説明

直流電源装置及びキャパシタモジュールの電圧不均等化抑制方法

【課題】消費電力が少なく、かつ、キャパシタモジュールの端子間電圧のバラツキが小さい直流電源装置を提供する。
【解決手段】キャパシタモジュール5に対して電圧不均等化抑制回路9を設ける。電圧不均等化抑制回路9は、複数個のキャパシタC1〜C5にそれぞれ並列接続された常開スイッチSW1〜SW5と抵抗体R1〜R5とからなる複数の直列回路11と、スイッチ制御回路13を含む。スイッチ制御回路13は、キャパシタモジュール5を充電するときにはすべての常開スイッチSW1〜SW5を閉状態とし、キャパシタモジュール5から負荷に電力を供給していないときには、キャパシタの端子間電圧の差電圧が予め定めた許容範囲より大きくなる端子間電圧を持つキャパシタに並列接続された直列回路の常開スイッチを閉状態として差電圧を許容範囲内のものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のキャパシタを直列に接続したキャパシタモジュールを備えた直流電源装置及びキャパシタモジュールの電圧不均等化抑制方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
UPS、非常灯、非常放送設備、電話交換機、通信機器基地局など、非常時のバックアップを想定した機器が各種あり、必要とされる特性に応じてニッカド電池やニッケル水素電池、鉛電池など各種蓄電デバイスが利用されている。火災時や停電時に点灯する非常用照明の電源は、一般にニッカド電池やニッケル水素電池、その他の比較的大容量の設備では鉛電池が使用されている。これらの蓄電デバイスは、非常時に建物から人が避難する時間、または公衆電源の一時的な停電の時間だけ給電すればよいので、補償時間1分〜30分程度の短時間放電を想定して設計される。
【0003】
近年、これらのバックアップ用途にキャパシタが電池に代わり適用されつつある。なぜなら、リチウムイオンキャパシタに代表されるようなエネルギ密度の高いキャパシタが開発されてきたため、電池では活物質利用率が極端に低下する短時間放電の条件で、エネルギ密度のキャパシタに対する電池の優位性が明確で無くなりつつある上、キャパシタは電池より長寿命で定期交換の間隔を長くできる利点があるからである。
【0004】
これらの用途での電池充電方法は、基本的に定電流定電圧充電であり、負荷への給電と蓄電デバイスへの充電を別にするか、同一の電源に負荷と蓄電デバイスを接続するかで、トリクル充電とフロート充電に分けられる。
【0005】
キャパシタを使用する際には漏れ電流によるセル間のばらつきが大きくなって特定のキャパシタが過充電または過放電になることが懸念される。これを避けるため、一般に、セル(キャパシタ)電圧不均等化抑制回路を搭載するか、セル(キャパシタ)数を増やす設計を採用する。鉛電池やニッカド電池などでもセル(キャパシタ)間の電圧のばらつきは発生するが、一般に問題とならない。なぜなら、通常の使い方では満充電近くまで充電するタイミングが存在し、これらの電池では、そのタイミングで充電状態の高いセルほど副反応であるガス発生に電流が消費され充電電流効率が落ち、結果的にセル間の充電状態が均一化するからである。
【0006】
電圧不均等化抑制回路はいくつか提案されているが、抵抗やダイオードを各セルに並列に接続する方法が最も簡単である(特許文献1から3)。放置中の放電を抑制するため放置中は各セルに並列に接続された抵抗をスイッチで切り離すことも提案されている。この場合、通常はトリクル充電やフロート充電などの定電圧充電が行われる。また、キャパシタ直並列切替回路を設置したキャパシタモジュールに間欠充電を行い、充電停止中に各セルを並列接続することでも、均等化することができる(特許文献4)。特許文献4では、間欠充電の充電開始タイミングと放電開始タイミングはクロックで規定される。間欠充電は充電時間の割合をなるべく短くすることで電池の劣化を抑制することができる。充電時間を短くする制御としては、たとえば、間欠充電の充電開始タイミングを、満充電後に放置中に所定電圧に下がったときとする技術(特許文献5)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭62−4848号公報(請求項1)
