説明

眼鏡レンズ加工装置

【課題】 作業者の手作業による座繰り加工のための深さ調整を不要とし、効率良く座繰り部の加工が行えるようにする。
【解決手段】 眼鏡レンズにリムレスフレームを取り付ける穴部及び座繰り部を加工する加工工具と、加工工具の先端位置データを記憶する記憶手段と、レンズ屈折面に形成する座繰り部の位置及び座繰り深さのデータを含む加工関連データを入力する関連データ入力手段を有し、加工工具の先端をレンズの屈折面に対して相対的に移動させてレンズ屈折面に座繰り部を加工する眼鏡レンズ加工装置において、加工工具の先端位置を検知する手段と、検知結果に基づいて記憶手段に記憶された先端位置データを補正する補正手段と、補正された先端位置データ及び加工関連データに基づいて座繰り加工の動作を制御する加工制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズにリムレスフレームを取り付けるための座繰り部及び穴部を加工する眼鏡レンズ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズにリムレスフレーム(ツーポイントフレーム)を取り付けるための穴部をレンズ屈折面に自動的に加工する眼鏡レンズ加工装置が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−145328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
リムレスフレームを眼鏡レンズに取り付ける場合、貫通穴のみならず、レンズ屈折面に座繰り部(貫通させない凹部形状)を必要とするものがある。この場合、穴あけ加工具としてエンドミルを使用することにより可能となる。しかし、眼鏡レンズの穴加工は直径1mm弱のエンドミルを使用するため、これは折れやすい。エンドミルが折れた場合には新品のものに交換するが、座繰り加工のためにはその深さ調整が交換の都度必要である。これは、エンドミル自体の長さの個体差と取り付け誤差により、エンドミル先端の位置が最大で0.5mm程ばらつくためである。この調整方法としては、調整用レンズに実際に座繰り加工を施し、作業者の確認によるトライアンドエラーで調整する方法があるが、これは手間であり、かなりの調整時間を要する。特に、加工センター等で多数の眼鏡レンズを集中加工する場合には、調整時間のロスの問題は大きい。
【0004】
本発明は、作業者の手作業による座繰り加工のための深さ調整を不要とし、効率良く加工が行える眼鏡レンズ加工装置を提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために次のような構成を備えることを特徴とする。
【0006】
(1) 眼鏡レンズにリムレスフレームを取り付けるための穴部及び座繰り部を加工するための加工工具と、該加工工具の先端位置データを記憶する記憶手段と、レンズ屈折面に形成する座繰り部の位置及び座繰り深さのデータを含む加工関連データを入力する関連データ入力手段を有し、前記加工工具の先端を眼鏡レンズの屈折面に対して相対的に移動させてレンズ屈折面に座繰り部を加工する眼鏡レンズ加工装置において、前記加工工具の先端位置を検知する先端位置検知手段と、該検知結果に基づいて前記記憶手段に記憶された先端位置データを補正する補正手段と、補正された先端位置データ及び前記加工関連データに基づいて座繰り加工の動作を制御する加工制御手段と、を備えることを特徴とする。
(2) (1)の眼鏡レンズ加工装置において、眼鏡レンズを保持するレンズ保持軸と、該レンズ保持軸に対して前記加工工具の軸角度を可変とする共に眼鏡レンズの屈折面に対して相対的に移動させる加工工具移動手段と、前記レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズの座繰り位置におけるレンズ屈折面の傾斜角データを入力する屈折面データ入力手段とを備え、前記加工制御手段は前記補正手段により補正された先端位置データ,前記加工関連データ及び前記傾斜角データに基づいて前記加工工具移動手段を制御し、前記レンズ保持軸に対して傾斜したレンズ屈折面に所期する深さの座繰り加工を行わせることを特徴とする。
