直描露光装置
【課題】 直描露光装置を提供する。
【解決手段】 露光ヘッド部1は複数の露光ヘッド10、11、12、13を有し、これらは副走査方向yに等しいヘッド間隔Wで互いにほぼ平行並べられ、露光テーブル5は、露光ヘッド部1の下側を副走査方向yに移動可能になっており、載置した基板90を各露光ヘッド10、11、12、13の下側に移送し、各露光ヘッド10、11、12、13により基板90を順次露光させる。各露光ヘッド10、11、12、13は、主走査方向xに均等なピッチPで直線上に並べられたLED20のアレイを有し、LED20は各露光ヘッド10、11、12、13間で主走査方向xにピッチずれ量dずらして配設され、副走査方向yの同一部分に各露光ヘッド10、11、12、13により重ねて露光することにより、高位置精度の露光を行う。
【解決手段】 露光ヘッド部1は複数の露光ヘッド10、11、12、13を有し、これらは副走査方向yに等しいヘッド間隔Wで互いにほぼ平行並べられ、露光テーブル5は、露光ヘッド部1の下側を副走査方向yに移動可能になっており、載置した基板90を各露光ヘッド10、11、12、13の下側に移送し、各露光ヘッド10、11、12、13により基板90を順次露光させる。各露光ヘッド10、11、12、13は、主走査方向xに均等なピッチPで直線上に並べられたLED20のアレイを有し、LED20は各露光ヘッド10、11、12、13間で主走査方向xにピッチずれ量dずらして配設され、副走査方向yの同一部分に各露光ヘッド10、11、12、13により重ねて露光することにより、高位置精度の露光を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直描露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直描露光方式には、ポリゴンミラーとUVレーザ光源を組み合わせた方式(特許文献1,2)やレーザ光源または高圧水銀灯等のUV光源とDMD(digital micro mirror device)を組み合わせた方式(特許文献3,4)等がある。
前者は半導体レーザを直接ON/OFFするか又は固体レーザとAOM(acoustic optical modulator)等を組み合わせて擬似的にレーザのON/OFFを行いながらポリゴンミラーでレーザを直線上に走査(主走査)し、露光対象を移動(副走査)させることで直接描画を実現する方式である。
後者は光源のON/OFF制御は行わず、光源は面光源としてDMDを照射し、DMDのマイクロミラーの傾きを制御することで露光対象への光線の到達を制御して直接描画を実現する方式である。ここではDMDの傾き制御が主走査となり、副走査については、前者と同様に露光対象を移動させる。
【0003】
【特許文献1】特表2004−523101
【特許文献2】特開2000−338432
【特許文献3】特許324248
【特許文献4】特開2000−93624
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記ポリゴンミラーを用いる方式では、主走査の中心部分に良好な描画品質が得られたとしても、中心から遠ざかるにしたがって露光品質が悪化する傾向がある。また、高速に回転するポリゴンミラーがあり、露光幅が広い場合には光学系が非常に大きくなる傾向がある。これは装置の保守性を悪化させ、稼動中のゴミ発生の原因ともなっている。またDMDを用いる方式では、DMDのマイクロミラーの数が限られているため、1個のDMDで直描可能な範囲は解像度にもよるが数十mmから百mm程度であるため、露光幅を広げるためにはDMDを搭載した露光ユニットを複数並べるか、露光ユニットを主走査方向に移動させて複数回の副走査を行う必要がある。またDMDは結像のための光学系を有しないため、DMDと露光対象の間には複数のレンズで構成された光学系を配する必要がある、等の問題があり、また従来の直描露光装置は、いずれの場合も機構が複雑で装置も高価であった。
本発明は上記従来技術の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の直描露光装置は、被露光対象を載置する露光テーブルと、ほぼ平行に一方向に並べて配設された複数の露光ヘッドと、該露光ヘッドに配設され、前記一方向にほぼ直交する他方向に直線状に配列された露光光を出力する発光体と、前記露光ヘッドと露光テーブルの中の1又は2を前記一方向に相対移動させ、該被露光対象の任意位置を前記発光体により露光可能な位置に位置させる移動装置と、を備え、前記移動装置により被露光対象の所定の位置を前記発光体からの露光光により露光する、ことを特徴とする。
