真空弁
【課題】ベローズの耐久性を向上させうる真空弁を提供する。
【解決手段】真空弁1において、第1ポート7と第2ポート8との間に設けられた弁座9に弁体10を当接又は離間させる弁部2と、操作流体の圧力変動によってピストン22に与える圧力を変動させ、弁部2に駆動力を与えるアクチュエータ部3と、弁体10の直線往復運動に従って伸縮するベローズ31と、を設け、操作流体が供給されるオリフィス24の有効断面積によって、弁体10及びピストン22の動作速度が調整され、ベローズ31の損傷が防止されるようにする。
【解決手段】真空弁1において、第1ポート7と第2ポート8との間に設けられた弁座9に弁体10を当接又は離間させる弁部2と、操作流体の圧力変動によってピストン22に与える圧力を変動させ、弁部2に駆動力を与えるアクチュエータ部3と、弁体10の直線往復運動に従って伸縮するベローズ31と、を設け、操作流体が供給されるオリフィス24の有効断面積によって、弁体10及びピストン22の動作速度が調整され、ベローズ31の損傷が防止されるようにする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベローズを伸縮させながら弁の開閉を行う真空弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、半導体製造装置のCVD装置においては、真空容器である反応室内のウエハに対して、反応室の入口から薄膜材料を構成する元素からなる材料ガスを供給するとともに、反応室の出口から真空ポンプで排気することによって、反応室内を真空状態に保つことが行われている。材料ガスの排気速度は、例えばバタフライ式比例弁によって制御されるが、バタフライ式比例弁は配管を完全に遮断できない。そのため、バタフライ式比例弁と直列にON−OFF式の真空弁が配置され、配管内の流体の完全遮断を行う。
【0003】
真空弁の一例としては、例えば、特許文献1に記載するものがある。特許文献1に記載する真空弁の断面図を図15に示す。
図15に示す真空弁100は、弁部101にアクチュエータ部102の駆動力を与えて弁開閉動作を行う。アクチュエータ部102は、シリンダ110に摺動可能に装填されるピストン103に出力軸104を連結し、その出力軸104をシリンダ110のボス111に貫き通して軸線方向にガイドしている。出力軸104の先端部は、ボス部111から弁部101側に突き出している。
【0004】
弁部101は、弁ボディ112内に突き出す出力軸104の先端部に弁体105を固設し、その弁体105が当接又は離間する弁座107を、弁ボディ112の第1ポート113と第2ポート114との間に設けている。弁体105は、圧縮ばね115により弁座方向に常時付勢されている。ベローズ108は、金属製のものであり、圧縮ばね115と出力軸104を覆うように弁ボディ112内に伸縮自在に配置されている。
【0005】
このような真空弁100は、ピストン室109を加圧して圧縮ばね115の付勢力に抗してピストン103を図中上向きに移動させると、弁体105が弁座107から離間して第1ポート113と第2ポート114とを連通させる。
一方、ピストン室109の加圧を停止すると、圧縮ばね115の付勢力でピストン103が図中下向きに移動して弁体105を弁座107に当接させ、第1ポート113と第2ポート114との間を完全遮断する。
このように弁開閉動作を行う場合、ベローズ108が弁体105の移動に従って伸縮し、ベローズ108の内部と外部とを気密に区画するので、出力軸104の摺動部等から発生するパーティクルが流路内に漏れない。
【0006】
【特許文献1】特開2003−83467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の真空弁100は、長期間使用していると、ベローズ108が破損し、流路内にパーティクルが漏れる不具合が生じていた。この破壊は、弁閉時に弁体105が弁座107にぶつかる衝撃によって生じるものと、従来は考えられていた。
【0008】
発明者らは、ベローズ108の耐久試験を繰り返し実施したところ、ベローズ108の殆どが、一定の位置からクラックが入り、破壊される特性を発見した。更に、発明者らは、弁開時に弁体105がシリンダ110のボス111にぶつかるときの衝撃でベローズ108にクラックが入り、ベローズ108が破壊されることを発見した。
【0009】
そこで、発明者らはこの原因を次のように考えた。
ベローズ108は、弁体105の動作に応じて自由に伸縮できるように弁部101内に浮動状態で保持されている。この状態では、弁体105がストロークエンドまで上昇してボス111の下端部に衝突すると、その衝撃が、シリンダ110からベローズ108に伝達される一方、弁体105側からベローズ108に伝達される。このようにベローズ108に伝達される2つの衝撃は、ベローズ108に対して逆向きに作用してベローズ108を異方向に振動させ、その振動に対する内部応力が一定の位置で干渉し、その干渉部分に応力が集中すると考えられる。応力集中は、弁体105がパイプ部材106に衝突する度に同じ場所に発生し、ベローズ108は、一定の位置が他の部分より速く損傷するものと考えられる。
【0010】
上記原因に基づけば、弁体105が弁開動作を始めるときの「動作速度」と、弁体105がボス111に衝突したときに縮んだ状態のベローズ108に伝達される「衝撃加速度」を調整すれば、ベローズ108の耐久性を向上させ得ると考えられる。そこで、発明者らは、「動作速度」と「衝撃加速度」を変えて真空弁100の寿命試験を行った。
【0011】
寿命試験は、同じ種類のベローズ・同じ内部構造で寿命試験を実施したときに目標寿命回数に到達するかどうかを調べることにより行った。尚、「動作速度」は、弁ボディ112の内壁に取り付けた速度センサによって測定し、「衝撃加速度」は、弁体105に取り付けた加速度センサによって測定した。ベローズの種類と内部構造が異なる19種類の真空弁について寿命試験を行い、その測定結果を図16に示す。
【0012】
寿命が長いものと短いものとの境界線をとると、図16の斜線部Sの範囲を示すようになる。
【0013】
この試験結果より、金属ベローズを備える真空弁は、「動作速度」が30mm/s以上220mm/s以下であって、且つ、「衝撃加速度」が図16の斜線部Sの範囲内にある場合に、ベローズ108にクラックが入り難くなることが判明した。「動作速度」が220mm/sを超えた場合、それに応じて「衝撃加速度」が大きくなるため、ベローズ108にクラックが入りやすくなると考えられる。この考えに因れば、「動作速度」を小さくすれば「衝撃加速度」が小さくなって、ベローズ108にクラックが入りにくくなると考えられる。ところが実際には、図16に示すように、「動作速度」が30mm/sより遅く、「衝撃加速度」が小さい場合でも、ベローズ16にクラックが入ることが判明した。
【0014】
以上の試験結果より、発明者らは、同一ストロークの真空弁100について、「動作速度」が遅すぎても、速すぎても、ベローズ108の耐久性が劣ることを発見した。また、発明者らは、「動作速度」が速くても、「衝撃加速度」を小さくできれば、ベローズ108の耐久性を向上させ得ることを発見した。よって、「動作速度」を速くしつつ、「衝撃加速度」を小さくする対策を真空弁100に講じれば、ベローズ108の寿命を長くして、真空弁100の耐久性を向上させることができる。
【0015】
尚、真空弁の種類によっては、ピストンがピストン室内壁と衝突するものがある。この種の真空弁も、ベローズ108が上記と同様にクラックが入って破損することを発明者らは、耐久試験を実施して確認している。よって、この種の真空弁にも、「動作速度」を速くしつつ、「衝撃加速度」を小さくする対策を講じれば、ベローズ108の寿命を長くして、真空弁100の耐久性を向上させることができる。
【0016】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、ベローズの耐久性を向上させうる真空弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係る真空弁は次のような構成を有している。
(1)第1ポートと第2ポートとの間に設けられた弁座に弁体を当接又は離間させる弁部と、操作流体の圧力変動によってピストンに与える圧力を変動させ、前記弁部に駆動力を与えるアクチュエータ部と、前記弁体の直線往復運動に従って伸縮するベローズと、を有し、前記操作流体が供給されるオリフィスの有効断面積によって、前記弁体及び前記ピストンの動作速度が調整され、前記ベローズの損傷を防止した真空弁である。
【0018】
(2)第1ポートと第2ポートとの間に弁座が設けられた弁本体と、前記弁座に当接又は離間するものであって、全開方向に移動した場合に前記弁本体に係止されて停止する弁体と、前記弁体に連結する出力軸を介して前記弁体に駆動力を与えるアクチュエータ部と、前記出力軸を覆うように前記弁本体内に伸縮自在に配置されたベローズと、前記弁体が前記弁本体に係止される場合の衝撃を緩和する緩衝部材と、を有し、前記弁体が前記弁本体に係止されるときの衝撃加速度を前記緩衝部材によって低減し、前記ベローズの損傷を防止した真空弁である。
【0019】
(3)第1ポートと第2ポートとの間に弁座が設けられた弁本体と、前記弁座に当接又は離間する弁体と、ピストン室に摺動自在に装填されたピストンに出力軸を一体的に設け、前記出力軸に前記弁体を連結し、前記ピストンに与える圧力を変動させることにより前記弁体に駆動力を与えるアクチュエータ部と、前記出力軸を覆うように前記弁本体内に伸縮自在に配置されたベローズと、前記ピストン又は前記出力軸が軸方向に移動して前記ピストン室の内壁に係止される場合の衝撃を緩和する緩衝機構と、を有し、前記ピストン又は前記出力軸が前記ピストン室の内壁に係止されるときの衝撃加速度を前記緩衝機構によって低減し、前記ベローズの損傷を防止した真空弁である。
【発明の効果】
【0020】
上記(1)に記載の発明は、操作流体が供給されるオリフィスの有効断面積によって、弁体及びピストンの動作速度が調整され、ベローズの損傷が防止されるので、ベローズを長寿命化して、真空弁の耐久性を向上させることができる。
【0021】
尚、ピストンで仕切られたピストン室の一次室と二次室との内圧を調整してピストンを駆動させるために、一次室に通じる排気ポートと、二次室に通じる操作ポートとを有する場合には、弁体又はピストンの弁開時の動作速度と弁閉時の動作速度を、ベローズの損傷を防止する動作速度範囲内にそれぞれ調整するように、操作ポートに連通するオリフィスの有効断面積と排気ポートに連通する排気側オリフィスの有効断面積をそれぞれ調整することが望ましい。これによれば、弁閉時と弁開時の動作速度をベローズの損傷を防止するように調整し、ベローズをより一層長寿命化できる。
【0022】
また、弁体及びピストンの動作速度は、同じ種類のベローズ・同じ内部構造で寿命試験を実施したときに目標寿命回数に達成した割合(寿命達成率)が100%になる動作速度にすることが望ましい。これによれば、ベローズの目標寿命回数を達成するように、真空弁の耐久性を確実に向上させることができる。具体的には例えば、操作ポートの有効断面積は、動作速度が30mm/s〜220mm/sになるように調整されることが望ましい。
【0023】
上記(2)に記載の発明は、弁体が弁本体に係止されるときの衝撃加速度を緩衝部材によって低減し、ベローズの損傷を防止するので、ベローズを長寿命化して、真空弁の耐久性を向上させることができる。
【0024】