(3) (1)又は(2)の眼鏡レンズ加工装置において、前記先端位置検知手段は、前記加工工具の先端に接触させる接触子と、該接触子に対して前記加工工具の先端を軸方向に相対的に移動して接触させる接触移動手段と、前記接触子の動きを電気的に検知する検知器とを備え、前記加工工具は加工時の切り屑や洗浄液をシールドするために隔離された加工室に配置され、前記検知器を前記加工工具が配置された前記加工室の外に設けたことを特徴とする。
(4) (1)〜(3)の何れかの眼鏡レンズ加工装置において、前記先端位置検知手段は前記加工工具の折損を検知する手段を兼ねる検知手段であり、前記加工工具による加工前又は加工終了後に前記先端位置検知手段を作動させる検知制御手段と、前記加工工具の折損が検知されたときにはその旨を作業者に知らせる報知手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、作業者の手作業による座繰り加工のための深さ調整が不要となり、レンズ屈折面に座繰り部を効率良く加工できる。また、簡単な構成で加工工具の先端位置の検知機構を構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る眼鏡レンズ加工システムの概略概略図である。
【0009】
加工システム1は、眼鏡レンズLEの周縁を加工するレンズ周縁加工装置100と、レンズLEを搬送するロボットハンドリング装置(RH装置)200と、レンズLEに穴あけ加工する穴あけ加工装置300と、レンズLEが左右一対で収納されるレンズ収納トレイ401を複数個ストックするレンズストック装置400と、各装置を制御するシステム制御部600と、を備える。システム制御部600は、発注データを管理するホストコンピュータ(ホストPC)620に接続されている。610はシステムの異常を警告する警告ランプである。穴部や座繰り部を加工するための加工工具の折損が検知された時や各装置に異常があった時に、警告ランプ610が点灯される。
【0010】
ストック装置400は、トレイ401を上下に並べて載せるための供給用ステージ410、受取用ステージ420、ステージ410,420をそれぞれ移動する上下動機構412,422、トレイ401を保持してステージ410側からステージ420へ移動するクランプアーム部430、トレイ401に添付された作業番号のバーコードを読み取るバーコード読取器440を備える。ステージ410にはトレイ401を10個搭載でき、連続して10組のレンズLEを連続的に加工できる。
【0011】
周縁加工装置100及び穴あけ加工装置300は、システム1のテーブル上に設置されている。RH装置200は、周縁加工装置100及び穴あけ加工装置300とストック装置400との間に設けられた搬送路に沿って左右方向に移動可能とされている。RH装置200の上下スライド部214が上下移動可能に設けられており、また、第1アーム216、第2アーム218がそれぞれ水平方向に回転可能となっている。第2アーム218の先端側にはレンズLEを吸着して保持する吸着部222が設けられている。吸着部222はエアーポンプに接続され、エアーポンプの吸引駆動によりレンズLEが吸着保持される。RH装置200は、トレイ401から未加工のレンズLEを取り出し、レンズ周縁加工装置100及び穴あけ加工装置300に搬送してレンズLEを自動的に供給し、加工済みのレンズLEを再びトレイ401に戻す。
【0012】
図1において、穴あけ加工装置300の正面には表示器及び入力スイッチを兼ねるタッチパネル381が配置されている。
【0013】
図2は周縁加工装置100の構成を説明する図である。周縁加工装置100は、上下に伸びるチャック軸111,112(レンズ保持軸)により、被加工レンズLEを挟持する。上側のチャック軸111は、サブベース102の中央に備えられた上下機構部110により上下方向に移動され、また、モータ115により回転される。下側のチャック軸112は、メインベース101に固定されたホルダ120に回転可能に保持されており、モータ123により上側のチャック軸111と同期して回転される。
【0014】
レンズLEをチャック軸111,112に保持させるときは、レンズLEに加工治具となるカップ390を、粘着パッドを介して取り付けておく。チャック軸112には、カップ390の基部を挿入するためのカップホルダ113が取り付けられている。
【0015】
