説明

発光器

【目的】本発明は、外部より供給される電力を照明光に変換する発光器に関し、時間を損なうことなく、所望の無線ゾーンの形成に併せて、照明を実現できる発光器を提供することを目的とする。
【構成】外部から供給される電力を照明光に変換する発光素子と、前記電力を前記発光素子に引き渡す第一導入線とを備えた発光器であって、外部にある無線装置による無線信号の送信または受信に供されるアンテナ素子と、前記アンテナ素子から前記無線装置のアンテナ端子にいたる給電路の全てまたは一部を形成する第二導入線とが組み込まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部より供給される電力を照明光に変換する発光器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信技術の発展により、例えば、以下のような多様な分野で無線装置が利用されており、あらゆる場所でアンテナの設置の必要性が高まっている。
【0003】
(1) アミューズメントとしての気軽に楽しめる地上デジタル放送
(2) インターネット等の利用を可能とする無線LAN
(3) 携帯電話をはじめとする移動通信サービス
【0004】
図2は、アンテナが設置されるシーリングの一例を示す図である。
図において、建造物内の通路もしくは地下街のシーリングに無線装置21−1から21−mが等間隔に設置され、これらの無線装置21−1から21−mにはそれぞれにアンテナ21A−1から21A−mが備えられる。また、上記通路またはシーリングには電球22−1から22−nが等間隔に設置され、通路もしくは地下街を移動する通行人23は端末24を携帯する。
【0005】
無線装置21−1から21−mは、図2に破線で示すように、アンテナ21A−1から21A−mを介して通路またはシーリング上に無線ゾーンを形成する。端末24は、これらの無線ゾーンのいずれかを介して所望の無線サービスを受ける。また、電球22−1から22−nは、外部から供給される電力を照明光へ変換する。
【0006】
なお、本発明に関連する先行技術としては、後述する特許文献1の請求項4、7に開示されるように、「電球を電力源に接続するソケット部に電力線通信用の中継器であるPLCアダプタを一体装着し、当該ソケット部に取り付けられた照明光源との一体部位で電力と信号を取り分け、前記PLCアダプタは、無線送信機能を有する無線ルータと組み合わせて、照明光源の位置から各種通信用端末機器に向けて受発信可能とした」ことによって、「通信機能を有する」点に特徴がある照明器具があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−141766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した従来例では、既述の無線ゾーンの形成のためには電球22−1から22−nとは別にアンテナ21A−1から21A−mが設置されなければならず、これらのアンテナ21A−1から21A−mが歩行者の視界に入るため、景観が悪化する場合が多かった。
本発明は、美観を損なうことなく、照明に併せて、所望の無線ゾーンの形成を実現できる発光器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明では、外部から供給される電力を照明光に変換する発光素子と、
前記電力を前記発光素子に引き渡す第一導入線とを備えた発光器であって、アンテナ素子は、外部にある無線装置による無線信号の送信または受信に供される。第二導入線は、前記アンテナ素子から前記無線装置のアンテナ端子にいたる給電路の全てまたは一部を形成する。
すなわち、本発明に係る発光器には、発光素子に併せて、無線信号の送信または受信に供されるアンテナ素子が組み込まれ、しかも、これらの発光素子に対する電力の供給路とアンテナ素子の給電路とがそれぞれ別体の第一導入線および第二導入線として形成される。
【0010】
請求項2に記載の発明では、外部から供給される電力を照明光に変換する発光素子と、 前記電力を前記発光素子に引き渡す第一導入線とを備えた発光器であって、前記第一導入線は、外部にある無線装置のアンテナ端子との接続に供される給電路の全てまたは一部を形成する。前記発光素子は、前記無線装置によって送信または受信される無線信号のアンテナとして機能する。
すなわち、本発明に係る発光器には、発光素子が備えられ、かつ無線信号の送信または受信に供されるアンテナ素子がその発光素子を兼ねる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、外部から供給される電力を照明光に変換する発光素子と、
