説明

発泡積層シートの製造方法

【課題】発泡樹脂層のパンクを抑制しつつ、賦型性に優れた発泡積層シートの製造方法を提供する。
【解決手段】以下の工程1〜3を有する、発泡積層シートの製造方法:
(1)基材上に発泡剤含有樹脂層を有する積層シートを用意する工程1、
(2)前記積層シートを支持材上に配置し、前記発泡剤含有樹脂層上に凹凸模様を有する型材を配置する工程2、
(3)前記発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡樹脂層を形成することにより、前記型材の凹凸模様を前記発泡樹脂層に賦型する工程3。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡積層シートの製造方法に関する。前記発泡積層シートは、発泡壁紙、各種装飾材等として有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、壁面に使用する化粧シートとしては、基材上に絵柄模様層及び発泡樹脂層を設けた発泡積層シートが一般的に使用されている。一般的な発泡積層シートは、意匠性を付与するために、発泡樹脂層(発泡後の樹脂層)の表面から凹凸模様を有する金属ロールを押し当てることによって前記凹凸模様を発泡樹脂層側に賦型している。
【0003】
しかしながら、凹凸模様の種類によっては、発泡樹脂層にパンクが生じたり、凹凸模様を精度良く賦型できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−048336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、発泡樹脂層のパンクを抑制しつつ、賦型性に優れた発泡積層シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定の方法によって凹凸模様を賦型することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、下記の発泡積層シートの製造方法に関する。
1. 以下の工程1〜3を有する、発泡積層シートの製造方法:
(1)基材上に発泡剤含有樹脂層を有する積層シートを用意する工程1、
(2)前記積層シートを支持材上に配置し、前記発泡剤含有樹脂層上に凹凸模様を有する型材を配置する工程2、
(3)前記発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡樹脂層を形成することにより、前記型材の凹凸模様を前記発泡樹脂層に賦型する工程3。
2. 前記支持材及び前記型材の少なくとも一方がエンドレスベルトであることを特徴とする、上記項1に記載の発泡積層シートの製造方法。
3. 工程1において、前記発泡剤含有樹脂層を電子線照射によって架橋する、上記項1又は2に記載の発泡積層シートの製造方法。
4. 工程1において、前記積層シートのおもて面に絵柄模様層を形成する、上記項1〜3のいずれかに記載の発泡積層シートの製造方法。
5. 工程1において、前記積層シートのおもて面に表面保護層を形成する、上記項1〜4のいずれかに記載の発泡積層シートの製造方法。
【0008】
以下、本発明の発泡積層シートの製造方法について詳細に説明する。
【0009】
本発明の発泡積層シートの製造方法は、以下の工程1〜3:
(1)基材上に発泡剤含有樹脂層を有する積層シートを用意する工程1、
(2)前記積層シートを支持材上に配置し、前記発泡剤含有樹脂層上に凹凸模様を有する型材を配置する工程2、
(3)前記発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡樹脂層を形成することにより、前記凹凸模様が賦型された発泡積層シートを得る工程3
を順に含む。
【0010】
上記発泡積層シートの製造方法は、工程2において積層シートを支持材上に配置し、前記発泡剤含有樹脂層上に凹凸模様を有する型材を配置した後、工程3において発泡剤含有樹脂層を発泡させるため、発泡後の発泡樹脂層に金属ロールに押し当てることなく凹凸模様を精度良く賦型できる。そのため、発泡樹脂層のパンクを抑制しつつ、賦型性に優れた発泡積層シートを得ることができる。
【0011】
以下、本発明の製造方法について詳細に説明する。
【0012】
工程1
工程1では、基材上に発泡剤含有樹脂層を有する積層シートを用意する。前記積層シートは基材上に少なくとも発泡剤含有樹脂層を有すればよく、基材及び発泡剤含有樹脂層からなる積層シートも含むものとする。
【0013】
[基材]
基材としては限定されず、公知の繊維質基材(裏打紙)などが利用できる。
【0014】
具体的には、壁紙用一般紙(パルプ主体のシートを既知のサイズ剤でサイズ処理したもの);難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙などが挙げられる。
【0015】
基材の坪量は限定的ではないが、50〜300g/m2程度が好ましく、50〜120 g/m2程度がより好ましい。
【0016】
[発泡剤含有樹脂層]
発泡剤含有樹脂層は、少なくとも樹脂成分及び発泡剤を含有する。
【0017】