尚、緩衝部材は、硬度の高いゴムや樹脂を材質とするOリングや、弾性力の高いゴムを材質とするゴムエアクッション、低反発衝撃吸収材、例えばαゲル(株式会社ジェルテックの登録商標)、板ばね、スプリングなど、自身の弾性力で衝撃を緩和できるものであればよい。
また、衝撃加速度は、同じ種類のベローズ・同じ内部構造で寿命試験を実施したときに目標寿命回数に達成した割合(寿命達成率)が100%になる衝撃加速度にすることが望ましい。これによれば、ベローズの目標寿命回数を達成するように、真空弁の耐久性を確実に向上させることができる。具体的には例えば、緩衝部材は、動作速度が30mm/s〜220mm/sのときに、衝撃加速度を図16の斜線部Sの範囲内にするものが望ましい。
【0025】
上記(3)に記載の発明は、ピストン又は出力軸がピストン室の内壁に係止されるときの衝撃加速度を緩衝機構によって低減し、ベローズの損傷を防止するので、ベローズを長寿命化して、真空弁の耐久性を向上させることができる。
【0026】
尚、緩衝機構は、硬度の高いゴムや樹脂を材質とするOリングや、弾性力の高いゴムを材質とするゴムエアクッション、低反発衝撃吸収材、例えばαゲル(株式会社ジェルテックの登録商標)、板ばね、スプリングなど、機械的に衝撃を緩和するものの他、スピードコントローラや排気制御装置などによってピストン室の内圧を調整し、ピストン室に充填されたエアをエアクッションとして機能させるものも含む。
また、衝撃加速度は、同じ種類のベローズ・同じ内部構造で寿命試験を実施したときに目標寿命回数に達成した割合(寿命達成率)が100%になる衝撃加速度にすることが望ましい。これによれば、ベローズの目標寿命回数を達成し、真空弁の耐久性を確実に向上させることができる。具体的には例えば、緩衝機構は、動作速度が30mm/s〜220mm/sのときに、衝撃加速度を図16の斜線部Sの範囲内にするものが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明に係る真空弁の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る真空弁1の断面図であって、弁閉状態を示す。図2は、第1実施形態に係る真空弁1の断面図であって、全開状態を示す。
図1及び図2に示す真空弁1は、従来技術と同様、半導体製造装置に設けられた反応室と真空ポンプとの間にバタフライ式比例弁と共に配置される。真空弁1は、ベローズ31を伸縮させながら弁開閉を行うON−OFF式遮断弁であって、反応室からガスを排出する配管の開放と遮断を制御する。真空弁1は、弁部2にアクチュエータ部3の駆動力を与えて弁開閉を行う。
【0029】
弁部2は、「弁本体」に内蔵される。「弁本体」は、第1ポート7と第2ポート8との間に弁座9を設けた弁室5を形成するものであり、本実施形態では、弁ボディ4と第2閉鎖プレート20とパイプ部材28によって構成されている。弁ボディ4は、剛性及び耐圧性を確保するためにステンレスや炭素鋼などの金属を材質とする。弁ボディ4は、第2閉鎖プレート20に塞がれて弁室5を形成するための中空部6を備える。中空部6には、弁ボディ4の側面に開口する第1ポート7が連通すると共に、弁ボディ4の図中下面に開口する第2ポート8が連通している。弁ボディ4は、第2ポート8が中空部6に開口する開口部の周りに設けられた平坦面により弁座9が構成されている。弁座9には、弁体10が当接又は離間する。
【0030】
弁体10は、固定プレート11と支持プレート12との間に形成されたアリ溝にOリング13を装着して保持している。固定プレート11と支持プレート12は、剛性を確保するためにステンレスや炭素鋼などの金属を材質とする。Oリング13は、弁座9に密着してシール力を発揮するためにゴム等の弾性材料を材質とする。弁体10は、パイプ部材28の図中下端部に係止されて図中上方向の移動を制限される。そのため、固定プレート11には、弁体10がパイプ部材28に係止される場合の衝撃を緩和するための緩衝部材14が、パイプ部材28の図中下端部に対応する位置に取り付けられている。
【0031】
緩衝部材14は、図2に示す弁の全開時に弁体10とパイプ部材28との間に僅かな隙間を空けた状態で弁体10を停止させるために、硬度の高いゴムや樹脂などの弾性材料を材質とし、一端が固定プレート11の図中上側面から突出するように設けられている。尚、第1実施形態では、緩衝部材14には硬度90のウレタンゴムを材質とするものを使用する。
【0032】
図3は、図1に示す緩衝部材14の平面図である。図4は、図3のA−A断面図である。
緩衝部材14は、環状をなし、断面が略矩形状をなす。緩衝部材14の内周面には、環状凸部15が中心部に向かって延びるように設けられている。
【0033】
図1及び図2に示すように、固定プレート11の上端面には、緩衝部材14を装着するための装着溝16が環状に形成されている。装着溝16の内側側面には、緩衝部材14の環状凸部15を嵌め込むための係合溝17が、装着溝16の開口部より奥側に設けられている。
【0034】
緩衝部材14は、環状凸部15を弾性変形させながら装着溝16に押し込まれ、環状凸部15が係合溝17の位置に到達すると、環状凸部15を復元させて係合溝17に係合させる。この環状凸部15と係合溝17との係合関係により、真空弁1が弁開閉動作を行う場合に弁体10に振動が生じても、緩衝部材14が固定プレート11から脱落しない。
【0035】
一方、アクチュエータ部3は、弁ボディ4に連結されるシリンダボディ18に内蔵される。シリンダボディ18は、耐圧性を確保するためにステンレスや炭素鋼などの金属を材質とする。シリンダボディ18は、上下に開口する筒状をなす。シリンダボディ18は、上側開口部が金属製の第1閉鎖プレート19に塞がれ、下側開口部が金属製の第2閉鎖プレート20に塞がれることによって、ピストン室21を形成している。
【0036】
ピストン室21は、シリンダボディ18に摺動可能に装填されたピストン22によって一次室21aと二次室21bに仕切られている。ピストン22は、耐圧性と剛性を確保するために金属を材質とし、ゴムや樹脂などの弾性材料からなるシール部材23が外周面に装着されている。そのため、ピストン室21は、ピストン22によって一次室21aと二次室21bとに気密に区画されている。一次室21aは、図示しない開口部を介して大気開放されている。二次室21bは、シリンダボディ18に開設されたオリフィス24を介して操作ポート25に連通している。第1実施形態では、オリフィス24は断面が円形状に形成されている。
【0037】
ピストン22の中心部には、図中下側から図中上側に金属製の出力軸26が貫き通されている。出力軸26は、ピストン22の図中上側に突き出した部分に金属製の固定ナット27を締め付けられてピストン22と一体化されている。尚、第1実施形態では、固定ナット27は出力軸26の一部を構成するものとする。出力軸26は、第2閉鎖プレート20とパイプ部材28に摺動自在に挿通され、先端部が弁室5内に突き出している。
【0038】
パイプ部材28は、弁体10の全開位置を決めるように弁室5内に下端部が配置されている。出力軸26は、パイプ部材28の下端部から進退可能に突出し、先端部が弁体10の中心部に貫き通されて取付ナット29を締め付けられ、弁体10と一体化されている。よって、ピストン22と弁体10とは、出力軸26を介して一体化され、一体的に直線往復運動する。
【0039】
弁体10とパイプ部材28との間には、復帰ばね30が縮設され、弁体10を弁座9側に向かって押し下げている。この押圧力によって、弁体10がOリング13を押し潰すように弁座9に押し付けられ、シール力を発生する。復帰ばね30の弾性力は、弁体10から出力軸26を介してピストン22へ伝達され、ピストン22に図中下向きの力を与える。
【0040】
出力軸26とパイプ部材28と復帰ばね30は、ベローズ31によって覆われ、摺動部等から発生するパーティクルが弁室5内に漏れないようにしている。ベローズ31は、ステンレス等の金属を材質とし、弁室5内に伸縮自在に配設されている。ベローズ31は、上端部が環状の保持部材32に溶接され、その保持部材32を弁ボディ4とシリンダボディ18とに嵌め合わせることによって弁ボディ4及びシリンダボディ18に対して位置決めされている。ベローズ31の下端部は、復帰ばね30の外側において固定プレート11に溶接されている。
【0041】
上記構成を有する真空弁1は、例えば、第1ポート7が真空ポンプに接続され、第2ポート8が真空容器に接続される。そして、操作ポート25に図示しない操作流体制御装置が接続される。
【0042】
操作ポート25に操作流体を供給しないときには、図1に示すように、復帰ばね30の弾性力によって弁体10が弁座9に当接し、第1ポート7と第2ポート8との間を遮断する。そのため、第2ポート8から第1ポート7へと流体が流れない。よって、真空容器は真空引きされない。
【0043】
操作ポート25に操作流体を供給し、二次室21bの内圧が復帰ばね30の弾性力に打ち勝つと、図2に示すように、ピストン22が図中上向きに移動して弁体10を弁座9から離間させ、全開位置まで移動させる。これにより、第1ポート7と第2ポート8とが連通し、第2ポート8から第1ポート7へ流体が流れる。よって、真空容器は真空ポンプのポンプ動作によって真空引きされる。
【0044】
その後、二次室21bの操作流体を排気し、復帰ばね30の弾性力が二次室21bの内圧に打ち勝つと、弁体10が復帰バネ30に付勢されて下降し、図1に示すように弁座9に当接する。そのため、第1ポート7と第2ポート8との間が再び遮断され、流体が流れなくなる。よって、真空容器は真空引きされなくなる。
【0045】
ところで、上記課題で記載したように、発明者らは、動作速度を速くしつつ、衝撃加速度を小さくする対策を真空弁に講じることにより、ベローズを長寿命化して、真空弁の耐久性を向上させうることを発見した。発明者らは、オリフィス24の有効断面積によって弁体10の動作速度を適正値に調整し、緩衝部材14によって弁体10がパイプ部材28に係止されるときの衝撃加速度を適正値に調整できることに気付いた。これらについて以下に具体例を挙げて説明する。
【0046】
例えば、図16に示すように、動作速度を30mm/s〜220mm/sに設定すると、ベローズの寿命を長くすることができる。そこで、発明者らは、同一ベローズ・異なる内部構造の真空弁サンプルを2つ用いて、断面円形状をなすオリフィス24のオリフィス径と動作速度との関係を調べた。その調査結果を図5に示す。
【0047】
例えば、図5に示すように、サンプル1は、オリフィス径を0.8mmにすると、動作速度を約28mm/sに調整でき、オリフィス径を1.3mmにすれば、動作速度を約100mm/sに調整でき、オリフィス径を2.4mmにすれば、動作速度を約220mm/sに調整できた。
また、サンプル2は、オリフィス径を0.8mmにすれば、動作速度を約43mm/sに調整でき、オリフィス径を1.0mmにすれば、動作速度を約68mm/sに調整でき、オリフィス径を1.3mmにすれば、動作速度を約112mm/sに調整できた。
【0048】
この試験結果によれば、内部構造が異なるサンプル1,2は、何れもオリフィス径と動作速度との間に正の相関関係が認められた。よって、真空弁は、オリフィス24のオリフィス径すなわち有効断面積を調節すれば、動作速度を任意に設定できることが判明した。
【0049】
更に、発明者らは、動作速度がベローズ9の寿命に与える影響を調べるために、寿命試験を実施した。寿命試験は、上述の従来技術と同様であって、同じ種類のベローズ・同じ内部構造で寿命試験を実施したときに目標寿命回数に達成した割合を調べることにより行った。図6に、寿命試験の結果を示す。
