発光装置およびその方法、並びに機器
【課題】導光体の挿抜口端縁の耐久性を高めるとともに、挿抜口の表示を適切に行う。
【解決手段】発光装置では、スリット状の挿抜口23aを有しその端縁に保護面23dの形成された導光体23と、発光素子とが設けられ、保護面23dの形成領域の中央付近に、伝播光を表側に反射散乱する反射散乱領域31が形成されており、その外側に、伝播光を表側に反射散乱する反射散乱領域32が形成されており、伝播光がそれらで反射散乱されて保護面23dを介して出射される。
【解決手段】発光装置では、スリット状の挿抜口23aを有しその端縁に保護面23dの形成された導光体23と、発光素子とが設けられ、保護面23dの形成領域の中央付近に、伝播光を表側に反射散乱する反射散乱領域31が形成されており、その外側に、伝播光を表側に反射散乱する反射散乱領域32が形成されており、伝播光がそれらで反射散乱されて保護面23dを介して出射される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状物が挿抜されるスリット状の挿抜口を有する機器において、その挿抜口の表示を適切に行うのに好適な発光装置およびその方法、並びに機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、CD(compact disk)、DVD(digital versatile disk)の記録再生機や、現金自動支払い機、自動券売機などの、板状物の挿抜されるスリット状の挿抜口を有する機器が数多く存在する。これらの機器においては、その挿抜口を使用者に分かり易いように表示することがしばしば行われる。
【0003】
このような表示手法としては、例えば、図1(a)に示すように、導光体11の面11aをブラスト加工した面とし、このブラスト面の細かい凹凸により、光源12から出射し導光体11を伝播してきた光を反射散乱させる手法が存在する。また、図1(b)に示すように、導光体11中に分散するように混入した拡散材14により、反射散乱させる手法もある。
【0004】
挿抜口の周囲を構成する透明部材を、裏側からLED(Light Emitting Diode)によって照射して表示する手法もある。(例えば、特許文献1参照)
【0005】
また、挿抜口の周囲に凹凸パターン領域を設けた透明基板を用い、この透明基板を伝播した光をこの凹凸パターン領域で散乱させて発光させる手法もある。この手法では、少ない発光素子で広い領域を光らせることが可能となっている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】再公表WO2002/042990号公報
【特許文献2】特開2003−43958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の拡散材混入やブラスト加工による手法では、光の利用効率が低いために発光素子の数を多く必要としていた。また、導光体上の発光素子に近いところと遠いところで明るさに差が発生し、機器のデザイン性を犠牲にする必要があった。
【0008】
特許文献1の手法では、挿抜口の幅を表す線を表示するために、LEDを多数並べる必要がある。また、線の表示を連続的にみせるためには、LEDをさらに多く並べる必要があり、高コストとなる。特許文献2の手法では、挿抜口の端縁にそのまま角が残されており、挿抜するカードキーの接触による導光体の損傷については全く考慮されていない。
【0009】
本発明は、上述した状況に鑑みてなされたものであり、導光体を伝播する光を反射散乱させて発光を行う発光装置において、導光体の挿抜口端縁の耐久性を高めるとともに、挿抜口の表示を適切に行うことができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の側面の発光装置は、細長い板状であって導光体長手方向に沿うスリット状の挿抜口を有する導光体と、前記導光体に光を入射する発光素子とを備え、前記導光体の表側の面における前記挿抜口の端縁に保護面が形成されており、前記導光体における前記保護面の形成領域の中央付近に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第1の反射散乱領域が形成されており、前記導光体における前記第1の帯状領域より外側に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第2の反射散乱領域が形成されており、前記導光体中を伝播してきた光が前記第1および第2の帯状領域で反射散乱されて前記保護面を介して出射される。
【0011】
本発明の第1の側面の発光装置には、前記保護面を、傾斜面または湾曲面として設けることができる。
【0012】
本発明の第1の側面の発光装置には、前記第2の反射散乱領域を、前記保護面の形成領域の外側端の位置に形成することができる。
【0013】
本発明の第1の側面の発光装置には、前記発光素子を、導光体長手方向の端部に設けることができる。
【0014】
本発明の第1の側面の発光装置では、前記第1および第2の反射散乱領域には、前記光源からの光を表側に反射する反射面を有するドット凹部を所定間隔を空けて複数設けることができる。
【0015】
本発明の第1の側面の発光装置には、前記ドット凹部の反射面を、前記ドット凹部の形成面に対して40〜60°となるように形成することができる。
【0016】
本発明の第1の側面の発光装置には、前記ドット状凹部を、前記発光素子から離れるほど深くなるように形成することができる。
【0017】
本発明の第1の側面の発光方法では、細長い板状であって導光体長手方向に沿うスリット状の挿抜口を有する導光体と、前記導光体に光を入射する発光素子とを備え、前記導光体の表側の面における前記挿抜口の端縁に保護面が形成されており、前記導光体における前記保護面の形成領域の中央付近に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第1の反射散乱領域が形成されており、前記導光体における前記第1の帯状領域より外側に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第2の反射散乱領域が形成されている発光装置を用い、前記導光体中を伝播してきた光を前記第1および第2の帯状領域で反射散乱させて前記保護面を介して出射させる。
【0018】
本発明の第2の側面の機器は、筐体と、前記筐体に固定された細長い板状であって導光体長手方向に沿うスリット状の挿抜口を有する導光体と、前記導光体に光を入射する発光素子とを有する発光装置とを備え、前記導光体の表側の面における前記挿抜口の端縁に保護面が形成されており、前記導光体における前記保護面の形成領域の中央付近に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第1の反射散乱領域が形成されており、前記導光体における前記第1の帯状領域より外側に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第2の反射散乱領域が形成されており、前記導光体中を伝播してきた光が前記第1および第2の帯状領域で反射散乱されて前記保護面を介して出射される。
【0019】
本発明の第1の側面においては、細長い板状であって導光体長手方向に沿うスリット状の挿抜口を有する導光体と、前記導光体に光を入射する発光素子とが設けられ、前記導光体の表側の面における前記挿抜口の端縁に保護面が形成されており、前記導光体における前記保護面の形成領域の中央付近に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第1の反射散乱領域が形成されており、前記導光体における前記第1の帯状領域より外側に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第2の反射散乱領域が形成されており、前記導光体中を伝播してきた光が前記第1および第2の帯状領域で反射散乱されて前記保護面を介して出射される。
【0020】
本発明の第2の側面においては、筐体と、前記筐体に固定された細長い板状であって導光体長手方向に沿うスリット状の挿抜口を有する導光体と、前記導光体に光を入射する発光素子とを有する発光装置とが設けられ、前記導光体の表側の面における前記挿抜口の端縁に保護面が形成されており、前記導光体における前記保護面の形成領域の中央付近に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第1の反射散乱領域が形成されており、前記導光体における前記第1の帯状領域より外側には、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第2の反射散乱領域が形成されており、前記導光体中を伝播してきた光が前記第1および第2の帯状領域で反射散乱されて前記保護面を介して出射される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の発光装置は、導光体を伝播する光を反射散乱させて発光を行う発光装置において、導光体の挿抜口端縁の耐久性を高めるとともに、挿抜口の表示を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】導光体を用いて挿抜口を表示する従来の手法の一例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る発光装置22を用いた記録再生機器20を示す外観斜視図である。
