説明

発光管、光源装置及びプロジェクタ

【課題】放電起点を位置付けることのできる発光管、光源装置及びプロジェクタを提供すること。
【解決手段】内部に一対の電極8Aが配置された発光部511を有し、当該電極8A間で放電発光する発光管51Aであって、一対の電極8Aのうち少なくともいずれか一方の電極8Aは、小径部8A1と、当該小径部8A1における他方の電極8Aに近接する側の端部に設けられ、かつ、小径部8A1より大きい径寸法を有する大径部8A2とを備え、大径部8A2は、当該大径部8A2より外側に突出した突出部8A3を有する。これによれば、大径部8A2より外側に突出した突出部8A3に強い電場を生じさせることができるので、当該突出部8A3を発光管51Aの点灯始動時の放電起点にすることができ、これにより、当該放電起点を突出部8A3に位置付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に配置された一対の電極間で放電発光する発光管、当該発光管を備える光源装置及びプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内部に一対の電極が配置され、かつ、水銀及び希ガス等の発光物質が封入される放電空間が形成された発光部と、当該発光部を挟んで互いに離間する方向に延出し、かつ、内部に各電極に接続される電極引出線が設けられた一対の封止部とを有する発光管を備えた放電ランプが知られている。このような放電ランプでは、電極に電圧を印加すると、当該電極の所定の箇所で放電が生じ、当該放電によって生じた熱が各電極の先端側(互いに近接する側)に移動して、各電極の先端の温度が所定の温度域まで上昇すると、各先端間でのアーク放電が開始され、電極間の発光物質が反応して光を射出する。
【0003】
このような電極として、軸部(芯棒)と、当該軸部に巻回されたコイルとを備えた構成が知られている。このような電極におけるコイルの段差部分では、電場が集中するため、放電が生じやすい。また、電極が高温になり過ぎた場合には、当該電極の消耗及び変形が顕著となるが、コイルによって熱容量が大きくなるため、電極が適正温度に保持される。更に、コイルを芯棒に巻回することにより、放電ランプのワット数に応じた電極の径寸法を調整しやすくすることができる。
【0004】
しかしながら、前述の段差部分が封止部に近接する側に位置する場合には、当該段差部分での放電によって生じたアークが、石英ガラス等により形成された発光管の内壁に衝突してしまう場合がある。このような場合、当該内壁が損傷して発光部が白濁したり、ハロゲンサイクルの不良に伴って電極構成物質であるタングステンが付着して黒化したりする等の不具合が生じ、放電ランプの寿命を短縮させてしまうという問題がある。特に、このような放電ランプでは、発光管の発光部内壁面は、電極間の中央を中心とした略球状に形成されていることが一般的であるため、このような発光部内壁と放電起点とが近接している場合には、上記のような不具合が顕著となる。
このような問題に対し、放電起点を電極の先端側に位置付けるように構成した放電ランプが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この特許文献1に記載の放電ランプでは、電極の先端側に、タングステンの線材をコイル状に巻回した巻回部と、当該巻回部の最後方側を熱処理して溶融させた湾曲部とが設けられており、当該湾曲部においては、コイルと軸部との段差が小さくなっている。このような構成により、放電起点が巻回部の間に存在する隙間となるので、発光管の内壁と電極との距離が短い箇所である電極の後端で放電が開始されることを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−79986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、放電ランプを長時間点灯させた場合には、電極の後端側の芯棒に、当該電極から遊離したタングステンの鋭利な結晶が形成されて、当該結晶が放電起点になってしまい、放電起点が特定されないという問題がある。
すなわち、発光管の内壁にアークが衝突すると、発光管の構成物質である酸化ケイ素が蒸発してケイ素と酸素とに分離し、この分離により、電極のタングステンが蒸発して、当該蒸発したタングステンのうち、ハロゲンサイクルから外れたハロゲン化タングステンが
対流によって軸部(芯棒)付近に運ばれて、タングステン原子が当該軸部に堆積すると考えられている。ここで、電極の径方向外側に向かって突出する段差部分は、前述のように、電極における放電起点になりやすいため、鋭利な形状に堆積及び結晶化すると、当該堆積部位が点灯始動時の放電起点になってしまう。このため、前述の特許文献1に記載の放電ランプのように、コイルの後端側に湾曲部を設け、コイルの部位にて放電起点の位置を特定しようとしても、当該放電ランプの長時間の点灯により当該放電起点の位置が定まらなくなるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、放電起点を所望の位置に位置付けることのできる発光管、光源装置及びプロジェクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した目的を達成するために、本発明の発光管は、内部に一対の電極が配置された発光部を有し、当該電極間で放電発光する発光管であって、前記一対の電極のうち少なくともいずれか一方の電極は、小径部と、当該小径部における他方の電極に近接する側の端部に設けられ、かつ、前記小径部より大きい直径寸法を有する大径部とを備え、前記大径部は、当該大径部より外側に突出した突出部を有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、電極の大径部は、当該大径部の直径より外側に突出した突出部を有している。これによれば、当該電極に電圧を印加した場合には、突出部に電場が集中することとなり、当該突出部が放電起点となる。これにより、発光管の長時間点灯により、電極が消耗して、電極構成物質が小径部に堆積及び結晶化した場合でも、放電起点を突出部に位置付けることができる。また、この突出部が大径部に設けられていることにより、当該突出部での放電に伴って生じた熱を当該大径部に伝導させることができるので、大径部の温度上昇を速やかに行うことができる。従って、突出部に放電起点を位置付けることができるほか、互いに近接する側での各電極間のアーク放電に速やかに移行することができ、ひいては、各電極及び発光管の寿命を延長することができる。
【0011】
本発明では、前記大径部は、前記小径部の軸方向に沿って巻回されたコイル部と、前記コイル部より前記他方の電極側に位置する本体部とを備えることが好ましい。
ここで、本体部が、小径部の径寸法より大きくなるように当該小径部と一体的に形成されている場合には、コイル部は、当該小径部における他方の電極から離間する側に位置していてもよく、また、当該小径部の先端から所定の間隔を隔てた位置から当該小径部に巻回されて形成されていてもよい。この場合、小径部の先端からコイル部に至るまでの範囲が本体部に相当し、当該本体部とコイル部とを合わせた領域が大径部に相当する。更に、本体部は、小径部と同じ径寸法を有していてもよく、当該本体部及びコイル部の少なくともいずれかの径寸法が、小径部の径寸法より大きければよい。
本発明によれば、大径部が本体部及びコイル部を備えることにより、本体部の寸法及びコイル部の巻き数等を設定すること等により、大径部の径寸法を簡易に調整することができるほか、熱容量を大きくすることができる。従って、本体部が加熱された場合でも、電極の消耗及び変形を一層抑制することができ、ひいては、電極の寿命を延ばすことができる。
【0012】
本発明では、前記突出部は、略円弧状を有し、かつ、前記大径部に取り付けられる円弧状部材であることが好ましい。
本発明によれば、大径部から外側に突出する突出部が円弧状部材であるので、当該突出部が突起により形成されている場合に比べ、大径部の外周における突出部の範囲を大きくすることができる。また、発光管に始動特性を向上させるトリガー線が設けられている場合には、大径部におけるトリガー線に対向する側の所定の位置が放電起点となりやすい。これに対し、本発明では、突出部を、円弧状部材を設けることで構成することにより、突出部分をトリガー線に対向させやすくすることができる。従って、確実に突出部に放電起点を位置付けることができる。
【0013】
本発明では、前記円弧状部材は、当該円弧状部材の径方向外側に向かって突出し、かつ、突出方向先端側に向かうに従って細くなる突起部を少なくとも1つ有することが好ましい。
ここで、先端が細い突起状の部位では、電場が一層集中するため、発光管の点灯始動時の放電起点となりやすい。このため、本発明では、円弧状部材が突起部を少なくとも1つ有することにより、当該突起部に放電起点を位置付けることができる。
【0014】
本発明では、前記円弧状部材は、前記大径部が挿通される開口を有していることが好ましい。
本発明によれば、円弧状部材が開口を有し、当該開口に大径部を挿通させることにより、当該大径部に円弧状部材を確実に位置付けすることができる。
【0015】
本発明では、前記円弧状部材は、前記開口に接続され、かつ、当該円弧状部材の軸方向に沿って形成された切欠を有することが好ましい。
