説明

発電デバイスおよびそれを備えた発電装置

【課題】より高い効率で発電することが出来る発電装置付携帯機器を提供することを目的とする。
【解決手段】電気を誘起する発電手段と、当該発電手段で誘起された電気を整流する整流手段と、当該整流手段が整流した電気を蓄える蓄電手段とを備え、この発電手段が、2極に着磁されたバイアス磁石と、外部から力を加えることで逆磁歪効果により透磁率を変化させて、当該バイアス磁石の一方の極で発生した磁束の流れを変化させる磁歪材と、バイアス磁石と磁歪材との間に配置され、周期的な振幅力を磁歪材に加える圧縮手段と、磁歪材から流れ出る磁束を、バイアス磁石の他方の極に導くように配置された閉磁路形成部材と、磁歪材または閉磁路形成部材に巻き廻されてなるコイルとを有し、発電手段で誘起された電気を、コイルのコイル端子を介して整流手段に供給する構成を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加えた力による機械エネルギーを電気エネルギーに変換する逆磁歪効果を利用した発電デバイス、およびそれを備えた発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の逆磁歪効果を利用した発電装置として、回転錘の運動により磁歪材に力を加えることで、磁歪材の端部に配置したバイアス磁石から発生した磁束の内、磁歪材を通る磁束の量を変化させ、その磁束量の変化により磁歪材に巻き廻したコイルに誘起される電流を利用することで、数[V]レベルの低電圧で多くの電流を発電することが出来る発電装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図15、図16は、この従来の発電装置の構成例、及びこの発電装置に含まれる発電デバイスの一部を構成するコイル手段の構成を説明するための図面である。
【0004】
図15に示す様に、従来の発電装置301は、低電圧駆動機器6と発電デバイス302を有し、この発電デバイス302で発電された電流を低電圧駆動機器6で駆動するように構成されている。
【0005】
また、図15、図16に示す様に、この従来の発電デバイス302は、姿勢差により運動する回転錘20の運動により、2つのバイアス磁石8で発生した磁束が通るように配置されたコイル手段310の芯にある磁歪材7に力が加わる様に構成されている。
【0006】
この様に構成された発電デバイス302は、逆磁歪効果により磁歪材7を通る磁束量が変化し、磁歪材7に巻いたコイル17に電流が誘起される。そして、誘起された電流は、整流手段端子13、14を介して整流手段4により整流され、整流された電荷が蓄電手段5に蓄えられる。そして、この蓄電手段5により蓄えられた電荷は、例えば腕時計などの低電圧駆動機器6の駆動に利用される。
【0007】
【特許文献1】特開平9−90065号公報(第2−3頁、第1−2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の発電デバイス302は、2つのバイアス磁石8の一方の極で発生した磁束が他方の極に戻る際、閉磁路が形成されていないために、バイアス磁石8の減磁の度合いが大きくなる。そのため、磁歪材7を通り発電に寄与する磁束の量は、大幅に減ってしまうという問題を有する。したがって、この従来の発電装置301は、上記問題を抱えた発電デバイス302を利用して電流を発電しているので、効率的に発電を行うことが困難であった。
【0009】
そこで、本発明の目的は上述のような課題を解決するもので、より高い効率で発電することが出来る発電デバイスおよびそれを備えた発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発電デバイスは、基本的に下記記載の構成を採用するものである。
本発明の発電デバイスは、電流を誘起する発電手段と、当該発電手段で誘起された電流を整流する整流手段と、当該整流手段が整流することにより得られる電荷を蓄える蓄電手段とを備え、この発電手段が、2極に着磁されたバイアス磁石と、外部から力を加えるこ
