説明

画像読取装置とこれを備える画像形成装置

【課題】簡素で安価に実現できる構成で、かつ機器の輸送時に走行体の振動を抑制して、部品の破損などを防止する。
【解決手段】第1走行体3はレール11上を走行し、また第1走行体3には係合部(弾性部材)12が存在している。このレール11の側面、または図示しない第1走行体3上方のフレームなどに、第1走行体3の移動を規制する形状に保持部13が設けられている。この保持部13の下面は、弾性変形量を加味し係合部12の上面より低い位置に配置されており、画像読取装置を輸送する際には、第1走行体3が停止する係止位置においてのみ両者が接する構成となっている。この係合部12と保持部13との接触により第1走行体3の移動を規制し、部品等の破損を防止している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、スキャナ等のコンタクトガラス上に載置された原稿の像を撮像センサによって読み取る画像読取装置とこれを備える画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、画像読取装置は、コンタクトガラス上にセットした原稿に光源により光を照射し、その反射光を走行体が具備するミラーや、レンズなどを介して撮像素子のラインセンサ上に結像させ、その状態で走行体が走査することで光学的に画像を読み取る構成となっている。そのため、電源が入っていない状態では、走行体は走査範囲を自由に動ける状態となることが多い。
【0003】
一方、近年は画像読取装置においても小型化・軽量化が進んでいることから、輸送時の荷扱い等によって部品の破損が起き易い傾向となっている。これに加え、量販店などで扱われることも増えており、従来と流通経路が変わることから、前述した傾向がより顕著となっている。
【0004】
このような現象に対し、例えば特許文献1では、輸送時の走行体近傍に走行体が振動した際の変位量を規制する変位量規制部を設ける構成が提案されている。また、同様に特許文献2では、走行体をレールにロックするロック部材を設けた構成が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述した特許文献1では、走行体が振動した際に変位量規制部と衝突させて変位を抑える構成であるため、両者が衝突した際の衝撃は抑えることができない。また、特許文献2では、ロックを外す際にコンタクトガラスなどを開けて作業する必要があり、その際内部にゴミなどが侵入して、異常画像を引き起こす可能性が高くなってしまう。さらに、外部から解除が可能な場合でも、解除することを忘れた状態で機器を起動させてしまう可能性があり、それに伴う不具合が懸念される。
【0006】
本発明は以上のような背景に鑑みてなされたものであり、簡素で安価に実現できる構成で、かつ機器の輸送時に走行体の振動を抑制して、部品の破損などを防止することができる画像読取装置とこれを備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載される画像読取装置は、原稿を露光するための光源と、原稿からの反射光を所定光路へ導くミラーと、反射光を撮像素子上に結像させるレンズと、反射光の光量を画像信号に変換する撮像素子とを備え、レンズを通して原稿を照射した際の反射光を撮像素子上に結像させた状態で走行体を走査して、光学的に原稿画像を読み取る画像読取装置において、画像読取装置を輸送する際に走行体の移動を規制する係止位置に走行体を保持する保持部と、走行体に係止位置で保持部と接する係合部とを備え、係止位置で保持部と係合部の少なくとも一方が弾性変形して保持されることを特徴とする。
【0008】
この構成によって、画像読取装置を輸送する際に走行体の停止する係止位置において、走行体を押さえる弾性力が働いた状態となるため、走行体の振動を抑制し、部品の破損などを防止することができる。
【0009】
また、請求項2に記載される発明は、請求項1の画像読取装置において、保持部と係止位置で接する走行体の係合部が、走行体に移動方向で重心位置を投影した位置近傍に配置されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によって、走行体の振動を効率よく抑えることが可能となり、部品の破損などを防止することができる。
【0011】
また、請求項3に記載される発明は、請求項1または2の画像読取装置において、画像読取装置を輸送する際の走行体の係止位置が、画像読取処理を行う際に走行体が移動する走行範囲外にあることを特徴とする。
【0012】