例えば、図6に示すように、動作速度が220mm/sを超えて速すぎると、寿命達成率が0%と低い。この原因は、弁体10の動作ストロークが短いので、弁体10の動作速度が速いと、急加速したまま弁体10がパイプ部材28にぶつかり、その強い衝撃がベローズ31に伝達されてベローズ31にクラックが入りやすくなったり、ベローズ31が破損しやすくなるためと考えられる。
また、動作速度が、30mm/s未満と遅くても、寿命達成率が0%と低くなることがあった。一般に、動作速度が遅ければ衝撃加速度が小さくなるものと考えられるため、動作速度が遅すぎても寿命達成率が低いという試験結果の原因は、不明である。
また、動作速度が40mm/s前後と低速であっても、内部構造の違いによって寿命達成率が異なることがあった。
【0050】
この試験結果より、真空弁の有効断面積は、真空弁のピストン径や真空弁に与える操作圧などの真空弁の内部構造とバランスが良く、高い寿命達成率が得られるように、決定する必要があることが判明した。
尚、有効断面積は、応答性を良好にするために、高い寿命達成率が得られる範囲で動作速度を速くするように設定することが望ましい。
【0051】
有効断面積は下記の計算式で求められる。
動作速度Vは、数式1より求められる。
【0052】
【数1】
【0053】
そこで、動作速度Vが、所定の動作速度範囲(寿命達成率100%を達成できる動作速度範囲、例えば、図16では30mm/s〜220mm/s)になる動作時間tを数式1より算出する。
ここで、動作時間tは、一般的に、弁体10が動き始めるまでの時間t1と、弁体10が加速する時間t2と、弁体10が等速で動いたときの時間t3とを合算して求められるが、真空弁1では、弁体10の動作ストロークが短いため(例えば15mm)、動作速度tを弁体10が加速する時間t2と同視することができる。弁体10が加速する時間t2は、数式2より求められる。
【0054】
【数2】
【0055】
数式1より求めた動作時間tを数式2の弁体10が加速する時間t2に当てはめ、真空弁1の設計値を数式2の負荷F(N)、シリンダボディ18の摩擦力f(N)、ピストン22の給気側受圧面積A1(mm2)、操作ポート25に供給する操作流体の給気圧力(MPa)、負荷の質量M(kg)、弁体10の動作ストローク(mm)を代入すれば、操作ポート25側のオリフィス24の有効断面積が算出される。
【0056】
図1及び図2に示す第1実施形態の真空弁1は、負荷が3.0N、シリンダボディ18の摩擦力が50〜70N、給気側ピストン径が50mm、操作ポート25に供給する操作流体の操作圧力が0.4MPa〜0.6MPa、負荷の質量が0.3kg、弁体10の動作ストロークが15mmであるときに、オリフィス24のオリフィス径が1.8mmとなる有効断面積を設定している。
【0057】
一方、図16に示すように、動作速度が30mm/s〜220mm/sのときに、衝撃加速度を斜線部Sの範囲内にすると、ベローズの寿命が延びる。そこで、発明者らは、同一ベローズ・異なる内部構造の真空弁のサンプル3,4を用いて、緩衝部材14の有無と衝撃加速度との関係を調べた。その測定結果を図7に示す。
【0058】
図7に示すように、緩衝部材14が無いサンプル3は、衝撃加速度が約12Gであり、緩衝部材14が有るサンプル3は、衝撃加速度が約4Gであった。よって、サンプル3では、緩衝部材14を設けた場合の衝撃加速度が、緩衝部材14を設けない衝撃加速度の約33%程度に低減することができた。
また、緩衝部材14がないサンプル4は、衝撃加速度が約8Gであり、緩衝部材14が有るサンプル4は、衝撃加速度が約3.4Gであった。よって、サンプル4では、緩衝部材14を設けた場合の衝撃加速度が、緩衝部材14を設けない衝撃加速度の約42%程度に低減することができた。
【0059】
更に、発明者らは、衝撃加速度がベローズ31の寿命に与える影響を調べるために、寿命試験を実施した。寿命試験は、上述の従来技術と同様であって、同じ種類のベローズ・同じ内部構造で寿命試験を実施したときに目標寿命回数に達成した割合を調べることにより行った。図8に、寿命試験の結果を示す。
図8に示すように、衝撃加速度が約80Gと大きいと、寿命達成率が0%である。これは、弁体10がパイプ部材28に係止される衝撃が大きく、ベローズ31に生じる応力が大きくなるためと考えられる。
しかし、衝撃加速度が約8Gと小さくても、寿命達成率0%になる場合がある。一般に衝撃加速度が小さければ、ベローズ31の内部応力も小さくなると考えられるため、衝撃加速度が小さくてもベローズ31の寿命が短い原因は不明である。
また、衝撃加速度が同程度であっても、内部構造の違いによって寿命達成率が異なる。
【0060】
よって、真空弁に緩衝部材14を取り付けて衝撃加速度を小さくする場合には、ピストン径や操作圧などの当該真空弁の内部構造とバランスが良く、高い寿命達成率が得られるように、緩衝部材14の硬さや材質等を選択する必要がある。また、ベローズ31の破損を防止する上では、できる限り衝撃加速度を小さくできる緩衝部材14を選択することが望ましい。
【0061】
従って、第1実施形態の真空弁1によれば、操作流体が供給されるオリフィス24の有効断面積(オリフィス径)によって、弁体10及びピストン22の動作速度が調整され、ベローズ31の損傷が防止されるので、ベローズ10を長寿命化して、真空弁1の耐久性を向上させることができる。
【0062】
また、第1実施形態の真空弁1によれば、弁体10が弁本体の一部をなすパイプ部材28に係止されるときの衝撃加速度を緩衝部材14によって低減し、ベローズ31の損傷を防止するので、ベローズ31を長寿命化して、真空弁1の耐久性を向上させることができる。
【0063】
特に第1実施形態の真空弁1は、オリフィス24の上記効果と、緩衝部材14の上記効果とが相乗的に作用するので、動作速度を速くしつつ、衝撃加速度を小さくすることができ、応答性を良好に保ちながらベローズ31の寿命を長期化することができる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、本発明の真空弁にかかる第2実施形態について図面を参照して説明する。図9は、本発明の第2実施形態に係る真空弁1Aの断面図であって、弁閉状態を示す。図10は、本発明の第2実施形態に係る真空弁1Aの断面図であって、全開状態を示す。
第2実施形態の真空弁1Aは、弁部2側ではなく、アクチュエータ部3に緩衝部材14を設けて「緩衝機構」を構成している点が第1実施形態と相違する。また、第2実施形態の真空弁1Aは、操作ポート25の他に、排気ポート41をシリンダボディ18に設けた点が第1実施形態と相違する。第2実施形態では、第1実施形態と相違する点を中心に説明し、共通する点は図面に同一符号を付して説明を適宜割愛する。
【0065】
図9及び図10に示すように、真空弁1Aは、出力軸26の図中上端部及び固定ナット27Aの図中上側面、ピストン22の図中上側面より図中上方へ突き出すように、緩衝部材14が固定ナット27Aに装着されている。固定ナット27Aには、緩衝部材14を装着するための段差が設けられ、緩衝部材14の環状凸部15に係合する係合溝43が段差の内側面に形成されている。緩衝部材14は、環状凸部15を係合溝43にひっかけるようにして、固定ナット27Aに脱落不能に装着されている。
【0066】
また、真空弁1Aは、一次室21aが排気側オリフィス42を介して排気ポート41に連通している。排気ポート41には、図示しない排気制御装置が接続され、排気速度を調整する。
【0067】
上記構成を有する真空弁1Aは、操作ポート25から操作流体を供給し、二次室21bの内圧が復帰ばね30に打ち勝つと、ピストン22が一次室21aのエアを圧縮して排気ポート41から排気しながら上昇し、弁体10を引き上げる。そのため、弁体10が弁座9から離間して第1ポート7と第2ポート8とが連通し、真空容器から真空ポンプへ流体を流す。このとき、オリフィス24が操作流体の給気流量を規制し、ピストン22及び弁体10の動作速度を所定速度に制御する他、排気側オリフィス42が排気流量を規制して、一次室21aに充填されたエアを圧縮してエアクッション効果を持たせ、出力軸26や固定ナット27やピストン22が急激に上昇して第1閉鎖プレート19に衝突するのを防止する。
【0068】
ここで、図10に示すように、真空弁1Aは、緩衝部材14を第1閉鎖プレート19に突き当てた状態で弁を全開している。緩衝部材14は、第1閉鎖プレート19にぶつかったときに、その衝撃を自身の弾性力で吸収し、さらに、固定ナット27、出力軸26及びピストン22と第1閉鎖プレート19との間に隙間を形成する。そのため、金属製の固定ナット27や出力軸26やピストン22が金属製の第1閉鎖プレート19にぶつかり、その衝撃をシリンダボディ18、保持部材32などを介してベローズ31に伝達しない。
【0069】
よって、第2実施形態の真空弁1Aによれば、出力軸26、ナット27又はピストン22が第1閉鎖プレート19に係止されるときの衝撃を緩和して、衝撃加速度を小さくするので、ベローズ31に発生する振動を小さくしてベローズ31を長寿命化し、真空弁1Aの耐久性を向上させることができる。
【0070】
また、弁体10は、オリフィス24によって動作速度を所定速度に制御され、しかも、緩衝部材14によって衝撃加速度を小さくされた状態で、パイプ部材28に突き当たる。そのため、弁体10は、パイプ部材28に係止される場合の衝撃が小さくて済む。
【0071】
一方、操作流体の供給を停止すると、復帰ばね30の弾性力で弁体10が押し下げられる。復帰ばね30の弾性力は、弁体10と出力軸26を介してピストン22に伝達される。このとき、排気側オリフィス42が排気ポート41から一次室21aに給気する給気速度を調整するので、ピストン22が急激に下降しない。よって、ピストン22と弁体10は、ゆっくり下降し、弁体10が弁座9に当接する際の衝撃加速度が小さい。
【0072】
このように第2実施形態の真空弁1Aは、弁開時の動作速度に加え、排気側オリフィス42によって弁閉時の動作速度を制御するので、ベローズ31に作用する衝撃を小さくしてベローズ31の寿命を更に延ばし、耐久性を向上させることができる。
尚、弁閉時の動作速度は、排気側オリフィス42の有効断面積により調整される。すなわち、排気側オリフィス42の有効断面積は、弁体10又はピストン22の弁閉時の動作速度を、ベローズの損傷を防止する動作速度範囲内に調整するように、上記数式1,2を用いてオリフィス24の有効断面積と同様の手順で調整される。これによれば、弁開時に加えて、弁閉時の動作速度をベローズの損傷を防止するように調整し、ベローズ31をより一層長寿命化できる。
【0073】
(第3実施形態)
続いて、本発明の真空弁に係る第3実施形態について図面を参照して説明する。図11は、本発明の第3実施形態に係る真空弁1Bの断面図であって、弁閉状態を示す。図12は、本発明の第3実施形態に係る真空弁1Bの断面図であって、全開状態を示す。
第3実施形態の真空弁1Bは、「緩衝機構」の一例であるゴムエアクッション51を固定ナット27Bに取り付けた点が第2実施形態と相違し、その他は第2実施形態と共通する。ここでは、第2実施形態と相違する点を中心に説明し、共通する点は図面に第2実施形態と同じ符号を付し、説明を適宜割愛する。
【0074】
