説明

矯正靴下

【課題】矯正力の高い矯正靴下を提供する。
【解決手段】矯正靴下1を、非伸縮状態でつま先部50の扁平に広がる(つぶれる)方向がかかと部30の横幅方向に対して傾斜するように編成する。足の構造にあわせて、つま先部50の扁平に広がる方向が足指の並列方向と一致するまで捻ったうえで着用すると、靴下1の復元弾性により、足に矯正力が作用する。靴下1の一部分ではなく全周の復元弾性により足を矯正するため、矯正力が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、矯正靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
外反や内反した足を、捻れのないニュートラルな状態に矯正するための靴下が種々考案されている。
たとえば特許文献1には、脚のすねに対応する部分から足の甲に対応する部分を経て足の中指から小指に対応する部分に至る範囲に、連続的に低伸縮領域を設けた靴下が開示されている。
この靴下を着用した際には、足首の内反方向への捻れが前記低伸縮領域によって妨げられるため、内反捻挫が防止されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−275300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1の靴下の場合、前記低伸縮領域の伸縮性の低さが障害となって足を自由に動かしにくい問題がある。
このように足が動かしにくいと着用感が悪く、また歩行時の足の運び方や立ち止まった際の足の姿勢に制約が生じるため、足に負担がかかってしまう。したがって、捻挫を防止することはできても、足に別の病状を引き起こすおそれがある。
【0005】
また、靴下の一部である低伸縮領域でのみ捻れを矯正しているため、矯正力が不十分である問題がある。
さらに、低伸縮領域とそれ以外の通常の伸縮性を有する領域とで、編み方を変えるなどする必要があるため、低伸縮領域と通常領域の境界が目立ち、体裁が悪い問題がある。
【0006】
そこでこの発明は、着用感がよく足に負担をかけず、しかも矯正力が高く外観もよい矯正靴下を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、足のかかとが収まるかかと部から足指が収まる扁平なつま先部まで一体に編成される矯正靴下において、非伸縮状態で前記つま先部の扁平に広がる方向が前記かかと部の横幅方向に対して傾斜する構成を採用したのである。
ここで、つま先部が扁平に広がる方向とは、つま先部の横断面を楕円形に近似したときにその楕円の長軸方向のことをいう。
【発明の効果】
【0008】
人間の足はかかとの横幅方向とつま先の足指の並列方向とがほぼ平行であるため、発明にかかる靴下を着用する際には、このような足の構造にあわせて、つま先部の扁平に広がる(つぶれる)方向が足指の並列方向に一致するまで捻ったうえで着用する。
すると、もとのつま先部が傾斜する状態へもどろうとする靴下全体の復元弾性により、足には当該靴下が復元しようとする方向への矯正力(引っ張る力)が作用する。
前掲した特許文献1の靴下とは異なり、靴下の一部分ではなく全周の復元弾性により足を矯正するため、矯正力が高い。
【0009】
また、従来の矯正靴下と異なり、低伸縮領域を設ける必要がないため、足が動かしにくくなることがない。したがって、着用感がよく足に負担がかかることもない。
同様に低伸縮領域を設ける必要がないため、靴下全体を同じ編み方で編成することができ、境界部分が現れず見た目が綺麗に仕上がる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態の矯正靴下の(a)は全体斜視図、(b)はかかと部の断面とつま先部の断面とを重ね合わせた図
【図2】実施形態の矯正靴下を履いた状態の模式図
【図3】(a)は実施形態の矯正靴下を編成する丸編機のシリンダの模式図、(b)は実施形態の矯正靴下の編み地の展開図
【図4】他の実施形態の矯正靴下の(a)はかかと部の断面とつま先部の断面とを重ね合わせた図、(b)は編み地の展開図
【図5】他の実施形態の矯正靴下の(a)はかかと部の断面とつま先部の断面とを重ね合わせた図、(b)は編み地の展開図
【図6】通常の靴下の(a)は全体斜視図、(b)はかかと部の断面とつま先部の断面とを重ね合わせた図
【図7】(a)は通常の靴下を編成する丸編機のシリンダの模式図、(b)は通常の靴下の編み地の展開図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態の矯正靴下を、通常の靴下と比較しつつ説明する。図1に実施形態の矯正靴下1を示し、図6に通常の靴下2を示す。
