説明

真空播種機

【課題】 メンテナンスの手間及びコストを省くことができる。
【解決手段】 本発明の真空播種機1は、それぞれの軸が水平且つ互いに平行になるように回転自在に支持された播種ロール20及び攪拌ロール22を備え、播種ロール20及び攪拌ロール22間の上側に形成される断面略V字状且つ前記軸の長さ方向に延びる溝状スペース29に存在する種子Aを、播種ロール20の周面に設けられた吸引孔21に吸着させるとともに該播種ロール20を回転駆動することにより搬送し播種するように構成されている。播種ロール20の周面における吸引孔21が設けられている部位と、攪拌ロール22の周面における吸引孔21に対峙し得る部位との間に、種子Aが通過しない隙間Sを設けるように構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種子を、播種ロールの周面に吸着し該播種ロールを回転駆動することにより搬送し播くように構成された真空播種機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の第一の真空播種機としては、特許文献1記載のものを例示する。この真空播種機は、図4に示すように、一対の側板の間にホッパー83及び底板85と支持杆(図示略)が横設されて枠組されており、前記側板間に播種ロール82が回転自在に横架され、一側の前記側板に駆動部(図示略)が設けられ、前記側板の内側に駆動モーター(図示略)が固設されている。底板85の下部上にはスポンジ86が貼設され、該スポンジ86は播種ロール82に当接されて、該底板85とスポンジ86によりホッパー内の種子がこぼれ落ちないようにしている。そして、駆動モーターを駆動させることにより播種ロール82が回転され、該播種ロール82の軸部の一端には吸引ホース(図示略)が接続されて、この吸引によりホッパー83内の種子Aが播種ロール82の吸引孔82aに吸着されて下方まで搬送されて落下され、ポット(図示略)上に播種されるようになっている。
【0003】
また、従来の第二の真空播種機としては、図5及び図6に示すように、それぞれの軸が水平且つ互いに平行になるとともに、互いの周面同士が当接するように回転自在に支持された播種ロール90及び攪拌ロール92を備えているものを例示する。播種ロール90及び攪拌ロール92は金属製となっており、播種ロール90及び攪拌ロール92間の上側に形成される断面略V字状且つ前記軸の長さ方向に延びる溝状スペース99に供給される種子Aを、播種ロール90の周面に設けられた吸引孔90aに吸着させるとともに播種ロール90を回転駆動することにより搬送し播種するように構成されているものを例示する。
【0004】
【特許文献1】実開平6−33408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の第一の真空播種機では、吸引孔82aが設けられた播種ロール82の周面が常にスポンジ86に摺接した状態となっているので、スポンジ86が摩耗し易く、メンテナンスの手間が掛かるという課題がある。
【0006】
また、従来の第二の真空播種機では、攪拌ロール92の周面との接触により播種ロール90の表面が傷付きやすく、特に吸引孔90aの開口縁部やその近傍に傷が付くと、種子A(一般に真空播種機で播く種子は高価なものが多い。)を傷めたり、吸着能力の低下、吸引孔への複数の種子の吸着等の不具合が発生するという課題がある。そして、播種ロール90の吸引孔90aは非常に小さい(例えば種子Aの大きさが0.3mm〜0.5mmのペチュニアに対応したものの場合、吸引孔90aの直径は0.3mm未満。)ため、製造に高度な加工技術が要求され、高価な部品となっている。このため、播種ロール90の交換にはコストが掛かるという問題もある。そこで、播種ロール90に硬度の高い材料を使用したり、播種ロール90の表面の硬度を高めるための特殊な処理を施す方法も考えられるが、そうすると、播種ロール90の製造コストがさらに高くなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の真空播種機は、
それぞれの軸が水平且つ互いに平行になるように回転自在に支持された播種ロール及び攪拌ロールを備え、前記播種ロール及び前記攪拌ロール間の上側に形成される断面略V字状且つ前記軸の長さ方向に延びるスペースに存在する種子を、前記播種ロールの周面に設けられた吸引孔に吸着させるとともに該播種ロールを回転駆動することにより搬送し播種するように構成された真空播種機であって、
