説明

監視カメラ用レンズ装置

【課題】光量を段階的に減光させる2枚以上のNDフィルタと、このNDフィルタよりも使用頻度が低く且つNDフィルタとの連続性のない特殊フィルタとの間で、直接切り替わらないようにし、操作者が意図しないフィルタが挿入されることを防止可能にする。
【解決手段】フィルタを切り替えるためのターレット62は、光量を段階的に減光させるNDフィルタF1,F2と可視光カットフィルタF3とが通常使用されるダミーガラスGを挟んで同一円周上に配設されている。そして、ターレット62の回転範囲を360以内に制限するとともに、その回転範囲の両端が、NDフィルタF1,F2と可視光カットフィルタF3との間にくるようにする。これにより、操作者が意図しないフィルタが挿入されることを防止し、違和感のある映像が撮影されないようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は監視カメラ用レンズ装置に係り、特にターレット切替え式フィルタ装置を有する監視カメラ用レンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
監視カメラ用レンズ装置(例えば、CCTV(Closed Circuit Television)用レンズ)など)においては、高性能化のために、複数のフィルタを切り替えて使用する用途が増加している。
【0003】
日中等の非常に明るい環境下で撮影を行う場合、絞りの径を小さくして入射光量を減少させるが、絞りの径が小さくなるにしたがって光の回折によるボケが発生するため、小絞りには限界がある。
【0004】
そこで、絞りが小絞りの限界に達すると、光量を減光させるフィルタ(減光(ND)フィルタ)を光路中に挿入するようにしている。
【0005】
特許文献1には、ターレット(回転板)に通常使用位置の透明ガラスの他に、赤外線フィルタ、CC(色補正)フィルタ及びNDフィルタを設け、モータでターレットを回転させて所望のフィルタを撮影光軸上に位置させるようにした光学フィルタ装置が開示されている。また、特許文献1には、0度から360度の範囲内の回転域を有するポテンショメータにより、ターレットの回転位置を検出することが図示されている(特許文献1の図10)。
【0006】
また、特許文献2の段落[0037]には、フィルタターレットの周方向約300度の範囲にわたって、連続的に濃度が変化する傾斜ND領域が形成され、このフィルタターレットは、傾斜ND領域の高濃度側の端部分と、該傾斜ND領域の低濃度側の端部分に隣接して設けられた全透過領域との間の使用範囲を超えて回転しないように、不図示の機械的ストッパによってその回転範囲が制限される記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−215600号公報
【特許文献2】特開2005−294988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の光学フィルタ装置は、ターレットを回転させることにより、通常使用位置の透明ガラスに替えて、赤外線フィルタ、CCフィルタ、又はNDフィルタを切り替えて撮影光軸上に挿入することができるが、通常使用位置からNDフィルタに切り替えるためには、赤外線フィルタ及びCCフィルタを経由して切り替える必要があり、比較的使用頻度の高いNDフィルタを使用する際に、NDフィルタとは無関係なフィルタが一時的に挿入されるため、映像に違和感が発生するという問題がある。尚、通常使用位置の透明ガラスに隣接してNDフィルタを設けた場合、通常使用位置から直ちにNDフィルタに切り替えることができるが、この場合には、NDフィルタ以外の他のフィルタに切り替える場合には、NDフィルタを経由して切り替える必要があり、撮影者の意図しないフィルタが一時的に挿入されるため、映像に違和感が発生するという問題がある。
【0009】