本発明によれば、円弧状部材の切欠から開口に大径部を嵌め込むように、当該円弧状部材を大径部に取り付けることができる。すなわち、大径部の製造過程でなくとも、後付で大径部に円弧状部材を取り付けることができる。従って、大径部への円弧状部材の取り付けを容易に行うことができる。
また、このような切欠の端縁には、発光管の点灯始動時に当該端縁に電場が集中しやすいので、当該端縁に点灯始動時の放電起点を位置付けることができる。
【0016】
本発明では、前記円弧状部材は、前記大径部における略中央から前記他方の電極に近接する側の端部までの間に設けられていることが好ましい。
ここで、発光部が電極間の中央を中心とする略球状に形成され、かつ、大径部における他の電極から離間する側の位置に円弧状部材が設けられている場合には、当該円弧状部材と発光部の内壁との距離が短いため、円弧状部材での放電によるアークが発光部の内壁に衝突して、当該内壁を損傷させる可能性がある。また、当該位置に円弧状部材が設けられている場合には、当該円弧状部材での放電により生じた熱が、電極の先端に伝導しづらく、当該円弧状部材での放電期間が長くなり、放電によって生じたアークが発光部に衝突する確率がより高くなる。
これに対し、本発明では、大径部における略中央から他の電極に近接する側の端部までの間に円弧状部材が設けられていることにより、当該円弧状部材と発光部の内壁との距離を長くすることができる。従って、円弧状部材での放電により生じたアークが、発光部に衝突することを抑えることができる。
【0017】
本発明では、前記突出部は、前記大径部に設けられ、かつ、前記大径部から離間する方向に向かうに従って細くなる突起により構成されていることが好ましい。
ここで、前述のように、先端側が細くなる突起状の部位は、発光管の始動時の放電起点となりやすい。このため、突出部を大径部に離間する方向の先端に向かうに従って細くなる突起として構成することにより、当該突出部に放電起点を確実に位置付けることができる。
【0018】
本発明では、前記突出部は、前記本体部に設けられていることが好ましい。
本発明によれば、放電起点となる突出部が本体部に設けられていることにより、当該突出部における放電によって生じた熱による本体部の温度上昇を速やかに行うことができる。また、発光部が、電極間の中央を中心とする略球状に形成されている場合には、突出部と発光部の内壁との距離を長くすることができるので、当該突出部での放電により生じたアークが、発光部の内壁に衝突することを抑制することができる。従って、電極の本体部でのアーク放電に速やかに移行することができ、発光管の始動特性を向上することができるほか、発光部の白濁及び黒化を抑制することができる。
更に、このような突出部が別部材として構成され、当該部材を本体部に取り付けることで突出部を形成する場合には、当該部材をコイル部に取り付けるより本体部に取り付ける方が容易である。従って、電極の製造工程を簡略化することができる。
【0019】
或いは、本発明では、前記突出部は、前記コイル部に設けられていることが好ましい。
ここで、コイル部は、発光管を長時間点灯させた場合でも、本体部に比べて消耗及び変形が少ない。このため、本発明では、突出部をコイル部に設けることにより、突出部の消耗及び変形を抑制することができ、前述の突出部への放電起点の位置付けという効果を長期間に亘って奏することができる。
【0020】
本発明では、前記突出部は、前記他方の電極から離間する方向に突出していることが好ましい。
ここで、他方の電極に近接する方向に突出部が突出している場合には、大径部における先端が十分に加熱された状態でも、当該突出部における放電が継続してしまい、放電位置が本体部に移行せずに、発光管の発光中心が各電極間の中心に位置しなくなってしまう。
これに対し、本発明では、突出部が、他方の電極から離間する方向に向かって突出していることにより、発光管の点灯始動時にのみ突出部での放電を行わせ、当該放電によって生じた熱が電極の先端に伝わって、当該大径部の先端部分が十分に加熱された場合には、当該先端部分にて放電を行わせることができる。従って、発光管の発光中心を、電極間に位置付けることができる。
特に、プロジェクタ等の光学機器では、発光管の発光中心に基づいて、各光学部品を配置するので、本発明は有効である。
【0021】
本発明では、前記突出部は、前記大径部と同じ素材に始動補助物質を添加した材料により形成されていることが好ましい。
このような大径部の素材としては、タングステンを例示することができる。また、始動補助物質としては、電圧の印加によって電子を放出しやすい金属が好ましく、トリウムを例示することができる。
本発明によれば、突出部に始動補助物質が添加されていることにより、当該突出部での放電を促進させることができる。従って、一層確実に突出部を放電起点に規定することができる。
【0022】
本発明では、前記発光管の外表面に沿って配置され、かつ、電圧が印加されて当該発光管の始動を補助するトリガー線を備え、前記突出部は、前記トリガー線に向かって突出していることが好ましい。
ここで、前述のように、発光管の始動時に生じる放電は、大径部におけるトリガー線に対向する側の部位で生じる確率が高い。このため、本発明では、当該トリガー線に向かって突出部が突出していることにより、当該突出部に発光管の点灯始動時の放電起点を位置付けやすくすることができる。従って、一層確実に突出部に放電起点を位置付けることができる。
【0023】
本発明では、前記発光部における前記一対の電極のうちの一方の電極側を覆い、かつ、入射した光を他方の電極側に反射する反射部材を備え、前記一対の電極のうち、前記反射部材が設けられる側の電極のみ、前記突出部を備えることが好ましい。
ここで、発光管の消灯時には、発光部内に封入された水銀等の発光物質は、冷却されやすい側の電極に付着する。この際、発光部における一方の電極側を覆うように反射部材が設けられている場合には、当該反射部材により、発光部における反射部材が設けられた側は保温されることとなるため、反射部材が設けられた側の電極は冷却されにくく、反射部材が設けられていない側の電極は冷却されやすい。このため、当該冷却されやすい側の電極に発光物質が付着しやすくなり、突出部が発光物質により埋もれてしまう。このようにして突出部が埋もれてしまうと、発光管の点灯始動時に放電起点を位置付けるという効果が半減してしまう。これに対し、反射部材が設けられた側の電極には発光物質が付着しにくく、当該電極の突出部は露出するので、発光管の点灯始動時での突出部への放電起点の位置付けを効果的に行うことができる。従って、放電起点の位置付けを効果的に行うことができる電極側にのみ突出部を設けることにより、各電極に突出部を設ける場合に比べ、発光管の製造工程の簡略化及び製造コストの低減を図ることができる。
【0024】
本発明の光源装置は、前述の発光管と、当該発光管から射出された光を一方向に反射することで当該光を光束として射出する反射鏡とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、前述の発光管と同様の効果を奏することができる。また、発光管の長寿命化を図ることができるので、発光管を頻繁に交換する手間を省くことができる。
【0025】
本発明のプロジェクタは、前述の光源装置と、当該光源装置から射出された光束を画像情報に応じて変調する光変調装置と、変調された光束を投射する投射光学装置とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、前述の光源装置と同様の効果を奏することができる。また、発光管の長寿命化を図ることができるので、長時間点灯による発光管の発光輝度の急激な低下を抑制することができ、投射画像の輝度低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプロジェクタの構成を示す模式図。
【図2】前記実施形態における放電ランプ及び主反射鏡を示す縦断面図。
【図3】前記実施形態における電極を示す側面図。
【図4】前記実施形態における円弧状部材を示す正面図。
【図5】本発明の第2実施形態に係るプロジェクタの放電ランプが有する電極を示す側面図。
【図6】本発明の第3実施形態に係るプロジェクタの放電ランプが有する電極を示す側面図。
【図7】本発明の第4実施形態に係るプロジェクタの放電ランプが有する電極を示す側面図。
【図8】前記各実施形態の変形に係る円弧状部材を示す正面図。
【図9】前記各実施形態の変形に係る円弧状部材を示す正面図。
【図10】前記各実施形態の変形に係る円弧状部材を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔1.第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
〔プロジェクタ1の構成〕
図1は、本実施形態に係るプロジェクタ1の概略構成を示す模式図である。
プロジェクタ1は、内部に設けられた光源装置411から射出される光束を画像情報に応じて変調して画像光を形成し、当該画像光に係る画像をスクリーン(図示省略)等の投射面上に拡大投射するものである。このプロジェクタ1は、図1に示すように、外装筐体2と、投射レンズ3と、光学ユニット4等を備えている。
また、これらの他に、プロジェクタ1は、当該プロジェクタ1内部を冷却する冷却ファン等で構成される冷却ユニット91、プロジェクタ1内部の各構成部材に電力を供給する電源ユニット92、及び、プロジェクタ1全体を制御する制御ユニット93等を備え、これらは、外装筐体2内に配置されている。