チャック軸111,112に保持されたレンズLEは、砥石151をそれぞれ回転軸に持つ研削部150R,150Lにより、2方向から加工される。砥石151は、粗加工用砥石、平仕上用砥石、ヤゲン仕上用砥石及び面取り砥石を持つ。研削部150R、150Lは、左右対称であり、それぞれサブベース102に備えられた移動機構により、上下及び左右方向に移動される。なお、この加工装置100の加工部構成は、本出願人による特開平9−253999号公報のものと基本的に同様である。
【0016】
また、サブベース102の中央奥側には、レンズ屈折面の形状を測定するレンズ形状測定部160が収納されている。図3はレンズ形状測定部160の概略構成図である。測定部160は、測定アーム161に先端に取り付けられ、レンズ前側屈折面に接触させる測定子162と、測定アーム161を上下方向(チャック軸111,112の軸方向:Z方向)に移動可能に保持する測定ユニット165と、測定アーム161を上下方向に移動させるモータ167と、測定アーム161を上方向に常時付勢するバネ168と、測定アーム161の上下の移動位置を検知するポテンショメータ等の検知器170と、測定ユニット165を前後方向(図3上の左右方向:Y方向)に移動可能に保持する前後保持ユニット172と、上下保持ユニット165を前後に移動させるためのモータ174とから概略構成される。
【0017】
レンズLEの前側屈折面の形状測定時は、レンズLEの屈折面を測定すべきXY位置情報又は動径情報に基づき、レンズLEを回転させると共にモータ174を回転させて測定子162を位置させる。その後、測定子162がバネ168に引っ張られることによりレンズ屈折面に接触するようになるので、この測定子162の上下位置(Z方向の位置)を検知器170により検知する。玉型形状に基づいてレンズLEの全周を測定するときは、測定子162をレンズ屈折面に接触させながらレンズLEを1回転させると共に、玉型形状の動径情報に基づいて測定ユニット165を前後移動させ、このときの測定子162の上下位置を検知器170により読み取る。穴明け加工のときは、指定された穴位置に測定子162を位置させ、その上下位置を検知器170により読み取る。レンズ屈折面の傾斜角が必要なときは、指定された穴位置データとそれより所定量(0.5mm)外側の2箇所に測定子162を位置させ、それぞれの上下位置を検知器170により読み取ることにより近似的な傾斜角が求められる。
【0018】
なお、図3はレンズ前側屈折面の形状測定機構であり、レンズ形状測定部160はレンズ後側屈折面の形状測定機構を備えるが、その測定機構は基本的に上下が逆であるので、ここでは説明を省略している。
【0019】
次に、図4〜8により穴あけ加工装置300の構成を説明する。図4は、穴あけ加工装置300のレンズ保持機構を説明する図であり、装置300の内部を正面から見たときの図である。ベース301にチャック下部機構310、ベース301に立設したサブベース302にチャック上部機構320が設けられている。レンズLEはチャック下部機構310側のチャック軸311とチャック上部機構320側のチャック軸321とにより保持される。チャック軸311は、ベース301に固定されたホルダ312により回転可能に設けられており、ギヤ等の回転伝達機構を介してモータ315により回転される。チャック軸311の上部には、レンズLEに固定されたカップ390の基部を挿入するためのカップホルダ313が取り付けられている。
【0020】
チャック上部機構320側のチャック軸321は、チャック軸ホルダ322に回転可能に保持されている。チャック軸ホルダ322の上部にはモータ323が設けられている。このモータ322によりチャック軸321が回転される。また、サブベース302の上方には固定ブロック330が固定されており、固定ブロック330の前側にチャック軸ホルダ322がスライドレール331に沿って上下移動可能に取り付けられている。固定ブロック330の上部にはモータ333が取り付けられており、このモータ333が送りネジ等を介してチャック軸ホルダ322を上下移動させる。チャック軸321の下端にはレンズ押さえ325が取り付けられている。レンズLEを保持するときは、モータ333によりチャック軸ホルダ322を下降させる。モータ315及びモータ323を同期して回転することにより、チャック軸311及び321に保持されたレンズLEを回転する。
【0021】
図4において、800は穴あけ機構部である。穴あけ機構部800は、上下・左右移動機構部350により上下方向及び左右方向に移動可能とされている。