【特許文献2】特開平06−302474号公報(請求項1)
【特許文献3】実開平05−023527号公報(請求項1)
【特許文献4】特許第3728622号公報(請求項1)
【特許文献5】特開平9−117074号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
キャパシタモジュールを用いる場合に、従来のトリクル充電、フロート充電を用いると、常時電流が流れ、無駄に電力を消費する問題がある。間欠充電を行う場合には消費電力は低減する。しかし間欠充電では、充電時間が短いため、各キャパシタに並列に均等化回路として抵抗を接続し、充電中だけ接続した抵抗をスイッチで切り離すようにした場合には、キャパシタ間の電圧のばらつきが大きくなって、一部のキャパシタが過放電状態となりキャパシタの寿命が低下する問題がある。
【0009】
本発明の目的は、上記問題を解決し、消費電力が少なく、かつ、キャパシタの端子間電圧のバラツキが小さい直流電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の直流電源装置は、複数個のキャパシタを直列に接続したキャパシタモジュールと、負荷に電力を供給する電源と、電源とキャパシタモジュールとの間に配置されてキャパシタモジュールを間欠的に充電し且つ電源から負荷への電力の供給が停止すると、キャパシタモジュールから負荷へ電荷を放電して電力を供給する充放電回路と、複数のキャパシタの端子間電圧の差を予め定めた許容範囲内のものとする電圧不均等化抑制回路とを備えている。キャパシタモジュールは、例えばバックアップ用電源として用いられる。充放電回路によるキャパシタモジュールの間欠的な充電の態様は任意である。キャパシタモジュールの電圧が予め定めた電圧以下になったときに充電を行うようにしてもよく、また定期的に充電動作を行うようにしてもよい。
【0011】
特に本発明では、電圧不均等化抑制回路が、複数個のキャパシタにそれぞれ並列接続された常開スイッチと抵抗体とからなる複数の直列回路と、スイッチ制御回路とからなる。スイッチ制御回路は、キャパシタモジュールを充電しているときに、複数個のキャパシタのうち端子間電圧が他のキャパシタの端子間電圧よりも予め定めた許容範囲以上高くなっている1以上のキャパシタに並列接続された直列回路の常開スイッチを閉状態にし、閉状態にした前記常開スイッチを前記1以上のキャパシタの端子間電圧と前記他のキャパシタの端子間電圧との差電圧が前記許容範囲内の電圧になると開状態とし、前記キャパシタモジュールが非充電状態にあるときには、すべての常開スイッチを開状態に制御する。本発明によれば、充電を行っているときに、他のキャパシタの端子間電圧と比べて端子間電圧が許容範囲を越えて高くなっているキャパシタに対して設けられた直列回路の常開スイッチを閉じて抵抗体をキャパシタに並列接続する。充電中に、抵抗体がキャパシタに並列接続されると、そのキャパシタの端子間電圧の上昇割合は、抵抗体が並列接続されていない他のキャパシタの端子間電圧の上昇割合よりも小さくなる。その結果、本発明によれば、間欠的にキャパシタモジュールを充電する場合であっても、短い時間で複数のキャパシタの端子間電圧のバラツキを小さくすることができる。また、一部のキャパシタが過放電状態になるような事態が発生することがなく、キャパシタの寿命の低下を防止できる。
【0012】
なお本発明においては、充電中以外では直列回路の常開スイッチが閉じられることはない。したがって非充電時間中にキャパシタの電荷が抵抗体を通して自己放電することはないまた放電中においても、抵抗体を通してキャパシタの電荷が放電されることがない。なお常開スイッチは、電磁スイッチでも、また半導体スイッチでもよい。
【0013】