一方、特許文献2に記載のフィルタターレットは、周方向約300度の範囲にわたって、連続的に濃度が変化する傾斜ND領域が形成されたものであり、複数枚のフィルタを切り替えるものではなく、特に種類の異なるフィルタを切り替えるものではない。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、光量を段階的に減光させる2枚以上のNDフィルタと、NDフィルタよりも使用頻度が低く且つ前記NDフィルタとの連続性のない特殊フィルタとを有するターレットを回転させてフィルタの切り替えを行う際に、NDフィルタから特殊フィルタに直接切り替わることがないようにし、又は特殊フィルタから直接NDフィルタに切り替わることがないようにし、違和感のある映像が撮影されないようにすることができる監視カメラ用レンズ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために本発明の一の態様に係る発明は、ターレット切替え式フィルタ装置を有する監視カメラ用レンズ装置において、前記ターレット切替え式フィルタ装置は、同一円周上に複数のフィルタが設けられた円板状のターレットであって、レンズ光軸上にフィルタを挿入しない通常使用位置に設けられた通常使用部と、前記通常使用位置を基準にして第1の中心角の範囲内に設けられ、光量を段階的に減光させる2枚以上の第1のフィルタと、前記通常使用位置を基準にして前記第1の中心角と重複しない第2の中心角の範囲内に設けられ、前記第1のフィルタよりも使用頻度が低く、かつ前記第1のフィルタとの連続性のない第2のフィルタとを有するターレットと、前記ターレットを回転させる回転駆動機構と、前記回転駆動機構による前記ターレットの回転範囲を360度以内に制限するとともに、その回転範囲の両端が前記第1のフィルタと第2のフィルタとの間にくるように前記ターレットの回転範囲を制限する回転制限手段と、を備えたことを特徴としている。
【0012】
本発明の一の態様に係る監視カメラ用レンズ装置によれば、光量を段階的に減光させる2枚以上の第1のフィルタから直接、該第1のフィルタとの連続性のない第2のフィルタに切り替わらないようにターレットの回転が制限され、同様に第2のフィルタから直接、第1のフィルタに切り替わらないようにターレットの回転が制限されるため、操作者が意図しないフィルタが挿入されることを防止することができ、これにより違和感のある映像が撮影されないようにすることができる。
【0013】
本発明の他の態様に係る監視カメラ用レンズ装置は、監視者からの指示入力に基づいて前記ターレットの回転位置を指令する回転位置指令手段と、前記ターレットの回転位置を0度から360度の範囲内で検出する検出手段と、前記回転位置指令手段からの回転位置指令及び前記検出手段の検出出力に基づいて前記回転駆動機構を介して前記ターレットを0度から360度の範囲内で回転させる制御手段と、を更に備えたことを特徴としている。
【0014】
本発明の更に他の態様に係る監視カメラ用レンズ装置において、前記回転位置指令手段は、前記ターレットの回転方向を指示する方向指示部と、前記方向指示部が操作される毎に、前記ターレットを現在の回転位置から隣接する次の回転位置への回転を指令する回転位置指令を発生する回転位置指令発生部と、を有することを特徴としている。
【0015】
本発明の更に他の態様に係る監視カメラ用レンズ装置において、前記回転位置指令発生部は、前記ターレットの0度から360度の回転範囲を越える指示を、前記方向指示部から受け付けないことを特徴としている。これにより、操作者から誤った回転方向の指示入力があっても、前記ターレットの回転制限範囲を越える回転位置指令が発生されないようにしている。
【0016】
本発明の更に他の態様に係る監視カメラ用レンズ装置において、前記回転位置指令手段は、前記ターレットの各回転位置を指令するダイヤルスイッチからなり、該ダイヤルスイッチは、その回転範囲が制限されていることを特徴としている。このダイヤルスイッチによれば、操作者から前記ターレットの回転範囲を越える回転位置指示が発生されないようにすることができる。
【0017】
本発明の更に他の態様に係る監視カメラ用レンズ装置において、前記回転位置指令手段は、前記ターレットの各回転位置を指令するスライドスイッチからなることを特徴としている。このスライドスイッチによれば、操作者から前記ターレットの回転範囲を越える回転位置指示が発生されないようにすることができる。
【0018】