前記播種ロールの周面における前記吸引孔が設けられている部位と、前記攪拌ロールの周面における前記吸引孔に対峙し得る部位との間に、前記種子が通過しない隙間を設けるように構成している。
【0008】
前記「種子が通過しない隙間」とは、特に限定されないが、例えば、前記種子が球形の場合はその直径未満の隙間、前記種子が扁平形の場合はその最大厚さ未満の隙間をいう。いうまでもなく、種子の大きさや形状にはバラツキがあるので、そのバラツキに合わせて前記隙間を適宜設定することが好ましい。
【0009】
この構成によれば、前記播種ロールの周面における前記吸引孔が設けられている部位に、前記攪拌ロールの周面が当接しないので、高価な部品である前記播種ロールにおいて、機能及び性能に中心的な役割を担う前記吸引孔を傷付けることがない。このため、前記従来の第二の真空播種機とは異なり、前記播種ロールを交換しなければならない事態の発生を抑制することができ、メンテナンスのコストを低減することができる。また、前記播種ロールには、従来の第一の真空播種機とは異なり、スポンジ状等の摩耗し易い部品が摺接していないので、メンテナンスに手間が掛からない。また、前記隙間を設けることにより、該隙間からゴミ、カス等をふるい落とすことができる。
【0010】
前記真空播種機としては、
前記攪拌ロールの周面における前記吸引孔に対峙し得ない部位に、前記隙間の間隔に等しい高さを有し且つ周方向に延びる環状凸部を設け、該環状凸部を前記播種ロールの周面に当接させることにより、前記隙間を設けた態様を例示する。
【0011】
この構成によれば、簡単な構成により低コストで、前記隙間を設けることができる
【0012】
前記真空播種機としては、
前記播種ロールの周面における前記吸引孔が設けられていない部位に、前記隙間の間隔に等しい高さを有し且つ周方向に延びる環状凸部を設け、該環状凸部を前記攪拌ロールの周面に当接させることにより、前記隙間を設けた態様を例示する。
【0013】
この構成によっても、簡単な構成により低コストで、前記隙間を設けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る真空播種機によれば、メンテナンスの手間及びコストを省くことができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1及び図2は本発明を具体化した一実施形態の真空播種機1を示しており、本機は、コンベア手段としてのベルトコンベア2の上側に設置された機枠3に対し、それぞれの軸が水平且つ互いに平行になるように回転自在に支持された播種ロール20及び攪拌ロール22を備え、該播種ロール20の周面に設けられた吸引孔21に種子Aを吸着させるとともに該播種ロール20を回転駆動することにより種子Aを搬送し、ベルトコンベア2により搬送されてくる苗箱6の各ポット7に対して播種するように構成されている。
【0016】
機枠3には、播種ロール20が回転自在に横架されるとともに、該播種ロール20の径方向へ移動可能且つ回転自在に攪拌ロール22が横架されている。攪拌ロール22は図示しない付勢手段により播種ロール20側へ付勢されている。播種ロール20及び攪拌ロール22の軸長方向の一端側には互いに噛合するギア20a,22aがそれぞれ配設されており、いずれか一方のギア(本例では播種ロール側のギア20a)が図示しない回転駆動手段に駆動されると、互いに同期して反対方向に回転するようになっている。
【0017】
播種ロール20は、その軸長方向の中央部における周面に、軸長方向及周方向に間隔をおいて吸引孔21が略配列状に列設されている。
【0018】
攪拌ロール22は、播種ロール20と軸長が略同一に形成されている。そして、播種ロール20の周面における吸引孔21が設けられている部位と、攪拌ロール22の周面における吸引孔21に対峙し得る部位との間には、種子Aが通過しない隙間Sを次のように設けている。すなわち、本例では、攪拌ロール22の周面における吸引孔21に対峙し得ない部位としての軸長方向両端側の周面に、隙間Sの間隔に等しい高さを有し、且つ、周方向に延びる環状凸部23を設け、該環状凸部23を播種ロール20の周面に当接させることにより、隙間Sを設けている。
【0019】