とで逆磁歪効果により透磁率を変化させて、当該バイアス磁石の一方の極で発生した磁束の流れを変化させる磁歪材と、バイアス磁石と磁歪材との間に配置され、周期的な振幅力を磁歪材に加える圧縮手段と、磁歪材から流れ出る磁束を、バイアス磁石の他方の極に導くように配置された閉磁路形成部材と、磁歪材または閉磁路形成部材に巻き廻されてなるコイルとを有し、発電手段で誘起された電流を、コイルのコイル端子を介して整流手段に供給するように構成されてなることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の発電デバイスは、前述した圧縮手段が、作動レバーと、作動レバーに加えた力により回転する送りネジと、磁歪材と接し、送りネジの回転により拡大した力で送りネジの軸方向に送られる、軟磁性材よりなる圧縮部材と、作動レバーと一体に設けられ、送りネジを逆方向に回転させることで、圧縮部材に加えられた力および変位を取り除き、再び作動レバーに力及び変位を加える復帰バネとを有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の発電装置は、前述した発電デバイスにおける蓄電手段と、低電圧駆動機器とが接続されてなり、この蓄電手段に蓄えられた電荷を利用して低電圧駆動機器を駆動することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、従来の構成とは異なり、バイアス磁石から発生した磁束の流れが1つの閉磁路を形成する構成を採用しているので、バイアス磁石の減磁の度合いを大きくすることなく、磁歪材を通り発電に寄与する磁束の変化量を増やすことが出来る。したがって、本発明の構成を用いれば、高効率で発電を行うことが出来る。
【0014】
また、本発明の構成は、コイル芯が軟磁性体で構成されているので、バイアス磁石の減磁の度合いを、更に抑えることが出来、高効率で発電を行うことが出来る。
【0015】
また、本発明の構成は、圧縮手段により磁歪材に力を作用させた際、バイアス磁石と磁歪材との間に微小な隙間を設けた構成としているので、磁歪材を通り発電に寄与する磁束の変化量を大きくすることが出来、更に高効率で発電を行うことが出来る。
【0016】
また、本発明の構成は、圧縮手段とバイアス磁石は固定せず、磁歪材のみ固定しているので、磁歪材には圧縮力のみが作用し、バイアス磁石には何の力も作用しなくなり、発電デバイスの耐久性を大幅に増すことが出来る。
【0017】
また、本発明の構成は、圧縮手段として力を拡大することが可能な機構を用いているので、一般的に逆磁歪効果を起こすのに必要なレベルの力の大きさを少ない力で作用させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の発電装置は、従来の構成と同様に、発電手段と整流回路と蓄電手段を有する発電デバイスと、蓄電手段に接続された低電圧駆動装置とを有する。
【0019】
この発電デバイスに含まれる整流回路と蓄電手段、および低電圧駆動装置の構成は、従来の構成と同じであるが、本発明の発電装置は、発電デバイスに含まれる発電手段の構成が従来の構成とは異なっている。この発電手段は、バイアス磁石の一方の極から発生する磁束に対して閉磁路を形成して他方の極に戻るように構成されている。
【0020】
この様に構成することで、従来の発電装置では得られなかったバイアス磁石の減磁の度合いを大きくすることなく、磁歪材を通り発電に寄与する磁束の変化量を増やすことが出
来るようになる。以下に、本発明の発電デバイスの構成およびそれを備えた発電装置の具体的な構成を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0021】
まず、本実施形態の発電デバイス、およびその発電デバイスを備えた発電装置について説明する。図1は、本発明の発電装置および発電デバイスの構成例を説明するための図面であり、図2は、発電手段の構成を示す斜視図である。
【0022】
図1に示す様に、本発明の発電装置1は、周期的な振幅力を加えることにより当該周期的な振幅力と同期した周期的な振幅を持つ電流を誘起する発電手段3と、発電手段3で誘起された電流を整流する整流手段4と、整流手段4が整流した電荷を蓄える蓄電手段5とを有する発電デバイス2と、蓄電手段5に蓄えられた電荷を利用して駆動される低電圧駆動機器6とを備える。
【0023】
