説明

研削盤の砥石軸

【課題】相互に分離可能に連結される分割体から構成された砥石軸において、各分割体相互の連結状態を確認することができる砥石軸を提供する。
【解決手段】相互に密接する密接部(第一砥石軸71の端面84,第一砥石軸71のテーパ穴85,第二砥石軸72の端面86,第二砥石軸のテーパ筒87)を夫々有し、軸方向に分離可能に連結され、分離した状態で相互の間隙を介して砥石車Tが着脱される第一砥石軸71及び第二砥石軸72と、連結された状態の前記第一砥石軸71及び第二砥石軸72の各密接部(84,85,86,87)の間に流体圧を付与する流体圧付与手段92とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削盤の砥石軸に関するものであり、詳しくは、軸方向に分離可能な分割体から構成された砥石軸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
円筒研削盤等の研削盤は、砥石車が装着される砥石軸を備えており、この砥石軸は、砥石台を構成する部材等の適宜の部材に、回転自在に組み付けられている。そして、研削盤では、砥石軸が、砥石台を構成する適宜の部材等、砥石軸の組み付けの対象となる部材(以下、「組付対象体」と称する)に、軸受を介して片持ち状に支持されているのが一般的であるが、中には、砥石軸が、その両端部分を支承する一対の軸受を介して両持ち状に支持されたものもある。このように両持ち状に支持された砥石軸では、片持ち状に支持された砥石軸に比して撓み難くなる。よって、砥石軸を両持ち状で支持することで、砥石軸の小径化を図ることができ、ひいては、砥石軸を組付対象体に回転自在に支持する支持構造全体の小型化を図ることができる。
【0003】
ところで、砥石軸を一対の軸受によって両持ち状に支持すると、この砥石軸に装着される砥石車は、一対の軸受間に配置されることになる。よって、砥石車を交換するために砥石軸から砥石車を着脱しようとすると、少なくとも一方の軸受から砥石軸を抜脱しなければならなくなり、砥石の交換作業が極めて煩雑となってしまう。そこで、砥石軸を、軸方向に相互に分離可能な分割体から構成することで、分離した状態の各分割体の間隙を介して砥石車を着脱可能とし、これにより、軸受から砥石軸を抜脱することなく、砥石車を交換できるようにした砥石軸が従来から提案されている。そして、このような砥石軸においては、各分割体を相互に連結した状態にて、一方の分割体に設けられたテーパ穴に、他方の分割体に設けられたテーパ筒が嵌入される等、各分割体の一部が相互に密接されている。換言すれば、各分割体は、夫々、連結した状態で相互に密接される密接部を有するものとなっている。
【0004】
【特許文献1】特開平6−47662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
研削盤の砥石軸では、高度な軸心精度が要求されるのであるが、連結して一体化される分割体において、各密接部間にゴミや切粉等の異物が噛み込んでいたり、相互の連結が不十分であったりすると、密接部が十分に密接した状態とならず、各分割体が良好に連結されていない状態、すなわち、各分割体に連結不良が生じた状態、となってしまう。このように各分割体に連結不良が生じていると、各分割体の軸心にズレを生じ、砥石軸全体において高度な軸心精度を得ることができなくなってしまう。
【0006】
ところで、各分割体に連結不良が生じないようにするためには、手作業での拭取作業によって密接部の表面に付着した異物を除去したり、連結が不十分とならないように細心の注意を払って分割体を連結させるのであるが、従来の砥石軸では、各分割体を連結した後に、各分割体相互の連結状態が良好であるか否かを確認する術がなかった。
【0007】
本発明は、上記実状を鑑みてなされたものであり、相互に分離可能に連結される分割体から構成された砥石軸において、各分割体相互の連結状態を確認することができる砥石軸の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の採った主要な手段は、
「相互に密接する密接部を夫々有し、軸方向に分離可能に連結され、分離した状態で相互の間隙を介して砥石車が着脱される第一砥石軸及び第二砥石軸と、
連結された状態の前記第一砥石軸及び第二砥石軸の各密接部の間に流体圧を付与する流体圧付与手段と