【図3】図2の発光装置22を示す斜視図である。
【図4】図2の発光装置22を構成する導光体23を示す正面図および断面図である。
【図5】図4の導光体23における光の伝播の様子を示す正面図である。
【図6】図4の導光体23の詳細例を示す背面図である。
【図7】図6のドット凹部51の一例を示す斜視図である。
【図8】図4の導光体23の変形例である導光体23−0を示す断面図である。
【図9】図6の導光体23−0についてのB−B断面図、並びに図4の導光体23およびその変形例である導光体23−1、23−1’、23−2、23−2’を前記B−Bに対応する線分で分断した断面図である。
【図10】図4の導光体23の変形例である導光体23−2を示す背面図である。
【図11】図4の導光体23の変形例である導光体23−3を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下の図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、特に断らない限り、現実の寸法や比率を反映したものではないことに留意すべきである。また、図面相互間においても寸法や比率が相互に異なる部分があることはもちろんである。
また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置などを下記のものに特定するものではない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0024】
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る発光装置を用いた機器の一例として、板状物としてのCDを挿抜する挿抜口の端縁を表示する記録再生機器について説明する。図2は、記録再生機器20の外観斜視図を示している。
【0025】
図2では、記録再生機器20は、略直方体形状の筐体21を備え、この筐体21の正面の中央やや上に挿抜するCDが通過する筐体穴21aが形成されている。なお、以下、筐体21の正面と直交する方向を前後方向とし、正面を前とする。図2の例では、筐体穴21aは、記録再生機器20の前面における水平方向(図中左右方向)に細長い形状である。ただし、筐体穴21aの長手方向は、水平方向に限定されず、用途等に応じて自由に選択できる。この筐体穴21aから、筐体21の内部に配置された発光装置22の導光体23の一部が外部に露出している。導光体23は、細長い板状であり、筐体穴21aの長手方向に沿って配置されている。導光体23には、その長手方向に延在するスリット状の挿抜口23aが設けられ、この挿抜口23a全体が、筐体穴21aから外部に露出している。使用者は、水平となるように手で持ったCDを、筐体穴21aから露出する導光体23の挿抜口23aに挿抜する。
【0026】
図3は、発光装置22の一例を示す斜視図である。この図では、筐体21を点線で示している。なお、記録再生機器20の筐体21の内部には、図示はしていないが、例えば、CDをロード/アンロードする駆動装置や記録再生を含む様々な機能を実現する制御装置などが配置されている。
【0027】
図3に示すように、発光装置22は、導光体23および発光素子24から構成される。導光体23は、発光素子24の波長に対して透明な材質であり、例えば、可視光の場合、アクリル、ポリカーボネート等の合成樹脂やガラスなどである。導光体23は、板状の導光体であり、その厚さは、例えば、0.3mm〜3mmとすることができる。本実施形態における導光体23の厚さは、2mmであるとする。発光素子24は、例えば、LED素子で構成される。なお、図3において、一点鎖線の内側が、図2の筐体穴21aから外部に露出している。導光体23および発光素子24は、筐体21に対して固定されている。
【0028】
図4を参照して、導光体23の詳細について説明する。図4(a)は導光体23を示す正面図(前面図)であり、図4(b)は図4(a)の導光体23についてのC−C断面図である。
【0029】
図4(a)に示すように、導光体23は、細長い形状の並行する一対の導光体唇部23b、23bと、これら導光体唇部23b、23bの両端に一体的に設けられた導光体分岐部23cとからなる。これらの導光体唇部23b、23bおよび導光体分岐部23c、23cが環状に配置されることで、内側に挿抜口23aが形成されている。この例では、導光体唇部23b、23bは、いずれも直線状であるがこれに限らず、曲線状であってもよい。導光体唇部23bの幅は、例えば、0.5mm〜5mmとすることができる。ただし、導光体23の厚さが下限の0.3mm程度である場合は、導光体23の強度の低下を避けるために、導光体唇部23bの幅を、例えば、上限の5mm程度とするのがよい。本実施形態における導光体唇部23bの幅は、3.5mmであるとする。
【0030】
図4(b)に示すように、導光体分岐部23cの断面は、略四角形状である。ただし、導光体23の前面(以下、適宜、表側の面23eと称する)における挿抜口23aの端縁には、挿抜するCDの接触によって導光体23が傷つかないように、保護面23dが形成されている。ここで、保護面23dとは、表側の面23eに形成された、挿抜口23aの端縁に近づくほど厚さの減少する面である。本実施形態では、保護面23dは傾斜面(C面)としているが、これに限らず、湾曲面(フィレット面)などであってもよい。
【0031】
図3に戻り、本実施形態の発光装置22の詳細についてさらに説明する。
【0032】
図3では、発光素子24を一方の導光体分岐部23cの外側端面に配置している。ただし、発光素子24は1つに限らず、複数配置してもよい。さらに、発光素子24を他方の導光体分岐部23cに1以上配置してもよい。また、発光素子24の配置される位置は、導光体分岐部23cに限られず、例えば、導光体唇部23bであってもよい。ただし、発光素子24を導光体唇部23bに設ける場合には、導光体唇部23b長手方向への光の伝播を促進するため、適宜、導光体唇部23bの発光素子24を設ける部分に、光の進行方向を導光体唇部23b長手方向に変更する光路変更部を設けるとよい。
【0033】
図3の例では、正面からみて左側の導光体分岐部23cのみに発光素子24が配置されている。なお、以下、左側の導光体分岐部23cを導光体分岐部23c1、右側の導光体分岐部23cを導光体分岐部23c2とそれぞれ称する。
【0034】
次に、図5を参照して、発光素子24から出射した光の導光体23中における伝播について説明する。
【0035】
図5(a)は導光体23における発光素子24側の部分についての、図5(b)は導光体23における発光素子24側とは反対側の部分についての、光の伝播の様子をそれぞれ示す正面(前面)図である。なお、図5(a)および図5(b)中の矢印は、発光素子24から出射し導光体23中を伝播する光の例を示している。
【0036】
図5(a)に示すように、発光素子24から導光体23の長手方向に対して小さい角度で出射した光L1は、導光体分岐部23c1の外側端面23qに入射する。入射した光L1は、導光体分岐部23c1の内側端面23pで反射し、導光体唇部23bの外側端面23qで反射する。反射した光L1は、導光体唇部23bの内側端面23pで反射し、導光体唇部23bの外側端面23qで反射する。このように、光L1は、導光体唇部23bの内側端面23pと外側端面23qでの反射を交互繰り返しながら、導光体唇部23b中を伝播していく。
【0037】
導光体23の長手方向に対してやや大きい角度で出射した光L2は、導光体分岐部23c1の外側端面23qに入射する。入射した光L2は、導光体分岐部23c1の内側端面23pで反射し、導光体唇部23bの外側端面23qで反射する。反射した光L2は、導光体唇部23bの内側端面23pで反射し、導光体唇部23bの外側端面23qで反射する。このように、光L2は、導光体唇部23bの内側端面23pと外側端面23qでの反射を交互繰り返しながら、導光体唇部23b中を伝播していく。この光L2の、導光体長手方向に対する角度は、光L1に比べてやや大きくなる。
【0038】
導光体23の長手方向に対してさらに大きい角度で出射した光L3は、導光体分岐部23c1の外側端面23qに入射する。入射した光L3は、導光体唇部23bの外側端面23qで反射し、導光体唇部23bの内側端面23pで反射する。反射した光L3は、導光体唇部23bの外側端面23qで反射し、導光体唇部23bの内側端面23pで反射する。このように、光L3は、導光体唇部23bの外側端面23qと内側端面23pでの反射を交互に繰り返しながら、導光体唇部23b中を伝播していく。この光L3の、導光体長手方向に対する角度は、光L1に比べてさらに大きくなる。
【0039】
このように、導光体23を伝播する光の、導光体長手方向に対する角度は分布を持っている。これにより、後述する反射散乱領域によって反射散乱される光の方向が導光体23の内側端面23p側や外側端面23q側に傾斜することになる。
【0040】
一方、導光体23の発光素子24とは反対側の部分では、図5(b)の例に示すように、例えば、伝播してきて導光体唇部23bの外側端面23qで反射した光L4は、導光体分岐部23c2の外側端面23qで反射し、導光体分岐部23c2の屈曲部分に達する。また、伝播してきて導光体唇部23bの内側端面23pで反射した光L5は、導光体分岐部23c2の外側端面Pで反射し、導光体分岐部23c2の屈曲部分に達する。このようにして、導光体唇部23b中を伝播してきた光は、導光体分岐部23c2の屈曲部分にまで達するため、導光体分岐部23c2の内側端面23pに沿って形成される後述する反射散乱領域31等での反射散乱を生じさせることができ、この領域でも発光を行うことが可能となる。
