説明

発光素子点灯回路及び該回路を用いる照明装置

【課題】 ダイオード特性を有し、PWM調光信号によってバースト調光を行う発光素子点灯回路及び該回路を備えた照明装置において、オフ期間の後、次にPWM調光信号がオン期間に切り換わった時の点灯タイミングのばらつきを大幅に低減する。
【解決手段】 発光素子点灯回路は、入力される調光信号により指定される発光レベルに応じたデューティ比のPWM調光信号を生成する調光信号変換部(52)と、前記生成されたPWM調光信号のオフ期間中、発光素子が発光するしきい値電圧Vthを超える電圧が発光素子に印加されるようにする微小電流であって、前記調光信号により指定される最低の発光レベル以下の明るさで、前記発光素子を発光させる微小電流Iminを流す微小電流発生回路(C1)を備える。オフ期間中に微小電流Iminを流すことで、発光素子を僅かに発光しておき、次にPWM調光信号がオン期間に切り換わった時の点灯タイミングのばらつきを大幅に低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL等の発光素子の点灯回路と、該点灯回路を用いる照明装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL等のダイオード特性を有する発光素子を用いる点灯回路であって、調光信号により特定される発光レベルに対応するPWM調光信号を生成し、調光制御を行う点灯回路が知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、前記PWM調光信号のオフ期間に発光素子の発光を停止させる、いわゆるバースト調光を行う点灯回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−60703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有機EL等のダイオード特性を有する発光素子では、印加電圧がしきい値電圧Vthを超えたときに発光し始める。前記特許文献1の装置で行うバースト調光は、PWM調光信号のオフ期間中、発光素子の発光を完全に停止する。発光素子のしきい値電圧Vthは、製造誤差によりばらつきがあるため、次にPWM調光信号がオン期間に切り換わった時の発光素子の点灯タイミングは、安定していない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、PWM調光信号のオフ期間後、次にPWM調光信号がオン期間に切り換わった時の点灯タイミングのばらつきを大幅に減少した発光素子点灯回路及び該回路を備えている照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の発光素子点灯回路は、ダイオード特性を有する発光素子を、PWM調光信号によって調光する発光素子点灯回路であって、入力される調光信号により指定される発光レベルに応じたデューティ比のPWM調光信号を生成する調光信号変換部と、前記調光信号変換部で生成されたPWM調光信号のオフ期間中、発光素子が発光する設計上のしきい値電圧より大きな電圧が発光素子に印加されるようにする微小電流であって、前記調光信号により指定される最低の発光レベル以下の明るさで、前記発光素子を発光させる微小電流を流す微小電流発生回路と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
上記発光素子点灯回路において、前記発光素子への通電をオン・オフする駆動部を有し、前記駆動部を介して前記発光素子に接続されており、駆動部が駆動されている間、直流電圧を前記発光素子に出力する直流電圧発生回路と、前記PWM調光信号のオフ期間は前記駆動部をオフし、オン期間は前記駆動部を駆動する駆動信号を出力するPWM調光信号処理部と、を備えることが好ましい。
【0009】
上記発光素子点灯回路において、前記直流電圧発生回路は、チョッパ回路を含み、該チョッパ回路を介して直流電圧を前記発光素子に出力し、前記駆動部は、チョッパ信号によりチョッパ回路内の電流をチョップするスイッチングトランジスタであり、チョッパ信号が入力されていないときは前記発光素子への通電をオフにするものであり、前記PWM調光信号処理部は、駆動信号として、PWM調光信号のオン期間中、チョッパ信号を前記トランジスタに出力する、ことが好ましい。
【0010】
上記発光素子点灯回路において、前記微小電流発生回路は、一端が発光素子の下流側に接続され、他端が接地されている、インピーダンス要素であることが好ましい。
【0011】
上記発光素子点灯回路において、前記インピーダンス要素が抵抗であることが好ましい。
【0012】