を備えることを特徴とする研削盤の砥石軸」
である。
【0009】
夫々分割体を構成する第一砥石軸と第二砥石軸とが連結不良であると、各密接部が相互に十分に密接しておらず、隙間が生じた状態となり、流体圧付与手段によって各密接部の間に流体圧を付与すると、上記隙間から流体の漏れが生じる。よって、流体圧供給手段から付与された流体圧に漏れが生じていれば、第一砥石軸及び第二砥石軸の各密接部が相互に十分に密接していない状態、すなわち、第一砥石軸と第二砥石軸とに連結不良が生じている状態、であることを確認することができる。
【0010】
従って、上記構成の砥石軸によれば、相互に分離可能に連結される分割体から構成された砥石軸において、各分割体相互の連結状態を確認することができる。
【0011】
上述した手段において、
「分離された状態の前記第一砥石軸または前記第二砥石軸の一方から他方の前記密接部に流体を噴き付ける流体噴付手段をさらに備えることを特徴とする研削盤の砥石軸」
としてもよい。
【0012】
上記構成の砥石軸では、第一砥石軸と第二砥石軸とが分離された状態において、流体噴付手段によって第一砥石軸または第二砥石軸の一方から他方の密接部に流体が噴き付けられるため、第一砥石軸と第二砥石軸とを連結するに際して、密接部の表面に付着したゴミ等の異物は、噴付けられた流体によって、ある程度、除去される。よって、手作業による密接部表面の拭取作業を省略したり、省略することはできなくても、事前に異物が、ある程度、除去されていることから、拭取作業を簡便化することができる。
【0013】
上述した手段において、
「前記流体噴付手段は、前記流体圧付与手段により付与される流体圧よりも高い圧力で流体を噴き付けるものであることを特徴とする研削盤の砥石軸」
としてもよい。
【0014】
流体圧付与手段は、第一砥石軸と第二砥石軸との連結状態を確認するためのものであるため、流体圧として、さほどの高圧を必要としないのであるが、流体噴付手段での流体圧が低いと、密接部の表面に付着した異物を良好に除去することができなくなる。そこで、流体噴付手段により噴付けられる流体の圧力を、流体圧付与手段により付与される流体圧よりも高い圧力とする。これにより、密接部の表面に付着した異物を良好に除去することができる。
【発明の効果】
【0015】
上述の通り、本発明によれば、相互に分離可能に連結される分割体から構成された砥石軸において、各分割体相互の連結状態を確認することのできる砥石軸を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明に係る研削盤における砥石軸の支持構造の実施形態としての一例を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
まず、図1,2に基づき、研削盤100の全体構成の概略を説明する。なお、本例では、研削盤100として、ワークを支持するワークテーブル40と、このワークテーブル40に対向する砥石台50とを備えた円筒研削盤を例示するが、円筒研削盤を使用する場合、円筒研削盤に臨む使用者から見て、ワークテーブル40が手前側に位置し、砥石台50が奥側に位置するのが一般的である。よって、以下では、説明の便宜上、研削盤100の構成に係る位置関係を、研削盤100に臨む使用者から見た状態として説明する。すなわち、使用者から見て、手前側を「前」、奧側を「後」、右側を「右」、左側を「左」として説明する。
【0018】
研削盤100は、コンピュータ数値制御装置(CNC)により全体の駆動が制御されるものである。研削盤100の基台部分を構成するベッド10の上面には、Z軸レール11が設けられており、このZ軸レール11を介してベッド10上の後部側にZ軸移動体20が載置され、Z軸方向(左右方向)に移動駆動される。Z軸移動体20の上面には、X軸レール21が設けられており、このX軸レール21を介してZ軸移動体20上にX軸移動体30が載置され、X軸方向(前後方向)に移動駆動される。そして、このX軸移動体30は、砥石車Tを支持すると共に回転駆動する砥石台50を備えている。ベッド10上の前部側に載置されたワークテーブル40には、ワークWを支持すると共に回転駆動する左右一対の主軸台41が設けられている。ここで、上記砥石台50は、砥石車Tが交換可能に装着される砥石軸70を具備しており、この砥石軸70を回転させることで、支持した砥石車Tを回転駆動する。また、上記左右一対の主軸台41は、ワークWの端部を支持する主軸42を具備しており、この主軸42を回転させることで、支持したワークWを回転駆動する。
【0019】
このように構成された研削盤100では、ワークテーブル40に支持されたワークWに対して砥石台50に支持された砥石車Tが、Z軸方向及びX軸方向に相対的に移動駆動される。なお、上記構成に限らず、ベッド10上にX軸移動体30を載置し、このX軸移動体30上に砥石台50を具備するZ軸移動体20を載置して、X軸移動体30をベッド10に対してX軸方向に移動駆動させると共に、Z軸移動体20をX軸移動体30に対してZ軸方向に移動駆動させるようにしてもよい。また、Z軸方向またはX軸方向の一方に移動駆動される移動体に砥石台50を設ける一方で、ワークテーブル40をZ軸方向またはX軸方向の他方に移動駆動させるようにしてもよい。
【0020】
ところで、本例の研削盤100では、Z軸移動体20及びX軸移動体30の夫々が、リニアモータにより駆動されるようになっているが、これに限らず、送りねじ機構を用いた種々の移動駆動装置を用いて、Z軸移動体20及びX軸移動体30を移動駆動するようにしてもよい。
【0021】
X軸移動体30は、Z軸移動体20上に載置された基台31と、基台31に固設され、砥石台50の主体部を構成する砥石台本体51と、砥石軸70を有し、砥石台本体51に着脱可能に取り付けられた砥石軸ユニット60とを有してなるものとして構成されている。ここで、砥石台本体51は、その前側部分が基台31から前方に迫出しており、この迫出した部分の前面に砥石軸ユニット60が取り付けられている。よって、砥石軸70及び砥石車Tは、砥石台50の前方に大きく迫出した状態、所謂「オーバーハング」した状態で砥石台50に支持された構造となっている。
【0022】
なお、本例に限らず、基台31を省略して砥石台本体51を直接、Z軸移動体20上に載置してもよい。また、砥石台本体51に対して着脱可能にユニット化された砥石軸ユニット60に砥石軸70を設けず、砥石台本体51自体に砥石軸70を設けてもよい。
【0023】
砥石軸ユニット60は、砥石軸本体51の前面に着脱可能に取り付けられたユニット基台61と、ユニット基台61のさらに前面に設けられた左右一対の軸受62a,bと、各軸受62a,bに両端部分が支承された砥石軸70と、砥石車Tを被覆する砥石ガード63とを備えてなるものとして構成されている。ここで、上記ユニット基台61は、砥石軸70を組み付ける対象となる部材であり、本例では、ユニット基台61が「組付対象体」となっている。なお、本例では、第一軸受62a及び第二軸受62bとして流体軸受を採用しているが、これに限らず、メタル軸受やボール軸受等、適宜の軸受構造を採用することができる。
【0024】
次に、砥石軸70の詳細について、図3,4に基づいて詳細に説明する。
【0025】
砥石軸70は、相互に連結・分離可能な第一砥石軸71と第二砥石軸72とを備えてなるものとして構成されている。第一砥石軸71と第二砥石軸72とを分離して、相互の間隙を介して砥石車Tを着脱することにより、砥石軸70を軸受62a,bから抜脱させることなく砥石車Tを交換することができる。また、砥石軸70は、その第一砥石軸71側に、砥石台50に搭載された駆動装置のベルト52が巻回されて、駆動装置によって回転駆動される。
【0026】
砥石軸70を構成する一方の部材である第一砥石軸71は、ユニット基台61に固設された第一軸受62aに支承されている。ここで、第一砥石軸71は、第一軸受62aに対して軸方向に移動不能に拘束されている。
【0027】
第一砥石軸71における第二砥石軸72側の端部には、フランジ部73が設けられている。円盤状に形成された砥石車Tは、第一砥石軸71のフランジ部73の端面84にその端面を密接させた状態で、取付ボルト74によって第一砥石軸71に着脱自在に固定される。また、このフランジ部73の端面84は、第二砥石軸72と連結された状態で第二砥石軸72の端面86と密接する部位であり、第一砥石軸71の密接部を構成するものである。
【0028】
さらに、第一砥石軸71における第二砥石軸72側の端部には、テーパ穴85が凹設されている。ここで、このテーパ穴85は、第二砥石軸72と連結された状態で第二砥石軸72の後述するテーパ筒87と密接する部位であり、第一砥石軸71の密接部を構成するものである。
【0029】
一方、第一砥石軸71のフランジ部73とは反対側の端部には、回転継手90を介してエア配管91が接続されている。このエア配管91は、詳細は後述する流体圧付与手段92(図6参照)及び流体噴付手段93(図5参照)で用いられる流体であるエアを第一砥石軸71に外部から供給するためのものである。
【0030】
砥石軸70を構成する他方の部材である第二砥石軸72は、第二軸受62bに支承されている。ここで、第二砥石軸72は、第二軸受62bに対して軸方向に移動可能となっている。砥石車Tを交換するに際しては、第二砥石軸72を軸方向に移動させることで第一砥石軸71から離間させ、第一砥石軸71と第二砥石軸72との間隙を介して砥石軸70に対して砥石車Tを着脱する。
【0031】
第二砥石軸72における第一砥石軸71側の端面86は、連結された状態で第一砥石軸71の端面84に密接する部位であり、この端面86により、第二砥石軸71の密接部が構成されている。また、第二砥石軸72における第一砥石軸71側の端部には、テーパ筒87が突設されている。このテーパ筒87は、連結された状態で第一砥石軸71のテーパ穴85に嵌入されて密接する部位であり、このテーパ筒87により、第二砥石軸71の密接部が構成されている。
【0032】
このように、本例では、第一砥石軸71の端面84(フランジ部の端面84)と、テーパ穴85の内周面との2つの面、及び、第二砥石軸72の端面86と、テーパ筒87の外周面との2つの面によって、第一砥石軸71及び第二砥石軸72の夫々の密接部が構成されている。
【0033】
また、第二砥石軸71には、砥石軸70及び砥石車Tを含んだ回転駆動系全体の回転バランスを自動的に調節するオートバランサや、砥石車TとワークWとの接触を検出するAEセンサ等の機器110が内蔵されている。ここで、オートバランサは、夫々独立した電動機により砥石軸70の円周方向に移動駆動される2個の錘体を有するものであり、2個の錘体を、回転駆動系全体の回転のアンバランス量が最低となるような位相角度に位置させることで、回転駆動系全体の回転バランスを調節するものである。また、AEセンサは、砥粒の破壊音等の音を電気信号に変換して出力するものであり、このAEセンサからの電気信号の変化、すなわち、砥石車TがワークWに接触する際に生じる音の変化により、砥石車TとワークWとの接触を検知することができる。
【0034】
オートバランサは、外部の機器からの制御信号及び電力供給に基づいて錘体の移動駆動を制御する制御装置を有するものであり、電気により機能するものである。また、AEセンサは、外部の機器に電気信号を出力するものであり、これも同様に、電気により機能するものである。そして、本例では、これらのオートバランサやAEセンサ等の電気的に機能する機器110と、砥石軸70の外部に設けられた機器(図示省略)とを電気的に接続するために、部材間が非接触状態であっても電気を伝達することのできる電気的接続装置111が採用されている。
【0035】
この電気的接続装置111は、互いに非接触状態で対向配置されて無線により電力や電気信号の伝達を行う第一接続器111aと第二接続器111bとを備えてなるものである。そして、第一接続器111aは、第二砥石軸72の端部に設けられて第二砥石軸72と共に回転する。一方、第二接続器111bは、ユニット基台61に対して移動可能に組み付けられた台座112に固設されている。砥石車Tを交換するために第二砥石軸72を軸方向に移動させるに際しては、この第二砥石軸72の移動の邪魔にならないように、台座112を移動させて、第二接続器111bを予め退避させておく。
【0036】
ところで、第一砥石軸71と第二砥石軸72とは、適宜の連結機構によって堅固に連結されるのであるが、本例では、第一砥石軸71の端部に組み付けられた連結具80を有してなる連結機構を採用している。上記連結具80は、両端部分に逆方向の雄ネジが設けられ、第一砥石軸71に穿設された工具孔80aから差し入れられた六角レンチ等の工具によって回動操作される作動軸81と、この作動軸81の両端部に螺合され、作動軸81の回動に応じて第一砥石軸71の径方向に進退する一対の連結コマ82とを有するものである。
【0037】
第一砥石軸71と第二砥石軸72とを連結する際には、第一砥石軸71のテーパ穴85に第二砥石軸72のテーパ筒87を嵌入させた上で、連結具80の連結コマ82を径方向に前進させれば、この連結コマ82がテーパ筒87の内周面に凹設された係合溝83に係合する。これにより、第一砥石軸71と第二砥石軸72とが相互に分離不能に連結される。
【0038】
また、係合溝83は、テーパ面を有する形状に形成されており、連結コマ82も、テーパ面を有する形状に形成されている。係合溝85に連結コマ82が係合した状態で連結コマ82をさらに前進させると、夫々のテーパ面の作用によって、第一砥石軸71に対して第二砥石軸72が引き寄せられる。これにより、第一砥石軸71の端面に第二砥石軸72の端面が十分に密接される。また、連結コマ82は、テーパ筒87を拡径させるように作用する。これにより、第一砥石軸71のテーパ穴85の内周面に第二砥石軸72のテーパ筒87の外周面が十分に密接される。
【0039】
本例の砥石軸70は、連結された状態の第一砥石軸71及び第二砥石軸72の各密接部の間に流体圧を付与する流体圧付与手段92と、分離された状態の第一砥石軸71または第二砥石軸72の一方から他方の密接部に流体を噴き付ける流体噴付手段93とを備えている。次に、流体圧付与手段92及び流体噴付手段93の詳細を説明する。
【0040】
まず、図5に基いて、流体噴付手段93の詳細を説明する。
【0041】
第一砥石軸71の内部には、外部からエア配管91及び回転継手90を介して、流体であるエアが供給される流路が設けられており、この流路は、噴付用流路93aを介して、第二砥石軸72に対向する第一砥石軸71の端部に開放されている。具体的には、第一砥石軸71に取り付けられた連結具80を介して、連結具80の端部に開放されている。また、第二砥石軸72には、噴付用流路93aの開放口に対応する部位にシール部材93bが設けられており、第一砥石軸71と第二砥石軸72とが連結された状態では、噴付用流路93aの開放口が、上記シール部材93bによって閉塞される。
【0042】
第一砥石軸71と第二砥石軸72とが分離された状態において、噴付用流路93aからエアを噴き付ける(図5の矢印A)ことで、第二砥石軸72の密接部である端面86及びテーパ筒87の外周面を洗浄することができる。ここで、第一砥石軸71及び第二砥石軸72が分離した状態から、相互を連結すべく近接させるに際して、噴付用流路93aからエアを噴き付けることとすると、付着した異物が拭取作業等によって除去された密接部に、再度、異物が付着することを防止しつつ、第一砥石軸71及び第二砥石軸72の夫々の密接部を当接させることができ、密接部間での異物の噛み込みを的確に防止することができる。
【0043】
なお、噴き付けるエアの圧力が高い程、洗浄効果を高めることができるので、噴付用流路93aから噴き付けられるエアの圧力は、詳細は後述する流体圧付与手段92にて用いられるエア圧よりも高く設定されている。ここで、第一砥石軸71及び第二砥石軸72を分離させたまま維持した状態と、第一砥石軸71及び第二砥石軸72を相互に連結すべく近接させる状態との夫々においてエアを噴き付ける場合には、分離させたまま維持した状態では噴き付けるエアの圧力を高く設定し、近接させる状態では噴き付けるエアの圧力を低く設定するとよい。エアの圧力が高い程、洗浄効果を高めることができるが、近接させる際にエアの圧力が無用に高いと、噴き付けるエアが抵抗となり、第一砥石軸71と第二砥石軸72とを連結させ難くなるからである。
【0044】
次に、図6に基いて、流体圧付与手段92の詳細を説明する。
【0045】
第一砥石軸71の内部に設けられた流路は、上述した噴付用流路93aの他に、流体圧付与用流路92aを介して、第一砥石軸71のテーパ穴85内に開放されている。具体的には、第一砥石軸71に取り付けられた連結具80を介して、連結具80の外面に開放されている。ここで、第一砥石軸71と第二砥石軸72とが連結された状態では、上述の通り、噴付用流路93aの開放口が閉塞されている。このため、第一砥石軸71の流路に供給されたエアは、流体圧付与用流路92aの開放口から流出する。また、流体圧付与用流路92aの開放口から第一砥石軸71及び第二砥石軸72相互の密接部までの間においては、シール部材92bによって、第一砥石軸71と第二砥石軸72との間がシールされている。このため、流体圧付与用流路92aの開放口から流出したエアによって、第一砥石軸71及び第二砥石軸72相互の密接部にエア圧が付与される。
【0046】