具体的なスイッチ制御回路としては、複数のキャパシタの隣り合う二つのキャパシタのそれぞれの端子間電圧の差電圧を求め、差電圧が許容範囲を越えていることを判定すると、端子間電圧が高いほうのキャパシタに並列接続されている直列回路の常開スイッチを閉状態にする信号を出力し、差電圧が許容範囲内になると常開スイッチを開状態にする信号を出力する判定回路を備えているものを用いることができる。このような判定回路があれば、キャパシタの数が多くなっても、複雑な回路構成を用いることなく、電圧の不均等化を抑制することができる。
【0014】
なおスイッチ制御回路は、複数のキャパシタ中の隣り合う二つのキャパシタに対して1つずつ判定回路を備えていてもよい。また複数のキャパシタに1つの判定回路を設け、この1つの判定回路と複数のキャパシタの隣り合う二つのキャパシタとを選択的に接続する選択接続回路を設けてもよい。このような構成にすると、判定回路の数を最小にすることができる。
【0015】
抵抗体の値は、キャパシタの特性及び容量等を考慮して定めることになる。キャパシタがリチウムイオンキャパシタの場合には、抵抗体の抵抗値を、10±5Ωの値とするのが好ましい。
【0016】
本発明の直流電源装置の負荷は、直流を交流に変換するインバータであってもよい。この場合には、負荷を含めて見ると、交流電源となる。また本発明の直流電源装置で使用する電源は、直流発電機は勿論のこと、商用電源や交流発電機の出力を整流して直流電力を出力するタイプの電源でもよい。
【0017】
見方を変えると、本発明は、複数個のキャパシタを直列に接続したキャパシタモジュールと負荷に電力を供給する電源との間に配置されてキャパシタモジュールを間欠的に充電し且つ電源から負荷への電力の供給が停止すると、キャパシタモジュールから負荷へ電荷を放電して電力を供給する直流電源装置のキャパシタモジュールに含まれる複数個のキャパシタの端子間電圧のバラツキを抑制するキャパシタモジュールの電圧不均等化抑制方法として把握することができる。本発明の方法では、複数個のキャパシタに、常開スイッチと抵抗体とからなる複数の直列回路をそれぞれ並列接続する。そしてキャパシタモジュールを充電しているときに、複数個のキャパシタのうち端子間電圧が他のキャパシタの端子間電圧よりも予め定めた許容範囲以上高くなっている1以上のキャパシタに並列接続された直列回路の常開スイッチを閉状態にする。その後1以上のキャパシタの端子間電圧と他のキャパシタの端子間電圧との差電圧が許容範囲内の電圧になると常開スイッチを開状態とし、非充電状態ではすべての常開スイッチを開常態にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を車両用の直流電源装置に適用した場合の構成例を示す図である。
【図2】(A)及び(B)は、スイッチ切換回路で用いる判定回路の一例を示す図である。
【図3】本発明を交流負荷用無停電電源に適用する場合の電源システムの構成例を示す図である。
【図4】図3の実施の形態のタイミングチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明を、プラグイン走行機能を持たない通常の車両用電源として用いられる直流電源装置1に適用した場合の構成例である。この直流電源装置1では、商用交流電源が使用できないため直流発電機3が、キャパシタモジュール5の充電器及び負荷Lに電力を供給する電源として利用される。直流発電機3は燃料でエンジンを動かして発電するエンジン発電機の出力を整流して出力する構造を有している。また直流発電機3としては、エンジン発電機のブレーキ回生エネルギを利用して発電するものを用いることができる。
【0020】