上記発光素子点灯回路において、前記インピーダンス要素がダイオードであることが好ましい。
【0013】
上記発光素子点灯回路において、前記インピーダンス要素が、オン状態のスイッチングトランジスタであることが好ましい。
【0014】
上記発光素子点灯回路において、前記微小電流発生回路は、前記直流電圧発生回路の駆動部に並列に、かつ、逆方向接続されたダイオードであって、駆動部がオフの時にオンになり、前記微小電流を流すインピーダンスを有しているダイオードで構成されていることが好ましい。
【0015】
上記発光素子点灯回路において、前記PWM調光信号処理部は、前記オフ期間を検出する検出回路を備え、前記微小電流発生回路は、前記検出回路によるオフ期間の検出に応じて、前記駆動信号を、微小電流を流すデューティ比の駆動信号に変換して駆動部に出力することが好ましい。
【0016】
前記PWM調光信号処理部は、前記オフ期間を検出する検出回路を備え、
前記微小電流発生回路は、前記検出回路によるオフ期間の検出に応じて始動して、発光素子への印加電圧がしきい値電圧より大きく、かつ、前記調光信号により指定される最低の発光レベル以下の明るさで前記発光素子を発光させる特定の電圧を発光素子に印加する定電圧回路を備えていることが好ましい。
【0017】
上記発光素子点灯回路において、前記発光素子が有機EL発光素子であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の照明装置は、1以上の有機EL発光素子を有する照明パネルを備え、各発光素子は、上記何れかの発光素子点灯回路を有している、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、PWM調光信号のオフ期間中でも、設計通りのしきい値電圧の発光素子は、調光信号で指定される最低の調光レベル以下の明るさで、僅かに発光している状態に保たれる。製品誤差によりしきい値電圧にばらつきのある場合でも、発光素子にしきい値電圧より大きな電圧が印加されるようにする微小電流を流すことで、略全ての場合において、発光素子に電流を流し始めてから、印加電圧がしきい値電圧を超えるまでの期間を無くすことができる。結果、次にPWM調光信号がオン期間に切り換わった時の点灯タイミングのばらつきを大幅に低減することができる。例えば、複数の発光素子を用いる照明装置に用いた場合、各発光素子の点灯タイミングをそろえることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は、本発明の発光素子点灯回路を有している第1実施例に係る照明装置の斜視図、(b)は、前記照明装置の断面図。
【図2】(a)は、ダイオード特性を有する発光素子の電圧、電流特性を示すグラフ、(b)は、該グラフの一部拡大図。
【図3】第1実施例に係る発光素子点灯回路の回路図。
【図4】第1実施例に係る発光素子点灯回路内の信号を示すタイムチャート。
【図5】第1実施例の変形例の発光素子点灯回路の回路図。
【図6】第2実施例の発光素子点灯回路の回路図。
【図7】第2実施例に係る発光素子点灯回路内の信号を示すタイムチャート。
【図8】第3実施例の発光素子点灯回路の回路図。
【図9】第3実施例に係る発光素子点灯回路内の信号を示すタイムチャート。
【図10】第4実施例に係る発光素子点灯回路の回路図。
【図11】第4実施例に係る発光素子点灯回路内の信号を示すタイムチャート。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
実施の形態に係る照明装置の発光素子点灯回路は、調光信号により指定される発光レベルに応じたPWM調光信号のオン期間とオフ期間とに基づいて、ダイオード特性を有している発光素子を間欠点灯する、いわゆるバースト調光を行う回路である。該回路は、PWM調光信号のオフ期間(以下、オフ期間とのみ記す)、発光素子に微小電流Iminを流し僅かに発光させる微小電流発生回路を備えたことを特徴とする。
【0022】
前記微小電流Iminは、「発光素子に、該発光素子が発光し始める設計上のしきい値電圧Vth(以下、しきい値電圧Vthと記す)を超える電圧が印加され、かつ、最低の発光レベル以下の明るさで発光させる」という条件を満たす電流である。微小電流Iminは、前記条件を満たし、かつ、しきい値電圧Vthのばらつきに関する統計データに基づいて、全ての発光素子が実際のしきい値Vthを超える電圧が印加させる電流値(以下、微小電流Imin1)に設定するのが好ましい。しかし、前記統計データの分布状態によって微小電流Imin1の設定ができない場合、微小電流Iminは、前記条件を満たし、かつ、故障とみなせるほどの大きなばらつきを有するものを除く、例えば6割以上の発光素子が実際のしきい値Vthを超える電圧が印加させる電流値に設定する。前記6割以上とは、前記条件を満たす限りにおいて、6割以上、好ましくは7割以上、好ましくは8割以上、好ましくは9割以上のことを意味する。オフ期間中も僅かに発光させることで、次にPWM調光信号がオン期間(以下、オン期間とのみ記す)となった時の点灯タイミングのばらつきを大幅に低減する。
