説明

画像読取り装置

【課題】省電力・低発熱なエレクトロルミネッセンス素子を光源として利用しつつ、光量増大を図るとともに読取りラインの両端部分での光量低下を補償することのできる画像読取り装置を得る。
【解決手段】CCDラインセンサによって原稿画像を1ラインずつ読み取る画像読取り装置。原稿を照明するための光源ユニット10Bは、複数の透明なエレクトロルミネッセンス素子31,32,33を重ね合わせ、最下面には反射面23が設けられている。それぞれのエレクトロルミネッセンス素子31,32,33は発光部31a,32a,33aを備え、長手方向Bの中央部分よりも両端部分のほうが発光部31a,32a,33aの重なりが多く、結像レンズによる両端部分での光量低下を補償している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取り装置、特に、原稿画像を光学的に読み取るための画像読取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンタに搭載される、あるいは、パソコンなどへの画像入力装置として用いられる画像読取り装置としては、光源にて原稿を照明し、原稿からの反射光をミラーを介して結像レンズに導き、CCD(光電変換素子)からなるラインセンサに結像させるように構成したものが知られている。
【0003】
原稿照明用の光源としては、従来、蛍光灯やハロゲンランプなどが主に使用されていたが、最近では、LEDやエレクトロルミネッセンス素子が省電力・低発熱な光源として注目を集めている。但し、これらの光源では、画像読取りの高速化が進む現在では大光量を得ることが実用化の条件とされている。また、結像レンズを用いると、レンズのコサイン4乗則による1ラインでの両端部分での光量低下を補償する必要も生じる。
【0004】
特許文献1には、高輝度発光とするために、対向する陽極電極と陰極電極の間に複数個の発光ユニットを有し、各発光ユニットがそれぞれ1層の等電位面を形成する層によって仕切られている有機エレクトロルミネッセント素子が記載されている。また、特許文献2には、点状光源を用いつつ1ラインの両端部分を密集させて両端部分での光量増加を図る光源装置が記載されている。但し、これらの文献1,2では画像読取り装置への適用にまでは言及していない。
【特許文献1】特開2003−45676号公報
【特許文献1】特開2001−34129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、省電力・低発熱なエレクトロルミネッセンス素子を光源として利用しつつ、光量増大を図るとともに読取りラインの両端部分での光量低下を補償することのできる画像読取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成するため、第1の発明は、
原稿を照明するための光源と、原稿からの反射光を結像するための結像手段と、結像された画像を読み取るための読取り手段と、原稿からの反射光を前記結像手段に導くためのミラーと、を備えた画像読取り装置において、
前記光源として、発光面積の異なる複数の透明なエレクトロルミネッセンス素子を重ね、最下面に反射面を設けた光源ユニットを用い、
前記エレクトロルミネッセンス素子の長手方向の中央部分よりも両端部分のほうが発光部の重なる面積が広いこと、
を特徴とする。
【0007】
第1の発明においては、複数の透明なエレクトロルミネッセンス素子を重ねて配置したため、光量が増大することは勿論、長手方向の中央部分よりも両端部分のほうが発光部の重なる面積を広くしたため、レンズのコサイン4乗則による両端部分での光量低下を補償することができる。
【0008】
第2の発明は、
原稿を照明するための光源と、原稿からの反射光を結像するための結像手段と、結像された画像を読み取るための読取り手段と、原稿からの反射光を前記結像手段に導くためのミラーと、を備えた画像読取り装置において、
前記光源として、長手方向に長さの異なる複数の透明なエレクトロルミネッセンス素子を重ね、最下面に反射面を設けた光源ユニットを用い、
前記エレクトロルミネッセンス素子の長手方向の中央部分よりも両端部分のほうが発光部の重なりを多くしたこと、
を特徴とする。
【0009】
第2の発明においては、複数の透明なエレクトロルミネッセンス素子を重ねて配置したため、光量が増大することは勿論、長手方向の中央部分よりも両端部分のほうが発光部の重なりを多くしたため、レンズのコサイン4乗則による両端部分での光量低下を補償することができる。
【0010】
第3の発明は、
原稿を照明するための光源と、原稿からの反射光を結像するための結像手段と、結像された画像を読み取るための読取り手段と、原稿からの反射光を前記結像手段に導くためのミラーと、を備えた画像読取り装置において、
前記光源として、フレキシブルでかつ透明な複数のエレクトロルミネッセンス素子を重ね、最下面に反射面を設けた光源ユニットを用い、
前記エレクトロルミネッセンス素子の長手方向の中央部分よりも両端部分のほうを原稿面に近接配置したこと、
を特徴とする。
【0011】