【0022】
図5は、装置300の内部を裏側から見たときの図であり、上下・左右移動機構部350は次のような構成となっている。ベース301には、上下に伸びる2本のシャフト351が立設しており、このシャフト351に沿って上下移動支基353が上下移動可能となっている。サブベース302の上部にはブロック355が固定されており、ブロック355の上部に上下移動用のモータ357が取り付けられている。モータ357の回転軸には、送りねじ359が連結されている。上下移動支基353の上面にはナットブロック360が固定されており、送りねじ359の回転によりナットブロック360と共に上下移動支基353が上下移動する。
【0023】
また、モータ357にはエンコーダ358が設けられており、エンコーダ358により上下移動支基353の上下移動位置、すなわち穴あけ機構部800の上下位置が検知される。穴あけ機構部800の上下の原点位置は、上下移動支基353に上面に固定された遮光板354aと、この遮光板354aに対向する上方のサブベース302に固定されたフォトセンサ354bにより検知される。
【0024】
上下移動支基353には左右移動用のモータ363が固定されている。モータ363の回転軸は左右方向に伸びる送りねじ365と連結されている。送りねじ365が回転すると、送りナットが形成された左右移動ブロック370が左右に伸びるシャフト369にガイドされて左右方向に移動する。この左右移動ブロック370に、穴あけ機構部800が取り付け板373を介して取り付けられている。穴あけ機構部800は、モータ363を正逆回転することにより左右に移動し、モータ357を正逆回転することにより上下に移動する。
【0025】
また、モータ363にはエンコーダ364が設けられており、エンコーダ364により穴あけ機構部800の左右移動位置が検知される。穴あけ機構部800の左右の原点位置は、左右移動ブロック370に固定された遮光板368aと、この遮光板368aに対向して上下移動支基353に固定されたフォトセンサ368bとにより検知される。
【0026】
穴あけ機構部800の構成を図6、7に基づいて説明する。図6は穴あけ機構部800の立体図、図7は穴あけ機構部800の回転機構を説明する断面図である。
【0027】
機構部800のベースとなる固定板801は、図5で示した上下・左右移動機構部350の取り付け板373に固定されている。固定板801には前後(Y方向)に延びるレール802が取付けられ、レール802上をスライダー803が摺動する。スライダー803には、移動支基804がネジ止めされている。移動支基804のY方向の移動は、モータ805がボールネジ806を回転することによって行なわれる。モータ805にはY方向の移動位置検知用のエンコーダ805aが設けられている。また、移動支基804のY方向の原点位置は、図示を略すフォトセンサと遮光板の構成により検知される。
【0028】
移動支基804には、回転支基810が軸受け811によって回転可能に軸支されている。また、軸受け811の片側にはギヤ813が回転支基810に固定されている。ギヤ813はアイドルギヤ814を介して移動支基804に取付けられたパルスモータ816の軸に固定されたギヤ815と繋がっている。つまり、パルスモータ816を回転させると、回転支基810が軸受け811の軸を中心として回転する。回転部830の回転角は、パルスモータ816に出力するパルス数により管理される。
【0029】
回転支基810の先端部には、穴あけ・溝掘り加工用の工具を保持する回転部830が設けられている。回転部830はモータ805により、前後方向(Y方向)に進退移動される。回転部830の回転軸831の中央部にはプーリ832が付けられ、回転軸831は2つの軸受け834により回転可能に軸支されている。また、回転軸831の一端には穴あけ加工及び座繰り加工を可能にする加工具であるエンドミル835がチャック機構837により取付けられ、他端にはスペーサ838、溝掘用カッター836がナット839により取付けられている。エンドミル835の径は、直径0.8mm程である。
【0030】
回転軸831を回転するためのモータ840は、回転支基810に取付けられた取付板841にネジ止めされている。モータ840の軸にはプーリ843が取付けられている。プーリ832とプーリ843の間には回転支基810内部でベルト833が掛けられ、モータ840の回転が回転軸831へ伝達される。
