説明

異方導電性構造体

【課題】 機械的な手段を用いることなく、接続対象物に容易に接続することが可能な異方導電性構造体を提供する。
【解決手段】 第一の表面及び第二の表面を有する誘電性マトリックスと、前記第一の表面及び前記第二の表面のうちの少なくとも一方又は両方に配置された熱硬化性接着剤層と、前記マトリックスの前記第一の表面から前記マトリックスの前記第二の表面まで少なくとも延在している複数の通路と、前記通路内の導電性部材とを含み、前記誘電性マトリックスは熱硬化性接着剤層の熱硬化に必要な温度において熱流動を起こさない、異方導電性構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は異方導電性構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な電子部品、たとえば、集積回路チップまたはデバイス、プリント配線基板の端子パッド、液晶表示装置などは、外部の回路への電気接続部を有する。特に、チップの外部回路への接続の場合には、このような電気接続部は、非常に高密度に存在し、通常、隣接する各電気接続部の間隔は0.1mm以下である。これらの高密度の電気接続部は、互いに隣接する接続部において短絡を生じないように電気絶縁性を有しなければならない。したがって、ある方向にのみ電気伝導性を有し、他の方向に絶縁性を有する異方導電性構造体をかかる接続部位に用いることが一般的に行なわれている。
【0003】
異方導電性構造体については種々の文献がある。たとえば、特許文献1(特開平9−330774号公報)は、積み重ねられた2つの接続対象物の間に介在し、これら2つの接続対象物が所定方向にそって互いに近づく方へ押圧されたときに、これら2つの接続対象物を互いに接続するスタッキング接続用コネクタであって、前記2つの接続対象物を接続するコンタクトと、前記コンタクトを保持するインシュレータとを含むスタッキング接続用コネクタを開示している。コネクタはボルト及びナットなどの機械的な手段を用いて、2つの接続対象物に押圧され、固定されることにより、接続されている。しかしながら、このような機械的手段は嵩張るので、電子部品の小型化および微細化を妨げることとなる。
【0004】
一方、特許文献2(特開昭62−117207号公報)は、多数の電気伝導性の部材がポリマー層を貫通しており、かつ、前記各部材が互いに電気的に絶縁されるように均一の間隔をもって配置されており、前記各部材が前記ポリマー層の厚さをとおして伸びている電気導電性材料を有し、それにより、電流を前記ポリマー層の厚さをとおして前記部材により伝導することができる異方導電性ポリマー母材を開示している。
【0005】
また、特許文献3(特表2000−511339号公報)は第一の表面及び第二の表面を有する誘電性母材と、前記母材の前記第一の表面から前記母材の前記第二の表面まで延在する少なくとも1つの通路と、前記通路内の導電性部材とを含み、前記導電性部材が前記通路の長さの少なくとも5%、前記通路の幅の少なくとも10%の最大寸法を有する少なくとも1つの導電性要素を含む、異方導電性構造体を開示している。
【0006】
特許文献2及び3には、ポリマー母材または誘電性母材として、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、熱硬化性材料が使用でき、また、接続部への接着が必要な場合には母材として熱間粘着性感圧ホットメルトなどを用いることができることも開示している。しかし、これらの材料は接続時に軟化して流動状態を経るので、各導電性通路の間の絶縁性を維持することが必ずしも容易でないこともある。
【特許文献1】特開平9−330774号公報
【特許文献2】特開昭62−117207号公報
【特許文献3】特表2000−511339号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、機械的な手段を用いることなく、接続対象物に容易に接続することが可能な異方導電性構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、1つの態様によると、第一の表面及び第二の表面を有する誘電性マトリックスと、前記第一の表面及び前記第二の表面のうちの少なくとも一方又は両方に配置された熱硬化性接着剤層と、前記マトリックスの前記第一の表面から前記マトリックスの前記第二の表面まで少なくとも延在している複数の通路と、前記通路内の導電性部材とを含み、前記誘電性マトリックスは熱硬化性接着剤層の熱硬化に必要な温度において熱流動を起こさない、異方導電性構造体を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の異方導電性構造体では、その表面に接着剤層を設けているので、リベットやボルト/ナット組み合わせ物などの機械的な手段を用いることなく、熱圧着により、高密度の接続部を有する接続対象物を接続することができる。
