説明

登攀式足場装置

【課題】建築物躯体の外面に対する仕上げ作業の作業性を向上させることができる登攀式足場装置を提供する。
【解決手段】足場ユニットは内側垂直支柱12と外側垂直支柱13とこれらを連結する複数本の支持梁14を有する複数の枠体11により形成されている。足場ユニットには、相互に水平方向に隣り合う2つの支持梁14に両端が着脱自在に係合する足場板が装着されるようになっている。足場ユニットにはそれぞれ建築物躯体30に沿う水平方向の支持ピン24が設けられた2つの支持金具21が設けられており、連結棒材25が支持ピン24により支持金具21に中央部分でピン結合されている。この連結棒材25は、当接部材としての鋼材18に外方端部が接触した状態のもとで内方端部が建築物躯体30に締結される支持位置と、内側垂直支柱12に沿う状態の起立位置との間に回動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物を建造する際に建築物躯体の外側に配置され、建築作業に進行に伴って上層階側に移動されるようにした登攀式足場装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中層ないし高層のコンクリート構造の建築物を建造する際には、建築物躯体の外側に建築物外面に塗装作業等の種々の仕上げ作業を行うために足場装置が配置されており、仕上げ作業は作業者が足場装置に設けられた足場板の上で行われる。建築物の躯体構築作業は上層側に順次進行するので、足場装置は上層側の躯体構築作業が進行するに伴って順次上層階側にクレーンやホイスト等の上下動装置によって登攀移動される。
【0003】
このような登攀式の足場装置としては、特許文献1に記載されるように、足場板が装着されるユニット枠体に建築物躯体に締結される締結具を取り付けるようにしたものがあり、さらに、特許文献2に記載されるように、足場板が装着される足場ユニットに建築物躯体に締結される棒状のブラケットをピンを中心に揺動自在に取り付けるようにしたものがある。
【特許文献1】特開2003−184301号公報
【特許文献2】特開2005−248574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるように、締結具をユニット枠体に建築物躯体に向けて突出させるように固定した場合には、足場装置を上層階側にクレーンやホイスト等の駆動手段によって登攀移動する際には、登攀移動時に締結具と建築物躯体との干渉を避けるために足場装置を建築物躯体から離す方向に水平移動させる必要がある。これに対し、特許文献2に記載されるように、棒状のブラケットをその外端部で足場ユニットに対しピンを中心に揺動自在に取り付け、建築物躯体の外面にブラケットの建築物側端部つまり内端部が係合するブラケット受けを突出させるようにすると、足場ユニットを下降移動させることにより、ブラケットをブラケット受けの2つのピンの間に取り付けることができるので、足場ユニットを上昇移動させる登攀時には足場ユニットを建築物躯体から離す方向に水平移動させることは不要となる。
【0005】
しかしながら、ブラケットをブラケット受けに係合させて固定する際には、只単に足場ユニットを下降移動させるだけでは自動的にブラケットをブラケット受けの2本のピン間に係合させることができず、作業者が手作業でブラケットを操作する必要があり、重量の大きいブラケットを作業者が手動操作することは容易ではない。しかも、建築物躯体の外面に突出して設けられたブラケット受けにブラケットをその内端部で取り付けるようにしているので、内端部を足場ユニットから建築物躯体に向けて突出させる必要があり、ブラケット受けを外面に突出させなければならないこともあって、足場ユニットと建築物躯体の外面との間に大きな隙間を確保する必要がある。このため、足場ユニットに装着される足場板と建築物躯体との間の距離が大きくなり、作業者は隙間を避けて足場ユニットから建築物躯体に向けて身を乗り出して仕上げ作業を行う必要があり、作業性が悪いという問題点がある。しかも、足場ユニットを上層階側に上昇移動させる際には、ブラケットが外端部で揺動してしまうので、上昇移動が不安定となる。
【0006】
