説明

画像読取装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】装置に特殊な加工処理あるいは複雑な機構を追加することなく、低コストでかつ簡単確実にパンチ穴を消去する画像読取装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】原稿を載置するプラテンガラスと、このプラテンガラスを覆う開閉可能なプラテンカバーと、プラテンガラスに載置された原稿画像を読み取る画像読取部と、を具備し、プラテンカバーを開いたままでプラテンガラスに載置された原稿画像を読み取り、この読み取られた原稿画像から原稿内部と原稿外部との明度及び彩度差により原稿端を検出する原稿端検出手段と、プラテンカバーを開いたままで原稿載置部に載置された原稿画像を読み取り、原稿端の内部にありかつ原稿内部とパンチ穴部との明度及び彩度差によりパンチ穴を検出して当該パンチ穴を消去処理する制御手段とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿のパンチ穴を確実に消去処理する画像読取装置及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像読取装置および画像形成装置(複写機、ファクシミリ、複合機、等)において、原稿にファイリング用等の穴がパンチ加工されている場合には、そのパンチ穴部を画像有りとして画像読取装置で読み取ってしまい、作業者にとって意図しない不必要で目障りな原稿のパンチ穴の影がそのまま用紙に画像形成されてしまう。また、大量にコピーが取られた場合には無駄なトナー消費が顕著に発生し、無駄な経費を浪費するという問題がある。さらに、パンチ穴の影がそのまま用紙に画像形成されないように原稿をセットし直してコピーのやり直しを行わなければならないといった場合も起こってしまう。
【0003】
そこで、当該問題を解決するために、スキャナによる原稿読み取りデータから記憶手段に格納されているパンチ穴パターンと照合してパンチ穴を判別し、あるいはスキャナによる原稿読み取りデータから原稿圧板シートあるいは原稿搬送ベルトの画像データレベルによりパンチ穴を判別して、パンチ穴の画像データを消去あるいは中抜きするものがあった。(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、左右の原稿台の隣接する側の端部付近所定範囲の原稿台上面を明色部として形成し、他の部分を黒色部とすることにより、綴じ部付近にパンチ穴等を有する製本原稿を読み取った場合でも、パンチ穴からは原稿台上の明色部が露光され、読み取り画像においてパンチ穴が黒丸として形成されないものがある(例えば特許文献2参照)。
【0005】
さらに、プラテンガラスに載置された原稿に被せるカバーの原稿対向面に原稿と色彩の濃度差が少ない色の背面シートを昇降可能に取り付け、プリスキャン時に上昇させれば原稿の周囲に外光が入射して原稿の端部を容易に検出でき、読取スキャン時には下降させればパンチ穴部を黒色とさせないものがある。(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平9−9041号公報(第5図、第8図、第9図)
【特許文献2】特開平11−220605号公報(第11図)
【特許文献3】特開2001−69317号公報(第1図、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術においては、以下のような問題が生じる。
【0007】
スキャナによる原稿読み取りデータを記憶手段に格納されているパンチ穴パターンと照合してパンチ穴を判別する場合は、パンチ穴パターンを記憶するための記憶手段が必要になり、記憶手段に格納されているパンチ穴パターンと照合してパンチ穴を判別する処理が難しくなり誤検出をしやすくなるという問題があった。
【0008】