本発明の更に他の態様に係る監視カメラ用レンズ装置において、前記検出手段は、前記ターレットの回転を検出する回転域が360度以内に制限されたポテンショメータであり、その回転域の制限端が前記ターレットの前記第1のフィルタと第2のフィルタとの間に位置することを特徴としている。一般に、ポテンショメータは、その回転域に制限(0度から360度の範囲の制限)がある方が安価であり、前記ポテンショメータの回転域の制限端を、前記ターレットの前記第1のフィルタと第2のフィルタとの間に位置させることにより、安価なポテンショメータを適用することができるとともに、該ポテンショメータが前記ターレットの回転範囲(0度から360度以内)を制限しないようにしている。
【0019】
本発明の更に他の態様に係る監視カメラ用レンズ装置において、前記ポテンショメータは、その軸が前記ターレットの回転軸と直結されていることを特徴としている。これにより、ターレットの外周面に形成されたギアから減速ギアを介してポテンショメータでターレットの回転位置を検出する場合に比べて、複雑な減速ギア等が不要になり、シンプルかつ低コストでターレットの回転位置を検出することができる。
【0020】
本発明の更に他の態様に係る監視カメラ用レンズ装置において、前記第2のフィルタは、可視光カットフィルタ、又は前記段階的に減光させる2枚以上の第1のフィルタの減光の比率よりも減光の比率が大きな減光フィルタであることを特徴としている。
【0021】
本発明の更に他の態様に係る監視カメラ用レンズ装置において、前記のターレットの通常使用位置に設けられた通常使用部には、前記第1又は第2のフィルタが挿入された場合と同じ位置に結像させるためのダミーガラスが設けられていることを特徴としている。これにより、フィルタを使用しない通常状態とフィルタ使用時とで、光路長が変化しないようにしている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、光量を段階的に減光させる2枚以上の第1のフィルタと、該第1のフィルタよりも使用頻度が低く且つ前記第1のフィルタとの連続性のない第2のフィルタとを有するターレットを回転させてフィルタの切り替えを行う際に、前記第1のフィルタから直接、第2のフィルタに切り替わらないようにターレットの回転を制限し、同様に第2のフィルタから直接、第1のフィルタに切り替わらないようにターレットの回転を制限するようにしたため、操作者が意図しないフィルタが挿入されないようにすることができ、これにより違和感のある映像が撮影されないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る監視カメラ用レンズ装置が装着されたCCTVカメラの全体構成を示すブロック図
【図2】ターレット切替え式フィルタ装置の一部断面を含む側面図
【図3】ターレットの平面図
【図4】ターレット切替え式フィルタ装置におけるフィルタの切替え制御部の実施の形態を示すブロック図
【図5】ターレットの回転位置を指令する操作部の他の実施の形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0025】
[監視カメラ用レンズ装置の全体構成]
図1は、本発明に係る監視カメラ用レンズ装置が装着されたCCTVカメラの全体構成を示すブロック図である。
【0026】
同図に示すように、監視カメラ用レンズ装置10(以下、単に「レンズ装置」という)の光学系は、フォーカスレンズ群12、ズームレンズ群14、絞り(アイリス)16、エクステンダー18、及びマスターレンズ群20等から構成され、被写体像はこのレンズ装置10を介してカメラ21のCCD22(撮像素子)の結像面に結像される。
【0027】
また、マスターレンズ群20内の光路中には、後述するように本発明に係るターレット切替え式フィルタ装置60のターレット62に設けられたフィルタF(F1,F2,F3)が挿入できるようになっている。
【0028】
このレンズ装置10には、フォーカスレンズ群12、ズームレンズ群14、絞り16、エクステンダー18及びターレット62をそれぞれ駆動するためのモータ24、26、28、30、32と、フォーカスレンズ群12、ズームレンズ群14、絞り16、エクステンダー18及びターレット62の各位置を検出する検出器44、46、48、50、52及び各レンズ群12、14、20、絞り16、エクステンダー18、ターレット62等の動作を制御する制御部70とが設けられている。
【0029】
制御部70には、各部を統括制御する中央処理装置(CPU)72、ROM,RAM等のメモリ74、図示しないD/A変換器、A/D変換器、及び駆動回路等が設けられている。尚、CPU72から出力される各モータ24、26、28、30、32に対する制御信号は、それぞれ図示しないD/A変換器及び駆動回路を介してモータ24、26、28、30、32に加えられる。