【0031】
図8は、穴あけ機構部800が持つエンドミル835の先端位置検知機構部850の構成を説明する図である。検知機構部850は、エンドミル835が折れたことを検知する折損検知機構を兼ねる。検知機構部850の支基851には、滑り軸受け852を介して軸853が上下移動可能に保持されている。軸853の下面853aは支基851より突出し、エンドミル835が接触する接触子となる。軸853はバネ854により常に下方向に付勢されている。支基851の上部より上側に突出した軸上部853bには遮光板855が固定されている。また、支基851の上部には取り付け板856を介してフォトセンサ857が固定されている。フォトセンサ857は軸853が一定距離以上に上方へ押し上げられることによって、遮光板855を検知する位置に配置されている。
【0032】
エンドミル835が折れていない場合、所定の初期位置に配置された回転部830を上方に移動させると、エンドミル835の先端が軸853の下面853aに接触し、軸853を上方に押し上げる。軸853の上方への移動により遮光板855も上方に移動し、これがフォトセンサ857により検知される。フォトセンサ857が遮光板855を検知したときの回転部830の上下移動位置を、エンコーダ358で読み取ることによりエンドミル835の先端位置データが検知される。また、エンドミル835が折れている場合、回転部830を一定量だけ上方へ移動してもエンドミル835の先端が軸853の下面853aに接触しないため、フォトセンサ857は遮光板855を検知できない。これにより、エンドミル835が折れていることも検知できる。
【0033】
なお、支基851は穴あけ加工装置300の加工室303を形成する仕切り板305の上部に設けられている。軸853の下面853aは加工室303に現れ、軸上部853bに固定された遮光板855及び電気素子であるフォトセンサ857は、仕切り板305により加工室303と隔たれた加工室外に配置されている。加工室303内では、レンズLEの穴あけ加工時に、エアーポンプ306から供給されるエアーがノズル307から吹き付けられ、レンズLEに付着する切り屑(加工粕)が飛ばされる。また、レンズLEの溝掘り加工時や穴加工後の洗浄用として、洗浄液供給ユニット309からの洗浄液(研削液)がノズル308から噴射される。このため、加工室303内では切り屑や埃、洗浄液が飛散する。電気素子であるフォトセンサ857は、これらが達しないように保護する必要があるため、仕切り板305によってシールドされた加工室303外に配置されている。なお、加工室303の背面まで仕切り板305は伸びており、回転部830及び回転式の前側の一部が加工室303に現れ、回転支基810の後方の機構部は伸縮自在で蛇腹構造のダイアフラム309によって覆われている。これにより、穴あけ機構部800の移動機構等も加工室303と隔たれ、加工室303内での切り屑や埃、洗浄液等から保護される。
【0034】
次に、以上のような構成を持つ眼鏡レンズ加工システムにおいて、図9の制御系ブロック図を使用して座繰り加工の動作を中心に説明する。
【0035】
まず、エンドミル835の寿命や破損等により、これを交換する場合、タッチパネル381上の所定のキーを操作してメインテナンス画面を呼び出した後、工具交換モードを設定する。工具交換モードに設定されると、穴あけ加工装置300の制御部380は上下・左右移動機構部350及び穴あけ機構部800の各モータを制御し、回転部830を所定の交換位置に位置させる。作業者は、チャック機構837により取り付けられたエンドミル835を新しいエンドミル835に交換した後、穴あけ加工装置300のリセットスイッチを押して初期化信号を装置に入力する。リセットスイッチ信号が入力されると、制御部380は、上下・左右移動機構部350及び穴あけ機構部800の各モータを制御し、エンドミル835の軸が上下方向となるように回転部830を軸853の下面853aより下の退避状態に一旦位置させる。その後、モータ357を駆動制御して回転部830と共にエンドミル835を軸853の軸方向に上昇移動させる。この移動によりエンドミル835の先端が軸853の下面853aに接触し、さらに軸853を押し上げることにより、フォトセンサ857は遮光板855が検知位置に達したことを検知する。
【0036】