また、スキャナによる原稿読み取りデータから原稿圧板シートあるいは原稿搬送ベルトの画像データレベルによりパンチ穴を判別する場合は、原稿圧板シートあるいは原稿搬送ベルトの画像データレベルを原稿の画像データレベルと区別するために原稿圧板シートあるいは原稿搬送ベルトに特別な明色処理が必要になるという問題があった。さらに、左右の原稿台の隣接する側の端部付近所定範囲の原稿台上面を明色部として形成し、他の部分を黒色部とする場合は、原稿台上面を特殊加工する必要があり、装置を複雑にしてコストが増大するという問題があった。
【0009】
一方、プラテンガラスに載置された原稿に被せるカバーの原稿対向面に原稿と色彩の濃度差が少ない色の背面シートを昇降可能に取り付け、プリスキャン時に上昇させ読取スキャン時に下降させる場合は、カバーの原稿対向面に原稿と色彩の濃度差が少ない色の背面シートを昇降可能に取り付ける必要がり、装置を複雑にしてコストが増大するという問題があった。
【0010】
即ち、従来の技術は特殊な加工処理あるいは複雑な機構を追加するため、低コストでかつ簡単確実にパンチ穴を消去処理するができないという問題がある。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みて為されたもので、装置に特殊な加工処理あるいは複雑な機構を追加することなく、低コストでかつ簡単確実にパンチ穴を消去処理することができる画像読取装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、原稿を載置する原稿載置部と、この原稿載置部を覆う開閉可能なカバーと、前記原稿載置部に載置された原稿画像を読み取る画像読取部と、を具備し、前記カバーを開いたままで前記原稿載置部に載置された原稿の画像を前記画像読取部により読み取り、この読取画像における明度及び彩度差に基づき原稿端を検出して記憶する原稿端検出記憶手段と、前記カバーを開いたままで前記原稿載置部に載置された原稿の画像を前記画像読取部により読み取り、この読取画像において前記原稿端により画定される原稿領域内での明度及び彩度差に基づきパンチ穴を検出し、当該パンチ穴を消去処理する制御手段とを備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る画像読取装置及び画像形成装置によれば、装置に特殊な加工処理あるいは複雑な機構を追加することなく、低コストでかつ簡単確実にパンチ穴を消去することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の第1の態様に係る画像読取装置は、原稿を載置する原稿載置部と、この原稿載置部を覆う開閉可能なカバーと、前記原稿載置部に載置された原稿画像を読み取る画像読取部と、を具備し、前記カバーを開いたままで前記原稿載置部に載置された原稿の画像を前記画像読取部により読み取り、この読取画像における明度及び彩度差に基づき原稿端を検出して記憶する原稿端検出記憶手段と、前記カバーを開いたままで前記原稿載置部に載置された原稿の画像を前記画像読取部により読み取り、この読取画像において前記原稿端により画定される原稿領域内での明度及び彩度差に基づきパンチ穴を検出し、当該パンチ穴を消去処理する制御手段とを備えるものである。
【0015】
これによれば、カバーを開いたままで原稿載置部に載置された原稿の画像を読み取り、この読取画像における明度及び彩度差(即ち、原稿領域内と原稿領域外とに相当する明度及び彩度の差)により原稿端を検出する。次に、再度カバーを開いたままで原稿載置部に載置された原稿の画像を読み取り、前回の原稿画像読取により検出された原稿端により画定される原稿領域内での明度及び彩度差(即ち、パンチ穴部とそれ以外の通常の画像部分とに相当する明度及び彩度の差)によりパンチ穴を検出して当該パンチ穴を消去処理するので、装置に特殊な加工処理あるいは複雑な機構を追加することなく既存の装置だけで、低コストでかつ簡単確実にパンチ穴を消去処理することができる。
【0016】
本発明の第2の態様に係る画像読取装置は、前記、本発明の第1の態様において、前記原稿領域内に形成され得るパンチ穴の位置情報を予め記憶するパンチ穴位置記憶手段をさらに備え、前記制御手段は、前記パンチ穴の位置情報に適合する領域内から前記パンチ穴を検出することを特徴とするものである。
【0017】