【0030】
フォーカスレンズ群12は、モータ24の回転駆動力が図示せぬギア伝達機構を介して伝達されることにより光軸に沿って前後に移動するようになっている。フォーカスレンズ群12の位置(フォーカス位置)は、ポテンショメータ等の検出器44によって検出され、該検出器44の検出信号は、制御部70に通知される。
【0031】
ズームレンズ群14は、詳細には図示されていないが、周知の如く、変倍系レンズと補正系レンズとから成り、変倍系レンズ及び補正系レンズはそれぞれズームカム筒を回転させることによって光軸上を一定の関係をもって移動できるように構成される。ズームレンズ群14は、モータ26の回転駆動力が図示せぬギア伝達機構を介して伝達されることにより光軸に沿って前後に移動する。
【0032】
ズームレンズ群14の位置(ズーム位置)は、ポテンショメータ等の検出器46によって検出され、該検出器46の検出信号は制御部70に通知される。絞り16は、モータ28の回転駆動力が図示せぬギア伝達機構を介して伝達されることにより絞り径が拡縮するように構成される。絞り値(アイリス位置)は、ポテンショメータ等の検出器48によって検出され、該検出器48の検出信号は制御部70に通知される。
【0033】
エクステンダー18は、2倍用のエクステンダーレンズがアーム部の先端に配設され、該アームを回動させることによってエクステンダーレンズが光軸上に挿入される。エクステンダー18のアーム部は、モータ30の回転駆動力によって回動する。エクステンダー18のアーム部の回動位置(エクステンダー位置)は検出器50によって検出され、該検出器50の検出信号は制御部70に通知される。制御部70内のCPU72は、この検出信号に基づいて、光軸上にエクステンダーレンズが挿入されたか否かを把握することができる。
【0034】
尚、ターレット切替え式フィルタ装置60の構成及び制御については、後述する。
【0035】
制御部70内のCPU72は、各検出器44、46、48、50、52から入力する検出信号に基づいてフォーカス位置、ズーム位置、アイリス位置、エクステンダー位置、及びターレット62の回転位置を把握するとともに、各モータ24、26、28、30、32を制御することにより、フォーカスレンズ群12、ズームレンズ群14、絞り16、エクステンダー18、及びターレット62を所望の目標位置に移動させる。
【0036】
尚、図1には、図示していないが、マスターレンズ群20は、光軸に沿って移動自在に配設されており、このマスターレンズ群20を図示しないモータによって前後に移動させることにより、レンズ結像位置の微調整(フランジバック調整)が行われる。
【0037】
図1に示したレンズ装置10が装着されたカメラ21内のCCD22は、結像面に結像された被写体像を光電変換し、画像信号として信号処理部23に出力する。信号処理部23は、入力した画像信号から、所定フォーマットの映像信号を生成し、この映像信号を、監視室80に置かれたモニタ装置82等に出力する。
【0038】
また、監視室80には、操作部84が設けられており、監視員が、モニタ装置82に表示される撮影画像を見ながら操作部84を操作することにより、フォーカス、ズーム、絞り等の調整、エクステンダー18の切替え、フィルタFの切替え等を遠隔操作ができるようになっている。尚、絞りについては、カメラ21から映像信号を入力して映像信号の明るさから自動で制御するオートアイリスを使用することもできる。
【0039】
[ターレット切替え式フィルタ装置]
図2は、ターレット切替え式フィルタ装置60の一部断面を含む側面図である。
【0040】
ターレット切替え式フィルタ装置60は、主としてターレット62と、モータ32と、ポテンショメータ52と、モータ32を駆動制御する制御部とから構成されている。
【0041】
図3に示すように、円板状のターレット62には、素通しのダミーガラスG、NDフィルタF1,F2、及び可視光カットフィルタ(赤外線透過フィルタ)F3が、ターレット62の同一円周上に、90度の等間隔で配設されている。尚、ダミーガラスGは、フィルタF1〜F3に切り替えられる場合と、フィルタを使用しない通常状態とで、光路長が変化しないようにする役割がある。
