで、スムーズに記録位置[4]から[1]に戻るように縁63aの面を形成してもよい。この場合には、立体カム63の記録位置[4]から[1]につながる縁63aの面上の長さを、コロ20の円周長Lと同じ長さになるように構成する。
さらに、立体カム63の記録位置間の縁63aの面上の長さと、コロ20の円周長Lとは同じ長さに限定されるものではなく、立体カム63の各記録位置([1],[2],[3],[4],[3]',[2]')間の縁63aの面上の各長さがコロ20の円周長の整数倍の長さであればよい。また、立体カム63の記録位置の数についても、特に4つに限定されるものではなく、求められる画質と記録時間により、変更してもよい。
本実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0081】
[第6の実施形態]
次に、第6の実施形態に係る移動機構を備えるラインプリンタについて説明する。
図17は、本実施形態の移動機構における詳細な構成を示す上面図である。本実施形態の構成において、前述した第1の実施形態と同等の構成部位には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0082】
本実施形態は、回転するタイプの円盤形カム又はカップ形状カムに換わって、直性的な往復移動を行う直進カム71を用いている。この直進カム71の直進移動に伴い、カム移動方向と直交する方向(主走査方向)にヘッドホルダ3を移動させる構成である。
【0083】
この直進カム71は、不図示のスライドレール等により、主走査方向と直交する方向に直線移動可能である。直進カム71は、駆動部となるモータ24の軸に設けられた駆動伝達部材72と当接する。駆動伝達部材72と直進カム71との当接部は、各々が大きな摩擦係数を有するように構成され、モータ24による回転動作に対し遅れや滑りがなく直進カム71に駆動伝達される。モータ24は、モータベース73を介してフレーム27に固定され、図示しない駆動回路により駆動制御される。本実施形態において、直進カム71と駆動伝達部材72との当接部は、ギヤによる駆動伝達の構成を用いることも可能であるが、採用していない。これは、ギヤを用いた際に、製造の精度誤差や噛み合わせでガタが発生した場合には、各記録位置への移動精度が懸念されることとなり、コロ20が整数回転しない可能性もある。
【0084】
そこで、駆動伝達部材72と直進カム71との当接部は、各々が大きな摩擦係数を有するように構成し、摩擦によりずれのないように駆動を伝達することが好ましい。また、モータ24は、パルス信号で駆動するパルスモータが好ましい。通常のモータを用いる場合には、記録位置[1]に初期位置を特定するための例えば、位置センサを設けることにより、採用することも可能である。
【0085】
この直進カム71は、平板状の板部材から成り、平板状の縁である外周面のうち、モータ24の駆動伝達部材72と当接する面は、直線的な一平面(駆動面と称する)であり、直進カム71における主走査方向の基準位置である。この駆動面の反対側の外周面であり、コロ20と当接する当接面は、図17に示すように、記録位置[1],[2],[3],[4]を有する4段の区間平面と、これらの区間平面の間をスムーズに繋ぐ段差面とで構成される。本実施形態では、4段の区間平面を有する例であったが、この段数は限定されるものではない。
【0086】
この直進カム71をコロ20に押し付けて当接させた状態で、主走査方向と直交する方向に直線移動させることにより、コロ20がスムーズに段差面を移動して直線カム71の主走査方向の長さが変わり、ヘッドホルダ3を所望の距離だけ移動させて、各区間平面の記録位置[1],[2],[3],[4]において、画像記録を行うことができる。
また、コロ20が当接して移動する直進カム71における各記録位置[1],[2],[3],[4]間の各移動距離が、コロ20の円周長Lの整数倍となるように、直進カム71のコロ20との当接面を構成する。
【0087】
また、本実施形態では、直進カム71は、板形状で形成することを例として説明したが、勿論、これに限定されるものではなく、直進カム71のコロ20との当接面を硬質なワイヤ部材で段差を形取った構成部位であってもよい。この構成部位は軽量化が図れるため、機動性がよい。
本実施形態によれば、前述した第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0088】
以上説明したように、本発明の各実施形態及び各変形例の移動機構によれば、カムの複数の記録位置に対しコロの円周面が常に同一の位置で当接するため、加工上の誤差等によりコロの回転軸が偏心していても、簡単な構造でヘッドホルダを精度よく主走査方向に移動させることができると共に、互いに連れ回るため、コロとカムの当接面の磨耗を減少させることができ、長期に渡り精度を保つことができる。また、移動機構の構成が簡単なため、交換も容易であり、コスト低減及びメンテナンス性も向上する。
【符号の説明】
【0089】
