説明

直鎖状のおよびβ−アルキル分岐した脂肪族カルボン酸の製造方法

【課題】 アルデヒドを酸素で酸化して直鎖状またはβ−アルキル分岐した脂肪族カルボン酸を製造するに際し、アルデヒド高転化率のもとでカルボン酸への高選択率をもたらす方法の提供。
【解決手段】 アルデヒドを酸素または含酸素ガス混合物で酸化することによって直鎖状のまたはβ−アルキル分岐した脂肪族カルボン酸を製造する方法において、触媒としては使用するアルデヒド1モル当たり(アルカリ金属またはアルカリ土類金属として算出して)1ミリモル〜10ミリモルの量のアルカリ金属−またはアルカリ土類金属カルボキシレートまたはそれの混合物並びに使用するアルデヒドを基準として最大5.0ppm の量の元素周期律表の第5〜11族の金属または対応する量のかゝる金属の化合物もしくはかゝる金属および/またはかゝる金属化合物の混合物を存在させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、アルデヒドから酸素または酸素含有ガスで酸化することによって直鎖状のおよびβ−アルキル分岐した脂肪族カルボン酸を接触的に製造する新規の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルデヒドは、カルボン酸を製造するための原料として大規模に使用されている。この用途分野にとってアルデヒドの優位さはアルデヒドが工業的に利用される沢山の方法によって容易に利用できることにある。更にアルデヒドのカルボニル基はカルボニル基に容易に転化される。工業的に実行される方法においては、アルデヒドからカルボン酸への転化は主として触媒の存在下で行われる。触媒としては主として遷移金属の塩、特にコバルトおよびマンガンの塩並びにクロム、鉄、銅、ニッケル、銀およびバナジウムの塩が適している。アルデヒドからのカルボン酸の生成は、しばしば最適な温度条件を維持する場合ですら副反応および分解反応を伴う。
【0003】
J. Praktの“Chem. ”第14巻(1961)、第71-83頁には、酢酸コバルトまたはフタル酸マンガンの存在下でのイソノナナルの酸化が説明されている。マンガン含有触媒の存在下では60℃の反応温度でのイソノナン酸収率は約70%だけである。
【0004】
ドイツ特許出願公開第3,029,700号明細書に記載された方法によると、炭素原子数6〜9の脂肪族モノカルボン酸を製造するためには相応するアルデヒドを純粋な状態の酸素または空気で酸化する。酸に溶解しているマンガン−および銅化合物の組合せが触媒として作用する。これらの金属は、液状反応混合物の重量を基準としてそれぞれ約10〜約2000ppm、好ましくは200〜600ppmのマンガンおよび銅の量で存在する。マンガンと銅とのモル比は5:1〜0.5:1の範囲内である。出発物質の反応は液相で約50〜80℃の温度および約1.4〜10.3barの範囲内の圧力のもとで行われる。この方法の主要な問題点は、該方法の説明において、銅−およびマンガン化合物が反応生成物、即ちカルボン酸中に存在することであると記載されている。金属を除くためには多大な費用の掛かる精製手段が必要であり、例えばそれらを水性蓚酸で沈殿させる必要がある。
【0005】
〜C モノカルボン酸を、同じ炭素原子数のアルデヒドを純粋な酸素または空気で酸化することによって製造する米国特許第4,487,720号明細書に記載の方法も同様に、触媒として銅−およびマンガン化合物を用いて行われる。金属の総量は、アルデヒド、酸および触媒からなる溶液の総重量を基準にして、10〜200ppmの範囲に及ぶ。マンガンと銅は、約3:1〜約1:1のモル比で使用される。この方法の欠点としては、蒸留装置の機械的な故障を招く、酸を蒸留によって精製する際に生じる銅の膜の形成が挙げられている。この問題を避けるために、酸素の存在下で蒸留を行うことが推奨されている。
【0006】
公知になったドイツ特許出願公開第2,604,545号明細書の対象は、一般式C H2n+1COOH (式中、nは2〜18の数を意味する)で表されるアルキルカルボン酸を、一般式C H2nのオレフィンのヒドロホルミル化(オキソ合成としても知られている)およびこのヒドロホルミル化中に生ずる反応混合物の直接酸化によって製造する方法である。これに関連して“直接”とは、ヒドロホルミル化混合物を前もって処理せずそして後酸化反応をロジウムの存在下に行うことを意味する。この公知の方法は、特に、C〜C16−脂肪酸の異性体混合物を製造するために利用される。原料のオレフィンとしては、好ましくは、プロペンおよびブテンのダイマーおよびトリマー、なかでもイソブテンの二量体(2,4,4−トリメチルペンテン−1)が使用される。この二段階方法の各々の反応の両方とも、すなわちヒドロホルミル化および酸化反応の両方とも、化合物の形のロジウムによって触媒される。それゆえ、ヒドロホルミル化生成物中の比較的高いロジウム含有量が、酸化反応に付される反応生成物中のロジウム濃度にとって決定的因子となる。プロセス全体の経済性を確保するためには、プロセスの最終生成物であるカルボン酸から適当な手段を用いてできるだけ完全に貴金属を回収する必要がある。更に、その酸化プロセスの間に存在するロジウム濃度では不所望な副反応が優先されることを否定し得ない。なぜならば、そのカルボン酸の収率はこのプロセスの工業的な利用には不十分だからである。