また請求項2の発明の直描露光装置においては、被露光対象を載置する露光テーブルと、ほぼ平行に一方向に並べて配設された複数の露光ヘッドと、該露光ヘッドに配設され、前記一方向にほぼ直交する他方向に直線状に所定のピッチPで配列された露光光を出力する発光体と、前記露光ヘッドと露光テーブルの中の1又は2を前記一方向に相対移動させ、該被露光対象の任意位置を前記発光体により露光可能な位置に位置させる移動装置と、を備え、前記発光体の他方向の位置が露光ヘッド間で所定のピッチずれ量dだけずれている、ことを特徴とする。
好適な実施形態においては、前記発光体をオンオフ制御し、前記発光体の点灯タイミングを制御する制御装置を更に備え、前記移動装置は、前記露光ヘッドと露光テーブルの中の1又は2を前記一方向に連続的に相対移動させ、前記露光テーブルに載置され露光ヘッドに対して連続的に相対移動する被露光対象に対して、前記発光体をオンオフ制御し、且つ点灯タイミングを制御しつつ露光光を照射して所定のパターンを該被露光対象に露光する、ように構成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明による直描露光装置によれば、露光対象物の幅方向(主走査方向x)にLED等の発光体の直線状の配列を設け、発光体の個々の点灯制御を行うことで主走査側の描画を行い、主走査方向xとほぼ直交した副走査方向y直線上を移動する露光テーブル上に被露光対象物を載せ、この露光テーブルの移動により副走査方向yに副走査を行って任意パターンを直描露光することができる。
また本発明による直描露光装置は、主走査方向x側に機械的な動きが無く、露光ヘッドは結像に必要な光学系を有するかまたは不要とし、露光ヘッドと被露光対象物を数mm以内に接近させることが可能なため、装置を小型化し保守性を向上させることができる。また、露光ヘッドは長尺のものも製作可能であるため、被露光対象物の幅に合わせて製作することで、幅広の被露光対象に対しても少ない部品で装置を構成することが可能である、等の効果がある。
なお発光体であるLED等個々の出力プロファイルは発光体を構成する電極等の影響により歪な形状となるが、重ね描きを行うことにより出力プロファイルの影響は打ち消され高品質な描画露光が可能となる。また、複数のヘッドの位置関係についても重ね描きによりその位置精度の影響を抑えることが可能となる。
また通常露光ヘッドは600DPI、1200DPI、2400DPI程度のピッチで製造されLED等の発光体のピッチPに相当する線幅並びにギャップ幅(L/S)での描画が可能であるが、これでは十分な位置精度は得られない。
本発明では複数(N個)の露光ヘッドに主走査方向にずれ量dずらしたLED等の発光体を配置しており、このずれ量dを例えばLEDピッチPの1/Nとし、副走査方向yに被露光対象物を移動させながらずれ量P/NずれたLEDの点灯制御によりN回照射して直描し、点灯するLEDを描画する位置の近傍のN個のLEDを点灯するように制御すれば、被露光対象物上の1点に対し主走査方向x、副走査方向yそれぞれにP/Nずれた照射がN2回重ね描きされる。この動作によって該ピッチPに相当する線幅並びにギャップ幅で位置精度を該ピッチPの1/Nに向上させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1及び図2に本発明の直描露光装置の一実施形態を示す。
この直描露光装置Aはベース6を有し、このベース6上に、支持体14を介して露光ヘッド部1が主走査方向xに沿って配設され、該露光ヘッド部1の下にプリント配線用の基板90を載置した露光テーブル5が副走査方向yに移動可能に設けられている。
即ち直描露光に必要な主走査は露光ヘッド1のLED等の発光体個々の点灯制御によって行い、副走査は露光テーブル5の移動により行うように構成されている。
【0008】
露光ヘッド部1は複数の露光ヘッド10、11、12、13を有している。この実施形態では4個の露光ヘッド10、11、12、13を設けているが、必要に応じて増減可能である。
各露光ヘッド10、11、12、13は主走査方向xに配設されており、また副走査方向yに等しいヘッド間隔Wで互いにほぼ平行並べられている。
露光テーブル5は、この露光ヘッド部1の下側を副走査方向yに移動可能になっており、載置した基板90を各露光ヘッド10、11、12、13の下側に移送し、各露光ヘッド10、11、12、13により基板90を順次露光させるように構成されている。
なお、露光テーブル5ではなく露光ヘッド部1を移動させるようにすることも可能であるし、露光テーブル5と露光ヘッド部1の両方を移動させるようにすることも可能であり、露光テーブル5と露光ヘッド部1が副走査方向yに相対移動すれば良い。
【0009】