【0041】
以上に説明した導光体23には、その挿抜口23aにおける表側の面23eの端縁に保護面23dを形成していたが、説明の都合上、次に説明する図6の導光体23−0には、保護面23dを形成せず、端縁の角をそのまま残していることとする。なお、導光体23−0における表側の面23eの端縁以外は、導光体23と同一構成であり、その説明は適宜省略する。
【0042】
図6を参照して、導光体23に形成される伝播してきた光を反射散乱する第1の反射散乱領域としての反射散乱領域31について説明する。図6は、導光体23における発光素子24側とは反対側の部分の一例を示す背面(後面)図である。
【0043】
図6に示すように、反射散乱領域31は、導光体23−0の裏側の面23fにおける挿抜口23aの端縁に沿って挿抜口23aの外周に設けた帯状の領域である。この反射散乱領域31には、導光体23中を伝播する光を反射または散乱するために、例えば、溝やドットを形成したり、ブラスト加工をしたり、白色塗料を印刷したりする。
【0044】
図6の例では、反射散乱領域31には、その延在方向に所定の間隔を空けて多数のドット凹部51を形成している。なお、これらのドット凹部51は、反射散乱領域31において1列に配列する必要はなく、例えば複数列に配列されてもよい。
【0045】
図7は、反射散乱領域31に形成されるドット凹部51の一例を示す斜視図である。
【0046】
図7に示すように、ドット凹部51は、反射散乱領域31の延在方向に略直交する断面三角形の溝状の凹部として構成されている。このドット凹部51の縦幅s(反射散乱領域31の延在方向の幅)、横幅(反射散乱領域31の延在方向と直交する方向の幅)t、および深さuは、例えば、0.20mmである。ただし、後述するように、ドット凹部51の深さuを変化させる場合、縦幅sは深さuに依存して変化する。例えば、深さuを0.15mm〜0.25mmの範囲で変化させる場合、縦幅sは0.15mm〜0.25mmの範囲で変化する。なお、この説明では、深さuの方向は、裏側の面23fと直交する方向であることを前提としているが、必ずしもそうである必要はない。また、深さuは、上述した範囲に限られず、0.01mm〜1mmの範囲であればよい。凹部の形成手法としては、例えば、切削加工やレーザ加工、導光体または刃を加熱した状態で導光体に刃を押し当てる手法などを採用できる。
【0047】
図7の例では、ドット凹部51を構成する溝の断面三角形についての発光素子24側の辺を構成する面が反射面51aとなっている。反射面51aによって導光体23中を伝播してきた光Lが反射され、表側の面23eを介して表側に出射する。反射面51aと裏側の面23fのなす角θは、導光体23中を伝播してきた光を効率よく利用するため、例えば、40°乃至60°とするのが好適である。
【0048】
なお、ドット凹部51は、上述した断面三角形状の溝に限定されず、例えば、内部に向かうほど径の小さくなる円錐形状の凹部として構成されてもよい。円錐形状の凹部として構成されるドット凹部51は、導光体面内で回転対称のため、方向を気にせずに形成できるという利点がある。
【0049】
図8は、反射散乱領域31の延在方向で分断した導光体23−0の一例を示す断面図である。
【0050】
図8の例では、個々のドット凹部51の深さを、発光素子24から遠くなるほど深くなるように加工している。これにより、発光素子24から遠くなるほど、反射面51aの面積が大きくなり、導光体23中を伝播する光の利用効率が高くなる。このため、導光体23中を伝播する光が小さくなっても、個々のドット凹部51からの反射光を一定に保つことができる。従って、発光素子24に近いところのドット凹部51と遠いところのドット凹部51についての明るさの差を小さくできることから、導光体23−0の輝度ムラを軽減できて、より均一な明るさにできる。この結果、記録再生機器20のデザイン性を犠牲にしなくて済むようになる。ただし、ドット凹部51の深さは一定にしてはいけないという訳ではなく、ドット凹部51の深さを一定にしてドット凹部51の形成が容易となる利点を利用してもよい。その他、ドット凹部51を特定の箇所で深くまたは浅くすることでその周囲に比べて輝度を高めるまたは低める、といった輝度のコントロールも可能である。
【0051】
このように、導光体に反射面の角度を調整した溝を形成すると、観察方向(前方)に対し高い指向性で光を出射することができる。このため、少ない数の発光素子を用いて挿抜口の表示を行うことが可能となる。これに対して、従来の拡散材の混入やブラスト加工等では、光が拡散するので出射光の指向性は低く、また、輝度を均一にすることも困難である。
【0052】
次に、図9を参照して、反射散乱領域の配置と発光視認性の関係について説明する。
【0053】
図9(a)は、図6の導光体23−0についてのB−B断面図である。
【0054】
図9(a)に示すように、保護面23dを形成しない導光体23−0では、反射散乱領域31で内側端面23p側(以下、適宜、内側と略称する)に傾斜して反射散乱した光L1は、表側の面23eで屈折し、やや内側の方向に進路を変更して出射する。反射散乱領域31で表側正面に反射散乱した光L2は、ほぼそのまま表側正面に出射する。反射散乱領域31で外側端面23q側(以下、適宜、外側と略称する)に傾斜して反射散乱した光L3は、表側の面23eで屈折し、やや外側に進路を変更して出射する。従って、導光体23−0の正面方向、内側に傾斜した方向、外側に傾斜した方向のいずれからでも、発光を視認できる。
【0055】
図9(b)は、図9(a)の導光体23−0の挿抜口23aの表側の面23eの端縁に保護面23dを生成した導光体23について図6のB−Bに対応する線分で分断した断面図である。この導光体23については、図2乃至図4を参照して前述している。
【0056】
図9(b)の例では、反射散乱領域31が保護面23dの形成領域の外側端23ddの位置に形成されている。この導光体23では、反射散乱領域31で内側に傾斜して反射散乱した光L1は、保護面23dにほぼ直交するため、屈折による進路の変更が少なく、ほぼそのままの方向に出射する。反射散乱領域31で表側正面に反射散乱した光L2は、表側の面23eの外側端23dd付近を通り、ほぼそのままの方向に出射する。反射散乱領域31で外側に傾斜して反射散乱した光L3は、表側の面23eで屈折し、やや外側に進路を変更して出射する。従って、導光体23の正面方向、内側に傾斜した方向、外側に傾斜した方向のいずれからでも、発光を視認できる。ただし、反射散乱領域31と内側端面23pとの距離が離れているため、挿抜口23aの端縁が発光しているとは視認されにくい。また、図9(c)は、保護面23dとして傾斜面に代えて湾曲面を形成した導光体23’の例である。この例でも、同様の作用効果を奏するのでその説明を省略する。
【0057】
このように反射散乱領域31と内側端面23pとの距離が離れると挿抜口23aの端縁が発光していると視認されにくいので、反射散乱領域31を内側端面23pに近づけることが好ましい。
【0058】
図9(d)は、導光体23において反射散乱領域31を保護面23dの形成領域の中央付近に変更した導光体23−1について図6のB−Bに対応する線分で分断した断面図である。なお、導光体23−1において、導光体23の対応する部分には同一の符号を付しており、その説明は適宜省略する。
【0059】
図9(d)に示すように、反射散乱領域31で内側に傾斜して反射散乱した光L1は、もはや保護面23dを外れてしまう。光L1より内側への傾斜のやや少ない光L1’は、保護面23dにやや斜めに入射するため、やや外側に進路を変えるように屈折し、ほぼ表側正面に出射する。反射散乱領域31で表側正面に反射散乱した光L2は、保護面23dに斜めに入射し、やや外側に進路を変えるように屈折し、正面より外側に向けて出射する。反射散乱領域31で外側に傾斜して反射散乱した光L3は、表側の面23eで屈折し、やや外側に進路を変更して出射する。従って、導光体23−1の正面方向と外側に傾斜した方向とについては、発光を視認できるが、内側に傾斜した方向については、発光を視認しにくくなってしまう。また、図9(e)は、保護面23dとして傾斜面に代えて湾曲面を形成した導光体23−1’の例である。この例でも、同様の作用効果を奏するのでその説明を省略する。
【0060】
図9(f)は、導光体23−1において反射散乱領域32を保護面23dの形成領域の外側端23ddの位置に新たに追加した導光体23−2について図6のB−Bに対応する線分で分断した断面図である。なお、導光体23−2において、導光体23−1の対応する部分には同一の符号を付しており、その説明は適宜省略する。
【0061】
図9(f)に示すように、反射散乱領域31で内側に傾斜して反射散乱した光L1’は、保護面23dにやや斜めに入射するため、やや外側に進路を変更して屈折し、ほぼ表側正面に出射する。反射散乱領域31で表側正面に反射散乱した光L2は、保護面23dに斜めに入射し、やや外側に進路を変更して屈折し、正面より外側に向けて出射する。反射散乱領域31で外側に傾斜して反射散乱した光L3は、表側の面23eで屈折し、やや外側に進路を変更して出射する。一方、反射散乱領域31で内側に傾斜して反射散乱した光M1は、保護面23dにほぼ直交するため、屈折による進路の変更が少なく、ほぼそのままの方向に出射する。反射散乱領域31で表側正面に反射散乱した光M2は、表側の面23eの外側端23dd付近を通り、ほぼそのままの方向に出射する。