キャパシタモジュール5は、複数個のキャパシタC1〜C5を直列に接続した構造を有している。本実施の形態では、キャパシタモジュール5はバックアップ用電源として用いられる。キャパシタの数は必要な電圧に応じて任意に定められる。直流発電機3とキャパシタモジュールとの間には、キャパシタモジュール5のキャパシタC1〜C5を間欠的に充電し且つ直流発電機3から負荷Lへの電力の供給が停止すると、キャパシタモジュール5から負荷Lへ電荷を放電して電力を供給する充放電回路7が配置されている。充放電回路7によるキャパシタモジュール5の間欠的な充電の態様は任意である。本実施の形態では、キャパシタモジュール5の端子間電圧が、予め定めた電圧以下になったときに、充電を開始し、キャパシタモジュール5の端子間電圧が予め定めた上限電圧に達すると充電を停止する、充電モードで充電を行うように充放電回路7が構成されている。ここで予め定めた電圧とは、キャパシタモジュール5をバックアップ電源として使用することを考慮して定められることになる。例えばキャパシタモジュール5の定格電圧の80%の電圧を、予め定めた電圧とすることができる。また上限電圧は、定格電圧の100%の電圧と定めることができる。
【0021】
キャパシタモジュール5の端子間電圧の低下は、充放電回路7の内部に設けた図示しない電圧検出器により検出する。図示しない電圧検出器は、キャパシタモジュール5の両端電圧を基準電圧及び上限電圧と比較することにより、電圧低下と充電完了とを検出する。
【0022】
また本実施の形態では、充電中における複数のキャパシタC1〜C5の端子間電圧のバラツキの発生を抑制するための電圧不均等化抑制回路9を備えている。電圧不均等化抑制回路9は、複数個のキャパシタC1〜C5にそれぞれ並列接続された常開スイッチSW1〜SW5と抵抗体R1〜R5とからなる複数の直列回路11と、スイッチ制御回路13とから構成される。スイッチ制御回路13は、充放電回路7によりキャパシタモジュール5のキャパシタC1〜C5を充電するときには、複数個のキャパシタのうち端子間電圧が他のキャパシタの端子間電力よりも予め定めた許容範囲以上高くなっている1以上のキャパシタに並列接続された直列回路11の常開スイッチを閉状態にする。すなわち充電を行っているときに、他のキャパシタの端子間電圧と比べて端子間電圧が比較的高いキャパシタに対して設けられた直列回路の常開スイッチ(SW1〜SW5)を閉じて抵抗体(R1〜R5)をキャパシタC1〜C5に並列接続する。常開スイッチ(SW1〜SW5)が閉状態になると、抵抗体がキャパシタに並列接続されて、抵抗体が並列接続されたキャパシタへの充電量が減少する。そのため抵抗体が並列接続されたキャパシタの端子間電圧の上昇速度は、抵抗体が接続されていない他のキャパシタの端子間電圧の上昇速度よりも遅くなる。その結果、充電中において、端子間電圧のバラツキが抑制される。スイッチ制御回路13は、1以上のキャパシタの端子間電圧と他のキャパシタの端子間電圧との差電圧が許容範囲内の電圧になると、閉状態にした常開スイッチを開状態とする。その結果、充電途中において、端子間電圧のバラツキが抑制されると、キャパシタから抵抗体が切り離され、以後は他のキャパシタと同様の充電量(電圧上昇速度)でキャパシタが充電される。そのため本実施の形態によれば、間欠的にキャパシタモジュールを充電する場合であっても、短い時間で複数のキャパシタの端子間電圧のバラツキを小さくすることができる。その結果、一部のキャパシタが過放電状態になるような事態が発生することがなく、キャパシタの寿命の低下を防止できる。
【0023】
なお他のキャパシタの端子間電圧よりも予め定めた許容範囲以上端子間電圧が高くなっているキャパシタを検出する方法は、任意である。
【0024】
本実施の形態においては、充電時以外において、常開スイッチSW1〜SW5が閉状態となることはない。
【0025】
具体的に、本実施の形態では、スイッチ制御回路13は、キャパシタモジュール5から負荷Lに電力を供給していないときには、複数のキャパシタC1〜C5の端子間電圧の差電圧を検出して、差電圧が予め定めた許容範囲より大きくなる端子間電圧を持つキャパシタに並列接続された直列回路11の常開スイッチ(SW1〜SW5)を閉状態として差電圧を許容範囲内のものとする。本実施の形態では、複数個のキャパシタC1〜C5のうち隣り合う二つのキャパシタ(C1とC2,C2とC3,・・・C4とC5)の端子間電圧の差電圧を検知する。そして、差電圧が予め定めた許容範囲外になる端子間電圧を持つキャパシタに並列接続された直列回路の常開スイッチ(SW1〜SW5)を閉状態にして、複数個のキャパシタC1〜C5の端子間電圧の差電圧を予め定めた許容範囲内のものとする。差電圧が許容範囲になると、閉状態にあった常開スイッチ(SW1〜SW5)は開状態となる。本実施の形態では、基準となるキャパシタ(差電圧を求める二つのキャパシタの一方のキャパシタ)の端子間電圧の±1%の電圧範囲を許容範囲としている。