この発電手段3は、図1、図2に示す様に、2極に着磁されたバイアス磁石8と、バイアス磁石8の一方の極から発生する磁束を磁気的な異方性を有する方向に通すように配置し、外部からの力を加えることで逆磁歪効果により透磁率を変化させて、磁束の流れを変化させる磁歪材7aと、バイアス磁石8と磁歪材7aとの間に配置し、磁歪材7aの磁気的な異方性を有する方向に周期的な振幅力を加える圧縮手段9とを有する。また、この発電手段3は、圧縮手段9により磁歪材7aに周期的な振幅力を加えることで、磁歪材7aを通る磁束の流れを周期的に変化された磁束と、コイル芯に巻き廻されたコイルとが鎖交するように配置し、この周期的に変化する磁束により電流を誘起するコイル手段10とを備えている。また、コイル手段10におけるコイルと鎖交した磁束は、再びバイアス磁石8の他方の極に戻るように、磁束の流れが1つの閉磁路を形成する様に上述した各部材が配置されている。
【0024】
なお、上記閉磁路は、磁性材7aとコイル手段10とを磁気的に接続する軟磁性部材12と、コイル手段10とバイアス磁石8とを磁気的に接続する軟磁性部材11を設けることで形成される。また、2つの軟磁性部材11、12は、非磁性部材15、16を挟持することで、固定される。
【0025】
次に、上述したコイル手段について更に詳細に説明する。図3は、発電手段3におけるコイル手段10の構成例を説明するための図面である。
このコイル手段10は、軟磁性体よりなるコイル芯18と、コイル芯18に巻き廻された電気的な導線よりなるコイル17と、コイル17の両端に設けられ、誘起された電流が整流手段4に伝えられる整流手段端子13、14とから構成されている。なお、本実施例の場合は、このコイル芯18が閉磁路形成部材となる。
【0026】
次に、本発明の発電手段3の作用について説明する。図4〜図6は、本実施例における発電手段3の作用を説明するための図面である。図4は、発電手段3の初期状態を示しており、図5は、圧縮手段9を磁歪材7a側に移動させて、圧縮部材9とバイアス磁石8との間に空間を形成するとともに、磁歪材7aの磁束の流れを少なくしたときの状態を示しており、図6は、図5に示す状態を解除して、再び閉磁路を形成したときの状態を示している。
【0027】
上記発電手段3の初期状態での磁束の流れは、図4に示す様に、バイアス磁石8のN極から発生した磁束は、圧縮手段9と磁歪材7aと軟磁性部材12とコイル手段10と軟磁性部材11とバイアス磁石8のS極に戻って形成される。つまり、この状態では、磁束の流れが1つの閉磁路を形成している。
【0028】
また、図5に示す様に、圧縮手段9により、磁歪材7aの磁気的な異方性を有する方向、図では磁束の流れる方向と平行な方向(矢印に示す方向)に力を加えることで、逆磁歪効果により磁歪材7aを通る磁束量が変化し、同時に閉磁路を形成しているコイル手段10のコイルと鎖交する磁束量を変化させることで、コイルに電流を誘起する。この場合、圧縮手段9により磁歪材7aに圧縮力を加えることで、逆磁歪効果により磁歪材7aの透磁率が下がり、これによりコイル手段10を通る磁束量は減る。それに伴ってコイル手段10におけるコイルと鎖交する磁束量も減るので、その変化の度合いに応じた電流を誘起する。
【0029】
また、図6に示す様に、圧縮手段9により、磁歪材7aに加えられていた力を矢印に示す方向に解放することで、磁歪材7aを通る磁束量が再び初期状態(図4の状態)まで戻る。それと同時に、閉磁路を形成しているコイル手段10におけるコイルと鎖交する磁束量も元に戻り、今度はコイルに逆方向の電流を誘起させることができる。
【0030】
この様に、図5と図6で示した状態では、誘起される電流の方向が異なるが、図1に示すように、この誘起された電流は、整流手段端子13、14を通して整流手段4に伝えられることで電流は整流され、蓄電手段5に蓄電される。そして、この蓄電手段5に蓄電された電荷を使用して、低電圧駆動機器6を駆動することができる。
【0031】
したがって、上述した図4〜図6に示した動作を周期的に繰り返すことで、周期的な力の機械的なエネルギーを、電気的なエネルギーとして蓄電手段5に蓄えることが出来る。
【0032】
また、本構成の発電手段3は、バイアス磁石8で発生した磁束の流れが1つの閉磁路を形成しているので、バイアス磁石8の減磁の度合いを大きくすることなく、押圧手段9を介して磁歪材7aを通り、発電に寄与する磁束の変化量を増やすことが出来る。そのため、本構成によれば、高効率で発電を行うことが出来る。
【0033】
また、発電装置3における、閉磁路形成部材に相当するコイル芯18(図3参照)が軟磁性体で構成されているので、バイアス磁石8の減磁の度合いを極力抑えることが出来る。