【0062】
反射散乱領域32で内側に傾斜して反射散乱した光L1’が内側に傾斜した方向に向かわないのに対して、反射散乱領域32で内側に傾斜して反射散乱した光M1が内側に傾斜した方向に出射するため、導光体23−2の内側に傾斜した方向からみても発光を視認できるようになる。このため、導光体23−2の正面方向、内側に傾斜した方向、外側に傾斜した方向のいずれからでも、発光を視認できるようになる。また、反射散乱領域31を内側端面23p寄りに形成しているので、挿抜口23aの端縁が発光しているのを視認しやすい。このように、導光体23−2では、表示の視認性と分かり易さとを両立することができる。また、図9(g)は、保護面23dとして傾斜面に代えて湾曲面を形成した導光体23−2’の例である。この例でも、同様の作用効果を奏するのでその説明を省略する。
【0063】
図10は、導光体23−2の発光素子24とは反対側の部分を示す背面(後面)図である。なお、上述した図9(f)は、図10の導光体23−2についてのBB−BB断面図である。
【0064】
図10に示すように、反射散乱領域32は、導光体23−2の裏側の面23fにおける挿抜口23aの端縁に沿って挿抜口23aの外周に設けた帯状の領域である。この反射散乱領域32には、導光体23中を伝播する光を反射または散乱するために、例えば、溝やドットを形成したり、ブラスト加工をしたり、白色塗料を印刷したりする。この反射散乱領域32と反射散乱領域31に用いる反射散乱手法は同じでもよいし異なっていてもよい。
【0065】
図10の例では、反射散乱領域32には、その延在方向に所定の間隔を空けて多数のドット凹部52を形成している。なお、これらのドット凹部52は、反射散乱領域32において1列に配列する必要はなく、例えば複数列に配列されてもよい。また、図10の例では、反射散乱領域32を保護面23dの形成領域の外側端23ddの位置に設けているが、例えば、反射散乱領域32を保護面23dの形成領域の外側端23ddの位置より外側に設けてもよい。
【0066】
なお、図10の例では、反射散乱領域31と反射散乱領域32との間に反射または散乱を行うための構造のない非反射散乱領域が存在する。本実施形態では、非反射散乱領域の幅は、例えば、0.25mmとなっているが、それに限定されない。この非反射散乱領域の幅(反射散乱領域31と反射散乱領域32との間の距離)と、上述したドット凹部52の深さuとは、導光体23−2の形状により、すなわち、例えば、導光体23−2の幅と厚さ、反射散乱領域31、32などにより、適宜調整される。また、このような非反射散乱領域を設けずに、反射散乱領域31と反射散乱領域32との間にも反射または散乱を行うための構造(例えば、ドット凹部)を設けてもよい。
【0067】
以上においては、導光体に設ける反射散乱領域を2つ設けているが、さらに1以上の反射散乱領域をさらに設けてもよい。
【0068】
図11は、導光体23−2において反射散乱領域32の外側に反射散乱領域33をさらに設けた導光体23−3を示す背面図(後面図)である。図11の導光体23−3において、図10の導光体23−2と同一の部分には同じ符号を付しており、その説明を適宜省略する。
【0069】
図11に示すように、反射散乱領域33は、裏側の面23fにおける挿抜口23aの端縁に沿って挿抜口23aの外周に設けた帯状の領域である。ただし、この反射散乱領域33は、必ずしも裏側の面23fに設ける必要はなく、導光体23−3の表側の面23eに設けてもよい。この反射散乱領域33には、導光体23中を伝播する光を反射または散乱するために、例えば、溝やドットを形成したり、ブラスト加工をしたり、白色塗料を印刷したりする。なお、白色塗料印刷を用いる場合、反射散乱領域33は、出射面である表側の面23eには設けることができず、裏側の面23fに設ける必要がある。この反射散乱領域33と、反射散乱領域31、32とに用いる反射散乱手法は同じでもよいし異なっていてもよい。
【0070】
なお、図11の例では、反射散乱領域32と反射散乱領域33との間に反射または散乱を行うための構造のない非反射散乱領域が存在するが、このような非反射散乱領域を設けずに、反射散乱領域32と反射散乱領域33との間にも反射または散乱を行うための構造(例えば、ドット凹部)を設けてもよい。従って、例えば、反射散乱領域32、反射散乱領域33、およびそれらの間の領域について、ドット凹部に代えて反射散乱領域32の内側端から反射散乱領域33の外側端まで貫通する溝を延在方向に直交して多数設けるようにするといったことも可能である。
【0071】
図11の例では、一点鎖線の内側が、図2の筐体穴21aから外部に露出している。この外部露出した領域にまだ余裕がある場合は、さらに反射散乱領域を設けてもよい。
【0072】
このように、反射散乱領域をより多く設けることで、より一層分かり易く挿抜口23aを光らせることが可能となる。
【0073】
なお、上述した実施形態においては、導光体は筐体21の内部に配置され、その一部が筐体穴21aから外部露出しているが、それ以外にも様々な態様がありうる。例えば、導光体23の前面と筐体21の前面とが面一となるように一体化されており、導光体全体が外部に露出するような態様も可能である。
【符号の説明】
【0074】
20 記録再生機器, 21 筐体, 22 発光装置, 23 導光体, 23a 挿抜口, 23b 導光体唇部, 23c、23c1、23c2 導光体分岐部, 23d 保護面, 23dd 外側端 ,23e 表側の面, 23f 裏側の面, 23p 内側端面, 23q 外側端面, 31、32、33 反射散乱領域, 51、52、53 ドット凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状物が挿抜されるスリット状の挿抜口を有する機器において、その挿抜口の表示を適切に行うのに好適な発光装置およびその方法、並びに機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、CD(compact disk)、DVD(digital versatile disk)の記録再生機や、現金自動支払い機、自動券売機などの、板状物の挿抜されるスリット状の挿抜口を有する機器が数多く存在する。これらの機器においては、その挿抜口を使用者に分かり易いように表示することがしばしば行われる。
【0003】
このような表示手法としては、例えば、図1(a)に示すように、導光体11の面11aをブラスト加工した面とし、このブラスト面の細かい凹凸により、光源12から出射し導光体11を伝播してきた光を反射散乱させる手法が存在する。また、図1(b)に示すように、導光体11中に分散するように混入した拡散材14により、反射散乱させる手法もある。
【0004】
挿抜口の周囲を構成する透明部材を、裏側からLED(Light Emitting Diode)によって照射して表示する手法もある。(例えば、特許文献1参照)
【0005】
また、挿抜口の周囲に凹凸パターン領域を設けた透明基板を用い、この透明基板を伝播した光をこの凹凸パターン領域で散乱させて発光させる手法もある。この手法では、少ない発光素子で広い領域を光らせることが可能となっている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】再公表WO2002/042990号公報
【特許文献2】特開2003−43958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来の拡散材混入やブラスト加工による手法では、光の利用効率が低いために発光素子の数を多く必要としていた。また、導光体上の発光素子に近いところと遠いところで明るさに差が発生し、機器のデザイン性を犠牲にする必要があった。
【0008】
特許文献1の手法では、挿抜口の幅を表す線を表示するために、LEDを多数並べる必要がある。また、線の表示を連続的にみせるためには、LEDをさらに多く並べる必要があり、高コストとなる。特許文献2の手法では、挿抜口の端縁にそのまま角が残されており、挿抜するカードキーの接触による導光体の損傷については全く考慮されていない。
【0009】
本発明は、上述した状況に鑑みてなされたものであり、導光体を伝播する光を反射散乱させて発光を行う発光装置において、導光体の挿抜口端縁の耐久性を高めるとともに、挿抜口の表示を適切に行うことができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の側面の発光装置は、細長い板状であって導光体長手方向に沿うスリット状の挿抜口を有する導光体と、前記導光体に光を入射する発光素子とを備え、前記導光体の表側の面における前記挿抜口の端縁に保護面が形成されており、前記導光体における前記保護面の形成領域の中央付近に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第1の反射散乱領域が形成されており、前記導光体における前記第1の帯状領域より外側に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第2の反射散乱領域が形成されており、前記導光体中を伝播してきた光が前記第1および第2の帯状領域で反射散乱されて前記保護面を介して出射される。