これによれば、カバーを開いたままで原稿載置部に載置された原稿の画像を読み取り、この読取画像における明度及び彩度差により原稿端を検出する。次に、再度カバーを開いたままで原稿載置部に載置された原稿の画像を読み取り、原稿端により画定される原稿領域内で且つパンチ穴位置情報に適合する領域において、明度及び彩度差によりパンチ穴を検出して当該パンチ穴を消去処理するので、装置に特殊な加工処理あるいは複雑な機構を追加することなく既存の装置だけで、低コストでかつ簡単確実にパンチ穴を消去処理することができる。
【0018】
また、原稿画像内部にあるパンチ穴の位置情報によりパンチ穴を検出するので、パンチ穴位置情報外にあるパンチ穴と同じ明度及び彩度の画像データを誤検出するのを防止することができる。
【0019】
本発明の第3の態様に係る画像読取装置は、前記、本発明の第2の態様におけるパンチ穴位置情報が、原稿端から所定の範囲に広がる領域の情報であることを特徴とするものである。
【0020】
これによれば、パンチ穴位置情報を通常パンチ穴が存在し得る領域(原稿端からパンチ穴が形成される可能性のある位置までを含む所定の範囲)に限定するので、パンチ穴をより確実に検出しかつパンチ穴と同じ明度及び彩度の画像データを誤検出するのを防止することができる。
【0021】
本発明の第4の態様に関わる画像読取装置は、前記、本発明の第2の態様及至第3の態様のいずれかにおけるパンチ穴消去処理を、検出したパンチ穴を含む所定の範囲内で行うことを特徴とするものである。
【0022】
これによれば、パンチ穴消去処理を、パンチ穴を含む所定の範囲内で行うことにより、パンチ穴およびパンチ穴の影部を含めてより確実にパンチ穴消去処理を行うことができる。
【0023】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1(a)、(b)は本実施の形態の画像形成装置の外観を示す斜視図である。図1(a)は、画像形成装置100のプラテンカバー104を開いた状態を示す外観斜視図である。図1(a)において、画像形成装置100は、記録紙格納部、記録紙搬送部、画像形成部及び画像定着部等を内蔵する装置本体101と、画像形成にかかわる各種指示を入力すると共に、指示内容を表示する操作パネル102と、原稿を載置する読取面を形成すると共に、読取面に載置された原稿に印刷された画像を読み取る画像読取処理部等を内蔵する画像読取部103と、読取面をカバーする開閉可能なプラテンカバー104等から構成される。
【0025】
図1(b)は図1(a)の画像読取部103及びプラテンカバー104の部分を拡大して示す外観斜視図である。図1(b)において、画像読取部103の原稿及びブック原稿を載置する読取面には、画像読取部103の読取範囲をカバーする透明ガラスで形成されたプラテンガラス105が取り付けられている。プラテンガラス105を保持する保持枠の図中奥側には、プラテンカバー104の開閉状態を検出する開閉検出センサ106が設けられている。
【0026】
また、プラテンガラス105の読取面の裏側(裏面)には、原稿サイズを検出する原稿サイズ検出センサ107が複数配置されている。なお、図1(b)に示すプラテンガラス105の形状は長方形であり、その短辺が画像読取部103の主走査方向の読取範囲であり、その長辺が画像読取部103の副走査方向の読取範囲である。
【0027】
次に、画像形成装置100の装置本体101に内蔵される制御系の構成について図2を参照して説明する。図2は、制御系の構成を示すブロック図である。図2において、画像形成装置100の制御系は、CCDラインセンサ201と、A/D変換器202と、変化点検出回路203と、変化点記憶メモリ204と、画像マスク回路205と、画像処理回路206と、画像出力部207と、制御操作部208と、制御回路部209と、から構成される。
【0028】
以下は、画像形成装置100としてカラー機について説明するが、白黒機についても同様に本発明を適用可能である。また、画像出力部を除いた制御系より構成される画像読取装置についても本発明を適用可能である。
【0029】