この構成によって、画像読取処理の動作に影響を与えることなく輸送時の走行体の振動抑制が可能となり、部品の破損などを防止することができる。
【0013】
また、請求項4に記載される発明は、請求項1または2記載の画像読取装置において、画像読取装置を輸送する際の走行体の係止位置が、画像読取処理を行う際に走行体が移動する走行範囲外で、かつ画像読取処理を行う際に走行体が待機する位置近傍にあることを特徴とする。
【0014】
この構成によって、前述の各効果を得た上で、輸送後の電源投入時に走行体が待機位置に移動するイニシャライズ動作時間を短縮することが可能となる。
【0015】
また、請求項5に記載される画像形成装置は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像読取装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、画像読取装置を輸送する際に走行体の停止する係止位置において、走行体の振動を抑制し、部品の破損などを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1における画像読取装置の概略構成を示す斜視図
【図2】本実施形態1における画像読取装置の内部構造を示す構成図
【図3】本実施形態1における第1走行体の一部を示す部分拡大図
【図4】本実施形態1における第1走行体の一部を示す部分側面図
【図5】本実施形態1における第1走行体の輸送時の係止状態を示す図
【図6】本実施形態1における第1走行体の別の構成例を示す側面図
【図7】本実施形態1における第1走行体の係止位置での接触部分を示す部分側面図
【図8】本発明の実施形態2における画像読取装置で走行体の移動する各位置を示す側面図
【図9】本実施形態2における画像読取装置で輸送時の係止位置を示す側面図
【図10】本実施形態2における画像読取装置で走行体の移動する各位置を示す側面図
【図11】本実施形態2における画像読取装置で輸送時の別の係止位置を示す側面図
【図12】本発明の実施形態3における画像形成装置の内部構造を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明における実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の実施形態1における画像読取装置の概略構成を示す斜視図であり、図2は画像読取装置の内部構造を示す構成図である。図1,図2に示すように、画像読取装置の内部には、光学ユニット1が存在し、その光学ユニット1内には、光源4および両端支持された第1ミラー5よりなる第1走行体3、そして、やはり両端支持された第2ミラー7、第3ミラー8よりなる第2走行体6、および原稿の反射光をCCD10上に結像させる結像レンズ9が設けられており、ホストコンピュータから送られてくる1ライン毎の画像読取要求の信号に応じて、第1走行体3および第2走行体6はそれぞれ2:1の速度で原稿に沿って移動しながら逐次画像の読取を行うよう構成されている。
【0020】
第1走行体3が一定の速度で往復移動するとともに、第2走行体6が第1走行体3の1/2の速度で第1走行体3に追従して往復移動する。これにより、コンタクトガラス2上の原稿が光学的に走査される。コンタクトガラス2上の原稿が光源4等により照明されて、その反射光像が第1ミラー5、第2ミラー7、第3ミラー8を介して結像レンズ9に導かれ、この結像レンズ9により撮像素子のCCD(ラインセンサ)10上に結像される。
【0021】
このCCD10は、結像された原稿の反射光像を光電変換してアナログ画像信号とし、原稿の読み取りが行われる。そして、原稿の読み取り終了後に、第1走行体3と第2走行体6はホームポジション(待機位置)に復帰する。
【0022】
なお、CCD10から出力されたアナログ画像信号は、図示していないがアナログ/デジタル変換器によりデジタル画像信号に変換され、画像処理回路を搭載した回路基板において、各々の画像処理(2値化、多値化、階調処理、変倍処理、編集処理など)が施される。
【0023】
図3は本実施形態1における第1走行体の一部を示す部分拡大図、図4は部分側面図である。図3に示すように、第1走行体3はレール11上を走行する構成となっている。第1走行体3には係合部(弾性部材)12が存在し、レール11の側面、または図示しない第1走行体3上方のフレームなどに、移動を規制する形状に保持部13が設けられている。この保持部13の下面は、図4に示す弾性変形量を加味し係合部12の上面より低い位置に配置されており、画像読取装置を輸送する際に、第1走行体3が停止する係止位置においてのみ両者が接する構成となっている。