【0007】
ラーキン(LARKIB)は、J.Org.Chem.1990, 55, 1563 頁以降に、副反応を触媒し得る痕跡量の金属塩が反応混合物中に含まれるため、アルデヒドからカルボン酸への商業的に行われる酸化方法においては触媒の存在は必須と考えられることを記載している。金属塩の生成は、機械設備の金属製部分の腐食に起因するものである。触媒の機能は、腐食生成物の作用を相殺することである。
【0008】
ウルマンス・エンサイクロペディエ・デア・テクニッシェン・ヘミー(Ullmanns Encyklopadie der technischen Chemie)の第四版、1975以降、第9巻にも、酸化反応に使用する原料のアルデヒドに対する金属製汚染物の悪影響が繰り返し指摘されている。例えば、ブチルアルデヒド中に溶解した鉄塩およびコバルト塩は、酪酸へのその酸化反応に際して、増加した副生成物の生成を招き(上記引用文献中の第142 頁、左欄)、また、2−エチルヘキサン酸への2−エチルヘキサナルの酸化反応に際しては、原料のアルデヒドのヘプタンへの脱カルボニル化を重金属イオンが加速する(上記引用文献中の第144 頁、左欄)。
【0009】
触媒添加物の作用が酸化反応に使用されるアルデヒドの構造に左右されることが従来技術で指摘されている。所望のカルボン酸を高収率で且つ高純度で得るために、例えばドイツ特許第950,007号明細書から、α位で分岐されたアルデヒドの酸化はカルボン酸を僅かな量しか必要としないことが判っている。
【0010】
公開された特開昭53−105413号公報の教示によると、全反応系を基準にして0.01〜10重量%の量で使用されるリチウム−またはアルカリ土類金属化合物の存在下にリチウムまたはアルカリ土類金属化合物の存在下に、α−分岐した脂肪族カルボン酸を製造するためにα- 分枝した脂肪族アルデヒドを酸素で酸化する。
【0011】
フランス特許出願第2,769,624号明細書に記載の方法の重要なキーポイントは、低い反応温度、すなわち0〜25℃の温度を維持することである。この方法も同様に、助剤としてアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の存在を必要とする。これらの化合物が具体的にはどのような作用を示すか、すなわちこれらの化合物が、公知なように、反応の選択率を高めるだけか、もしくは選択された低い温度において、反応速度をも場合によっては向上し得るかどうかについては開示していない。
【0012】
従って、カルボニル炭素原子に隣接する炭素原子が分岐を有するα−分岐したアルデヒドを酸化する場合には、従来技術では選択率を向上させるために僅かな量のアルカリ金属を添加する。しかしながらこの種の添加物はその抑制作用のために反応時間の増加に結びついている。α−分岐したアルデヒドの中には、多量に2−エチルヘキサン酸に再転化される2−エチルヘキサナルは特に経済的に重要である。
【0013】
β位に、即ちカルボニル炭素原子の次にある1個の炭素原子に分岐を持つアルデヒドの酸化も同様に触媒の添加下に行うことができる。β−アルキル分岐した化合物を多量に含有する経済的に重要なアルデヒドは工業的に容易に入手し得るジイソブテン(2,4,4−トリメチルペンテン−1)のヒドロホルミル化によって得られる。ドイツ特許出願公開第2,604,545号明細書(A1)に従うロジウム存在下での酸化反応は、多量に(しばしばイソノナン酸とも称する)3,5,5−トリメチルヘキサン酸を含有する異性体C−脂肪酸の混合物をもたらす。アルカリ金属−またはアルカリ土類金属カルボキシレート類の存在下でのβ−アルキル分岐したアルデヒド、例えばイソバレルアルデヒドの酸化はドイツ特許出願公開第762,720号明細書(A1)から公知である。
【0014】
ドイツ特許第10,010,771号明細書の教示によれば、直鎖状アルデヒドを遷移金属またはそれの化合物の存在下に相応するカルボン酸に転化することができる。
【0015】
ドイツ特許第10,010,771号はアルカリ金属塩と遷移金属との混合物をα−分岐したアルデヒドとして2−メチルブタナルの酸化の際に使用することを同様に開示している。
【0016】
脂肪族の直鎖状アルデヒドおよびβ−アルキル分岐したアルデヒドを相応するカルボン酸に酸化するこれらの公知の接触的方法は、現代の工業的に利用される方法に求められる工業的および経済的要求を未だ十分には満足していない。遷移金属触媒を用いることが、選択率を低下させる不所望な副反応をしばしば生じさせ、結果として高い転化率にも係わらず所望のカルボン酸の収率が害される。しかしながらアルカリ金属−および/またはアルカリ土類金属炭酸塩の添加は確かに選択性を改善するが、転化率にマイナスの影響を及ぼす。
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第3,029,700号明細書
【特許文献2】米国特許第4,487,720号明細書
【特許文献3】ドイツ特許出願公開第2,604,545号明細書
【特許文献4】ドイツ特許第950,007号明細書
【特許文献5】フランス特許出願第2,769,624号明細書
【特許文献6】特開昭53−105413号公報