このうち、電源ユニット92は、プロジェクタ1の外部から供給される商用交流電流を直流変換し、プロジェクタ1内部の各構成部材に応じた電圧に昇降圧した後に当該各構成部材に電力を供給する。
【0028】
〔外装筐体2及び投射レンズ3の構成〕
外装筐体2は、投射レンズ3及び光学ユニット4等を内部に収納配置する全体略直方体状に形成されている。この外装筐体2は、本実施形態では合成樹脂により形成したが、これに限らず、例えば金属等の他の材料にて形成してもよい。
投射レンズ3は、光学ユニット4にて形成された画像光を、スクリーン(図示省略)等の投射面上に結像させるとともに、当該画像光に係る画像を拡大投射する投射光学装置である。この投射レンズ3は、筒状の鏡筒内に複数のレンズが収納された組レンズとして構成されている。
【0029】
〔光学ユニット4の構成〕
光学ユニット4は、前述の制御ユニット93による制御の下、光源から射出された光束を、光学的に処理して画像情報に対応した画像光を形成するユニットである。この光学ユニット4は、図1に示すように、外装筐体2の背面に沿って延出するとともに、外装筐体2の側面に沿って延出する平面視略L字形状を有している。
この光学ユニット4は、照明光学装置41と、色分離光学装置42と、リレー光学装置43と、電気光学装置44と、これら光学部品41〜44を内部に収納配置するとともに、投射レンズ3を所定位置で支持固定する光学部品用筐体45とを備えている。
【0030】
照明光学装置41は、電気光学装置44を構成する後述する液晶パネル442の画像形成領域をほぼ均一に照明するものである。この照明光学装置41は、光源装置411と、第1レンズアレイ412と、第2レンズアレイ413と、偏光変換素子414と、重畳レンズ415とを備えて構成されている。
【0031】
光源装置411は、放射状の光線を射出する放電ランプ5と、当該放電ランプ5から射出された放射光を反射して、所定位置に収束させる主反射鏡6と、主反射鏡6にて反射されて収束される光束を照明光軸Aに対して平行化する平行化凹レンズ7と、これらを内部に収納するハウジング(図示省略)とを備えている。なお、放電ランプ5及び主反射鏡6の構成については、後に詳述する。
【0032】
第1レンズアレイ412は、照明光軸Aに略直交する面内に複数の小レンズが、マトリクス状に配列された構成を有している。これら小レンズは、照明光軸A方向から見て略矩形状の輪郭を有している。そして、これら各小レンズは、光源装置411から射出される光束を、複数の部分光束に分割する。
第2レンズアレイ413は、第1レンズアレイ412と同様の構成を有しており、第1レンズアレイ412の小レンズに対応する小レンズがマトリクス状に配列された構成を有している。この第2レンズアレイ413は、重畳レンズ415とともに、第1レンズアレイ412の各小レンズの像を、電気光学装置44の後述する液晶パネル442の画像形成領域に結像させる機能を有している。
【0033】
偏光変換素子414は、第2レンズアレイ413と重畳レンズ415との間に配置され、当該第2レンズアレイ413からの光を略1種類の直線偏光に変換するものである。
具体的に、偏光変換素子414によって略1種類の直線偏光に変換された各部分光は、重畳レンズ415によって最終的に後述する液晶パネル442の画像形成領域にほぼ重畳される。偏光光を変調するタイプの液晶パネルを用いたプロジェクタでは、1種類の偏光光しか利用できないため、ランダムな偏光光を発する光源装置411からの光の略半分を利用できない。このため、偏光変換素子414を用いることで、光源装置411からの射出光を略1種類の直線偏光に変換し、電気光学装置44での光の利用効率を高めている。
【0034】
色分離光学装置42は、2枚のダイクロイックミラー421,422と、反射ミラー423とを備え、ダイクロイックミラー421,422により照明光学装置41から射出された複数の部分光束を赤(R)、緑(G)、青(B)の3色の色光に分離する。
リレー光学装置43は、入射側レンズ431、リレーレンズ433及び反射ミラー432,434を備え、色分離光学装置42で分離された赤色光を赤色光用の液晶パネル442Rまで導く機能を有している。
【0035】
この際、色分離光学装置42のダイクロイックミラー421では、照明光学装置41から射出された光束の赤色光成分と緑色光成分とが透過するとともに、青色光成分が反射する。ダイクロイックミラー421によって反射した青色光は、反射ミラー423で反射し、フィールドレンズ441を通って青色光用の液晶パネル442Bに達する。このフィールドレンズ441は、第2レンズアレイ413から射出された各部分光束をその中心軸(主光線)に対して平行な光束に変換する。他の緑色光及び赤色光用の液晶パネル442G,442Rの光入射側に設けられたフィールドレンズ441も同様である。
【0036】
ダイクロイックミラー421を透過した赤色光と緑色光のうち、緑色光はダイクロイックミラー422によって反射され、フィールドレンズ441を通って緑色光用の液晶パネル442Gに達する。一方、赤色光はダイクロイックミラー422を透過してリレー光学装置43を通り、さらにフィールドレンズ441を通って赤色光用の液晶パネル442Rに達する。なお、赤色光にリレー光学装置43が用いられているのは、赤色光の光路の長さが他の色光の光路の長さよりも長いため、光の拡散等による光の利用効率の低下を防止するためである。すなわち、入射側レンズ431に入射した部分光束をそのまま、フィールドレンズ441に伝えるためである。なお、リレー光学装置43には、3つの色光のうち赤色光を通す構成としたが、これに限らず、例えば、青色光を通す構成としてもよい。
【0037】
電気光学装置44は、色分離光学装置42から射出される3つの色光を画像情報に応じてそれぞれ変調し、変調した各色光を合成して光学像(カラー画像)を形成する。
この電気光学装置44は、図1に示すように、前述のフィールドレンズ441と、光変調装置としての液晶パネル442(赤色光用の液晶パネルを442R、緑色光用の液晶パネルを442G、及び、青色光用の液晶パネルを442Bとする)と、これら各液晶パネル442の光束入射側にそれぞれ配置される3つの入射側偏光板443と、各液晶パネル442の光束射出側にそれぞれ配置される3つの視野角補償板444と、当該3つの視野角補償板444の光束射出側にそれぞれ配置される3つの射出側偏光板445と、色合成光学装置としてのクロスダイクロイックプリズム446とを備えて構成されている。
【0038】
入射側偏光板443には、偏光変換素子414で偏光方向が略一方向に揃えられた各色光が入射し、当該入射側偏光板443は、入射した光束のうち、偏光変換素子414で揃えられた光束の偏光方向と略同一方向の偏光光のみ透過させ、その他の光束を吸収する。このような入射側偏光板443は、例えば、サファイアガラスまたは水晶等の透光性基板上に偏光層が貼付された構成を有している。
光変調装置としての液晶パネル442は、詳しい図示を省略するが、一対の透明なガラス基板間に電気光学物質である液晶が密閉封入した構成を有している。そして、当該液晶パネル442では、前述の制御ユニットから入力する画像情報である駆動信号に応じて、液晶の配向状態が制御され、入射側偏光板443から射出された偏光光束の偏光方向が変調されることで、画像光が形成される。
【0039】
視野角補償板444は、液晶パネル442に光束が斜方入射した場合(パネル面の法線方向に対して傾斜して入射した場合)の当該液晶パネル442で生じる複屈折による常光と異常光との間に生じる位相差を補償する。
射出側偏光板445は、液晶パネル442から射出され視野角補償板444を介した光束のうち、入射側偏光板443における光束の透過軸と直交する偏光方向を有する光束のみ透過させ、その他の光束を吸収するものである。このような射出側偏光板445は、前述の入射側偏光板443と同様の構成とすることができる。
【0040】
クロスダイクロイックプリズム446は、射出側偏光板445から射出された色光毎に変調された変調光を合成して光学像(カラー画像)を形成する。このクロスダイクロイックプリズム446は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視正方形状をなし、直角プリズム同士を貼り合わせた界面には、2つの誘電体多層層が形成されている。これら誘電体多層層は、投射レンズ3と対向する側(G色光側)に配置された射出側偏光板445を介した色光を透過し、残り2つの射出側偏光板445(R色光側及びB色光側)を介した色光を反射する。このようにして、各入射側偏光板443、各液晶パネル442、各視野角補償板444、及び、各射出側偏光板445にて変調された各色光が合成されてカラー画像が形成される。
【0041】
〔放電ランプ5の構成〕
図2は、光源装置411の放電ランプ5及び主反射鏡6を示す縦断面図である。
放電ランプ5は、電圧印加によって発光する光源であり、図2に示すように、石英ガラスにより形成された発光管51Aと、当該発光管51Aに取り付けられる副反射鏡52及びトリガー線53とを備えている。なお、このような放電ランプ5としては、高輝度発光する種々の放電光源ランプを採用することができ、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ及び超高圧水銀ランプ等を採用することができる。