【0034】
また、発電装置3における圧縮手段9により磁歪材7aに力を作用させた際、バイアス磁石8と磁歪材7aとの間に微小な隙間を設けているので、磁歪材7aを通り発電に寄与する磁束の変化量を更に大きくすることが出来る。
【0035】
また、圧縮手段9とバイアス磁石8は固定せず、磁歪材7aのみを固定することで、磁歪材7aには圧縮力のみが作用し、バイアス磁石8には何の力も作用しなくなる。一般的に、磁歪材や磁石などの強磁性材は、引っ張り力に対して非常にもろいが、圧縮力に対しては耐力が大きいため、本構成とすることで発電デバイスの耐久性を大幅に増すことが出来る。
【0036】
次に、本発明に係る発電手段の変形例について説明する。図7は、本実施形態における発電手段の構成例を説明するための図面である。
【0037】
本実施形態の発電手段203は、先に示した形態における、逆磁歪効果を有する磁歪材に代えて、磁歪材7bに、引張手段209にて引っ張り力を加えることで透磁率が下がる材料を用いた点のみが異なっており、他の構成は同じである。
この様に構成することであっても、バイアス磁石8の一方の極から発生した磁束は、複数個の部材を介して他方の極に戻る閉磁路を形成することが出来るので、先と同様の効果を得ることが出来る。
【実施例2】
【0038】
次に、本発明の発電手段の他の構成例について説明する。図8は、本実施形態における発電手段の他の構成例を説明するための図面である。
【0039】
本実施形態に示す発電手段103と、実施例1で示した発電手段との相違点は、図8に示す様に、先の実施例1に示したコイル手段の配置を変えて、コイル手段110を磁歪材(図示せず)の周りにコイルを巻き廻して構成し、実施例1の発電手段におけるコイル手段を配した位置に、新たに磁性材108を設けた点にあり、他の構成は同じである。本構成の場合は、この磁性材108が閉磁路形成部材となる。なお、本形態は、発電手段103が、小型化が必要とされない場合に適用できるものである。つまり、誘起される所望の電流量を得るためには、所定数のコイル巻き数を必要とするが、図7に示す構成では、コイル手段110を磁歪材にコイルを巻き廻して構成しているため、巻き線数に制約を受ける場合には適さない構成となるからである。
【0040】
この様に、コイル手段110を磁歪材にコイルを巻き廻して構成するとともに、実施例1の発電手段におけるコイル手段を配した位置に、新たに磁性材108を設けた構成とすることで、先の実施例1と同様に、バイアス磁石8の一方の極で発生する磁束は、閉磁路を形成してバイアス磁石8の他方の極まで流れる構成となる。したがって、実施例1と同様に、従来の発電装置では得られなかったバイアス磁石8の減磁の度合いを大きくすることなく、磁歪材を通り発電に寄与する磁束の変化量を増やすことが出来る。
【0041】
なお、実施例1ではコイル芯にコイルを巻き廻した形態を、本実施例では磁歪材にコイルを巻き廻した形態を示したが、これら形態を組み合わせて、コイル芯と磁歪材とに直列のコイルを順次巻き廻した形態としても構わない。
【実施例3】
【0042】
次に、本発明の発電手段の更に他の構成例について説明する。図9は、本実施形態の発電手段の更に他の構成例を示す斜視図である。本実施例の特徴とする点は、実施例1、2に示した圧縮手段9を、圧縮部材21と、作動レバー22と、送りネジ23と、復帰バネ24にて構成した点である。発電手段303を構成する他の構成は同じであるので、本実施例での説明はこの圧縮手段9について行い、他の構成についてのここでの詳細な説明は割愛する。
【0043】
図9に示す様に、発電手段303における圧縮手段9は、作動レバー22と、作動レバー22に加えた力により回転する送りネジ23と、磁歪材7aと当設させて設けられ、送りネジ23の回転により拡大した力で送りネジ23の軸方向に移動するように配置される、軟磁性材よりなる圧縮部材21と、作動レバー22と一体に設けられ、送りネジ23を逆方向に回転させることで、圧縮部材21に加えられた力および変位を取り除き、再び作動レバー22に力及び変位を加えるための復帰バネ24とから構成されている。
【0044】
