説明

発光素子、発光装置および電気機器

【課題】正孔注入性および正孔輸送性に優れた材料を提供することを目的とする。また、
正孔注入性および正孔輸送性に優れた材料を用いた発光素子および発光装置を提供するこ
とを目的とする。
【解決手段】一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体を提供する。本発明のカルバゾ
ール誘導体は、正孔注入性、正孔輸送性に優れている。また、本発明のカルバゾール誘導
体を発光素子または発光装置に適用することで、駆動電圧の低減、発光効率の向上、長寿
命化、信頼性の向上を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルバゾール誘導体に関する。また、一対の電極と、電界を加えることで発
光が得られる発光物質を含む層と、を有する発光素子に関する。また、このような発光素
子を有する発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光材料を用いた発光素子は、薄型軽量、高速応答性、直流低電圧駆動などの特徴を有
しており、次世代のフラットパネルディスプレイへの応用が期待されている。また、発光
素子をマトリクス状に配置した発光装置は、従来の液晶表示装置と比較して、視野角が広
く視認性が優れる点に優位性があると言われている。
【0003】
発光素子の発光機構は、一対の電極間に発光層を挟んで電圧を印加することにより、陰
極から注入された電子および陽極から注入された正孔が発光層の発光中心で再結合して分
子励起子を形成し、その分子励起子が基底状態に戻る際にエネルギーを放出して発光する
といわれている。励起状態には一重項励起と三重項励起が知られ、発光はどちらの励起状
態を経ても可能であると考えられている。
【0004】
このような発光素子に関しては、その素子特性を向上させる上で、材料に依存した問題
が多く、これらを克服するために素子構造の改良や材料開発等が行われている。
【0005】
発光物質を含む層に用いられる材料の一例として、光導電性に優れたカルバゾール骨格
を有する材料(カルバゾール誘導体)が挙げられる。具体的には、1,3,5−トリス[
4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCBP)が挙げられる(特許文
献1参照)。
【0006】
TCBPは、正孔輸送層を形成するための材料として提案されている。しかし、カルバ
ゾール骨格を有する材料はイオン化ポテンシャルが大きいものが多く、電極からの正孔注
入性はあまり良くない。
【0007】
一方、正孔注入性および正孔輸送性材料として多く用いられている材料としては、例え
ば、4,4’−ビス(N−{4−[N,N−ビス(3−メチルフェニル)アミノ]フェニ
ル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)が挙げられる(特許文献2
参照)。
【0008】
DNTPDは、イオン化ポテンシャルが小さく正孔注入性に優れている。また、正孔輸
送性も有しており、発光素子の正孔注入層や正孔輸送層に多く用いられている。しかし、
まだ十分な性質を備えているとは言えず、より良い特性を有する材料の開発が求められて
いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3210481号公報
【特許文献2】特開平9−301934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記問題を鑑み、正孔注入性および正孔輸送性に優れた材料を提供することを目的とす
る。また、正孔注入性および正孔輸送性に優れた材料を用いた発光素子および発光装置を
提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、下記一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体が優れた正孔注入性お
よび正孔輸送性を有することを見いだした。
【0012】
よって、本発明は、下記一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体を提供するもので
ある。
【0013】
【化1】

(式中、R11およびR13は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素、炭素数1
〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、ア
リールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、Ar11は、炭素数6〜
25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基のいずれかを表し、R12は、水素
、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基のいずれかを表し、R14
、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、一般式(2)で示さ
れる置換基のいずれかを表し、一般式(2)で示される置換基において、R15は、水素
、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリ
ール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、Ar12は、
炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基のいずれかを表し、R
は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基のいずれかを表す
。)
【0014】
【化2】

【0015】
上記一般式(1)において、R11およびR13のどちらか一方は、炭素数6〜25の
アリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることが好ましい。より好ましく
は、R11およびR13は、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリー
ル基のいずれかであることが好ましい。カルバゾール骨格の窒素と結合している置換基が
、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることにより
、キャリア輸送性が向上するという効果が得られる。
【0016】
また、上記一般式(1)において、R12は、水素、tert−ブチル基、フェニル基
、ビフェニル基のいずれかであることが好ましい。
【0017】
また、上記一般式(1)において、R14は、水素、tert−ブチル基、フェニル基
、ビフェニル基のいずれかであることが好ましい。
【0018】
また、上記一般式(1)において、R14は一般式(2)で示される置換基であること
が好ましい。R14が一般式(2)で示される置換基であることにより、より耐熱性の高
いカルバゾール誘導体を得ることができる。また、一般式(2)において、R15は、炭
素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることが好ましい
。カルバゾール骨格の窒素と結合している置換基が、炭素数6〜25のアリール基または
炭素数5〜9のヘテロアリール基であることにより、キャリア輸送性が向上するという効
果が得られる。また、一般式(2)において、R16は水素、tert−ブチル基、フェ
ニル基、ビフェニル基のいずれかであることが好ましい。
【0019】
また、本発明者らは、下記一般式(3)で示されるカルバゾール誘導体が優れた正孔注
入性および正孔輸送性を有することを見いだした。
【0020】
よって、本発明は、下記一般式(3)で示されるカルバゾール誘導体を提供するもので
ある。
【0021】
【化3】

(式中、R21は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭
素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれ
かを表し、R22は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基の
いずれかを表し、R23は、一般式(4)で示される置換基を表し、一般式(4)で示さ
れる置換基において、R24は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のア
リール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシ
ル基のいずれかを表し、Ar21は、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテ
ロアリール基のいずれかを表し、R25は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6
〜12のアリール基のいずれかを表す。)
【0022】
【化4】

【0023】
上記構成において、R22は、水素、tert−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基
のいずれかであることが好ましい。
【0024】
本発明の他の構成は、一般式(5)で示される構造を有するカルバゾール誘導体である

【0025】
【化5】

(式中、R21は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭
素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれ
かを表し、R22およびR23は、一般式(6)で示される置換基を表し、一般式(6)
で示される置換基において、R24は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜2
5のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7
のアシル基のいずれかを表し、Ar21は、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9
のヘテロアリール基のいずれかを表し、R25は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭
素数6〜12のアリール基のいずれかを表す。)
【0026】
【化6】

【0027】
上記構成において、R25は、水素、tert−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基
のいずれかであることが好ましい。
【0028】
また、上記構成において、R24は、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9
のヘテロアリール基であることが好ましい。
【0029】
また、上記構成において、R21は、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9
のヘテロアリール基であることが好ましい。
【0030】
カルバゾール骨格の窒素と結合している置換基が、炭素数6〜25のアリール基または
炭素数5〜9のヘテロアリール基であることにより、キャリア輸送性が向上するという効
果が得られる。
【0031】
また、本発明の他の構成は、一般式(7)で示される構造を有するカルバゾール誘導体
である。
【0032】
【化7】

(式中、Ar31は、フェニル基またはナフチル基を表す。)
【0033】
また、本発明の他の構成は、一般式(8)で示される構造を有するカルバゾール誘導体
である。
【0034】
【化8】

(式中、Ar41およびAr42は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、フェニル基
またはナフチル基を表す。)
【0035】
また、本発明のカルバゾール誘導体は、発光素子に用いることができる。本発明のカル
バゾール誘導体は、正孔注入性、正孔輸送性に優れているため、正孔輸送性材料として用
いることができる。具体的には、発光物質を含む層のうち、正孔注入層、正孔輸送層、発
光層のホスト材料として用いることが好ましい。
【0036】
よって、本発明の発光素子は、一対の電極間に発光物質を含む層とを有し、発光物質を
含む層は、本発明のカルバゾール誘導体を含むことを特徴とする。
【0037】
なお、本発明のカルバゾール誘導体は、正孔注入性に優れているため、本発明のカルバ
ゾール誘導体を正孔注入性材料として含むことが好ましい。つまり、本発明のカルバゾー
ル誘導体を陽極として機能する電極と接する層に用いることが好ましい。
【0038】
また、本発明のカルバゾール誘導体は、正孔輸送性に優れているため、上述のカルバゾ
ール誘導体を正孔輸送性材料として含むことが好ましい。つまり、本発明のカルバゾール
誘導体は、発光素子の一対の電極のうち陽極として機能する電極と、発光物質を含む層の
うち発光機能を担う層との間に含まれていることが好ましい。
【0039】
また、本発明のカルバゾール誘導体は、発光層のホスト材料として用いることができる
。また、本発明のカルバゾール誘導体は発光を示すため、発光材料として用いることもで
きる。よって、本発明のカルバゾール誘導体は、発光物質を含む層のうち発光機能を担う
層に含まれていることが好ましい。
【0040】
また、本発明は、上述した発光素子を有する発光装置も範疇に含めるものである。本明
細書中における発光装置とは、画像表示デバイス、発光デバイス、もしくは光源(照明装
置含む)を含む。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexible pr
inted circuit)もしくはTAB(Tape Automated Bon
ding)テープもしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り
付けられたモジュール、TABテープやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュ
ール、または発光素子にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回
路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0041】
本発明のカルバゾール誘導体は、正孔注入性に優れており、正孔注入性材料として発光
素子の正孔注入層に用いることにより、駆動電圧を低減することができる。
【0042】
また、本発明のカルバゾール誘導体は、正孔輸送性に優れているため、正孔輸送性材料
として発光素子に用いることもできる。
【0043】
また、本発明のカルバゾール誘導体は、耐熱性に優れているため、耐熱性、耐久性に優
れた発光素子を得ることができる。
【0044】
また、本発明の発光素子は、本発明のカルバゾール誘導体を用いていることにより、駆
動電圧の低減、発光効率の向上、長寿命化、信頼性の向上を実現することができる。
【0045】
また、本発明のカルバゾール誘導体は、耐熱性に優れているため、耐熱性、耐久性に優
れた発光素子を得ることができる。
【0046】
また、本発明の発光装置は、本発明のカルバゾール誘導体を用いた発光素子を有してい
るため、長寿命であり、信頼性の高い発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の発光素子について説明する図。
【図2】本発明の発光素子について説明する図。
【図3】本発明の発光素子について説明する図。
【図4】発光装置について説明する図。
【図5】電気機器について説明する図。
【図6】本発明のカルバゾール誘導体である3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図7】本発明のカルバゾール誘導体である3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図8】本発明のカルバゾール誘導体である3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールの吸収スペクトルを示す図。
【図9】本発明のカルバゾール誘導体である3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールの発光スペクトルを示す図。
【図10】本発明のカルバゾール誘導体である3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図11】本発明のカルバゾール誘導体である3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図12】本発明のカルバゾール誘導体である3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールの吸収スペクトルを示す図。
【図13】本発明のカルバゾール誘導体である3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールの発光スペクトルを示す図。
【図14】本発明のカルバゾール誘導体である3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールの熱重量測定結果を示す図。
【図15】本発明のカルバゾール誘導体である3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールの熱重量測定結果を示す図。
【図16】本発明のカルバゾール誘導体である3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールのCV特性を示す図。
【図17】本発明のカルバゾール誘導体である3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールのCV特性を示す図。
【図18】本発明のカルバゾール誘導体である3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールの示差走査熱量分析した測定結果を示す図。
【図19】本発明のカルバゾール誘導体である3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾールの示差走査熱量分析した測定結果を示す図。
【図20】3−(N−フェニルアミノ)−9−フェニルカルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図21】3−(N−フェニルアミノ)−9−フェニルカルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図22】本発明のカルバゾール誘導体である3−[N−(1−ナフチル)アミノ]−9−フェニルカルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図23】本発明のカルバゾール誘導体である3−[N−(1−ナフチル)アミノ]−9−フェニルカルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図24】本発明のカルバゾール誘導体である3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図25】本発明のカルバゾール誘導体である3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図26】本発明のカルバゾール誘導体である3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾールの熱重量測定結果を示す図。
【図27】本発明のカルバゾール誘導体である3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾールの吸収スペクトルを示す図。
【図28】本発明のカルバゾール誘導体である3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾールの発光スペクトルを示す図。
【図29】本発明のカルバゾール誘導体である3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾールのCV特性を示す図。
【図30】本発明のカルバゾール誘導体である3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾールの示差走査熱量分析した測定結果を示す図。
【図31】本発明のカルバゾール誘導体である3−{N−[9−(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミノ}−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図32】本発明のカルバゾール誘導体である3−{N−[9−(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミノ}−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの13C−NMRチャートを示す図。
【図33】本発明のカルバゾール誘導体である3−{N−[9−(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミノ}−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの吸収スペクトルを示す図。
【図34】本発明のカルバゾール誘導体である3−{N−[9−(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミノ}−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの発光スペクトルを示す図。
【図35】3,6−ジブロモ−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図36】3,6−ジブロモ−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの13C−NMRチャートを示す図。
【図37】3,6−ビス[N−(1−ナフチル)―N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールのH−NMRチャートを示す図。
【図38】3,6−ビス[N−(1−ナフチル)―N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの13C−NMRチャートを示す図。
【図39】3,6−ビス[N−(1−ナフチル)―N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの吸収スペクトルを示す図。
【図40】3,6−ビス[N−(1−ナフチル)―N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの発光スペクトルを示す図。
【図41】実施例の発光素子を説明する図。
【図42】実施例8で作製した発光素子の電流密度−輝度特性を示す図。
【図43】実施例8で作製した発光素子の電圧−輝度特性を示す図。
【図44】実施例9で作製した発光素子の電流密度−輝度特性を示す図。
【図45】実施例9で作製した発光素子の電圧−輝度特性を示す図。
【図46】実施例10で作製した発光素子の電流密度−輝度特性を示す図。
【図47】実施例10で作製した発光素子の電圧−輝度特性を示す図。
【図48】3−{N−[9−(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミノ}−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールのDSCチャートを示す図。
【図49】3,6−ビス[N−(1−ナフチル)―N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールのDSCチャートを示す図。
【図50】3−{N−[9−(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミノ}−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの吸収スペクトルを示す図。
【図51】3−{N−[9−(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミノ}−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの発光スペクトルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下
の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細
を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示
す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0049】
なお、本発明において発光素子の一対の電極のうち、一対の電極のうち一方の電位が他
方の電極の電位より高くなるように電圧をかけると発光する。このとき、電位が高いほう
の電極を陽極とし、低い電位をもつ他方の電極を陰極とする。
【0050】
(実施の形態1)
本発明のカルバゾール誘導体は、一般式(1)で示される構造を有するものである。
【0051】
【化9】