【0023】
(第1実施例)
図1は、第1実施例に係る照明装置1を示す図である。図1(a)は、天井、壁、床、スタンド等に固定して用いる照明装置1の斜視図である。照明装置1は、図中上向きに発光面を有している3つの発光パネル2、3、4を有している。図1(b)は、照明装置1の断面図である。発光パネル2、3、4の構成は、同じである。以下、発光パネル2を例にとって説明する。発光パネル2は、有機EL発光素子21と、該発光素子をバースト調光する発光素子点灯回路22と、を備えている。有機EL発光素子21は、ダイオード特性を有する発光素子で、しきい値電圧Vth以上で、発光し始める。発光素子点灯回路22は、50Hz又は60Hzの商用交流電源と、調光信号とが入力されるケーブルに接続されている。調光信号は、複数の階調の発光レベルを指定する信号である。
【0024】
発光素子点灯回路22は、調光信号により指定される発光レベルに応じたデューティ比のPWM変調信号を生成し、該信号のオン期間とオフ期間とに基づいて発光素子のバースト調光を行う。また、発光素子点灯回路22は、オフ期間中、微小電流Iminを流して発光素子21を僅かに発光状態にしておくことで、発光素子21の製造誤差による点灯タイミングのずれを大幅に低減する。照明装置1では、3つの発光素子を有しているが、それぞれに発光素子点灯回路22と同じ回路を備えることで、製品誤差によらず、オフ期間からオン期間への切り換わり時の点灯タイミングをそろえ同時に明るくすることができる。
【0025】
図2(a)は、ダイオード特性を有する有機EL発光素子21に電圧Vを印加した場合に、発光素子21に流れる電流Iを示すグラフである。図2(b)は、図2(a)のグラフにおいて、点線で囲んで示す、印加電圧がしきい値電圧Vth近傍の部分の拡大図である。図2(b)に示すように、発光素子21は、矢印21aで示すように、印加電圧がしきい値電圧Vthになるまで発光せず、実質電流も流れない。印加電圧がしきい値電圧Vthになった時に発光し始め、その後、矢印21bに示すように、印加電圧の増加に比例して発光レベルが増加する。
【0026】
微小電流Iminは、印加電圧がしきい値電圧Vthとなった時の電流Iより大きく、最低レベルでの発光時の電流I以下の範囲内の値をとる。微小電流Iminは、前記条件を満たす範囲内において、定格電流(例えば100mA)に対して電流比で1%以下の値(例えば1mA以下)に設定されるのが好ましい。
【0027】
図3は、有機EL発光素子21に接続されている発光素子点灯回路22の回路図である。発光素子点灯回路22は、AC/DC部50と、電力変換部51と、PWM調光信号を出力する調光信号変換部52と、PWM調光信号処理部53と、微小電流発生回路C1と、を備える。
【0028】
AC/DC部50は、入力される商用交流電圧を直流電圧に変換して出力する。電力変換部51は、AC/DC部50の出力レベルを降圧して出力する周知の降圧チョッパ回路である。電力変換部51は、ダイオード54と、チョークコイルであるインダクタ55と、電荷を蓄積するためのコンデンサ56と、回路内電流をチョップしてチョッパ回路を駆動するためのスイッチングトランジスタ57と、抵抗58とで構成される。
【0029】
AC/DC部50と電力変換部51とは、スイッチングトランジスタ57がチョッパ信号によりオン・オフされている間、直流電圧を前記発光素子21に出力する直流電圧発生回路として機能する。また、この直流電圧発生回路において、スイッチングトランジスタ57は、駆動信号であるチョッパ信号によってオン・オフされている間、直流電圧を発光素子21に出力する駆動部として機能する。例えば、変形例として、スイッチングトランジスタ57の他に、オン期間とオフ期間に応じて、発光素子21への給電をオン・オフする駆動部(スイッチ回路)を発光素子21の前又は後に介在させてもよい。
【0030】
調光信号変換部52は、入力される調光信号により指定される発光レベルに応じたPWM調光信号を生成して出力する。
【0031】