各露光ヘッド10、11、12、13は、主走査方向xに均等なピッチPで直線上に並べられた発光体であるLED20のアレイを有しており、各LED20から露光に必要な波長を出力するように構成されている。露光には紫外線光が通常用いられるが、必要に応じて他の波長の光を出力するものであっても良い。また、LED20ではなく、他の光源であっても良い。
LED20は各露光ヘッド10、11、12、13間で主走査方向xにピッチずれ量dずらして配設されている。このピッチずれ量dは、露光ヘッド数Nとすると、d=P/Nであり、主走査方向x、副走査方向yにそれぞれdずれたN2回程度の照射により露光を行う。
【0010】
前記したように、露光テーブル5は副走査方向yに各露光ヘッド10、11、12、13の下側を相対的に移動し、載置された基板90を該各露光ヘッド10、11、12、13の露光光により露光するように構成されている。各露光ヘッド10、11、12、13のLED20は主走査方向xにピッチずれ量dだけずらして配置されているため、副走査方向yの同一部分に各露光ヘッド10、11、12、13により重ねて露光することにより、高位置精度の露光が可能である。
【0011】
図3に露光の状態を示す。露光ヘッド10で基板90を露光して図3の(イ)の状態になり、次にピッチずれ量dだけずれたLED20を有する露光ヘッド11により副走査方向yの同一位置を露光することにより(ロ)の状態となる。同様に順次露光ヘッド12、露光ヘッド13により露光し、(ハ)(ニ)の露光状態となり、この露光を副走査方向yにdずつずらしながら繰り返すことにより(ホ)に示す全体的な露光を得ることができる。実際にパターンを描く場合にはLED等の点灯、消灯をパターンに応じて制御し、任意のパターン描画を行う。
【0012】
なお、通常露光ヘッド10、11、12、13の数は、必要とする露光の精度、LED等の出力、直描露光時間等に応じて決定すればよい。本実施形態では4個の露光ヘッド1設けているが、通常は10個程度の露光ヘッド10、11、12、13を搭載する。
【0013】
また、LED20の出力強度は、重ね描きを行うことから1回の点灯で露光に必要なエネルギー密度に比べて数分の1から数十分の1程度のもので良い。
【0014】
なおこの実施形態では、露光ヘッド1の位置を調整するための露光ヘッド位置調整装置15を設けており、露光ヘッド部1を上下させることにより、LED20と基板90との距離(通常数mm)を露光ヘッド部1の焦点距離に応じて調整できるようになっている。また、複数の露光ヘッド1を主走査方向x、副走査方向yに調整することも可能になっている。
更に露光テーブル5には露光テーブル5の位置を調整するための露光テーブル位置調整装置51が設けられており、主走査方向xの位置調整及び該xy平面上で回転方向の位置調整が可能になっている。ただし、描画データを回転させることでこの回転方向の調整機構を取り除くことも可能である。
【0015】
図4にブロック図を示す。
直描露光装置Aは、制御装置30により全体を制御されている。制御装置30はLEDドライバ21を介して露光ヘッド部1のLED20を個々に制御しており、描画すべきパターンに応じて、LED20の点灯と非点灯を制御し、所定のパターンを基板90に描くように構成されている。
描画すべきパターンはパターン記憶装置40に格納されており、制御装置30は所定の指令に応じてパターンを読み出すように構成されている。
【0016】
制御装置30はまた点灯タイミング補正装置31と点灯強度補正装置32を備えており、LED20の点灯のタイミング補正と点灯強度の補正を行えるように構成されている。
出力検出装置22は、撮像装置などを用いてLED20の実際の点灯位置と点灯強度を検出し、該検出値を制御装置30に送るようになっている。制御装置30は、検出されたLED20の実際の点灯位置に基づいてLED20の位置ズレを検出し、点灯タイミング補正装置31において該ズレに基づいてLED20の点灯タイミングを補正することにより副走査方向yの位置ズレを補正するようになっている。
この点灯タイミング補正装置31により、LED20の副走査方向yの位置ズレを補正することが可能になり、機械的な誤差を補償することが可能になる。
【0017】
点灯強度補正装置32は、更に出力検出装置22からの点灯強度の検出値に応じて、各LED20の点灯強度を補正し、均一な出力を得られるようにする。この構成により、LED20の輝度等のバラツキを補償することが可能になる。
露光ヘッド位置調整装置15は前記したように露光ヘッド部1の上下位置、主走査方向x位置、副走査方向y位置を調整するためのものであり、同様に制御装置30により制御されている。
【0018】
制御装置30は、また露光テーブル移動装置50を制御して露光テーブル5の副走査方向yの移動を制御している。露光テーブル5は直描露光を開始する直前に加速を完了し、直描露光中は等速で移動するように制御される。実際には移動速度のずれが生じる可能性があるので、制御装置30は移動量を検出して制御タイミングを補正するように構成されている。