【0026】
図2(A)及び(B)は、スイッチ制御回路13内に配置されて、キャパシタC1及びC2の端子間電圧の差電圧が予め定めた許容範囲(±1%)外にある場合には、端子間電圧が高いほうのキャパシタに対して並列接続されている常開スイッチSW1またはSW2を閉じるための導通信号を出力し、差電圧が許容範囲内になると閉状態にある常開スイッチSW1またはSW2を開状態にする機能を有する判定回路の一例を示している。図2(A)の判定回路では、抵抗r1と抵抗r2とが、r2=0.99×r1の関係になるように抵抗値が設定されている。また図2(B)の判定回路では、r2=1.01×r1の関係になるように抵抗値が設定されている。これにより前述の許容範囲±1%が設定される。図2(A)の判定回路では、キャパシタC1の端子間電圧(V2−V1)が、キャパシタC2の端子間電圧(V3−V2)よりも0.01%以上高い場合に、スイッチSW1に導通信号が出力される。この導通信号は、キャパシタC1の端子間電圧(V2−V1)とキャパシタC2の端子間電圧(V3−V2)との差電圧が、0.01%より小さくなるまで出力され続ける。その結果、抵抗体R1がキャパシタC1に充電されるはずであった電荷の一部が放電して、二つのキャパシタC1及びC2の電圧の均等化(端子間電圧のバラツキの抑制)が図られる。また図2(B)の判定回路では、キャパシタC2の端子間電圧(V3−V2)が、キャパシタC1の端子間電圧(V2−V1)よりも0.01%以上高い場合に、スイッチSW2に導通信号(スイッチオン信号)が出力される。この導通信号は、キャパシタC2の端子間電圧(V3−V2)とキャパシタC1の端子間電圧(V2−V1)との差電圧が、0.01%より小さくなるまで出力され続ける。そして抵抗体R2が存在することにより、キャパシタC2の充電量が制限されて、キャパシタC2の端子間電圧と他のキャパシタとの端子間電圧の均等化(端子間電圧のバラツキの抑制)が図られる。図2(A)及び(B)の判定回路は、差電圧が許容範囲内になると、導通信号の出力を停止し(常開スイッチを閉状態にするスイッチオフ信号を出力している状態となり)、閉状態にある常開スイッチSW1またはSW2を開状態にする。
【0027】
スイッチ制御回路13内には、隣り合う二つのキャパシタに対して図2(A)及び(B)に示した判定回路と同じ回路が含まれている。なお図2の判定回路は、一例であって、他の回路構成の判定回路を用いることができるのは勿論である。例えば、複数のキャパシタに対して1つの判定回路を設け、この1つの判定回路と複数のキャパシタの隣り合う二つのキャパシタとを選択的に接続する選択接続回路を設けてもよい。このような構成にすると、判定回路の数を最小にすることができる。
【0028】
上記実施の形態のように、キャパシタモジュール5を直流電源装置に適用した場合には、暗電流のバックアップ用に電池を別途搭載することが望ましい。この場合、充電用の発電機は、充電対象をキャパシタと電池のいずれか一方を選択できるように切り替え可能とするか、キャパシタと電池を並列接続して充電可能とすることで、電池専用の充電器の設置によるコストアップや装置の大型化を避けることができる。
【0029】
本発明の直流電源装置は、直流負荷用無停電電源に適用してもよい。この場合には、無停電電源であるため、公衆交流電源とAC−DCコンバータを充電器として利用する。また直流電源装置は、交流負荷用無停電電源にも適用することができる。この場合は、図1に示したコンデンサモジュールと負荷Lとの間にインバータを配置すればよい。一般にインバータは変換効率が90%程度と低いため、負荷が公衆交流電源で使えるものならば、非常時以外はインバータを介さずに、公衆交流電源と負荷とを直接つなぐ構成としても良い。