PWM調光信号処理部53は、オフ期間中、スイッチングトランジスタ57をオフにして発光素子21への通電をオフにする。また、PWM調光信号処理部53は、オン期間中、スイッチングトランジスタ57を駆動するチョッパ信号(駆動信号)を出力する。PWM調光信号処理部53は、制御部59と、電流検出部60と、駆動信号生成部61と、を備えている。制御部59は、電流検出部60に接続された比較器59aと、該比較器59aの出力端子と調光信号変換部52とに接続されたANDゲート59bと、で構成されている。制御部59は、オン期間中、電流検出部60で検出される電流値を基準値Vref1に基づいて量子化して出力する。電流検出部60は、スイッチングトランジスタ57の下流側の電流検知抵抗58の電圧を検知し、誤差アンプ等で増幅した信号を出力する。駆動信号生成部61は、直列接続された2つの抵抗62、63で構成される分圧回路と、比較器64と、を備えている。前記分圧回路は、電源電圧Vccを分圧して基準値Vref2を出力する。比較器64は、制御部59からのデジタル信号と、基準電圧Vref2とを比較してスイッチングトランジスタ57を駆動するチョッパ信号を出力する。前記チョッパ信号は、一定の振幅及びパルス幅を有しており、オン期間中、一定の周期で出力される。
【0032】
微小電流発生回路C1は、オフ期間中、しきい値電圧Vthを超える電圧が発光素子21に印加されるようにする微小電流であって、前記調光信号により指定される最低の発光レベル以下の明るさで、発光素子21を発光させる微小電流Iminを流す。該回路C1は、発光素子21の出力端子側に一端が接続され、他端が接地されている高インピーダンスのインピーダンス要素65で構成されている。該回路C1を接続したことによって、オフ期間、即ち、スイッチングトランジスタ57に何のチョッパ信号も出力されていない期間中であっても、インピーダンス要素65を介して僅かな微小電流Iminが発光素子21に流れる。インピーダンス要素65のインピーダンスは、発光素子21に微小電流Iminを流す高い値である。インピーダンス要素65は、例えば、抵抗、順方向接続されたダイオード、又は、オン状態のスイッチングトランジスタの寄生ダイオードを用いる。説明したように、微小電流発生回路C1は、極めて簡単な構成であり、結果、発光素子点灯回路22の製造コストを低く抑えることができる。
【0033】
図4(a)は、図3に示した回路内の点P1〜P5に流れる信号の波形を示す。図4(b)は、微小電流発生回路C1が無い場合の点P4、P5に流れる信号の波形を、比較のために示す。点P1の信号は、調光信号変換部52から出力されるPWM変調信号を示す。PWM調光信号の周期は、チョッパ信号の周期の例えば100倍以上に設定し、PWM調光信号のデューティ比1%のオン期間に、少なくとも1つのチョッパ信号を出力できる値に設定する。PWM変調信号の1周期は、例えば、0.5〜10ms(周波数f=0.1kHz〜2kHz)である。点P2は、電流検出部60から出力される信号を示す。該信号の1周期は、例えば、1〜10μs(周波数f=100kHz〜1MHz)である。点P3は、制御部59から出力されるデジタル信号で、オン期間中に、前記点P2の信号を基準電圧Vref1で量子化した信号である。点P4は、発光素子21に印加される電圧の値を示し、点P5は、発光素子21に流れる電流値を示す。図示するように、オフ期間中、発光素子21には、微小電流Iminが流れ、しきい値電圧Vthを僅かに越える電圧が印加されている。即ち、このオフ期間中、発光素子21は、僅かに発光している状態にあることを示している。そして、次にオン期間へ切り換わる時、発光素子21に流れる電流は、印加電圧の増加に比例して増加しており、まったく遅延していない。
【0034】
図4(b)に示す波形を確認すると、微小電流発生回路C1が無い場合、オフ期間中、発光素子21には、完全に電流が流れていない。そして、次のオン期間への切り換わり時、発光素子21に流れる電流は、印加電圧がしきい値電圧Vthに増加した後、即ち遅延tdの後に増加している。
【0035】
しきい値Vthは、発光素子21の製造誤差により僅かに増減することが知られている。しかし、微小電流発生回路C1は、微小電流Iminを流すことで、前記製造誤差によらず、何の遅延も伴わずに発光素子21の迅速な点灯を実現する。
【0036】
以上説明したように、発光素子点灯回路22を用いることによって、PWM調光信号のオフ期間中でも、設計通りのしきい値電圧の発光素子は、調光信号で指定される最低の調光レベル以下の明るさで、僅かに発光している状態に保たれる。製品誤差によりしきい値電圧にばらつきのある場合でも、発光素子にしきい値電圧より大きな電圧が印加されるようにする微小電流Iminを流すことで、略全て又は全ての場合において、発光素子に電流を流し始めてから、印加電圧がしきい値電圧を超えるまでの期間を無くすことができる。結果、次にPWM調光信号がオン期間に切り換わった時の点灯タイミングのばらつきを大幅に低減又は完全に無くすことができる。複数の発光素子を用いる照明装置1は、発光素子2、3、4の点灯タイミングをそろえることができる。