露光テーブル位置調整装置51は前述したように露光テーブル5の主走査方向xの位置調整及び回転方向の位置調整を行うものである。
【0019】
図5はシミュレーションに用いたLED20の照射プロファイルである。このシミュレーションでは露光ヘッド部1のLEDアレイを10本用いたことを想定し、LEDの照射位置のずれはピッチPの1/10であると想定している。
図6は照射パターンを示しており縦100ピクセル×横50ピクセルの領域のほぼ中央に縦81ピクセル×横10ピクセルの縦線を描画するための描画データである。黒は照射するピクセルを示し、白は照射しないピクセルを示す。ピクセルの位置の間隔はピッチPの1/10である。
図7は図5の照射プロファイルで図6照射パターンにより照射した場合の蓄積エネルギーを示す。図の高さの2分の1が露光に必要なエネルギーであるとすれば、重ね書きによって図6に相当するパターンが描画されることがわかる。
【0020】
本実施形態では、更に痩線化装置33を備えており、この痩線化装置33について説明する。
本実施形態のような重ね書きによるエネルギー蓄積で直描を行う方式では、L字型部分の描画や、半径の小さな円弧の描画において描画線が太くなるという問題が発生する。
図8はL字型部分を持つパターンを示し、図9はそのシミュレーション結果を示す。痩線化装置33は、このようなL字型部分や半径の小さな円弧部分について、事前に描画データを痩線化させることにより線が太くなることを防止する。
図10はL字型部分の描画を行う場合の補正パターンであり、図11はそのシミュレーション結果である。
このように痩線化装置33を用いることにより、L字型部分や円弧において描画線が太くなるという問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略斜視図。
【図2】本発明の一実施形態の露光ヘッド部1の詳細説明図。
【図3】本発明の一実施形態の動作を示す説明図。
【図4】本発明の一実施形態の機能ブロック図。
【図5】LEDの照射プロファイル説明図。
【図6】描画データの説明図。
【図7】照射シミュレーションの3Dグラフ。
【図8】L字型パターンデータの説明図。
【図9】L字型照射シミュレーションの等高線グラフ。
【図10】補正データの説明図。
【図11】補正照射シミュレーションの等高線グラフ。
【符号の説明】
【0022】
1:露光ヘッド部、5:露光テーブル、6:ベース、10:露光ヘッド、11:露光ヘッド、12:露光ヘッド、13:露光ヘッド、14:支持体、15:露光ヘッド位置調整装置、20:LED、21:LEDドライバ、22:出力検出装置、30:制御装置、31:点灯タイミング補正装置、32:点灯強度補正装置、33:痩線化装置、40:パターン記憶装置、50:露光テーブル移動装置、51:露光テーブル位置調整装置、90:基板。
【技術分野】
【0001】
この発明は、直描露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直描露光方式には、ポリゴンミラーとUVレーザ光源を組み合わせた方式(特許文献1,2)やレーザ光源または高圧水銀灯等のUV光源とDMD(digital micro mirror device)を組み合わせた方式(特許文献3,4)等がある。
前者は半導体レーザを直接ON/OFFするか又は固体レーザとAOM(acoustic optical modulator)等を組み合わせて擬似的にレーザのON/OFFを行いながらポリゴンミラーでレーザを直線上に走査(主走査)し、露光対象を移動(副走査)させることで直接描画を実現する方式である。
後者は光源のON/OFF制御は行わず、光源は面光源としてDMDを照射し、DMDのマイクロミラーの傾きを制御することで露光対象への光線の到達を制御して直接描画を実現する方式である。ここではDMDの傾き制御が主走査となり、副走査については、前者と同様に露光対象を移動させる。
【0003】
【特許文献1】特表2004−523101
【特許文献2】特開2000−338432
【特許文献3】特許324248
【特許文献4】特開2000−93624