CCD(Charge Coupled Devices)ラインセンサ201は、プラテンガラス105の短辺である主走査範囲をカバーする1ライン分のCCDラインセンサから構成される。CCDラインセンサ201は、走査機構(図示せず)によりプラテンガラス105に載置された原稿サイズに合わせて副走査方向に走査される。原稿に印刷されたカラー画像を主走査幅でライン毎にR(赤)、G(緑)、B(青)の3色に分けて読み取り、ライン毎に読み取ったR、G、B画像をR、G、B画像信号としてA/D変換器202に出力する。
【0030】
A/D変換器202は、CCDラインセンサ201からライン毎に入力されるR、G、B画像信号を各色の階調数の変化に応じたデジタルデータに変換し、変換後の画像信号を変化点検出回路203に出力する。変化点検出回路203は、A/D変換器202から入力される画像信号から原稿内の、明度及び彩度の各変化点の座標を検出し、その座標を変化点記憶メモリ204に記憶する。
【0031】
画像マスク回路205は、変化点検出回路203から入力される画像信号に対してマスク処理を行い、その画像信号を画像処理回路206へ出力する。出力画像処理回路206は、画像マスク回路205から入力される画像信号に対して、シェーディング補正処理、ガンマ補正処理の順に画像処理を行い、画像処理後の画像信号を画像出力部207に出力する。
【0032】
画像出力部207は、画像処理回路206から入力される画像信号を1ページ分格納するプリンタメモリと、プリンタメモリに格納された画像信号を印刷する画像形成部(図示せず)の動作を制御するプリンタ制御部等から構成される。制御操作部208は、図1の操作パネル102から入力される画像形成に関わる各種指示に応じて指示信号を制御回路部209に出力するとともに、制御回路部209から入力される指示内容を表示信号として操作パネル102に出力して指示内容を表示させる。
【0033】
制御回路部209は、CPU(Central Processing Unit)210と、RAM(Random Access Memory)211と、ROM(Read Only Memory)212と、から構成される。CPU210は、ROM212に記憶された画像形成制御プログラムに基づいて上記各部の画像形成に関わる動作を制御する。また、CPU210は、ROM212に記憶されたパンチ穴検出処理プログラムにより、原稿上のパンチ穴座標を算出するとともに、画像マスク回路205にパンチ穴マスクパターンを設定することにより、原稿上のパンチ穴を消去した画像信号を作成する。このパンチ穴の消去処理は、検出したパンチ穴を含む所定の範囲内で行うことで、パンチ穴周辺の影部を含めてより確実に消去処理を行うことができる。
【0034】
RAM211は、CPU210が上記各処理を実行する際に上記各処理プログラムを展開するとともに、処理する各種パラメータ等を一時的に記憶するためのワークメモリとして利用される。ROM212は、上記、画像形成制御プログラム、パンチ穴検出処理プログラムを記憶する。
【0035】
ここで、パンチ穴のある原稿の、本発明実施前の出力画像と、本発明による効果によりパンチ穴の影響が出力画像から取り除かれた実例を、図3を参照して説明する。図3の(a)は、パンチ穴がある原稿が、プラテンカバー104を開いた状態で、プラテンガラス105に載置された状態を表している。
【0036】
本発明の実施を行わない既存の処理で、前記パンチ穴のある原稿を読み取り、画像形成を行うと、図3(b)に示したような、パンチ穴の部分が黒くなった出力画像が得られる。図3の(c)は、本発明の実施を行い、原稿のパンチ穴がマスク処理され、出力画像から取り除かれた例である。
【0037】
図3の例では、原稿の片側に2つのパンチ穴がある場合を実例として取り上げたが、本発明には、パンチ穴の個数について制限はない、また図3の実例の反対側原稿端にパンチ穴がある場合、また原稿の左端、右端ともにパンチ穴がある場合でも、パンチ穴をマスクした出力画像を得ることが可能である。
【0038】
ここで、パンチ穴のある原稿から得られる画像信号レベルと、それをもとに検出される座標情報について図4から図6を参照して説明する。図4の(a)は、パンチ穴がある原稿が、プラテンカバー104を開いた状態で、プラテンガラス105に載置された状態を表している。
【0039】