【0037】
(第1実施例の変形例)
図5は、発光素子点灯回路22の変形例の発光素子点灯回路22aの回路図を示す。発光素子点灯回路22と同じ構成要素には、同じ参照番号を付して示し、ここでの重複した説明は省く。該回路22aは、微小電流発生回路C1の代わりに、微小電流発生回路C2を備える。微小電流発生回路C2は、スイッチングトランジスタ57に並列に、かつ、逆方向接続されたダイオード66で構成される。該ダイオード66は、スイッチングトランジスタ57がオフの時にオンになり、微小電流Iminを流すインピーダンスのものを用いる。ダイオード66には、インピーダンス調節用に抵抗等の他のインピーダンス要素を直列に接続してもよい。発光素子点灯回路22aは、微小電流発生回路C2以外の構成及び動作は、発光素子点灯回路22と同じである。発光素子点灯回路22aは、微小電流発生回路C2の働きによって、図4(a)に示したのと同様の結果を得ることができる。説明したように、微小電流発生回路C2は、オフ期間中のPWM変調信号の処理等が不要で、極めて簡単な構成であり、結果、発光素子点灯回路22の製造コストを低く抑えることができる。
【0038】
(第2実施例)
図6は、第2実施例の照明装置が備える発光素子点灯回路22bの回路図である。発光素子点灯回路22bは、オフ期間中、チョッパ信号のパルス幅を小さくすることで、微小電流Iminを流し、次のオン期間への切り換わり時の発光素子の迅速な点灯を実現する。第2実施例の照明装置の発光素子点灯回路22b以外の構成は、照明装置1(図1)のものと同じである。発光素子点灯回路22bにおいて、発光素子点灯回路22と同じ構成要素には、同じ参照番号を付して示し、ここでの重複した説明は省く。
【0039】
発光素子点灯回路22bは、AC/DC部50と、電力変換部51と、PWM調光信号を出力する調光信号変換部52と、PWM調光信号処理部53aと、微小電流発生回路C3と、を備える。PWM調光信号処理部53aは、制御部67と、スイッチングトランジスタ57の下流側に流れる電流値に応じた信号を出力する電流検出部60と、を備える。制御部67は、オフ期間中、スイッチングトランジスタ57に出力するチョッパ信号の周期を1〜数%に減少して発光素子21に微小電流Iminを流す。即ち、スイッチングトランジスタ57と制御部67とで構成される回路が、微小電流Iminを発生する微小電流発生回路C3に相当する。
【0040】
制御部67は、比較器68と、該比較器68に大小2種類の基準信号Vref3、Vref4を出力する回路C4とで構成されている。回路C4は、オン期間中、低い基準信号Vref3を出力し、オフ期間中、高い基準信号Vref4を出力する。回路C4は、一端が電源Vccに接続されている抵抗69の他端に抵抗70、71が接続されている。抵抗70の他端は、接地されている。抵抗71の他端は、オフ期間検出回路として機能するスイッチングトランジスタ72を介して接地されている。スイッチングトランジスタ72のゲートには、調光信号変換部52からのPWM調光信号が印加されている。前記構成において、オン期間中、スイッチングトランジスタ72はオンになっており、結果、抵抗69と、抵抗70及び抵抗71と、で第1分圧回路が構成される。オフ期間中、スイッチングトランジスタ72はオフになっており、結果、抵抗69と、抵抗70と、で第2分圧回路が構成される。第1分圧回路の出力する基準電圧Vref3は、第2分圧回路の出力する基準電圧Vref4に比べて低い値になる。
【0041】
比較器68は、オン期間中、電流検出部60で検出される電流値を基準値Vref3に基づいて量子化して出力し、オフ期間中、電流検出部60で検出される電流値を基準値Vref4に基づいて量子化して出力する。この結果、比較器68からは、オン期間中、通常のチョッパ信号が出力され、オフ期間中、前記通常のチョッパ信号に比べて短い周期で、小さなパルス幅のチョッパ信号が出力される。抵抗71は、発光素子21に微小電流Iminが流れる高い抵抗値のものを用いる。なお、抵抗69、70、71の代わりに、他のインピーダンス要素を用いてもよい。
【0042】