1…ラインプリンタ、2…ドラム、3…ヘッドホルダ、4…記録ヘッド、7…インクボトル、8…記録媒体供給部、9…記録媒体カートリッジ、10…案内板、12…記録媒体排出部、13…剥離爪、14…除電ローラ、15,29,34,35,39,49,60…移動機構、17…記録媒体、19…搬送機構、20,42,51…コロ、21…コロ軸、23…偏心カム、24…モータ、25…コロベース、26a,26b…付勢バネ、27…フレーム、28…モータベース、30…コロベアリング、40…インク吐出ノズル、92…記録ヘッド部、93…インク吐出面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラテンにより保持搬送された前記記録媒体に対し画像記録を行う記録ヘッドと、
前記記録ヘッドをプラテンに対向した位置に保持すると共に、前記記録媒体の搬送方向と直交した主走査方向へ往復移動可能なヘッドホルダと、
前記ヘッドホルダを主走査方向に往復移動させる移動機構と、
を備え、
前記移動機構は、
円滑に連続する周面又は円滑に連続する段差を含む周面のいずれかが設けられたカム周面を有するカムと、
円筒形状を成し、前記カム周面に側面で当接して係合状態で連れ回る回転部と、
前記カム及び、該カムと連れ回る前記回転部を駆動させる駆動部と、
で構成され、
前記カム周面上には、前記回転部との当接時における前記カムの主走査方向の所定基準位置から前記カム周面までの主走査方向の長さであるカム主走査方向長さが各々決められた長さを有すると共に、主走査方向に移動される前記ヘッドホルダに記録動作させる複数の記録位置が規定され、
隣り合う前記記録位置の間の前記カム周面の長さが前記回転部の側面の円周長の整数倍の長さを有することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記移動機構の前記駆動部は、
前記回転部と当接する前記カム周面の位置を各々の前記記録位置に選択的に移動位置決めし、
前記記録位置に前記回転部が当接したときに、前記記録ヘッドが前記記録媒体に画像記録すると共に、前記カムの前記回転部との当接位置が1つの記録位置から別の記録位置へ移動する際、前記係合状態で前記カムに対し前記回転部が整数回だけ回転し連れ回り、前記カムの複数の記録位置のいずれの位置においても、前記カムと当接する前記回転部における当接面が同じ面位置で当接することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記ヘッドホルダと画像記録装置のフレームのいずれか一方に前記回転部を、他方に前記カムを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記カム周面に設けられた複数の前記記録位置は、前記駆動部の駆動により予め定めた順に選択的に前記回転部と当接するよう位置決めされ、各記録位置における前記カム主走査方向長さの差は、前記記録ヘッドが前記記録媒体にインクを吐出して形成するドットの前記主走査方向におけるピッチであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記カムは回転軸を有し、前記駆動部の駆動に伴い回転すると共に、前記回転軸と直交する方向に前記カム主走査方向長さが変化する前記カム周面を有する偏心カムであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記カムは回転軸を有し、前記駆動部の駆動に伴い回転すると共に、該回転軸方向に前記カム主走査方向長さが変化する前記カム周面を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記カムは、前記駆動部の駆動に伴い前記主走査方向と直交する方向に直線移動すると共に、該直線移動方向と直交する方向に前記カム主走査方向長さが変化する前記カム周面を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記移動機構は、
前記回転部が、異なる円周長の円筒形状を成す複数の部分回転部が積み重ねられて、一体的な階層構造を成し、さらに、
前記カムを選択された前記部分回転部に当接し、係合する切り換え機構を具備することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の画像記録装置。
【請求項9】
前記移動機構において、
前記カムは、回転軸を有する円形底面から側面を立ち上がり、立ち上がり上面である縁部に、回転軸方向に前記カム主走査方向長さが変化するように、異なる高さで円滑に連続する段差を持つカム周面が設けられたカップ形状を成し、
前記回転部は、前記カム周面に押し当てられるように当接され、係合状態で連れ回ることを特徴とする請求項6に記載の画像記録装置。
【請求項10】
前記移動機構において、
前記カムは、平板形状を成し、平板形状の縁である周面に、直線的な第1の面と、該第1の面と対向し、円滑に連続する複数の段差を有するカム周面とを有し、
前記カムは、前記第1の面が当接する前記駆動部により、主走査方向と直交する方向に直進往復移動され、
前記カム主走査方向長さは、第1の面と前記カム周面との距離であることを特徴とする請求項7に記載の画像記録装置。