【0012】
図1(a)および図6(a)のように、実施形態の矯正靴下1および通常の靴下2は、いずれも足を挿し入れる筒形の履き口10、および脚のすねからふくらはぎにかけて全周が収まる筒形の脚部20を有する。
さらには、足のかかとが収まる椀型のかかと部30、足の甲から足裏にかけて全周が収まる筒形の足部40、および足指が収まる扁平なつま先部50を有する。
【0013】
これら履き口10、脚部20、かかと部30、足部40、およびつま先部50は、一体に編成されている。
さらに、かかと部30およびつま先部50にはゴアライン31、51が形成されており、またつま先部50には開口を塞いでなるリンキングライン42、52が形成されている。
【0014】
ここで、通常の靴下2は図6(b)のように、非伸縮状態でつま先部50の扁平に広がる(つぶれる)方向Ltがかかと部30の横幅方向Lhとほぼ平行になっている。
これに対し、この矯正靴下は図1(b)のように、非伸縮状態でつま先部50の扁平に広がる(つぶれる)方向Ltがかかと部30の横幅方向Lhに対してR=約90度傾斜している。
【0015】
また、同図からわかるように、通常の靴下2では、つま先部50の両側部にそれぞれゴアライン51が位置し、つま先部50の頂部にリンキングライン52が位置している。
これに対し、実施形態の矯正靴下1では、つま先部50の頂部および底部にそれぞれゴアライン51が位置し、つま先部50の側部にリンキングライン52が位置している。
【0016】
通常の靴下2を着用する際には、当然のことながら捻ったりすることなくそのままの状態で履き口10から足を挿し入れることになる。
これに対し、実施形態の矯正靴下1を着用する際には、つま先部50の扁平に広がる方向Ltが、足指の並列方向と一致するように、図1(b)の二点鎖線および図2に示すごとく、足部40からつま先部50にかけてを約90度ねじって着用することになる。
【0017】
このように捻った状態において、実施形態の矯正靴下1のつま先部50から足部40にかけての箇所には、図2の矢印で示すように、全体的にもとの状態に戻ろうとする復元力が生じ、これが足に作用することになる。
したがって、足首が内反方向にねじれがちな場合には、上記復元力が外反方向に生じるように矯正靴下1を着用すると、内反方向へのねじれへの抗力となって足の状態が矯正される。
同様に、足首が外反方向にねじれがちな場合には、上記復元力が内反方向に生じるように矯正靴下1を着用すると、外反方向へのねじれへの抗力となって足の状態が矯正される。
ちなみに、上記復元力自体が矯正に不十分な大きさであっても、その復元力が足に作用し続けることで、足をニュートラルな状態に戻そうという意識付け(注意喚起)がなされるため、足の矯正に資することができる。
【0018】
このような実施形態の矯正靴下1および通常の靴下2は、丸編機を用いてたとえば以下のようにして編成される。
図3および図7に示すように、いずれの靴下1、2においても、まず丸編機のシリンダを連続回転させながら全周の編針を作動させ履き口10および脚部20を筒形に順に編成してゆく。
【0019】
脚部20の編成を終えると、ついで図3(a)および図7(a)のシリンダのb、c、およびdの範囲の編針のみを作動させ、シリンダを往復動させて編成を続行する。
このとき、まず端部の編針を漸次休止させて編幅を減じながら台形の編地を編成し、次いで端部の編針をb、c、およびdの全範囲にいたるまで漸次再作動させて編幅を増しながら前記台形の編地と対称形の編地を編成する。
ここで図3(b)および図7(b)に示す両台形の編地の側縁31、31同士は、連続的に編成されてゴアライン31を形成しているため、椀状のかかと部30が編成されることになる。
【0020】
かかと部30の編成を終えると、ふたたびシリンダを回転させながら全周の編針を作動させて足部40を筒形に編成してゆく。
ここで、図3(b)および図7(b)の脚部20の終端21と足部40の始端41とは、連続的に編成されて連係部21、41となっている。
【0021】
通常の靴下2においては、足部40の編成を終えると、シリンダのb、c、およびdの範囲の編針のみを作動させ、シリンダを往復動させて編成を続行する。
かかと部30を編成した際と同様に、まず端部の編針を漸次休止させて編幅を減じながら台形の編地を編成し、次いで端部の編針をb、c、およびdの全範囲にいたるまで漸次再作動させて編幅を増しながら前記台形の編地と対称形の編地を編成する。
ここで図7(b)に示す両台形の編地の側縁51、51同士は、連続的に編成されて靴下2の両側部に現れるゴアライン51を形成している。
最後に、つま先部50から足部40にかけての開口縁52、42を閉じることで靴下2の頂部に現れるリンキングライン52、42が形成される。
【0022】
これに対して、実施形態の靴下1においては、足部40の編成を終えると、シリンダのa、b、およびcの範囲の編針のみを作動させ、シリンダを往復動させて編成を続行する。すなわち、通常の靴下2の場合とは、位相が90度ずれた状態で編成をおこなう。
かかと部30を編成した際と同様に、まず端部の編針を漸次休止させて編幅を減じながら台形の編地を編成し、次いで端部の編針をa、b、およびcの全範囲にいたるまで漸次再作動させて編幅を増しながら前記台形の編地と対称形の編地を編成する。
ここで図3(b)に示す両台形の編地の側縁51、51同士は、連続的に編成されて靴下1の頂部および底部に現れるゴアライン51を形成している。
最後に、つま先部50から足部40にかけての開口縁52、42を閉じることで靴下1の側部に現れるリンキングライン52、42が形成される。
【0023】
図4および図5に、他の実施形態の矯正靴下1を示す。
図4(a)の実施形態においては、つま先部50の扁平に広がる(つぶれる)方向Ltがかかと部30の横幅方向Lhに対してR=約45度傾斜しており、図5(a)の実施形態においては、つま先部50の扁平に広がる(つぶれる)方向Ltがかかと部30の横幅方向Lhに対してR=約135度傾斜している。
いずれの実施形態の矯正靴下1も、つま先部50の扁平に広がる方向Ltが足指の並列方向と一致するまで捻って着用し、その復元弾性により足を矯正する、あるいは矯正を意識づけるしくみになっている。
【0024】
他の実施形態の矯正靴下1は、たとえば図4(b)および図5(b)のように、丸編機での編成において、つま先部50を通常の靴下2と比較して位相を45度あるいは135度ずらすことで編成される。
【0025】
発明にかかる矯正靴下1において、つま先部50の扁平に広がる方向Ltのかかと部30の横幅方向Lhに対する傾斜角度は、実施形態の90度、45度、135度に限定されないが、45度〜135度とするのが好ましく、約90度とするのがもっとも好ましい。
また、発明にかかる矯正靴下1の編成方法も、上掲したものはあくまでも例示である。
【0026】
また、発明にかかる矯正靴下1は、実施形態の脚部20を有するタイプに限定されず、脚部20の無いいわゆるアンクル丈のものとしてもよい。
さらに、つま先の形状も実施形態に限定されず、足指に対応して分岐する足袋タイプのものでもよいし、親指側と小指側で形状が異なるタイプのものでもよい。
矯正靴下1の素材、編み方は特に限定されないし、部位ごとに編み方を変えてもよい。
【0027】
いずれにせよ、実施形態に示した矯正靴下1はあくまでも例示であって、これにより本発明の範囲が限定されることはない。
本発明の範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められ、特許請求の範囲に示された内容を限度として、実施形態についてのあらゆる変更が可能であり、その変更可能な形態も当然に本発明に包含されるものとする。
【符号の説明】
【0028】
1 実施形態の矯正靴下
2 通常の靴下
10 履き口
20 脚部
21 連係部
30 かかと部
31 ゴアライン
40 足部
41 連係部
42 リンキングライン
50 つま先部
51 ゴアライン
52 リンキングライン
Lt つま先部の扁平に広がる方向
Lh かかと部の横幅方向
R 傾斜角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足のかかとが収まるかかと部から足指が収まる扁平なつま先部まで一体に編成された矯正靴下において、
非伸縮状態でつま先部の扁平に広がる方向が前記かかと部の横幅方向に対して傾斜していることを特徴とする矯正靴下。
【請求項2】
前記つま先部の扁平に広がる方向と前記かかと部の横幅方向とのなす角度は、45度〜135度である請求項1に記載の矯正靴下。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−219890(P2011−219890A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89625(P2010−89625)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(502181078)吉谷靴下株式会社 (10)
【出願人】(303015974)田中勇商事株式会社 (2)
【Fターム(参考)】