制御部380は、フォトセンサ857の検知信号が得られたときの回転部830の上下位置をエンコーダ358の出力から読み取り、これを基にエンドミル835の実際の先端位置データを得る。メモリ383には交換前のエンドミル835の先端位置データが記憶されており、制御部380はメモリ383に記憶された先端位置データを新たな先端位置データに補正(更新)する。先端位置データは、所定の基準位置に対するずれ量として管理する(前回の先端位置データに対する差分として管理する方法も含まれる)。制御部380は、メモリ383に新たに記憶し直した先端位置データを座繰り加工時の調整値として使用する。
【0037】
次に、レンズLEの周縁加工及び穴加工、座繰り加工の動作を説明する。作業者は、加工準備として、未加工のレンズLEを左右一対にして各トレイ401に収納し、ストック装置400のステージ410上に10個のトレイ401を縦に並べて載置する。レンズLEには、予めカップ390が固定されている。作業者はシステム制御部600の加工開始スイッチを押して加工システムを作動させる。
【0038】
まず、ストック装置400が作動し、最上段にあるトレイ401に添付された作業番号がバーコード読取器440に読み取られる。システム制御部600は、ホストPC620から作業番号に対応してレンズ加工に必要な玉型データや穴加工に関連するデータ(穴位置のレイアウトデータ、穴径のデータ、穴方向のデータ、座繰り加工の場合はその位置、座繰り範囲及び座繰り深さのデータ等)を読み出し、周縁加工装置100及び穴あけ加工装置300にそれぞれの加工に必要なデータを入力する。ストック装置400により、始めのトレイ401が所定のレンズ受け渡し位置に位置すると、RH装置200は吸着部222によりレンズLEを吸着保持して周縁加工装置100に搬送する。
【0039】
周縁加工装置100では、レンズLEがチャック軸111,112により保持され、始めにレンズ形状測定部160の作動により、玉型データを基にしたレンズ前側屈折面及びレンズ後側屈折面の形状が測定される。この測定データはレンズLEの周縁加工に使用される。作業指示に穴加工がある場合には、穴位置のレイアウトデータ(例えば、玉型中心に対するXY座標位置)を基に、指定された穴位置とそれよりX方向に所定量(0.5mm)外側の2箇所が測定され、その各位置に対するZ方向位置が屈折面形状として得られる。作業指示に座繰り加工がある場合も同様に、指定された座繰り中心の位置とそれよりX方向に所定量外側の2箇所が測定され、その各位置に対するZ方向位置が屈折面形状として得られる。測定が終了すると、これらの測定データが周縁加工装置100の制御部から穴あけ加工装置300の制御部380に送られる(入力される)。
【0040】
周縁加工装置100では、レンズ形状測定後に研削部150R,150LによりレンズLEの周縁が加工される。周縁加工が終了すると、RH装置200によりレンズLEが周縁加工装置100から取り出され、穴あけ加工装置300に搬送される。穴あけ加工装置300では、チャック軸311上にレンズLEが載せられると、制御部380の制御によりモータ333が駆動され、チャック軸321が下降されてレンズLEがチャッキングされる。
【0041】
穴加工・座繰り加工を説明する。穴加工・座繰り加工データは、ホストPC620から入力された加工関連データ(穴位置のレイアウトデータ、穴径のデータ、穴方向のデータ、座繰り加工の場合はその位置、座繰り範囲及び座繰り深さのデータ等)と、周縁加工装置100側から入力されたレンズ前側屈折面形状データとに基づいて、制御部380により決定される。例えば、図10のように、貫通穴H1の穴位置Ph1を中心にして、座繰り深さ(穴深さ)De1、直径サイズSi1の円形形状の座繰りCo1を形成するものとする。貫通穴H1及び座繰りCo1の穴方向は、レンズ前側屈折面に対して法線方向に指定されているものとする。周縁加工装置100からは位置Ph1のZ位置データと、それよ所定量外側の位置M1についてのZ位置データが入力される。制御部380は、Ph1とM1のZ位置データを基に、位置Ph1におけるレンズ屈折面の接線Tとその傾斜角α1を求める。座繰り深さDe1は接線Tに対して垂直方向となるので、制御部380はエンドミル835のZ軸(チャック軸)に対する傾斜角度を角度α1とすると共に、接線Tに対して垂直方向に深さDe1分だけエンドミル835の先端を位置させるものとして加工データを求める。また、座繰り範囲の加工データは、接線Tの傾斜角度α1におけるの直径サイズSi1として求める。