第3実施形態の真空弁1Bは、ゴムエアクッション51を弾性変形させて弁開時の衝撃を緩和する。ゴムエアクッション51は、塑性変形しにくいように、フッ素ゴム等の弾性力の有るゴムを材質とする。ゴムエアクッション51は、環状をなし、図中上端開口部が図中下端開口部より小さい山形形状をなす。ゴムエアクッション51は、軸方向に変形しやすいように、断面が中央部から図中上端部及び図中下端部へいくにつれて肉薄にされている。このようなゴムエアクッション51は、図中下端開口部が、出力軸26の周りに沿って固定ナット27Bに切り欠いて設けられた保持溝52に嵌め込まれて係合された状態で固定ナット27Bに脱落不能に取り付けられる。
【0075】
このような真空弁1Bは、ピストン22が復帰ばね30の弾性力に抗して上昇すると、ゴムエアクッションの上端部が第1閉鎖プレート19に密着し、第1閉鎖プレート19と固定ナット27Bとの間にエアを密封する。そして、ピストン22が更に上昇すると、密封されたエアが圧縮されて弾性力を発生する。そのため、出力軸26や固定ナット27Bやピストン22が第1閉鎖プレート19にぶつからず、例えぶつかったとしてもその衝撃を最小限に抑える。これに伴って、弁体10がパイプ部材28にぶつかる衝撃も緩和される。
【0076】
よって、第3実施形態の真空弁1Bは、出力軸26や固定ナット27やピストン22が第1閉鎖プレート19にぶつかる衝撃や、弁体10がパイプ部材28にぶつかる衝撃の衝撃加速度を、ゴムエアクッション51で緩和するので、ベローズ31に伝達される振動が小さくなる。そのため、ベローズ31は、一定の位置に応力が集中してクラックや亀裂が入ることが少なくなり、ベローズ31の寿命を延ばして真空弁1の耐久性を向上させることができる。
【0077】
(第4実施形態)
続いて、本発明の真空弁に係る第4実施形態について説明する。図13は、本発明の第4実施形態に係る真空弁1Cの断面図であって、弁閉状態を示す。
第4実施形態の真空弁1Cは、「緩衝機構」の一例であるスピードコントローラ61を排気ポート41に取り付けた点が第2実施形態と相違し、その他の点は第2実施形態と共通する。ここでは、第1実施形態と相違する点を中心に説明し、共通する点は図面に第2実施形態と同一符号を付し、説明を適宜割愛する。
【0078】
第4実施形態の真空弁1Cは、排気側オリフィス42による排気流量制御の他、スピードコントローラ51によって一次室21aからエアを排気する排気速度が調節される。そのため、真空弁1Cは、第2実施形態の真空弁1Aと比べ、ピストン22が動き始める速度やピストン22の上昇時に加速する速度を精度よく制御することができ、より正確に動作速度を所定速度に制御することができる。
【0079】
(第5実施形態)
次に、本発明の真空弁に係る第5実施形態について図面を参照して説明する。図14は、第5実施形態に係る真空弁1Dの断面図であって、弁閉状態を示す。
第5実施形態の真空弁1Dは、パイプ部材28及び復帰ばね30を設けていない点、及び、緩衝部材14を設けていない点が第2実施形態と相違し、その他の点は第2実施形態と共通している。ここでは、第1実施形態と相違する点を中心に説明し、共通する点は図面に第2実施形態と同一符号を付し、説明を適宜割愛する。
【0080】
第5実施形態の真空弁1Dは、操作ポート25に図示しない操作流体供給源を接続すると共に、排気側ポート41にも「緩衝機構」の一例である操作流体供給源(図示せず)を接続し、一次室21aの内圧と二次室21bの内圧とのバランスによってピストン22を移動させ、弁開閉動作を行う。そのため、真空弁1Dは、一次室21aに操作流体を排気ポート41に供給して内圧を昇圧させ、二次室21bの操作流体を操作ポート25から排気して内圧を減圧させることにより、ピストン22を下降させ、弁閉動作を行う。よって、真空弁1Dは、圧縮ばね30を備えない。
【0081】
また、真空弁1Dは、エア加圧で弁開閉を行う。そのため、出力軸26が安定して軸線方向に直線往復運動するとともに、エア圧によってピストン22と弁体10の停止位置を正確に制御できる。よって、真空弁1Dは、パイプ部材28を備えない。
【0082】
このような第5実施形態の真空弁1Dは、操作ポート25と排気ポート41に接続される図示しない操作流体制御装置によって、一次室21aと二次室21bの内圧が調整される。そのため、真空弁1Dは、弁開時には、排気側オリフィス42による流量規制の他、図示しない操作流体制御装置によって排気ポート41から排気される排気圧力が制御される。そのため、操作ポート25に操作流体を供給してピストン22を図中上向きに加圧したときに、一次室21aのエアが圧縮されてクッションの役割を果たし、ピストン22が急上昇しない。そのため、ピストン22の動作速度がより一層遅くなり、ピストン22が急上昇して出力軸26や固定ナット27などを第1閉鎖プレート19に勢いよくぶつけない。
【0083】
よって、第5実施形態の真空弁1Dは、エア圧を調整して出力軸26や固定ナット27やピストン22が第1閉鎖プレート19に接触する直前でピストン22を停止させ、或いは、出力軸26や固定ナット27やピストン22が第1閉鎖プレート19に接触したとしても、一次室21aに充填された操作流体のエアクッション効果によって、その衝撃を最小限にすることが可能である。よって、第5実施形態の真空弁1Dによれば、ピストン22や出力軸26や固定ナット27がピストン室21の内壁を構成する第1閉鎖プレート19に係止される場合の衝撃を最小限に抑え、ベローズ31に生じる振動を小さくすることにより、ベローズ31の寿命を延ばし、耐久性を向上させることができる。
【0084】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
(1)例えば、上記実施形態では、第2ポート8から第1ポート7へ流体を流したが、第1ポート7から第2ポート8へ流体を流してもよい。
(2)例えば、上記実施形態では、オリフィス24の有効断面積によって適正な動作速度を確保すると共に、緩衝部材14やゴムエアクッション51によって適正な衝撃加速度を確保するようにしたが、有効断面積又は緩衝部材14,51の何れか一方によって動作速度のみ又は衝撃加速度のみを適正値にしてベローズ31の寿命を延ばすようにしてもよい。
(3)例えば、上記第1実施形態の真空弁1において、緩衝部材14に変えて、ゴムエアクッション51(図11、図12参照)や板ばね、コイルスプリングなど、自身の弾性力で衝撃を緩和できるものを使用しても良い。
(4)例えば、上記第2実施形態の真空弁1Aにおいて、緩衝部材14に変えて板ばね、コイルスプリングなど、自身の弾性力で衝撃を緩和できるものを使用してもよい。
(5)例えば、上記第1〜第4実施形態では、緩衝部材14やエアクッション51を弁体10又は固定ナット27A,27Bに取り付けたが、パイプ部材28の下端部分や第1閉鎖プレート19に緩衝部材14やゴムエアクッション51を取り付け、弁体10とパイプ部材28との間に生じる衝撃や、出力軸26又は固定ナット27A,27B、ピストン22と第1閉鎖プレート19との間に生じる衝撃を緩和するようにしてもよい。
(6)例えば、上記第5実施形態の真空弁1Dの固定プレート11や固定ナット27に緩衝部材14やゴムエアクッション51を設けてもよい。
(7)例えば、上記実施形態では、オリフィス24の断面形状を円形にしたが、所定の有効断面積であれば、その断面形状は楕円、花形、三角形、四角形など形状を限定されない。
(8)例えば、上記第1実施形態では、「弁本体」の一部を構成するパイプ部材28に弁体10を係止させて全開位置を決めた。これに対して、従来技術のように弁体10に出力軸26を挿入するパイプ部を設け、そのパイプ部を「弁本体」の一部を構成する第2閉鎖プレート20に係止させて全開位置を決めてもよい。この場合、パイプ部の上端面に緩衝部材14を取り付けてもよいし、第2閉鎖プレート20のパイプ部に対応する部分に緩衝部材14を取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1実施形態に係る真空弁の断面図であって、弁閉状態を示す。
【図2】本発明の第1実施形態に係る真空弁の断面図であって、全開状態を示す。
【図3】図1に示す緩衝部材の平面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】オリフィス径と動作速度との関係を示す図であって、縦軸に動作速度(mm/s)を示し、横軸にオリフィス径(mm)を示す。
【図6】ベローズと速度と寿命の関係を示す図であって、縦軸に動作速度(mm/s)を示し、横軸に寿命達成率(%)を示す。
【図7】クッションの有無と衝撃加速度との関係を示す図であって、縦軸に衝撃加速度(G)、横軸にクッションの有無を示す。
【図8】ベローズの衝撃加速度と寿命との関係を示す図であって、縦軸に衝撃加速度(G)を示し、横軸に寿命達成率(%)を示す。
【図9】本発明の第2実施形態に係る真空弁の断面図であって、弁閉状態を示す。
【図10】本発明の第2実施形態に係る真空弁の断面図であって、全開状態を示す。
【図11】本発明の第3実施形態に係る真空弁の断面図であって、弁閉状態を示す。
【図12】本発明の第3実施形態に係る真空弁の断面図であって、全開状態を示す。
【図13】本発明の第4実施形態に係る真空弁の断面図であって、弁閉状態を示す。
【図14】本発明の第5実施形態に係る真空弁の断面図であって、弁閉状態を示す。
【図15】従来の真空弁の断面図である。
【図16】寿命試験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
1,1A,1B,1C,1D 真空弁
2 弁部
3 アクチュエータ部
4 弁本体
7 第1ポート
8 第2ポート
9 弁座
10 弁体
14 緩衝部材(緩衝機構)
21 ピストン室
22 ピストン
24 オリフィス
26 出力軸
29 ベローズ
42 排気側オリフィス
51 ゴムエアクッション(緩衝機構)
61 スピードコントローラ(緩衝機構)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベローズを伸縮させながら弁の開閉を行う真空弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、半導体製造装置のCVD装置においては、真空容器である反応室内のウエハに対して、反応室の入口から薄膜材料を構成する元素からなる材料ガスを供給するとともに、反応室の出口から真空ポンプで排気することによって、反応室内を真空状態に保つことが行われている。材料ガスの排気速度は、例えばバタフライ式比例弁によって制御されるが、バタフライ式比例弁は配管を完全に遮断できない。そのため、バタフライ式比例弁と直列にON−OFF式の真空弁が配置され、配管内の流体の完全遮断を行う。
【0003】
真空弁の一例としては、例えば、特許文献1に記載するものがある。特許文献1に記載する真空弁の断面図を図15に示す。
図15に示す真空弁100は、弁部101にアクチュエータ部102の駆動力を与えて弁開閉動作を行う。アクチュエータ部102は、シリンダ110に摺動可能に装填されるピストン103に出力軸104を連結し、その出力軸104をシリンダ110のボス111に貫き通して軸線方向にガイドしている。出力軸104の先端部は、ボス部111から弁部101側に突き出している。
【0004】
弁部101は、弁ボディ112内に突き出す出力軸104の先端部に弁体105を固設し、その弁体105が当接又は離間する弁座107を、弁ボディ112の第1ポート113と第2ポート114との間に設けている。弁体105は、圧縮ばね115により弁座方向に常時付勢されている。ベローズ108は、金属製のものであり、圧縮ばね115と出力軸104を覆うように弁ボディ112内に伸縮自在に配置されている。