図4の(a)のパンチ穴周辺を拡大した図が、図4の(b)である。パンチ穴を含んだ原稿は、CCDラインセンサ201と走査機構により副走査方向に走査される。この時の副走査方向のライン数を図4(b)にY line、Y1 line、Y2 line、Y3 line、Y4 lineとして示す。また、各副走査ラインにおける画像信号レベルを図5(a)、(b)、(c)に示す。図5(a)、(b)、(c)から明らかなように、プラテンカバー104を開いた状態で走査された画像信号レベルは、原稿外、または、パンチ穴の部分で出力レベルが低下する。原稿内の画像信号レベルは、出力レベルが上がる。
【0040】
変化点検出回路203は、画像信号レベルの差を検出して、一定の画像信号レベルの差を検出すると、その座標情報を出力する。変化点記憶メモリ204は、変化点検出回路203から出力された変化点の座標情報を記憶する。変化点記憶メモリ204に記憶される座標情報の様子を示したものが、図6である。
【0041】
ここで、パンチ穴検出範囲と、パンチ穴認識範囲について、図7を参照して説明する。パンチ穴として認識するのは、原稿右端、または原稿左端から一定範囲内にあるものである。この一定範囲は、図7のA(パンチ穴検出範囲)で示される範囲であり、図7のAの範囲は数値で表され、その数値はROM212に記憶される。
【0042】
また、パンチ穴として認識するのは、一定の範囲に収まるものである。この範囲は、図7のa(パンチ穴認識範囲 主走査)と、b(パンチ穴認識範囲 副走査)であり、図7のa、bの範囲は数値で表され、その数値はROM212に記憶される。
【0043】
CPU210がパンチ穴検出プログラムを実行する際に、図7のA、a、bを表す数値は、ROM212から読み出され、パンチ穴検出処理のために使用される。
【0044】
以下、図8から図10を参照し、説明を行う。ユーザーは、原稿画像読取処理を開始する際に、操作パネル102に設けられたコピースタートキーを操作する。制御操作部208は、操作パネル102からコピースタート指示が入力されると、その指示信号を制御回路部209に出力する(S001)。
【0045】
制御回路部209のCPU210は、コピースタート指示信号が入力されるとROM212に記憶された原稿画像形成処理プログラムを読み出してRAM211に展開し、処理を開始する。CPU210は、開閉検出センサ106から入力される検出信号に基づいてプラテンカバー104が開放状態か否かを判別する(S002)。CPU210は、プラテンカバー104が閉状態であると判別した場合は、プラテンカバー104を開けたまま実行する開放原稿読取モードではなく、プラテンカバー104を閉じてプラテンガラス105に原稿を置いて読み取る通常読取モードであると判断し、通常読取モードに移行する(S006)。
【0046】
また、CPU210は、プラテンカバー104が開状態であると判別した場合は、事前読取モードに移行する(S003)。事前読取モードでは、走査機構の動作を制御してプラテンガラス105の読取面を副走査方向に走査させて、読取面に置かれた原稿の画像をCCDラインセンサ201に読み取らせる。この時、CCDラインセンサ201は、原稿画像とともにパンチ穴も読み取り、パンチ穴を含む原稿画像信号をA/D変換器202に出力する。
【0047】
A/D変換器202は、入力された原稿画像信号を階調数の変化に応じたデジタルデータに変換し、変換後の画像信号を変化点検出回路203に出力する。変化点検出回路203は、画像信号の明度及び彩度の変化点を検出し、その座標を、変化点記憶メモリ204に記憶する。変化点記憶メモリ204に記憶される画像信号の変化点座標には、原稿端の左端座標と、右端座標とともに、パンチ穴の座標も含まれる。
【0048】
次に、CPU210は、パンチ穴検出処理プログラムを読み出して、RAM211に展開して、検出処理を開始する(S004)。この検出処理では、図9及び図10に示すように、パンチ穴を原稿の左端側、右端側の順に検出処理を実行する(S101)。まず、原稿端を確定するために原稿端部の座標を検索する(S102またはS103)。次に、前記処理で検出された原稿端部より、原稿内部にあり、図7に図示するパンチ穴近傍の原稿端からパンチ穴までを含む方形領域として設定された範囲A(パンチ穴位置情報によるパンチ穴検出範囲)にある座標を抽出し、座標群LまたはRとする(S104またはS105)。