【0011】
本発明の第1の側面の発光装置には、前記保護面を、傾斜面または湾曲面として設けることができる。
【0012】
本発明の第1の側面の発光装置には、前記第2の反射散乱領域を、前記保護面の形成領域の外側端の位置に形成することができる。
【0013】
本発明の第1の側面の発光装置には、前記発光素子を、導光体長手方向の端部に設けることができる。
【0014】
本発明の第1の側面の発光装置では、前記第1および第2の反射散乱領域には、前記光源からの光を表側に反射する反射面を有するドット凹部を所定間隔を空けて複数設けることができる。
【0015】
本発明の第1の側面の発光装置には、前記ドット凹部の反射面を、前記ドット凹部の形成面に対して40〜60°となるように形成することができる。
【0016】
本発明の第1の側面の発光装置には、前記ドット状凹部を、前記発光素子から離れるほど深くなるように形成することができる。
【0017】
本発明の第1の側面の発光方法では、細長い板状であって導光体長手方向に沿うスリット状の挿抜口を有する導光体と、前記導光体に光を入射する発光素子とを備え、前記導光体の表側の面における前記挿抜口の端縁に保護面が形成されており、前記導光体における前記保護面の形成領域の中央付近に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第1の反射散乱領域が形成されており、前記導光体における前記第1の帯状領域より外側に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第2の反射散乱領域が形成されている発光装置を用い、前記導光体中を伝播してきた光を前記第1および第2の帯状領域で反射散乱させて前記保護面を介して出射させる。
【0018】
本発明の第2の側面の機器は、筐体と、前記筐体に固定された細長い板状であって導光体長手方向に沿うスリット状の挿抜口を有する導光体と、前記導光体に光を入射する発光素子とを有する発光装置とを備え、前記導光体の表側の面における前記挿抜口の端縁に保護面が形成されており、前記導光体における前記保護面の形成領域の中央付近に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第1の反射散乱領域が形成されており、前記導光体における前記第1の帯状領域より外側に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第2の反射散乱領域が形成されており、前記導光体中を伝播してきた光が前記第1および第2の帯状領域で反射散乱されて前記保護面を介して出射される。
【0019】
本発明の第1の側面においては、細長い板状であって導光体長手方向に沿うスリット状の挿抜口を有する導光体と、前記導光体に光を入射する発光素子とが設けられ、前記導光体の表側の面における前記挿抜口の端縁に保護面が形成されており、前記導光体における前記保護面の形成領域の中央付近に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第1の反射散乱領域が形成されており、前記導光体における前記第1の帯状領域より外側に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第2の反射散乱領域が形成されており、前記導光体中を伝播してきた光が前記第1および第2の帯状領域で反射散乱されて前記保護面を介して出射される。
【0020】
本発明の第2の側面においては、筐体と、前記筐体に固定された細長い板状であって導光体長手方向に沿うスリット状の挿抜口を有する導光体と、前記導光体に光を入射する発光素子とを有する発光装置とが設けられ、前記導光体の表側の面における前記挿抜口の端縁に保護面が形成されており、前記導光体における前記保護面の形成領域の中央付近に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第1の反射散乱領域が形成されており、前記導光体における前記第1の帯状領域より外側には、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第2の反射散乱領域が形成されており、前記導光体中を伝播してきた光が前記第1および第2の帯状領域で反射散乱されて前記保護面を介して出射される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の発光装置は、導光体を伝播する光を反射散乱させて発光を行う発光装置において、導光体の挿抜口端縁の耐久性を高めるとともに、挿抜口の表示を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】導光体を用いて挿抜口を表示する従来の手法の一例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る発光装置22を用いた記録再生機器20を示す外観斜視図である。
【図3】図2の発光装置22を示す斜視図である。
【図4】図2の発光装置22を構成する導光体23を示す正面図および断面図である。
【図5】図4の導光体23における光の伝播の様子を示す正面図である。
【図6】図4の導光体23の詳細例を示す背面図である。
【図7】図6のドット凹部51の一例を示す斜視図である。
【図8】図4の導光体23の変形例である導光体23−0を示す断面図である。
【図9】図6の導光体23−0についてのB−B断面図、並びに図4の導光体23およびその変形例である導光体23−1、23−1’、23−2、23−2’を前記B−Bに対応する線分で分断した断面図である。
【図10】図4の導光体23の変形例である導光体23−2を示す背面図である。
【図11】図4の導光体23の変形例である導光体23−3を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。以下の図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、特に断らない限り、現実の寸法や比率を反映したものではないことに留意すべきである。また、図面相互間においても寸法や比率が相互に異なる部分があることはもちろんである。
また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置などを下記のものに特定するものではない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0024】
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る発光装置を用いた機器の一例として、板状物としてのCDを挿抜する挿抜口の端縁を表示する記録再生機器について説明する。図2は、記録再生機器20の外観斜視図を示している。
【0025】
図2では、記録再生機器20は、略直方体形状の筐体21を備え、この筐体21の正面の中央やや上に挿抜するCDが通過する筐体穴21aが形成されている。なお、以下、筐体21の正面と直交する方向を前後方向とし、正面を前とする。図2の例では、筐体穴21aは、記録再生機器20の前面における水平方向(図中左右方向)に細長い形状である。ただし、筐体穴21aの長手方向は、水平方向に限定されず、用途等に応じて自由に選択できる。この筐体穴21aから、筐体21の内部に配置された発光装置22の導光体23の一部が外部に露出している。導光体23は、細長い板状であり、筐体穴21aの長手方向に沿って配置されている。導光体23には、その長手方向に延在するスリット状の挿抜口23aが設けられ、この挿抜口23a全体が、筐体穴21aから外部に露出している。使用者は、水平となるように手で持ったCDを、筐体穴21aから露出する導光体23の挿抜口23aに挿抜する。
【0026】
図3は、発光装置22の一例を示す斜視図である。この図では、筐体21を点線で示している。なお、記録再生機器20の筐体21の内部には、図示はしていないが、例えば、CDをロード/アンロードする駆動装置や記録再生を含む様々な機能を実現する制御装置などが配置されている。
【0027】
図3に示すように、発光装置22は、導光体23および発光素子24から構成される。導光体23は、発光素子24の波長に対して透明な材質であり、例えば、可視光の場合、アクリル、ポリカーボネート等の合成樹脂やガラスなどである。導光体23は、板状の導光体であり、その厚さは、例えば、0.3mm〜3mmとすることができる。本実施形態における導光体23の厚さは、2mmであるとする。発光素子24は、例えば、LED素子で構成される。なお、図3において、一点鎖線の内側が、図2の筐体穴21aから外部に露出している。導光体23および発光素子24は、筐体21に対して固定されている。
【0028】
図4を参照して、導光体23の詳細について説明する。図4(a)は導光体23を示す正面図(前面図)であり、図4(b)は図4(a)の導光体23についてのC−C断面図である。
【0029】