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記ポリゴンミラーを用いる方式では、主走査の中心部分に良好な描画品質が得られたとしても、中心から遠ざかるにしたがって露光品質が悪化する傾向がある。また、高速に回転するポリゴンミラーがあり、露光幅が広い場合には光学系が非常に大きくなる傾向がある。これは装置の保守性を悪化させ、稼動中のゴミ発生の原因ともなっている。またDMDを用いる方式では、DMDのマイクロミラーの数が限られているため、1個のDMDで直描可能な範囲は解像度にもよるが数十mmから百mm程度であるため、露光幅を広げるためにはDMDを搭載した露光ユニットを複数並べるか、露光ユニットを主走査方向に移動させて複数回の副走査を行う必要がある。またDMDは結像のための光学系を有しないため、DMDと露光対象の間には複数のレンズで構成された光学系を配する必要がある、等の問題があり、また従来の直描露光装置は、いずれの場合も機構が複雑で装置も高価であった。
本発明は上記従来技術の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の直描露光装置は、被露光対象を載置する露光テーブルと、ほぼ平行に一方向に並べて配設された複数の露光ヘッドと、該露光ヘッドに配設され、前記一方向にほぼ直交する他方向に直線状に配列された露光光を出力する発光体と、前記露光ヘッドと露光テーブルの中の1又は2を前記一方向に相対移動させ、該被露光対象の任意位置を前記発光体により露光可能な位置に位置させる移動装置と、を備え、前記移動装置により被露光対象の所定の位置を前記発光体からの露光光により露光する、ことを特徴とする。
また請求項2の発明の直描露光装置においては、被露光対象を載置する露光テーブルと、ほぼ平行に一方向に並べて配設された複数の露光ヘッドと、該露光ヘッドに配設され、前記一方向にほぼ直交する他方向に直線状に所定のピッチPで配列された露光光を出力する発光体と、前記露光ヘッドと露光テーブルの中の1又は2を前記一方向に相対移動させ、該被露光対象の任意位置を前記発光体により露光可能な位置に位置させる移動装置と、を備え、前記発光体の他方向の位置が露光ヘッド間で所定のピッチずれ量dだけずれている、ことを特徴とする。
好適な実施形態においては、前記発光体をオンオフ制御し、前記発光体の点灯タイミングを制御する制御装置を更に備え、前記移動装置は、前記露光ヘッドと露光テーブルの中の1又は2を前記一方向に連続的に相対移動させ、前記露光テーブルに載置され露光ヘッドに対して連続的に相対移動する被露光対象に対して、前記発光体をオンオフ制御し、且つ点灯タイミングを制御しつつ露光光を照射して所定のパターンを該被露光対象に露光する、ように構成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明による直描露光装置によれば、露光対象物の幅方向(主走査方向x)にLED等の発光体の直線状の配列を設け、発光体の個々の点灯制御を行うことで主走査側の描画を行い、主走査方向xとほぼ直交した副走査方向y直線上を移動する露光テーブル上に被露光対象物を載せ、この露光テーブルの移動により副走査方向yに副走査を行って任意パターンを直描露光することができる。
また本発明による直描露光装置は、主走査方向x側に機械的な動きが無く、露光ヘッドは結像に必要な光学系を有するかまたは不要とし、露光ヘッドと被露光対象物を数mm以内に接近させることが可能なため、装置を小型化し保守性を向上させることができる。また、露光ヘッドは長尺のものも製作可能であるため、被露光対象物の幅に合わせて製作することで、幅広の被露光対象に対しても少ない部品で装置を構成することが可能である、等の効果がある。
なお発光体であるLED等個々の出力プロファイルは発光体を構成する電極等の影響により歪な形状となるが、重ね描きを行うことにより出力プロファイルの影響は打ち消され高品質な描画露光が可能となる。また、複数のヘッドの位置関係についても重ね描きによりその位置精度の影響を抑えることが可能となる。
また通常露光ヘッドは600DPI、1200DPI、2400DPI程度のピッチで製造されLED等の発光体のピッチPに相当する線幅並びにギャップ幅(L/S)での描画が可能であるが、これでは十分な位置精度は得られない。
本発明では複数(N個)の露光ヘッドに主走査方向にずれ量dずらしたLED等の発光体を配置しており、このずれ量dを例えばLEDピッチPの1/Nとし、副走査方向yに被露光対象物を移動させながらずれ量P/NずれたLEDの点灯制御によりN回照射して直描し、点灯するLEDを描画する位置の近傍のN個のLEDを点灯するように制御すれば、被露光対象物上の1点に対し主走査方向x、副走査方向yそれぞれにP/Nずれた照射がN2回重ね描きされる。この動作によって該ピッチPに相当する線幅並びにギャップ幅で位置精度を該ピッチPの1/Nに向上させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1及び図2に本発明の直描露光装置の一実施形態を示す。
この直描露光装置Aはベース6を有し、このベース6上に、支持体14を介して露光ヘッド部1が主走査方向xに沿って配設され、該露光ヘッド部1の下にプリント配線用の基板90を載置した露光テーブル5が副走査方向yに移動可能に設けられている。