【0042】
〔発光管51Aの構成〕
発光管51Aは、当該発光管51Aの中央部分に形成され、かつ、略球状に膨出する発光部511と、発光部511を挟み、かつ、当該発光部511の両端から互いに離間する方向に延出する一対の封止部512,513(図2における左側の封止部を512、右側の封止部を513とする)とを備えている。
このうち、発光部511の内部には、一対の電極8A(封止部512側の電極を8AL、封止部513側の電極を8ARとする)が配置され、当該一対の電極8A間には、水銀、希ガス及び少量のハロゲンを含む発光物質が封入された放電空間Sが形成されている。
【0043】
一対の封止部512,513の内部には、発光部511内の電極8AL,8ARにそれぞれ電気的に接続されるモリブデン製の金属箔5121,5131が挿入され、当該一対の封止部512,513における発光部511とは反対側の端部は、ガラス材料等で封止されている。これら各金属箔5121,5131には、さらに電極引出線514,515がそれぞれ接続され、当該電極引出線514,515は、発光管51Aの外部まで延出している。そして、これら電極引出線514,515に対して、放電ランプ5の点灯を制御する点灯制御装置により電圧が印加されると、金属箔5121,5131を介して電極8AL,8AR間に電位差が生じて放電が発生し、アーク像Dが形成されて発光部511内部が発光する。
【0044】
〔主反射鏡6の構成〕
ここで、主反射鏡6について説明する。
主反射鏡6は、本発明の反射鏡に相当し、入射した光を反射して、照明光軸A上の第2焦点に収束させるガラス製の一体成形品である。この主反射鏡6は、放電ランプ5の一方の封止部512(光源装置411における光束射出方向の基端側に位置する封止部512)に接着剤Bにより固定されている。このような主反射鏡6には、封止部512が挿通される略円筒状の首状部61と、当該首状部61から拡がる凹曲面状の反射部62とが形成されている。
このうち、反射部62において発光部511に対向する側の回転曲線形状の面には、金属薄膜が蒸着された反射面621が形成されている。この反射面621は、可視光を反射し、かつ、赤外線及び紫外線を透過するコールドミラーとして形成されている。
【0045】
首状部61には、封止部512が挿通される平面視略円形状の開口611が形成されており、封止部512が挿通された状態で接着剤Bが当該開口611内に注入され、これにより、封止部512と主反射鏡6とが接着固定される。この際、放電ランプ5と主反射鏡6との位置は、当該放電ランプ5の発光部511におけるアーク像D(電極8Aの後述する本体部8A21間でのアーク放電によって生じるアーク像D)の中心位置Cが、当該主反射鏡6の反射面621の第1焦点近傍となるように設定されている。
なお、本実施形態では、主反射鏡6は、回転楕円面を有する楕円面リフレクタで構成されているが、回転放物面を有する放物面リフレクタで構成してもよい。この場合には、平行化凹レンズ7を省略した構成とする。さらに、主反射鏡6は、自由曲面リフレクタで構成してもよい。
【0046】
〔副反射鏡52の構成〕
副反射鏡52は、本発明の反射部材に相当し、発光管51Aの封止部513(主反射鏡6が装着される側とは反対側の封止部513)に装着されるガラス製の成形品であり、発光管51Aと同様の素材により形成されている。この副反射鏡52には、封止部513が挿通される開口5211を有する略円筒状の首状部521と、当該首状部521から拡がる反射部522とが形成されている。
【0047】
このうち、反射部522は、封止部513に副反射鏡52が取り付けられた際、発光部511における封止部513側(光源装置411の光束射出方向の先端側)を覆うように配置され、当該発光部511の外形に沿うように略椀状に形成されている。この反射部522における発光部511と対向する面には、反射面5221が形成されており、当該反射面5221は、可視光を反射し、かつ、赤外線及び紫外線を透過するコールドミラーとして形成されている。
【0048】
このような副反射鏡52を発光管51Aに取り付けることにより、発光部511から射出された光のうち、主反射鏡6側とは反対側に射出された光は、反射面5221により反射されて、主反射鏡6の反射面621に入射する。このため、当該光は、発光部511から反射面621に直接入射する光と同様に、当該反射面621にて反射され、第2焦点に集束する。これにより、発光部511から光源装置411の光束射出方向の先端側に直接射出され、かつ、当該光源装置411の光路後段に位置する第1レンズアレイ412に入射しない光の発生を抑えることができる。
【0049】
〔トリガー線53の構成〕
トリガー線53は、発光管51Aの点灯性を向上するための始動補助線であり、一端が封止部512にコイル状に巻回され、中央が発光部511、副反射鏡52及び封止部513に沿ってこれらの外側に配置され、他端が接続部516を介して電極引出線515に接続される。この接続部516には、主反射鏡6の反射部62における端縁近傍に形成された挿通孔622を介して、当該主反射鏡6の外部に延出するリード線517の一端が接続され、当該リード線517の他端は、電極引出線515及びトリガー線53に電圧を印加するための端子54に接続されている。
このようなトリガー線53を設け、当該トリガー線53に高圧パルス電圧を印加することにより、放電ランプ5の点灯性を向上することができる。
【0050】
〔電極8Aの構成〕
図3は、電極8ARを示す側面図である。
一対の電極8Aは、前述のように、封止部512側(発光部511において、副反射鏡52が設けられていない側)に配置される電極8ALと、封止部513側(発光部511において、副反射鏡52が設けられる側)に配置される電極8ARとから構成されている。
このうち、電極8ARは、図3に示すように、後端側(電極8ALから離間する側)が前述の金属箔5131に接続される小径部8A1と、当該小径部8A1の先端側(電極8ALに近接する側)に設けられた大径部8A2とを備えている。
このうち、小径部8A1は、タングステンにより形成された芯棒である。
【0051】
大径部8A2は、小径部8A1の先端側に、当該小径部8A1と一体的に形成された略球形状を有する本体部8A21と、当該本体部8A21の後端側に接続するように設けられたコイル部8A22とを備えて構成されている。すなわち、大径部8A2は、小径部8A1の軸方向に沿って巻回されたコイル部8A22と、当該コイル部8A22より電極8AL側に位置する本体部8A21とを備えている。
【0052】
本体部8A21の直径寸法は、コイル部8A22の直径寸法と略同じに設定されている。この本体部8A21における電極8ALに近接する側の面の略中央には、当該本体部8A21の外表面から膨出した膨出部8A211が形成されている。そして、定格の電力で、この膨出部8A211と、電極8ALの膨出部8A211との間で放電が行われるようになると、発光管51Aの点灯が定常状態となる。
【0053】
コイル部8A22は、内層及び外層を有する2重層のコイルとして形成されている。具体的に、コイル部8A22では、タングステンの線材を小径部8A1における先端側から後端側に向かって所定回数(本実施形態では6巻き)巻回することによって内層8A221が形成され、当該内層の後端側から先端側に向かって同じ回数巻回することによって外層8A222が形成されている。そして、当該線材の両端は、本体部8A21に接続されており、コイル部8A22に伝導された熱は、本体部8A21に伝導されるように構成されている。
このようなコイル部8A22における当該コイル部8A22の軸方向略中央から先端側までの間には、放電ランプ5の点灯始動時の放電起点となる円弧状部材8A3が、レーザ照射等の熱処理により一体的に取り付けられている。なお、円弧状部材8A3は、コイル部8A22に固定されていればよく、熱処理等が行われていなくてもよい。
【0054】
図4は、円弧状部材8A3を示す正面図である。すなわち、図4は、コイル部8A22に取り付けられる円弧状部材8A3を、当該コイル部8A22の軸方向に沿う方向から見た図である。
円弧状部材8A3は、本発明の突出部に相当し、図4に示すように、タングステンに始動補助物質(例えば、トリウム)を添加した材料により形成された略円弧状(具体的には略C字状)を有する部材である。この円弧状部材8A3の略中央には、コイル部8A22の内層8A221が挿通する正面視略円形状の開口8A31が形成されている。この開口8A31の直径寸法は、内層8A221の直径寸法と略同じに設定されている。
【0055】
また、円弧状部材8A3の一端側(図4における下方側)には、開口8A31に接続される切欠8A32が、円弧状部材8A3の軸方向に沿って形成されている。この切欠8A32の寸法Lは、小径部8A1の直径寸法より大きく、かつ、コイル部8A22の直径寸法より小さく設定されている。このため、円弧状部材8A3は、コイル部8A22に取り付けられた際には、当該コイル部8A22の外層8A222における1つの巻回部と、当該巻回部の次に内層8A221に巻き回される他の巻回部との間に挟まれて位置決めされる。
【0056】