【0024】
図5に示す第1走行体3が輸送時の係止位置に移動すると、係合部(弾性部材)12と保持部13が接触し、係合部12が変形した状態となる。こうすることで、係合部12の弾性力により、第1走行体3を下面に押さえつける力が働くため、第1走行体3が上下に振動するのを抑えることが可能となり、例えば光源やミラーなどが振動によって周辺部品に接触し、破損することを防止できる。
【0025】
さらには、係合部(弾性部材)12の変形量や形状、材質などを、第1走行体3を走行させるための駆動力のみで、前述の保持部13との接触状態へ移行可能なように構成としておくと、機械を起動させたときに自動的に通常状態に復帰ができるため、例えば輸送時のロックを外し忘れるようなことも防止できる。
【0026】
また、一般に走行体の駆動源としてはステッピングモータが使用されており、通常の画像読取処理時の回転数よりも低い回転数で、係止位置に移動する制御とする。このステッピングモータの低い回転数では、比較的トルクが高い領域となるため、同じ力で走行体を押さえようとした場合に低い電流値で実現できるため、省エネの効果も期待できる。
【0027】
なお、走行体としては、前述の第2走行体6等の光学系が一体となった方式の走行体であっても同様の効果が得られる。また、本実施形態1の例では走行体側の係合部12に弾性形状を設けたが、逆に保持部13側に弾性形状を持たせてもよい。
【0028】
図6は本実施形態1における第1走行体の他の構成例を示す側面図である。前述の図4に示すように第1走行体3に設けた係合部12によって、保持部13との接触部分の近傍に関しては振動が抑えられる効果を得ることができる。
【0029】
しかしながら、例えば図7に示すような接触部分が第1走行体3の端部に近い場合、反対側端部の振動を抑えることは難しい。そこで、図6に示したように、係合部12の保持部との接触部分の位置として、第1走行体3の移動方向に対する重心を投影した位置を含むようにしたものである。この位置に係合部12を配置して振動を抑えると、第1走行体3全体の振動を効率よく抑えるが可能となり、部品の破損などを防止することが可能となる。
【0030】
図8は本発明の実施形態2における画像読取装置で走行体の移動する各位置を示す側面図、図9は輸送時の係止位置を示す側面図である。通常、画像読取装置は、画像読取処理時の位置精度を確保するため、「ホームポジション」と呼ばれる基準の待機位置を持っており、画像読取処理の動作前後はホームポジション(待機位置)で待機する制御とすることが多い。そのため、輸送時に走行体が停止する係止位置としてはホームポジション(待機位置)のままであることが多いが、この係止位置を待機位置と同じ位置として前述の実施形態1の構成を設けると、通常の画像読取処理する動作の際に走行体駆動の負荷となって、必要以上の駆動力を確保することが必要となってしまう。
【0031】
そこで、本実施形態2では、走行体に輸送時専用の停止位置を持たせ、その停止位置(係止位置)を、通常の画像読取処理時に走行体が移動する範囲外にしたものである。この構成にすることで、画像読取処理の動作時には、振動を抑制する機能が働かなくなるため、画像読取処理時の動作に影響を及ぼすことなく、また輸送時の振動を抑制することが可能となる。
【0032】
図10は本実施形態2における画像読取装置で走行体の移動する各位置を示す側面図、図11は輸送時の別の係止位置を示す側面図である。図11に示すように、走行体の輸送時専用の停止位置(係止位置)として、ホームポジション(待機位置)側に近く、かつ画像読取処理時に走行体が移動する範囲外にしたものである。
【0033】
通常、画像読取装置は輸送後の電源オン時に走行体は「ホーミング動作」と呼ばれるイニシャライズ動作によって、ホームポジション(待機位置)へ移動するが、前述した構成にすることにより、係止位置から待機位置に移動する際の移動時間を短縮することが可能となる。そのため、前述した各実施形態の効果を得た上で、復帰時間も短くすることが可能となる。
【0034】
図12は本発明の実施形態3における画像形成装置の内部構造を示す構成図である。本実形態3は前述した画像読取装置を搭載した画像形成装置であるレーザプリンタの例を示す図であり、図2にて説明した部材に対応する構成要件には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0035】