【0005】
このような真空弁100は、ピストン室109を加圧して圧縮ばね115の付勢力に抗してピストン103を図中上向きに移動させると、弁体105が弁座107から離間して第1ポート113と第2ポート114とを連通させる。
一方、ピストン室109の加圧を停止すると、圧縮ばね115の付勢力でピストン103が図中下向きに移動して弁体105を弁座107に当接させ、第1ポート113と第2ポート114との間を完全遮断する。
このように弁開閉動作を行う場合、ベローズ108が弁体105の移動に従って伸縮し、ベローズ108の内部と外部とを気密に区画するので、出力軸104の摺動部等から発生するパーティクルが流路内に漏れない。
【0006】
【特許文献1】特開2003−83467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の真空弁100は、長期間使用していると、ベローズ108が破損し、流路内にパーティクルが漏れる不具合が生じていた。この破壊は、弁閉時に弁体105が弁座107にぶつかる衝撃によって生じるものと、従来は考えられていた。
【0008】
発明者らは、ベローズ108の耐久試験を繰り返し実施したところ、ベローズ108の殆どが、一定の位置からクラックが入り、破壊される特性を発見した。更に、発明者らは、弁開時に弁体105がシリンダ110のボス111にぶつかるときの衝撃でベローズ108にクラックが入り、ベローズ108が破壊されることを発見した。
【0009】
そこで、発明者らはこの原因を次のように考えた。
ベローズ108は、弁体105の動作に応じて自由に伸縮できるように弁部101内に浮動状態で保持されている。この状態では、弁体105がストロークエンドまで上昇してボス111の下端部に衝突すると、その衝撃が、シリンダ110からベローズ108に伝達される一方、弁体105側からベローズ108に伝達される。このようにベローズ108に伝達される2つの衝撃は、ベローズ108に対して逆向きに作用してベローズ108を異方向に振動させ、その振動に対する内部応力が一定の位置で干渉し、その干渉部分に応力が集中すると考えられる。応力集中は、弁体105がパイプ部材106に衝突する度に同じ場所に発生し、ベローズ108は、一定の位置が他の部分より速く損傷するものと考えられる。
【0010】
上記原因に基づけば、弁体105が弁開動作を始めるときの「動作速度」と、弁体105がボス111に衝突したときに縮んだ状態のベローズ108に伝達される「衝撃加速度」を調整すれば、ベローズ108の耐久性を向上させ得ると考えられる。そこで、発明者らは、「動作速度」と「衝撃加速度」を変えて真空弁100の寿命試験を行った。
【0011】
寿命試験は、同じ種類のベローズ・同じ内部構造で寿命試験を実施したときに目標寿命回数に到達するかどうかを調べることにより行った。尚、「動作速度」は、弁ボディ112の内壁に取り付けた速度センサによって測定し、「衝撃加速度」は、弁体105に取り付けた加速度センサによって測定した。ベローズの種類と内部構造が異なる19種類の真空弁について寿命試験を行い、その測定結果を図16に示す。
【0012】
寿命が長いものと短いものとの境界線をとると、図16の斜線部Sの範囲を示すようになる。
【0013】
この試験結果より、金属ベローズを備える真空弁は、「動作速度」が30mm/s以上220mm/s以下であって、且つ、「衝撃加速度」が図16の斜線部Sの範囲内にある場合に、ベローズ108にクラックが入り難くなることが判明した。「動作速度」が220mm/sを超えた場合、それに応じて「衝撃加速度」が大きくなるため、ベローズ108にクラックが入りやすくなると考えられる。この考えに因れば、「動作速度」を小さくすれば「衝撃加速度」が小さくなって、ベローズ108にクラックが入りにくくなると考えられる。ところが実際には、図16に示すように、「動作速度」が30mm/sより遅く、「衝撃加速度」が小さい場合でも、ベローズ16にクラックが入ることが判明した。
【0014】
以上の試験結果より、発明者らは、同一ストロークの真空弁100について、「動作速度」が遅すぎても、速すぎても、ベローズ108の耐久性が劣ることを発見した。また、発明者らは、「動作速度」が速くても、「衝撃加速度」を小さくできれば、ベローズ108の耐久性を向上させ得ることを発見した。よって、「動作速度」を速くしつつ、「衝撃加速度」を小さくする対策を真空弁100に講じれば、ベローズ108の寿命を長くして、真空弁100の耐久性を向上させることができる。
【0015】
尚、真空弁の種類によっては、ピストンがピストン室内壁と衝突するものがある。この種の真空弁も、ベローズ108が上記と同様にクラックが入って破損することを発明者らは、耐久試験を実施して確認している。よって、この種の真空弁にも、「動作速度」を速くしつつ、「衝撃加速度」を小さくする対策を講じれば、ベローズ108の寿命を長くして、真空弁100の耐久性を向上させることができる。
【0016】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、ベローズの耐久性を向上させうる真空弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明に係る真空弁は次のような構成を有している。
(1)第1ポートと第2ポートとの間に設けられた弁座に弁体を当接又は離間させる弁部と、操作流体の圧力変動によってピストンに与える圧力を変動させ、前記弁部に駆動力を与えるアクチュエータ部と、前記弁体の直線往復運動に従って伸縮するベローズと、を有し、前記操作流体が供給されるオリフィスの有効断面積によって、前記弁体及び前記ピストンの動作速度が調整され、前記ベローズの損傷を防止した真空弁である。
【0018】
(2)第1ポートと第2ポートとの間に弁座が設けられた弁本体と、前記弁座に当接又は離間するものであって、全開方向に移動した場合に前記弁本体に係止されて停止する弁体と、前記弁体に連結する出力軸を介して前記弁体に駆動力を与えるアクチュエータ部と、前記出力軸を覆うように前記弁本体内に伸縮自在に配置されたベローズと、前記弁体が前記弁本体に係止される場合の衝撃を緩和する緩衝部材と、を有し、前記弁体が前記弁本体に係止されるときの衝撃加速度を前記緩衝部材によって低減し、前記ベローズの損傷を防止した真空弁である。
【0019】
(3)第1ポートと第2ポートとの間に弁座が設けられた弁本体と、前記弁座に当接又は離間する弁体と、ピストン室に摺動自在に装填されたピストンに出力軸を一体的に設け、前記出力軸に前記弁体を連結し、前記ピストンに与える圧力を変動させることにより前記弁体に駆動力を与えるアクチュエータ部と、前記出力軸を覆うように前記弁本体内に伸縮自在に配置されたベローズと、前記ピストン又は前記出力軸が軸方向に移動して前記ピストン室の内壁に係止される場合の衝撃を緩和する緩衝機構と、を有し、前記ピストン又は前記出力軸が前記ピストン室の内壁に係止されるときの衝撃加速度を前記緩衝機構によって低減し、前記ベローズの損傷を防止した真空弁である。
【発明の効果】
【0020】
上記(1)に記載の発明は、操作流体が供給されるオリフィスの有効断面積によって、弁体及びピストンの動作速度が調整され、ベローズの損傷が防止されるので、ベローズを長寿命化して、真空弁の耐久性を向上させることができる。
【0021】
尚、ピストンで仕切られたピストン室の一次室と二次室との内圧を調整してピストンを駆動させるために、一次室に通じる排気ポートと、二次室に通じる操作ポートとを有する場合には、弁体又はピストンの弁開時の動作速度と弁閉時の動作速度を、ベローズの損傷を防止する動作速度範囲内にそれぞれ調整するように、操作ポートに連通するオリフィスの有効断面積と排気ポートに連通する排気側オリフィスの有効断面積をそれぞれ調整することが望ましい。これによれば、弁閉時と弁開時の動作速度をベローズの損傷を防止するように調整し、ベローズをより一層長寿命化できる。
【0022】
また、弁体及びピストンの動作速度は、同じ種類のベローズ・同じ内部構造で寿命試験を実施したときに目標寿命回数に達成した割合(寿命達成率)が100%になる動作速度にすることが望ましい。これによれば、ベローズの目標寿命回数を達成するように、真空弁の耐久性を確実に向上させることができる。具体的には例えば、操作ポートの有効断面積は、動作速度が30mm/s〜220mm/sになるように調整されることが望ましい。
【0023】
上記(2)に記載の発明は、弁体が弁本体に係止されるときの衝撃加速度を緩衝部材によって低減し、ベローズの損傷を防止するので、ベローズを長寿命化して、真空弁の耐久性を向上させることができる。
【0024】
尚、緩衝部材は、硬度の高いゴムや樹脂を材質とするOリングや、弾性力の高いゴムを材質とするゴムエアクッション、低反発衝撃吸収材、例えばαゲル(株式会社ジェルテックの登録商標)、板ばね、スプリングなど、自身の弾性力で衝撃を緩和できるものであればよい。
また、衝撃加速度は、同じ種類のベローズ・同じ内部構造で寿命試験を実施したときに目標寿命回数に達成した割合(寿命達成率)が100%になる衝撃加速度にすることが望ましい。これによれば、ベローズの目標寿命回数を達成するように、真空弁の耐久性を確実に向上させることができる。具体的には例えば、緩衝部材は、動作速度が30mm/s〜220mm/sのときに、衝撃加速度を図16の斜線部Sの範囲内にするものが望ましい。
【0025】
上記(3)に記載の発明は、ピストン又は出力軸がピストン室の内壁に係止されるときの衝撃加速度を緩衝機構によって低減し、ベローズの損傷を防止するので、ベローズを長寿命化して、真空弁の耐久性を向上させることができる。
【0026】
尚、緩衝機構は、硬度の高いゴムや樹脂を材質とするOリングや、弾性力の高いゴムを材質とするゴムエアクッション、低反発衝撃吸収材、例えばαゲル(株式会社ジェルテックの登録商標)、板ばね、スプリングなど、機械的に衝撃を緩和するものの他、スピードコントローラや排気制御装置などによってピストン室の内圧を調整し、ピストン室に充填されたエアをエアクッションとして機能させるものも含む。
また、衝撃加速度は、同じ種類のベローズ・同じ内部構造で寿命試験を実施したときに目標寿命回数に達成した割合(寿命達成率)が100%になる衝撃加速度にすることが望ましい。これによれば、ベローズの目標寿命回数を達成し、真空弁の耐久性を確実に向上させることができる。具体的には例えば、緩衝機構は、動作速度が30mm/s〜220mm/sのときに、衝撃加速度を図16の斜線部Sの範囲内にするものが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明に係る真空弁の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る真空弁1の断面図であって、弁閉状態を示す。図2は、第1実施形態に係る真空弁1の断面図であって、全開状態を示す。
図1及び図2に示す真空弁1は、従来技術と同様、半導体製造装置に設けられた反応室と真空ポンプとの間にバタフライ式比例弁と共に配置される。真空弁1は、ベローズ31を伸縮させながら弁開閉を行うON−OFF式遮断弁であって、反応室からガスを排出する配管の開放と遮断を制御する。真空弁1は、弁部2にアクチュエータ部3の駆動力を与えて弁開閉を行う。
【0029】