【特許文献7】ドイツ特許出願公開第2,604,545号明細書(A1)
【特許文献8】ドイツ特許出願公開第762,720号明細書(A1)
【特許文献9】ドイツ特許第10,010,771号明細書
【非特許文献1】J. Praktの“Chem. ”第14巻(1961)、第71-83頁
【非特許文献2】ラーキン(LARKIB)は、J.Org.Chem.1990, 55, 1563 頁
【非特許文献3】ウルマンス・エンサイクロペディエ・デア・テクニッシェン・ヘミー(Ullmanns Encyklopadie der technischen Chemie)の第四版、1975以降、第9巻
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
それ故に本発明の課題は、脂肪族の直鎖状アルデヒドおよびβ−アルキル分岐したアルデヒドを酸化する、上述の欠点を有さず且つアルデヒド高転化率のもとで所望のカルボン酸への高選択率をもたらす方法を提供することである。結果として相応するアルデヒドからの直鎖状カルボン酸およびβ−アルキル分岐したカルボン酸を高収率且つ高純度で製造することが切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この課題は、対応するアルデヒドを、酸素または含酸素ガス混合物と20〜100 ℃で酸化することによって5〜13個の炭素原子を有する直鎖状のまたはβ−アルキル分岐した脂肪族カルボン酸を製造する方法によって解決される。この方法は、使用するアルデヒド1モル当たり(アルカリ金属またはアルカリ土類金属として算出して)1ミリモル〜10ミリモルの量のアルカリ金属−またはアルカリ土類金属カルボキシレートまたはそれの混合物の存在下に且つ使用するアルデヒドを基準として0.1 〜5.0ppm の量の元素周期律表の第5〜11族の金属または対応する量のかゝる金属の化合物もしくはかゝる金属および/またはかゝる金属化合物の混合物の存在下に、上記アルデヒドの酸化を行うことを特徴としている。
【0019】
驚くべきことに僅かなアルカリ金属カルボキシレートまたはアルカリ土類金属カルボキシレートの存在下におよび僅かな量の選択された金属またはこれら金属の化合物の存在下に直鎖状のまたはβ−アルキル分岐した脂肪族アルデヒドと純粋酸素または酸素含有ガス混合物とを、高い選択率および同時に高い転化率で反応させて相応するカルボン酸とすることに成功した。
【0020】
この新規の方法の本質的構成要件はアルカリ金属−またはアルカリ土類金属カルボキシレートまたはそれらの混合物および触媒作用金属が酸化混合物中に同時に存在することである。アルカリ金属またはアルカリ土類金属カルボキシレートおよび触媒作用金属が酸化混合物中に同時に存在する場合に直鎖状脂肪族アルデヒドの酸化反応での選択率が高い転化率のもとで更に改善することができ、その結果、直鎖状脂肪族アルデヒドの酸化をドイツ特許第10,010,771号明細書(C1)に従い金属添加だけを行う方法に比較して全体としてより高い直鎖状脂肪族アルデヒド収率が観察されることが驚くべきことに判った。β−アルキル分岐したアルデヒドの酸化の場合にもアルデヒド転化率および所望のカルボン酸への選択率がドイツ特許第10,010,771号明細書(C1)の教示に比べて高められているので、本発明の方法はβ−アルキル分岐したアルデヒドの酸化の場合にも著しい収率増加をもたらす。
【0021】
1モルのアルデヒド当たりに使用されるアルカリ金属またはアルカリ土類金属カルボキシレートの使用量(アルカリ金属またはアルカリ土類金属として算出)はそれぞれ1ミリモル〜10ミリモルである。更に少ない添加量は効果がなく、1モルのアルデヒド当たりに10ミリモル(アルカリ金属またはアルカリ土類金属として算出)より多く添加した場合にはアルカリ金属またはアルカリ土類金属カルボキシレートを添加せずに行う方法の場合に観察される結果に相当している。
【0022】
添加したアルカリ金属またはアルカリ土類金属カルボキシレートまたはそれらの混合物の状態の総量は1モルのアルデヒドを基準として30ミリモルのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の最高総量値を超えるべきでない。
【0023】
特に高い収量は、1モルのアルデヒド当たり1〜8ミリモル、特に好ましくは1〜5ミリモルのアルカリ金属またはアルカリ土類金属カルボキシレート(アルカリ金属またはアルカリ土類金属として算出)を添加した場合に達成される。
【0024】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属カルボキシレートを一様の化合物として使用する必要はない。これら化合物の混合物並びにアルカリ金属またはアルカリ土類金属カルボキシレートの混合物を使用することも可能であるが、その際には酸化反応の際に生じるカルボン酸のカルボキシレートを使用するのが有利である。しかしながら一様な化合物、例えばカルボン酸リチウム、−カリウム、−ナトリウム、−マグネシウム、−カルシウムまたは−バリウム、例えばイソノナン酸カリウム、イソノナン酸ナトリウム、イソノナン酸カルシウム、イソノナン酸バリウム、ペンタン酸カリウム、ペンタン酸ナトリウム、ペンタン酸カルシウムまたはペンタン酸バリウムを使用するのが有利である。