発泡剤含有樹脂層の樹脂成分としては限定されないが、例えば、ポリエチレン及びエチレン−αオレフィン共重合体樹脂を含有することが好ましい。具体的には、ポリエチレン(PE)100質量部に対してエチレン−αオレフィン共重合体樹脂を1〜150質量部含有することが好ましく、10〜100質量部含有することがより好ましい。
【0018】
なお、上記ポリエチレン及びエチレン−αオレフィン共重合体樹脂以外の樹脂を併用してもよい。例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体樹脂(EMAA)等のポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体樹脂(ABS)、アクリロニトリル−スチレン系共重合体樹脂、ナイロン、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の少なくとも1種が挙げられる。
【0019】
上記の他の樹脂を併用する場合には、樹脂成分中のポリエチレン及びエチレン−αオレフィン共重合体樹脂の含有量(2成分合算量)が60質量%以上、好ましくは70質量%以上となるように設定することが好ましい。
【0020】
発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物としては、例えば、上記樹脂成分、無機充填剤、顔料、熱分解型発泡剤、発泡助剤、架橋助剤等を含む樹脂組成物を好適に使用できる。その他にも、安定剤、滑剤等を添加剤として使用できる。
【0021】
熱分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ系;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジド系などが挙げられる。熱分解型発泡剤の含有量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定できる。発泡倍率の観点からは、7倍以上、好ましくは7〜10倍程度であり、熱分解型発泡剤は、樹脂成分100質量部に対して、1〜20質量部程度とすることが好ましい。
【0022】
発泡助剤は、金属酸化物及び/又は脂肪酸金属塩が好ましく、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オクチル酸亜鉛、オクチル酸カルシウム、オクチル酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等を使用することができる。これらの発泡助剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、0.3〜10質量部程度が好ましく、1〜5質量部程度がより好ましい。
【0023】
なお、EMAAとADCA発泡剤、金属系発泡助剤とを組み合わせて用いる場合には、発泡工程において、EMAAのアクリル酸部と金属系発泡助剤の反応により、発泡助剤としての効果が損なわれるという問題がある。そのため、EMAAとADCA発泡剤とを組み合わせて用いる場合には、特開2009-197219号公報に説明されている通り、発泡助剤としてカルボン酸ヒドラジド化合物を用いることが好ましい。このとき、カルボン酸ヒドラジド化合物はADCA発泡剤1質量部に対して0.2〜1質量部程度用いることが好ましい。
【0024】
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物等が挙げられる。無機充填剤を含むことにより、目透き抑制効果、表面特性向上効果、燃焼時発熱抑制効果等が得られる。無機充填剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して0〜100質量部程度が好ましく、20〜70質量部程度がより好ましい。
【0025】
顔料については、無機顔料として、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン、硫化亜鉛等が挙げられる。また、有機顔料として、例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等が挙げられる。顔料の含有量は、樹脂成分100質量部に対して10〜50質量部程度が好ましく、15〜30質量部程度がより好ましい。
【0026】
本発明では、発泡剤含有樹脂層は電子線照射により樹脂架橋されていてもよい。発泡剤含有樹脂層に電子線を照射する方法及び発泡させる方法としては、後記の製造方法に記載された方法に従って実施すればよい。なお、発泡剤含有樹脂層の厚さは40〜100μm程度が好ましく、発泡後の発泡樹脂層の厚さは300〜700μm程度が好ましい。
【0027】
本発明では、発泡剤含有樹脂層に含まれる樹脂成分は、JIS K 6922に記載の190℃、荷重21.18Nの条件で測定したMFR(メルトフローレート)が10〜25g/10minであることが好ましい。MFRが上記範囲内の場合には、発泡剤含有樹脂層を押出し製膜により形成する際の温度上昇が少なく、非発泡状態で製膜できるため、後に絵柄模様層を形成する場合には、平滑な面に印刷処理をすることができて柄抜け等が少ない。MFRが大きすぎる場合は、樹脂が軟らかすぎることにより、形成される発泡樹脂層の耐傷性が不十分となるおそれがある。