弁部2は、「弁本体」に内蔵される。「弁本体」は、第1ポート7と第2ポート8との間に弁座9を設けた弁室5を形成するものであり、本実施形態では、弁ボディ4と第2閉鎖プレート20とパイプ部材28によって構成されている。弁ボディ4は、剛性及び耐圧性を確保するためにステンレスや炭素鋼などの金属を材質とする。弁ボディ4は、第2閉鎖プレート20に塞がれて弁室5を形成するための中空部6を備える。中空部6には、弁ボディ4の側面に開口する第1ポート7が連通すると共に、弁ボディ4の図中下面に開口する第2ポート8が連通している。弁ボディ4は、第2ポート8が中空部6に開口する開口部の周りに設けられた平坦面により弁座9が構成されている。弁座9には、弁体10が当接又は離間する。
【0030】
弁体10は、固定プレート11と支持プレート12との間に形成されたアリ溝にOリング13を装着して保持している。固定プレート11と支持プレート12は、剛性を確保するためにステンレスや炭素鋼などの金属を材質とする。Oリング13は、弁座9に密着してシール力を発揮するためにゴム等の弾性材料を材質とする。弁体10は、パイプ部材28の図中下端部に係止されて図中上方向の移動を制限される。そのため、固定プレート11には、弁体10がパイプ部材28に係止される場合の衝撃を緩和するための緩衝部材14が、パイプ部材28の図中下端部に対応する位置に取り付けられている。
【0031】
緩衝部材14は、図2に示す弁の全開時に弁体10とパイプ部材28との間に僅かな隙間を空けた状態で弁体10を停止させるために、硬度の高いゴムや樹脂などの弾性材料を材質とし、一端が固定プレート11の図中上側面から突出するように設けられている。尚、第1実施形態では、緩衝部材14には硬度90のウレタンゴムを材質とするものを使用する。
【0032】
図3は、図1に示す緩衝部材14の平面図である。図4は、図3のA−A断面図である。
緩衝部材14は、環状をなし、断面が略矩形状をなす。緩衝部材14の内周面には、環状凸部15が中心部に向かって延びるように設けられている。
【0033】
図1及び図2に示すように、固定プレート11の上端面には、緩衝部材14を装着するための装着溝16が環状に形成されている。装着溝16の内側側面には、緩衝部材14の環状凸部15を嵌め込むための係合溝17が、装着溝16の開口部より奥側に設けられている。
【0034】
緩衝部材14は、環状凸部15を弾性変形させながら装着溝16に押し込まれ、環状凸部15が係合溝17の位置に到達すると、環状凸部15を復元させて係合溝17に係合させる。この環状凸部15と係合溝17との係合関係により、真空弁1が弁開閉動作を行う場合に弁体10に振動が生じても、緩衝部材14が固定プレート11から脱落しない。
【0035】
一方、アクチュエータ部3は、弁ボディ4に連結されるシリンダボディ18に内蔵される。シリンダボディ18は、耐圧性を確保するためにステンレスや炭素鋼などの金属を材質とする。シリンダボディ18は、上下に開口する筒状をなす。シリンダボディ18は、上側開口部が金属製の第1閉鎖プレート19に塞がれ、下側開口部が金属製の第2閉鎖プレート20に塞がれることによって、ピストン室21を形成している。
【0036】
ピストン室21は、シリンダボディ18に摺動可能に装填されたピストン22によって一次室21aと二次室21bに仕切られている。ピストン22は、耐圧性と剛性を確保するために金属を材質とし、ゴムや樹脂などの弾性材料からなるシール部材23が外周面に装着されている。そのため、ピストン室21は、ピストン22によって一次室21aと二次室21bとに気密に区画されている。一次室21aは、図示しない開口部を介して大気開放されている。二次室21bは、シリンダボディ18に開設されたオリフィス24を介して操作ポート25に連通している。第1実施形態では、オリフィス24は断面が円形状に形成されている。
【0037】
ピストン22の中心部には、図中下側から図中上側に金属製の出力軸26が貫き通されている。出力軸26は、ピストン22の図中上側に突き出した部分に金属製の固定ナット27を締め付けられてピストン22と一体化されている。尚、第1実施形態では、固定ナット27は出力軸26の一部を構成するものとする。出力軸26は、第2閉鎖プレート20とパイプ部材28に摺動自在に挿通され、先端部が弁室5内に突き出している。
【0038】
パイプ部材28は、弁体10の全開位置を決めるように弁室5内に下端部が配置されている。出力軸26は、パイプ部材28の下端部から進退可能に突出し、先端部が弁体10の中心部に貫き通されて取付ナット29を締め付けられ、弁体10と一体化されている。よって、ピストン22と弁体10とは、出力軸26を介して一体化され、一体的に直線往復運動する。
【0039】
弁体10とパイプ部材28との間には、復帰ばね30が縮設され、弁体10を弁座9側に向かって押し下げている。この押圧力によって、弁体10がOリング13を押し潰すように弁座9に押し付けられ、シール力を発生する。復帰ばね30の弾性力は、弁体10から出力軸26を介してピストン22へ伝達され、ピストン22に図中下向きの力を与える。
【0040】
出力軸26とパイプ部材28と復帰ばね30は、ベローズ31によって覆われ、摺動部等から発生するパーティクルが弁室5内に漏れないようにしている。ベローズ31は、ステンレス等の金属を材質とし、弁室5内に伸縮自在に配設されている。ベローズ31は、上端部が環状の保持部材32に溶接され、その保持部材32を弁ボディ4とシリンダボディ18とに嵌め合わせることによって弁ボディ4及びシリンダボディ18に対して位置決めされている。ベローズ31の下端部は、復帰ばね30の外側において固定プレート11に溶接されている。
【0041】
上記構成を有する真空弁1は、例えば、第1ポート7が真空ポンプに接続され、第2ポート8が真空容器に接続される。そして、操作ポート25に図示しない操作流体制御装置が接続される。
【0042】
操作ポート25に操作流体を供給しないときには、図1に示すように、復帰ばね30の弾性力によって弁体10が弁座9に当接し、第1ポート7と第2ポート8との間を遮断する。そのため、第2ポート8から第1ポート7へと流体が流れない。よって、真空容器は真空引きされない。
【0043】
操作ポート25に操作流体を供給し、二次室21bの内圧が復帰ばね30の弾性力に打ち勝つと、図2に示すように、ピストン22が図中上向きに移動して弁体10を弁座9から離間させ、全開位置まで移動させる。これにより、第1ポート7と第2ポート8とが連通し、第2ポート8から第1ポート7へ流体が流れる。よって、真空容器は真空ポンプのポンプ動作によって真空引きされる。
【0044】
その後、二次室21bの操作流体を排気し、復帰ばね30の弾性力が二次室21bの内圧に打ち勝つと、弁体10が復帰バネ30に付勢されて下降し、図1に示すように弁座9に当接する。そのため、第1ポート7と第2ポート8との間が再び遮断され、流体が流れなくなる。よって、真空容器は真空引きされなくなる。
【0045】
ところで、上記課題で記載したように、発明者らは、動作速度を速くしつつ、衝撃加速度を小さくする対策を真空弁に講じることにより、ベローズを長寿命化して、真空弁の耐久性を向上させうることを発見した。発明者らは、オリフィス24の有効断面積によって弁体10の動作速度を適正値に調整し、緩衝部材14によって弁体10がパイプ部材28に係止されるときの衝撃加速度を適正値に調整できることに気付いた。これらについて以下に具体例を挙げて説明する。
【0046】
例えば、図16に示すように、動作速度を30mm/s〜220mm/sに設定すると、ベローズの寿命を長くすることができる。そこで、発明者らは、同一ベローズ・異なる内部構造の真空弁サンプルを2つ用いて、断面円形状をなすオリフィス24のオリフィス径と動作速度との関係を調べた。その調査結果を図5に示す。
【0047】
例えば、図5に示すように、サンプル1は、オリフィス径を0.8mmにすると、動作速度を約28mm/sに調整でき、オリフィス径を1.3mmにすれば、動作速度を約100mm/sに調整でき、オリフィス径を2.4mmにすれば、動作速度を約220mm/sに調整できた。
また、サンプル2は、オリフィス径を0.8mmにすれば、動作速度を約43mm/sに調整でき、オリフィス径を1.0mmにすれば、動作速度を約68mm/sに調整でき、オリフィス径を1.3mmにすれば、動作速度を約112mm/sに調整できた。
【0048】
この試験結果によれば、内部構造が異なるサンプル1,2は、何れもオリフィス径と動作速度との間に正の相関関係が認められた。よって、真空弁は、オリフィス24のオリフィス径すなわち有効断面積を調節すれば、動作速度を任意に設定できることが判明した。
【0049】
更に、発明者らは、動作速度がベローズ9の寿命に与える影響を調べるために、寿命試験を実施した。寿命試験は、上述の従来技術と同様であって、同じ種類のベローズ・同じ内部構造で寿命試験を実施したときに目標寿命回数に達成した割合を調べることにより行った。図6に、寿命試験の結果を示す。
例えば、図6に示すように、動作速度が220mm/sを超えて速すぎると、寿命達成率が0%と低い。この原因は、弁体10の動作ストロークが短いので、弁体10の動作速度が速いと、急加速したまま弁体10がパイプ部材28にぶつかり、その強い衝撃がベローズ31に伝達されてベローズ31にクラックが入りやすくなったり、ベローズ31が破損しやすくなるためと考えられる。
また、動作速度が、30mm/s未満と遅くても、寿命達成率が0%と低くなることがあった。一般に、動作速度が遅ければ衝撃加速度が小さくなるものと考えられるため、動作速度が遅すぎても寿命達成率が低いという試験結果の原因は、不明である。
また、動作速度が40mm/s前後と低速であっても、内部構造の違いによって寿命達成率が異なることがあった。
【0050】
この試験結果より、真空弁の有効断面積は、真空弁のピストン径や真空弁に与える操作圧などの真空弁の内部構造とバランスが良く、高い寿命達成率が得られるように、決定する必要があることが判明した。
尚、有効断面積は、応答性を良好にするために、高い寿命達成率が得られる範囲で動作速度を速くするように設定することが望ましい。
【0051】
有効断面積は下記の計算式で求められる。
動作速度Vは、数式1より求められる。
【0052】
【数1】
【0053】
そこで、動作速度Vが、所定の動作速度範囲(寿命達成率100%を達成できる動作速度範囲、例えば、図16では30mm/s〜220mm/s)になる動作時間tを数式1より算出する。
ここで、動作時間tは、一般的に、弁体10が動き始めるまでの時間t1と、弁体10が加速する時間t2と、弁体10が等速で動いたときの時間t3とを合算して求められるが、真空弁1では、弁体10の動作ストロークが短いため(例えば15mm)、動作速度tを弁体10が加速する時間t2と同視することができる。弁体10が加速する時間t2は、数式2より求められる。
【0054】
【数2】
【0055】
数式1より求めた動作時間tを数式2の弁体10が加速する時間t2に当てはめ、真空弁1の設計値を数式2の負荷F(N)、シリンダボディ18の摩擦力f(N)、ピストン22の給気側受圧面積A1(mm2)、操作ポート25に供給する操作流体の給気圧力(MPa)、負荷の質量M(kg)、弁体10の動作ストローク(mm)を代入すれば、操作ポート25側のオリフィス24の有効断面積が算出される。
【0056】