図4(a)に示すように、導光体23は、細長い形状の並行する一対の導光体唇部23b、23bと、これら導光体唇部23b、23bの両端に一体的に設けられた導光体分岐部23cとからなる。これらの導光体唇部23b、23bおよび導光体分岐部23c、23cが環状に配置されることで、内側に挿抜口23aが形成されている。この例では、導光体唇部23b、23bは、いずれも直線状であるがこれに限らず、曲線状であってもよい。導光体唇部23bの幅は、例えば、0.5mm〜5mmとすることができる。ただし、導光体23の厚さが下限の0.3mm程度である場合は、導光体23の強度の低下を避けるために、導光体唇部23bの幅を、例えば、上限の5mm程度とするのがよい。本実施形態における導光体唇部23bの幅は、3.5mmであるとする。
【0030】
図4(b)に示すように、導光体分岐部23cの断面は、略四角形状である。ただし、導光体23の前面(以下、適宜、表側の面23eと称する)における挿抜口23aの端縁には、挿抜するCDの接触によって導光体23が傷つかないように、保護面23dが形成されている。ここで、保護面23dとは、表側の面23eに形成された、挿抜口23aの端縁に近づくほど厚さの減少する面である。本実施形態では、保護面23dは傾斜面(C面)としているが、これに限らず、湾曲面(フィレット面)などであってもよい。
【0031】
図3に戻り、本実施形態の発光装置22の詳細についてさらに説明する。
【0032】
図3では、発光素子24を一方の導光体分岐部23cの外側端面に配置している。ただし、発光素子24は1つに限らず、複数配置してもよい。さらに、発光素子24を他方の導光体分岐部23cに1以上配置してもよい。また、発光素子24の配置される位置は、導光体分岐部23cに限られず、例えば、導光体唇部23bであってもよい。ただし、発光素子24を導光体唇部23bに設ける場合には、導光体唇部23b長手方向への光の伝播を促進するため、適宜、導光体唇部23bの発光素子24を設ける部分に、光の進行方向を導光体唇部23b長手方向に変更する光路変更部を設けるとよい。
【0033】
図3の例では、正面からみて左側の導光体分岐部23cのみに発光素子24が配置されている。なお、以下、左側の導光体分岐部23cを導光体分岐部23c1、右側の導光体分岐部23cを導光体分岐部23c2とそれぞれ称する。
【0034】
次に、図5を参照して、発光素子24から出射した光の導光体23中における伝播について説明する。
【0035】
図5(a)は導光体23における発光素子24側の部分についての、図5(b)は導光体23における発光素子24側とは反対側の部分についての、光の伝播の様子をそれぞれ示す正面(前面)図である。なお、図5(a)および図5(b)中の矢印は、発光素子24から出射し導光体23中を伝播する光の例を示している。
【0036】
図5(a)に示すように、発光素子24から導光体23の長手方向に対して小さい角度で出射した光L1は、導光体分岐部23c1の外側端面23qに入射する。入射した光L1は、導光体分岐部23c1の内側端面23pで反射し、導光体唇部23bの外側端面23qで反射する。反射した光L1は、導光体唇部23bの内側端面23pで反射し、導光体唇部23bの外側端面23qで反射する。このように、光L1は、導光体唇部23bの内側端面23pと外側端面23qでの反射を交互繰り返しながら、導光体唇部23b中を伝播していく。
【0037】
導光体23の長手方向に対してやや大きい角度で出射した光L2は、導光体分岐部23c1の外側端面23qに入射する。入射した光L2は、導光体分岐部23c1の内側端面23pで反射し、導光体唇部23bの外側端面23qで反射する。反射した光L2は、導光体唇部23bの内側端面23pで反射し、導光体唇部23bの外側端面23qで反射する。このように、光L2は、導光体唇部23bの内側端面23pと外側端面23qでの反射を交互繰り返しながら、導光体唇部23b中を伝播していく。この光L2の、導光体長手方向に対する角度は、光L1に比べてやや大きくなる。
【0038】
導光体23の長手方向に対してさらに大きい角度で出射した光L3は、導光体分岐部23c1の外側端面23qに入射する。入射した光L3は、導光体唇部23bの外側端面23qで反射し、導光体唇部23bの内側端面23pで反射する。反射した光L3は、導光体唇部23bの外側端面23qで反射し、導光体唇部23bの内側端面23pで反射する。このように、光L3は、導光体唇部23bの外側端面23qと内側端面23pでの反射を交互に繰り返しながら、導光体唇部23b中を伝播していく。この光L3の、導光体長手方向に対する角度は、光L1に比べてさらに大きくなる。
【0039】
このように、導光体23を伝播する光の、導光体長手方向に対する角度は分布を持っている。これにより、後述する反射散乱領域によって反射散乱される光の方向が導光体23の内側端面23p側や外側端面23q側に傾斜することになる。
【0040】
一方、導光体23の発光素子24とは反対側の部分では、図5(b)の例に示すように、例えば、伝播してきて導光体唇部23bの外側端面23qで反射した光L4は、導光体分岐部23c2の外側端面23qで反射し、導光体分岐部23c2の屈曲部分に達する。また、伝播してきて導光体唇部23bの内側端面23pで反射した光L5は、導光体分岐部23c2の外側端面Pで反射し、導光体分岐部23c2の屈曲部分に達する。このようにして、導光体唇部23b中を伝播してきた光は、導光体分岐部23c2の屈曲部分にまで達するため、導光体分岐部23c2の内側端面23pに沿って形成される後述する反射散乱領域31等での反射散乱を生じさせることができ、この領域でも発光を行うことが可能となる。
【0041】
以上に説明した導光体23には、その挿抜口23aにおける表側の面23eの端縁に保護面23dを形成していたが、説明の都合上、次に説明する図6の導光体23−0には、保護面23dを形成せず、端縁の角をそのまま残していることとする。なお、導光体23−0における表側の面23eの端縁以外は、導光体23と同一構成であり、その説明は適宜省略する。
【0042】
図6を参照して、導光体23に形成される伝播してきた光を反射散乱する第1の反射散乱領域としての反射散乱領域31について説明する。図6は、導光体23における発光素子24側とは反対側の部分の一例を示す背面(後面)図である。
【0043】
図6に示すように、反射散乱領域31は、導光体23−0の裏側の面23fにおける挿抜口23aの端縁に沿って挿抜口23aの外周に設けた帯状の領域である。この反射散乱領域31には、導光体23中を伝播する光を反射または散乱するために、例えば、溝やドットを形成したり、ブラスト加工をしたり、白色塗料を印刷したりする。
【0044】
図6の例では、反射散乱領域31には、その延在方向に所定の間隔を空けて多数のドット凹部51を形成している。なお、これらのドット凹部51は、反射散乱領域31において1列に配列する必要はなく、例えば複数列に配列されてもよい。
【0045】
図7は、反射散乱領域31に形成されるドット凹部51の一例を示す斜視図である。
【0046】
図7に示すように、ドット凹部51は、反射散乱領域31の延在方向に略直交する断面三角形の溝状の凹部として構成されている。このドット凹部51の縦幅s(反射散乱領域31の延在方向の幅)、横幅(反射散乱領域31の延在方向と直交する方向の幅)t、および深さuは、例えば、0.20mmである。ただし、後述するように、ドット凹部51の深さuを変化させる場合、縦幅sは深さuに依存して変化する。例えば、深さuを0.15mm〜0.25mmの範囲で変化させる場合、縦幅sは0.15mm〜0.25mmの範囲で変化する。なお、この説明では、深さuの方向は、裏側の面23fと直交する方向であることを前提としているが、必ずしもそうである必要はない。また、深さuは、上述した範囲に限られず、0.01mm〜1mmの範囲であればよい。凹部の形成手法としては、例えば、切削加工やレーザ加工、導光体または刃を加熱した状態で導光体に刃を押し当てる手法などを採用できる。
【0047】
図7の例では、ドット凹部51を構成する溝の断面三角形についての発光素子24側の辺を構成する面が反射面51aとなっている。反射面51aによって導光体23中を伝播してきた光Lが反射され、表側の面23eを介して表側に出射する。反射面51aと裏側の面23fのなす角θは、導光体23中を伝播してきた光を効率よく利用するため、例えば、40°乃至60°とするのが好適である。
【0048】
なお、ドット凹部51は、上述した断面三角形状の溝に限定されず、例えば、内部に向かうほど径の小さくなる円錐形状の凹部として構成されてもよい。円錐形状の凹部として構成されるドット凹部51は、導光体面内で回転対称のため、方向を気にせずに形成できるという利点がある。
【0049】
図8は、反射散乱領域31の延在方向で分断した導光体23−0の一例を示す断面図である。
【0050】
図8の例では、個々のドット凹部51の深さを、発光素子24から遠くなるほど深くなるように加工している。これにより、発光素子24から遠くなるほど、反射面51aの面積が大きくなり、導光体23中を伝播する光の利用効率が高くなる。このため、導光体23中を伝播する光が小さくなっても、個々のドット凹部51からの反射光を一定に保つことができる。従って、発光素子24に近いところのドット凹部51と遠いところのドット凹部51についての明るさの差を小さくできることから、導光体23−0の輝度ムラを軽減できて、より均一な明るさにできる。この結果、記録再生機器20のデザイン性を犠牲にしなくて済むようになる。ただし、ドット凹部51の深さは一定にしてはいけないという訳ではなく、ドット凹部51の深さを一定にしてドット凹部51の形成が容易となる利点を利用してもよい。その他、ドット凹部51を特定の箇所で深くまたは浅くすることでその周囲に比べて輝度を高めるまたは低める、といった輝度のコントロールも可能である。