(式中、R11およびR13は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素、炭素数1
〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、ア
リールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、Ar11は、炭素数6〜
25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基のいずれかを表し、R12は、水素
、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基のいずれかを表し、R14
、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、一般式(2)で示さ
れる置換基のいずれかを表し、一般式(2)で示される置換基において、R15は、水素
、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリ
ール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれかを表し、Ar12は、
炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基のいずれかを表し、R
は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基のいずれかを表す
。)
【0052】
【化10】

【0053】
炭素数1〜6のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n―プロピル
基、n―ブチル基、n―ヘキシル基等が挙げられる。また、iso−プロピル基、ter
t−ブチル基等の分岐を有するアルキル基でもよい。
【0054】
炭素数6〜25のアリール基としては、具体的には、フェニル基、4―ビフェニリル基
、1―ナフチル基、2―ナフチル基、9―アントリル基、9―フェナントリル基、1―ピ
レニル基、9,9’―ジメチル―2―フルオレニル基、スピロ―9,9’―ビフルオレン
―2―イル基等が挙げられる。また、m―トリル基、p―トリル基、2−フルオロフェニ
ル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基等の置換基を有するアリール基
でもよい。
【0055】
炭素数5〜9のヘテロアリール基としては、具体的には、2―ピリジル基、8―キノリ
ル基、3―キノリル基等が挙げられる。
【0056】
アリールアルキル基としては、具体的には、ベンジル基等が挙げられる。
【0057】
炭素数1〜7のアシル基としては、具体的には、アセチル基、ベンゾイル基、プロピオ
ニル基等が挙げられる。
【0058】
上記一般式(1)において、R11およびR13のどちらか一方は、炭素数6〜25の
アリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることが好ましい。より好ましく
は、R11およびR13は、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリー
ル基のいずれかであることが好ましい。カルバゾール骨格の窒素と結合している置換基が
、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることにより
、キャリア輸送性が向上するという効果が得られる。
【0059】
また、上記一般式(1)において、R12は、水素、tert−ブチル基、フェニル基
、ビフェニル基のいずれかであることが好ましい。
【0060】
また、上記一般式(1)において、R14は水素、tert−ブチル基、フェニル基、
ビフェニル基のいずれかであることが好ましい。
【0061】
また、上記一般式(1)において、R14は一般式(2)で示される置換基であること
が好ましい。R14が一般式(2)で示される置換基であることにより、より耐熱性の高
いカルバゾール誘導体を得ることができる。また、一般式(2)において、R15は、炭
素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9のヘテロアリール基であることが好ましい
。カルバゾール骨格の窒素と結合している置換基が、炭素数6〜25のアリール基または
炭素数5〜9のヘテロアリール基であることにより、キャリア輸送性が向上するという効
果が得られる。また、一般式(2)において、R16は水素、tert−ブチル基、フェ
ニル基、ビフェニル基のいずれかであることが好ましい。
【0062】
本発明のカルバゾール誘導体の他の構成は、一般式(3)で示される構造を有するもの
である。
【0063】
【化11】

(式中、R21は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭
素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれ
かを表し、R22は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基の
いずれかを表し、R23は、一般式(4)で示される置換基を表し、一般式(4)で示さ
れる置換基において、R24は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のア
リール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシ
ル基のいずれかを表し、Ar21は、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9のヘテ
ロアリール基のいずれかを表し、R25は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6
〜12のアリール基のいずれかを表す。)
【0064】
【化12】

【0065】
上記構成において、R22は、水素、tert−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基
のいずれかであることが好ましい。
【0066】
また、本発明の他の構成は、一般式(5)で示される構造を有するカルバゾール誘導体
である。
【0067】
【化13】

(式中、R21は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基、炭
素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7のアシル基のいずれ
かを表し、R22およびR23は、一般式(6)で示される置換基を表し、一般式(6)
で示される置換基において、R24は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜2
5のアリール基、炭素数5〜9のヘテロアリール基、アリールアルキル基、炭素数1〜7
のアシル基のいずれかを表し、Ar21は、炭素数6〜25のアリール基、炭素数5〜9
のヘテロアリール基のいずれかを表し、R25は、水素、炭素数1〜6のアルキル基、炭
素数6〜12のアリール基のいずれかを表す。)
【0068】
【化14】

【0069】
上記構成において、R25は、水素、tert−ブチル基、フェニル基、ビフェニル基
のいずれかであることが好ましい。
【0070】
また、上記構成において、R24は、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9
のヘテロアリール基であることが好ましい。
【0071】
また、上記構成において、R21は、炭素数6〜25のアリール基または炭素数5〜9
のヘテロアリール基であることが好ましい。
【0072】
カルバゾール骨格の窒素と結合している置換基が、炭素数6〜25のアリール基または
炭素数5〜9のヘテロアリール基であることにより、キャリア輸送性が向上するという効
果が得られる。
【0073】
また、カルバゾール骨格の6位には、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12
のアリール基が結合していることが好ましい。カルバゾール骨格の6位に、炭素数1〜6
のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基の置換基があることにより、カルバゾー
ル骨格が化学的に安定化し、副反応を抑制することができる。
【0074】
また、本発明の他の構成は、一般式(7)で示される構造を有するカルバゾール誘導体
である。
【0075】
【化15】

(式中、Ar31は、フェニル基またはナフチル基を表す。)
【0076】
また、本発明のカルバゾール誘導体の他の構成は、一般式(8)で示される構造を有す
るものである。
【0077】
【化16】

(式中、Ar41およびAr42は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、フェニル基
またはナフチル基を表す。)
【0078】
また、本発明のカルバゾール誘導体の具体例としては、下記の構造式(9)〜(71)
に示されるカルバゾール誘導体を挙げることができる。ただし、本発明はこれらに限定さ
れない。
【0079】
【化17】

【0080】
【化18】

【0081】
【化19】

【0082】
【化20】

【0083】
【化21】

【0084】
【化22】

【0085】
【化23】

【0086】
【化24】

【0087】
【化25】

【0088】
【化26】

【0089】
【化27】

【0090】
【化28】

【0091】
【化29】

【0092】
【化30】

【0093】
構造式(9)〜(20)に示すカルバゾール誘導体は一般式(1)におけるR12が水
素の場合のものであり、構造式(21)〜(34)に示すカルバゾール誘導体は一般式(
1)におけるR12がアルキル基の場合のものである。
【0094】
構造式(35)〜(48)に示すカルバゾール誘導体は、カルバゾール骨格に同じ置換
基が結合した構造をしており、異なる置換基が結合した構造のカルバゾール誘導体よりも
合成が容易である。つまり、一般式(3)において、R22とR23は一般式(4)で示
される同一の構造を有している場合、カルバゾール骨格に同じ置換基を結合させればよい
ため、合成が容易となる。
【0095】
また、本発明のカルバゾール誘導体は、構造式(49)〜(57)に示すように、フッ
素を有していてもよい。
【0096】
また、構造式(58)〜(69)に示すように、カルバゾール骨格の6位には、炭素数
1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基が結合していることが好ましい。
カルバゾール骨格の6位に、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール
基の置換基があることにより、カルバゾール骨格が化学的に安定化し、副反応を抑制する
ことができる。
【0097】
本発明のカルバゾール誘導体の合成方法としては、種々の反応の適用が可能である。例
えば、下記の反応スキーム(A−1)や反応スキーム(A―2)に示す方法が挙げられる
。ただし、本発明のカルバゾール誘導体の合成方法は、これに限定されることはない。
【0098】
【化31】