図12のレーザプリンタにおいて画像形成部20は、感光体21、帯電ローラ22、現像ユニット23、転写ローラ24、クリーニングユニット25、定着ユニット26、光走査ユニット27、給紙カセット28、レジストローラ対29、給紙コロ30、用紙搬送路31、排紙ローラ32、排紙トレイ33などから構成されている。
【0036】
また、光学ユニット1は、図2にて説明した画像読取装置の構成と同様なものである。前述したように光学ユニット1では、第1走行体3と第2走行体6を走査させて、コンタクトガラス2上の原稿(図示せず)を走査し、原稿からの反射光像をCCD10に結像させる。CCD10において原稿の反射光像を光電変換してアナログ画像信号とし、原稿の読み取りが行われる。そして原稿の読取終了後に、第1走行体3と第2走行体6はホームポジション(待機位置)に復帰する。
【0037】
光学ユニット1からの画像処理信号は光走査ユニット27へ出力され、光走査ユニット27による感光体21に対する光走査にて感光体21の表面に潜像が形成される。感光体21の潜像は現像ユニット23でトナー現像され、このトナー像が転写ローラ24により用紙に転写される。転写後の用紙は、定着ユニット26による定着処理を受けた後、排紙ローラ32によって排紙トレイ33へ排出される。
【0038】
本実施形態3の画像形成装置は、前述した各実施形態の画像読取装置を備えることで、画像読取装置の小型化・軽量化に伴い、これを備えて一体化し形成した画像形成装置においても同様に、輸送時の振動を抑制して、部品の破損などを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る画像読取装置とこれを備える画像形成装置は、画像読取装置を輸送する際に走行体の停止する係止位置において、走行体の振動を抑制し、部品の破損などを防止することができ、複写機、ファクシミリ、スキャナ等のコンタクトガラス上に載置された原稿の像を読み取る装置として有用である。
【符号の説明】
【0040】
1 光学ユニット
2 コンタクトガラス
3 第1走行体
4 光源
5 第1ミラー
6 第2走行体
7 第2ミラー
8 第3ミラー
9 結像レンズ
10 CCD
11 レール
12 係合部
13 保持部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】特開2002−23282号公報
【特許文献2】特開平5−204055号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を露光するための光源と、原稿からの反射光を所定光路へ導くミラーと、前記反射光を撮像素子上に結像させるレンズと、前記反射光の光量を画像信号に変換する撮像素子とを備え、前記レンズを通して原稿を照射した際の前記反射光を前記撮像素子上に結像させた状態で走行体を走査して、光学的に原稿画像を読み取る画像読取装置において、
前記画像読取装置を輸送する際に走行体の移動を規制する係止位置に前記走行体を保持する保持部と、前記走行体に前記係止位置で保持部と接する係合部とを備え、前記係止位置で前記保持部と前記係合部の少なくとも一方が弾性変形して保持されることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記保持部と係止位置で接する前記走行体の係合部が、前記走行体に移動方向で重心位置を投影した位置近傍に配置されていることを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記画像読取装置を輸送する際の前記走行体の係止位置が、画像読取処理を行う際に前記走行体が移動する走行範囲外にあることを特徴とする請求項1または2記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記画像読取装置を輸送する際の前記走行体の係止位置が、画像読取処理を行う際に前記走行体が移動する走行範囲外で、かつ画像読取処理を行う際に前記走行体が待機する位置近傍にあることを特徴とする請求項1または2記載の画像読取装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像読取装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−78050(P2011−78050A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230238(P2009−230238)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】