【0051】
このように、導光体に反射面の角度を調整した溝を形成すると、観察方向(前方)に対し高い指向性で光を出射することができる。このため、少ない数の発光素子を用いて挿抜口の表示を行うことが可能となる。これに対して、従来の拡散材の混入やブラスト加工等では、光が拡散するので出射光の指向性は低く、また、輝度を均一にすることも困難である。
【0052】
次に、図9を参照して、反射散乱領域の配置と発光視認性の関係について説明する。
【0053】
図9(a)は、図6の導光体23−0についてのB−B断面図である。
【0054】
図9(a)に示すように、保護面23dを形成しない導光体23−0では、反射散乱領域31で内側端面23p側(以下、適宜、内側と略称する)に傾斜して反射散乱した光L1は、表側の面23eで屈折し、やや内側の方向に進路を変更して出射する。反射散乱領域31で表側正面に反射散乱した光L2は、ほぼそのまま表側正面に出射する。反射散乱領域31で外側端面23q側(以下、適宜、外側と略称する)に傾斜して反射散乱した光L3は、表側の面23eで屈折し、やや外側に進路を変更して出射する。従って、導光体23−0の正面方向、内側に傾斜した方向、外側に傾斜した方向のいずれからでも、発光を視認できる。
【0055】
図9(b)は、図9(a)の導光体23−0の挿抜口23aの表側の面23eの端縁に保護面23dを生成した導光体23について図6のB−Bに対応する線分で分断した断面図である。この導光体23については、図2乃至図4を参照して前述している。
【0056】
図9(b)の例では、反射散乱領域31が保護面23dの形成領域の外側端23ddの位置に形成されている。この導光体23では、反射散乱領域31で内側に傾斜して反射散乱した光L1は、保護面23dにほぼ直交するため、屈折による進路の変更が少なく、ほぼそのままの方向に出射する。反射散乱領域31で表側正面に反射散乱した光L2は、表側の面23eの外側端23dd付近を通り、ほぼそのままの方向に出射する。反射散乱領域31で外側に傾斜して反射散乱した光L3は、表側の面23eで屈折し、やや外側に進路を変更して出射する。従って、導光体23の正面方向、内側に傾斜した方向、外側に傾斜した方向のいずれからでも、発光を視認できる。ただし、反射散乱領域31と内側端面23pとの距離が離れているため、挿抜口23aの端縁が発光しているとは視認されにくい。また、図9(c)は、保護面23dとして傾斜面に代えて湾曲面を形成した導光体23’の例である。この例でも、同様の作用効果を奏するのでその説明を省略する。
【0057】
このように反射散乱領域31と内側端面23pとの距離が離れると挿抜口23aの端縁が発光していると視認されにくいので、反射散乱領域31を内側端面23pに近づけることが好ましい。
【0058】
図9(d)は、導光体23において反射散乱領域31を保護面23dの形成領域の中央付近に変更した導光体23−1について図6のB−Bに対応する線分で分断した断面図である。なお、導光体23−1において、導光体23の対応する部分には同一の符号を付しており、その説明は適宜省略する。
【0059】
図9(d)に示すように、反射散乱領域31で内側に傾斜して反射散乱した光L1は、もはや保護面23dを外れてしまう。光L1より内側への傾斜のやや少ない光L1’は、保護面23dにやや斜めに入射するため、やや外側に進路を変えるように屈折し、ほぼ表側正面に出射する。反射散乱領域31で表側正面に反射散乱した光L2は、保護面23dに斜めに入射し、やや外側に進路を変えるように屈折し、正面より外側に向けて出射する。反射散乱領域31で外側に傾斜して反射散乱した光L3は、表側の面23eで屈折し、やや外側に進路を変更して出射する。従って、導光体23−1の正面方向と外側に傾斜した方向とについては、発光を視認できるが、内側に傾斜した方向については、発光を視認しにくくなってしまう。また、図9(e)は、保護面23dとして傾斜面に代えて湾曲面を形成した導光体23−1’の例である。この例でも、同様の作用効果を奏するのでその説明を省略する。
【0060】
図9(f)は、導光体23−1において反射散乱領域32を保護面23dの形成領域の外側端23ddの位置に新たに追加した導光体23−2について図6のB−Bに対応する線分で分断した断面図である。なお、導光体23−2において、導光体23−1の対応する部分には同一の符号を付しており、その説明は適宜省略する。
【0061】
図9(f)に示すように、反射散乱領域31で内側に傾斜して反射散乱した光L1’は、保護面23dにやや斜めに入射するため、やや外側に進路を変更して屈折し、ほぼ表側正面に出射する。反射散乱領域31で表側正面に反射散乱した光L2は、保護面23dに斜めに入射し、やや外側に進路を変更して屈折し、正面より外側に向けて出射する。反射散乱領域31で外側に傾斜して反射散乱した光L3は、表側の面23eで屈折し、やや外側に進路を変更して出射する。一方、反射散乱領域31で内側に傾斜して反射散乱した光M1は、保護面23dにほぼ直交するため、屈折による進路の変更が少なく、ほぼそのままの方向に出射する。反射散乱領域31で表側正面に反射散乱した光M2は、表側の面23eの外側端23dd付近を通り、ほぼそのままの方向に出射する。
【0062】
反射散乱領域32で内側に傾斜して反射散乱した光L1’が内側に傾斜した方向に向かわないのに対して、反射散乱領域32で内側に傾斜して反射散乱した光M1が内側に傾斜した方向に出射するため、導光体23−2の内側に傾斜した方向からみても発光を視認できるようになる。このため、導光体23−2の正面方向、内側に傾斜した方向、外側に傾斜した方向のいずれからでも、発光を視認できるようになる。また、反射散乱領域31を内側端面23p寄りに形成しているので、挿抜口23aの端縁が発光しているのを視認しやすい。このように、導光体23−2では、表示の視認性と分かり易さとを両立することができる。また、図9(g)は、保護面23dとして傾斜面に代えて湾曲面を形成した導光体23−2’の例である。この例でも、同様の作用効果を奏するのでその説明を省略する。
【0063】
図10は、導光体23−2の発光素子24とは反対側の部分を示す背面(後面)図である。なお、上述した図9(f)は、図10の導光体23−2についてのBB−BB断面図である。
【0064】
図10に示すように、反射散乱領域32は、導光体23−2の裏側の面23fにおける挿抜口23aの端縁に沿って挿抜口23aの外周に設けた帯状の領域である。この反射散乱領域32には、導光体23中を伝播する光を反射または散乱するために、例えば、溝やドットを形成したり、ブラスト加工をしたり、白色塗料を印刷したりする。この反射散乱領域32と反射散乱領域31に用いる反射散乱手法は同じでもよいし異なっていてもよい。
【0065】
図10の例では、反射散乱領域32には、その延在方向に所定の間隔を空けて多数のドット凹部52を形成している。なお、これらのドット凹部52は、反射散乱領域32において1列に配列する必要はなく、例えば複数列に配列されてもよい。また、図10の例では、反射散乱領域32を保護面23dの形成領域の外側端23ddの位置に設けているが、例えば、反射散乱領域32を保護面23dの形成領域の外側端23ddの位置より外側に設けてもよい。
【0066】
なお、図10の例では、反射散乱領域31と反射散乱領域32との間に反射または散乱を行うための構造のない非反射散乱領域が存在する。本実施形態では、非反射散乱領域の幅は、例えば、0.25mmとなっているが、それに限定されない。この非反射散乱領域の幅(反射散乱領域31と反射散乱領域32との間の距離)と、上述したドット凹部52の深さuとは、導光体23−2の形状により、すなわち、例えば、導光体23−2の幅と厚さ、反射散乱領域31、32などにより、適宜調整される。また、このような非反射散乱領域を設けずに、反射散乱領域31と反射散乱領域32との間にも反射または散乱を行うための構造(例えば、ドット凹部)を設けてもよい。
【0067】
以上においては、導光体に設ける反射散乱領域を2つ設けているが、さらに1以上の反射散乱領域をさらに設けてもよい。
【0068】
図11は、導光体23−2において反射散乱領域32の外側に反射散乱領域33をさらに設けた導光体23−3を示す背面図(後面図)である。図11の導光体23−3において、図10の導光体23−2と同一の部分には同じ符号を付しており、その説明を適宜省略する。
【0069】
図11に示すように、反射散乱領域33は、裏側の面23fにおける挿抜口23aの端縁に沿って挿抜口23aの外周に設けた帯状の領域である。ただし、この反射散乱領域33は、必ずしも裏側の面23fに設ける必要はなく、導光体23−3の表側の面23eに設けてもよい。この反射散乱領域33には、導光体23中を伝播する光を反射または散乱するために、例えば、溝やドットを形成したり、ブラスト加工をしたり、白色塗料を印刷したりする。なお、白色塗料印刷を用いる場合、反射散乱領域33は、出射面である表側の面23eには設けることができず、裏側の面23fに設ける必要がある。この反射散乱領域33と、反射散乱領域31、32とに用いる反射散乱手法は同じでもよいし異なっていてもよい。
【0070】