【0099】
【化32】

【0100】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に示すカルバゾール誘導体を用いた発光素子について
説明する。
【0101】
本発明における発光素子の構造は、一対の電極間に、発光物質を含む層を有するもので
ある。なお、素子構造については、特に制限はなく、目的に応じて、公知の構造を適宜選
択することができる。
【0102】
なお、本発明のカルバゾール誘導体は、正孔注入性に優れているため、正孔注入性材料
として正孔注入層に用いることが好ましい。また、本発明のカルバゾール誘導体は、正孔
輸送性にも優れているため、正孔輸送性材料として用いることもできる。具体的には、発
光物質を含む層のうち、正孔輸送層、発光層のホスト材料として用いることができる。ま
た、本発明のカルバゾール誘導体は青色系色などの発光を示すことができるため、発光材
料として用いてもよい。具体的には、発光層のゲスト材料として用いることができる。
【0103】
図1に、本発明における発光素子の素子構成の一例を模式的に示す。本実施の形態では
、本発明のカルバゾール誘導体を正孔注入層に用いた場合について説明する。
【0104】
図1に示す発光素子は、第1の電極101と第2の電極103との間に発光物質を含む
層102を有する構成となっている。本実施の形態では、第1の電極101は陽極として
機能し、第2の電極103は陰極として機能する。そして、発光物質を含む層102のう
ち、陽極と接する層104は、本発明のカルバゾール誘導体を含んでいる。つまり、本発
明のカルバゾール誘導体を含む層は、正孔注入層として機能している。
【0105】
陽極としては、公知の材料を用いることができ、仕事関数の大きい(具体的には4.0
eV以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが好まし
い。具体的には、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、
または珪素を含有したインジウム錫酸化物、2〜20wt%の酸化亜鉛(ZnO)を含む
酸化インジウム(IZO:Indium Zinc Oxide)、酸化タングステン及
び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム−酸化スズ(IWZO)等が挙げられる。これらの
導電性金属酸化物膜は、通常スパッタにより成膜される。例えば、酸化亜鉛(ZnO)を
含む酸化インジウム(IZO)は、酸化インジウムに対し1〜20wt%の酸化亜鉛を加
えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。また、酸化タン
グステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム−酸化スズ(IWZO)は、酸化インジ
ウムに対し酸化タングステンを0.5〜5wt%、酸化亜鉛を0.1〜1wt%含有した
ターゲットを用いてスパッタリング法により形成することができる。この他、金(Au)
、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン
(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金
属材料の窒化物(例えば、窒化チタン:TiN)等が挙げられる。
【0106】
一方、陰極としては、公知の材料を用いることができ、仕事関数の小さい(具体的には
3.8eV以下)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いることが
好ましい。具体的には、元素周期律の1族または2族に属する金属、すなわちリチウム(
Li)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム
(Ca)、ストロンチウム(Sr)等のアルカリ土類金属、およびこれらを含む合金(M
gAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属お
よびこれらを含む合金等が挙げられる。ただし、高い電子注入性を有する電子注入層を用
いることにより、仕事関数の高い材料、すなわち、通常は陽極に用いられている材料で陰
極を形成することもできる。例えば、Al、Agなどの金属ITO等などの導電性無機化
合物により陰極を形成することもできる。
【0107】
発光物質を含む層102には、公知の材料を用いることができ、低分子系材料および高
分子系材料のいずれを用いることもできる。なお、発光物質を含む層102を形成する材
料には、有機化合物材料のみから成るものだけでなく、無機化合物を一部に含む構成も含
めるものとする。また、発光物質を含む層は、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層(ホ
ールブロッキング層)、発光層、電子輸送層、電子注入層等を適宜組み合わせて構成され
るが、単層で構成してもよいし、複数の層を積層させた構成としてもよい。
【0108】
また、発光物質を含む層の作製には、蒸着法、インクジェット法、スピンコート法、デ
ィップコート法など、湿式、乾式を問わず、用いることができる。
【0109】
以下に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層に用いる具体的な
材料を示す。
【0110】
正孔注入層を形成する正孔注入性材料としては、本発明のカルバゾール誘導体を用いる
ことができる。本発明のカルバゾール誘導体は優れた正孔注入性を有しており、本発明の
カルバゾール誘導体を正孔注入性材料として用いることにより、発光素子の駆動電圧を低
減することが可能である。
【0111】
また、正孔輸送層を形成する正孔輸送性材料としては、芳香族アミン系(すなわち、ベ
ンゼン環−窒素の結合を有するもの)の化合物が好適である。広く用いられている材料と
して、例えば、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,
1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(以下、TPDと示す)の他、その誘導体であ
る4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(以下
、α−NPDと示す)や、4,4’,4’’−トリス(N−カルバゾリル)−トリフェニ
ルアミン(以下、TCTAと示す)、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−
アミノ)−トリフェニルアミン(以下、TDATAと示す)、4,4’,4’’−トリス
[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(以下、
MTDATAと示す)などのスターバースト型芳香族アミン化合物が挙げられる。
【0112】
また、本発明のカルバゾール誘導体は正孔輸送性に優れているため、正孔輸送材料とし
て用いることができる。
【0113】
また、発光層を形成する発光性材料としては、具体的には、トリス(8−キノリノラト
)アルミニウム(以下、Alqと示す)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)ア
ルミニウム(以下、Almqと示す)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリ
ナト)ベリリウム(以下、BeBqと示す)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)
−(4−ヒドロキシ−ビフェニリル)−アルミニウム(以下、BAlqと示す)、ビス[
2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾオキサゾラト]亜鉛(以下、Zn(BOX)
と示す)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾチアゾラト]亜鉛(以下、Z
n(BTZ)と示す)などの金属錯体の他、各種蛍光色素が有効である。
【0114】
なお、ゲスト材料と組み合わせて発光層を形成する場合には、ゲスト材料としては、具
体的には、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル
)−4H−ピラン(略称:DCM1)、4−(ジシアノメチレン)−2−メチル−6−(
ジュロリジン−4−イル−ビニル)−4H−ピラン(略称:DCM2)、N,N−ジメチ
ルキナクリドン(略称:DMQd)、9,10−ジフェニルアントラセン、5,12−ジ
フェニルテトラセン(略称:DPT)、クマリン6、ペリレン、ルブレンなどの一重項発
光材料(蛍光材料)の他、ビス(2−(2’−ベンゾチエニル)ピリジナト−N,C
)(アセチルアセトナト)イリジウム(略称:Ir(btp)(acac))などの三
重項発光材料(燐光材料)も用いることができる。
【0115】
なお、本発明のカルバゾール誘導体は、青色などの発光を示すことができる発光性材料
であるので、発光層のゲスト材料としても用いることも可能である。なお、本発明のカル
バゾール誘導体は、青色以外の発光色を示すこともできるため、青色に発光する発光素子
に限定されることはない。
【0116】
また、本発明のカルバゾール誘導体は、正孔輸送性に優れているため、発光層のホスト
材料として用いることもできる。
【0117】
電子輸送層を形成する電子輸送性材料としては、先に述べたAlq、トリス(5−メ
チル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(2−メチル−8−
キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)、トリス(
8−キノリノラト)ガリウム(略称:Gaq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト
)−4−フェニルフェノラト−ガリウム(略称:BGaq)、ビス(10−ヒドロキシベ
ンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム略称:BeBq)、ビス[2−(2−ヒドロキシ
フェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒ
ドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などの金属錯体
が挙げられる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−te
rt−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−
ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イ
ル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェ
ニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(
4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリ
ル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略
称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)等を用いることができる。
【0118】
電子注入層に用いることができる電子注入性材料としては、上述した電子輸送性材料を
用いることができる。その他に、LiF、CsFなどのアルカリ金属ハロゲン化物や、C
aFのようなアルカリ土類ハロゲン化物、LiOなどのアルカリ金属酸化物のような
絶縁体の超薄膜がよく用いられる。また、リチウムアセチルアセトネート(略称:Li(
acac))や8−キノリノラト−リチウム(略称:Liq)などのアルカリ金属錯体も
有効である。さらに、上述した電子輸送性材料と、Mg、Li、Cs等の仕事関数の小さ
い金属とを混合した層を電子注入層として使用することもできる。また、モリブデン酸化
物(MoOx)やバナジウム酸化物(VOx)、ルテニウム酸化物(RuOx)、タング
ステン酸化物(WOx)等の金属酸化物またはベンゾオキサゾール誘導体と、アルカリ金
属、アルカリ土類金属、または遷移金属のいずれか一または複数の材料とを含むようにし
ても良い。また酸化チタンを用いていても良い。
【0119】
本発明のカルバゾール誘導体は、HOMO準位が高い。よって、仕事関数の大きい材料
により形成されている陽極からの正孔注入障壁が小さく、正孔が注入されやすい。従って
、陽極と接する層に本発明のカルバゾール誘導体を含ませることにより駆動電圧を低減す
ることができる。
【0120】
また、本発明のカルバゾール誘導体は、LUMO準位も高い。そのため電子注入障壁が
高く、陽極側へ電子が突き抜けることを抑制することができる。よって、キャリアの再結
合の確率が高くなり、発光効率が向上する。つまり、キャリアの再結合の確率が高くなる
ことにより、ある輝度を達成するために必要な電流が少なくて済む。
【0121】
さらに、低電圧駆動および低電流駆動が可能となることにより、発光素子の長寿命化、
信頼性向上という効果も得られる。
【0122】
また、本発明のカルバゾール誘導体は、ガラス転移点が高く、良好なアモルファス状態
の膜を高温においても維持することができるため、耐熱性の高い膜を得ることができる。
よって、本発明のカルバゾール誘導体を発光素子に用いることにより、耐熱性の高い発光
素子を得ることができる。
【0123】
また、本発明のカルバゾール誘導体は、酸化反応に対して極めて安定であるため、本発
明のカルバゾール誘導体を発光素子に用いることにより、信頼性の高い発光素子を得るこ
とができる。
【0124】
(実施の形態3)
本実施の形態では、実施の形態2とは異なり、本発明のカルバゾール誘導体を正孔輸送
層として用いた場合について図2を用いて説明する。
【0125】
図2に示す発光素子は、第1の電極201と第2の電極203との間に発光物質を含む
層202を有する構成となっている。本実施の形態では、第1の電極201は陽極として
機能し、第2の電極203は陰極として機能する。そして、発光物質を含む層202のう
ち、発光層211よりも陽極側の層204に、本発明のカルバゾール誘導体を含む層を有
する。本発明のカルバゾール誘導体を含む層は、正孔輸送層として機能する。
【0126】
図2の構成のように、本発明のカルバゾール誘導体を正孔輸送層として用いる場合には
、正孔注入層を形成する正孔注入性材料として公知の材料を用いることができる。具体的
には、有機化合物であればポルフィリン系の化合物が有効であり、フタロシアニン(略称
:H−Pc)、銅フタロシアニン(略称:Cu−Pc)等を用いることができる。また
、導電性高分子化合物に化学ドーピングを施した材料もあり、ポリスチレンスルホン酸(
略称:PSS)をドープしたポリエチレンジオキシチオフェン(略称:PEDOT)や、
ポリアニリン(略称:PAni)などを用いることもできる。また、VO、MoO
ような無機半導体層や、Alなどの無機絶縁体の超薄膜も有効である。
【0127】
なお、本発明のカルバゾール誘導体を含む層は、発光層211よりも陽極側の層204
に含まれていればよく、発光層211と接していてもよいし、接していなくともよい。ま
た、本発明のカルバゾール誘導体を含む層を第1の電極201と接しないように設けても
よいし、本発明のカルバゾール誘導体を含む層を第1の電極201と接するように設けて
、正孔注入層と正孔輸送層の機能を兼ねるようにしてもよい。
【0128】
本発明のカルバゾール誘導体は、正孔輸送性に優れているため、正孔輸送層として用い
ることにより発光素子の駆動電圧を低減することができる。
【0129】
また、本発明のカルバゾール誘導体はLUMO準位が高いため、電子注入障壁が高く、
陽極側へ電子が突き抜けることを抑制することができる。よって、キャリアの再結合の確
率が高くなり、発光効率が向上する。つまり、キャリアの再結合の確率が高くなることに
より、ある輝度を達成するために必要な電流が少なくて済む。
【0130】
また、本発明のカルバゾール誘導体は、ガラス転移点が高く、良好なアモルファス状態
の膜を高温においても維持することができるため、耐熱性の高い膜を得ることができる。
よって、本発明のカルバゾール誘導体を発光素子に用いることにより、耐熱性の高い発光
素子を得ることができる。
【0131】
また、本発明のカルバゾール誘導体は、酸化反応に対して極めて安定であるため、本発
明のカルバゾール誘導体を発光素子に用いることにより、信頼性の高い発光素子を得るこ
とができる。
【0132】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明のカルバゾール誘導体を発光層として用いた場合について図
3を用いて説明する。
【0133】
図3に示す発光素子は、第1の電極301と第2の電極303との間に発光物質を含む
層302を有する構成となっている。本実施の形態では、第1の電極301は陽極として
機能し、第2の電極303は陰極として機能する。そして、発光物質を含む層302のう
ち、発光層304は、本発明のカルバゾール誘導体を含んでいる。本発明のカルバゾール
誘導体は優れた正孔輸送性を有するため、発光層のホスト材料として用いることができる
。また、本発明のカルバゾール誘導体は、青色等の発光を示すため発光材料として用いる
こともできる。
【0134】
なお、本発明のカルバゾール誘導体を発光層のホスト材料として用いる場合には、本発
明のカルバゾール誘導体を含む層を正孔輸送層と兼ねるように設けてもよい。また、第1
の電極301と発光層304とに挟まれる層305に、本発明のカルバゾール誘導体を含
むように構成することも可能である。
【0135】
本発明のカルバゾール誘導体は、正孔輸送性に優れているため、発光層のホスト材料と
して用いることにより発光素子の駆動電圧を低減することができる。
【0136】
また、本発明のカルバゾール誘導体はLUMO準位が高いため、電子注入障壁が高く、
陽極側へ電子が突き抜けることを抑制することができる。よって、キャリアの再結合の確
率が高くなり、発光効率が向上する。つまり、キャリアの再結合の確率が高くなることに
より、ある輝度を達成するために必要な電流が少なくて済む。
【0137】
また、本発明のカルバゾール誘導体は、ガラス転移点が高く、良好なアモルファス状態
の膜を高温においても維持することができるため、耐熱性の高い膜を得ることができる。
よって、本発明のカルバゾール誘導体を発光素子に用いることにより、耐熱性の高い発光
素子を得ることができる。
【0138】
また、本発明のカルバゾール誘導体は、酸化反応に対して極めて安定であるため、本発
明のカルバゾール誘導体を発光素子に用いることにより、信頼性の高い発光素子を得るこ
とができる。
【0139】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明のカルバゾール誘導体を用いた発光素子を有する発光装置に
ついて説明する。
【0140】
本実施の形態では、画素部に本発明の発光素子を有する発光装置について図4を用いて
説明する。なお、図4(A)は、発光装置を示す上面図、図4(B)は図4(A)をA−
A’およびB−B’で切断した断面図である。点線で示された601は駆動回路部(ソー
ス側駆動回路)、602は画素部、603は駆動回路部(ゲート側駆動回路)である。ま
た、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空
間607になっている。
【0141】
なお、引き回し配線608はソース側駆動回路601及びゲート側駆動回路603に入
力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプ
リントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号
等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント
配線基盤(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置の範疇には
、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含む
ものとする。
【0142】
次に、断面構造について図4(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路
部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース側駆動回路601
と、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0143】
なお、ソース側駆動回路601はnチャネル型TFT623とpチャネル型TFT62
4とを組み合わせたCMOS回路が形成される。また、TFTにより構成される駆動回路
は、公知のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成しても良い。また、
本実施例では、基板上に駆動回路を形成したドライバー一体型を示すが、必ずしもその必
要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0144】
また、画素部602はスイッチング用TFT611と、電流制御用TFT612とその
ドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成される。
なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ
型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより絶縁物614を形成する。
【0145】
また、被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有
する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性ア
クリルを用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm〜3μm)を有
する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、光の照射によってエッ
チャントに不溶解性となるネガ型、或いは光の照射によってエッチャントに溶解性となる
ポジ型のいずれも使用することができる。
【0146】
第1の電極613上には、発光物質を含む層616、および第2の電極617がそれぞ
れ形成されている。ここで、陽極として機能する第1の電極613に用いる材料としては
、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、または珪素を含有
したインジウム錫酸化物膜、2〜20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チ
タン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、窒化チタンとア
ルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と
窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線とし
ての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させること
ができる。
【0147】
また、発光物質を含む層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、ス
ピンコート法等の公知の方法によって形成される。発光物質を含む層616には、本発明
のカルバゾール誘導体が含まれている。また、本発明のカルバゾール誘導体と組み合わせ
て用いる材料としては、低分子系材料、中分子材料(オリゴマー、デンドリマーを含む)
、または高分子系材料であっても良い。また、発光物質を含む層に用いる材料としては、
通常、有機化合物を単層もしくは積層で用いる場合が多いが、本発明においては、有機化
合物からなる膜の一部に無機化合物を用いる構成も含めることとする。
【0148】
なお、本発明のカルバゾール誘導体は優れた正孔注入性を有しているため、正孔注入性
材料として用いることが好ましい。また、本発明のカルバゾール誘導体は正孔輸送性にも
優れているため、正孔輸送性材料として用いることもできる。
【0149】
さらに、発光物質を含む層616上に形成される第2の電極(陰極)617に用いる材
料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、またはこれらの合金や化
合物、MgAg、MgIn、AlLi、CaF、LiF、窒化カルシウム)を用いるこ
とが好ましい。なお、発光物質を含む層616で生じた光が第2の電極617を透過させ
る場合には、第2の電極(陰極)617として、膜厚を薄くした金属薄膜と、透明導電膜
(ITO)、2〜20%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、珪素を含有したインジウム錫
酸化物、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが良い。
【0150】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、
素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に発光素
子618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されてお
り、不活性気体(窒素やアルゴン等)が充填される場合の他、シール材605で充填され
る場合もある。
【0151】
なお、シール材605にはエポキシ系樹脂を用いるのが好ましい。また、これらの材料
はできるだけ水分や酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604
に用いる材料としてガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiberglass−Rei
nforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、マイラー、ポ
リエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0152】
以上のようにして、本発明の発光素子を有する発光装置を得ることができる。
【0153】
本発明の発光装置は、正孔注入性および正孔輸送性に優れたカルバゾール誘導体を用い
た発光素子を有するため、発光素子の低電圧駆動および低電流駆動が可能であり、発光装
置の長寿命化、信頼性向上が可能となる。
【0154】
また、発光装置の低電圧駆動および低電流駆動が可能であるため、消費電力の低減も実
現できる。
【0155】
また、本発明のカルバゾール誘導体は、ガラス転移点が高く、良好なアモルファス状態
の膜を高温においても維持することができるため、耐熱性の高い膜を得ることができる。
また、本発明のカルバゾール誘導体は、酸化反応に対して極めて安定である。よって、本
発明のカルバゾール誘導体を発光装置に用いることにより、信頼性の高い発光装置を得る
ことができる。
【0156】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の発光素子を用いて作製された発光装置をその一部に含む様
々な電気機器について説明する。
【0157】
本発明の発光素子を有する発光装置を用いて作製された電気機器として、ビデオカメラ
、デジタルカメラのようなカメラ、ゴーグル型ディスプレイ、ナビゲーションシステム、
音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携
帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記
録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDigital Versatile Dis
c(DVD)等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうる表示装置を備えた装置)など
が挙げられる。これらの電気機器の具体例を図5に示す。
【0158】
図5(A)はテレビ受像機であり、筐体9101、支持台9102、表示部9103、
スピーカー部9104、ビデオ入力端子9105等を含む。本発明の発光素子を有する発
光装置をその表示部9103に用いることにより作製される。本発明の発光装置を用いる
ことにより、長寿命、低消費電力で、信頼性の高い表示部を有するテレビ受像機を得るこ
とができる。なお、テレビ受像機は、コンピュータ用、TV放送受信用、広告表示用など
の全ての情報表示用装置が含まれる。
【0159】
図5(B)はコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部9203、キ
ーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングマウス9206等を含む。
本発明の発光素子を有する発光装置をその表示部9203に用いることにより作製される
。本発明の発光装置を用いることにより、長寿命、低消費電力で、信頼性の高い表示部を
有するコンピュータを得ることができる。
【0160】
図5(C)はゴーグル型ディスプレイであり、本体9301、表示部9302、アーム
部9303を含む。本発明の発光素子を有する発光装置をその表示部9302に用いるこ
とにより作製される。本発明の発光装置を用いることにより、長寿命、低消費電力で、信
頼性の高い表示部を有するゴーグル型ディスプレイを得ることができる。
【0161】
図5(D)は携帯電話であり、本体9401、筐体9402、表示部9403、音声入
力部9404、音声出力部9405、操作キー9406、外部接続ポート9407、アン
テナ9408等を含む。本発明の発光素子を有する発光装置をその表示部9403に用い
ることにより作製される。本発明の発光装置を用いることにより、長寿命、低消費電力で
、信頼性の高い表示部を有する携帯電話を得ることができる。なお、表示部9403は黒
色の背景に白色の文字を表示することで携帯電話の消費電力を抑えることができる。
【0162】
図5(E)はカメラであり、本体9501、表示部9502、筐体9503、外部接続
ポート9504、リモコン受信部9505、受像部9506、バッテリー9507、音声
入力部9508、操作キー9509、接眼部9510等を含む。本発明の発光素子を有す
る発光装置をその表示部9502に用いることにより作製される。本発明の発光装置を用
いることにより、長寿命、低消費電力で、信頼性の高い表示部を有するカメラを得ること
ができる。
【0163】
以上の様に、本発明の発光素子を有する発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装
置をあらゆる分野の電気機器に適用することが可能である。本発明の発光素子を有する発
光装置を用いることにより、長寿命、低消費電力で、信頼性の高い電気機器を提供するこ
とが可能となる。
【実施例1】
【0164】
本発明のカルバゾール誘導体の一例として、構造式(12)で示される3−[N−(9
−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾー
ル(略称:PCzPCA1)の合成方法について説明する。
【0165】
【化33】