更に、円弧状部材8A3の外周には、当該円弧状部材8A3の中央を中心とする径方向外側に向かって突出する突起部8A33が、それぞれ放射状に複数形成されている。これら突起部8A33は、先端に向かうに従って細くなるように形成されている。これら突起部8A33の先端部分は、大径部8A2における中心から最も離間した部位となり、当該先端部分は、大径部8A2より外側に突出している。
なお、本実施形態では、電極8ALは、小径部8A1及び大径部8A2を備えているが、当該電極8ALには、電極8ARとは異なり、円弧状部材8A3は設けられていない。
【0057】
〔放電ランプ5の点灯始動時の放電起点〕
ここで、放電ランプ5の点灯始動時の放電起点について説明する。
放電ランプ5の一対の電極8A(8AL,8AR)に、電極引出線514,515及び金属箔5121,5131を介して電圧を印加すると、当該電極8Aでは、放電が開始される。ここで、このような放電は、例えば、コイル部8A22における内層8A221及び外層8A222の後端部などの段差及び突出部分で生じやすく、特に電極8ARでは、円弧状部材8A3の突起部8A33で生じやすい。このような電極8ARでは、円弧状部材8A3を設けたことによる段差が最も大きく、当該段差部位にて電場が最も強く発生するので、当該円弧状部材8A3(特に突起部8A33)が放電起点となりやすい。このため、電極8ARにおいては、円弧状部材8A3の突起部8A33の先端部分に放電起点が位置付けられ、当該先端部分で発光管51Aの点灯始動時に放電が開始される。
【0058】
このような放電起点となる突起部8A33は、各突起部8A33のうち、前述のトリガー線53に対向する突起部8A33である。従って、円弧状部材8A3を、当該円弧状部材8A3に形成された複数の突起部8A33のうちのいずれかがトリガー線53に対向するように配置することにより、放電起点を確実に突起部8A33のいずれかに位置付けることができる。
このようにして突起部8A33の先端にて放電が開始されると、当該放電によって生じた熱は、円弧状部材8A3から当該円弧状部材8A3に当接するコイル部8A22の外層8A222に伝導される。そして、当該熱は、外層8A222を経て本体部8A21に伝導される。このような熱伝導により、本体部8A21が十分に加熱されると、当該本体部8A21の先端に形成された膨出部8A211と、他方の電極8ALの膨出部8A211との間でアーク放電が開始される。
【0059】
以上説明した本実施形態のプロジェクタ1によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)発光管51Aの電極8ARが有する小径部8A1及び大径部8A2のうち、大径部8A2には、突出部としての円弧状部材8A3が、当該大径部8A2の外側に突出するように取り付けられている。ここで、発光管51Aの点灯始動時には、電極8AL,8ARにおける突出部位に電場が集中して、当該突出部位にて放電が開始される。このため、電極8ARにおいては、大径部8A2に取り付けられた円弧状部材8A3の外周における所定の位置が放電起点となる。この際、電極8AL,8ARが消耗して、小径部8A1における封止部512,513に近接した位置にタングステンが堆積及び結晶化した場合でも、電極8ARにおいて発光管51Aの内壁への異常放電の心配がない部位に意図的に設けられた円弧状部材8A3の外周が、最も強く電場が発生する位置となる。このため、大径部8A2に意図的に円弧状部材8A3を設けたことにより、当該タングステンが堆積及び結晶化した位置ではなく、当該円弧状部材8A3に電極8ARでの放電起点を位置付けることができる。
【0060】
(2)円弧状部材8A3は大径部8A2に取り付けられているので、当該円弧状部材8A3での放電により生じた熱が大径部8A2に伝わりやすい。これによれば、当該大径部8A2の温度上昇を速やかに行うことができるので、本体部8A21の膨出部8A211間でのアーク放電に速やかに移行することができる。従って、発光管51Aの始動特性を向上することができるほか、発光管51Aへの内壁へのアークの衝突確率を下げることができるので、電極8ARひいては発光管51Aの長寿命化を図ることができる。
【0061】
(3)各電極8Aの互いに近接する側の端部に設けられた大径部8A2は、当該端部側の小径部8A1が膨出するように形成された本体部8A21と、当該本体部8A21の後端側(封止部512,513側)に巻回されたコイル部8A22とを有している。これによれば、コイルの層数を調整するなどして、発光管51Aのワット数に応じた径寸法に大径部8A2を調整しやすくすることができるほか、当該大径部8A2の熱容量を大きくすることができる。従って、電極8AL,8ARの消耗及び変形を抑制することができ、電極8AL,8ARの一層の長寿命化を図ることができる。
【0062】
(4)発光管51Aにトリガー線53が設けられている場合には、大径部8A2における当該トリガー線53に対向する位置が、放電起点となりやすい。このため、電極8ARの大径部8A2に、突出部として円弧状部材8A3を設けたことにより、当該円弧状部材8A3のいずれかの位置を放電起点に位置付けしやすくすることができる。従って、円弧状部材8A3に、放電起点を確実に設定することができる。
【0063】
(5)円弧状部材8A3には、当該円弧状部材8A3の中心から径方向外側に向かうに従って先端が細くなる複数の突起部8A33が、当該円弧状部材8A3の外周に沿って形成されている。ここで、先端が細い突起状部位では、電場が特に集中しやすく、発光管51Aの点灯始動時の放電起点となりやすい。このため、円弧状部材8A3が当該突起部8A33を複数有することにより、当該突起部8A33のうち、トリガー線53に対向する突起部8A33に放電起点を確実に位置付けることができる。従って、円弧状部材8A3に点灯始動時の放電起点を一層確実に位置付けることができる。
【0064】
(6)円弧状部材8A3には、コイル部8A22の内層8A221が挿通する開口8A31が形成され、当該開口8A31に接続される切欠8A32が、円弧状部材8A3の軸方向に沿って形成されている。これによれば、切欠8A32を介して開口8A31にコイル部8A22の内層8A221を嵌め込むように、円弧状部材8A3をコイル部8A22に取り付けることができる。従って、円弧状部材8A3を大径部8A2に位置付けすることができるほか、当該円弧状部材8A3の大径部8A2への取り付けを容易に行うことができる。
【0065】
(7)円弧状部材8A3は、大径部8A2における軸方向略中央から先端側(例えば、電極8ARにおける電極8ALに近接する側)の位置に配置されており、詳述すると、当該位置に対応するコイル部8A22の略中央から先端側の端部までの間に取り付けられている。これによれば、電極8AL,8AR間の中央を中心とする略球状に形成された発光部511の内壁と、円弧状部材8A3の突起部8A33との距離を長くすることができる。従って、突起部8A33先端にて生じたアークが、発光部511の内壁に衝突することを抑えることができる。また、これにより、放電空間Sの内部環境を維持することができ、発光管51Aの白濁及び黒化等の発生を抑制することができるので、発光管51Aの長寿命化を図ることができる。
【0066】
(8)円弧状部材8A3は、電極構成物質であるタングステンに、例えばトリウム等の始動補助物質を添加した材料により形成されている。これによれば、電極8Aへの電圧印加時に、円弧状部材8A3にて放電を生じやすくすることができる。従って、一層確実に、円弧状部材8A3に放電起点を位置付けることができる。
【0067】
(9)発光部511内の発光物質(例えば、水銀)は、発光管51A消灯後の冷却時に、冷却されやすい方の電極に付着する。この際、副反射鏡52が設けられた側の電極8ARは、当該副反射鏡52により保温されることとなるので冷却されにくいが、他方の電極8ALは冷却されやすい。このため、当該電極8ALに、当該発光物質が付着する。この後、各電極8AL,8ARに電圧を印加して、発光管51Aを再度点灯しようとすると、電極8ALは付着した発光物質で埋もれてしまっており、当該電極8ALに円弧状部材8A3が設けられていても、放電起点の位置付けが適切になされない可能性がある。
【0068】
これに対し、発光部511における副反射鏡52が設けられる側に位置し、かつ、冷却時に発光物質が付着しにくい電極8ARに、円弧状部材8A3は取り付けられている。これによれば、発光管51Aの点灯始動時に、当該電極8ARにおいては円弧状部材8A3が露出しているので、前述の円弧状部材8A3への放電起点の位置付けを確実に行うことができる。
従って、発光管51Aの点灯始動時に露出している電極8ARにのみ、円弧状部材8A3を設けることにより、各電極8AL,8ARのそれぞれに円弧状部材8A3を設ける場合に比べ、発光管51Aの製造工程の簡略化及び製造コストの低減を図ることができる。
【0069】
〔2.第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係るプロジェクタについて説明する。
本実施形態のプロジェクタは、前述のプロジェクタ1と同様の構成を有するが、当該プロジェクタ1では、電極8Aは突出部として円弧状部材8A3を備える構成としたのに対し、本実施形態のプロジェクタでは、突出部として略円錐形状の突起を本体部に一体的に取り付ける構成とした点において、本実施形態のプロジェクタと前述のプロジェクタ1とは相違する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同一または略同一である部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0070】