図1及び図2に示す第1実施形態の真空弁1は、負荷が3.0N、シリンダボディ18の摩擦力が50〜70N、給気側ピストン径が50mm、操作ポート25に供給する操作流体の操作圧力が0.4MPa〜0.6MPa、負荷の質量が0.3kg、弁体10の動作ストロークが15mmであるときに、オリフィス24のオリフィス径が1.8mmとなる有効断面積を設定している。
【0057】
一方、図16に示すように、動作速度が30mm/s〜220mm/sのときに、衝撃加速度を斜線部Sの範囲内にすると、ベローズの寿命が延びる。そこで、発明者らは、同一ベローズ・異なる内部構造の真空弁のサンプル3,4を用いて、緩衝部材14の有無と衝撃加速度との関係を調べた。その測定結果を図7に示す。
【0058】
図7に示すように、緩衝部材14が無いサンプル3は、衝撃加速度が約12Gであり、緩衝部材14が有るサンプル3は、衝撃加速度が約4Gであった。よって、サンプル3では、緩衝部材14を設けた場合の衝撃加速度が、緩衝部材14を設けない衝撃加速度の約33%程度に低減することができた。
また、緩衝部材14がないサンプル4は、衝撃加速度が約8Gであり、緩衝部材14が有るサンプル4は、衝撃加速度が約3.4Gであった。よって、サンプル4では、緩衝部材14を設けた場合の衝撃加速度が、緩衝部材14を設けない衝撃加速度の約42%程度に低減することができた。
【0059】
更に、発明者らは、衝撃加速度がベローズ31の寿命に与える影響を調べるために、寿命試験を実施した。寿命試験は、上述の従来技術と同様であって、同じ種類のベローズ・同じ内部構造で寿命試験を実施したときに目標寿命回数に達成した割合を調べることにより行った。図8に、寿命試験の結果を示す。
図8に示すように、衝撃加速度が約80Gと大きいと、寿命達成率が0%である。これは、弁体10がパイプ部材28に係止される衝撃が大きく、ベローズ31に生じる応力が大きくなるためと考えられる。
しかし、衝撃加速度が約8Gと小さくても、寿命達成率0%になる場合がある。一般に衝撃加速度が小さければ、ベローズ31の内部応力も小さくなると考えられるため、衝撃加速度が小さくてもベローズ31の寿命が短い原因は不明である。
また、衝撃加速度が同程度であっても、内部構造の違いによって寿命達成率が異なる。
【0060】
よって、真空弁に緩衝部材14を取り付けて衝撃加速度を小さくする場合には、ピストン径や操作圧などの当該真空弁の内部構造とバランスが良く、高い寿命達成率が得られるように、緩衝部材14の硬さや材質等を選択する必要がある。また、ベローズ31の破損を防止する上では、できる限り衝撃加速度を小さくできる緩衝部材14を選択することが望ましい。
【0061】
従って、第1実施形態の真空弁1によれば、操作流体が供給されるオリフィス24の有効断面積(オリフィス径)によって、弁体10及びピストン22の動作速度が調整され、ベローズ31の損傷が防止されるので、ベローズ10を長寿命化して、真空弁1の耐久性を向上させることができる。
【0062】
また、第1実施形態の真空弁1によれば、弁体10が弁本体の一部をなすパイプ部材28に係止されるときの衝撃加速度を緩衝部材14によって低減し、ベローズ31の損傷を防止するので、ベローズ31を長寿命化して、真空弁1の耐久性を向上させることができる。
【0063】
特に第1実施形態の真空弁1は、オリフィス24の上記効果と、緩衝部材14の上記効果とが相乗的に作用するので、動作速度を速くしつつ、衝撃加速度を小さくすることができ、応答性を良好に保ちながらベローズ31の寿命を長期化することができる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、本発明の真空弁にかかる第2実施形態について図面を参照して説明する。図9は、本発明の第2実施形態に係る真空弁1Aの断面図であって、弁閉状態を示す。図10は、本発明の第2実施形態に係る真空弁1Aの断面図であって、全開状態を示す。
第2実施形態の真空弁1Aは、弁部2側ではなく、アクチュエータ部3に緩衝部材14を設けて「緩衝機構」を構成している点が第1実施形態と相違する。また、第2実施形態の真空弁1Aは、操作ポート25の他に、排気ポート41をシリンダボディ18に設けた点が第1実施形態と相違する。第2実施形態では、第1実施形態と相違する点を中心に説明し、共通する点は図面に同一符号を付して説明を適宜割愛する。
【0065】
図9及び図10に示すように、真空弁1Aは、出力軸26の図中上端部及び固定ナット27Aの図中上側面、ピストン22の図中上側面より図中上方へ突き出すように、緩衝部材14が固定ナット27Aに装着されている。固定ナット27Aには、緩衝部材14を装着するための段差が設けられ、緩衝部材14の環状凸部15に係合する係合溝43が段差の内側面に形成されている。緩衝部材14は、環状凸部15を係合溝43にひっかけるようにして、固定ナット27Aに脱落不能に装着されている。
【0066】
また、真空弁1Aは、一次室21aが排気側オリフィス42を介して排気ポート41に連通している。排気ポート41には、図示しない排気制御装置が接続され、排気速度を調整する。
【0067】
上記構成を有する真空弁1Aは、操作ポート25から操作流体を供給し、二次室21bの内圧が復帰ばね30に打ち勝つと、ピストン22が一次室21aのエアを圧縮して排気ポート41から排気しながら上昇し、弁体10を引き上げる。そのため、弁体10が弁座9から離間して第1ポート7と第2ポート8とが連通し、真空容器から真空ポンプへ流体を流す。このとき、オリフィス24が操作流体の給気流量を規制し、ピストン22及び弁体10の動作速度を所定速度に制御する他、排気側オリフィス42が排気流量を規制して、一次室21aに充填されたエアを圧縮してエアクッション効果を持たせ、出力軸26や固定ナット27やピストン22が急激に上昇して第1閉鎖プレート19に衝突するのを防止する。
【0068】
ここで、図10に示すように、真空弁1Aは、緩衝部材14を第1閉鎖プレート19に突き当てた状態で弁を全開している。緩衝部材14は、第1閉鎖プレート19にぶつかったときに、その衝撃を自身の弾性力で吸収し、さらに、固定ナット27、出力軸26及びピストン22と第1閉鎖プレート19との間に隙間を形成する。そのため、金属製の固定ナット27や出力軸26やピストン22が金属製の第1閉鎖プレート19にぶつかり、その衝撃をシリンダボディ18、保持部材32などを介してベローズ31に伝達しない。
【0069】
よって、第2実施形態の真空弁1Aによれば、出力軸26、ナット27又はピストン22が第1閉鎖プレート19に係止されるときの衝撃を緩和して、衝撃加速度を小さくするので、ベローズ31に発生する振動を小さくしてベローズ31を長寿命化し、真空弁1Aの耐久性を向上させることができる。
【0070】
また、弁体10は、オリフィス24によって動作速度を所定速度に制御され、しかも、緩衝部材14によって衝撃加速度を小さくされた状態で、パイプ部材28に突き当たる。そのため、弁体10は、パイプ部材28に係止される場合の衝撃が小さくて済む。
【0071】
一方、操作流体の供給を停止すると、復帰ばね30の弾性力で弁体10が押し下げられる。復帰ばね30の弾性力は、弁体10と出力軸26を介してピストン22に伝達される。このとき、排気側オリフィス42が排気ポート41から一次室21aに給気する給気速度を調整するので、ピストン22が急激に下降しない。よって、ピストン22と弁体10は、ゆっくり下降し、弁体10が弁座9に当接する際の衝撃加速度が小さい。
【0072】
このように第2実施形態の真空弁1Aは、弁開時の動作速度に加え、排気側オリフィス42によって弁閉時の動作速度を制御するので、ベローズ31に作用する衝撃を小さくしてベローズ31の寿命を更に延ばし、耐久性を向上させることができる。
尚、弁閉時の動作速度は、排気側オリフィス42の有効断面積により調整される。すなわち、排気側オリフィス42の有効断面積は、弁体10又はピストン22の弁閉時の動作速度を、ベローズの損傷を防止する動作速度範囲内に調整するように、上記数式1,2を用いてオリフィス24の有効断面積と同様の手順で調整される。これによれば、弁開時に加えて、弁閉時の動作速度をベローズの損傷を防止するように調整し、ベローズ31をより一層長寿命化できる。
【0073】
(第3実施形態)
続いて、本発明の真空弁に係る第3実施形態について図面を参照して説明する。図11は、本発明の第3実施形態に係る真空弁1Bの断面図であって、弁閉状態を示す。図12は、本発明の第3実施形態に係る真空弁1Bの断面図であって、全開状態を示す。
第3実施形態の真空弁1Bは、「緩衝機構」の一例であるゴムエアクッション51を固定ナット27Bに取り付けた点が第2実施形態と相違し、その他は第2実施形態と共通する。ここでは、第2実施形態と相違する点を中心に説明し、共通する点は図面に第2実施形態と同じ符号を付し、説明を適宜割愛する。
【0074】
第3実施形態の真空弁1Bは、ゴムエアクッション51を弾性変形させて弁開時の衝撃を緩和する。ゴムエアクッション51は、塑性変形しにくいように、フッ素ゴム等の弾性力の有るゴムを材質とする。ゴムエアクッション51は、環状をなし、図中上端開口部が図中下端開口部より小さい山形形状をなす。ゴムエアクッション51は、軸方向に変形しやすいように、断面が中央部から図中上端部及び図中下端部へいくにつれて肉薄にされている。このようなゴムエアクッション51は、図中下端開口部が、出力軸26の周りに沿って固定ナット27Bに切り欠いて設けられた保持溝52に嵌め込まれて係合された状態で固定ナット27Bに脱落不能に取り付けられる。
【0075】
このような真空弁1Bは、ピストン22が復帰ばね30の弾性力に抗して上昇すると、ゴムエアクッションの上端部が第1閉鎖プレート19に密着し、第1閉鎖プレート19と固定ナット27Bとの間にエアを密封する。そして、ピストン22が更に上昇すると、密封されたエアが圧縮されて弾性力を発生する。そのため、出力軸26や固定ナット27Bやピストン22が第1閉鎖プレート19にぶつからず、例えぶつかったとしてもその衝撃を最小限に抑える。これに伴って、弁体10がパイプ部材28にぶつかる衝撃も緩和される。
【0076】
よって、第3実施形態の真空弁1Bは、出力軸26や固定ナット27やピストン22が第1閉鎖プレート19にぶつかる衝撃や、弁体10がパイプ部材28にぶつかる衝撃の衝撃加速度を、ゴムエアクッション51で緩和するので、ベローズ31に伝達される振動が小さくなる。そのため、ベローズ31は、一定の位置に応力が集中してクラックや亀裂が入ることが少なくなり、ベローズ31の寿命を延ばして真空弁1の耐久性を向上させることができる。
【0077】
(第4実施形態)
続いて、本発明の真空弁に係る第4実施形態について説明する。図13は、本発明の第4実施形態に係る真空弁1Cの断面図であって、弁閉状態を示す。
第4実施形態の真空弁1Cは、「緩衝機構」の一例であるスピードコントローラ61を排気ポート41に取り付けた点が第2実施形態と相違し、その他の点は第2実施形態と共通する。ここでは、第1実施形態と相違する点を中心に説明し、共通する点は図面に第2実施形態と同一符号を付し、説明を適宜割愛する。
【0078】
第4実施形態の真空弁1Cは、排気側オリフィス42による排気流量制御の他、スピードコントローラ51によって一次室21aからエアを排気する排気速度が調節される。そのため、真空弁1Cは、第2実施形態の真空弁1Aと比べ、ピストン22が動き始める速度やピストン22の上昇時に加速する速度を精度よく制御することができ、より正確に動作速度を所定速度に制御することができる。
【0079】
(第5実施形態)
次に、本発明の真空弁に係る第5実施形態について図面を参照して説明する。図14は、第5実施形態に係る真空弁1Dの断面図であって、弁閉状態を示す。