【0166】
[ステップ1]
まず、3−ブロモ−9−フェニルカルバゾールの合成方法について説明する。3−ブロ
モ−9−フェニルカルバゾールの合成スキームを(A−3)に示す。
【0167】
【化34】

【0168】
9−フェニルカルバゾール24.3g(100mmol)を氷酢酸600mLに溶かし
、N−ブロモコハク酸イミド17.8g(100mmol)をゆっくり加え、室温で一晩
撹拌した。この氷酢酸溶液を氷水1Lに撹拌しながら滴下した。析出した白色固体を水で
3回洗浄した。この固体をジエチルエーテル150mLに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウ
ム水溶液、水で洗浄した。この有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。これを濾過し、
得られたろ液を濃縮した。得られた濃縮液にメタノールを約50mLを加え、均一に溶解
させた。この溶液を静置することで白色固体が析出した。この固体を回収し乾燥させる事
で、白色粉末の3−ブロモ−9−フェニルカルバゾールを28.4g(収率88%)を得
た。
【0169】
[ステップ2]
次に、3−(N−フェニルアミノ)−9−フェニルカルバゾール(略称:PCA)の合
成方法について説明する。PCAの合成スキームを(A−4)に示す。
【0170】
【化35】

【0171】
窒素雰囲気下で、3−ブロモ−9−フェニルカルバゾール19g(60mmol)、ビ
ス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)340mg(0.6mmol)、1,1
−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン1.6g(3.0mmol)、ナトリウム−
tert−ブトキシド13g(180mmol)の混合物に、脱水キシレン110mL、
アニリン7.0g(75mmol)を加えた。これを窒素雰囲気下にて90℃、7.5時
間加熱撹拌した。反応終了後、この懸濁液に温めたトルエン約500mLを加え、これを
フロリジール、アルミナ、セライトを通して濾過した。得られたろ液を濃縮し、この濃縮
液をヘキサン−酢酸エチルを加えて超音波を照射した。得られた懸濁液を濾過し、このろ
物を乾燥し、クリーム色粉末の3−(N−フェニルアミノ)−9−フェニルカルバゾール
15g(収率75%)を得た。NMRのデータを以下に示す。H−NMR(300MH
z、CDCl):δ=6.84(t、j=6.9、1H)、6.97(d、j=7.8
、2H)、7.20−7.61(m、13H)、7.90(s、1H)、8.04(d、
j=7.8、1H)。また、H−NMRのチャートを図20に、図20における5.0
〜9.0ppmの部分を拡大したものを図21に示す。
【0172】
[ステップ3]
3−ヨード−9−フェニルカルバゾールの合成方法について説明する。3−ヨード−9
−フェニルカルバゾールの合成スキームを(A−5)に示す。
【0173】
【化36】

【0174】
9−フェニルカルバゾール24.3g(100mmol)を氷酢酸600mLに溶かし
、N−ヨードコハク酸イミド22.5g(100mmol)をゆっくり加え、室温で一晩
撹拌した。生じた析出物を濾過し、ろ物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、メタノー
ルで洗浄した後、乾燥させた。白色粉末の3−ヨード−9−フェニルカルバゾール24.
7g(収率67%)を得た。
【0175】
なお、3−ヨード−9−フェニルカルバゾールは以下に示す方法を用いても合成するこ
とができる。3−ヨード−9−フェニルカルバゾールの合成スキームを(A−5b)に示
す。
【0176】
【化37】

【0177】
9−フェニルカルバゾール10g(10.0mmol)、ヨウ化カリウム838mg(
5.0mmol)、ヨウ素酸カリウム1.1g(5.0mmol)、氷酢酸30mLを三
口フラスコに入れ、120℃で1時間還流した。反応後、反応溶液を十分さましてから水
に加えて、トルエンで抽出し、有機層を飽和食塩水で1回洗浄してから硫酸マグネシウム
により乾燥した。この溶液を自然濾過し、得られたろ液を濃縮してから、アセトン、メタ
ノールにより再結晶したところ、目的物の白色固体を8.0g、収率50%で得た。
【0178】
合成スキーム(A−5b)に示す合成方法を用いることにより、より安価な材料を用い
て、3−ヨード−9−フェニルカルバゾールを合成することができるため、コストの削減
が可能である。
【0179】
[ステップ4]
3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フ
ェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)の合成方法について説明する。PCzPC
A1の合成スキームを(A−6)に示す。
【0180】
【化38】