本発明の目的は、建築物躯体の外面に対する仕上げ作業の作業性を向上させることができる登攀式足場装置を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、建築物躯体に固定した状態のもとで足場板と建築物躯体との間の隙間を小さくすることができる登攀式足場装置を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、安定して上層階側に移動させることができる登攀式足場装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の登攀式足場装置は、建築物躯体側の内側垂直支柱、当該内側垂直支柱から前記建築物躯体に対して外側に離れる外側垂直支柱、および前記内側垂直支柱と前記外側垂直支柱とを連結する複数本の支持梁をそれぞれ有する複数の枠体を、相互に平行に配置した状態で連結することにより形成される足場ユニットと、前記足場ユニットに前記内側垂直支柱の部分に相互に対向させてそれぞれ固定され、それぞれ前記建築物躯体に沿う水平方向の支持ピンが設けられた少なくとも2つの支持金具と、それぞれ前記支持ピンにより前記支持金具に中央部分でピン結合され、前記外側垂直支柱に固定された当接部材に外方端部が接触した状態のもとで内方端部が前記建築物躯体に締結される支持位置と、前記内側垂直支柱に沿う状態の起立位置との間に回動する少なくとも2つの連結棒材とを有し、それぞれの前記連結棒材を前記起立位置に設定した状態のもとで上層側に移動し得ることを特徴とする。
【0010】
本発明の登攀式足場装置は、前記当接部材に噛み合う噛み合い位置と噛み合いを離脱する離反位置との間で回動するクランプアームをそれぞれの前記連結棒材の外方端部にアームピンによりピン結合し、前記連結棒材を前記支持位置に設定したときに前記クランプアームを前記当接部材に噛み合わせることを特徴とする。
【0011】
本発明の登攀式足場装置は、それぞれの前記連結棒材が前記起立位置となったときにおける前記連結棒材の水平方向の重心位置を、前記支持ピンよりも前記外側垂直支柱側にずらすことを特徴とする。
【0012】
本発明の登攀式足場装置は、それぞれの前記連結棒材が前記起立位置となるとともに前記クランプアームが前記離反位置となったときにおける前記クランプアームの重心位置を、前記アームピンよりも建築物躯体側であって前記アームピンよりも上側にずらすことを特徴とする。
【0013】
本発明の登攀式足場装置は、それぞれの前記連結棒材が前記起立位置となったときに、それぞれの前記連結棒材の少なくとも一部が前記内側垂直支柱に対して水平方向にオーバーラップすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、足場ユニットを建築物躯体に連結するための連結棒材がその中央部分で足場ユニットの内側垂直支柱にピン結合されているので、足場ユニットを建築物躯体の外側で上下方向に移動させる際には、連結棒材を起立位置にすることにより、足場ユニットを建築物から離反させる方向に移動させることなく、そのまま上下動することによって連結棒材と建築物躯体との干渉を避けて容易に移動させることができる。これにより、建築物躯体に対する仕上げ作業を能率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明の一実施の形態である登攀式足場装置を構成する1組の足場ユニットを示す概略斜視図である。
【0016】
図1に示す足場ユニット10は4つの枠体11を有している。それぞれの枠体11は内側垂直支柱12とこれと平行な外側垂直支柱13とを5本の支持梁14により連結することにより形成されており、支持梁14は、図1においては、最下段側から最上段に向けて符号(a)〜(e)が付されている。足場ユニット10を建築物躯体の外側に配置した状態のもとでは、内側垂直支柱12は建築物躯体側に位置し、外側垂直支柱13は建築物躯体に対しては内側垂直支柱12よりも外側に位置することになる。
【0017】
それぞれの垂直支柱12,13は長さが約7m70cmであり、幅寸法が6cm×6cmの角パイプにより形成されており、水平の支持梁14は外径が約4.3cmの丸パイプにより形成されている。各支持梁14の軸心間の距離は約190cmであり、内側垂直支柱12と外側垂直支柱13の軸心間の距離は約72cmである。ただし、これらの寸法は任意に設定することができる。