即ち直描露光に必要な主走査は露光ヘッド1のLED等の発光体個々の点灯制御によって行い、副走査は露光テーブル5の移動により行うように構成されている。
【0008】
露光ヘッド部1は複数の露光ヘッド10、11、12、13を有している。この実施形態では4個の露光ヘッド10、11、12、13を設けているが、必要に応じて増減可能である。
各露光ヘッド10、11、12、13は主走査方向xに配設されており、また副走査方向yに等しいヘッド間隔Wで互いにほぼ平行並べられている。
露光テーブル5は、この露光ヘッド部1の下側を副走査方向yに移動可能になっており、載置した基板90を各露光ヘッド10、11、12、13の下側に移送し、各露光ヘッド10、11、12、13により基板90を順次露光させるように構成されている。
なお、露光テーブル5ではなく露光ヘッド部1を移動させるようにすることも可能であるし、露光テーブル5と露光ヘッド部1の両方を移動させるようにすることも可能であり、露光テーブル5と露光ヘッド部1が副走査方向yに相対移動すれば良い。
【0009】
各露光ヘッド10、11、12、13は、主走査方向xに均等なピッチPで直線上に並べられた発光体であるLED20のアレイを有しており、各LED20から露光に必要な波長を出力するように構成されている。露光には紫外線光が通常用いられるが、必要に応じて他の波長の光を出力するものであっても良い。また、LED20ではなく、他の光源であっても良い。
LED20は各露光ヘッド10、11、12、13間で主走査方向xにピッチずれ量dずらして配設されている。このピッチずれ量dは、露光ヘッド数Nとすると、d=P/Nであり、主走査方向x、副走査方向yにそれぞれdずれたN2回程度の照射により露光を行う。
【0010】
前記したように、露光テーブル5は副走査方向yに各露光ヘッド10、11、12、13の下側を相対的に移動し、載置された基板90を該各露光ヘッド10、11、12、13の露光光により露光するように構成されている。各露光ヘッド10、11、12、13のLED20は主走査方向xにピッチずれ量dだけずらして配置されているため、副走査方向yの同一部分に各露光ヘッド10、11、12、13により重ねて露光することにより、高位置精度の露光が可能である。
【0011】
図3に露光の状態を示す。露光ヘッド10で基板90を露光して図3の(イ)の状態になり、次にピッチずれ量dだけずれたLED20を有する露光ヘッド11により副走査方向yの同一位置を露光することにより(ロ)の状態となる。同様に順次露光ヘッド12、露光ヘッド13により露光し、(ハ)(ニ)の露光状態となり、この露光を副走査方向yにdずつずらしながら繰り返すことにより(ホ)に示す全体的な露光を得ることができる。実際にパターンを描く場合にはLED等の点灯、消灯をパターンに応じて制御し、任意のパターン描画を行う。
【0012】
なお、通常露光ヘッド10、11、12、13の数は、必要とする露光の精度、LED等の出力、直描露光時間等に応じて決定すればよい。本実施形態では4個の露光ヘッド1設けているが、通常は10個程度の露光ヘッド10、11、12、13を搭載する。
【0013】
また、LED20の出力強度は、重ね描きを行うことから1回の点灯で露光に必要なエネルギー密度に比べて数分の1から数十分の1程度のもので良い。
【0014】
なおこの実施形態では、露光ヘッド1の位置を調整するための露光ヘッド位置調整装置15を設けており、露光ヘッド部1を上下させることにより、LED20と基板90との距離(通常数mm)を露光ヘッド部1の焦点距離に応じて調整できるようになっている。また、複数の露光ヘッド1を主走査方向x、副走査方向yに調整することも可能になっている。
更に露光テーブル5には露光テーブル5の位置を調整するための露光テーブル位置調整装置51が設けられており、主走査方向xの位置調整及び該xy平面上で回転方向の位置調整が可能になっている。ただし、描画データを回転させることでこの回転方向の調整機構を取り除くことも可能である。
【0015】
図4にブロック図を示す。
直描露光装置Aは、制御装置30により全体を制御されている。制御装置30はLEDドライバ21を介して露光ヘッド部1のLED20を個々に制御しており、描画すべきパターンに応じて、LED20の点灯と非点灯を制御し、所定のパターンを基板90に描くように構成されている。
描画すべきパターンはパターン記憶装置40に格納されており、制御装置30は所定の指令に応じてパターンを読み出すように構成されている。
【0016】
制御装置30はまた点灯タイミング補正装置31と点灯強度補正装置32を備えており、LED20の点灯のタイミング補正と点灯強度の補正を行えるように構成されている。