【0181】
窒素下で、3−ヨード−9−フェニルカルバゾール3.7g(10mmol)、PCA
3.4g(10mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)57m
g(0.1mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン49wt%ヘキサン溶液0.
2mL(0.5mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド3.0g(30mmol
)の混合物に、脱水キシレン40mLを加えた。これを窒素雰囲気下にて90℃、6.5
時間加熱撹拌した。反応終了後、この懸濁液に温めたトルエン約500mLを加え、これ
をフロリジール、アルミナ、セライトを通して濾過した。得られたろ液を濃縮し、この濃
縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘキサン=1:1)にて精製し
た。これを濃縮し、得られた濃縮液に酢酸エチル−ヘキサンを加えて再結晶を行った。ク
リーム色粉末の3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミ
ノ]−9−フェニルカルバゾール3.2g(収率56%)を得た。NMRのデータを以下
に示す。H−NMR(300MHz、DMSO−d):δ=6.85(t、J=7.5
、1H)、6.92(d、J=7.8、2H)、7.17−7.70(m、22H)、8
.05(d、J=2.1、2H)、8.12(d、J=7.8、2H)。また、H−N
MRのチャートを図6に、図6における6.50〜8.50ppmの部分を拡大したもの
を図7に示す。
【0182】
得られたPCzPCA1の熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogr
avimetry−Differential Thermal Analysis)を
行った。その結果を図14に示す。図14において、左側の縦軸は熱量(μV)を表し、
右側の縦軸は重量(%;測定開始時の重量を100%として表した重量)を表す。さらに
、下側の横軸は、温度(℃)を表す。なお、測定には示差熱熱重量同時測定装置(セイコ
ー電子工業株式会社製,TG/DTA 320型)を用い、窒素雰囲気下、10℃/mi
nの昇温速度で熱物性を評価した。その結果、重量と温度の関係(熱重量測定)から、常
圧下で、測定開始時における重量に対し95%以下の重量になる温度は、375℃であっ
た。
【0183】
また、PCzPCA1のトルエン溶液およびPCzPCA1の薄膜の吸収スペクトルを
図8に示す。測定には、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用い
た。溶液は石英セルに入れ、薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製し、それぞれ石英
の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図8に示した。図8において横軸は波長
(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。最大吸収波長はトルエン溶液の場合では
320nm、薄膜の場合で321nmであった。また、PCzPCA1のトルエン溶液お
よびPCzPCA1の薄膜の発光スペクトルを図9に示す。図9において横軸は波長(n
m)、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。最大発光波長はトルエン溶液の場合では43
5nm(励起波長325nm)、薄膜の場合で443nm(励起波長380nm)であっ
た。
【0184】
また、PCzPCA1の薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を行った
。HOMO準位の値は、光電子分光装置(理研計器(株)製、AC−2)を用いて測定し
たイオン化ポテンシャルの値を、負の値に換算することにより得た。また、LUMO準位
の値は、図8における薄膜の吸収端をエネルギーギャップとし、HOMO準位の値に加算
することにより得た。その結果、HOMO準位とLUMO準位はそれぞれ−5.17eV
と−1.82eVであった。
【0185】
また、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定により、PCzPCA1の酸化反応特
性について調べた。なお測定には、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、
型番:ALSモデル600A)を用いた。
【0186】
CV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)を用い、支
持電解質である過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−BuNClO)を1
00mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象であるPCzPCA1を
1mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。また、作用電極としては白金電
極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー
・エー・エス(株)製、VC−3用Ptカウンター電極(5cm))を、基準電極として
はAg/Ag電極(ビー・エー・エス(株)製、RE5非水溶媒系参照電極)をそれぞ
れ用いた。
【0187】
酸化反応特性については次のようにして調べた。
基準電極に対する作用電極の電位を−0.16から0.5Vまで変化させた後、0.5
Vから−0.16Vまで変化させる走査を1サイクルとし、100サイクル測定した。な
お、CV測定のスキャン速度は0.1V/sに設定した。
【0188】
PCzPCA1の酸化反応特性について調べた結果を図16に示す。図16において、
横軸は基準電極に対する作用電極の電位(V)を表し、縦軸は作用電極と補助電極との間
に流れた電流値(1×10−6A)を表す。
図16から酸化電位は0.27V(vs.Ag/Ag電極)であることが分かった。
また、100サイクルもの走査を繰り返しているにもかかわらず、酸化反応においてはC
V曲線のピーク位置やピーク強度にほとんど変化が見られない。このことから、本発明の
カルバゾール誘導体は酸化反応に対して極めて安定であることが分かった。
【0189】
また、得られた化合物PCzPCA1のガラス転移温度について、示差走査熱量分析装
置(DSC:Differential Scanning Calorimetry、
パーキンエルマー製、型番:Pyris1 DSC)を用いて調べた。DSCによる測定
結果を図18に示す。測定結果から、得られた化合物のガラス転移温度は112℃である
ことが分かった。このように、得られた化合物は、112℃という高いガラス転移温度を
示し、良好な耐熱性を有するものである。また、図18において、得られた化合物の結晶
化を表すピークは存在せず、得られた化合物は結晶化し難い物質であることが分かった。
【実施例2】
【0190】
本発明のカルバゾール誘導体の一例として、構造式(38)で示される3,6−ビス[
N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカ
ルバゾール(略称:PCzPCA2)の合成方法について説明する。
【0191】
【化39】

【0192】
[ステップ1]
3,6−ジヨード−9−フェニルカルバゾールの合成方法について説明する。3,6−
ジヨード−9−フェニルカルバゾールの合成スキームを(A−7)に示す。
【0193】
【化40】

【0194】
9−フェニルカルバゾール24.3g(100mmol)を氷酢酸700mLに溶かし
、N−ヨードコハク酸イミド44.9g(200mmol)をゆっくり加え、室温で一晩
撹拌した。生じた析出物を濾過し、ろ物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液、水、メタノール
で洗浄した後、乾燥させた。白色粉末の3,6−ジヨード−9−フェニルカルバゾール4
7.0g(収率95%)を得た。
【0195】
[ステップ2]
3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]
−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)の合成方法について説明する。P
CzPCA2の合成スキームを(A−8)に示す。
【0196】
【化41】

【0197】
窒素下で、3,6−ジヨード−9−フェニルカルバゾール2.5g(5mmol)、P
CA 3.4g(10mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)3
0mg(0.05mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン49wt%ヘキサン溶
液0.2mL(0.5mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド3.0g(30m
mol)の混合物に、脱水キシレン30mLを加えた。これを窒素雰囲気下にて90℃、
6.5時間加熱撹拌した。反応終了後、この懸濁液に温めたトルエン約500mLを加え
、これをフロリジール、アルミナ、セライトを通して濾過した。得られたろ液を濃縮し、
この濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘキサン=1:1)にて
精製した。これを濃縮し、得られた濃縮液に酢酸エチル−ヘキサンを加えて再結晶を行っ
た。クリーム色粉末の3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N
−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール2.5g(収率55%)を得た。NMR
のデータを以下に示す。H−NMR(300MHz、DMSO−d):δ=6.74−
6.80(m、6H)、7.08−7.64(m、33H)、7.94−8.04(m、
6H)。また、H−NMRのチャートを図10に、図10における6.50〜8.50
ppmの部分を拡大したものを図11に示す。
【0198】
得られたPCzPCA2の熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogr
avimetry−Differential Thermal Analysis)を
行った。その結果を図15に示す。図15において、左側の縦軸は熱量(μV)を表し、
右側の縦軸は重量(%;測定開始時の重量を100%として表した重量)を表す。さらに
、下側の横軸は、温度(℃)を表す。なお、測定には示差熱熱重量同時測定装置(セイコ
ー電子工業株式会社製,TG/DTA 320型)を用い、窒素雰囲気下、10℃/mi
nの昇温速度で熱物性を評価した。その結果、重量と温度の関係(熱重量測定)から、常
圧下で、測定開始時における重量に対し95%以下の重量になる温度は、476℃であっ
た。
【0199】
また、PCzPCA2のトルエン溶液およびPCzPCA2の薄膜の吸収スペクトルを
図12に示す。測定には、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用
いた。溶液は石英セルに入れ、薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製し、それぞれ石
英の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図12に示した。図12において横軸
は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。最大吸収波長はトルエン溶液の場
合では320nm、薄膜の場合では320nmであった。また、PCzPCA2のトルエ
ン溶液および薄膜の発光スペクトルを図13に示す。図13において横軸は波長(nm)
、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。最大発光波長はトルエン溶液の場合では442n
m(励起波長325nm)、薄膜の場合で449nm(励起波長320nm)であった。
【0200】
また、PCzPCA2の薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を行った
。HOMO準位の値は、光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)を用いて測定したイ
オン化ポテンシャルの値を、負の値に換算することにより得た。また、LUMO準位の値
は、図12における薄膜の吸収端をエネルギーギャップとし、HOMO準位の値に加算す
ることにより得た。その結果、HOMO準位とLUMO準位はそれぞれ−5.10eVと
−1.75eVであった。
【0201】
また、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定により、PCzPCA2の酸化特性に
ついて調べた。なお測定には、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番
:ALSモデル600A)を用いた。
【0202】
CV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)を用い、支
持電解質である過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−BuNClO)を1
00mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象であるPCzPCA2を
1mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。また、作用電極としては白金電
極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー
・エー・エス(株)製、VC−3用Ptカウンター電極(5cm))を、基準電極として
はAg/Ag電極(ビー・エー・エス(株)製、RE5非水溶媒系参照電極)をそれぞ
れ用いた。
【0203】
酸化反応特性については次のようにして調べた。基準電極に対する作用電極の電位を−
0.01から0.33Vまで変化させた後、0.33Vから−0.01Vまで変化させる
走査を1サイクルとし、100サイクル測定した。なお、CV測定のスキャン速度は0.
1V/sに設定した。
【0204】
PCzPCA2の酸化反応特性について調べた結果を図17に示す。図17において、
横軸は基準電極に対する作用電極の電位(V)を表し、縦軸は作用電極と補助電極との間
に流れた電流値(1×10−6A)を表す。
図17から酸化電位は0.22V(vs.Ag/Ag電極)であることが分かった。
また、100サイクルもの走査を繰り返しているにもかかわらず、酸化反応においてはC
V曲線のピーク位置やピーク強度にほとんど変化が見られない。このことから、本発明の
カルバゾール誘導体は酸化に対して極めて安定であることが分かった。
【0205】
また、得られた化合物PCzPCA2のガラス転移温度について、示差走査熱量分析装
置(DSC:Differential Scanning Calorimetry、
パーキンエルマー製、型番:Pyris1 DSC)を用いて調べた。DSCによる測定
結果を図19に示す。測定結果から、得られた化合物のガラス転移温度は168℃である
ことが分かった。このように、得られた化合物は、168℃という高いガラス転移温度を
示し、良好な耐熱性を有するものである。また、図19において、得られた化合物の結晶
化を表すピークは存在せず、得られた化合物は結晶化し難い物質であることが分かった。
【実施例3】
【0206】
本発明のカルバゾール誘導体の一例として、構造式(17)で示される3−[N−(1
−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカ
ルバゾール(略称:PCzPCN1)の合成方法について説明する。
【0207】
【化42】

【0208】
[ステップ1]
まず、3−[N−(1−ナフチル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PC
N)の合成方法について説明する。PCNの合成スキームを(A−9)に示す。
【0209】
【化43】

【0210】
窒素下で、3−ヨード−9−フェニルカルバゾールの3.7g(10mmol)、1−
アミノナフタレン1.6g(5mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム
(0)60mg(0.1mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン49wt%ヘキ
サン溶液0.2mL(0.5mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド3g(30
mmol)の混合物に、脱水キシレン12mLを加えた。これを窒素雰囲気下にて90℃
、7時間加熱撹拌した。反応終了後、この懸濁液に温めたトルエン約200mLを加え、
これをフロリジール、アルミナ、セライトを通して濾過した。得られたろ液を濃縮し、こ
の濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘキサン=1:1)にて精
製した。これを濃縮し、得られた濃縮液を酢酸エチル−ヘキサンで再結晶を行った。クリ
ーム色粉末の3−[N−(1−ナフチル)アミノ]−9−フェニルカルバゾールを得た。
1.5g、収率79%だった。NMRのデータを以下に示す。H−NMR(300MH
z、DMSO−d):δ=7.13−7.71(m、15H)、7.85−7.88(m
、1H)、8.03(s、1H)、8.15(d、J=7.8、1H)、8.24(s、
1H)、8.36−8.39(m、1H)。また、H−NMRのチャートを図22に、
図22における6.50〜8.50ppmの部分を拡大したものを図23に示す。
【0211】
[ステップ2]
次に、3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)ア
ミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)の合成方法について説明す
る。PCzPCN1の合成スキームを(A−10)に示す。
【0212】
【化44】