【0042】
図2に示すようにターレット62の回転軸62Aは、軸受け64により回転自在に軸支されるとともに、ポテンショメータ52の軸52Aが直結されている。また、ターレット62の外周面には、モータ32の出力軸に固定されたギア33と螺合するギア62Bが設けられている。
【0043】
これにより、モータ32を回転駆動させると、ターレット62を回転させることができ、また、ターレット62の回転位置は、ポテンショメータ52により検出することができる。
【0044】
ポテンショメータ52は、その軸52Aが0度から360度の範囲内で回転域が制限されている安価なものが使用されており、軸52Aの回転位置に応じた電圧信号(例えば、0V〜10V)を出力する。
【0045】
図3上で、ターレット62に設けられたダミーガラスG、フィルタF1〜F3のうち、時計の12時の位置にあるダミーガラスG、又はフィルタF1〜F3が使用位置(レンズ光軸上に挿入される位置)とする。いま、図3に示すようにダミーガラスGが12時の位置にあるとすると、ポテンショメータ52は、ターレット62の回転位置として、135度に対応する電圧信号を出力する。
【0046】
即ち、ポテンショメータ52は、NDフィルタF2と可視光カットフィルタF3との中間位置が12時の位置にきたとき、ポテンショメータ52の回転域の一方の制限端(0度)がくるように、ポテンショメータ52の軸52Aは、ターレット62の回転軸62Aに固定されており、[表1]に示すように、ポテンショメータ52が、45度、135度、225度、315度に対応する電圧信号を出力するときに、それぞれ可視カットフィルタF3、ダミーガラスG、NDフィルタF1、及びNDフィルタF2が使用位置に移動することになる。
【0047】
【表1】

【0048】
NDフィルタF1、F2は、それぞれ光量を8分の1、64分の1に段階的に減光させるもので、監視領域内の被写体輝度が明るく、絞り16を最小絞りにしても露出がオーバーする場合に切り替えられる。
【0049】
一方、可視光カットフィルタF3は、例えば、監視領域内で霧が発生し、視界が悪い状況時に切り替えられ、視界を向上させる機能がある。
【0050】
ここで、NDフィルタF1、F2は、監視領域の天候、時間帯等の撮影環境の変化に対応して切り替えられるため、使用頻度が高いのに対し、霧が発生したときに使用される可視光カットフィルタF3は、NDフィルタF1、F2に比べて使用頻度が低く、また、NDフィルタF2に切り替えられている場合に、直接、可視光カットフィルタF3に切り替える用途は少ないと考えられる。
【0051】
そこで、本発明では、ターレット62によりダミーガラスGに切り替ええられている通常状態から段階的に光量を減光させるNDフィルタF1,F2への切替え(ターレット62が135度から315度の範囲で回転する切替え1)と、ダミーガラスGに切り替ええられている通常状態から可視光カットフィルタへの切替え(ターレット62が135度から45度の範囲で回転する切替え2)とを区分し、通常状態(ダミーガラスG)の位置を経由せずにNDフィルタF2から直接、可視光カットフィルタF3に切り替わらないように、及び可視光カットフィルタF3から直接、NDフィルタF2に切り替わらないようにターレット62によるフィルタ切替えを制限するようにしている。
【0052】
[ターレット切替え式フィルタ装置によるフィルタの切替え制御]
図4は、主としてターレット切替え式フィルタ装置におけるフィルタの切替え制御部の実施の形態を示すブロック図である。
【0053】
監視室80の操作部84は、ターレット62の回転方向を指示する方向指示ボタン86A,86Bと、回転位置指令発生部88と、を備えている。ここで、方向指示ボタン86Aは、図3上で、ターレット62を時計回り方向(CW方向)に回転させるための指示信号を出力し、方向指示ボタン86Bは、ターレット62を反時計回り方向(CCW方向)に回転させるための指示信号を出力する。
【0054】
回転位置指令発生部88は、方向指示ボタン86A,又は86Bが押下される毎に、ターレット62を現在の回転位置から隣接する次の回転位置への回転を指令する回転位置指令を発生する。
【0055】
例えば、[表1]に示したように、現在のターレット62の回転位置が、通常状態(135度)のときに、方向指示ボタン86Aを押下すると、CW方向の次の回転位置である225度の回転位置への回転を指令する回転位置指令を発生する。