また、本発明の異方導電性構造体は、誘導性マトリックスとは別個の熱硬化性接着剤層を設けているので、熱硬化のための加熱時にマトリックスが流動して短絡を生じる懸念がなく、容易に接続を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下において、本発明を好適な態様に基づいて説明するが、本発明はこれらの態様に限定されることはない。
異方導電性構造体は、第一の表面及び第二の表面を有する誘電性マトリックスと、第一の表面及び第二の表面のうちの少なくとも一方又は両方に配置された熱硬化性接着剤層と、マトリックスの第一の表面から第二の表面まで少なくとも延在している複数の通路と、この通路内の導電性部材とを含み、誘電性マトリックスは熱硬化性接着剤層の熱硬化に必要な温度において熱流動を起こさないものである。
【0011】
図1及び2は、それぞれ、誘電性マトリックスの第一の表面から第二の表面まで延在している複数の通路内に導電性部材を含む構造体の1態様の斜視図及び断面図を示す。図示されるように、誘電性マトリックス1において、その第一の表面S1から第二の表面S2にわたって延在している複数の通路2内に導電性部材3が含まれている。誘電性マトリックス1の絶縁性によって、隣接する通路2間の絶縁性を確保しながら、通路2内の導電性部材3によって、第一の表面S1から第二の表面S2にわたって複数の電導路を確保している。
【0012】
誘電性マトリックスとして、熱硬化性接着剤層の熱硬化において遭遇する温度(たとえば、120℃以上の温度)で流動性を示さず、そして電気絶縁性のある材料が用いられる。誘電性マトリックスは、また、かかる温度で熱分解を生じないような耐熱性の高い材料であることも望まれる。誘電性マトリックスのための材料としては、たとえば、シリコーンゴム、フルオロシリコーンおよびフルオロエラストマーなどの耐熱性エラストマー、ポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂、または、エポキシ樹脂硬化物などの熱硬化性樹脂硬化物などが挙げられる。
【0013】
誘電性マトリックスは第一の表面から第二の表面まで延在する通路を有し、その通路内には導電性部材を有する。導電性部材は、銅、金、銀、ニッケル、タングステン、スズ、鉛、パラジウム、ビスマス、インジウム、およびこれらの合金などの金属であることができる。また、導電性部材は導電性材料からなる細線や粒子などであってよい。導電性部材が粒子である場合には、このような粒子は一般に結合剤で結合された状態で導電性部材を構成する。有用な結合剤には、例えば、エポキシ樹脂およびシアン酸エステルなどの熱硬化性樹脂、シリコーンゴム、フルオロシリコーンおよびフルオロエラストマーなどの高分子材料が挙げられる。
【0014】
導電性部材が充填された通路を有する誘電性マトリックスは種々の方法で製造できる。このような誘電性マトリックスは、1つの態様によると、以下のとおりに製造できる。
まず、複数の金属細線(たとえば、銅線)と、誘電性マトリックスを形成する液体前駆体(たとえば、液状シリコーン樹脂、液状エポキシ樹脂)を用意する。金属細線を平行に並べ、その間に液体前駆体をいれ、その前駆体液体を硬化させる。このようにして得られた、複数の金属細線を含む誘電性マトリックスを、金属細線に対して垂直の方向にスライスして、第一の表面から第二の表面に金属細線が延在した誘電性マトリックスを得ることができる。
【0015】
導電性部材が充填された通路を有する誘電性マトリックスは、別の態様として、以下のとおりに製造することができる。
まず、誘電性マトリックス材料からなるフィルムを形成する。このフィルムに対して、レーザ加工などの適切な加工手段を施すことで、複数の微細な貫通孔を形成する。次に、メッキ法などの適切な手段によって、貫通孔に導電性部材を充填することで、第一の表面から第二の表面に金属部材が延在した誘電性マトリックスを得ることができる。
【0016】
導電性部材が充填された通路を有する誘電性マトリックスは、通常のサイズであってよく、たとえば、0.2mm〜2mm程度の厚さのフィルムである。
【0017】