【0025】
一般にアルカリ金属またはアルカリ土類金属カルボキシレートを含有する溶液はアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物を含有する水溶液を過剰の所望のカルボン酸で中和することによって製造しそしてこの溶液を酸化すべきアルデヒドに添加する。アルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物としては特に水酸化物、炭酸塩または炭酸水素塩が適している。
【0026】
反応条件のもとでカルボキシレートに転化されするアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物を添加することによって、アルカリ金属またはアルカリ土類金属カルボキシレートを反応混合物中で生成することも可能である。例えば本発明の方法においてはアルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物、−炭酸塩、−炭酸水素塩または−酸化物を使用する。その添加は固体状態でまたは水溶液として行う。
【0027】
触媒としては酸化混合物にアルカリ金属またはアルカリ土類金属カルボキシレートの他に本発明に従って(1985年度版IUPACリコメンデーション)の第5〜11族の金属の少なくとも1種類またはかゝる金属の化合物の少なくとも1種類の化合物を添加する。触媒として元素状の金属を使用する場合は、微細に分散された状態で反応混合物に加えることが推奨される。元素の形の金属の代わりに、この金属の化合物も触媒として使用することができる。その際、かゝる化合物の種類には何の制限も課せられない。しかし、可溶性でそれ故特に活性のある金属化合物を事前に形成させることによって反応開始の遅れを避けるために、特別な理由が無い限りは、最初から反応媒体中に可溶性である化合物が好ましい。
【0028】
非常に少ない量でも既に触媒作用を示す第5〜第11族の金属には、バナジウム、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銅、好ましくはクロム、鉄、ニッケル、ロジウム、および特に鉄およびロジウムが包含される。反応混合物中に可溶性の化合物としては、塩、特に有機酸の塩が使用され、その際、酸化反応の結果物である酸のカルボン酸塩が好ましい。本発明に従い使用される金属の他の好適な化合物は、錯体化合物、例えばアセチルアセトネート、金属カルボニル、ヒドリド金属カルボニル、並びにカルボニル化合物であり、これは、一酸化炭素および場合によっては水素の他に、更に配位子、例えば有機残基によって置換されたホスフィン、例えばアリールホスフィン、アルキルホスフィン、アリールアルキルホスフィンを含む。このような配位子の例の一つは、トリフェニルホスフィンである。
【0029】
触媒活性金属または触媒活性金属を含む化合物を純粋物質として使用する必要はない。それどころか、上記の金属または金属化合物の混合物、並びに金属と金属化合物よりなる混合物も触媒として使用することができる。
【0030】
本発明の方法において、金属と酸化すべきアルデヒドとの最大重量比を厳守するべきである。本発明によれば、この比率の上限は5ppm 、すなわちアルデヒド10 重量部当たり触媒金属5重量部である。アルデヒド10 重量部当たり、触媒金属0.2 〜3重量部、好ましくは触媒金属0.5 〜2重量部使用することが特に有効であることが実証されている。上に述べた金属触媒とアルデヒドとの間の比率は金属化合物の使用時にも有効であり、すなわち使用する化合物の量はそれの金属含有量から算出される。また、これと同じことが、様々な触媒活性金属または金属化合物の混合物並びに金属と金属化合物との混合物の使用時にも当てはまる。
【0031】
使用される金属量は工業的要求にとっても十分な反応速度を保証する。しかしながらこの量は不所望の副反応を生じさせず、結果としてアルデヒドを殆ど専らそれの相応するカルボン酸に転化する。更に使用される金属の量は、方法の経済性の観点からも、例えば種々の用途分野で要求されるカルボン酸の純度の観点でも反応生成物から回収することもあるいは除去することも必要ないほど僅かである。
【0032】
本発明の方法は、20〜100 ℃の温度範囲で行われる。好ましくは、20〜80℃、特に40〜80℃の温度で行う。その温度管理、すなわち一定かもしくは可変の温度管理は、原料の各々の要求や、反応の環境に合わせて適合させることができる。
【0033】
反応成分間の反応は好ましくは大気圧下に行われる。しかし、高められた圧力の使用も排除されない。通常は大気圧〜1.0 MPa 、好ましくは大気圧〜0.8MPaの範囲の圧力下に反応を行う。
【0034】
本発明の方法に従いアルデヒドをカルボン酸に転化するために必要とされる反応時間は、中でも、反応温度、原料の種類および反応成分間の量比に依存する。反応時間は通常は30分間〜20時間、特に2〜8時間である。
【0035】
該新規方法の重要な点は炭素原子数5〜13の直鎖状のまたはβ−アルキル分岐した脂肪族アルデヒドの酸化反応にある。β−アルキル分岐した脂肪族アルデヒドとはβ−アルキル分岐の他に別の側鎖基を炭素原子骨格に有するアルデヒドをも意味する。このアルデヒドの由来は、特定の製造方法に制限されない。入手の容易さから、オキソ合成によって即ち炭素原子数4〜12のオレフィンを一酸化炭素および水素と反応させることによって得られるアルデヒドが好ましい。この関係では、アルデヒドを得るために具体的にどのような態様のオキソ合成が利用されたか、すなわち反応が例えばコバルトまたはロジウムによって触媒されたかどうか、金属が単独でもしくは錯化剤と共に使用されたかどうかおよび触媒が反応混合物中に均一に溶解されたかまたは別個の不均一相を形成したかは重要ではない。
【0036】
本発明の方法は、ジイソブチレンを用いて実施されるオキソ合成の反応生成物からイソノナン酸を製造するのに特に適している。ジイソブチレンのオキソ合成によって工業的に製造できる反応生成物は主成分として3,5,5−トリメチルヘキサナル並びに少量の3,4,4−および3,4,5−トリメチルヘキサナルを含有している。更に、β位で分岐していない少量のアルデヒド、例えば2,5,5−トリメチルヘキサナル、4,5,5−トリメチルヘキサナルおよび6,6−ジメチルヘプタナルが存在している。本発明の方法に従う異性体ノナナルの工業的に入手可能な混合物の酸化は高い転化率のもとで同時にイソノナン酸を優れた選択率でもたらす。
【0037】
本発明の方法は同様にn−ペンタナル、n−ヘプタナル、n−ノナナル並びにイソバレルアルデヒドを酸化して相応するカルボン酸にするのに非常に適している。
【0038】
酸化剤としては本発明の方法に従って分子状酸素または分子酸素含有のガス混合物を使用する。このようなガス混合物の別の成分は不活性ガス、例えば窒素、希ガスおよび二酸化炭素である。酸素含有ガス混合物中の不活性成分の割合は、90容量%まで、特に30〜80容量%である。好ましい酸化剤は酸素または空気である。
【0039】
アルデヒドは、そのままで、または反応条件下に不活性な溶剤に溶解させて使用することができる。適当な溶剤の例は、ケトン、例えばアセトン、エステル、例えばエチルアセテート、炭化水素、例えばトルエンおよびニトロ炭化水素、例えばニトロベンゼンである。アルデヒドの濃度は、溶剤へのそれの溶解性によって制限される。
【0040】
本発明の方法は、バッチ式にも連続式にも行うことができる。未反応反応成分の回収は双方の場合において可能である。
【0041】
酸化反応の後に生じる粗酸混合物から通例の条件のもとでの蒸留によって純粋のカルボン酸を得る。アルカリ金属またはアルカリ土類金属カルボキシレートおよび触媒金属を含有する蒸留残さを分離しそして原料アルデヒドに、場合によっては新鮮なアルカリ金属またはアルカリ土類金属カルボキシレートまたは反応条件のもとでカルボキシレートに転化するアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物並びに触媒金属の添加後に戻してもよい。
【0042】
本発明の方法の一つの使用実施態様によれば、アルデヒドを触媒金属と一緒にアルカリ金属またはアルカリ土類金属カルボキシレートが存在するもとで適当な反応器、例えば、場合によっては充填材を装填した、ディストリビュータ・プレートを備えた管状反応器に供し、そして酸素または酸素含有ガス混合物を、触媒を溶解したまたは懸濁した状態で含むアルデヒド中に下から上方へと導通する。
【0043】
更に別の態様では、充填材を装填した灌水塔を反応器として使用する。充填材を介してアルカリ金属またはアルカリ土類金属カルボキシレートアルデヒド並びに触媒金属含有アルデヒドを滴り落とし、そしてこれと同時に並流でまたは向流で酸素または酸素含有ガス混合物を上記塔中に導入する。
【0044】
以下の実施例では、特許請求の範囲に記載の方法に従n−ペンタン酸およびイソノナン酸の製造方法を記載する。
【0045】
原料アルデヒドの反応は、本発明に従ってアルカリ金属またはアルカリ土類金属カルボキシレートおよび触媒としての周期律表の第5〜11族の金属またはかゝる金属の化合物の存在下に行われる。アルデヒドを如何なる添加物もなしに、アルカリ金属カルボキシレートだけを添加してまたは触媒金属だけを添加して酸化した各比較例の結果を実施例と対比する。
【0046】
各実験の結果は以下のパラメータによって報告する:
− アルデヒド転化率;
− 反応したアルデヒドをベースとして反応生成物におけるカルボン酸の割合で計算した選択率;
− カルボン酸の収率。
【0047】
勿論、新規の方法は以下に記載の実施例に限定されない。
【0048】
実施例:
n−ペンタナルの酸化:
[比較例1]:アルカリ金属および金属無添加
n−ペンタナルからn−ペンタン酸への液相酸化を触媒添加なしで、38mmの内径および150cmの長さを有するガラス製の気泡塔中で実施する。反応挙動次第で反応器を、熱交換器に連結された水循環路によってその壁を介して冷却または加熱し、こうして内部温度を一定に維持する。酸素は気泡塔に連結された、16〜40μmの最大孔幅を有したガラス製濾過フィルターを通して下から供給する。
【0049】
酸化反応において765.0gのn−ペンタナルおよび35.0gのn−ペンタン酸の混合物を使用する。ガスクロマトグラフィー分析(GC−分析)によるとアルデヒドは以下の組成を有している:
0.01%の初留成分
0.3%の2−/3−メチルブタナル
99.62%のn−ペンタナル
0.11%のn−ペンタノール
0.03%のペンタン酸
50℃に維持して6時間の酸化反応および使用したアルデヒドを基準とする理論値の全部で120%の酸素供給の後に、以下の結果が測定される:
GC−分析:
0.20%の初留成分
3.28%のn−ペンタナル
0.20%の2−/3−メチル酪酸
95.42%のn−ペンタン酸
0.90%の他の成分
n−ペンタナルの転化率は理論値の96.0%であり、n−ペンタン酸を生成する固有の選択率は理論値の99.0%である。
【0050】
これから95.0%の収率が算出される。酸化原料中に既に存在するカルボン酸の割合を算出結果に考慮した。
[比較例2]:金属無添加
この実験は、原料アルデヒド(765.0g)にn−ペンタン酸(29.5g)の他に、2.50gのn−ペンタン酸カリウム、5.47gのn−ペンタン酸および1.32gの水を含有する触媒溶液も添加することを除いて比較例1の条件のもとで実施する。n−ペンタナルとカリウムとのモル比は100:2である。
【0051】
50℃に維持して6時間の酸化反応および使用したアルデヒドを基準とする理論値の全部で120%の酸素供給の後に、以下の結果が測定される:
GC−分析:
0.12%の初留成分
3.97%のn−ペンタナル
0.16%の2−/3−メチル酪酸
95.28%のn−ペンタン酸
0.47%の他の成分
n−ペンタナルの転化率は理論値の95.1%であり、n−ペンタン酸を生成する固有の選択率は理論値の99.6%である。
【0052】
これから94.7%の収率が算出される。酸化原料中に既に存在するカルボン酸の割合を算出結果に考慮した。
[比較例3]:金属無添加
この実験は、原料アルデヒド(765.0g)にn−ペンタン酸(21.4g)の他に、6.22gのn−ペンタン酸カリウム、13.59gのn−ペンタン酸および3.29gの水を含有する触媒溶液も添加することを除いて比較例2を繰り返す。n−ペンタナルとカリウムとのモル比は100:5である。
【0053】
50℃に維持して6時間の酸化反応および使用したアルデヒドを基準とする理論値の全部で120%の酸素供給の後に、以下の結果が測定される:
GC−分析:
0.11%の初留成分
4.76%のn−ペンタナル
0.20%の2−/3−メチル酪酸
94.49%のn−ペンタン酸
0.44%の他の成分
n−ペンタナルの転化率は理論値の94.2%であり、n−ペンタン酸を生成する固有の選択率は理論値の99.6%である。
【0054】
これから93.8%の収率が算出される。酸化原料中に既に存在するカルボン酸の割合を算出結果に考慮した。
[比較例4]:アルカリ金属無添加
この実験は、原料アルデヒド(765.0g)にn−ペンタン酸(25.0g)の他に、触媒溶液として0.49mgのFeを含有する10.0gのn−ペンタン酸も添加することを除いて比較例1を繰り返す。鉄の添加量はアルデヒドを基準として0.63ppmである。
【0055】
50℃に維持して6時間の酸化反応および使用したアルデヒドを基準とする理論値の全部で120%の酸素供給の後に、以下の結果が測定される:
GC−分析:
0.47%の初留成分
0.82%のn−ペンタナル
0.20%の2−/3−メチル酪酸
97.22%のn−ペンタン酸
1.29%の他の成分
n−ペンタナルの転化率は理論値の99.0%であり、n−ペンタン酸を生成する固有の選択率は理論値の98.3%である。
【0056】
これから97.3%の収率が算出される。酸化原料中に既に存在するカルボン酸の割合を算出結果に考慮した。
[比較例5]:アルカリ金属無添加
この実験は、原料アルデヒド(765.0g)にn−ペンタン酸(15.0g)の他に、触媒溶液として0.97mgのFeを含有する20.0gのn−ペンタン酸も添加することを除いて比較例4を繰り返す。鉄の添加量はアルデヒドを基準として1.27ppmである。
【0057】
50℃に維持して6時間の酸化反応および使用したアルデヒドを基準とする理論値の全部で120%の酸素供給の後に、以下の結果が測定される:
GC−分析:
0.49%の初留成分
0.63%のn−ペンタナル
0.21%の2−/3−メチル酪酸
96.89%のn−ペンタン酸
1.78%の他の成分
n−ペンタナルの転化率は理論値の99.2%であり、n−ペンタン酸を生成する固有の選択率は理論値の97.8%である。
【0058】
これから97.0%の収率が算出される。酸化原料中に既に存在するカルボン酸の割合を算出結果に考慮した。
[実施例1]
【0059】
この実験は、原料アルデヒド(765.0g)にn−ペンタン酸(19.5g)の他に、二種類の触媒溶液を添加した。触媒溶液Aは2.50gのn−ペンタン酸カリウム、5.47gのn−ペンタン酸および1.32gの水を含有し、触媒溶液Bとしては0.49mgのFeを含有する10.0gのn−ペンタン酸を使用した。
【0060】
n−ペンタナルとカリウムとのモル比は1000:2であり、鉄添加量はアルデヒドを基準として0.63ppmである。
【0061】
50℃に維持して6時間の酸化反応および使用したアルデヒドを基準とする理論値の全部で120%の酸素供給の後に、以下の結果が測定される:
GC−分析:
0.16%の初留成分
0.74%のn−ペンタナル
0.21%の2−/3−メチル酪酸
98.22%のn−ペンタン酸
0.67%の他の成分
n−ペンタナルの転化率は理論値の99.1%であり、n−ペンタン酸を生成する固有の選択率は理論値の99.3%である。
【0062】
これから98.4%の収率が算出される。酸化原料中に既に存在するカルボン酸の割合を算出結果に考慮した。
[実施例2〜4]
実施例2〜4を、原料アルデヒド(765.0g)に異なる量の触媒溶液AおよびBを添加する点を相違させて実施例1を実施した。他の詳細は表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
イソノナナルの酸化:
[比較例6]:アルカリ金属および金属無添加
イソノナナルからイソノナン酸への液相酸化を触媒添加なしで、38mmの内径および150cmの長さを有する気泡塔中で実施する。反応挙動次第で反応器を、熱交換器に連結された水循環路によってその壁を介して冷却または加熱し、こうして内部温度を一定に維持する。酸素は気泡塔に連結された、16〜40μmの最大孔幅を有したガラス製濾過フィルターを通して下から供給する。
【0065】
酸化反応において700.0gのイソノナナルおよび100.0gのイソノナン酸の混合物を使用する。ガスクロマトグラフィー分析(GC−分析)によるとアルデヒドは以下の組成を有している:
0.16%の初留成分
94.41%の3,5,5−トリメチルヘキサナル
5.24%の異性体C−アルデヒド
0.04%の3,5,5−トリメチルヘキサン酸
0.15%のその他成分
60℃に維持して6時間の酸化反応および20L/時の酸素の供給後に、以下の結果が測定される:
GC−分析:
0.58%の初留成分
1.74%の3,5,5−トリメチルヘキサナル
0.07%の異性体C−アルデヒド
90.81%の3,5,5−トリメチルヘキサン酸
5.35%の異性体C−酸
1.45%の他の成分
(主成分の3,5,5−トリメチルヘキサナルを基準とする)転化率は理論値の97.7%であり、3,5,5−トリメチルヘキサン酸を生成する固有の選択率は理論値の97.7%である。
【0066】
これから95.5%の収率が算出される。酸化原料中に既に存在するカルボン酸の割合を算出結果に考慮した。
[比較例7]:触媒金属無添加
この実験は、使用アルデヒド(700.0g)にイソノナン酸(88.3g)の他に4.82gのイソノナン酸カリウム、11.66gのイソノナン酸および1.82gの水を含有する触媒溶液も添加することを除いて比較例6の条件で実施した。n−ペンタナルとカリウムとのモル比は1000:5である。
【0067】
60℃に維持して6時間の酸化反応および20L/時の酸素の供給後に、以下の結果が測定された:
GC−分析:
0.28%の初留成分
0.97%の3,5,5−トリメチルヘキサナル
0.10%の異性体C−アルデヒド
92.54%の3,5,5−トリメチルヘキサン酸
5.69%の異性体C−酸
0.42%の他の成分
(主成分の3,5,5−トリメチルヘキサナルを基準とする)転化率は理論値の98.7%であり、3,5,5−トリメチルヘキサン酸を生成する固有の選択率は理論値の98.9%である。
【0068】
これから97.6%の収率が算出される。酸化原料中に既に存在するカルボン酸の割合を算出結果に考慮した。
[比較例8]:アルカリ金属無添加
この実験は、使用アルデヒド(700.0g)にイソノナン酸(11.7g)の他に触媒溶液として0.51mgのFeを含有する88.3gのイソノナン酸も添加することを除いて比較例6の条件で実施した。アルデヒドを基準として鉄使用量は0.73ppmである。
【0069】
60℃に維持して6時間の酸化反応および20L/時の酸素の供給後に、以下の結果が測定された:
GC−分析:
0.95%の初留成分
0.56%の3,5,5−トリメチルヘキサナル
0.13%の異性体C−アルデヒド
91.46%の3,5,5−トリメチルヘキサン酸
5.37%の異性体C−酸
1.53%の他の成分
(主成分の3,5,5−トリメチルヘキサナルを基準とする)転化率は理論値の99.3%であり、3,5,5−トリメチルヘキサン酸を生成する固有の選択率は理論値の97.1%である。
【0070】
これから96.4%の収率が算出される。酸化原料中に既に存在するカルボン酸の割合を算出結果に考慮した。
[実施例5]
【0071】
この実験は、使用アルデヒド(700.0g)に二種類の触媒溶液も添加する点だけ相違させて比較例6の条件で実施する。触媒Aは4.82gのイソノナン酸カリウム、11.66gのイソノナン酸および1.82gの水を含有し、触媒溶液Bとして0.51mgのFeを含有する88.3gのイソノナン酸を使用する。
【0072】
イソノナナルとカリウムとのモル比は1000:5であり、アルデヒドを基準として鉄使用量は0.73ppmである。
【0073】
60℃に維持して6時間の酸化反応および20L/時の酸素の供給後に、以下の結果が測定された:
GC−分析:
0.38%の初留成分
0.22%の3,5,5−トリメチルヘキサナル
0.08%の異性体C−アルデヒド
93.21%の3,5,5−トリメチルヘキサン酸
5.66%の異性体C−酸
0.45%の他の成分
(主成分の3,5,5−トリメチルヘキサナルを基準とする)転化率は理論値の99.7%であり、3,5,5−トリメチルヘキサン酸を生成する固有の選択率は理論値の98.8%である。
【0074】
これから98.5%の収率が算出される。酸化原料中に既に存在するカルボン酸の割合を算出結果に考慮した。
【0075】
以下の表2および3に比較例の結果および本発明の実施例の結果を総括掲載する。
【0076】
【表2】

【0077】
【表3】

【0078】
比較例および実施例の比較で判る通り、酸化反応をアルカリ金属またはアルカリ土類金属カルボキシレートおよび触媒作用金属の存在下で実施した場合に、直鎖状のまたはβ−アルキル分岐した脂肪族アルデヒドを相応するカルボン酸に酸化する反応において転化挙動は選択率の向上と同時に改善されることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応するアルデヒドを、酸素または含酸素ガス混合物と20〜100 ℃で酸化することによって5〜13個の炭素原子を有する直鎖状のまたはβ−アルキル分岐した脂肪族カルボン酸を製造する方法において、使用するアルデヒド1モル当たり(アルカリ金属またはアルカリ土類金属として算出して)1ミリモル〜10ミリモルの量のアルカリ金属−またはアルカリ土類金属カルボキシレートまたはそれの混合物の存在下に且つ使用するアルデヒドを基準として0.1 〜5.0ppm の量の元素周期律表の第5〜11族の金属または対応する量のかゝる金属の化合物もしくはかゝる金属および/またはかゝる金属化合物の混合物の存在下に、上記アルデヒドの酸化を行うことを特徴とする上記方法。
【請求項2】
アルデヒドの酸化を、使用するアルデヒド1モルを基準にして1〜8ミリモル 、好ましくは1〜5ミリモル (アルカリ金属またはアルカリ土類金属として算出)のアルカリ金属−またはアルカリ土類金属カルボキシレートまたはそれの混合物の存在下におよび使用するアルデヒドを基準として0.2 〜3ppm,好ましくは0.5〜2ppm の元素周期律表第5〜11族の金属または対応する量のかゝる金属の化合物または混合物および/または金属化合物の存在下で行うことを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項3】
アルカリ金属カルボキシレートとして炭酸リチウム、ナトリウムまたはカリウムを使用しそしてアルカリ土類金属カルボキシレートとして炭酸マグネシウム、カルシウムおよびバリウムを使用する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
アルカリ金属カルボキシレートまたはアルカリ土類金属カルボキシレートが使用されるアルデヒドの酸化反応の結果物として生じるカルボン酸塩である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
元素周期律表第5〜11族の金属が、バナジウム、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウムまたは銅、好ましくはクロム、鉄、ニッケル、ロジウム、特に鉄およびロジウムであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
金属化合物が、次の金属、すなわちバナジウム、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銅、好ましくはクロム、鉄、ニッケル、ロジウム、特に鉄およびロジウムから誘導されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
金属化合物が、カルボキシレート、アセチルアセトネートまたはカルボニル化合物であることを特徴とする、請求項1〜6の一つまたはそれ以上の方法。
【請求項8】
金属カルボキシレートが、使用したアルデヒドの酸化反応の結果物として生ずるカルボン酸の塩であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
酸化反応を、20〜80℃、好ましくは40〜80℃の範囲の温度において行うことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
酸化反応を、大気圧〜1.0MPa、好ましくは大気圧〜0.8MPaの範囲の圧力下に行うことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
酸素含有ガス混合物が、90容量%まで、特に30〜80容量%の割合で不活性成分を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一つに記載の方法。

【公開番号】特開2006−143717(P2006−143717A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328995(P2005−328995)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(398010667)セラニーズ・ケミカルズ・ヨーロッパ・ゲゼルシヤフト・ミト・ベシユレンクテル・ハフツング (11)
【Fターム(参考)】