この様に発電手段303を構成することで、周期的な力の機械的なエネルギーを電気的なエネルギーとして容易に蓄えることが出来る。また、本実施形態における圧縮手段9は、外部からの力を拡大することが可能な機構を用いているので、一般的に逆磁歪効果を起こすのに必要なレベルの力の大きさを、少ない外部力で作用させることが可能となる。
【0045】
次に、この発電手段303における圧縮手段9の作用について説明する。図10〜図12は、発電手段303における圧縮手段9の作用を説明するための図面である。本図中(a)は、発電手段303の上面図を、(b)は軟磁性部材11を取り除いた状態での右側面図を示している。
【0046】
図10に示す様に、初期状態の発電手段303は、バイアス磁石8のN極から発生した磁束が、軟磁性材よりなる圧縮部材21と、磁歪材7aに導かれる。そして、磁歪材7aに導かれた磁束は、軟磁性部材12を介して、コイル手段10と通過して、軟磁性部材11を介して、バイアス磁石8のS極に戻る様に構成されている。つまり、先に示したように、この発電手段303は、磁束の流れが1つの閉磁路を形成している。また、圧縮部材21にはめネジが切られており、送りネジ23により送り可能となっている。さらに、この送りネジ23には、復帰バネ24と一体に構成された作動レバー22が固定されている。
【0047】
次に、図11に示す様に、図(b)に示す矢印の方向に作動レバー22に外部からの力を加えることで、作動レバー22に固定されている送りネジ23は、図(b)では右回転をする。そして、この送りネジ23の回転に伴い、めネジが切られた圧縮部材21は、送りネジの軸方向、図(a)で示す左方向に送られて、磁歪材7aに圧縮力を加えられる。この際、作動レバー22に加えた力を拡大した力が圧縮力として加えられることとなる。
【0048】
この様に、圧縮部材21に磁歪材7aの磁気的な異方性を有する方向、図では磁束の流れる方向と平行な方向に力を加えることで、逆磁歪効果により磁歪材7aを通る磁束量が変化し、同時に閉磁路を形成しているコイル手段10におけるコイル17と鎖交する磁束量も変化し、コイル17に電流を誘起する。この場合、作動レバー22を介して外部から圧縮力を加えることで、逆磁歪効果により磁歪材7aの透磁率が下がり、磁歪材7aを通る磁束量を減らすことができる。これに伴って、コイル手段10におけるコイル17と鎖交する磁束量も減らすことができるので、コイル17からその変化の度合いに応じた電流を誘起させることができる。
【0049】
次に、図12に示す様に、作動レバー22に加えていた力を、復帰バネ24に蓄えられていた弾性エネルギーにより、図(b)に示す矢印の方向に復帰させて開放する。この様に、作動レバー22に加えられていた力を解放することにより、作動レバー22に固定されている送りネジ23は、図(b)では左回転をする。この送りネジ23の回転に伴い、めネジの切られた圧縮部材21は、送りネジの軸方向、つまり図(a)では図11とは逆の右方向に送られ、磁歪材7aに加えられていた圧縮力を開放する。そして、磁歪材7aに加えられていた力を解放することで、磁歪材7aを通る磁束量が再び初期状態(図10の状態)まで戻ると同時に、閉磁路を形成しているコイル手段10におけるコイル17と鎖交する磁束量も元に戻り、今度は逆方向の電流を誘起させることが出来る。
【0050】
この様にして、図10〜図12の動作を周期的に繰り返すことで、本実施例に示す発電手段303は、周期的な力の機械的なエネルギーを電気的なエネルギーを生成することが出来る。
【0051】
次に、本実施形態に係る圧縮手段を備えた発電手段を、腕時計に組み込んだ発電装置の構成例について説明する。図13と図14は、発電装置の構成を示す図面である。
【0052】
実施例1で説明したように、発電装置3は、発電手段と整流手段と蓄電手段を備える発電デバイスと、低電圧駆動機器とから構成されるが、図13と図14では、低電圧駆動機器の外装部品である低電圧駆動機器外装19と、発電手段303との配置形態のみを示している。
【0053】
図13、図14で示す発電装置303は、腕時計のような低電圧駆動機器外装19に設けた切り欠き部から、この発電手段303の作動レバー22を露出させて組み込んで構成してなる。なお、図13と図14に示す形態は、低電圧駆動機器外装19に設けた切り欠
き部の位置を変えただけで、他は同じである。この様に構成することで、腕時計をはめていないもう一方の手により、作動レバー22を作動させることが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の発電装置、および発電デバイスの構成を示す図面である。(実施例1)