導電性部材の端部は誘電性マトリックスの第一の表面及び第二の表面と同一の位置にあってもよいが、端部が突出した状態になっていてもよい。図3は誘電性マトリックスの第一の表面から第二の表面まで延在している複数の通路内に導電性部材を含む構造体の別の態様の断面図を示す。図示されるように、誘電性マトリックス1の第一の表面S1及び/又は第二の表面S2よりも高い位置にまで、導電性部材3の端部が突出した状態であると、他の回路板や電子部品回路との接続部との接触が良好になり、接続不良の問題を生じにくくなる。このような構造体は、たとえば、導電性部材以外の領域にレーザ加工を施し、誘電性マトリックス1の表面を削除することで得られる。導電性部材3の端部の高さと誘電性マトリックス1の表面の高さとの差は、たとえば、5〜50μm程度で十分である。
【0018】
本発明の異方導電性構造体では、誘電性マトリックスの第一の表面及び第二の表面のうちの少なくとも一方又は両方に熱硬化性接着剤層が配置されている。熱硬化性接着剤層に用いる接着剤は、ある温度に加熱されたときに流動性を示し、かつ、さらに加熱したときに熱硬化を起こす熱流動性で熱硬化性の接着剤である。一般には、本発明では、60〜120℃の流動化温度を有しかつ120〜180℃の硬化温度を有する樹脂成分を含む接着剤組成物を用いることが好ましい。
なお、「流動化温度」はポリマー樹脂の粘度が10,000Pa・s以下になる温度であり、平行板型粘度計(プラストメータ)又は粘弾性測定機により測定でき、「硬化温度」は熱硬化性樹脂の硬化反応が60分で50%以上進行する温度であり、粘弾性測定機又は示差走査熱量計(DSC)により測定できる。
【0019】
このような熱流動性でかつ熱硬化性の性質を示す熱硬化性接着剤組成物に含まれる樹脂は熱可塑性成分と熱硬化性成分との両方を含む樹脂である。第一の態様において、熱流動性でかつ熱硬化性の樹脂は、フェノキシ樹脂などの熱可塑性樹脂と、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂との混合物であることができる。第二の態様において、熱流動性でかつ熱硬化性の樹脂は、熱可塑性成分で変性された熱硬化性樹脂であることもできる。第二の態様の例としては、ポリカプロラクトン変性エポキシ樹脂が挙げられる。第三の態様において、熱流動性でかつ熱硬化性の樹脂は、熱可塑性樹脂の基本構造にエポキシ基などの熱硬化性基を有するコポリマー樹脂であることができる。このようなコポリマー樹脂としては、例えば、エチレンとグリシジル(メタ)アクリレートとのコポリマーが挙げられる。
【0020】
熱硬化性接着剤層のために特に好適に使用できる接着剤組成物は、カプロラクトン変性エポキシ樹脂を含む熱硬化性接着剤組成物である。以下において、カプロラクトン変性エポキシ樹脂を含む熱硬化性接着剤組成物について述べる。
【0021】
このような熱硬化性接着剤組成物は、通常結晶相を有している。少なくとも1つの態様において、この結晶相は、カプロラクトン変性エポキシ樹脂を主成分として含んでいる。変性エポキシ樹脂は、熱硬化性接着剤組成物に適度な可とう性を付与して、熱硬化性接着剤の粘弾性的特性を改善することができるようになっている。その結果、熱硬化性接着剤が硬化前でも凝集力を備え、加熱により粘着力を発現するようになる。また、この変性エポキシ樹脂は、通常のエポキシ樹脂と同様、加温により三次元網目構造をもった硬化物になり、熱硬化性接着剤に凝集力を付与することができる。
【0022】
かかる変性エポキシ樹脂は、初期接着力の向上の観点から、通常は約100〜約9,000、好適には約200〜約5,000、より好適には約500〜約3,000のエポキシ当量を有している。このようなエポキシ当量を備えた適切な変性エポキシ樹脂の例は、例えば、ダイセル化学工業(株)からプラクセルTMGシリーズの商品名で市販されている。
【0023】
また、熱硬化性接着剤組成物は、カプロラクトン変性エポキシ樹脂に加えて、熱可塑性樹脂をさらに含むことができる。熱可塑性樹脂として、フェノキシ樹脂が特に好ましい。フェノキシ樹脂は、鎖状又は線状の構造をもった比較的高分子量の熱可塑性樹脂であって、エピクロルヒドリンとビスフェノールAから形成されたものである。このようなフェノキシ樹脂は、加工性に富んでおり、熱硬化性接着剤層をフィルムとして形成するのに有利である。このフェノキシ樹脂は、100重量部の変性エポキシ樹脂に対して、通常は10〜60重量部の範囲、好適には20〜50重量部の範囲、より好適には25〜40重量部の範囲で、熱硬化性接着剤組成物に含まれる。フェノキシ樹脂が上記変性エポキシ樹脂と効果的に相溶することができるようになるからである。かくして、熱硬化性接着剤組成物からの変性エポキシ樹脂のブリードも効果的に防止することができるようになる。また、フェノキシ樹脂は、前述した変性エポキシ樹脂の硬化物と互いに絡み合い、熱硬化性接着剤層の最終的な凝集力及び耐熱性等をさらに高めることができるようになる。
【0024】