【0049】
次に、前記座標群LまたはRの中から、近接座標が図7に図示する範囲a:パンチ穴認識範囲(主走査)、b:パンチ穴認識範囲(副走査)に収まる座標を抽出し、これを座標群L#p1、L#p2、…または、R#p1、R#p2、…とし(S106またはS107)、それぞれの座標群に含まれる座標数を計数し、計数結果をカウントaとする(S108、S109)とともに、各座標について、近接座標と1直線上にある、または、同一弧上にある座標を抽出し、この座標数を計数し、計数結果をカウントbとする(S112またはS113)。
【0050】
前記の計数結果を用い、カウントaとカウントbの比率があらかじめ決めれらた割合以上(本実施例の場合は70%以上)であれば、前記の座標群LまたはRからなる画像領域はパンチ穴であると判断し(S116またはS118)、カウントaとカウントbの比率があらかじめ決められた割合未満であれば、前記の座標群LまたはRからなる画像領域はパンチ穴でないと判断する(S117またはS119)。パンチ穴であると判断した座標群Lよりパンチ穴マスク情報を作成する(S120)。続けて、パンチ穴であると判断した座標群Rよりパンチ穴マスク情報を作成する(S121)。これらのパンチ穴マスク情報とは、前記の座標群Lの外接となる接線の情報である。
【0051】
次にCPU210は前記処理により作成したパンチ穴マスク情報を画像マスク回路205に設定する。図8に示すように、パンチ穴マスク情報を画像マスク回路205に設定することで本処理を終了する(S005)。
【0052】
次にROM212に記憶された原稿画像形成処理プログラムを読み出してRAM211に展開し、以下の処理を開始する(S006)。CPU210は、走査機構の動作を制御してプラテンガラス105の読取面を副走査方向に走査させて、読取面に置かれた原稿の画像をCCDラインセンサ201により読み取らせる。
【0053】
CCDラインセンサ201は、原稿画像とともにパンチ穴も読み取り、パンチ穴を含む原稿画像信号をA/D変換器202に出力する。A/D変換器202は、入力された原稿画像信号を階調数の変化に応じたデジタルデータに変換し、変換後の画像信号を変化点検出回路203に出力する。画像マスク回路205は、変化点検出回路203から入力された画像信号を、前記処理により設定されたパンチ穴マスク情報に基づいて、パンチ穴画像をマスクしてから画像信号出力する。
【0054】
前記画像マスク回路で行なわれる処理について、図11に示すタイミングチャートを参照して説明する。図11(a)は、パンチ穴を含む原稿画像データの具体例を示す図であり、同図(b)は、CPU210が算出したマスク情報の具体例を示す図である。画像マスク回路205は、設定されたマスク情報に基づいて、同図(a)の入力画像データのパンチ穴をマスク処理して、同図(c)に示す出力画像を出力する。
【0055】
画像マスク回路205から出力されたパンチ穴をマスクした画像信号は、画像処理回路206に入力され、画像処理回路206でシェーディング補正処理、ガンマ補正処理の順に画像処理を行い、画像処理後の画像信号を画像出力部207に出力する。画像出力部207は画像処理回路206からの画像信号をプリンタメモリに蓄積し、プリンタ制御によりプリンタメモリに蓄積した画像信号に基づいて画像形成部(図示せず)の動作を制御して記録紙に画像を印刷する。
【0056】
以上の処理の結果、プラテンガラス105に外光が入射する開放原稿読み取りモードにおいて、パンチ穴とともに原稿画像を読み取った場合でも、パンチ穴を取り除いた実際の原稿画像を読み取ることが可能になる。すなわち、図11の(a)のパンチ穴を含んだ原稿画像から、パンチ穴をマスク処理して、同図(c)に示す画像データを出力することが出来る。
【0057】
以上のように、本実施の形態の画像形成装置では、プラテンカバーを開放してパンチ穴のあるブック原稿等を読み取る開放原稿読み取りモードを利用することにより、画像信号からパンチ穴の座標情報を検出して記憶し、CPUが実行するプログラムによりこれを解析することにより、パンチ穴のマスク信号を生成するようにした。
【0058】