前記電力を前記発光素子に引き渡す第一導入線を備えた発光器であって、前記発光素子の一部は、外部にある無線装置によって送信または受信される無線信号のアンテナ素子として形成される。第二の導入線は、前記アンテナ素子の一部から前記無線装置のアンテナ端子にいたる給電路の全てまたは一部を形成する。
すなわち、本発明に係る発光器には、無線信号の送信または受信に供されるアンテナ素子が、発光素子の一部を兼ねる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発光器において、前記第一の導入線の一部は、前記第二の導入線を兼ねる。
すなわち、アンテナ素子に対する給電路の全てまたは一部は、発光素子に対する電力の供給路を兼ねる。
【0013】
請求項5に記載の発明では、外部から供給される電力を照明光に変換する発光素子と、
前記電力を前記発光素子に引き渡す第一導入線を備えた発光器であって、外部にある無線装置による無線信号の送信または受信に供されるアンテナ素子から前記無線装置のアンテナ端子に至る給電路の全てまたは一部を形成する第二の導入線が組み込まれる。前記アンテナ素子は、前記第一の導入線の全てまたは一部として形成される。
すなわち、本発明に係る発光器には、発光素子が備えられ、かつ無線信号の送信または受信に供されるアンテナ素子は、その発光素子に対する電力の供給路を兼ねる。
【0014】
請求項6に記載の発明では、外部から供給される電力を照明光に変換する発光素子と、
前記電力を前記発光素子に引き渡す第一導入線を備えた発光器であって、外部にある無線装置による無線信号の送信または受信に供されるアンテナ素子から前記無線装置のアンテナ端子に至る給電路の全てまたは一部を形成する第二の導入線が組み込まれる。前記アンテナ素子は、前記第一の導入線の全てまたは一部と、前記発光素子の全てまたは一部との列として形成される。
すなわち、本発明に係る発光器には、発光素子が備えられ、かつ発光素子に対する電力の供給路の全てまたは一部と、このような発光素子の全てまたは一部との列は、無線信号の送信または受信に供されるアンテナ素子を兼ねる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発光素子の構成や配置、ならびにその発光素子に供給される電力による制約を大幅に伴うことなく、かつ発光素子の設置に併せてアンテナ素子の設置が別途行われることなく、所望の周波数、偏波、指向性等による無線ゾーンの形成が可能となる。
また、本発明では、各構成要素の発光素子の構成、寸法および配置が所望の周波数、偏波、指向性等による無線ゾーンの形成を妨げることがなく、あるいは妨げられる程度が許容される場合には、構成要素の数が少なく抑えられ、低廉化および小型化の可能性が高められる。
したがって、本発明が適用された無線系では、所望の空間や箇所において行われるべき照明や発光の形態が損なわれることなく、無線ゾーンの形成や増設が安価かつ簡便に実現され、かつアンテナの設置に必要なスペースの不足や景観の劣化の解消が容易に達成される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】アンテナが設置されるシーリングの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す図である。
図1において、図2に示すものと構成および機能が同じものについては、同じ符号を付与し、ここでは、その説明を省略する。
図1に示す本実施形態と図2に示す従来例との構成の相違点は、以下の点にある。
【0018】
(1) アンテナ21A−1から21A−nが備えられない。
(2) 電球22−1から22−nに代えて、構成が共通である電球11−1から11−nが備えられる。
(3) 電球11−1は、以下の要素から構成される。
【0019】
(3-1) フィラメント11F−1
(3-2) 商用電源の供給に供される第一および第二の端子(コネクタの構成要素であってもよい。)にそれぞれ一端が接続され、かつ他端が上記フィラメント11F−1の両端にそれぞれ接続された導入線11L−1a、11L−1b
(3-3) フィラメント11F−1とは別体の導体として形成され、かつ電球11−1の内部に支持されあるいは架設されたアンテナ素子11A−1
(3-4) 既述の無線装置21−1が有する2つのアンテナ端子に接続された第三および第四の端子(コネクタの構成要素であってもよい。)にそれぞれ一端が接続され、かつ他端が上記アンテナ素子11A−1の両端にそれぞれ接続されることによって、そのアンテナ素子11A−1の給電路を構成する導入線11AL−1a、11AL−1b
なお、電球11−1の内部におけるこれらの導入線11AL−1a、11AL−1bについては、既述のフィラメント11F−1および導入線11L−1a、11L−1bの形状、構造および配置に妨げられることなくアンテナ素子11A−1の給電路として機能するならば、以下に列記する何れの給電線として構成されてもよい。