第3の発明においては、複数の透明なエレクトロルミネッセンス素子を重ねて配置したため、光量が増大することは勿論、長手方向の中央部分よりも両端部分のほうを原稿面に近接配置したため、レンズのコサイン4乗則による両端部分での光量低下を補償することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る画像読取り装置の実施例について、添付図面を参照して説明する。なお、各図において、同じ部材、部分には共通する符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
(第1実施例、図1〜図3参照)
図1に本発明に係る画像読取り装置の概略構成を示す。この画像読取り装置1は、プラテンガラス2上に載置された原稿(図示せず)の画像を縮小光学系を用いて読み取るもので、光源ユニット10Aにてプラテンガラス2上に載置された原稿を照射し、原稿面からの反射光をミラー15,16,17を介して結像レンズ18に入射し、該結像レンズ18にてCCDラインセンサ19(光電変換素子)上に結像させる。
【0014】
光源ユニット10Aとミラー15とは第1スライダ11に搭載され、ミラー16,17は第2スライダ12に搭載され、それぞれ、矢印A方向に図示しないモータによって移動される。CCDラインセンサ19は矢印A方向とは直交する方向(主走査方向Bと称する)にライン状に配置され、光源ユニット10Aやミラー15なども主走査方向Bに延在しており、本明細書ではこの主走査方向Bを長手方向とも称する。
【0015】
光源ユニット10Aは、図2に示すように、2枚の透明な第1及び第2のエレクトロルミネッセンス素子21,22(以下、EL素子とも記載する)を図示しない透明な接着層を介して重ね、最下面に反射面23を設けたものである。矢印Cが原稿面照射方向である。各EL素子21,22は、透明な有機(無機でもよい)発光層をインジウム−スズ酸化物(ITO)などの透明電極を備えた透明なガラス材で封止されている。
【0016】
第1及び第2のEL素子21,22のそれぞれの発光部21a,22aは、図2に斜線を付して示されており、その長さは主走査方向Bの読取り長さの全長に相当し、主走査方向Bの中央部分よりも両端部分のほうが発光部21a,22aの重なる面積が広く設定されている。具体的には、第1のEL素子21の発光部21aは中央部分が狭くされている。従って、第1及び第2のEL素子21,22から原稿面に向かって照射される合成光量は、図3に曲線Xで示すように、中央部分に対して両端部分が増大している。このような光量分布は、結像レンズ18によって両端部分の光量が減衰すること(レンズのコサイン4乗則による)を補償し、図3に曲線Yで示すように、CCDラインセンサ19への入射光量分布が中央部分から両端部分にわたってほぼ均一となる。
【0017】
なお、光源ユニット10A内での光の進行状態は以下に図5(B)を参照して説明する第2実施例と基本的に同様である。
【0018】
本第1実施例においては、第2のEL素子22の発光部22aの中央部分を狭くしてもよく、あるいは、3枚以上のEL素子を積層してもよく、積層枚数が多くなれば光量自体も増大する。
【0019】
(第2実施例、図4及び図5参照)
図4に本発明に係る画像読取り装置の第2実施例に用いられる光源ユニット10Bを示す。この光源ユニット10Bは、長手方向Bに長さの異なる複数の透明な第1、第2及び第3のEL素子31,32,33を図示しない透明な接着層を介して重ね、最下面に反射面23を設けたものである。最下段の第3のEL素子33の発光部33aの長さは主走査方向Bの読取り長さの全長に相当し、第1のEL素子31は短くて主走査方向Bの両端部分に重ねられ、第2のEL素子32は全長のほぼ1/3の長さを有している。
【0020】
第1、第2及び第3のEL素子31,32,33を図4に示すように積層することにより、長手方向Bの中央部分よりも両端部分のほうが発光部31a,32a,33aの重なりが多くなる。従って、EL素子31,32,33から原稿面に向かって照射される合成光量は、図5(A)に曲線Xで示すように、中央部分に対して両端部分が増大している。なお、図5(A)は主走査方向Bの位置を示す横軸の原点が中央である。このような光量分布は、結像レンズ18によって両端部分の光量が減衰すること(レンズのコサイン4乗則による)を補償し、CCDラインセンサ19への入射光量分布が中央部分から両端部分にわたってほぼ均一となる。
【0021】
ちなみに、図5(B)は光源ユニット10B内での光の進行状態を模式的に示し、第3のEL素子33の発光部33aから上方へ放射された光は第2及び第1のEL素子32,31を透過して進行し、下方へ放射された光は反射面23で反射されて第3、第2及び第1のEL素子33,32,31を透過して上方へ進行する。第1のEL素子31の発光部31aから下方へ放射された光は第2及び第3のEL素子32,33を透過するとともに反射面23で反射され、第3、第2及び第1のEL素子33,32,31を透過して上方へ進行する。第2のEL素子32の発光部32aから放射された光も同様に上方へ進行する。
【0022】
本第2実施例においては、3枚の透明なEL素子31,32,33を重ねて配置したため、光量が増大することは勿論、長手方向Bの中央部分よりも両端部分のほうが発光部31a,32a,33aの重なりを多くしたため、前記第1実施例と同様に、結像レンズ18による両端部分での光量減衰を補償し、CCDラインセンサ19への入射光量分布が中央部分から両端部分にわたってほぼ均一となる。