【0028】
[非発泡樹脂層A及びB]
発泡剤含有樹脂層は、その片面又は両面に非発泡樹脂層を有していてもよい。
【0029】
例えば、発泡剤含有樹脂層の裏面(基材が積層される面)には、基材との接着力を向上させる目的で非発泡樹脂層B(接着樹脂層)を有してもよい。
【0030】
接着樹脂層の樹脂成分としては、特に限定はないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましい。EVAは公知又は市販のものを使用することができる。特に、酢酸ビニル成分(VA成分)が10〜46質量%であるものが好ましく、15〜41質量%であるものがより好ましい。
【0031】
接着樹脂層の厚さは限定的ではないが、5〜50μm程度が好ましい。
【0032】
発泡剤含有樹脂層の上面には、絵柄模様層を形成する際の絵柄模様を鮮明にしたり発泡樹脂層の耐傷性を向上させたりする目的で非発泡樹脂層Aを有してもよい。
【0033】
非発泡樹脂層Aの樹脂成分としては、ポリオレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられ、その中でもポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0034】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の樹脂単体、炭素数が4以上のαオレフィンの共重合体(線状低密度ポリエチレン)、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂等のエチレン(メタ)アクリル酸系共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸メチル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体樹脂等のエチレン(メタ)アクリル酸エステル系共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂ケン化物、アイオノマー等の少なくとも1種が挙げられる。これらのポリオレフィン系樹脂の中でも、低密度ポリエチレンが好ましく、発泡剤含有樹脂層と樹脂成分が共通し、発泡剤含有樹脂層とともに同時押出し製膜する場合に良好な押出し性が得られるとともに界面接着性の向上効果も得られる。
【0035】
非発泡樹脂層Aの厚さは限定的ではないが、3〜50μm程度が好ましく、特に5〜20μm程度がより好ましい。
【0036】
本発明では、後記製造上の観点からも、基材上に非発泡樹脂層B、発泡剤含有樹脂層及非泡樹脂層Aが順に形成された態様が好ましい。
【0037】
[絵柄模様層]
発泡剤含有樹脂層又は非発泡樹脂層Aの上には、絵柄模様層を形成してもよい。
【0038】
絵柄模様層は、発泡積層シートに意匠性を付与する。絵柄模様としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄模様は、発泡壁紙の種類に応じて選択できる。
【0039】
絵柄模様層は、例えば、絵柄模様を印刷することで形成できる。印刷手法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、結着材樹脂、溶剤を含む印刷インキが使用できる。これらのインキは公知又は市販のものを使用してもよい。
【0040】
着色剤としては、例えば、前記の発泡剤含有樹脂層で使用されるような顔料を適宜使用することができる。
【0041】
結着材樹脂は、基材シートの種類に応じて設定できる。例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0042】
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は混合物の状態で使用できる。
【0043】
絵柄模様層の厚みは、絵柄模様の種類より異なるが、一般には0.1〜10μm程度とすることが好ましい。
【0044】
[表面保護層(オーバーコート層)]
本発明では、発泡剤含有樹脂層、非発泡樹脂層A又は絵柄模様層の表面に艶調整及び/又は絵柄模様層の保護を意図して表面保護層を有してもよい。
【0045】
なお、表面保護層は、後述する工程3の後においても形成することができる。
【0046】
表面保護層は、印刷、塗布などのコーティング、押出し製膜等により積層することができる。印刷、塗布等のコーティングは常法に従って行うことができる。
【0047】
表面保護層の種類は限定的ではない。艶調整を目的とする表面保護層であれば、例えば、シリカなどの既知フィラーを含む表面保護層がある。表面保護層の形成方法としては、グラビア印刷などの公知の方法が採用できる。なお、絵柄模様層と表面保護層との密着性が十分に得られない場合には、絵柄模様層の表面を易接着処理(プライマー処理)した後に表面保護層を設けることもできる。
【0048】
発泡積層シートの表面強度(耐スクラッチ性など)、耐汚染性、絵柄模様層の保護等を目的として表面保護層を形成する場合には、電離放射線硬化型樹脂を樹脂成分として含有するものが好適である。電離放射線硬化型樹脂としては、電子線照射によってラジカル重合(硬化)するものが好ましい。