(1) 例えば、リボンフィーダ、めがねフィーダ、はしごフィーダのように、アンテナ素子11A−1の平衡給電を実現する平行線路(アンテナ素子11A−1が接地型アンテナとして機能するべき場合には、無線装置21−1のアンテナ端子にバラン等を介して接続されてもよい。)
(2) 同軸ケーブルのように、無線装置21−1によるアンテナ素子11A−1の不平衡給電を実現し、そのアンテナ素子11A−1以外による無用な電磁波の放射が所望の精度で抑圧可能な不平衡形の給電線(導入線11AL−1a、11AL−1bの一方および他方がそれぞれ内部導体および外部導体に該当することによって構成されなくてもよく、例えば、これらの11AL−1a、11AL−1bが「無線装置21−1を介して接地された個別の外導体」の中空部に接触することなく配置された二芯同軸ケーブルとして構成されてもよい。)
また、導入線11AL−1a、11AL−1bが上記同軸ケーブルとして構成される場合には、フィラメント11F−1は、その同軸ケーブルが漏洩同軸として構成されることによってなる複数のアンテナ素子で代替されてもよい。
電球11−2から11−nの構成については、電球11−1の構成と同じであるので、以下では、対応する構成要素の符号に付加される添え番号がそれぞれ「2」から「n」であるとの仮定で、ここでは、図示および詳細な説明を省略する。
【0020】
以下、図1を参照して本実施形態の動作を説明する。
なお、以下では、電球11−1から11−nに共通の事項については、既述の第一の添え番号として、「1」から「n」の何れにも当てはまることを意味する記号「c」を用いて記載する。
電球11−cでは、フィラメント11F−cは、既述の導入線11L−ca、11L−cbを介して商用電源が供給されることにより、従来例と同様に照明光を発する。
また、アンテナ素子11A−cは、既述の導入線11AL−ca、11AL−cbを介して無線装置のアンテナ端子との間で、送信波の供給と受信波の引き渡しとの双方もしくは何れか一方が行われる。
電球11−cの内部では、このようなアンテナ素子11A−cは、フィラメント11F−cとは別体に構成されて支持(架設)され、かつ多様な所望の形状、配置、寸法および特性の導体として形成可能であると共に、導入線11L−ca、11L−cbとは異なる導入線11AL−ca、11AL−cbを介して給電される。
すなわち、アンテナ素子11A−cは、電球11−cの内部の構成と、その電球11−cがシーリングに取り付けられる位置や姿勢とで定まる多様な偏波、指向性および利得による無線ゾーンの形成に供される。
したがって、本実施形態によれば、既述のシーリングの下にある通路や地下街には、電球11−cとは別にアンテナの取り付けが行われることなく、このようなアンテナがシーリング上に露出することによって美観が損なわれることなく、安価に多様な無線システムの導入が図られる。
【0021】
なお、本実施形態では、所望の特性および形態で無線ゾーンの形成が実現されるならば、電球11−cは、以下の何れの態様で構成されてもよい。
(1) アンテナ素子11A−cが導入線11L−1a、11L−1bの双方もしくは何れか一方の全体または一部として構成され、導入線11AL−ca、11AL−cbによってこのようなアンテナ素子11A−cの給電路が形成される。
(2) アンテナ素子11A−cがフィラメント11F−cの全体または一部の共用により構成され、導入線11AL−ca、11AL−cbによってこのようなアンテナ素子11A−cの給電路が形成される。
(3) 導入線11L−1a、11L−1bの双方もしくは何れか一方の全体または一部が上記給電路に該当する導入線11AL−ca、11AL−cbの双方または何れか一方を兼ねる。
(4) アンテナ素子11A−cが導入線11L−1a、11L−1bの双方もしくは何れか一方の全体または一部と、フィラメント11F−cの全体または一部との列として構成され、かつ導入線11AL−ca、11AL−cbによってこのようなアンテナ素子11A−cの給電路が形成される。
【0022】
さらに、本実施形態は、以下の如何なる前提の下で構成されてもよい。
(1) フィラメント11F−cには、商用電源ではなく、例えば、直流電力、所定の電源装置によって供給される電力(高周波電力を含む。)である。
(2) 電球11−cに代えて、蛍光管その他の多様な光源装置の内部(内壁)や側部(外壁を含む。)にアンテナ素子11A−cや導入線11AL−ca、11AL−cbが設けられ、あるいは形成される。
(3) アンテナ素子11A−cが複数のアンテナ素子の組み合わせとして形成され、かつ所望のビームフォーミングやヌルフォーミングが実現可能に形成される。なお、このような場合には、導入線11AL−ca、11AL−cbは、必ずしも1対の導入線ではなく、多様な数および構成の導体(成膜技術の下で形成される場合を含む。)として構成される。