第5実施形態の真空弁1Dは、パイプ部材28及び復帰ばね30を設けていない点、及び、緩衝部材14を設けていない点が第2実施形態と相違し、その他の点は第2実施形態と共通している。ここでは、第1実施形態と相違する点を中心に説明し、共通する点は図面に第2実施形態と同一符号を付し、説明を適宜割愛する。
【0080】
第5実施形態の真空弁1Dは、操作ポート25に図示しない操作流体供給源を接続すると共に、排気側ポート41にも「緩衝機構」の一例である操作流体供給源(図示せず)を接続し、一次室21aの内圧と二次室21bの内圧とのバランスによってピストン22を移動させ、弁開閉動作を行う。そのため、真空弁1Dは、一次室21aに操作流体を排気ポート41に供給して内圧を昇圧させ、二次室21bの操作流体を操作ポート25から排気して内圧を減圧させることにより、ピストン22を下降させ、弁閉動作を行う。よって、真空弁1Dは、圧縮ばね30を備えない。
【0081】
また、真空弁1Dは、エア加圧で弁開閉を行う。そのため、出力軸26が安定して軸線方向に直線往復運動するとともに、エア圧によってピストン22と弁体10の停止位置を正確に制御できる。よって、真空弁1Dは、パイプ部材28を備えない。
【0082】
このような第5実施形態の真空弁1Dは、操作ポート25と排気ポート41に接続される図示しない操作流体制御装置によって、一次室21aと二次室21bの内圧が調整される。そのため、真空弁1Dは、弁開時には、排気側オリフィス42による流量規制の他、図示しない操作流体制御装置によって排気ポート41から排気される排気圧力が制御される。そのため、操作ポート25に操作流体を供給してピストン22を図中上向きに加圧したときに、一次室21aのエアが圧縮されてクッションの役割を果たし、ピストン22が急上昇しない。そのため、ピストン22の動作速度がより一層遅くなり、ピストン22が急上昇して出力軸26や固定ナット27などを第1閉鎖プレート19に勢いよくぶつけない。
【0083】
よって、第5実施形態の真空弁1Dは、エア圧を調整して出力軸26や固定ナット27やピストン22が第1閉鎖プレート19に接触する直前でピストン22を停止させ、或いは、出力軸26や固定ナット27やピストン22が第1閉鎖プレート19に接触したとしても、一次室21aに充填された操作流体のエアクッション効果によって、その衝撃を最小限にすることが可能である。よって、第5実施形態の真空弁1Dによれば、ピストン22や出力軸26や固定ナット27がピストン室21の内壁を構成する第1閉鎖プレート19に係止される場合の衝撃を最小限に抑え、ベローズ31に生じる振動を小さくすることにより、ベローズ31の寿命を延ばし、耐久性を向上させることができる。
【0084】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
(1)例えば、上記実施形態では、第2ポート8から第1ポート7へ流体を流したが、第1ポート7から第2ポート8へ流体を流してもよい。
(2)例えば、上記実施形態では、オリフィス24の有効断面積によって適正な動作速度を確保すると共に、緩衝部材14やゴムエアクッション51によって適正な衝撃加速度を確保するようにしたが、有効断面積又は緩衝部材14,51の何れか一方によって動作速度のみ又は衝撃加速度のみを適正値にしてベローズ31の寿命を延ばすようにしてもよい。
(3)例えば、上記第1実施形態の真空弁1において、緩衝部材14に変えて、ゴムエアクッション51(図11、図12参照)や板ばね、コイルスプリングなど、自身の弾性力で衝撃を緩和できるものを使用しても良い。
(4)例えば、上記第2実施形態の真空弁1Aにおいて、緩衝部材14に変えて板ばね、コイルスプリングなど、自身の弾性力で衝撃を緩和できるものを使用してもよい。
(5)例えば、上記第1〜第4実施形態では、緩衝部材14やエアクッション51を弁体10又は固定ナット27A,27Bに取り付けたが、パイプ部材28の下端部分や第1閉鎖プレート19に緩衝部材14やゴムエアクッション51を取り付け、弁体10とパイプ部材28との間に生じる衝撃や、出力軸26又は固定ナット27A,27B、ピストン22と第1閉鎖プレート19との間に生じる衝撃を緩和するようにしてもよい。
(6)例えば、上記第5実施形態の真空弁1Dの固定プレート11や固定ナット27に緩衝部材14やゴムエアクッション51を設けてもよい。
(7)例えば、上記実施形態では、オリフィス24の断面形状を円形にしたが、所定の有効断面積であれば、その断面形状は楕円、花形、三角形、四角形など形状を限定されない。
(8)例えば、上記第1実施形態では、「弁本体」の一部を構成するパイプ部材28に弁体10を係止させて全開位置を決めた。これに対して、従来技術のように弁体10に出力軸26を挿入するパイプ部を設け、そのパイプ部を「弁本体」の一部を構成する第2閉鎖プレート20に係止させて全開位置を決めてもよい。この場合、パイプ部の上端面に緩衝部材14を取り付けてもよいし、第2閉鎖プレート20のパイプ部に対応する部分に緩衝部材14を取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1実施形態に係る真空弁の断面図であって、弁閉状態を示す。
【図2】本発明の第1実施形態に係る真空弁の断面図であって、全開状態を示す。
【図3】図1に示す緩衝部材の平面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】オリフィス径と動作速度との関係を示す図であって、縦軸に動作速度(mm/s)を示し、横軸にオリフィス径(mm)を示す。
【図6】ベローズと速度と寿命の関係を示す図であって、縦軸に動作速度(mm/s)を示し、横軸に寿命達成率(%)を示す。
【図7】クッションの有無と衝撃加速度との関係を示す図であって、縦軸に衝撃加速度(G)、横軸にクッションの有無を示す。
【図8】ベローズの衝撃加速度と寿命との関係を示す図であって、縦軸に衝撃加速度(G)を示し、横軸に寿命達成率(%)を示す。
【図9】本発明の第2実施形態に係る真空弁の断面図であって、弁閉状態を示す。
【図10】本発明の第2実施形態に係る真空弁の断面図であって、全開状態を示す。
【図11】本発明の第3実施形態に係る真空弁の断面図であって、弁閉状態を示す。
【図12】本発明の第3実施形態に係る真空弁の断面図であって、全開状態を示す。
【図13】本発明の第4実施形態に係る真空弁の断面図であって、弁閉状態を示す。
【図14】本発明の第5実施形態に係る真空弁の断面図であって、弁閉状態を示す。
【図15】従来の真空弁の断面図である。
【図16】寿命試験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
1,1A,1B,1C,1D 真空弁
2 弁部
3 アクチュエータ部
4 弁本体
7 第1ポート
8 第2ポート
9 弁座
10 弁体
14 緩衝部材(緩衝機構)
21 ピストン室
22 ピストン
24 オリフィス
26 出力軸
29 ベローズ
42 排気側オリフィス
51 ゴムエアクッション(緩衝機構)
61 スピードコントローラ(緩衝機構)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポートと第2ポートとの間に設けられた弁座に弁体を当接又は離間させる弁部と、
操作流体の圧力変動によってピストンに与える圧力を変動させ、前記弁部に駆動力を与えるアクチュエータ部と、
前記弁体の直線往復運動に従って伸縮するベローズと、を有し、
前記操作流体が供給されるオリフィスの有効断面積によって、前記弁体及び前記ピストンの動作速度が調整され、前記ベローズの損傷を防止したものであること、を特徴とする真空弁。
【請求項2】
第1ポートと第2ポートとの間に弁座が設けられた弁本体と、
前記弁座に当接又は離間するものであって、全開方向に移動した場合に前記弁本体に係止されて停止する弁体と、
前記弁体に連結する出力軸を介して前記弁体に駆動力を与えるアクチュエータ部と、
前記出力軸を覆うように前記弁本体内に伸縮自在に配置されたベローズと、
前記弁体が前記弁本体に係止される場合の衝撃を緩和する緩衝部材と、を有し、
前記弁体が前記弁本体に係止されるときの衝撃加速度を前記緩衝部材によって低減し、前記ベローズの損傷を防止したものであること、を特徴とする真空弁。
【請求項3】
第1ポートと第2ポートとの間に弁座が設けられた弁本体と、
前記弁座に当接又は離間する弁体と、
ピストン室に摺動自在に装填されたピストンに出力軸を一体的に設け、前記出力軸に前記弁体を連結し、前記ピストンに与える圧力を変動させることにより前記弁体に駆動力を与えるアクチュエータ部と、
前記出力軸を覆うように前記弁本体内に伸縮自在に配置されたベローズと、
前記ピストン又は前記出力軸が軸方向に移動して前記ピストン室の内壁に係止される場合の衝撃を緩和する緩衝機構と、を有し、
前記ピストン又は前記出力軸が前記ピストン室の内壁に係止されるときの衝撃加速度を前記緩衝機構によって低減し、前記ベローズの損傷を防止したものであること、を特徴とする真空弁。
【請求項1】
第1ポートと第2ポートとの間に設けられた弁座に弁体を当接又は離間させる弁部と、
操作流体の圧力変動によってピストンに与える圧力を変動させ、前記弁部に駆動力を与えるアクチュエータ部と、
前記弁体の直線往復運動に従って伸縮するベローズと、を有し、
前記操作流体が供給されるオリフィスの有効断面積によって、前記弁体及び前記ピストンの動作速度が調整され、前記ベローズの損傷を防止したものであること、を特徴とする真空弁。
【請求項2】
第1ポートと第2ポートとの間に弁座が設けられた弁本体と、
前記弁座に当接又は離間するものであって、全開方向に移動した場合に前記弁本体に係止されて停止する弁体と、
前記弁体に連結する出力軸を介して前記弁体に駆動力を与えるアクチュエータ部と、
前記出力軸を覆うように前記弁本体内に伸縮自在に配置されたベローズと、
前記弁体が前記弁本体に係止される場合の衝撃を緩和する緩衝部材と、を有し、
前記弁体が前記弁本体に係止されるときの衝撃加速度を前記緩衝部材によって低減し、前記ベローズの損傷を防止したものであること、を特徴とする真空弁。
【請求項3】
第1ポートと第2ポートとの間に弁座が設けられた弁本体と、
前記弁座に当接又は離間する弁体と、
ピストン室に摺動自在に装填されたピストンに出力軸を一体的に設け、前記出力軸に前記弁体を連結し、前記ピストンに与える圧力を変動させることにより前記弁体に駆動力を与えるアクチュエータ部と、
前記出力軸を覆うように前記弁本体内に伸縮自在に配置されたベローズと、
前記ピストン又は前記出力軸が軸方向に移動して前記ピストン室の内壁に係止される場合の衝撃を緩和する緩衝機構と、を有し、
前記ピストン又は前記出力軸が前記ピストン室の内壁に係止されるときの衝撃加速度を前記緩衝機構によって低減し、前記ベローズの損傷を防止したものであること、を特徴とする真空弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−121859(P2008−121859A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−309277(P2006−309277)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】
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