【0056】
この回転位置指令発生部88から発生した回転位置指令(デジタル信号)は、通信ケーブルを介してレンズ装置10の制御部70に入力される。
【0057】
制御部70のD/A変換器90は、デジタルの回転位置指令を、ポテンショメータ52から出力される、225度の回転位置に対応するアナログ信号(電圧信号)に変換し、これを加算器92の一方の入力に出力する。
【0058】
加算器92の他の入力には、ポテンショメータ52からターレット62の回転位置を示す電圧信号が加えられており、加算器92は、2入力信号の偏差をモータ32の操作量を示す信号として駆動回路94を介してモータ32に出力し、モータ32を回転させる。このモータ32の回転に伴ってターレット62が回転し、ポテンショメータ52の検出出力によりターレット62が225度の位置に回転したことが検出されると、前記加算器92により得られる偏差が0になり、モータ32の回転は停止させられる。
【0059】
同様にして、現在のターレット62の回転位置が、NDフィルタF1に切り替わっている位置(225度)のときに、方向指示ボタン86Aを更に押下すると、CW方向の次の回転位置である315度の回転位置への回転を指令する回転位置指令が発生し、ターレット62は、NDフィルタF2に切り替わる位置(315度)に回転する。
【0060】
その後、現在のターレット62の回転位置が、NDフィルタF2に切り替わっている位置(315度)のときに、更に方向指示ボタン86Aが押下されると、回転位置指令発生部88は、ターレット62がCW方向の端部に位置しているため、ターレット62をCW方向に回転させる回転位置指令を出力しないようにし、これによりターレット62の回転範囲を制限している。即ち、方向指示ボタン86Aを繰り返し押し続けても、NDフィルタF2から直接、可視光カットフィルタF3への切替えが行われないようにしている。
【0061】
尚、NDフィルタF2と可視光カットフィルタF3との間に、ポテンショメータ52の回転域の制限端があるため、メカ的にも制限され、ターレット62は、NDフィルタF2から直接、可視光カットフィルタF3に切り替わることはない。
【0062】
一方、方向指示ボタン86Bを押下すると、方向指示ボタン86Bが押下される毎にターレット62をCCW方向に回転させる指令が発生され、これにより、ターレット62は、NDフィルタF2→F1→通常状態(ダミーガラスG)の順に、これらのフィルタ等が切り替わるように回転させられる。
【0063】
また、ターレット62が通常状態(ダミーガラスG)に切り替わっている状態(135度)で、更に方向指示ボタン86Bが押下されると、CCW方向の次の回転位置である45度の回転位置への回転を指令する回転位置指令が発生され、ターレット62は、可視光カットフィルタF3に切り替わる位置(45度)に回転する。
【0064】
上記と同様に、現在のターレット62の回転位置が、可視光カットフィルタF3に切り替わっている位置(45度)のときに、更に方向指示ボタン86Bが押下されると、回転位置指令発生部88は、ターレット62がCCW方向の端部に位置しているため、ターレット62をCCW方向に回転させる回転位置指令を出力しないようにし、これによりターレット62の回転範囲を制限している。即ち、方向指示ボタン86Bを繰り返し押し続けても、可視光カットフィルタF3から直接、NDフィルタF3への切替えが行われないようにしている。
【0065】
このように、通常状態から段階的に光量を減光させるNDフィルタF1,F2への切替え1と、通常状態から可視光カットフィルタへの切替え2とを区分し、通常状態の位置を経由せずにNDフィルタF2から直接、可視光カットフィルタF3に切り替わらないように、及び可視光カットフィルタF3から直接、NDフィルタF2に切り替わらないようにターレット62によるフィルタ切替えを制限するようにたため、監視者が、方向指示ボタン86A又は86Bを不用意に操作しても、監視者が意図しない映像が撮影されないようにすることができる。
【0066】