【0023】
(第3実施例、図6参照)
図6に本発明に係る画像読取り装置の第3実施例に用いられる光源ユニット10Cを示す。この光源ユニット10Cは、フレキシブルでかつ透明な2枚のEL素子41,42を透明な接着層24を介して重ね、最下面に反射面23を設けたものであり、発光部41a,42aは長手方向Bの中央部分よりも両端部分を原稿面に近接配置されている。具体的には、光源ユニット10C自体の両端部分をプラテンガラス2に向けて近づくように傾斜した状態に屈曲させている。なお、EL素子41,42は3枚以上であってもよいことは勿論である。
【0024】
本第3実施例においては、2枚の透明なEL素子41,42を重ねて配置したため、光量が増大することは勿論、長手方向Bの中央部分よりも両端部分のほうを原稿面に近接配置したため、前記第1実施例と同様に、結像レンズ18による両端部分での光量減衰を補償し、CCDラインセンサ19への入射光量分布が中央部分から両端部分にわたってほぼ均一となる。
【0025】
なお、光源ユニット10C内での光の進行状態は図5(B)を参照して説明した第2実施例と基本的に同様である。
【0026】
(他の実施例)
なお、本発明に係る画像読取り装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できる。
【0027】
例えば、本発明が適用される画像読取り装置としては、光学系が移動して静止原稿の画像を読み取る方式以外に、所定位置で静止する読取り光学系の直上を原稿を所定速度で搬送することにより画像を読み取るスルーシート方式であってもよい。また、光源ユニットからの照明光を原稿面に導く導光部材の構成や原稿面からの反射光を導くミラーなどの構成は任意である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る画像読取り装置の第1実施例を示す概略断面図である。
【図2】前記第1実施例に用いられる光源ユニットを示す分解斜視図である。
【図3】図2に示す光源ユニットによる主走査方向の光量分布を示すグラフである。
【図4】本発明に係る画像読取り装置の第2実施例に用いられる光源ユニットを示す分解斜視図である。
【図5】(A)は図4に示す光源ユニットによる主走査方向の光量分布を示すグラフであり、(B)は該光源ユニット内における光の進行状態を示す説明図である。
【図6】本発明に係る画像読取り装置の第3実施例に用いられる光源ユニットを示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1…画像読取り装置
2…プラテンガラス
10A,10B,10C…光源ユニット
15,16,17…ミラー
18…結像レンズ
19…CCDラインセンサ
21,22,31,32,33,41,42…エレクトロルミネッセンス素子
21a,22a,31a,32a,33a,41a,42a…発光部
23…反射面
B…主走査方向(長手方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を照明するための光源と、原稿からの反射光を結像するための結像手段と、結像された画像を読み取るための読取り手段と、原稿からの反射光を前記結像手段に導くためのミラーと、を備えた画像読取り装置において、
前記光源として、発光面積の異なる複数の透明なエレクトロルミネッセンス素子を重ね、最下面に反射面を設けた光源ユニットを用い、
前記エレクトロルミネッセンス素子の長手方向の中央部分よりも両端部分のほうが発光部の重なる面積が広いこと、
を特徴とする画像読取り装置。
【請求項2】
原稿を照明するための光源と、原稿からの反射光を結像するための結像手段と、結像された画像を読み取るための読取り手段と、原稿からの反射光を前記結像手段に導くためのミラーと、を備えた画像読取り装置において、
前記光源として、長手方向に長さの異なる複数の透明なエレクトロルミネッセンス素子を重ね、最下面に反射面を設けた光源ユニットを用い、
前記エレクトロルミネッセンス素子の長手方向の中央部分よりも両端部分のほうが発光部の重なりを多くしたこと、
を特徴とする画像読取り装置。
【請求項3】
原稿を照明するための光源と、原稿からの反射光を結像するための結像手段と、結像された画像を読み取るための読取り手段と、原稿からの反射光を前記結像手段に導くためのミラーと、を備えた画像読取り装置において、
前記光源として、フレキシブルでかつ透明な複数のエレクトロルミネッセンス素子を重ね、最下面に反射面を設けた光源ユニットを用い、
前記エレクトロルミネッセンス素子の長手方向の中央部分よりも両端部分のほうを原稿面に近接配置したこと、
を特徴とする画像読取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−89313(P2009−89313A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259766(P2007−259766)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】