【0042】
加工データが得られると、制御部380はモータ315及びモータ323を制御して回転レンズLEを回転した後、穴あけ機構部800の各モータを制御し、図10のように、エンドミル835をZ軸に対して角度α1だけ傾ける。この状態でエンドミル835を回転させながら、位置Ph1を中心にした直径サイズSi1、深さDe1の加工データに基づいてモータ357,363及び805を制御してエンドミル835の先端を移動することにより座繰りCo1の加工が行える。このとき、制御部830はメモリ383に記憶された先端位置データに基づいてエンドミル835の先端の移動位置を制御することにより、深さDeの所期する深さの座繰り加工を行うことができる。また、位置Ph1に位置させたエンドミル835の先端がZ軸に対する角度α1方向に進むように各モータを制御することにより、貫通穴H1の穴あけ加工が行える。
【0043】
穴及び座繰りの加工時には、ノズル307からエアーが噴出され、エンドミル835及びレンズLEの加工部分の切り屑が飛ばされる。また、加工終了後は、ノズル308から洗浄液が噴射され、レンズLEの洗浄が行われる。
【0044】
穴あけ加工装置300での加工が終了すると、RH装置200によりレンズLEが穴あけ加工装置300から取り出され、トレイ401の元の位置に戻される。続いて、同じトレイ401にあるもう片方のレンズLEが同様に搬送され、周縁加工装置100による周縁加工及び穴あけ加工装置300による穴あけ加工が行われる。トレイ401に収納された左右一対のレンズ加工が終了すると、加工済みのレンズが入れられたトレイ401はクランプアーム部430により受取用ステージ420まで移動され、受取用ステージ420上に載せられる。続いて、次のトレイ401に入っているレンズを加工すべく、2段目のトレイ401が所定のレンズ受け渡し位置に上昇された後、そのトレイに入れられたレンズLEがRH装置200により周縁加工装置100及び穴あけ加工装置300に搬送され、同様に加工が実行される。
【0045】
ここで、エンドミル835は、直径0.8mmと細いので、多数のレンズを加工していくうちに折れることがある。エンドミルは根元から先端にかけて一様な径となっているので、その構造上、根元から折れる。制御部380は、レンズLE毎の穴あけ等の加工終了後又は加工前に、検知機構部850によりエンドミル折れの有無を検知するために、エンドミル835を軸853の下面853aより下の一定位置に置いた後、モータ357の駆動により一定距離分だけ上昇させる。直前の加工でエンドミル折れがあった場合、回転部830が一定距離分だけ上方に移動しても、軸853を押し上げることができないので、フォトセンサ857がONとならない。制御部830は、エンドミル835が折れていることを検知すると、その後の加工を停止すると共に、穴あけ加工装置300の前面に設けられたタッチパネル381にその旨のエラーメッセージ(警告)を表示する。また、エンドミル835が折れている旨のエラー信号をシステム制御部600に送る。システム制御部600は、警告ランプ610を点灯してシステムの異常を作業者に警告すると共に、周縁加工装置100及びRH装置200の作動を停止する。作業者は、警告ランプ610の点灯とディスプレイ381のエラーメッセージによりエンドミル折れを知ることができ、エンドミル835を交換することでエラー対応を行う。これにより、エンドミル折れによって不良レンズを大量に作ることなく、レンズを連続して自動加工できる。
【0046】
以上説明した実施形態は、種々の変容が可能である。例えば、図8に示した検知機構部850においては、上下・左右移動機構部350によりエンドミル835を上方に移動して軸853を押し上げる構成としたが、この移動を相対的に逆にしても良い。すなわち、エンドミル折れ検知機構部850をエンドミル835の先端に当たる位置まで移動する機構を設けることで、同様にエンドミル折れが無いときにセンサ857がONとなるようにしても良い。
【0047】
また、上記の実施形態では穴あけ機構部800及び検知機構部850は、周縁加工装置100と別に設けた構成としたが、もちろん特開2003−145328号公報のように、周縁加工装置100側にこれらを設ける構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】眼鏡レンズ加工システムの概略構成図である。