出力検出装置22は、撮像装置などを用いてLED20の実際の点灯位置と点灯強度を検出し、該検出値を制御装置30に送るようになっている。制御装置30は、検出されたLED20の実際の点灯位置に基づいてLED20の位置ズレを検出し、点灯タイミング補正装置31において該ズレに基づいてLED20の点灯タイミングを補正することにより副走査方向yの位置ズレを補正するようになっている。
この点灯タイミング補正装置31により、LED20の副走査方向yの位置ズレを補正することが可能になり、機械的な誤差を補償することが可能になる。
【0017】
点灯強度補正装置32は、更に出力検出装置22からの点灯強度の検出値に応じて、各LED20の点灯強度を補正し、均一な出力を得られるようにする。この構成により、LED20の輝度等のバラツキを補償することが可能になる。
露光ヘッド位置調整装置15は前記したように露光ヘッド部1の上下位置、主走査方向x位置、副走査方向y位置を調整するためのものであり、同様に制御装置30により制御されている。
【0018】
制御装置30は、また露光テーブル移動装置50を制御して露光テーブル5の副走査方向yの移動を制御している。露光テーブル5は直描露光を開始する直前に加速を完了し、直描露光中は等速で移動するように制御される。実際には移動速度のずれが生じる可能性があるので、制御装置30は移動量を検出して制御タイミングを補正するように構成されている。
露光テーブル位置調整装置51は前述したように露光テーブル5の主走査方向xの位置調整及び回転方向の位置調整を行うものである。
【0019】
図5はシミュレーションに用いたLED20の照射プロファイルである。このシミュレーションでは露光ヘッド部1のLEDアレイを10本用いたことを想定し、LEDの照射位置のずれはピッチPの1/10であると想定している。
図6は照射パターンを示しており縦100ピクセル×横50ピクセルの領域のほぼ中央に縦81ピクセル×横10ピクセルの縦線を描画するための描画データである。黒は照射するピクセルを示し、白は照射しないピクセルを示す。ピクセルの位置の間隔はピッチPの1/10である。
図7は図5の照射プロファイルで図6照射パターンにより照射した場合の蓄積エネルギーを示す。図の高さの2分の1が露光に必要なエネルギーであるとすれば、重ね書きによって図6に相当するパターンが描画されることがわかる。
【0020】
本実施形態では、更に痩線化装置33を備えており、この痩線化装置33について説明する。
本実施形態のような重ね書きによるエネルギー蓄積で直描を行う方式では、L字型部分の描画や、半径の小さな円弧の描画において描画線が太くなるという問題が発生する。
図8はL字型部分を持つパターンを示し、図9はそのシミュレーション結果を示す。痩線化装置33は、このようなL字型部分や半径の小さな円弧部分について、事前に描画データを痩線化させることにより線が太くなることを防止する。
図10はL字型部分の描画を行う場合の補正パターンであり、図11はそのシミュレーション結果である。
このように痩線化装置33を用いることにより、L字型部分や円弧において描画線が太くなるという問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略斜視図。
【図2】本発明の一実施形態の露光ヘッド部1の詳細説明図。
【図3】本発明の一実施形態の動作を示す説明図。
【図4】本発明の一実施形態の機能ブロック図。
【図5】LEDの照射プロファイル説明図。
【図6】描画データの説明図。
【図7】照射シミュレーションの3Dグラフ。
【図8】L字型パターンデータの説明図。
【図9】L字型照射シミュレーションの等高線グラフ。
【図10】補正データの説明図。
【図11】補正照射シミュレーションの等高線グラフ。
【符号の説明】
【0022】
1:露光ヘッド部、5:露光テーブル、6:ベース、10:露光ヘッド、11:露光ヘッド、12:露光ヘッド、13:露光ヘッド、14:支持体、15:露光ヘッド位置調整装置、20:LED、21:LEDドライバ、22:出力検出装置、30:制御装置、31:点灯タイミング補正装置、32:点灯強度補正装置、33:痩線化装置、40:パターン記憶装置、50:露光テーブル移動装置、51:露光テーブル位置調整装置、90:基板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被露光対象を載置する露光テーブルと、
ほぼ平行に一方向に並べて配設された複数の露光ヘッドと、
該露光ヘッドに配設され、前記一方向にほぼ直交する他方向に直線状に配列された露光光を出力する発光体と、
前記露光ヘッドと露光テーブルの中の1又は2を前記一方向に相対移動させ、該被露光対象の任意位置を前記発光体により露光可能な位置に位置させる移動装置と、を備え、