本実施形態のプロジェクタは、発光管51Aに代えて発光管51Bを備えるほかは、前述のプロジェクタ1と同様の構成を有している。
発光管51Bは、発光部511、一対の封止部512,513及び電極引出線514,515を備え、当該発光部511の内部には、一対の封止部512,513に設けられた金属箔5121,5131にそれぞれ接続される一対の電極8Bが配置されている。
【0071】
図5は、本実施形態に係る電極8BRを示す側面図である。
一対の電極8Bは、封止部512側に配置される電極8ALと、封止部513側に配置される電極8BRとから構成されている。
このうち、電極8BRは、図5に示すように、小径部8A1と、当該小径部8A1の先端側(他方の電極8ALに近接する側であり、封止部513から離間する側)に形成され、かつ、小径部8A1より径寸法の大きい大径部8B2とを備えて構成されている。このうち、大径部8B2は、小径部8A1の先端側に形成された本体部8B21と、当該本体部8B21に接続されるように小径部8A1に対して密に巻回された2重層のコイル部8A22とを備えて構成されている。
【0072】
本体部8B21は、前述の本体部8A21と同様に、直径寸法がコイル部8A22と略同じとなる略球状に膨出するように形成されている。この本体部8B21の先端側略中央には、膨出部8A211が形成されている。また、本体部8B21における前述のトリガー線53に近接する側には、本発明の突出部としての突起8B212が形成されている。
この突起8B212は、本体部8B21とは別部材として構成された略円錐状部材であり、当該円錐状部材を本体部8B21における後端側(コイル部8A22に近接する側)に形成された挿入穴(図示省略)に挿入した後、レーザ照射等により熱融着させることで、突起8B212は形成されている。このような突起8B212は、タングステンに前述の始動補助物質を添加した材料により形成されている。
【0073】
ここで、突起8B212は、後端側(他方の電極8ALから離間する側であり、封止部513に近接する側)に突出するように取り付けられており、当該突出方向の先端が細くなるように形成されている。また、この突起8B212の取付位置は、本体部8B21におけるトリガー線53に対向する位置であり、当該突起8B212の突出方向には、トリガー線53が位置している。
このため、発光管51Bの始動に際して、一対の電極8Bに電圧を印加すると、電極8BRでは、突起8B212の先端部分で放電が開始され、当該放電により生じた熱が本体部8B21に伝導される。そして、本体部8B21が十分に加熱されると、当該本体部8B21の膨出部8B211と、他方の電極8ALの膨出部8B211との間でアーク放電が生じる。
【0074】
以上説明した本実施形態のプロジェクタによれば、前述の効果(3),(9)と同様の効果を奏することができるほか、以下の効果を奏することができる。
(10)電極8BRの大径部8B2を構成する本体部8B21に、当該大径部8B2の外側に突出する略円錐形状の突起8B212を、突出部として意図的に設けたことにより、当該電極8BRにおいて突起8B212の先端を、最も強く電場が発生する位置とすることができる。これによれば、当該突起8B212の先端に、発光管51Bの点灯始動時の放電起点を位置付けることができる。従って、小径部8A1に電極構成物質であるタングステンが堆積及び結晶化した場合でも、電極8BRにおける放電起点を突起8B212の先端に位置付けることができる。
【0075】
(11)このような突起8B212は、発光管51Bの定常点灯時に放電がなされる本体部8B21に設けたことにより、発光管51Bの点灯始動時に、当該突起8B212にて生じた放電による熱を、本体部8B21に直接伝導することができる。これによれば、本体部8B21の温度上昇を速やかに行うことができる。従って、発光管51Bの点灯時に速やかにアーク放電に移行することができ、異常放電の発生を抑え、電極8Bの消耗及び変形を抑制することができる。
【0076】
(12)本体部8B21に突起8B212が設けたことにより、当該突起8B212をコイル部8A22に設ける場合に比べ、発光部511の内壁との距離を長くすることができる。従って、当該内壁へのアークの衝突を抑制することができ、放電空間Sの内部環境を維持することができる。また、コイル部8A22に突起8B212に係る円錐状部材を取り付ける場合に比べ、突起8B212の形成工程を簡略化することができる。
【0077】
(13)電極8BRに設けられた突起8B212の本体部8B21からの突出方向は、他方の電極8ALから離間する方向に設定されている。これによれば、突起8B212に放電起点が位置付けられている期間が、本体部8B21の加熱が十分になされるまでの期間となる。
ここで、突起8B212の突出方向が、他方の電極8ALに近接する方向に設定されている場合には、本体部8B21の加熱が十分になされた後でも、当該突起8B212の先端にてアーク放電が継続してしまう場合があり、このような場合には、各電極8B間の中央を基準として配置位置が設定された前述の各光学部品に、光が適切に入射しなくなる可能性がある。
【0078】
これに対し、当該突出方向が他方の電極8ALから離間する方向であるので、本体部8B21の加熱が十分になされた場合には、電極8BRでは、当該本体部8B21の先端に形成された膨出部8B211でアーク放電を行うことができる。従って、定常状態では、電極8B間の中央に、発光管51Bの発光中心を位置させることができ、確実に光学ユニット4を構成する各光学部品に光を入射させることができる。
【0079】
(14)このような突起8B212は、前述の円弧状部材8A3と同様に、電極構成物質であるタングステンに、トリウム等の始動補助物質を添加した材料により形成されている。これによれば、電極8Aへの電圧印加時に、突起8B212にて放電を生じやすくすることができる。従って、一層確実に、突起8B212に電極8BRにおける放電起点を位置付けることができる。
【0080】
(15)突起8B212の突出方向は、前述のように、他方の電極8ALから離間する方向であるだけでなく、発光管51Bの外側に配置されたトリガー線53に対向するように設定されている。ここで、一対の電極8Bに電圧を印加した場合では、当該一対の電極8Bにおけるトリガー線53に対向する部位で放電が開始される。このため、このようなトリガー線53に向かって突出するように突起8B212を突設することにより、発光管51Bの点灯始動時の電極8BRにおける放電起点を、突起8B212に一層確実に位置付けることができる。
【0081】
〔3.第3実施形態〕
以下、本発明の第3実施形態に係るプロジェクタについて説明する。
本実施形態のプロジェクタは、前述の第2実施形態にて示したプロジェクタと同様の構成を備えるが、当該第2実施形態のプロジェクタでは、突起8B212は、電極8BRの大径部8B2における本体部8B21に設けられていたのに対し、本実施形態のプロジェクタでは、当該突起がコイル部に設けられている。この点において、本実施形態のプロジェクタと第2実施形態のプロジェクタとは相違する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同一または略同一である部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0082】
本実施形態のプロジェクタは、発光管51Bに代えて発光管51Cを備えるほかは、前述の第2実施形態にて示したプロジェクタと同様の構成を有している。
この発光管51Cは、発光部511、一対の封止部512,513及び電極引出線514,515を備え、当該発光部511の内部には、一対の封止部512,513に設けられた金属箔5121,5131にそれぞれ接続される一対の電極8Cが配置されている。
【0083】
図6は、本実施形態に係る電極8CRを示す側面図である。
一対の電極8Cは、封止部512側に配置される電極8ALと、封止部513側に配置される電極8CRとから構成されている。
このうち、電極8CRは、図6に示すように、小径部8A1と、当該小径部8A1の先端側(他方の電極8ALに近接する側であり、封止部513から離間する側)に形成され、かつ、小径部8A1より径寸法の大きい大径部8C2とを備えている。
大径部8C2は、本体部8A21と、当該本体部8A21の後端側に接続するように設けられ、かつ、内層8A221及び外層8A222を有するコイル部8C22とを備えている。このうち、外層8A222の直径寸法は、本体部8A21と略同じとなるように設定され、外層8A222におけるトリガー線53(図2参照)に対向する部位には、略円錐形状の突起8C223がレーザ照射等の熱融着により取り付けられている。
【0084】
この突起8C223は、前述の突起8B212と同様に、タングステンに始動補助物質を添加した材料により形成され、コイル部8C22における略中央から先端側(本体部8A21側)の端部までの間に、外層8A222の外表面に取り付けられている。
この突起8C223は、当該外層8A222からの突出方向が後端側(他方の電極8ALから離間する側であり、封止部513に近接する側)を向いており、かつ、当該突出方向には、トリガー線53が位置している。
【0085】