【請求項1】
プラテンにより保持搬送された前記記録媒体に対し画像記録を行う記録ヘッドと、
前記記録ヘッドをプラテンに対向した位置に保持すると共に、前記記録媒体の搬送方向と直交した主走査方向へ往復移動可能なヘッドホルダと、
前記ヘッドホルダを主走査方向に往復移動させる移動機構と、
を備え、
前記移動機構は、
円滑に連続する周面又は円滑に連続する段差を含む周面のいずれかが設けられたカム周面を有するカムと、
円筒形状を成し、前記カム周面に側面で当接して係合状態で連れ回る回転部と、
前記カム及び、該カムと連れ回る前記回転部を駆動させる駆動部と、
で構成され、
前記カム周面上には、前記回転部との当接時における前記カムの主走査方向の所定基準位置から前記カム周面までの主走査方向の長さであるカム主走査方向長さが各々決められた長さを有すると共に、主走査方向に移動される前記ヘッドホルダに記録動作させる複数の記録位置が規定され、
隣り合う前記記録位置の間の前記カム周面の長さが前記回転部の側面の円周長の整数倍の長さを有することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記移動機構の前記駆動部は、
前記回転部と当接する前記カム周面の位置を各々の前記記録位置に選択的に移動位置決めし、
前記記録位置に前記回転部が当接したときに、前記記録ヘッドが前記記録媒体に画像記録すると共に、前記カムの前記回転部との当接位置が1つの記録位置から別の記録位置へ移動する際、前記係合状態で前記カムに対し前記回転部が整数回だけ回転し連れ回り、前記カムの複数の記録位置のいずれの位置においても、前記カムと当接する前記回転部における当接面が同じ面位置で当接することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記ヘッドホルダと画像記録装置のフレームのいずれか一方に前記回転部を、他方に前記カムを設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記カム周面に設けられた複数の前記記録位置は、前記駆動部の駆動により予め定めた順に選択的に前記回転部と当接するよう位置決めされ、各記録位置における前記カム主走査方向長さの差は、前記記録ヘッドが前記記録媒体にインクを吐出して形成するドットの前記主走査方向におけるピッチであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記カムは回転軸を有し、前記駆動部の駆動に伴い回転すると共に、前記回転軸と直交する方向に前記カム主走査方向長さが変化する前記カム周面を有する偏心カムであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記カムは回転軸を有し、前記駆動部の駆動に伴い回転すると共に、該回転軸方向に前記カム主走査方向長さが変化する前記カム周面を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記カムは、前記駆動部の駆動に伴い前記主走査方向と直交する方向に直線移動すると共に、該直線移動方向と直交する方向に前記カム主走査方向長さが変化する前記カム周面を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記移動機構は、
前記回転部が、異なる円周長の円筒形状を成す複数の部分回転部が積み重ねられて、一体的な階層構造を成し、さらに、
前記カムを選択された前記部分回転部に当接し、係合する切り換え機構を具備することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の画像記録装置。
【請求項9】
前記移動機構において、
前記カムは、回転軸を有する円形底面から側面を立ち上がり、立ち上がり上面である縁部に、回転軸方向に前記カム主走査方向長さが変化するように、異なる高さで円滑に連続する段差を持つカム周面が設けられたカップ形状を成し、
前記回転部は、前記カム周面に押し当てられるように当接され、係合状態で連れ回ることを特徴とする請求項6に記載の画像記録装置。
【請求項10】
前記移動機構において、
前記カムは、平板形状を成し、平板形状の縁である周面に、直線的な第1の面と、該第1の面と対向し、円滑に連続する複数の段差を有するカム周面とを有し、
前記カムは、前記第1の面が当接する前記駆動部により、主走査方向と直交する方向に直進往復移動され、
前記カム主走査方向長さは、第1の面と前記カム周面との距離であることを特徴とする請求項7に記載の画像記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−66469(P2012−66469A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212749(P2010−212749)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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