(4) 既述の無線ゾーンが所望の多様な無線周波数、多元接続方式、変復調方式により形成される。
【0023】
また、本実施形態では、導入線11AL−ca、11AL−cbへの無線信号の伝達は、専用線と電力線との何れを介して行われてもよい。
さらに、本実施形態では、供給される照明用の電力と無線信号との分離方法は問わない。
また、本発明の特徴は、電球11−cの内部に、空中線系(アンテナ素子11A−cと、そのアンテナ素子11A−cの給電路となる導入線11L−ca、11L−cbとからなる)が多様な構成で組み込まれることによって、所望の無線通信系や無線伝送系に適した無線伝送路や無線ゾーンの形成が実現される点にあり、「インターネット環境の構築のために、宅内に既存の電気配線(電力線)を共用するPLCアダプタを照明光源の電極間に単に一体装着する技術」とは、以下に列記する点で本質的に異なる。
(1) 上記インターネット環境に要求される特定の無線伝送方式やセキュリティを実現する機能は、必須の構成要件ではない。
(2) 特に、上記PLCアダプタの空中線系については、電球の中には配置されず、例えば、そのPLCアダプタに別途付加される無線送信機能、あるいは変調回路およびアンテナの組み合わせられなければ実現されない。
(3) 本発明は、「単に宅内のみに適用可能なPLCアダプタによって配線工事が簡略化されたり省略されたインターネット環境の確保」とは異なり、移動通信系その他の多様な無線通信系や無線伝送系のゾーン構成、周波数配置、チャネル構成に柔軟に適応可能である。
【符号の説明】
【0024】
11 電球
11A アンテナ素子
11F フィラメント
11AL,11L 導入線
21 無線装置
21A アンテナ
22 電球
23 歩行者
24 端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給される電力を照明光に変換する発光素子と、
前記電力を前記発光素子に引き渡す第一導入線とを備えた発光器であって、
外部にある無線装置による無線信号の送信または受信に供されるアンテナ素子と、
前記アンテナ素子から前記無線装置のアンテナ端子にいたる給電路の全てまたは一部を形成する第二導入線と
が組み込まれたことを特徴とする発光器。
【請求項2】
外部から供給される電力を照明光に変換する発光素子と、
前記電力を前記発光素子に引き渡す第一導入線とを備えた発光器であって、
前記第一導入線は、
外部にある無線装置のアンテナ端子との接続に供される給電路の全てまたは一部を形成し、
前記発光素子は、
前記無線装置によって送信または受信される無線信号のアンテナとして機能する
ことを特徴とする発光器。
【請求項3】
外部から供給される電力を照明光に変換する発光素子と、
前記電力を前記発光素子に引き渡す第一導入線を備えた発光器であって、
前記発光素子の一部は、
外部にある無線装置によって送信または受信される無線信号のアンテナ素子として形成され、
前記アンテナ素子の一部から前記無線装置のアンテナ端子にいたる給電路の全てまたは一部を形成する第二の導入線と
が組み込まれたことを特徴とする発光器。
【請求項4】
請求項3に記載の発光器において、
前記第一の導入線の一部は、
前記第二の導入線を兼ねる
ことを特徴とする発光器。
【請求項5】
外部から供給される電力を照明光に変換する発光素子と、
前記電力を前記発光素子に引き渡す第一導入線を備えた発光器であって、
外部にある無線装置による無線信号の送信または受信に供されるアンテナ素子から前記無線装置のアンテナ端子に至る給電路の全てまたは一部を形成する第二の導入線が組み込まれ、
前記アンテナ素子は、
前記第一の導入線の全てまたは一部として形成された
ことを特徴とする発光器。
【請求項6】
外部から供給される電力を照明光に変換する発光素子と、
前記電力を前記発光素子に引き渡す第一導入線を備えた発光器であって、
外部にある無線装置による無線信号の送信または受信に供されるアンテナ素子から前記無線装置のアンテナ端子に至る給電路の全てまたは一部を形成する第二の導入線が組み込まれ、
前記アンテナ素子は、前記第一の導入線の全てまたは一部と、前記発光素子の全てまたは一部との列として形成された
ことを特徴とする発光器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−25909(P2013−25909A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157370(P2011−157370)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】