以上説明した本実施形態のプロジェクタによれば、前述の効果(3)、(9)、(10)、(11)及び(13)〜(15)と同様の効果を奏することができるほか、以下の効果を奏することができる。
(16)コイル部8C22は、本体部8A21に比べ、発光管51Cを長時間点灯させた場合でも、消耗及び変形が少ない。このため、発光管51Cの点灯始動時に、電極8CRでの放電起点となる突起8C223をコイル部8C22に設けたことにより、当該発光管51Cを長時間点灯した場合でも、突起8C223の変形等を抑制することできる。従って、長期間に亘って、当該突起8C223の先端に、放電起点を位置付けることができる。
【0086】
〔4.第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態に係るプロジェクタについて説明する。
本実施形態のプロジェクタは、前述のプロジェクタ1と同様の構成を備えるが、当該プロジェクタ1では、電極8Aは突出部として円弧状部材8A3を備える構成としたのに対し、本実施形態のプロジェクタでは、電極が突出部としてリング状部材を備える点において、本実施形態のプロジェクタと前述のプロジェクタ1とは相違する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同一または略同一である部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0087】
図7は、本実施形態に係る電極8DRを示す側面図である。
本実施形態のプロジェクタは、発光管51Aに代えて発光管51Dを備えるほかは、前述のプロジェクタ1と同様の構成を有している。また、発光管51Dは、電極8Aに代えて電極8Dを備えるほかは、発光管51Aと同様の構成を有し、当該電極8Dは、封止部512側に配置される電極8ALと、封止部513側に配置される電極8DRとから構成されている。
このうち、電極8DRは、図7に示すように、小径部8A1及び大径部8A2を備え、当該大径部8A2には、リング状部材8D3が設けられている。
【0088】
リング状部材8D3は、本発明の突出部及び円弧状部材に相当し、電極8DRとは別体として、コイル部8A22における軸方向略中央から本体部8A21に至るまでの範囲に、リング状部材8D3の外縁が大径部8A2の外縁より外側に突出するように設けられる。このリング状部材8D3は、タングステンに前述の始動補助物質を添加した材料により形成された線材を1巻き分巻回して形成されている。
【0089】
具体的に、リング状部材8D3は、当該リング状部材8D3の軸方向に沿って、線材の一部が互いに当接されるリングとして構成されている。そして、このリング状部材8D3における他方の電極8AL側の端部8D31、及び、封止部513側の端部8D32は、線材の軸方向に直交する方向に剪断された形状を有している。
このリング状部材8D3は、大径部8A2に取り付けられる際に、当該リング状部材8D3のうちの一方の端部が、前述のトリガー線53に対向し、当該トリガー線53との距離がリング状部材8D3において最も短くなるように配置される。
【0090】
このようなリング状部材8D3の端部8D31,8D32は、剪断された形状を有しているので、当該端部8D31,8D32に電場が集中しやすい。また、トリガー線53に対向する端部には、前述のように、電場が特に集中しやすいので、当該端部に、発光管51Dの点灯始動時に電極8DRにおける放電起点を位置付けることができる。
ここで、放電起点となるリング状部材8D3の端部は、封止部513側の端部8D32であることが好ましい。これは、前述の突起部8B212,8C223と同様に、電極8DRが十分に加熱されているのにも関らず、当該端部でのアーク放電が継続してしまうことを防ぐためである。
【0091】
以上説明した本実施形態のプロジェクタによれば、前述のプロジェクタ1が奏することのできる効果(1)〜(4)、(7)〜(9)と同様の効果を奏することができるほか、以下の効果を奏することができる。
(17)リング状部材8D3の内径を、大径部8A2の外径に応じた寸法に設定することにより、線材を1巻き分巻回して形成されたリング状部材8D3を、大径部8A2(コイル部8A22)に捻じ込むなどして容易に取り付けることができる。また、このように、リング状部材8D3を大径部8A2に捻じ込むことにより、レーザ照射等の熱処理をしなくても、当該リング状部材8D3を大径部8A2に固定することができるほか、リング状部材8D3とコイル部8A22との接触面積を小さくすることができる。これによれば、リング状部材8D3の熱抵抗を高くすることができるので、当該リング状部材8D3の温度上昇を速やかに行うことができ、リング状部材8D3でのアーク放電を速やかに行わせることができる。
【0092】
〔5.実施形態の変形〕
本発明を実施するための最良の構成などは、以上の記載で開示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0093】
前記第1実施形態では、各電極8AL,8ARの大径部8A2に取り付けられる円弧状部材として、開口8A31及び切欠8A32を有し、かつ、径方向外側に向かうに従って細くなる複数の突起部8A33が形成された円弧状部材8A3を例示したが、本発明はこれに限らない。すなわち、大径部8A2に取り付けられた際に当該大径部8A2の直径寸法より外側に突出する円弧状部材であれば、他の形状を有していてもよい。
【0094】
図8〜図10は、前記実施形態の変形を示す図であり、具体的には、円弧状部材の他の形状を示す図である。
例えば、大径部8A2に取り付けられる他の円弧状部材としては、図8〜図10に示す円弧状部材8A4〜8A6が挙げられる。
円弧状部材8A4は、図8に示すように、開口8A31及び切欠8A32を備えた略C字状に形成され、当該切欠8A32とは反対側の端部に、先端に向かうに従って細くなる1つの突起部8A43が形成されている。この突起部8A43は、大径部8A2より径方向外側に位置することとなり、発光管の点灯始動時には、放電起点となる。
【0095】
また、円弧状部材8A5は、図9に示すように、平板略円形状に形成され、略中央にコイル部8A22の内層8A221が挿通する略円形状の開口8A51が形成されている。このような円弧状部材8A5の径寸法は、大径部8A2より大きくなるように設定されている。そして、発光管の点灯始動時には、当該円弧状部材8A5の外周におけるトリガー線53に対向する部位が放電起点となる。
【0096】
更に、円弧状部材8A6は、図10に示すように、円弧状部材8A4から突起部8A43を取り除いた平板略C字状を有し、開口8A31及び切欠8A32を備えている。このため、発光管の点灯始動時には、当該切欠8A32の端縁に電場が集中しやすく、また、当該端縁は鋭角となっているので特に電場が集中しやすいので、当該端縁に放電起点を位置付けることができる。また、この際、切欠8A32をトリガー線53に対向させることにより、一層確実に当該端縁に放電起点を位置付けることができる。
【0097】
従って、これら円弧状部材8A4〜8A6を大径部8A2に取り付けた場合でも、円弧状部材8A3を取り付けた場合に、前述の発光管51Aが奏することのできる効果と同様の効果を奏することができ、特に、大径部8A2の略中央から他方の電極に近接する側の端部までの範囲に取り付けられれば、発光部511内壁へのアークの衝突を抑えることができる。なお、これら円弧状部材8A4〜8A6は、前述の円弧状部材8A3と同様に、タングステンに始動補助物質を添加した材料により形成することが可能である。
【0098】
前記第1及び第4実施形態では、円弧状部材8A3及びリング状部材8D3を、副反射鏡52が設けられる側の電極8AR,8DRに取り付け、また同様に、前記第2及び第3実施形態では、突起8B212,8C223を、副反射鏡52が設けられる側の電極8BR,8CRに取り付けるとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、これら円弧状部材8A3〜8A6、リング状部材8D3及び突起8B212,8C223を、一対の電極のそれぞれに取り付けてもよく、また、副反射鏡52が設けられる側とは反対側の電極のみに取り付けてもよい。更に、少なくとも一方の電極に、円弧状部材8A3〜8A6、リング状部材8D3及び突起8B212,8C223を組み合わせて設ける構成としてもよい。
【0099】
前記第1及び第4実施形態では、円弧状部材8A3及びリング状部材8D3は、コイル部8A22に取り付けられるとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、本体部8A21に取り付ける構成でもよい。
すなわち、前述の突起8B212,8C223と同様に、円弧状部材8A3及びリング状部材8D3がコイル部8A22に取り付けられている場合には、コイル部8A22は消耗及び変形が本体部8A21に比べて小さいので、長期間に亘って、円弧状部材8A3及びリング状部材8D3を放電起点とすることができる。一方、円弧状部材8A3及びリング状部材8D3が本体部8A21に設けられている場合には、放電によって生じた熱の当該本体部8A21への伝導効率が向上するので、発光管の始動特性を向上することができる。
【0100】