【0018】
足場ユニット10を構成する4つの枠体11は相互に水平方向に隣り合う枠体11を筋交い9により相互に連結することによって形成されており、足場ユニット10における水平方向に隣り合う2つの支持梁14には足場板15が装着されている。足場板15は布板とも言われ、特許文献1に記載されるように、長方形となっており、両端部には支持梁14に着脱自在に係合するフックが設けられ、図1に示す場合には、最上段の支持梁14eを除いてそれよりも下側の支持梁14a〜14dに足場板15が装着されている。ただし、最上段の支持梁14eに足場板15を装着するようにしても良い。なお、足場板15の長さは約180cmであるが、他の寸法の足場板15を用いることができる。また、それぞれの枠体11は筋交い9に加えて図示しない水平の棒材により相互に連結されている。
【0019】
図1に示すように、足場ユニット10には水平方向に伸びるU字型の1本の鋼材16が固定されており、鋼材16はそれぞれの内側垂直支柱12の内側に位置させてそれぞれの内側垂直支柱12に締結金具17により固定されている。この鋼材16に対してほぼ平行にそれぞれの外側垂直支柱13の内側にはU字型の1本の鋼材18が締結金具19により固定されており、両方の鋼材16,18はほぼ同じ長さであり、足場ユニット10の左右から図1に示すように僅かに突出している。なお、図1においては、締結金具17,19はそれぞれの鋼材16,18の両端部に対応させて2つずつ示されているが、それぞれの垂直支柱12,13に対応させて締結金具17,19を4つずつ取り付けるようにしても良い。
【0020】
図1は4つの枠体11を有する足場ユニット10を示すが、任意の数の枠体11により足場ユニット10を形成することができる。また、図1に示すように、1組の足場ユニット10を単独で建築物躯体の外側に配置するようにしても良く、2組の足場ユニット10を上下に連結して建築物躯体の外側に配置するようにしても良い。
【0021】
図2は図1に示された足場ユニット10を右側から見た状態を拡大して示す足場ユニット10の正面図であり、図3は図2の一部を拡大して示す足場ユニット10の正面図であり、図4は図3におけるA−A線に沿う断面図である。
【0022】
鋼材16の左右両端部には板状の支持金具21が相互に対向して固定されており、支持金具21は鋼材16の外側に嵌め込まれるコの字形状の固定部材22とこの固定部材22に取り付けられるねじ部材23とを有し、支持金具21は固定部材22に溶接されている。このように、支持金具21は鋼材16の両端部に2つ固定されているが、2つ以上の任意の数の支持金具21を鋼材16に固定するようにしても良い。支持金具21には水平方向であって建築物躯体に沿う方向となる支持ピン24が取り付けられており、この支持ピン24には連結棒材25が回動自在にピン結合されている。連結棒材25は長さ方向の中央部分で支持ピン24により支持金具21にピン結合されており、図3は連結棒材25が内側垂直支柱12に沿う状態の起立位置となった状態を示す。
【0023】
連結棒材25は図4に示すように、I型の鋼材により形成されており、それぞれの固定部材22に取り付けられる支持金具21は連結棒材25を挟むように2枚の板材により形成されている。連結棒材25としては、3つないしそれ以上の支持金具21を枠体11に取り付けるようにし、それぞれの支持金具21に連結棒材25を設けるようにしても良く、足場ユニット10に取り付けられる連結棒材25の数は2つに限られない。
【0024】
連結棒材25は図3に示す状態から図3において時計方向に約90度回動するようになっており、回動させて連結棒材25をほぼ水平方向の支持位置とすると、連結棒材25の図3における上部側が建築物躯体30側に迫り出す内方端部となり、下側部分が建築物躯体30に対して外側となって当接部材としての鋼材18に接触する外方端部となる。連結棒材25の外方端部側にはアームピン26によりクランプアーム27が回動自在にピン結合されている。クランプアーム27は、連結棒材25が水平位置となって当接部材としての鋼材18に接触した状態のもとで当接部材としての鋼材18に噛み合う噛み合い位置と、噛み合いを離脱する離反位置との間を回動する。
【0025】
図5は連結棒材がほぼ水平状態となるとともにクランプアーム27が離反位置となった状態を示す足場ユニット10の正面図であり、図6は連結棒材がほぼ水平状態となった状態のもとでクランプアーム27が当接部材としての鋼材18に噛み合った状態を示す正面図である。
【0026】
図3に示すように、連結棒材25を起立位置とした状態のもとでは足場ユニット10をクレーンやホイスト等の図示しない上下動装置によって上下方向に移動させることができる。図3に示すように、連結棒材25の重心Gaは、連結棒材25の長さをLとし、幅をWとすると、長さ方向および幅方向の中心となっており(L/2,W/2)、図3に示すように連結棒材25を起立位置とした状態のもとでは、支持ピン24は重心Gaよりも建築物躯体30側になるとともに重心Gaよりも下側となっている。つまり、重心Gaは支持ピン24よりも外側垂直支柱13側にずれるとともに支持ピン24よりも僅かに上側となっている。したがって、連結棒材25を起立位置とした状態のもとでは、連結棒材25は鋼材16に向かう方向に倒れて鋼材16に接触するのでその状態で起立位置が保持されることになる。これにより、起立位置の状態で足場ユニット10を上下動装置によって上下移動させても、連結棒材25は建築物躯体30側に回動することなく、起立位置を保持することになる。
【0027】
このように、連結棒材25が起立位置となると、図3に示すように連結棒材25は内側垂直支柱12に部分的に水平方向にオーバーラップつまり重なった状態となり、起立位置となったときには、連結棒材25の建築物躯体30側に突出する長さは連結棒材25の幅寸法Wよりも短くすることができる。図3においては内側垂直支柱12の破線で示す部分が連結棒材25に対してオーバーラップしている。
【0028】
クランプアーム27の基端部には重り28が設けられており、クランプアーム27の重心Gbは、図3に示すように連結棒材25が起立位置となったときにアームピン26よりも建築物躯体30側であってアームピン26よりも上側となるようにずれている。したがって、連結棒材25が起立位置となっているときには、クランプアーム27は離反位置を保持することになる。
【0029】
足場ユニット10を建築物躯体に取り付けるには、クレーンなどの上下動装置によって足場ユニット10を所定の高さに設定した状態のもとで、図5に示すように、連結棒材25を時計方向に約90度回動させてほぼ水平の支持位置の状態とし、連結棒材25の外方端部が当接部材としての鋼材18に接触した状態とする。この回動作業は、重心Gaの位置が支持ピン24の位置に対して僅かにずれた位置となっているので、作業者には大きな荷重が加わらずに作業者は容易に手作業で行うことができる。このようにして連結棒材25がほぼ水平になった状態のもとでアンカーボルト31を連結棒材25の内側端部に貫通させて建築物躯体30に連結棒材25を締結する。これにより、連結棒材25は建築物躯体30に締結され、足場ユニット10はその上端部の左右に設けられた2つの連結棒材25により建築物躯体30に固定される。連結棒材25を図3に示す起立位置から図5に水平位置まで回動させる過程では、クランプアーム27の重心Gbはアームピン26よりも図5において右側つまり建築物躯体30側となるので、クランプアーム27は離反位置を保持することになる。
【0030】
図5に示すように、連結棒材25の外方端部が鋼材18の下面側に接触した状態とすると、足場ユニット10の荷重は2本の鋼材16,18の部分で連結棒材25に支持されるので、足場ユニット10は確実に連結棒材25を介して建築物躯体30に支持されることになるが、足場ユニット10の取付安全性をより高めるために、クランプアーム27を図5に示す離反位置から図6に示す噛み合い位置つまりクランプ位置に回動させてクランプアーム27を鋼材18に噛み合わせる。この回動作業は、クランプアーム27の重心Gbの位置がアームピン26の位置に対して僅かにずれた位置となっているので、作業者には大きな負荷が加わらずに容易に手作業で行うことができる。
【0031】