また、ターレット62を切替え1の範囲で回転させるモードと、切替え2の範囲で回転させるモードとを設け、これらのモードを選択する選択手段を設けるようにしてもよい。これによれば、モードを切り替えない限り、通常状態を越えて切替え1の範囲から切替え2の範囲に回転することがなく、同様に通常状態を越えて切替え2の範囲から切替え1の範囲に回転することがなく、監視者が、方向指示ボタン86A又は86Bを不用意に操作しても、監視者が意図しない映像が撮影されないようにすることができる。
【0067】
更に、前記選択手段により絞りを制御するモードの選択を可能にし、絞りを制御するモードが選択された場合には、前記方向指示ボタン86A、86Bを絞り16の開口径を連続的に変化させる操作手段として兼用するようにしてもよい。この場合、NDフィルタの切替え時の操作方向と一致するように、方向指示ボタン86Aが押下されると、徐々に絞りの開口径が小さくなるように絞り16の開口径を指示し、方向指示ボタン86Bが押下されると、徐々に絞りの開口径が大きくなるように絞り16の開口径を指示するように、方向指示ボタン86A、86Bの機能を割り当てることが好ましい。
【0068】
[操作部の他の実施の形態]
図5(A)及び(B)は、それぞれターレット62の回転位置を指令する操作部の他の実施の形態を示す図であり、図4に示した方向指示ボタン86A、86B及び回転位置指令発生部88に相当する操作部である。
【0069】
図5(A)に示す操作部は、ターレット62の各回転位置を指令するダイヤルスイッチ100からなり、このダイヤルスイッチ100は、その回転位置に応じて、通常状態、NDフィルタF1、F2、可視光カットフィルタF3を切り替えるためのターレット62の回転位置指令を出力する。
【0070】
また、このダイヤルスイッチ100としては、その回転範囲が制限され、NDフィルタF2と可視光カットフィルタF3との間でダイヤルスイッチ100がメカ的に回転できないものを使用することが好ましい。これによれば、監視者からターレット62の回転範囲を越える回転位置指示が発生しないようにすることができる。
【0071】
図5(B)に示す操作部は、ターレット62の各回転位置を指令するスライドスイッチ102からなり、このスライドスイッチ102は、そのスライドつまみ102Aのスライド位置に応じて、通常状態、NDフィルタF1、F2、可視光カットフィルタF3を切り替えるためのターレット62の回転位置指令を出力する。このスライドスイッチ102によれば、監視者からターレット62の回転範囲を越える回転位置指示が発生しないようにすることができる。
【0072】
尚、この実施の形態では、光量を段階的に減光させる2枚のNDフィルタF1,F2をターレット62に設けるようにしたが、光量を一定の割合で段階的に減光させるNDフィルタを3枚以上設けるようにしてもよい。
【0073】
また、上記複数枚のNDフィルタよりも使用頻度が低く、かつ複数枚のNDフィルタとの連続性のないフィルタとして、可視光カットフィルタをターレットに設ける場合について説明したが、これに限らず、極端に減光させるNDフィルタ(例えば、露光調整倍率が1万分の1)を設けるようにしてもよい。
【0074】
また、通常状態では、素通しのダミーガラスを挿入されるようにしたが、ダミーガラスを設けずに開口にしてもよい。この場合、通常状態とフィルタ挿入時とでは、一定量ピント位置をずらす必要がある。
【0075】
また、ターレットの回転位置を検出する検出手段としては、ポテンショメータに限らず、例えば、ターレットの所定位置に設けたマーク等をフォトインタラプタで読み取るもの、エンコータなどを適用することができる。
【0076】
また、ターレット切替え式フィルタ装置(ターレット)を設ける位置は、マスターレンズ群20の内側に限らず、例えば、マスターレンズ群20の外側であって、カメラに近い側に設けるようにしてもよい。
【0077】
更に、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0078】
10…監視カメラ用レンズ装置(レンズ装置)、12…フォーカスレンズ群、14…ズームレンズ群、16…絞り(アイリス)、18…エクステンダー、20…マスターレンズ群、22…CCD、23…信号処理部、24、26、28、30、32…モータ、44、46、48、50、52…検出器、60…ターレット切替え式フィルタ装置、62…ターレット、70…制御部、72…中央処理装置(CPU)、82…モニタ装置、84…操作部、86A,86B…方向指示ボタン、88…回転位置指令発生部、100…ダイヤルスイッチ、102…スライドスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターレット切替え式フィルタ装置を有する監視カメラ用レンズ装置において、
前記ターレット切替え式フィルタ装置は、
同一円周上に複数のフィルタが設けられた円板状のターレットであって、レンズ光軸上にフィルタを挿入しない通常使用位置に設けられた通常使用部と、前記通常使用位置を基準にして第1の中心角の範囲内に設けられ、光量を段階的に減光させる2枚以上の第1のフィルタと、前記通常使用位置を基準にして前記第1の中心角と重複しない第2の中心角の範囲内に設けられ、前記第1のフィルタよりも使用頻度が低く、かつ前記第1のフィルタとの連続性のない第2のフィルタとを有するターレットと、
前記ターレットを回転させる回転駆動機構と、
前記回転駆動機構による前記ターレットの回転範囲を360度以内に制限するとともに、その回転範囲の両端が前記第1のフィルタと第2のフィルタとの間にくるように前記ターレットの回転範囲を制限する回転制限手段と、
を備えたことを特徴とする監視カメラ用レンズ装置。
【請求項2】
監視者からの指示入力に基づいて前記ターレットの回転位置を指令する回転位置指令手段と、
前記ターレットの回転位置を0度から360度の範囲内で検出する検出手段と、
前記回転位置指令手段からの回転位置指令及び前記検出手段の検出出力に基づいて前記回転駆動機構を介して前記ターレットを0度から360度の範囲内で回転させる制御手段と、
を更に備えたことを特徴とする請求項1に記載の監視カメラ用レンズ装置。
【請求項3】
前記回転位置指令手段は、前記ターレットの回転方向を指示する方向指示部と、前記方向指示部が操作される毎に、前記ターレットを現在の回転位置から隣接する次の回転位置への回転を指令する回転位置指令を発生する回転位置指令発生部と、を有することを特徴とする請求項2に記載の監視カメラ用レンズ装置。
【請求項4】
前記回転位置指令発生部は、前記ターレットの0度から360度の回転範囲を越える指示を、前記方向指示部から受け付けないことを特徴とする請求項3に記載の監視カメラ用レンズ装置。
【請求項5】
前記回転位置指令手段は、前記ターレットの各回転位置を指令するダイヤルスイッチからなり、該ダイヤルスイッチは、その回転範囲が制限されていることを特徴とする請求項2に記載の監視カメラ用レンズ装置。
【請求項6】
前記回転位置指令手段は、前記ターレットの各回転位置を指令するスライドスイッチからなることを特徴とする請求項2に記載の監視カメラ用レンズ装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記ターレットの回転を検出する回転域が360度以内に制限されたポテンショメータであり、その回転域の制限端が前記ターレットの前記第1のフィルタと第2のフィルタとの間に位置することを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の監視カメラ用レンズ装置。
【請求項8】
前記ポテンショメータは、その軸が前記ターレットの回転軸と直結されていることを特徴とする請求項7に記載の監視カメラ用レンズ装置。
【請求項9】
前記第2のフィルタは、可視光カットフィルタ、又は前記段階的に減光させる2枚以上の第1のフィルタの減光の比率よりも減光の比率が大きな減光フィルタであることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の監視カメラ用レンズ装置。
【請求項10】
前記のターレットの通常使用位置に設けられた通常使用部には、前記第1又は第2のフィルタが挿入された場合と同じ位置に結像させるためのダミーガラスが設けられていることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の監視カメラ用レンズ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−198410(P2012−198410A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62785(P2011−62785)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】