第一砥石軸71と第二砥石軸72とが連結された状態において、連結不良により、相互に密接する第一砥石軸71のテーパ穴85の内周面と第二砥石軸72のテーパ筒87の外周面との間や、相互に密接する第一砥石軸71の端面84と第二砥石軸72の端面86との間に隙間が生じている場合には、流体圧付与用流路92aから付与されたエア圧(図6の矢印B)に漏れを生じる。よって、この漏れを検出することで、第一砥石軸71及び第二砥石軸72の相互の連結不良を確認することができる。
【0047】
以上、本発明に係る研削盤の砥石軸の一例を説明したが、本発明に係る研削盤の砥石軸はこれに限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0048】
例えば、上述の例では、流体圧付与手段92及び流体噴付手段93の夫々の流路構成を、共通する流路系にて形成した例を示したが、これに限らず、相互に独立した流路系によって形成してもよい。また、流体圧付与手段92及び流体噴付手段93の夫々の流路構成を第一砥石軸71に設けるに限らず、第二砥石軸72に設けてもよく、或いは、第一砥石軸71及び第二砥石軸72の双方に設けてもよい。ここで、本例の如く、第二砥石軸72が、オートバランサやAEセンサ等の各種の機器100を内蔵するものである場合には、第二砥石軸72の内部に流路を形成することは困難である。よって、流路構成を第一砥石軸71側に設けるのが好適である。さらに、流体としては、エアに限らず、水や油、或いは、研削盤100にて使用されるクーラントを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る砥石軸を採用した研削盤の一例を示す平面図である。
【図2】図1に示した研削盤の要部側面図である。
【図3】本発明に係る砥石軸において、第一砥石軸と第二砥石軸とを連結した状態を示す要部平面図である。
【図4】本発明に係る砥石軸において、第一砥石軸と第二砥石軸とを分離した状態を示す要部平面図である。
【図5】流体噴付手段を示す要部拡大図である。
【図6】流体圧付与手段を示す要部拡大図である。
【符号の説明】
【0050】
T 砥石車
W ワーク
10 ベッド
11 Z軸レール
20 Z軸移動体
21 X軸レール
30 X軸移動体
31 基台
40 ワークテーブル
41 主軸台
42 主軸
50 砥石台
51 砥石台本体
52 ベルト
60 砥石軸ユニット
61 ユニット基台
62a 第一軸受
62b 第二軸受
63 砥石ガード
70 砥石軸
71 第一砥石軸
72 第二砥石軸
73 フランジ部
74 取付ボルト
80 連結具
80a 工具孔
81 作動軸
82 連結コマ
83 係合溝
84 端面(密接部)
85 テーパ穴(密接部)
86 端面(密接部)
87 テーパ筒(密接部)
90 回転継手
91 エア配管
92 流体圧付与手段
92a 流体圧付与用流路
92b シール部材
93 流体噴付手段
93a 噴付用流路
93b シール部材
100 研削盤
110 機器
111 電気的接続装置
111a 第一接続器
111b 第二接続器
112 台座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に密接する密接部を夫々有し、軸方向に分離可能に連結され、分離した状態で相互の間隙を介して砥石車が着脱される第一砥石軸及び第二砥石軸と、
連結された状態の前記第一砥石軸及び第二砥石軸の各密接部の間に流体圧を付与する流体圧付与手段と
を備えることを特徴とする研削盤の砥石軸。
【請求項2】
分離された状態の前記第一砥石軸または前記第二砥石軸の一方から他方の前記密接部に流体を噴き付ける流体噴付手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の研削盤の砥石軸。
【請求項3】
前記流体噴付手段は、前記流体圧付与手段により付与される流体圧よりも高い圧力で流体を噴き付けるものであることを特徴とする請求項2に記載の研削盤の砥石軸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−75909(P2006−75909A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259289(P2004−259289)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【Fターム(参考)】