【0030】
本発明の直流電源装置を、プラグイン走行機能を有する車両の電源に適用した場合には、プラグイン走行機能に加え回生充電機能も付加するのが好ましい。回生充電機能も付加うるためには、インバータとして回生電流を電源側に回生できる回生機能付きコンバータを用いればよい。
【0031】
本実施の形態のように、電圧不均等化抑制回路9が使用される場合には、電圧不均等化抑制回路9で消費する電力も問題となることがあるので、電圧不均等化抑制回路9を停止させる機能を設けることが望ましい。図1の実施の形態では、スイッチ制御回路13における前述の許容範囲(±1%)を広げることにより、電圧不均等化抑制回路9の感度を下げることにより、電圧不均等化抑制回路9における消費電力を低下させることができる。
【0032】
以下無停電電源装置(UPS)に本発明の他の実施の形態の具体例について、図3を用いて説明する。この実施の形態でも、図1の実施の形態と同様に、充電開始時において、複数のキャパシタCの端子間電圧のバラツキが大きい場合には、端子間電圧が他のキャパシタの端子間電圧よりも許容範囲以上に大きくなった電圧不均等化抑制回路29中のキャパシタの常開スイッチSWを閉じて、均等化処理をする。この実施の形態では、負荷Lとして12V直流電源用の負荷を想定した。作製した無停電直流電源装置のキャパシタモジュール25には定格3.7V1000Fリチウムイオンキャパシタ単セルを4セル直列に接続したものを使用した。商標電源ACを直流に変換するAC−DCコンバータ23には、電圧13.8V、電流10Aのものを使用した。
【0033】
そしてキャパシタモジュール25の両端電圧が14.8V値以下になること、または、4つのキャパシタCの端子間電圧が予め定めた許容範囲を越えるバラツキが発生することを、電圧不均等化抑制回路29を起動する条件とした。そして電圧不均等化抑制回路29内のスイッチ制御回路33は、各キャパシタCの端子間電圧の最大値−最小値≧0.05Vであることを検出すると、10A、14.8V定電流定電圧充電の条件で充電を開始する指令を充放電回路27に出力し、各キャパシタCの端子間電圧の最大値−最小値<0.05Vの状態で、14.8Vを3時間維持した後、充電を終了する指令を充放電回路27に出力する。
この場合のタイミングチャートを図4に示す。充電停止中及び放電は常開スイッチSWが開状態になっていることより電圧不均等化抑制回路29が切り離され、その間は自己放電電流のセル間バラツキによりキャパシタCの端子間電圧にバラツキが拡大する。図4において、間欠充電が開始されると複数のキャパシタCには充電電流が流れる。そしてキャパシタモジュール25の端子間電圧(モジュール電圧)は上昇し始める。このとき複数のキャパシタCの端子間電圧にバラツキがあり、複数のキャパシタCの中で端子間電圧が許容範囲以上に高くなっているキャパシタCに対しては、スイッチ制御回路33から対応する常開スイッチSWを閉状態にする導通信号が出力される。図4中の「スイッチオン信号」は、スイッチ制御回路33から常開スイッチSWに出力される導通信号を示している。モジュール電圧が、上限電圧に達して所定時間経過すると、充電が停止される。図4ではスイッチオフの期間が充電が停止されている期間である。この期間では、常開スイッチSWは開状態にあり、キャパシタモジュール25は自己放電を行って、モジュール電圧は低下する。モジュール電圧が予め定めた基準電圧まで低下すると、再び間欠充電が開始される。
【0034】
図4中において、電流がマイナス方向に流れている期間が放電期間であり、この期間の電流が放電電流である。放電電流が流れると、モジュール電圧が低下するため、放電終了と共に間欠充電が開始される。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明によれば、スイッチ制御回路が、充放電回路により間欠的にキャパシタモジュールを充電する場合において、複数のキャパシタの端子間電圧のバラツキを小さくすることができる。その結果、一部のキャパシタが過放電状態になるような事態が発生することがなく、キャパシタの寿命の低下を防止できる利点が得られる。