【0213】
窒素下で、3−ヨード−9−フェニルカルバゾールの1.8g(5mmol)、PCN
2.5g(6.6mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)30m
g(0.05mmol)、トリ−tert−ブチルホスフィン49wt%ヘキサン溶液0
.2mL(0.5mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド700mg(7mmo
l)の混合物に、脱水キシレン7mLを加えた。これを窒素雰囲気下にて90℃、4.5
時間加熱撹拌した。反応終了後、この懸濁液に温めたトルエン約500mLを加え、これ
をフロリジール、アルミナ、セライトを通して濾過した。得られたろ液を濃縮し、この濃
縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘキサン=1:1)にて精製し
た。これを濃縮し、得られた濃縮液を酢酸エチル−ヘキサンで再結晶を行った。黄色粉末
のPCzPCN1 2.1g(収率62%)を得た。NMRのデータを以下に示す。
−NMR(300MHz、DMSO−d):δ=7.04−7.65(m、24H)、7
.78(d、J=8.4、1H)、7.82(d、J=2.1、2H)、7.88(d、
J=7.8、2H)、7.95(d、J=8.4、1H)、8.10(d、J=9.0、
1H)。また、H−NMRのチャートを図24に、図24における6.50〜8.50
ppmの部分を拡大したものを図25に示す。
【0214】
得られたPCzPCN1の熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogr
avimetry−Differential Thermal Analysis)を
実施例1および実施例2と同様に行った。その結果を図26に示す。図26において、左
側の縦軸は熱量(μV)を表し、右側の縦軸は重量(%;測定開始時の重量を100%と
して表した重量)を表す。さらに、下側の横軸は、温度(℃)を表す。なお、測定には示
差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子工業株式会社製,TG/DTA 320型)を用
い、窒素雰囲気下、10℃/minの昇温速度で熱物性を評価した。その結果、重量と温
度の関係(熱重量測定)から、常圧下で、測定開始時における重量に対し95%以下の重
量になる温度は、400℃であった。
【0215】
また、PCzPCN1のトルエン溶液およびPCzPCN1の薄膜の吸収スペクトルを
図27に示す。測定には、紫外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用
いた。溶液は石英セルに入れ、薄膜は石英基板に蒸着してサンプルを作製し、それぞれ石
英の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図27に示した。図27において横軸
は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。最大吸収波長はトルエン溶液の場
合では314nm、薄膜の場合では320nmであった。また、PCzPCN1のトルエ
ン溶液および薄膜の発光スペクトルを図28に示す。図28において横軸は波長(nm)
、縦軸は発光強度(任意単位)を表す。最大発光波長はトルエン溶液の場合では475n
m(励起波長320nm)、薄膜の場合で485nm(励起波長320nm)であった。
【0216】
また、PCzPCN1の薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を行った
。HOMO準位の値は、光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)を用いて測定したイ
オン化ポテンシャルの値を、負の値に換算することにより得た。また、LUMO準位の値
は、図27における薄膜の吸収端をエネルギーギャップとし、HOMO準位の値に加算す
ることにより得た。その結果、HOMO準位とLUMO準位はそれぞれ−5.15eVと
−2.82eVであった。
【0217】
また、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定により、PCzPCN1の酸化特性に
ついて調べた。なお測定には、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番
:ALSモデル600A)を用いた。
【0218】
CV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)を用い、支
持電解質である過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム(n−BuNClO)を1
00mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象であるPCzPCN1を
1mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。また、作用電極としては白金電
極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー
・エー・エス(株)製、VC−3用Ptカウンター電極(5cm))を、基準電極として
はAg/Ag電極(ビー・エー・エス(株)製、RE5非水溶媒系参照電極)をそれぞ
れ用いた。
【0219】
酸化反応特性については次のようにして調べた。基準電極に対する作用電極の電位を−
0.20から0.50Vまで変化させた後、0.50Vから−0.20Vまで変化させる
走査を1サイクルとし、100サイクル測定した。なお、CV測定のスキャン速度は0.
1V/sに設定した。
【0220】
PCzPCN1の酸化反応特性について調べた結果を図29に示す。図29において、
横軸は基準電極に対する作用電極の電位(V)を表し、縦軸は作用電極と補助電極との間
に流れた電流値(1×10−6A)を表す。
図29から酸化電位は0.25V(vs.Ag/Ag電極)であることが分かった。
また、100サイクルもの走査を繰り返しているにもかかわらず、酸化反応においてはC
V曲線のピーク位置やピーク強度にほとんど変化が見られない。このことから、本発明の
カルバゾール誘導体は酸化に対して極めて安定であることが分かった。
【0221】
また、得られた化合物PCzPCN1のガラス転移温度について、示差走査熱量分析装
置(DSC:Differencial Scanning Calorimetry、
パーキンエルマー製、型番:Pyris1 DSC)を用いて調べた。DSCによる測定
結果を図30に示す。測定結果から、得られた化合物のガラス転移温度は142℃である
ことが分かった。このように、得られた化合物は、142℃という高いガラス転移温度を
示し、良好な耐熱性を有するものである。また、図30において、得られた化合物の結晶
化を表すピークは存在せず、得られた化合物は結晶化し難い物質であることが分かった。
【実施例4】
【0222】
本実施例では、実施例1に示した合成方法とは異なる合成方法により、構造式(12)
で示される3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]
−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)の合成する方法について説明する
。合成スキームを(D−1)に示す。
【0223】
【化45】

【0224】
3−ヨード−9−フェニルカルバゾール1.60mg(4.33mmol)、ヨウ化銅
(I)19.0mg(0.1mmol)、tert−ブトキシカリウム1.10g(10
mmol)、トリ−n−ブチルホスフィン(0.2mol/L脱水ヘキサン溶液)1.0
mlを200mL三口フラスコへ入れフラスコ内の雰囲気を窒素置換し、キシレン10m
l、アニリン0.2ml(2.1mmol,195.6mg)を加えて135℃で6時間
還流した。反応溶液を室温にさましてから、フロリジール、セライトを通してトルエン1
00mLを加えて濾過を行った。得られたろ液を水で2回洗浄後、水層をトルエンで2回
抽出し、抽出溶液を有機層と合わせて飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した
。溶液を自然濾過し、ろ液を濃縮して得られた化合物を、シリカゲルクロマトグラフィー
(トルエン、ヘキサン混合溶液)にかけて目的物を得た。淡黄色個体を140mg、収率
21%で得た。
【0225】
本実施例で示す合成方法を用いることにより、一段階の反応で本発明のカルバゾール誘
導体を得ることができる。
【実施例5】
【0226】
本実施例では、実施例3に示した合成方法とは異なる合成方法により、構造式(15)
で示される3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)
アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)の合成する方法について
説明する。合成スキームを(D−2)に示す。
【0227】
【化46】

【0228】
3−ヨード−9−フェニルカルバゾール3.69g(0.01mol)、1−ナフチル
アミン716mg(5mmol)、ヨウ化銅385mg(2mmol)、炭酸カリウム2
.74g(0.02mol)、18−クラウン−6−エーテル771mg(0.02mo
l)、を200mL三口フラスコへ入れフラスコ内の雰囲気を窒素置換し、DMPU8m
lを加えて170℃で24時間攪拌した。反応溶液を室温にさましてから、水で2回洗浄
後、水層をトルエンで2回抽出し、この抽出溶液を先に洗浄した有機層と合わせて飽和食
塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。溶液を自然濾過し、ろ液を濃縮して得られ
た化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:トルエン=7:3)により
精製したところ目的物の淡黄色固体を1.52g、収率48%で得た。
【0229】
本実施例で示す合成方法を用いることにより、一段階の反応で本発明のカルバゾール誘
導体を得ることができる。
【実施例6】
【0230】
本発明のカルバゾール誘導体の一例として、構造式(70)で示される3−{N−[9
−(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミノ}−9−(4−
ビフェニリル)カルバゾール(略称:BCzBCA1)の合成方法について説明する。
【0231】
【化47】

【0232】
[ステップ1]
まず、9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの合成方法について説明する。9−(4
−ビフェニリル)カルバゾールの合成スキームを(B−1)に示す。
【0233】
【化48】

【0234】
三口フラスコに4−ブロモビフェニルを12g(50mmol)、カルバゾールを8.
4g(50mmol)、酢酸パラジウム230mg(1mmol)、1,1−ビス(ジフ
ェニルホスフィノ)フェロセンを1.8g(3.0mmol)、ナトリウム−tert−
ブトキシドを13g(180mmol)を加えフラスコ内の雰囲気を窒素置換した後、脱
水キシレンを80mL加え脱気を行った。これを窒素雰囲気下にて120℃、7.5時間
加熱撹拌した。反応終了後、この懸濁液に温めたトルエン約600mLを加え、これをフ
ロリジール、アルミナ、セライトを通して2回濾過した。得られたろ液を濃縮し、ヘキサ
ンを加えて再結晶を行った。これを濾過し、この濾物を回収、乾燥し、クリーム色粉末の
9−(4−ビフェニリル)カルバゾールを14g、収率87%で得た。
【0235】
[ステップ2]
次に、3−ブロモ−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの合成方法について説明す
る。3−ブロモ−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの合成スキームを(B−2)に
示す。
【0236】
【化49】

【0237】
9−(4−ビフェニリル)カルバゾール3.1g(10mmol)をクロロホルム10
0mLに溶かし、ここにN−ブロモこはく酸イミド1.8g(10mmol)をゆっくり
加えた。これを一晩(約24時間)撹拌した後、水で洗浄した。これに硫酸マグネシウム
を加え水分を除き、濾過して濾液を得た。これを濃縮して回収、乾燥させた。ベージュ色
粉末の3−ブロモ−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールを3.7g、収率95%で得
た。
【0238】
[ステップ3]
次に、3−ヨード−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの合成方法について説明す
る。3−ヨード−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの合成スキームを(B−3)に
示す。
【0239】
【化50】

【0240】
9−(4−ビフェニリル)カルバゾール3.2g(10mmol)を氷酢酸200mL
、トルエン200mL、酢酸エチル50mLの混合液に溶かし、ここにN−ヨードこはく
酸イミド2.3g(10mmol)をゆっくり加えた。これを一晩(約24時間)撹拌し
た後、水、チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。これに硫酸マグネシウム
を加え水分を除き、濾過して濾液を得た。これを濃縮してアセトン、ヘキサンを加え超音
波をかけて再結晶を行った。これを濾過し、濾物を回収、乾燥させた。ベージュ色粉末の
3−ヨード−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールを4.4g、収率98%で得た。
【0241】
[ステップ4]
次に、N−[(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミン(
略称:BCA)の合成方法について説明する。BCAの合成スキームを(B−4)に示す

【0242】
【化51】

【0243】
三口フラスコに、3−ブロモ−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールを3.7g(9
.2mmol)、酢酸パラジウム63mg(0.3mmol)、1,1−ビス(ジフェニ
ルホスフィノ)フェロセンを330mg(0.6mmol)、ナトリウム−tert−ブ
トキシドを1.5g(15mmol)を加え、フラスコ内の雰囲気を窒素置換した後、脱
水キシレンを20mLを加え脱気した後、アニリンを9.3g(10mmol)加えた。
これを窒素雰囲気下にて130℃、4時間加熱撹拌した。反応終了後、この懸濁液に温め
たトルエン約300mLを加え、これをフロリジール、アルミナ、セライトを通して濾過
した。得られたろ液を濃縮し、ヘキサンを加えて超音波にかけ析出させた。これを濾過し
、このろ物を乾燥し、クリーム色粉末のN−[(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−
イル]−N−フェニルアミン(BCA)を3.5g、収率93%で得た。
【0244】
[ステップ5]
次に、3−{N−[9−(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニ
ルアミノ}−9−(4−ビフェニリル)カルバゾール(略称:BCzBCA1)の合成方
法について説明する。BCzBCA1の合成スキームを(B−5)に示す。
【0245】
【化52】

【0246】
三口フラスコに、3−ヨード−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールを3.5g(7
.9mmol)、N−[(4−ビフェニリル)カルバゾール−3−イル]−N−フェニル
アミンを3.3g(8.0mmol)、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0
)を230mg(0.4mmol)、ナトリウム−tert−ブトキシド1.2g(12
mmol)を加えフラスコ内の雰囲気を窒素置換した後、ここに脱水キシレン30mLを
加え脱気を行った。ここに、トリ−tert−ブチルホスフィン10wt%ヘキサン溶液
1.4mL(1.2mmol)を加え、窒素雰囲気下にて110℃、3時間加熱撹拌した
。反応終了後、この懸濁液に温めたトルエン約500mLを加え、これをフロリジール、
アルミナ、セライトを通して濾過した。得られたろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマ
トグラフィー(トルエン:ヘキサン=1:1)にて得た。これを濃縮し、ヘキサンを加え
て超音波をかけて析出させた。クリーム色粉末の3−{N−[9−(4−ビフェニリル)
カルバゾール−3−イル]−N−フェニルアミノ}−9−(4−ビフェニリル)カルバゾ
ール(略称:BCzBCA1)を1.1g、収率19%で得た。H−NMRのデータを
以下に示す。H−NMR(300MHz、DMSO−d):δ=6.86(t、J=7
.2、1H)、6.94(d、J=7.8、2H)、7.18−7.24(m、4H)、
7.30(dd、J=8.9、1.8、2H)、7.41−7.54(m、12H)、7
.70(d、J=8.4、4H)、7.77(d、J=7.2、4H)、7.94(d、
J=8.4、4H)、8.06(d、J=2.1、2H)、8.12(d、J=7.8、
2H)。また、H−NMRのチャートを図31に示す。また、図31(A)における6
.0〜9.0ppmの部分を拡大したものを図31(B)に示す。また、13C−NMR
のデータを以下に示す。(75.5MHz、DMSO−d):δ=109.6、110.
7、117.4、119.4、119.7、119.8、120.5、120.5、12
2.4、123.7、125.0、126.2、126.5、126.8、127.5、
128.1、128.8、136.0、136.9、139.1、139.1、140.
6、140.8、149.3。また、13C−NMRのチャートを図32に示す。また、
図32(A)における6.0〜9.0ppmの部分を拡大したものを図32(B)に示す