上述した登攀式足場装置を用いて建築物外面に対する塗装作業等の仕上げ作業を行う場合には、建築物の所定階数分が建築された状態のもとで、足場ユニット10をクレーン等により持ち上げて建築物躯体30の外側に吊り下げた状態のもとで、図3に示すように、建築物躯体30の床部よりも支持金具21が床部よりもやや高い位置となるように足場ユニット10を位置決めする。この状態のもとで、起立位置の連結棒材25を図5に示す支持位置まで約90度時計方向に回動する。これにより、連結棒材25の外方端部は当接部材としての鋼材18の下面に接触することになる。図3に示す起立位置から図5に示す支持位置まで連結棒材25を回動させるときには、クランプアーム27はアームピン26と重心Gbの位置関係から離反位置を保持することになる。
【0032】
図5に示すように連結棒材25を支持位置とした状態のもとで、アンカーボルト31により連結棒材25の内方端部を建築物躯体30の床部に締結する。これにより、足場ユニット10は2本の連結棒材25により建築物躯体30に固定されることになり、足場ユニット10の荷重は2本の連結棒材25を介して建築物躯体30により支持される。この状態のもとで、クランプアーム27を図5に示す離反位置から図6に示す噛み合い位置に回動させると、クランプアーム27は当接部材としての鋼材18に噛み合った状態となる。この状態のもとで、作業者が足場板15の上で仕上げ作業を行うことができる。
【0033】
図5および図6に示すように、連結棒材25を支持位置にまで回動させたときに、連結棒材25がほぼ水平状態とならないときには、スペーサ32に代えてジャッキを配置し、連結棒材25の図5および図6における右端部と建築物躯体30との間の上下間距離を調整することによって連結棒材25をほぼ水平状態に設定することができる。
【0034】
建築作業の進行に伴って足場ユニット10を上昇移動させるには、クレーン等により足場ユニット10は持ち上げられることになる。その際には、足場ユニット10をクレーン等で支持した状態のもとで、アンカーボルト31を取り外すとともに、クランプアーム27を離反位置にまで回動した後に、連結棒材25を水平位置から起立位置まで回動させる。連結棒材25を起立位置まで回動させると、連結棒材25の一部は足場ユニット10内に入り込んで内側垂直支柱12とオーバーラップした状態となるので、そのままクレーン等で足場ユニット10を上昇移動させるだけで、連結棒材25と建築物躯体30との干渉を避けることができる。
【0035】
図7は2台の足場ユニットを上下に連結して建築物の外側に配置した状態を示す概略図であり、例えば、下側の足場ユニット10aを建築物躯体30の外側に配置した状態のもとで、それよりも上層階側の建築が進行したときには、足場ユニット10aの上側に他の足場ユニット10bをクレーン等の上下動装置によって持ち上げて連結する。図7においては上側の足場ユニット10bに設けられた連結棒材25により上層階側の建築物躯体30に足場ユニット10bを締結するようにしており、足場ユニット10bの連結棒材25は、足場ユニット10aの連結棒材25よりも枠体11に対しては下側に取り付けられている。このように、連結棒材25は枠体11の上下方向任意の位置に取り付けることができる。図7においては、連結棒材25により足場ユニット10a,10bが連結される建築物躯体30以外の箇所における建築物躯体30と足場ユニット10a,10bとの間には、ジョイント金具41により枠体11と建築物躯体30との間の距離が設定されるとともに、枠体11と建築物躯体30とが連結されている。
【0036】
上下2段に足場ユニット10a,10bを連結して建築物躯体30の外側に配置する場合には、上段側の足場ユニット10bについては、この足場ユニット10bに対応する建築物躯体30の床壁が完成するまでは、足場ユニット10bをクレーン等により吊り下げた状態として、ジョイント金具41のみにより建築物躯体に連結し、対応する建築物躯体30が完成した後に、連結棒材25により足場ユニット10bを建築物躯体30に締結するようにしても良い。また、1つの足場ユニットに上下にずらして複数の連結棒材25を取り付けるようにしても良い。
【0037】
本発明は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、連結棒材25の内方端部と建築物躯体30との締結は、アンカーボルト31に限られず、他の締結部材を用いるようにしても良い。また、鋼材18はクランプアーム27が噛み合う当接部材として設けられており、1本の鋼材18により当接部材が形成されているが、短い寸法のブロック状の部材によりそれぞれのクランプアーム27が噛み合う当接部材を形成するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態である登攀式足場装置を構成する1組の足場ユニットを示す概略斜視図である。