【0049】
表面保護層の厚みは限定的ではないが、0.1〜15μm程度が好ましい。
【0050】
[積層シートの製造方法]
積層シートの製造方法としては、例えば、基材上に少なくとも発泡剤含有樹脂層を形成することにより製造できる。
【0051】
発泡剤含有樹脂層がその片面又は両面に非発泡樹脂層を有する場合には、Tダイ押出し機による同時押出し製膜が好適である。例えば、両面に非発泡樹脂層を有する場合には、3つの層に対応する溶融樹脂を同時に押出すことにより3層の同時製膜が可能なマルチマニホールドタイプのTダイを用いることができる。
【0052】
なお、発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物に無機充填剤が含まれる場合であって、発泡剤含有樹脂層を押出し製膜により形成する場合には、押出し機の押出し口(いわゆるダイス)に無機充填剤の残渣(いわゆる目やに)が発生し易く、これが発泡剤含有樹脂層表面の異物となり易い。そのため、発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物に無機充填剤が含まれる場合には、上記のように3層同時押出し製膜することが好ましい。即ち、発泡剤含有樹脂層を非発泡樹脂層によって挟み込んだ態様で同時押出し製膜することにより、前記目やにの発生を抑制することができる。
【0053】
発泡剤含有樹脂層を製膜した後は、電子線照射を行ってもよい。これにより樹脂成分を架橋して発泡樹脂層の表面強度、発泡特性等を調整することができる。
【0054】
電子線のエネルギーは、150〜250kV程度が好ましく、175〜200kV程度がより好ましい。照射量は、10〜100kGy程度が好ましく、10〜50kGy程度がより好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。この電子線照射は、絵柄模様層や表面保護層を形成した後でもよい。
【0055】
電子線は、おもて面側から裏面側に向けて照射してもよく、また裏面側からおもて面側に向けて照射してもよい。なお、本明細書において、おもて面側とは発泡樹脂層側をいい、裏面側とは基材側をいう。
【0056】
工程2
工程2では、前記積層シートを支持材上に配置し、前記発泡剤含有樹脂層上に凹凸模様を有する型材(以下、単に型材ともいう)を配置する。
【0057】
支持材表面と型材表面との間隔は、後述する工程3において発泡積層シートに凹凸模様が賦型できる範囲内で適宜設定すればよい。
【0058】
発泡剤含有樹脂層上に型材を配置する際、型材は図1のように積層シートの最表面と接触せずに離れていてもよく、図2のように接触していてもよい。
【0059】
支持材の材質としては、金属、繊維質材料等を使用することができる。
【0060】
金属としては、ステンレス鋼、ニッケルばね鋼、等を使用することができる。また、金属製の型材の表面に、ポリイミド、フッ素樹脂等をコーティングすることができる。
【0061】
繊維質材料としては、グラスファイバー、グラスウール、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール等を使用することができる。
【0062】
凹凸模様を有する型材の材質としては、前記支持材の材質と同様のものを使用することができる。
【0063】
凹凸模様は、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【0064】
支持材として、エンドレスベルトを使用することができる。かかる場合、連続して均一な発泡積層シートを得ることができるため、生産性の点から好ましい。
【0065】
また、型材としてエンドレスベルトを使用することもできる。かかる場合、後述する工程3において、形成される発泡体が型材に対して連続的に追随するため、継ぎ目が形成されることがなく、その後の切断工程において所望の長さの発泡積層シートを得ることができる。ここで、前記発泡体とは、発泡樹脂層単層又は発泡樹脂層を含む複数層をいう。また、発泡樹脂層上に絵柄模様層、表面保護層等が形成されている場合は、それらの樹脂層を含む。
【0066】
なお、支持材と型材の間に配置される積層シートは、連続体でもよいが、所望の長さに予め切り出されている状態(いわゆる「枚葉」)でもよい。
【0067】
工程3
工程3では、前記支持材と前記型材の間隔を保持したまま前記発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡樹脂層を形成する。具体的には、発泡剤含有樹脂層が発泡することによって、発泡体が積層シート最表面と型材との間に存在する空洞(凹凸模様を有する空洞)を埋めるようにして入り込む。これにより、凹凸模様が賦型された発泡積層シートが得られる。
【0068】
加熱条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される条件ならば限定されない。加熱温度は210〜240℃程度が好ましく、加熱時間は20〜80秒程度が好ましい。
【0069】
工程3の後において、支持材及び型材を取り外すことによって、発泡積層シートを得ることができる。型材を取り外す際、予め当該型材を冷却することによって、型材の取り外しを容易にする。冷却温度としては、10〜60℃程度が好ましい。