【0247】
得られたBCzBCA1の熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogr
avimetry−Differential Thermal Analysis)を
実施例1〜実施例3と同様に行った。測定には示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子
工業株式会社製,TG/DTA 320型)を用い、窒素雰囲気下、10℃/minの昇
温速度で熱物性を評価した。その結果、重量と温度の関係(熱重量測定)から、常圧下で
、測定開始時における重量に対し95%以下の重量になる温度は、425℃であった。
【0248】
また、示差走査熱量測定装置(DSC)(パーキンエルマー社製、PyRis1)を用い
て、ガラス転移点(Tg)を測定した。まず、試料を40℃/minで−10℃から40
0℃まで加熱した後、40℃/minで−10℃まで冷却した。その後10℃/minで
400℃まで昇温することにより、図48のDSCチャートを得た。このチャートから、
BCzBCA1のガラス転移点(Tg)は137℃であることがわかった。このことから
、BCzBCA1は高いガラス転移点を有することがわかった。なお、本測定においては
、融点を示す吸熱ピークは観測されなかった。
【0249】
また、BCzBCA1のトルエン溶液の吸収スペクトルを図33に示す。測定には、紫
外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れ
てサンプルを作製し、石英の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図33に示し
た。図33において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。最大吸収
波長はトルエン溶液の場合では395nmであった。また、BCzBCA1のトルエン溶
液の発光スペクトルを図34に示す。図34において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強
度(任意単位)を表す。最大発光波長はトルエン溶液の場合では434nm(励起波長3
23nm)であった。
【0250】
また、BCzBCA1の薄膜の吸収スペクトルを図50に示す。測定には、紫外可視分
光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。薄膜は石英基板に蒸着してサン
プルを作製し、それぞれ石英の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図50に示
した。図50において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。最大吸
収波長は、薄膜の場合では318nmであった。また、BCzBCA1の薄膜の発光スペ
クトルを図51に示す。図51において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強度(任意単位
)を表す。最大発光波長は、薄膜の場合で445nm(励起波長318nm)であった。
【0251】
また、BCzBCA1の薄膜状態におけるHOMO準位とLUMO準位の測定を行った
。HOMO準位の値は、光電子分光装置(理研計器社製、AC−2)を用いて測定したイ
オン化ポテンシャルの値を、負の値に換算することにより得た。また、LUMO準位の値
は、図50における薄膜の吸収端をエネルギーギャップとし、HOMO準位の値に加算す
ることにより得た。その結果、HOMO準位とLUMO準位はそれぞれ−5.14eVと
−2.04eVであった。
【実施例7】
【0252】
本発明のカルバゾール誘導体の一例として、構造式(71)で示される3,6−ビス[
N−(1−ナフチル)―N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−(
4−ビフェニリル)カルバゾール(略称:BCzPCN2)の合成方法について説明する

【0253】
【化53】

【0254】
[ステップ1]
まず、3,6−ジブロモ−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの合成方法について
説明する。3,6−ジブロモ−9−(4−ビフェニリル)カルバゾールの合成スキームを
(C−1)に示す。
【0255】
【化54】

【0256】
9−(4−ビフェニリル)カルバゾール9.6g(30mmol)をトルエン250m
Lと酢酸エチル250mL、氷酢酸50mLの混合液に溶かし、ここにN−ブロモこはく
酸イミド13g(75mmol)をゆっくり加えた。これを5日間(約100時間)撹拌
した後、水、チオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄し、水酸化ナトリウム水溶液で中和し、再
び水で洗浄した。これに硫酸マグネシウムを加え水分を除き、濾過して濾液を得た。これ
を濃縮して回収、乾燥させた。ベージュ色粉末の3,6−ジブロモ−9−(4−ビフェニ
リル)カルバゾールを15g、収率100%で得た。NMRのデータを以下に示す。
H−NMR(300MHz、CDCl−d);δ=7.29(d、J=8.7、2H
)、7.40(t、J=7.5、1H)、7.47−7.56(m、6H)、7.67(
d、J=7.5、2H)、7.81(d、J=8.4、2H)、8.20(d、J=2.
1、2H)。また、H−NMRのチャートを図35に示す。また、図35(A)におけ
る6.0〜9.0ppmの部分を拡大したものを図35(B)に示す。また、13C−N
MRのデータを以下に示す。13C−NMR(75.5MHz、CDCl−d);δ=
111.6、113.3、123.3、123.3、124.2、127.2、127.
3、127.9、128.8、129.0、129.5、136.1、140.1、14
1.3。また、13C−NMRのチャートを図36に示す。また、図36(A)における
100〜150ppmの部分を拡大したものを図36(B)に示す。
【0257】
[ステップ2]
次に、3,6−ビス[N−(1−ナフチル)―N−(9−フェニルカルバゾール−3−
イル)アミノ]−9−(4−ビフェニリル)カルバゾール(略称BCzPCN2)の合成
方法について説明する。BCzPCN2の合成スキームを(C−1)に示す。
【0258】
【化55】

【0259】
三口フラスコに、3,6−ジブロモ−9−(4−ビフェニリル)カルバゾール を2.
4g(5.0mmol)、PCNを3.8g(10mmol)、ビス(ジベンジリデンア
セトン)パラジウム(0)を580mg(1.0mmol)、トリ−tert−ブチルホ
スフィン10wt%ヘキサン溶液6.0mL(3mmol)およびナトリウム−tert
−ブトキシド3.0g(30mmol)を加えフラスコ内の雰囲気を窒素置換した後、こ
こに脱水キシレン10mLを加え脱気を行った。これを窒素雰囲気下にて130℃、12
時間加熱撹拌した。反応終了後、この懸濁液に温めたトルエン約550mLを加え、これ
をフロリジール、アルミナ、セライトを通して濾過した。得られたろ液を濃縮し、シリカ
ゲルカラムクロマトグラフィー(トルエン:ヘキサン=2:1)にて得た。これを濃縮し
、ヘキサンを加えて超音波をかけて析出させた。レモン色粉末の3,6−ビス[N−(1
−ナフチル)―N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−(4−ビフ
ェニリル)カルバゾール(略称:BCzPCN2)を2.7g、収率51%で得た。NM
Rのデータを以下に示す。H−NMR(300MHz、DMSO−d):δ=6.88
−7.67(m、45H)、7.76−7.79(d、J=7.8、4H)、7.84−
7.86(d、J=7.8、2H)、7.97−7.99(d、J=7.8、2H)。ま
た、H−NMRのチャートを図37に示す。また、図37(A)における6.0〜9.
0ppmの部分を拡大したものを図37(B)に示す。また、13C−NMRのデータを
以下に示す。13C−NMR(75.5MHz、DMSO−d):δ=109.3、11
0.1、110.5、113.3、113.3、114.5、114.6、119.4、
120.2、122.0、122.2、123.1、123.2、123.3、124.
0、124.7、125.2、125.6、125.9、126.2、126.4、12
6.5、127.1、127.4、127.9、128.1、128.7、129.7、
129.8、134.8、135.8、136.1、136.7、136.8、138.
8、139.0、140.4、142.9、143.3、144.8。また、13C−N
MRのチャートを図38に示す。また、図38(A)における100〜150ppmの部
分を拡大したものを図38(B)に示す。
【0260】
得られたBCzPCN2の熱重量測定−示差熱分析(TG−DTA:Thermogr
avimetry−Differential Thermal Analysis)を
実施例1〜実施例4と同様に行った。測定には示差熱熱重量同時測定装置(セイコー電子
工業株式会社製,TG/DTA 320型)を用い、窒素雰囲気下、10℃/minの昇
温速度で熱物性を評価した。その結果、重量と温度の関係(熱重量測定)から、常圧下で
、測定開始時における重量に対し95%以下の重量になる温度は、500℃以上であった

【0261】
また、示差走査熱量測定装置(DSC)(パーキンエルマー社製、PyRis1)を用い
て、ガラス転移点(Tg)を測定した。まず、試料を40℃/minで−10℃から40
0℃まで加熱した後、40℃/minで−10℃まで冷却した。その後10℃/minで
400℃まで昇温することにより、図49のDSCチャートを得た。このチャートから、
BCzPCN2のガラス転移点(Tg)は185℃であることがわかった。このことから
、、BCzPCN2は高いガラス転移点を有することがわかった。なお、本測定において
は、融点を示す吸熱ピークは観測されなかった。
【0262】
また、BCzPCN2のトルエン溶液の吸収スペクトルを図39に示す。測定には、紫
外可視分光光度計(日本分光株式会社製、V550型)を用いた。溶液は石英セルに入れ
てサンプルを作製し、石英の吸収スペクトルを差し引いた吸収スペクトルを図39に示し
た。図39において横軸は波長(nm)、縦軸は吸収強度(任意単位)を表す。最大吸収
波長はトルエン溶液の場合では370nmであった。また、BCzPCN2のトルエン溶
液の発光スペクトルを図40に示す。図40において横軸は波長(nm)、縦軸は発光強
度(任意単位)を表す。最大発光波長はトルエン溶液の場合では465nm(励起波長3
20nm)であった。
【実施例8】
【0263】
本実施例では、本発明のカルバゾール誘導体を用いた発光素子について図41を用いて
説明する。
【0264】
まず、ガラス基板2101上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をスパッタリング
法にて成膜し、第1の電極2102を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極
面積は2mm×2mmとした。
【0265】
次に、第1の電極が形成された面が下方となるように、第1の電極が形成された基板を
真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定した。その後真空装置内を排気し、10
−4Pa程度まで減圧した後、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第1の電極2102上に
、構造式(12)で示される3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−
フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)を50nmの膜
厚となるように成膜し、正孔注入層2103を形成した。
【0266】
次に、抵抗加熱を用いた蒸着法により、正孔注入層2103上にNPBを10nmの膜
厚となるように成膜し、正孔輸送層2104を形成した。
【0267】
さらに、Alqとクマリン6とを共蒸着することにより、正孔輸送層2104上に40
nmの膜厚の発光層2105を形成した。ここで、Alqとクマリン6との重量比は、1
:0.01(=Alq:クマリン6)となるように調節した。
【0268】
その後抵抗加熱による蒸着法を用いて、発光層2105上にAlqを10nmの膜厚と
なるように成膜し、電子輸送層2106を形成した。
【0269】
さらに、電子輸送層2106上に、フッ化リチウムを1nmの膜厚となるように成膜し
、電子注入層2107を形成した。
【0270】
最後に、抵抗加熱による蒸着法を用い、電子注入層2107上にアルミニウムを200
nmの膜厚となるように成膜することにより、第2の電極2108を形成することで、実
施例8の発光素子を作製した。
【0271】
本実施例8の発光素子の電流密度―輝度特性を図42に示す。また、電圧−輝度特性を
図43に示す。本実施例8の発光素子において、7.2Vの電圧を印加することにより、
CIE色度座標(x,y)=(0.32,0.61)のクマリン6に由来する緑色発光を
、940cd/mの輝度で得ることができた。
【0272】
このように、本発明のカルバゾール誘導体を正孔注入層として用いることにより、良好
な特性の発光素子を得ることができた。
【実施例9】
【0273】
本実施例では、本発明のカルバゾール誘導体を用いた発光素子について図41を用いて
説明する。
【0274】
まず、ガラス基板2101上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をスパッタリング
法にて成膜し、第1の電極2102を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極
面積は2mm×2mmとした。
【0275】
次に、第1の電極が形成された面が下方となるように、第1の電極が形成された基板を
真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定した。その後真空装置内を排気し、10
−4Pa程度まで減圧した後、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第1の電極2102上に
、構造式(38)で示される3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル
)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)を50
nmの膜厚となるように成膜し、正孔注入層2103を形成した。
【0276】
次に、実施例8と同様に、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、第2の電極
を形成し、実施例9の発光素子を作製した。
【0277】
本実施例9の発光素子の電流密度―輝度特性を図44に示す。また、電圧−輝度特性を
図45に示す。本実施例9の発光素子において、6.6Vの電圧を印加することにより、
CIE色度座標(x,y)=(0.32,0.61)のクマリン6に由来する緑色発光を
、993cd/mの輝度で得ることができた。
【0278】
このように、本発明のカルバゾール誘導体を正孔注入層として用いることにより、良好
な特性の発光素子を得ることができた。
【実施例10】
【0279】
本実施例では、本発明のカルバゾール誘導体を用いた発光素子について図41を用いて
説明する。
【0280】
まず、ガラス基板2101上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物をスパッタリング
法にて成膜し、第1の電極2102を形成した。なお、その膜厚は110nmとし、電極
面積は2mm×2mmとした。
【0281】
次に、第1の電極が形成された面が下方となるように、第1の電極が形成された基板を
真空蒸着装置内に設けられた基板ホルダーに固定した。その後真空装置内を排気し、10
−4Pa程度まで減圧した後、抵抗加熱を用いた蒸着法により、第1の電極2102上に
、構造式(17)で示される3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾ
ール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)を50
nmの膜厚となるように成膜し、正孔注入層2103を形成した。
【0282】
次に、実施例8と同様に、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、第2の電極
を形成し、実施例10の発光素子を作製した。
【0283】
本実施例10の発光素子の電流密度―輝度特性を図46に示す。また、電圧−輝度特性
を図47に示す。本実施例10の発光素子において、7.0Vの電圧を印加することによ
り、CIE色度座標(x,y)=(0.32,0.61)のクマリン6に由来する緑色発
光を、946cd/mの輝度で得ることができた。
【0284】
このように、本発明のカルバゾール誘導体を正孔注入層として用いることにより、良好
な特性の発光素子を得ることができた。
【符号の説明】
【0285】
101 第1の電極
103 第2の電極
102 発光物質を含む層
104 陽極と接する層
201 第1の電極
202 発光物質を含む層
203 第2の電極
204 発光層211よりも陽極側の層
211 発光層
301 第1の電極
302 発光物質を含む層
303 第2の電極
304 発光層
305 第1の電極301と発光層304とに挟まれる層
601 ソース側駆動回路
602 画素部
603 ゲート側駆動回路
604 封止基板
605 シール材
607 空間
608 配線
609 FPC(フレキシブルプリントサーキット)
610 素子基板
611 スイッチング用TFT
612 電流制御用TFT
613 第1の電極
614 絶縁物
616 発光物質を含む層
617 第2の電極
618 発光素子
623 nチャネル型TFT
624 pチャネル型TFT
2101 ガラス基板
2102 第1の電極
2103 正孔注入層
2104 正孔輸送層
2105 発光層
2106 電子輸送層
2107 電子注入層
2108 第2の電極
9101 筐体
9102 支持台
9103 表示部
9104 スピーカー部
9105 ビデオ入力端子
9201 本体
9202 筐体
9203 表示部
9204 キーボード
9205 外部接続ポート
9206 ポインティングマウス
9301 本体
9302 表示部
9303 アーム部
9401 本体
9402 筐体
9403 表示部
9404 音声入力部
9405 音声出力部
9406 操作キー
9407 外部接続ポート
9408 アンテナ
9501 本体
9502 表示部
9503 筐体
9504 外部接続ポート
9505 リモコン受信部
9506 受像部
9507 バッテリー
9508 音声入力部
9509 操作キー
9510 接眼部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極間に、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体を含み、
前記カルバゾール誘導体は、正孔輸送層および発光層に含まれることを特徴とする発光素子。
【化1】