前記移動装置により被露光対象の所定の位置を前記発光体からの露光光により露光する、
ことを特徴とする直描露光装置。
【請求項2】
被露光対象を載置する露光テーブルと、
ほぼ平行に一方向に並べて配設された複数の露光ヘッドと、
該露光ヘッドに配設され、前記一方向にほぼ直交する他方向に直線状に所定のピッチPで配列された露光光を出力する発光体と、
前記露光ヘッドと露光テーブルの中の1又は2を前記一方向に相対移動させ、該被露光対象の任意位置を前記発光体により露光可能な位置に位置させる移動装置と、を備え、
前記発光体の他方向の位置が露光ヘッド間で所定のピッチずれ量dだけずれている、
ことを特徴とする直描露光装置。
【請求項3】
前記発光体をオンオフ制御する制御装置を更に備えた、
請求項1又は2の直描露光装置。
【請求項4】
前記発光体の点灯タイミングを制御する制御装置を更に備えた、
請求項1又は2又は3の直描露光装置。
【請求項5】
前記発光体をオンオフ制御し、前記発光体の点灯タイミングを制御する制御装置を更に備え、
前記移動装置は、前記露光ヘッドと露光テーブルの中の1又は2を前記一方向に連続的に相対移動させ、
前記露光テーブルに載置され露光ヘッドに対して連続的に相対移動する被露光対象に対して、前記発光体をオンオフ制御し、且つ点灯タイミングを制御しつつ露光光を照射して所定のパターンを該被露光対象に露光する、
請求項1又は2の直描露光装置。
【請求項6】
前記発光体の出力を制御する制御装置を更に備えた、
請求項1又は2又は3又は4又は5の直描露光装置。
【請求項7】
被露光対象に露光すべきパターンを予め補正する補正装置を更に設けた、
請求項1又は2又は3又は4又は5又は6の直描露光装置。
【請求項1】
被露光対象を載置する露光テーブルと、
ほぼ平行に一方向に並べて配設された複数の露光ヘッドと、
該露光ヘッドに配設され、前記一方向にほぼ直交する他方向に直線状に配列された露光光を出力する発光体と、
前記露光ヘッドと露光テーブルの中の1又は2を前記一方向に相対移動させ、該被露光対象の任意位置を前記発光体により露光可能な位置に位置させる移動装置と、を備え、
前記移動装置により被露光対象の所定の位置を前記発光体からの露光光により露光する、
ことを特徴とする直描露光装置。
【請求項2】
被露光対象を載置する露光テーブルと、
ほぼ平行に一方向に並べて配設された複数の露光ヘッドと、
該露光ヘッドに配設され、前記一方向にほぼ直交する他方向に直線状に所定のピッチPで配列された露光光を出力する発光体と、
前記露光ヘッドと露光テーブルの中の1又は2を前記一方向に相対移動させ、該被露光対象の任意位置を前記発光体により露光可能な位置に位置させる移動装置と、を備え、
前記発光体の他方向の位置が露光ヘッド間で所定のピッチずれ量dだけずれている、
ことを特徴とする直描露光装置。
【請求項3】
前記発光体をオンオフ制御する制御装置を更に備えた、
請求項1又は2の直描露光装置。
【請求項4】
前記発光体の点灯タイミングを制御する制御装置を更に備えた、
請求項1又は2又は3の直描露光装置。
【請求項5】
前記発光体をオンオフ制御し、前記発光体の点灯タイミングを制御する制御装置を更に備え、
前記移動装置は、前記露光ヘッドと露光テーブルの中の1又は2を前記一方向に連続的に相対移動させ、
前記露光テーブルに載置され露光ヘッドに対して連続的に相対移動する被露光対象に対して、前記発光体をオンオフ制御し、且つ点灯タイミングを制御しつつ露光光を照射して所定のパターンを該被露光対象に露光する、
請求項1又は2の直描露光装置。
【請求項6】
前記発光体の出力を制御する制御装置を更に備えた、
請求項1又は2又は3又は4又は5の直描露光装置。
【請求項7】
被露光対象に露光すべきパターンを予め補正する補正装置を更に設けた、
請求項1又は2又は3又は4又は5又は6の直描露光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−109550(P2009−109550A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278784(P2007−278784)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(300091670)株式会社アドテックエンジニアリング (23)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(300091670)株式会社アドテックエンジニアリング (23)
【Fターム(参考)】
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