図7は、図6に示した回路内の点P6〜P10に流れる信号の波形を示す。点P6の信号は、調光信号変換部52から出力されるPWM変調信号を示す。PWM変調信号の1周期は、例えば、0.5〜10ms(周波数f=0.1kHz〜2kHz)である。点P7は、電流検出部60から出力される信号を示す。該信号の1周期は、例えば、1〜10μs(周波数f=100kHz〜1MHz)である。点P8は、制御部67から出力される信号で、オン期間中、点P7の信号を基準電圧Vref3で量子化した信号と、オフ期間中、点P7の信号を基準電圧Vref4で量子化した信号とが示されている。図示するように、オン期間中に比べて、オフ期間中に出力されるチョッパ信号の周期は、短く、また、パルス幅は、小さい。点P9は、発光素子21に印加される電圧の値を示し、点P10は、発光素子21に流れる電流値を示す。図示するように、オフ期間中、発光素子21には、微小電流Iminが流れ、しきい値電圧Vthを僅かに越える電圧が印加されている。即ち、このオフ期間中、発光素子21は、僅かに発光している状態にあることを示している。そして、次にオン期間に切り換わる時、発光素子21に流れる電流は、印加電圧の増加に比例して増加しており、まったく遅延していない。
【0043】
図7より理解されるように、発光素子点灯回路22bの備える微小電流発生回路C3は、オフ期間中、チョッパ信号のパルス幅を小さくすることで、微小電流Iminを流し、発光素子21の迅速な点灯を実現する。
【0044】
(第3実施例)
図8は、第3実施例の照明装置が備える発光素子点灯回路22cの回路図である。第3実施例の照明装置の発光素子点灯回路22c以外の構成は、照明装置1(図1)のものと同じである。発光素子点灯回路22cは、オフ期間中にのみ動作する定電圧回路を備え、発光素子21に微小電流Iminを流し、次のオン期間への切り換わり時の発光素子の迅速な点灯を実現する。発光素子点灯回路22cにおいて、発光素子点灯回路22と同じ構成要素には、同じ参照番号を付して示し、ここでの重複した説明は省く。
【0045】
発光素子点灯回路22cは、AC/DC部50と、電力変換部51と、PWM調光信号を出力する調光信号変換部52と、PWM調光信号処理部53bと、微小電流発生回路C5と、を備える。抵抗58aが、発光素子21の出力端、電力制御部51の手前側に設けられているが、回路上の働きは、発光素子点灯回路22の抵抗58と同じである。PWM調光信号処理部53bは、制御部74と、スイッチングトランジスタ57の下流側に流れる電流値に応じた信号を出力する電流検出部60と、駆動信号生成部61と、を備えている。制御部74は、図3に示した発光素子点灯回路22の制御部59に加えて、インバータ74aを介してPWM調光信号を受け、オフのPWM変調信号の入力に応じて始動する定電圧回路74bを備えている。前記インバータ74aは、オフ期間の検出回路として機能する。電圧検出部73は、発光素子21の入出力端子間に抵抗75、76を直列接続して構成される分圧回路C6の出力を検出する。定電圧回路74bは、電圧検出部73の出力を帰還信号として用い、点P11への印加電圧を、しきい値Vthを超える値で、かつ、最低の発光レベルで発光させる電圧Vref5(図9を参照)以下の値となるように定電圧制御する。これにより、オフ期間中、発光素子21には、微小電流Iminが流れる。
【0046】
図9は、図8に示した回路内の点P12〜P17に流れる信号の波形を示す。点P12の信号は、調光信号変換部52から出力されるPWM変調信号を示す。PWM変調信号の1周期は、例えば、0.5〜10ms(周波数f=0.1kHz〜2kHz)である。点P13は、電流検出部60から出力される信号を示す。該信号の1周期は、例えば、1〜10μs(周波数f=100kHz〜1MHz)である。点P14は、制御部74から出力される信号で、オン期間中に、前記点P13の信号を基準電圧Vref1(図3を参照)で量子化した信号である。点P15は、電圧検出部73から出力される信号で、オフ期間中は、制御部74内の定電圧回路74bの働きによって、発光素子21に印加される電圧が、しきい値電圧Vthを超える値で、基準電圧Vref5以下の値に収められていることが示されている。点P16は、発光素子21に印加される電圧の値を示し、点P17は、発光素子21に流れる電流値を示す。図示するように、オフ期間中、発光素子21には、微小電流Iminが流れ、しきい値電圧Vthを超えるが、基準電圧Vref5以下の電圧が印加されている。即ち、このオフ期間中、発光素子21は、僅かに発光している状態にあることを示している。そして、次のオン期間への切り換わり時、発光素子21に流れる電流は、印加電圧の増加に比例して増加しており、まったく遅延していない。
【0047】
図9より理解されるように、発光素子点灯回路22cの備える微小電流発生回路C5は、オフ期間中、定電圧回路74bを動作させることで、微小電流Iminを流し、発光素子21の迅速な点灯を実現する。
【0048】
なお、本発明は、上記実施例の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、商用交流電圧を直流電圧に変換するAC/DC部の代わりに、バッテリ等の直流電圧源を用いてもよい。