そして、播種ロール20及び攪拌ロール22間の上側に形成される断面略V字状且つ前記軸の長さ方向に延びる溝状スペース29に種子Aが供給されるようになっている。溝状スペース29の長さ方向における両側はそれぞれブラシ24によって種子Aが、環状凸部23側に移動しないように堰き止められており、播種ロール20及び攪拌ロール22の回転に伴って、該溝状スペース29内の種子Aが攪拌されるとともに播種ロール20の吸引孔21に種子Aが吸着されるようになっている。
【0020】
以上のように構成された本例の真空播種機1によれば、播種ロール20の周面における吸引孔21が設けられている部位に、攪拌ロール22の周面が当接しないので、高価な部品である播種ロール20において、機能及び性能に中心的な役割を担う吸引孔21を傷付けることがない。このため、前記従来の第二の真空播種機とは異なり、播種ロール20を交換しなければならない事態の発生を抑制することができ、メンテナンスのコストを低減することができる。また、播種ロール20には、従来の第一の真空播種機とは異なり、スポンジ状等の摩耗し易い部品が摺接していないので、メンテナンスに手間が掛からない。また、隙間Sを設けることにより、該隙間Sからゴミ、カス等をふるい落とすことができる。
【0021】
また、攪拌ロール22の周面における吸引孔21に対峙し得ない部位に、隙間Sの間隔に等しい高さを有し且つ周方向に延びる環状凸部23を設け、該環状凸部23を播種ロール20の周面に当接させることにより、隙間Sを設けているので、簡単な構成により低コストで、隙間Sを設けることができる
【0022】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)図3に示すように、播種ロール20の周面における吸引孔21が設けられていない部位に隙間Sの間隔に等しい高さを有し且つ周方向に延びる環状凸部23を設け、該環状凸部23を攪拌ロール22の周面に当接させることにより、隙間Sを設けること。この構成によっても、前記実施形態と同様に、簡単な構成により低コストで、隙間Sを設けることができる。
(2)環状凸部23を設ける場所や、環状凸部23の数、形状、サイズ等を適宜変更すること。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係る真空播種機の要部を示す側断面図である。
【図2】図1のII矢視図である。
【図3】同要部の変更例を示す図2と同様の図である。
【図4】従来の第一の真空播種機を示す断面図である。
【図5】従来の第二の真空播種機の要部を示す側面図である。
【図6】図5のVI矢視図である。
【符号の説明】
【0024】
1 真空播種機
2 ベルトコンベア
3 機枠
6 苗箱
7 ポット
20 播種ロール
21 吸引孔
22 攪拌ロール
23 環状凸部
24 ブラシ
29 溝状スペース
A 種子
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの軸が水平且つ互いに平行になるように回転自在に支持された播種ロール及び攪拌ロールを備え、前記播種ロール及び前記攪拌ロール間の上側に形成される断面略V字状且つ前記軸の長さ方向に延びるスペースに存在する種子を、前記播種ロールの周面に設けられた吸引孔に吸着させるとともに該播種ロールを回転駆動することにより搬送し播種するように構成された真空播種機であって、
前記播種ロールの周面における前記吸引孔が設けられている部位と、前記攪拌ロールの周面における前記吸引孔に対峙し得る部位との間に、前記種子が通過しない隙間を設けるように構成した真空播種機。
【請求項2】
前記攪拌ロールの周面における前記吸引孔に対峙し得ない部位に、前記隙間の間隔に等しい高さを有し且つ周方向に延びる環状凸部を設け、該環状凸部を前記播種ロールの周面に当接させることにより、前記隙間を設けた請求項1記載の真空播種機。
【請求項3】
前記播種ロールの周面における前記吸引孔が設けられていない部位に、前記隙間の間隔に等しい高さを有し且つ周方向に延びる環状凸部を設け、該環状凸部を前記攪拌ロールの周面に当接させることにより、前記隙間を設けた請求項1又は2記載の真空播種機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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