【0070】
本発明の製造方法によって得られた発泡積層シートは、発泡壁紙、ラミネート化粧板用表皮材、クッション性床材、断熱化粧材等を用途として使用することができる。
【発明の効果】
【0071】
本発明の発泡積層シートの製造方法は、工程2において積層シートを支持材上に配置し、前記発泡剤含有樹脂層上に凹凸模様を有する型材を配置した後、工程3において発泡剤含有樹脂層を発泡させるため、発泡後の発泡樹脂層に金属ロールに押し当てることなく凹凸模様を精度良く賦型できる。そのため、発泡樹脂層のパンクを抑制しつつ、賦型性に優れた発泡積層シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】支持材と型材の間に配置された積層シート及び発泡積層シートの一態様を示す模式図である。
【図2】支持材と型材の間に配置された積層シート及び発泡積層シートの別の態様を示す模式図である。
【図3】支持材と型材の一態様を示す模式図である。
【図4】本発明の製造方法によって得られた発泡積層シートの一態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0074】
実施例1
3種3層マルチマニホールドTダイ押出し機を用い、非発泡樹脂層A/発泡剤含有樹脂層/非発泡樹脂層Bの順に厚み10μm/100μm/10μmになるように製膜した。押出し条件は、非発泡樹脂層Aを形成するための樹脂を収容したシリンダー温度を130℃とし、発泡剤含有樹脂層を形成するための樹脂組成物を収容したシリンダー温度を120℃とし、非発泡樹脂層Bを形成するための樹脂を収容したシリンダー温度を120℃とした。また、ダイス温度はいずれも120℃とした。
【0075】
製膜後、90℃に加熱した裏打紙(WK-665DO、株式会社興人製)に非発泡樹脂層Bの面を積層し、非発泡樹脂層A上から電子線(195kV,30kGy)を照射した。
【0076】
次いで、非発泡樹脂層A上にコロナ放電処理を行い、グラビア印刷機により絵柄印刷として水性インキ(「ハイドリック」、大日精化工業株式会社製)を用いて布目絵柄を印刷した。さらに、同装置によって水性インキ「ALTOP(大日精化工業株式会社製)」をコートしてオーバーコート層を形成し、積層シートを得た。
【0077】
次に、エンドレスベルト(以下、支持材ベルトともいう)と、凹凸模様を有するエンドレスベルト(以下、型材ベルトともいう)を、型材ベルトの凹凸模様が支持材ベルト側に向くようにして設置した(図3)。このとき、支持材ベルトと型材ベルトの間隔は0.4mmであった。
【0078】
次に、支持材ベルト上に裏打紙が接触するように積層シートを配置した。その次に、支持材ベルトによって積層シートを搬送しながら、遠赤外線オーブン(220℃)中を通過させ、発泡剤含有樹脂層を発泡樹脂層にした。その後、支持材ベルトと型材ベルトの間に発泡積層シートを挟持したまま、型材ベルトを空冷及び上下2本の冷却ロール間に挟み込むことにより40℃にまで冷却し、発泡積層シートを型材ベルトから剥離した。
【0079】
以上により、発泡樹脂層のパンクを抑制しつつ、賦型性に優れた発泡積層シートを得た。
【0080】
各層は、それぞれ以下の成分を用いて形成した。
【0081】
【表1】

【符号の説明】
【0082】
1.支持材
2.基材
3.発泡剤含有樹脂層
4.空洞
5.凹凸模様を有する型材
6.発泡樹脂層
7.エンドレスベルト(支持材ベルト)
8.凹凸模様を有するエンドレスベルト(型材ベルト)
9.凹凸模様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程1〜3を有する、発泡積層シートの製造方法:
(1)基材上に発泡剤含有樹脂層を有する積層シートを用意する工程1、
(2)前記積層シートを支持材上に配置し、前記発泡剤含有樹脂層上に凹凸模様を有する型材を配置する工程2、
(3)前記発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡樹脂層を形成することにより、前記型材の凹凸模様を前記発泡樹脂層に賦型する工程3。
【請求項2】
前記支持材及び前記型材の少なくとも一方がエンドレスベルトであることを特徴とする、請求項1に記載の発泡積層シートの製造方法。
【請求項3】
工程1において、前記発泡剤含有樹脂層を電子線照射によって架橋する、請求項1又は2に記載の発泡積層シートの製造方法。
【請求項4】
工程1において、前記積層シートのおもて面に絵柄模様層を形成する、請求項1〜3のいずれかに記載の発泡積層シートの製造方法。
【請求項5】
工程1において、前記積層シートのおもて面に表面保護層を形成する、請求項1〜4のいずれかに記載の発泡積層シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−52548(P2013−52548A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190935(P2011−190935)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】