したがって、本実施の形態の画像形成装置では、プラテンカバーを開放して原稿画像を読み取る原稿読み取り時に、パンチ穴の座標を検出して、パンチ穴を特定するため、従来のようなセンサの追加、機構の追加を必要とせず、処理プログラムを追加するだけで実現できるため、低コストで画像形成装置の機能と信頼性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、新たなセンサの追加、メカの追加を必要とすることなく、パンチ穴の影響を排除して確実に原稿画像を読み取ることができ、ファクシミリ及びプリンタ等の画像形成装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の外観斜視図であり、(a)は装置全体の外観斜視図、(b)は装置上部の外観斜視図
【図2】上記実施の形態に係る画像形成装置の制御系の構成を示すブロック図
【図3】上記実施の形態に係るパンチ穴原稿画像の具体例を示す図
【図4】上記実施の形態に係るパンチ穴座標の具体例を示す図
【図5】各副走査ラインにおける画像信号レベルを示す図
【図6】変化点記憶メモリ204に記憶される座標情報の様子を示す図
【図7】上記実施の形態に係るパンチ穴検出範囲を示す図
【図8】上記実施の形態に係る全体制御のフロチャート
【図9】上記実施の形態に係るパンチ穴検出制御のフロチャート
【図10】上記実施の形態に係るパンチ穴検出制御のフロチャート
【図11】上記実施の形態に係るパンチ穴マスク制御の具体例を示す図
【符号の説明】
【0061】
100 画像形成装置
101 装置本体
102 操作パネル
103 画像読取部
104 プラテンカバー
105 プラテンガラス
106 開閉検知センサ
107 原稿サイズ検出センサ
201 CCDラインセンサ
202 A/D変換器
203 変化点検出回路
204 変化点記憶メモリ
205 画像マスク回路
206 画像処理回路
207 画像出力部
208 制御操作部
209 制御回路部
210 CPU
211 RAM
212 ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を載置する原稿載置部と、
この原稿載置部を覆う開閉可能なカバーと、
前記原稿載置部に載置された原稿の画像を読み取る画像読取部と
を具備し、
前記カバーを開いたままで前記原稿載置部に載置された原稿の画像を前記画像読取部により読み取り、この読取画像における明度及び彩度差に基づき原稿端を検出して記憶する原稿端検出記憶手段と、
前記カバーを開いたままで前記原稿載置部に載置された原稿の画像を前記画像読取部により読み取り、この読取画像において前記原稿端により画定される原稿領域内での明度及び彩度差に基づきパンチ穴を検出し、当該パンチ穴を消去処理する制御手段と
を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記原稿領域内に形成され得るパンチ穴の位置情報を予め記憶するパンチ穴位置記憶手段をさらに備え、前記制御手段は、前記パンチ穴の位置情報に適合する所定の領域内から前記パンチ穴を検出することを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記パンチ穴位置情報は、前記原稿端から所定の範囲に広がる領域の情報であることを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記パンチ穴消去処理は、検出したパンチ穴を含む所定の範囲内で行うことを特徴とする請求項2乃至請求項3のいずれかに記載の画像読取装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の画像読取装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−228032(P2007−228032A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−43856(P2006−43856)
【出願日】平成18年2月21日(2006.2.21)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】