【0049】
(第4実施例)
図10は、第4実施例の照明装置が備える発光素子点灯回路22dの回路図である。第4実施例の照明装置の発光素子点灯回路22d以外の構成は、照明装置1(図1)のものと同じである。発光素子点灯回路22dは、オフ期間中、発光素子21に印加される電圧に基づいて、該発光素子21に微小電流Iminを流すように制御する回路を備え、次のオン期間への切り換わり時の発光素子21の迅速な点灯を実現する。発光素子点灯回路22dにおいて、発光素子点灯回路22、22cと同じ構成要素には、同じ参照番号を付して示し、ここでの重複した説明は省く。
【0050】
発光素子点灯回路22dは、AC/DC部50と、電力変換部51と、PWM調光信号を出力する調光信号変換部52と、PWM調光信号処理部53cと、微小電流発生回路C7と、を備える。発光素子点灯回路22dは、制御部77と、スイッチングトランジスタ57の下流側に流れる電流値に応じた信号を出力する電流検出部60と、駆動信号生成部61と、を備えている。制御部77は、オン期間中、電流検出部60の出力を基準値Vref6に基づいて量子化し、量子化後の信号(以下、第1信号という)を駆動信号生成部61に出力する。また、制御部77は、オフ期間中、電圧検出部73の出力を基準電圧Vref7に基づいて量子化し、量子化後の信号(以下、第2信号という)を駆動信号生成部61に出力する。前記基準電圧Vref7の値は、第2信号が発光素子21に微小電流Iminが流れ、しきい値電圧Vthを超えるが、基準電圧Vref5(図9を参照)以下の電圧が印加さる駆動信号を生成する信号となる値に設定する。具体的には、制御部77は、前記第1信号を生成する比較器77aと、第2信号を生成する比較器77bと、オン期間中、第1信号を出力し、オフ期間中第2信号を出力する論理ゲート77cとを備えている。論理ゲート77cは、PWM調光信号及び第1信号の入力されるANDゲート77dと、PWM調光信号を反転するインバータ77eと、前記反転されたPWM調光信号及び第2信号とが入力されるANDゲート77fと、ORゲート77gとで構成される。ORゲート77gは、ANDゲート77d及び77fの出力信号が入力端子に入力され、その出力端子が駆動信号生成部61に接続されている。ANDゲート77d及び77f、インバータ77eは、オフ期間の検出回路として機能する。
【0051】
図11は、図10に示した回路内の点P18〜23に流れる信号の波形を示す。点P18の信号は、調光信号変換部52から出力されるPWM変調信号を示す。PWM変調信号の1周期は、例えば、0.5〜10ms(周波数f=0.1kHz〜2kHz)である。点P19は、電流検出部60から出力される信号を示す。該信号の1周期は、例えば、1〜10μs(周波数f=100kHz〜1MHz)である。点P20は、制御部77から出力される信号で、オン期間中に、前記点P19の信号を基準電圧Vref6で量子化した信号である。点P21は、電圧検出部73から出力される信号で、オン期間中は、オフ期間中は、発光素子21に印加される電圧が、しきい値電圧Vthを超える値で、基準電圧Vref5(図9を参照)以下の値に収められていることが示されている。点P22は、発光素子21に印加される電圧の値を示し、点P23は、発光素子21に流れる電流値を示す。図示するように、オフ期間中、発光素子21には、微小電流Iminが流れ、しきい値電圧Vthを超えるが、基準電圧Vref5以下の電圧が印加されている。即ち、このオフ期間中、発光素子21は、僅かに発光している状態にあることを示している。そして、次のオン期間への切り換わり時、発光素子21に流れる電流は、印加電圧の増加に比例して増加しており、まったく遅延していない。
【0052】
(他の実施例について)
図2(b)に示したように、ダイオード特性を有する発光素子に流れる電流は、しきい値電圧Vthを超えるまで、僅かしか流れず、しきい値電圧Vthを超えた後にステップ状に増加する。発光素子のこの特性に着目し、微小電流発生回路は、発光素子21が確実に発光状態となる電流値となるまで微小電流量Iminを増加し、増加した状態で固定する手段を備えてもよい。具体的には、微小電流発生回路は、発光素子21の電流計と、測定した電流値を電流Iとを比較する比較器と、測定した電流値が電流Iを超えるまで微小電流Iminを増加し、増加した状態で固定する調節手段と、を備える。該構成を採用することで、複数の発光素子を用いる照明装置の全ての発光素子の同時発光を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の発光素子点灯回路は、有機EL発光素子に限らず、ダイオード特性を有する発光素子全般の点灯回路として用いることができる。発光素子と点灯回路とを備える発光パネルは、照明装置に使用することができる。