なお、図11の例では、反射散乱領域32と反射散乱領域33との間に反射または散乱を行うための構造のない非反射散乱領域が存在するが、このような非反射散乱領域を設けずに、反射散乱領域32と反射散乱領域33との間にも反射または散乱を行うための構造(例えば、ドット凹部)を設けてもよい。従って、例えば、反射散乱領域32、反射散乱領域33、およびそれらの間の領域について、ドット凹部に代えて反射散乱領域32の内側端から反射散乱領域33の外側端まで貫通する溝を延在方向に直交して多数設けるようにするといったことも可能である。
【0071】
図11の例では、一点鎖線の内側が、図2の筐体穴21aから外部に露出している。この外部露出した領域にまだ余裕がある場合は、さらに反射散乱領域を設けてもよい。
【0072】
このように、反射散乱領域をより多く設けることで、より一層分かり易く挿抜口23aを光らせることが可能となる。
【0073】
なお、上述した実施形態においては、導光体は筐体21の内部に配置され、その一部が筐体穴21aから外部露出しているが、それ以外にも様々な態様がありうる。例えば、導光体23の前面と筐体21の前面とが面一となるように一体化されており、導光体全体が外部に露出するような態様も可能である。
【符号の説明】
【0074】
20 記録再生機器, 21 筐体, 22 発光装置, 23 導光体, 23a 挿抜口, 23b 導光体唇部, 23c、23c1、23c2 導光体分岐部, 23d 保護面, 23dd 外側端 ,23e 表側の面, 23f 裏側の面, 23p 内側端面, 23q 外側端面, 31、32、33 反射散乱領域, 51、52、53 ドット凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い板状であって導光体長手方向に沿うスリット状の挿抜口を有する導光体と、前記導光体に光を入射する発光素子とを備え、
前記導光体の表側の面における前記挿抜口の端縁に保護面が形成されており、
前記導光体における前記保護面の形成領域の中央付近に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第1の反射散乱領域が形成されており、
前記導光体における前記第1の帯状領域より外側に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第2の反射散乱領域が形成されており、
前記導光体中を伝播してきた光が前記第1および第2の帯状領域で反射散乱されて前記保護面を介して出射される発光装置。
【請求項2】
前記保護面は、傾斜面または湾曲面である請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第2の反射散乱領域は、前記保護面の形成領域の外側端の位置に形成されている請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光素子は、導光体長手方向の端部に設けられている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1および第2の反射散乱領域には、前記光源からの光を表側に反射する反射面を有するドット凹部を所定間隔を空けて複数設けている請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記ドット凹部の反射面は、前記ドット凹部の形成面に対して40〜60°となるように形成されている請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記ドット状凹部は、前記発光素子から離れるほど深くなるように形成されている請求項5または6に記載の発光装置。
【請求項8】
細長い板状であって導光体長手方向に沿うスリット状の挿抜口を有する導光体と、前記導光体に光を入射する発光素子とを備え、
前記導光体の表側の面における前記挿抜口の端縁に保護面が形成されており、
前記導光体における前記保護面の形成領域の中央付近に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第1の反射散乱領域が形成されており、
前記導光体における前記第1の帯状領域より外側に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第2の反射散乱領域が形成されている
発光装置を用い、
前記導光体中を伝播してきた光を前記第1および第2の帯状領域で反射散乱させて前記保護面を介して出射させる発光方法。
【請求項9】
筐体と、
前記筐体に固定された細長い板状であって導光体長手方向に沿うスリット状の挿抜口を含む導光体と、前記導光体に光を入射する発光素子とを有する発光装置と
を備え、
前記導光体の表側の面における前記挿抜口の端縁に保護面が形成されており、
前記導光体における前記保護面の形成領域の中央付近に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第1の反射散乱領域が形成されており、
前記導光体における前記第1の帯状領域より外側に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第2の反射散乱領域が形成されており、
前記導光体中を伝播してきた光が前記第1および第2の帯状領域で反射散乱されて前記保護面を介して出射される機器。
【請求項1】
細長い板状であって導光体長手方向に沿うスリット状の挿抜口を有する導光体と、前記導光体に光を入射する発光素子とを備え、
前記導光体の表側の面における前記挿抜口の端縁に保護面が形成されており、
前記導光体における前記保護面の形成領域の中央付近に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第1の反射散乱領域が形成されており、
前記導光体における前記第1の帯状領域より外側に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第2の反射散乱領域が形成されており、
前記導光体中を伝播してきた光が前記第1および第2の帯状領域で反射散乱されて前記保護面を介して出射される発光装置。
【請求項2】
前記保護面は、傾斜面または湾曲面である請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第2の反射散乱領域は、前記保護面の形成領域の外側端の位置に形成されている請求項1または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光素子は、導光体長手方向の端部に設けられている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1および第2の反射散乱領域には、前記光源からの光を表側に反射する反射面を有するドット凹部を所定間隔を空けて複数設けている請求項1乃至4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記ドット凹部の反射面は、前記ドット凹部の形成面に対して40〜60°となるように形成されている請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記ドット状凹部は、前記発光素子から離れるほど深くなるように形成されている請求項5または6に記載の発光装置。
【請求項8】
細長い板状であって導光体長手方向に沿うスリット状の挿抜口を有する導光体と、前記導光体に光を入射する発光素子とを備え、
前記導光体の表側の面における前記挿抜口の端縁に保護面が形成されており、
前記導光体における前記保護面の形成領域の中央付近に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第1の反射散乱領域が形成されており、
前記導光体における前記第1の帯状領域より外側に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第2の反射散乱領域が形成されている
発光装置を用い、
前記導光体中を伝播してきた光を前記第1および第2の帯状領域で反射散乱させて前記保護面を介して出射させる発光方法。
【請求項9】
筐体と、
前記筐体に固定された細長い板状であって導光体長手方向に沿うスリット状の挿抜口を含む導光体と、前記導光体に光を入射する発光素子とを有する発光装置と
を備え、
前記導光体の表側の面における前記挿抜口の端縁に保護面が形成されており、
前記導光体における前記保護面の形成領域の中央付近に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第1の反射散乱領域が形成されており、
前記導光体における前記第1の帯状領域より外側に、前記導光体中を伝播してきた光を表側に向けて反射散乱する帯状の第2の反射散乱領域が形成されており、
前記導光体中を伝播してきた光が前記第1および第2の帯状領域で反射散乱されて前記保護面を介して出射される機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−97329(P2013−97329A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242766(P2011−242766)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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