【図2】図1に示された足場ユニットを右側から見た状態を拡大して示す足場ユニットの正面図である。
【図3】図2の一部を拡大して示す足場ユニットの正面図である。
【図4】図3におけるA−A線に沿う断面図である。
【図5】連結棒材がほぼ水平状態となるとともにクランプアームが離反位置となった状態を示す足場ユニットの正面図である。
【図6】連結棒材がほぼ水平状態となった状態のもとでクランプアームが当接部材としての鋼材に噛み合った状態を示す正面図である。
【図7】2台の足場ユニットを上下に連結して建築物の外側に配置した状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0039】
10 足場ユニット
11 枠体
12 内側垂直支柱
13 外側垂直支柱
14 支持梁
15 足場板
16 鋼材
18 鋼材(当接部材)
21 支持金具
22 固定部材
23 ねじ部材
24 支持ピン
25 連結棒材
26 アームピン
27 クランプアーム
30 建築物躯体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物躯体側の内側垂直支柱、当該内側垂直支柱から前記建築物躯体に対して外側に離れる外側垂直支柱、および前記内側垂直支柱と前記外側垂直支柱とを連結する複数本の支持梁をそれぞれ有する複数の枠体を、相互に平行に配置した状態で連結することにより形成される足場ユニットと、
前記足場ユニットに前記内側垂直支柱の部分に相互に対向させてそれぞれ固定され、それぞれ前記建築物躯体に沿う水平方向の支持ピンが設けられた少なくとも2つの支持金具と、
それぞれ前記支持ピンにより前記支持金具に中央部分でピン結合され、前記外側垂直支柱に固定された当接部材に外方端部が接触した状態のもとで内方端部が前記建築物躯体に締結される支持位置と、前記内側垂直支柱に沿う状態の起立位置との間に回動する少なくとも2つの連結棒材とを有し、
それぞれの前記連結棒材を前記起立位置に設定した状態のもとで上層側に移動し得ることを特徴とする登攀式足場装置。
【請求項2】
請求項1記載の登攀式足場装置において、前記当接部材に噛み合う噛み合い位置と噛み合いを離脱する離反位置との間で回動するクランプアームをそれぞれの前記連結棒材の外方端部にアームピンによりピン結合し、前記連結棒材を前記支持位置に設定したときに前記クランプアームを前記当接部材に噛み合わせることを特徴とする登攀式足場装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の登攀式足場装置において、それぞれの前記連結棒材が前記起立位置となったときにおける前記連結棒材の水平方向の重心位置を、前記支持ピンよりも前記外側垂直支柱側にずらすことを特徴とする登攀式足場装置。
【請求項4】
請求項2記載の登攀式足場装置において、それぞれの前記連結棒材が前記起立位置となるとともに前記クランプアームが前記離反位置となったときにおける前記クランプアームの重心位置を、前記アームピンよりも建築物躯体側であって前記アームピンよりも上側にずらすことを特徴とする登攀式足場装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の登攀式足場装置において、それぞれの前記連結棒材が前記起立位置となったときに、それぞれの前記連結棒材の少なくとも一部が前記内側垂直支柱に対して水平方向にオーバーラップすることを特徴とする登攀式足場装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−208556(P2008−208556A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−44188(P2007−44188)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(507060516)ジャパン スチールス グループ株式会社 (10)
【Fターム(参考)】