【符号の説明】
【0054】
21 発光素子
22、22a、22b 発光素子点灯回路
50 AC/DC部
51 電力変換部
52 調光信号変換部
53、53a、53b、53c PWM調光信号処理部
57 トランジスタスイッチ(駆動部)
72 検出回路
C1、C2、C3、C5、C7 微小電流発生回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオード特性を有する発光素子を、PWM調光信号によって調光する発光素子点灯回路であって、
入力される調光信号により指定される発光レベルに応じたデューティ比のPWM調光信号を生成する調光信号変換部と、
前記調光信号変換部で生成されたPWM調光信号のオフ期間中、発光素子が発光する設計上のしきい値電圧より大きな電圧が発光素子に印加されるようにする微小電流であって、前記調光信号により指定される最低の発光レベル以下の明るさで、前記発光素子を発光させる微小電流を流す微小電流発生回路と、を備えていることを特徴とする発光素子点灯回路。
【請求項2】
前記発光素子への通電をオン・オフする駆動部を有し、前記駆動部を介して前記発光素子に接続されており、駆動部が駆動されている間、直流電圧を前記発光素子に出力する直流電圧発生回路と、
前記PWM調光信号のオフ期間は前記駆動部をオフし、オン期間は前記駆動部を駆動する駆動信号を出力するPWM調光信号処理部と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の発光素子点灯回路。
【請求項3】
前記直流電圧発生回路は、チョッパ回路を含み、該チョッパ回路を介して直流電圧を前記発光素子に出力し、
前記駆動部は、チョッパ信号によりチョッパ回路内の電流をチョップするスイッチングトランジスタであり、チョッパ信号が入力されていないときは前記発光素子への通電をオフにするものであり、
前記PWM調光信号処理部は、駆動信号として、PWM調光信号のオン期間中、チョッパ信号を前記トランジスタに出力する、ことを特徴とする請求項2に記載の発光素子点灯回路。
【請求項4】
前記微小電流発生回路は、一端が発光素子の下流側に接続され、他端が接地されている、インピーダンス要素である、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の発光素子点灯回路。
【請求項5】
前記インピーダンス要素が抵抗である、ことを特徴とする請求項4に記載の発光素子点灯回路。
【請求項6】
前記インピーダンス要素がダイオードである、ことを特徴とする請求項4に記載の発光素子点灯回路。
【請求項7】
前記インピーダンス要素が、オン状態のスイッチングトランジスタである、ことを特徴とする請求項4に記載の発光素子点灯回路。
【請求項8】
前記微小電流発生回路は、前記直流電圧発生回路の駆動部に並列に、かつ、逆方向接続されたダイオードであって、駆動部がオフの時にオンになり、前記微小電流を流すインピーダンスを有しているダイオードで構成されている、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の発光素子点灯回路。
【請求項9】
前記PWM調光信号処理部は、前記オフ期間を検出する検出回路を備え、
前記微小電流発生回路は、前記検出回路によるオフ期間の検出に応じて、前記駆動信号を、微小電流を流すデューティ比の駆動信号に変換して駆動部に出力することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の発光素子点灯回路。
【請求項10】
前記PWM調光信号処理部は、前記オフ期間を検出する検出回路を備え、
前記微小電流発生回路は、前記検出回路によるオフ期間の検出に応じて始動して、発光素子への印加電圧がしきい値電圧より大きく、かつ、前記調光信号により指定される最低の発光レベル以下の明るさで前記発光素子を発光させる特定の電圧を発光素子に印加する定電圧回路を備えていることを特徴とする請求項9に記載の発光素子点灯回路。
【請求項11】
前記発光素子が有機EL発光素子である、ことを特徴とする請求項1乃至請求項10の何れか一項に記載の発光素子点灯回路。
【請求項12】
1以上の有機EL発光素子を有する照明パネルを備え、
各発光素子は、請求項1乃至請求項10の何れか一項に記載の発光素子点灯回路を有している、ことを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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