【図2】本発明に係る発電手段の構成例を示す斜視図である。(実施例1)
【図3】本発明に係る発電手段におけるコイル手段の構成例を示す図面である。(実施例1)
【図4】図2に示した発電手段の作用を説明するための図面である。(実施例1)
【図5】図2に示した発電手段の作用を説明するための図面である。(実施例1)
【図6】図2に示した発電手段の作用を説明するための図面である。(実施例1)
【図7】本発明に係る発電手段の変形例を示す図面である。(実施例1)
【図8】本発明に係る発電手段の他の構成例を示す図面である。(実施例2)
【図9】本発明に係る発電手段の更に他の構成例を示す斜視図である。(実施例3)
【図10】図9に示した発電手段の作用を説明するための図面である。(実施例3)
【図11】図9に示した発電手段の作用を説明するための図面である。(実施例3)
【図12】図9に示した発電手段の作用を説明するための図面である。(実施例3)
【図13】本発明の発電装置の構成例を示す図面である。(実施例3)
【図14】本発明の発電装置の構成例を示す図面である。(実施例3)
【図15】従来の発電装置および発電デバイスの構成を示す図面である。
【図16】従来の発電デバイスにおけるコイル手段の構成を示す図面である。
【符号の説明】
【0055】
1 発電装置
2 発電デバイス
3 発電手段
4 整流手段
5 蓄電手段
6 低電圧駆動機器
7a、7b 磁歪材
8 バイアス磁石
9 圧縮手段
10 コイル手段
11 軟磁性部材
12 軟磁性部材
13 整流手段端子
14 整流手段端子
15 非磁性部材
16 非磁性部材
17 コイル
18 コイル芯
19 低電圧駆動機器外装
21 圧縮部材
22 作動レバー
23 送りネジ
24 復帰バネ
103 発電手段
108 磁性材
110 コイル手段
203 発電手段
209 引張手段
301 発電装置
302 発電デバイス
303 発電手段
310 コイル手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流を誘起する発電手段と、
当該発電手段で誘起された電流を整流する整流手段と、
当該整流手段が整流した電荷を蓄える蓄電手段と、を備え、
前記発電手段は、
2極に着磁されたバイアス磁石と、
外部から力を加えることで逆磁歪効果により透磁率を変化させて、当該バイアス磁石の一方の極で発生した磁束の流れを変化させる磁歪材と、
前記バイアス磁石と前記磁歪材との間に配置され、周期的な振幅力を前記磁歪材に加える圧縮手段と、
前記磁歪材から流れ出た磁束を、前記バイアス磁石の他方の極に導くように配置された閉磁路形成部材と、
前記磁歪材または前記閉磁路形成部材に巻き廻されてなるコイルと、を有し、
前記発電手段で誘起された電流を、前記コイルのコイル端子を介して前記整流手段に供給するように構成されてなる
ことを特徴とする発電デバイス。
【請求項2】
前記圧縮手段は、
作動レバーと、
当該作動レバーに加えられた力により回転する送りネジと、
前記磁歪材と接し、前記送りネジの回転により拡大した力で前記送りネジの軸方向に送られる、軟磁性材よりなる圧縮部材と、
前記作動レバーと一体に設けられ、前記送りネジを逆方向に回転させることで、前記圧縮部材に加えられた力、および変位を取り除き、再び前記作動レバーに力、及び変位を加える復帰バネと、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の発電デバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発電デバイスにおける前記蓄電手段と、低電圧駆動機器とが接続されてなり、
前記蓄電手段に蓄えられた電荷を利用して前記低電圧駆動機器を駆動する
ことを特徴とする発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−72862(P2008−72862A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250639(P2006−250639)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】