(式中、R11及びR13は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、n―プロピル基、n―ブチル基、n―ヘキシル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、フェニル基、4―ビフェニリル基、1―ナフチル基、2―ナフチル基、9―アントリル基、9―フェナントリル基、1―ピレニル基、9,9’―ジメチル―2―フルオレニル基、スピロ―9,9’―ビフルオレン―2―イル基、m―トリル基、p―トリル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2―ピリジル基、8―キノリル基、3―キノリル基、ベンジル基、アセチル基、ベンゾイル基、プロピオニル基のいずれかを表し、
Ar11は、フェニル基、4―ビフェニリル基、1―ナフチル基、2―ナフチル基、9―アントリル基、9―フェナントリル基、1―ピレニル基、9,9’―ジメチル―2―フルオレニル基、スピロ―9,9’―ビフルオレン―2―イル基、m―トリル基、p―トリル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2―ピリジル基、8―キノリル基、3―キノリル基のいずれかを表し、
12及びR14は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素、iso−プロピル基、tert−ブチル基、フェニル基、4―ビフェニリル基、1―ナフチル基、2―ナフチル基のいずれかを表す。)
【請求項2】
請求項1において、
11またはR13の少なくとも一方は、フェニル基、4―ビフェニリル基、1―ナフチル基、2―ナフチル基、9―アントリル基、9―フェナントリル基、1―ピレニル基、9,9’―ジメチル―2―フルオレニル基、スピロ―9,9’―ビフルオレン―2―イル基、m―トリル基、p―トリル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2―ピリジル基、8―キノリル基、3―キノリル基であることを特徴とする発光素子。
【請求項3】
請求項1において、
11及びR13は、フェニル基、4―ビフェニリル基、1―ナフチル基、2―ナフチル基、9―アントリル基、9―フェナントリル基、1―ピレニル基、9,9’―ジメチル―2―フルオレニル基、スピロ―9,9’―ビフルオレン―2―イル基、m―トリル基、p―トリル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2―ピリジル基、8―キノリル基、3―キノリル基であることを特徴とする発光素子。
【請求項4】
請求項1において、
11及びR13は、フェニル基、ビフェニル基のいずれかであることを特徴とする発光素子。
【請求項5】
一対の電極間に、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体を含み、
前記カルバゾール誘導体は、正孔輸送層および発光層に含まれることを特徴とする発光素子。
【化2】


【化3】


(式中、R14は一般式(2)で示される置換基を表し、
11、R13及びR15は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、n―プロピル基、n―ブチル基、n―ヘキシル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、フェニル基、4―ビフェニリル基、1―ナフチル基、2―ナフチル基、9―アントリル基、9―フェナントリル基、1―ピレニル基、9,9’―ジメチル―2―フルオレニル基、スピロ―9,9’―ビフルオレン―2―イル基、m―トリル基、p―トリル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2―ピリジル基、8―キノリル基、3―キノリル基、ベンジル基、アセチル基、ベンゾイル基、プロピオニル基のいずれかを表し、
Ar11及びAr12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、フェニル基、4―ビフェニリル基、1―ナフチル基、2―ナフチル基、9―アントリル基、9―フェナントリル基、1―ピレニル基、9,9’―ジメチル―2―フルオレニル基、スピロ―9,9’―ビフルオレン―2―イル基、m―トリル基、p―トリル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2―ピリジル基、8―キノリル基、3―キノリル基のいずれかを表し、
12及びR16は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素、iso−プロピル基、tert−ブチル基、フェニル基、4―ビフェニリル基、1―ナフチル基、2―ナフチル基のいずれかを表す。)
【請求項6】
請求項5において、
11、R13及びR15は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、フェニル基、4―ビフェニリル基、1―ナフチル基、2―ナフチル基、9―アントリル基、9―フェナントリル基、1―ピレニル基、9,9’―ジメチル―2―フルオレニル基、スピロ―9,9’―ビフルオレン―2―イル基、m―トリル基、p―トリル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2―ピリジル基、8―キノリル基、3―キノリル基であることを特徴とする発光素子。
【請求項7】
請求項5において、
11、R13及びR15は、フェニル基、ビフェニル基のいずれかであることを特徴とする発光素子。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項において、
前記発光層は、さらに発光性材料を含むことを特徴とする発光素子。
【請求項9】
請求項8において、
前記発光性材料は、燐光材料であることを特徴とする発光素子。
【請求項10】
一対の電極間に、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体を含むことを特徴とする発光素子。
【化4】


(式中、R11及びR13は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、n―プロピル基、n―ブチル基、n―ヘキシル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、フェニル基、4―ビフェニリル基、1―ナフチル基、2―ナフチル基、9―アントリル基、9―フェナントリル基、1―ピレニル基、9,9’―ジメチル―2―フルオレニル基、スピロ―9,9’―ビフルオレン―2―イル基、m―トリル基、p―トリル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2―ピリジル基、8―キノリル基、3―キノリル基、ベンジル基、アセチル基、ベンゾイル基、プロピオニル基のいずれかを表し、
Ar11は、フェニル基、4―ビフェニリル基、1―ナフチル基、2―ナフチル基、9―アントリル基、9―フェナントリル基、1―ピレニル基、9,9’―ジメチル―2―フルオレニル基、スピロ―9,9’―ビフルオレン―2―イル基、m―トリル基、p―トリル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2―ピリジル基、8―キノリル基、3―キノリル基のいずれかを表し、
12及びR14は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、iso−プロピル基、tert−ブチル基、フェニル基、4―ビフェニリル基、1―ナフチル基、2―ナフチル基のいずれかを表す。)
【請求項11】
請求項10において、
11またはR13の少なくとも一方は、フェニル基、4―ビフェニリル基、1―ナフチル基、2―ナフチル基、9―アントリル基、9―フェナントリル基、1―ピレニル基、9,9’―ジメチル―2―フルオレニル基、スピロ―9,9’―ビフルオレン―2―イル基、m―トリル基、p―トリル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2―ピリジル基、8―キノリル基、3―キノリル基であることを特徴とする発光素子。
【請求項12】
請求項10において、
11及びR13は、フェニル基、4―ビフェニリル基、1―ナフチル基、2―ナフチル基、9―アントリル基、9―フェナントリル基、1―ピレニル基、9,9’―ジメチル―2―フルオレニル基、スピロ―9,9’―ビフルオレン―2―イル基、m―トリル基、p―トリル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2―ピリジル基、8―キノリル基、3―キノリル基であることを特徴とする発光素子。
【請求項13】
請求項10において、
11及びR13は、フェニル基、ビフェニル基のいずれかであることを特徴とする発光素子。
【請求項14】
一対の電極間に、一般式(1)で示されるカルバゾール誘導体を含むことを特徴とする発光素子。
【化5】


【化6】


(式中、R14は一般式(2)で示される置換基を表し、
11、R13及びR15は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、n―プロピル基、n―ブチル基、n―ヘキシル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、フェニル基、4―ビフェニリル基、1―ナフチル基、2―ナフチル基、9―アントリル基、9―フェナントリル基、1―ピレニル基、9,9’―ジメチル―2―フルオレニル基、スピロ―9,9’―ビフルオレン―2―イル基、m―トリル基、p―トリル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2―ピリジル基、8―キノリル基、3―キノリル基、ベンジル基、アセチル基、ベンゾイル基、プロピオニル基のいずれかを表し、
Ar11及びAr12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、フェニル基、4―ビフェニリル基、1―ナフチル基、2―ナフチル基、9―アントリル基、9―フェナントリル基、1―ピレニル基、9,9’―ジメチル―2―フルオレニル基、スピロ―9,9’―ビフルオレン―2―イル基、m―トリル基、p―トリル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2―ピリジル基、8―キノリル基、3―キノリル基のいずれかを表し、
12及びR16は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、iso−プロピル基、tert−ブチル基、フェニル基、4―ビフェニリル基、1―ナフチル基、2―ナフチル基のいずれかを表す。)
【請求項15】
請求項14において、
11、R13及びR15は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、フェニル基、4―ビフェニリル基、1―ナフチル基、2―ナフチル基、9―アントリル基、9―フェナントリル基、1―ピレニル基、9,9’―ジメチル―2―フルオレニル基、スピロ―9,9’―ビフルオレン―2―イル基、m―トリル基、p―トリル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2―ピリジル基、8―キノリル基、3―キノリル基であることを特徴とする発光素子。
【請求項16】
請求項14において、
11、R13及びR15は、フェニル基、ビフェニル基のいずれかであることを特徴とする発光素子。
【請求項17】
請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載の発光素子を有する発光装置。
【請求項18】
請求項1乃至請求項16のいずれか一項に記載の発光素子を有する電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2012−156515(P2012−156515A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−46104(P2012−46104)
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【分割の表示】特願2005−374977(P2005−374977)の分割
【原出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】