前記第1実施形態では、円弧状部材8A3は、複数の突起部8A33を有するとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、前述の円弧状部材8A4のように、突起部8A33の数は1つでもよく、前述の円弧状部材8A6のように、突起部がなくてもよい。すなわち、当該突起部の数は適宜設定してよい。また、前述の円弧状部材8A5のように、円弧状部材8A3,8A4において切欠8A32のない構成としてもよい。
【0101】
前記第2及び第3実施形態では、突出部としての突起8B212,8C223は、各電極8BR,8CRにおける後端側(他方の電極8ALから離間する側)に向かって突出しているとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、突起8B212,8C223の突出方向は、必ずしも後端側を向いていなくてもよい。更に、当該突出方向は、トリガー線53に向いていなくてもよい。また、トリガー線53を有しない放電ランプにおいても、本発明を適用することも可能である。
また、前記第2及び第3実施形態では、突起8B212,8C223は、大径部8B2,8C2にそれぞれ1つずつ設けるとしたが、これら突起8B212,8C223の数は適宜設定してよい。
【0102】
前記各実施形態では、大径部8A2,8B2,8C2は、それぞれ小径部8A1の先端側が略球形状に膨出するように形成された本体部8A21,8B21と、当該本体部8A21,8B21の後端側に接続されるように、小径部8A1に巻回されたコイル部8A22,8C22とを備えて構成されるとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、コイル部はなくてもよい。このような場合、本体部の寸法を放電ランプのワット数に応じて設定すればよい。また、コイル部の巻き数及び層数は、適宜設定してよい。更に、コイル部の形成に際して、線材を隙間なく巻回せずに、所定の隙間を設けて巻回して、当該コイル部を形成してもよい。加えて、本体部は、コイル部の先端をレーザ照射等の熱処理により融解させることで形成してもよい。
【0103】
前記各実施形態では、プロジェクタ1は、3つの液晶パネル442R,442G,442Bを備えるとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、2つ以下、あるいは、4つ以上の液晶パネルを用いたプロジェクタにも、本発明を適用可能である。
また、前記各実施形態では、光学ユニット4は平面視略L字形状を有した構成を説明したが、これに限らず、例えば、平面視略U字形状を有した構成を採用してもよい。
更に、前記各実施形態では、光束入射面と光束射出面とが異なる透過型の液晶パネル442を用いていたが、光入射面と光射出面とが同一となる反射型の液晶パネルを用いてもよい。
【0104】
前記各実施形態では、光変調装置として液晶パネル442を備えたプロジェクタ1を例示したが、入射光束を画像情報に応じて変調して光学像を形成する光変調装置であれば、他の構成の光変調装置を採用してもよい。例えば、マイクロミラーを用いたデバイスなど、液晶以外の光変調装置を用いたプロジェクタにも、本発明を適用することも可能である。このような光変調装置を用いた場合、光束入射側及び光束射出側の偏光板443,445は省略することができる。
【0105】
前記各実施形態では、発光管51A,51B,51C,51Dを有する放電ランプ5を備えた光源装置411を、プロジェクタ1に採用したが、本発明はこれに限らない。すなわち、このような光源装置411は、他の照明装置に利用することも可能である。更に、放電ランプ5を単体で利用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、発光管に利用でき、特に光源装置及びプロジェクタに用いられる発光管として、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0107】
1…プロジェクタ、3…投射レンズ(投射光学装置)、6…主反射鏡(反射鏡)、51A,51B,51C,51D…発光管、53…トリガー線、8A(8AL,8AR),8B(8BR),8C(8CR),8D(8DR)…電極、411…光源装置、442(442R,442G,442B)…液晶パネル(光変調装置)、511…発光部、8A1…小径部、8A2,8B2,8C2…大径部、8A3,8A4,8A5,8A6…円弧状部材(突出部)、8D3…リング状部材(突出部、円弧状部材)、8A21,8B21…本体部、8A22,8C22…コイル部、8A31,8A51…開口、8A33,8A43…突起部、8A32…切欠、8B212,8C223…突起(突出部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に一対の電極が配置された発光部を有し、当該電極間で放電発光する発光管であって、
前記一対の電極のうち少なくともいずれか一方の電極は、
小径部と、当該小径部における他方の電極に近接する側の端部に設けられ、かつ、前記小径部より大きい径寸法を有する大径部とを備え、
前記大径部は、当該大径部より外側に突出した突出部を有することを特徴とする発光管。
【請求項2】
請求項1に記載の発光管において、
前記大径部は、
前記小径部の軸方向に沿って巻回されたコイル部と、
前記コイル部より前記他方の電極側に位置する本体部とを備えることを特徴とする発光管。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の発光管において、
前記突出部は、略円弧状を有し、かつ、前記大径部に取り付けられる円弧状部材であることを特徴とする発光管。
【請求項4】
請求項3に記載の発光管において、
前記円弧状部材は、当該円弧状部材の径方向外側に向かって突出し、かつ、突出方向先端側に向かうに従って細くなる突起部を少なくとも1つ有することを特徴とする発光管。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の発光管において、
前記円弧状部材は、前記大径部が挿通される開口を有していることを特徴とする発光管。
【請求項6】
請求項5に記載の発光管において、
前記円弧状部材は、前記開口に接続され、かつ、当該円弧状部材の軸方向に沿って形成された切欠を有することを特徴とする発光管。
【請求項7】
請求項3から請求項6のいずれかに記載の発光管において、
前記円弧状部材は、前記大径部における略中央から前記他方の電極に近接する側の端部までの間に設けられていることを特徴とする発光管。
【請求項8】
請求項2に記載の発光管において、
前記突出部は、前記大径部に設けられ、かつ、前記大径部から離間する方向に向かうに従って細くなる突起により構成されていることを特徴とする発光管。
【請求項9】
請求項2又は請求項8に記載の発光管において、
前記突出部は、前記本体部に設けられていることを特徴とする発光管。
【請求項10】
請求項2又は請求項8に記載の発光管において、
前記突出部は、前記コイル部に設けられていることを特徴とする発光管。
【請求項11】
請求項8から請求項10のいずれかに記載の発光管において、
前記突出部は、前記他方の電極から離間する方向に突出していることを特徴とする発光管。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれかに記載の発光管において、
前記突出部は、前記大径部と同じ素材に始動補助物質を添加した材料により形成されていることを特徴とする発光管。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれかに記載の発光管において、
前記発光管の外表面に沿って配置され、かつ、電圧が印加されて当該発光管の始動を補助するトリガー線を備え、
前記突出部は、前記トリガー線に向かって突出していることを特徴とする発光管。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれかに記載の発光管において、
前記発光部における前記一対の電極のうちの一方の電極側を覆い、かつ、入射した光を他方の電極側に反射する反射部材を備え、
前記一対の電極のうち、前記反射部材が設けられる側の電極のみ、前記突出部を備えることを特徴とする発光管。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれかに記載の発光管と、当該発光管から射出された光を一方向に反射することで当該光を光束として射出する反射鏡とを備えることを特徴とする光源装置。
【請求項16】
請求項15に記載の光源装置と、当該光源装置から射出された光束を画像情報に応じて変調する光変調装置と、変調された光束を投射する投射光学装置とを備えることを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−153391(P2010−153391A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49767(P2010−49767)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【分割の表示】特願2008−167437(P2008−167437)の分割
【原出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】