熱硬化性接着剤組成物は、上述の変性エポキシ樹脂と組み合わせて、好ましくは、メラミン/イソシアヌル酸付加物(以下、「メラミン/イソシアヌル酸錯体」とも言う。)を含有する。有用なメラミン/イソシアヌル酸錯体は、例えば日産化学工業からMC-600の商品名で市販されており、熱硬化性接着剤組成物の強靭化、チキソ性の発現による熱硬化前における熱硬化性接着剤組成物のタックの低減、また、熱硬化性接着剤組成物の吸湿及び流動性の抑制に効果的である。熱硬化性接着剤組成物は、上記の効果を損なうことなく硬化後の脆性を防止するために、このメラミン/イソシアヌル酸錯体を、100重量部の変性エポキシ樹脂に対して、通常1〜200重量部の範囲、好適には2〜100重量部の範囲、より好適には3〜50重量部の範囲で含有していることができる。
【0025】
さらに、所望の場合には、熱硬化性接着剤組成物には、上述のフェノキシ樹脂と組み合せて又はそれとは独立に、第2のエポキシ樹脂がさらに含まれてもよい。このエポキシ樹脂は、本発明の範囲を逸脱しない限り特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フルオレンエポキシ樹脂、グリシジルアミン樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、フッ素化エポキシ樹脂などが使用可能である。このようなエポキシ樹脂も、変性エポキシ樹脂と同様にフェノキシ樹脂と相溶し易く、熱硬化性接着剤組成物からのブリードはほとんどない。特に、熱硬化性接着剤組成物が、100重量部の変性エポキシ樹脂に対して、好適には50〜200重量部、より好適には60〜140重量部の第2のエポキシ樹脂を含有していると、耐熱性向上の点で有利である。
【0026】
本発明の実施において、特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を好ましいエポキシ樹脂として使用することができる。このジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂は、液状であり、例えば、熱硬化性接着剤組成物の高温特性を改善することができる。例えば、このジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂を使用することによって、高温での硬化による耐薬品性やガラス転移温度を改善することが可能となる。また、硬化剤の適用範囲が広がるほか、硬化条件も比較的緩やかである。このようなジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂は、例えば、ダウ・ケミカル(ジャパン)社からD.E.R.TM332の商品名で市販されている。
【0027】
熱硬化性接着剤組成物には、硬化剤を必要に応じて添加し、上記熱硬化性樹脂たるエポキシ樹脂及び第2のエポキシ樹脂の硬化反応に供することもできる。この硬化剤は、所望とする効果を奏する限り、使用量及び種類が特に限定されるものではない。しかし、耐熱性の向上の観点からは、100重量部の上記エポキシ樹脂及び必要な第2のエポキシ樹脂に対し、通常は1〜50重量部の範囲、好適には2〜40重量部の範囲、より好適には5〜30重量部の範囲で硬化剤を含んでいる。また、硬化剤としては、以下に列挙するものに限定されるわけではないけれども、例えばアミン硬化剤、酸無水物、ジシアンジアミド、カチオン重合触媒、イミダゾール化合物、ヒドラジン化合物等が使用可能である。特に、ジシアンジアミドは、室温での熱的安定性を有する観点から有望な硬化剤として挙げることができる。また、ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂との関係では、脂環式ポリアミン、ポリアミド、アミドアミン又はその変性物を使用することが望ましい。
【0028】
熱硬化性接着剤組成物は、100重量部の上記接着剤組成物に対して、15〜100重量部の有機物粒子を加えることができる。有機物粒子の添加により、樹脂は塑性流動性を示す一方、有機物粒子が熱硬化性接着剤組成物の過度の流動性を抑制し、接続工程における加熱圧着時に、接着剤が流れ出してしまうことを防止する。
【0029】
熱硬化性接着剤層は、シリコーンなどで剥離処理したポリエステルなどの剥離ライナー上に熱硬化性接着剤溶液を塗布し、乾燥することで形成することができる。このような熱硬化性接着剤層をライナーから剥離し、そして誘電性マトリックスの第一の表面及び第二の表面に配置する。熱硬化性接着剤組成物の熱流動性温度(たとえば、60〜120℃)で熱圧着を行なう。なお、誘電性マトリックスがシリコーンゴム、フルオロシリコーンエラストマー又はフルオロエラストマーなどの表面付着性が低い材料である場合には、必要に応じて、誘電性マトリックスの表面に付着性向上化処理を行なってもよい。たとえば、シランカップリング剤やシリコーン含有エポキシ化合物などの含むプライマーを誘電性マトリックスの表面に塗布してよい。
【0030】
熱硬化性接着剤層は、制限するつもりはないが、一般に、10〜200μmの厚さである。接着剤層が薄すぎると、被接続体の十分な接続が行なわれず、接続信頼性が低くなることがあり、厚すぎると、熱圧着時に接着剤層のはみ出しが生じることがあるからである。
【0031】
上記のとおりの方法により、本発明の異方導電性構造体を得ることができる。図4は本発明の異方導電性構造体の1態様の断面図を示す。図において、異方導電性構造体10は、誘電性マトリックス1の第一の表面S1及び第二の表面S2の両方に熱硬化性接着剤層4を有している。しかし、S1又はS2の一方のみに形成されてもよい。また、図において、導電性部材3の端部は第一の表面S1及び第二の表面S2から突出しているが、必ずしも突出していなくてもよい。しかし、好ましくは、導電性部材3の端部は第一の表面S1及び第二の表面S2から突出しており、この突起によって接続部の良好な接触を確保しうる。一方、導電性部材3の端部は熱硬化性接着剤層4の内部に埋設されている。このような場合、熱硬化性接着剤層4は導電性部材3の保護膜として作用する。また、本発明の異方導電性構造体10をコネクタとして用いるときに、熱圧着時に、加熱による熱流動によって熱硬化性接着剤層4が押しのけられ、導電性部材3の端部が被接続体の接続部と確実に接触するが、十分な量の接着剤が存在するため、接続部を安定的に固定し、接続工程後の信頼性が確保される。
【0032】
本発明の異方導電性構造体は、複数の接続部を備えた電子部品どうし接続に好適なコネクタとして使用できる。たとえば、半導体装置や回路基板などの電子部品を本発明の異方導電性構造体を介して接触させ、次いで、熱硬化性接着剤層の熱硬化温度(たとえば、120℃以上)に加熱して圧着することで2つの電子部品の接続を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】誘電性マトリックスの第一の表面から第二の表面まで延在している複数の通路内に導電性部材を含む構造体の1態様の斜視図を示す。
【図2】図1の構造体の断面図を示す。
【図3】誘電性マトリックスの第一の表面から第二の表面まで延在している複数の通路内に導電性部材を含む構造体の別の態様の断面図を示す。
【図4】本発明の異方導電性構造体の1態様の断面図を示す。
【符号の説明】
【0034】
1 誘電性マトリックス
2 通路
3 導電性部材
4 熱硬化性接着剤層
10 異方導電性構造体
S1 第一の表面
S2 第二の表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の表面及び第二の表面を有する誘電性マトリックスと、前記第一の表面及び前記第二の表面のうちの少なくとも一方又は両方に配置された熱硬化性接着剤層と、前記マトリックスの前記第一の表面から前記マトリックスの前記第二の表面まで少なくとも延在している複数の通路と、前記通路内の導電性部材とを含み、前記誘電性マトリックスは熱硬化性接着剤層の熱硬化に必要な温度において熱流動を起こさない、異方導電性構造体。
【請求項2】
前記導電性部材の端部は前記第一の表面及び/又は第二の表面から突出している、請求項1記載の異方導電性構造体。
【請求項3】
前記導電性部材の端部の高さと前記第一の表面及び/又は第二の表面の高さの差は5〜50μmで、前記端部が突出している、請求項2記載の異方導電性構造体。
【請求項4】
前記導電性部材の端部が前記熱硬化性接着剤層の内部に埋設されている、請求項2または3記載の異方導電性構造体。
【請求項5】
前記熱硬化性接着剤層はカプロラクトン変性エポキシ樹脂を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の異方導電性構造体。
【請求項6】
前記誘電性マトリックスはシリコーンゴム、フルオロシリコーン、フルオロエラストマー、ポリイミド樹脂及び熱硬化性樹脂硬化物からなる群より選ばれる、請求項1〜5のいずれか1項記載の異方導電性構造体。
【請求項7】
前記導電性部材は銅、金、銀、ニッケル、タングステン、スズ、鉛、パラジウム、ビスマス、インジウムおよびこれらの合金からなる群より選らばれる金属である、請求項1〜6のいずれか1項記載の異方導電性構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−278014(P2006−278014A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91980(P2005−91980)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】