【符号の説明】
【0036】
1 直流電源装置
3 直流発電機
5,25 キャパシタモジュール
7,27 充放電回路
9,29 電圧不均等化抑制回路
11 直列回路
13,33 スイッチ制御回路
L 負荷
C,C1〜C5 キャパシタ
SW,SW1〜SW5 常開スイッチ
R,R1〜R5 抵抗体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のキャパシタを直列に接続したキャパシタモジュールと、
負荷に電力を供給する電源と、
前記電源と前記キャパシタモジュールとの間に配置されて前記キャパシタモジュールを間欠的に充電し且つ前記電源から前記負荷への電力の供給が停止すると、前記キャパシタモジュールから前記負荷へ電荷を放電して電力を供給する充放電回路と、
前記複数のキャパシタの端子間電圧のバラツキを抑制するための電圧不均等化抑制回路とを備え、
前記電圧不均等化抑制回路は、
前記複数個のキャパシタにそれぞれ並列接続された常開スイッチと抵抗体とからなる複数の直列回路と、
前記キャパシタモジュールを充電しているときには、前記複数個のキャパシタのうち端子間電圧が他のキャパシタの端子間電圧よりも予め定めた許容範囲以上高くなっている1以上の前記キャパシタに並列接続された前記直列回路の前記常開スイッチを閉状態にし、閉状態にした前記常開スイッチを前記1以上のキャパシタの端子間電圧と前記他のキャパシタの端子間電圧との差電圧が前記許容範囲内の電圧になると開状態とし、前記キャパシタモジュールが非充電状態にあるときには、すべての前記常開スイッチを開状態にするスイッチ制御回路とからなることを特徴とする直流電源装置。
【請求項2】
前記スイッチ制御回路は、前記複数のキャパシタの隣り合う二つの前記キャパシタのそれぞれの端子間電圧の差電圧を求め、前記差電圧が前記許容範囲を越えていることを判定すると、前記端子間電圧が高いほうの前記キャパシタに並列接続されている前記直列回路の前記常開スイッチを閉状態にする信号を出力し、
前記差電圧が前記許容範囲内になると前記常開スイッチを開状態にする信号を出力する判定回路を備えている請求項1に記載の直流電源装置。
【請求項3】
前記スイッチ制御回路は、前記複数のキャパシタ中の隣り合う二つの前記キャパシタに対して1つずつ前記判定回路を備えている請求項2に記載の直流電源装置。
【請求項4】
前記キャパシタがリチウムイオンキャパシタであり、前記抵抗体の抵抗値が、10±5Ωの範囲内の値である請求項1に記載の直流電源装置。
【請求項5】
複数個のキャパシタを直列に接続したキャパシタモジュールと負荷に電力を供給する電源との間に配置されて前記キャパシタモジュールを間欠的に充電し且つ前記電源から前記負荷への電力の供給が停止すると、前記キャパシタモジュールから前記負荷へ電荷を放電して電力を供給する直流電源装置の前記キャパシタモジュールに含まれる複数個のキャパシタの端子間電圧のバラツキを抑制するキャパシタモジュールの電圧不均等化抑制方法であって、
前記複数個のキャパシタに、常開スイッチと抵抗体とからなる複数の直列回路をそれぞれ並列接続し、
前記キャパシタモジュールを充電しているときに、前記複数個のキャパシタのうち端子間電圧が他のキャパシタの端子間電圧よりも予め定めた許容範囲以上高くなっている1以上の前記キャパシタに並列接続された前記直列回路の前記常開スイッチを閉状態にし、その後前記1以上のキャパシタの端子間電圧と前記他のキャパシタの端子間電圧との差電圧が前記許容範囲内の電圧になると前記常開スイッチを開状態とし、非充電状態ではすべての前記常開スイッチを開常態にすることを特徴とするキャパシタモジュールの電圧不均等化抑制方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate