説明

監視用ビデオカメラの取付部構造

【課題】監視用ビデオカメラを設置する際、カメラの取付部構造が簡単で短時間で作業ができ、カメラの向きを正しく設定できるようにする。
【解決手段】監視用ビデオカメラ1のベース取付部5aは、円筒形状の側面にネジ山を形成し、その先端には工具を差し込むための作業用穴6を設ける。取付けの際、ベース取付部6を設置面7に設けた取付け穴7aに装着し、取付けナット8を用いて締め付け固定する。取付けナット8を締め付ける際に、作業用穴6に差し込んだ工具を固定することでベース取付部5aが回転することを防止する。作業用穴6は、丸穴6aとU字状切り欠き6bとを対向する位置に形成し、これらには工具を斜め方向に差し込む構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視用ビデオカメラを設置面に取付け固定するための取付部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の監視用カメラは、天井等の設置面に設置する際、設置面に設けた開口穴にカメラ本体部に設けた挿着部(取付部)を挿入して、挿着部をネジ締め等により固定する方法が一般的である。さらにカメラを簡単にあるいは確実に取付けるため、各種の方法が提案されている。
【0003】
特許文献1では、カメラを短時間で容易に取付けることを目的とし、柱状挿着部の側面を付勢手段(板バネなど)により設置面へ係着させる構造が開示される。特許文献2では、カメラを任意の位置に設置でき落下防止を図ることを目的とし、まず専用の取付金具を設置面に取付け、カメラを取付金具に組み込み、さらにカメラの落下防止のためフックを取付けた構造が開示される。
【0004】
【特許文献1】特開2000−209471号公報
【特許文献2】特開2000−307922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
監視カメラを狭い設置場所に取付けるためには、カメラの取付部構造はできるだけ簡単な構造とし、設置作業ができるだけ短時間で完了することが要求される。従来のネジ締め方法は簡単な構造であるが、カメラ取付部を取付けナット等で締め付けるとき、カメラ本体部も一緒に回転してカメラの撮影方向が変わってしまう欠点がある。これを防止するため、カメラの向きを規制するための別のネジ等で固定する方法がある。しかし、そのために新たなネジ穴を設ける必要があり、また取付けの作業時間が増加する。
【0006】
特許文献1の方法は、ネジ締めで固定するのではなく板バネの付勢力で固定するので、簡単な構造である。しかし、基本的にカメラの向きを規制する機能はなく、ネジ締め同様に向きが変わる恐れがある。また、ネジ締め方法に比較して、カメラの落下防止に対する信頼性が懸念される。
【0007】
特許文献2の方法は、取付金具にカメラの方向をガイドするガイドカバーを設けているので、カメラの方向は正しく設定される。しかし、取付金具自身が新たに必要となり、設置場所もその分広く必要とし、また取付けの作業時間も増大する。
【0008】
本発明の目的は、狭い設置場所に対応するため、カメラの取付部構造が簡単で短時間で作業ができ、カメラの向きを正しく設定できる監視用ビデオカメラの取付部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、監視用ビデオカメラを設置面に取付け固定する際の取付部構造であって、監視用ビデオカメラのベース取付部は、円筒形状の側面にネジ山を形成するとともに、ベース取付部の先端には工具を差し込むための作業用穴を設ける。取付けの際、ベース取付部を設置面に設けた取付け穴に装着し、取付けナットを用いて設置面に締め付け固定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、監視用ビデオカメラの取付け作業が簡単で、短時間で作業ができ、かつ、カメラの向きを正しく設定することができる。特に、狭い設置場所での取付け作業が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
図1は、本発明にかかる監視用ビデオカメラの取付部構造の一実施例を示す図である。
図1(a)は、監視用ビデオカメラ1からカバー4を取り外した状態を示す図である。撮影レンズ2aなどを含むカメラユニット2はシャーシ3とともにベース部5にネジで固定されている。ベース取付部5aは、円筒形状の側面にネジ山が形成されていて、天井等の設置面に設置固定される部分である。またカバー4は、カメラユニット2を外部から保護し、あるいはカメラの撮影自身を目立たないようにするためのもので、カメラユニット2にドーム状のカバーを取付けて使用する。ベース取付部5aの先端には、取付け作業に用いる作業用穴6(丸穴6aまたはU字状の切り欠き6b)を形成している。
【0012】
図1(b)は、監視用ビデオカメラ1を天井の設置面に取付ける工程を示す図である。設置面7には、ベース取付部5aを挿着するための取付け穴7aを1個開けておく。そしてカメラ全体を矢印Z方向に引き上げて、ベース取付部5aを取付け穴7aに挿着する。引き上げる際、カメラ用のケーブル9を取付け穴に通し、ケーブル9の先端を天井裏から引き上げることもできる。カメラを引き上げたら、取付けナット8を用いて、ベース取付部5aを締め付け、天井板7に固定する。
【0013】
図1(c)は、取付けナット8で固定を完了した状態である。本実施例ではベース取付部5aに設けた作業用穴6を利用することで、監視用ビデオカメラ1の向きを正しく、かつ短時間で設置面7へ取付けることができる。
【0014】
図2は、本実施例におけるベース取付部5aの作業用穴6の構造について詳細に示す図である。作業用穴6としては各種の構造が可能である。なお、図2では作業用穴6の形状を分かりやすくするために、ベース取付部5aの円筒面に形成したネジ山を省略している。
【0015】
(a)は、ベース取付部5aの先端の径方向に対向する位置に、U字状切り欠き6bを2個ほぼ対称に設けたものである(タイプ1)。この切り欠き6bは、例えばドライバ等の工具を差し込んで、ナット締め付け時にベース部5が回転するのを防止するためのものである。なお、ビス5bはベース部5にカメラユニット2を固定するものである。
【0016】
(b)は、ベース取付部5aの先端の対向する位置に、丸穴6aと切り欠き6bを設けたものである(タイプ2)。この場合も、丸穴6aと切り欠き6bは、ベース部5が回転するのを防止することを含め、後述するようにカメラ取付け作業性の改善を図るためのものである。
【0017】
(c)は、ベース取付部5aの先端に丸穴6aを2個ほぼ対称に設け、さらに丸穴6aの中間に切り欠き6bを設けたものである(タイプ3)。
【0018】
なお、これらの作業用穴6の構造は一例であり、カメラの設置環境に応じて、丸穴6aと切り欠き6bを適宜組み合わせて最適な構造を採用すれば良い。
【0019】
図3は、カメラ取付け作業において、上記作業用穴の利用方法を具体的に説明する図である。ここでは、エレベータの天井鉄板に開けた取付け穴7aに、図2(b)すなわちタイプ2のベース取付部5aを持つカメラを設置する場合を想定する。
【0020】
(a)は、ベース取付部5aの作業用穴の形状(タイプ2、丸穴6aと切り欠き6bを有する)を再度示す図である。
【0021】
(b)は、カメラを設置面へ引き上げるときに、予め針金のような引上げ線11を丸穴6aに通しておき、引上げ線11を引き上げることで、天井裏の作業者1人だけで作業ができる。すなわち、従来必要とされたエレベータのカゴ内でカメラを支えるための作業者が不要になる。
【0022】
(c)は、カメラを取付け穴7aに通した後、取付け用六角ナット8をスパナ等で回して固定するが、最後に締め付ける際に、力が入りすぎるとカメラ全体が一緒に回転してしまい向きが変わってしまう。そのため、締める作業を行う際に、作業用穴6a、6bにドライバ12などの工具を差し込んで固定し、カメラが回転するのを防止する。つまり作業者は、スパナに加える力とドライバ12に加える力をバランスさせることで、カメラの回転を防止しながら設置面へ取付けることができる。
【0023】
その際、作業用穴6は、タイプ2のように一方は丸穴6aで他方がU字状切欠き6bとしたので、ドライバ12は水平でなく斜めに挿入されることになる。エレベータ天井裏での作業は、非常に狭い空間で行われることが多いのであるが、作業者はドライバを斜めに持つことで中腰姿勢でも容易に作業ができる。
【0024】
(d)カメラの設置位置は、エレベータ室の壁13a,13bが交わる四隅となる場合が多く、(c)で用いるドライバ12の方向によっては、作業が困難な場合が発生する。例えば(d)のようなドライバ配置は作業性が悪い。
【0025】
(e)は作業性の良いドライバ配置であり、ドライバ12の方向が隅13cの方向になるよう作業用穴を設けた場合である。作業者は天井裏の中央側で作業ができるので、(d)に比べて作業性を改善することができる。
【0026】
(f)は、切り欠き6bの方向をカメラ本体1の撮影レンズ2aの向きと一致させておく。あるいは所定の角度だけずらしておく。作業者は、エレベータの天井裏にいながらにして、切欠き6bの方向によりレンズの向きを把握でき、カメラの撮影方向を誤って設置することがない。
【0027】
(g)は、切り欠き6bをハーネス(信号線)14の引き出し部として使用する場合である。一般に信号線は、天井方向の高さが低い空間に収納せねばならないので、取付部5aから切り欠き6bを通して引き出すことで、高さが低い空間でも収納が容易になる。
【0028】
(h)は、カメラ取付け後、カメラ落下防止策として作業穴6a,6b部分にバインド線15などを巻き付けておく。線材として硬くスタイル取り出来る素材を通してから、ナットよりも上のネジ山部分に巻き付ける。取付けナット8が仮にゆるんだ場合でも、ナット外れを防止し、カメラの落下を防止できる。
【0029】
上記説明は、ベース取付部5aが図2(b)(タイプ2)の場合としたが、図2(a)(タイプ1)や図2(c)(タイプ3)の場合にも一部が該当することは明らかである。
【0030】
本実施例によれば、カメラを設置するために設置面に設ける取付け穴7aは1箇所のみである。そしてこれをナットで締め付けて固定するだけなので、作業は非常に簡単であり、取付けの作業時間が短縮できる。その際、カメラ取付部に設けた作業用穴にドライバを差し込んでカメラの回転を防止できるので、カメラの向き(撮影方向)を正確に設定することができる。作業用穴を利用することで、エレベータの天井の隅等の狭い場所でも、作業者1人で容易に設置作業を行うことができる。
【0031】
上記実施例は一例であり、エレベータにおける監視ビデオカメラ設置だけに限らず、設置場所が狭く、作業性の悪い環境において同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明にかかる監視用ビデオカメラの取付部構造の一実施例を示す図。
【図2】本実施例におけるベース取付部の作業用穴の構造について詳細に示す図。
【図3】カメラ取付け作業において作業用穴の利用方法を具体的に説明する図。
【符号の説明】
【0033】
1…監視用ビデオカメラ
2…カメラユニット
2a…撮影レンズ
3…シャーシ
4…カバー
5…ベース部
5a…ベース取付部
6…作業用穴
6a…丸穴
6b…切り欠き
7…設置面
7a…取付け穴
8…取付けナット
9…ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視用ビデオカメラを設置面に取付け固定する際の取付部構造であって、
上記監視用ビデオカメラのベース取付部は、円筒形状の側面にネジ山を形成するとともに、該ベース取付部の先端には工具を差し込むための作業用穴を設け、
上記ベース取付部を上記設置面に設けた取付け穴に装着し、取付けナットを用いて上記設置面に締め付け固定する構造であることを特徴とする監視用ビデオカメラの取付部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の監視用ビデオカメラの取付部構造であって、
前記ベース取付部に設ける前記作業用穴は、丸穴又はU字状切り欠きを含んで構成したことを特徴とする監視用ビデオカメラの取付部構造。
【請求項3】
請求項2に記載の監視用ビデオカメラの取付部構造であって、
前記作業用穴として丸穴とU字状切り欠きとを対向する位置に形成するとともに、該丸穴とU字状切り欠きには工具を斜め方向に差し込むことが可能な構成としたことを特徴とする監視用ビデオカメラの取付部構造。
【請求項4】
請求項2または3に記載の監視用ビデオカメラの取付部構造であって、
前記U字状切り欠きの位置は、当該監視用ビデオカメラの撮影レンズの方向、あるいは撮影レンズの方向から所定の角度だけずらした方向に合わせて形成したことを特徴とする監視用ビデオカメラの取付部構造。
【請求項5】
請求項2または3に記載の監視用ビデオカメラの取付部構造であって、
前記U字状切り欠きを通して当該監視用ビデオカメラの信号線を引き出す構成としたことを特徴とする監視用ビデオカメラの取付部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−177670(P2008−177670A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7129(P2007−7129)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)
【Fターム(参考)】