【図2】周縁加工装置の構成を説明する図である。
【図3】レンズ形状測定部の概略構成図である。
【図4】穴あけ加工装置のレンズ保持機構を説明する図である。
【図5】穴あけ加工装置の内部を裏側から見たときの図である。
【図6】穴あけ機構部を説明する立体図である。
【図7】穴あけ機構部の回転機構を説明する断面図である。
【図8】エンドミルの先端位置検知機構部の構成を説明する図である。
【図9】眼鏡レンズ加工システムの制御系ブロック図である。
【図10】座繰り加工の例を説明する図である。
【符号の説明】
【0049】
1 眼鏡レンズ加工システム
100 レンズ周縁加工装置
300 穴あけ加工装置
303 加工室
305 仕切り板
311,321 チャック軸
350 上下・左右移動機構部
358 エンコーダ
380 制御部
383 メモリ
400 レンズストック装置
600 システム制御部
800 穴あけ機構部
830 回転部
835 エンドミル
850 先端位置検知機構部
853 軸
853a 下面
857 フォトセンサ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズにリムレスフレームを取り付けるための穴部及び座繰り部を加工するための加工工具と、該加工工具の先端位置データを記憶する記憶手段と、レンズ屈折面に形成する座繰り部の位置及び座繰り深さのデータを含む加工関連データを入力する関連データ入力手段を有し、前記加工工具の先端を眼鏡レンズの屈折面に対して相対的に移動させてレンズ屈折面に座繰り部を加工する眼鏡レンズ加工装置において、前記加工工具の先端位置を検知する先端位置検知手段と、該検知結果に基づいて前記記憶手段に記憶された先端位置データを補正する補正手段と、補正された先端位置データ及び前記加工関連データに基づいて座繰り加工の動作を制御する加工制御手段と、を備えることを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【請求項2】
請求項1の眼鏡レンズ加工装置において、眼鏡レンズを保持するレンズ保持軸と、該レンズ保持軸に対して前記加工工具の軸角度を可変とする共に眼鏡レンズの屈折面に対して相対的に移動させる加工工具移動手段と、前記レンズ保持軸に保持された眼鏡レンズの座繰り位置におけるレンズ屈折面の傾斜角データを入力する屈折面データ入力手段とを備え、前記加工制御手段は前記補正手段により補正された先端位置データ,前記加工関連データ及び前記傾斜角データに基づいて前記加工工具移動手段を制御し、前記レンズ保持軸に対して傾斜したレンズ屈折面に所期する深さの座繰り加工を行わせることを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【請求項3】
請求項1又は2の眼鏡レンズ加工装置において、前記先端位置検知手段は、前記加工工具の先端に接触させる接触子と、該接触子に対して前記加工工具の先端を軸方向に相対的に移動して接触させる接触移動手段と、前記接触子の動きを電気的に検知する検知器とを備え、前記加工工具は加工時の切り屑や洗浄液をシールドするために隔離された加工室に配置され、前記検知器を前記加工工具が配置された前記加工室の外に設けたことを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかの眼鏡レンズ加工装置において、前記先端位置検知手段は前記加工工具の折損を検知する手段を兼ねる検知手段であり、前記加工工具による加工前又は加工終了後に前記先端位置検知手段を作動させる検知制御手段と、前記加工工具の折損が検知されたときにはその旨を作業者に知らせる報知手段と、を備えることを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−189472(P2006−189472A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381566(P2004−381566)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000135184)株式会社ニデック (745)
【Fターム(参考)】